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ノーパン羞恥でゴ〜!! Part 2



1 名前:名無しさん@ピンキー [2006/06/27(火) 22:58:04 ID:yuzZcFzy]
漫画や小説などのノーパン羞恥シーンの情報交換から、
ノーパン羞恥SSの投下まで、
女性の恥じらう様に萌えるノーパン総合スレ。

前スレ
ノーパン羞恥でゴ〜!!
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1005459853/

303 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/10/29(日) 14:14:47 ID:FBZPqd1U]
どんどん開発されていきますねw

304 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/02(木) 14:08:17 ID:jcTXzsCW]
パンツ強奪もの キボン

305 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/02(木) 20:29:27 ID:QlhwN2PP]
このスレの4日ぶりのレスが「パンツ強奪もの キボン」かよ。>>304
それはさておき、見事なスレッドストッパーでした。>>303

306 名前:名無しさん@ピンキー [2006/11/03(金) 10:18:38 ID:Yoncp7mJ]
age

307 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/03(金) 13:43:14 ID:u2euXv9f]
>>304
そういうのは二次元排泄系妄想廃棄所で。っていうか金森にトイレ覗かれて羞恥に頬を染める夕菜萌え

308 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/11/07(火) 12:58:26 ID:F49kd+eY]
長らく間が開いてしまいましたが、ようやく投下できる程度にまとまりました。
7レス、エロ要素は低いですがw

309 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/07(火) 12:59:21 ID:F49kd+eY]
──恥ずかしい……。
 歩くと乳房が揺れる。ブラウスとタンクトップに隠れてはいるものの、ぷるぷると震えて
いるのは誰の目にも明らかだ。
 スカートを捲れば晒されてしまう秘処はとろとろに濡れている。
 それどころか、ぬるぬるとした感触は内腿にまで伝わってしまっている。スカートの中の
空気が揺れ、ひんやりと感じられる。
──垂れちゃったらどうしよう……。
 更衣室を出て、擦れ違う三年生たちの奇異の視線に耐えながら校舎に入った私は、
一階のトイレへと急いだ。
 空調の涼しい風が、腿に伝う雫をいっそう意識させる。
──急がないと……。
 早足に進むが、胸が激しく揺れて刺激されてしまい、雫がさらに溢れ出す。
 学校でこんなにもそこを濡らしてしまっている自分は、なんて淫らなのだろうと思う。
 三年の男子たちの下品な会話を聴きながら、クラスメイトに身体を許し弄ばれる自分を
妄想していた私は、なんといやらしい女の子なのだろう。
 羽山君に責められ、保健室で自慰をしてしまい、笹野先生にもされておきながら、今も
また熱く潤ませてしまっている。
 ドアを挟んでいたとはいえ、向こう側には三年生の先輩がいたというのに、乳房を揉み、
乳首を抓んでしまった。スカートを捲り上げ、雌蕊に指を伸ばしてしまった。
 ブラを着けていない事が、クラス中に知れ渡ってしまった。保健室に現れた三年生にも
気づかれていた。今頃は、より多くの生徒たちに、私の噂が広まっている事だろう。
 数人の生徒や教師と擦れ違う。彼らの全てが、私がブラをしていない事を知っているの
ではないかと思ってしまう。
 それどころか、ショーツも穿いていないのだと気づかれ、スカートを捲り上げられて
しまうのではないかとまで思ってしまう。
 淫らな気持ちが抑えられない。いやらしい事ばかりが浮かんでしまう。
 恥ずかしいのに、恥ずかしさが身体を熱くしてしまう。
 乳房が揺れて生地に擦れた突起が、もっと刺激して欲しいと言っているようだ。
 スカートの下の剥き出しの秘処が、自分も刺激して欲しいと言っているようだ。
 今ここで、乳房を揉んでしまったらどうなるのだろう。
 下から持ち上げるように、大きな乳房を強調させてしまうのだ。ブラウスに浮き上がった
乳首を抓み、くりくりと指で転がすのだ。
 スカートを捲って、秘処を露にしてしまったらどうなるのだろう。
 制服のスカートを持ち上げて、とろとろになったそこを露出させてしまうのだ。指を伸ば
して蕾に触れ、びくびくと身体を震わせながら嬌声を上げるのだ。
──廊下でそんな事……。
 生徒や教師が歩いている廊下で、こんな想像をしてしまうなんて──
 身体中が熱く火照り、タガが外れてしまいそうだった。
 そんな事になってしまう前に、理性を保っていられるうちにトイレに入らなければ──
 あとほんの数メートルの距離が、永遠にも感じられる。
 行き交う生徒に、ちらりと視線を向けられただけで、びくんと震えてしまう。そんな視線
ですら、私の身体を刺激する力になってしまっている。
 もし今私が教室にいたのなら、三十七人七十二もの視線を浴びて、全身を震わせて達して
しまうのではないだろうか。だらだらと涎を垂らしながら、淫らな露を滴らせ、びくびくと
四肢を痙攣させて──
 ふらふらと歩きながら、ようやくトイレの前に辿り着いた。
 一階のトイレは普段あまり使われていない。壁に手をつきながら一番手前の個室へ入る。
 早くこの淫らな気持ちを拭き取ってしまわなければならない。
 ロールペーパーを三十センチほど引き出す。折り畳んで右の掌に乗せ、左手でスカート
を捲って和式の便器を跨ぐと──
 ぴちゃ、と小さな音が響いた。
──垂れちゃった……。
 こんな事は初めてだった。
 そこから溢れた淫汁が脚の付け根を濡らす事はあったが、零れ落ちるほどになった事など
初めてだった。
 つまり、私がそれほどにまで淫らになっているという事なのだ。
 無意識に──
 掌に乗せたペーパーごと右手でスカートを握り、空いた左の指を伸ばしてしまう。
「ひゃぅっ!」
 触れた瞬間、驚くほど大きな声が出てしまった。

310 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/07(火) 13:00:29 ID:F49kd+eY]
 冷や水を浴びせられたように身を縮めた。
 自分の発した嬌声のおかげで、理性が戻ってきた。
 淫らな気持ちがすっかり消えてしまったわけでもないが、判断力が持ち直しただけでも
よしとするべきなのだろう。
 耳をそばだて、周囲を窺う。
──大丈夫、誰もいない……。
 トイレの中に人の気配は無かった。あまり使われない一階のトイレでよかった。ここが
各学年の教室のある二階から四階までのトイレだったら、きっと今の声は誰かに聴かれて
しまっていただろう。
 そんな事にならなっていたら──
──ダメダメ、また変な事考えちゃう。
 くしゃくしゃになったペーパーを内腿へと当てて雫を拭う。
 便器に落として、もう一度ペーパーを引き出した。
 自分のものとは思えないほどに濡れそぼった秘処を、丁寧に拭ってぬめりを取る。
 火照った身体はペーパーの刺激に反応してしまう。
 ぴくぴくと震えてしまうが、刺激に身を任せてはいけない。
 しかし、拭っても拭っても溢れてくる。
 いっそこのまま最後まで達してしまえばと思ってしまう。
──流されちゃダメ……。
 そんな気持ちをなんとか堪え、痛みを覚えるぐらいにまで拭い取った。
──ひりひりする……。
 こすりすぎて粘膜が炎症を起こしてしまったかもしれない。
 じんじんと痛むが、これ以上淫らな気持ちになるよりはましだった。
 積み重ねられたくしゃくしゃのペーパーと一緒に、そんな気持ちが流れていってしまえば
いいと思いながら、流水レバーを下ろした。
 スカートを調えてドアを開けると、チャイムが鳴った。
 五時間目が始まってしまったようだ。
──次は、たしか……。
 国語だった。
 担当の教師は、杉山──
 線が細い割に角張った印象を受ける杉山という男性教師は、見た目通り融通の利かない
性格のようで、授業時間をオーバーして休み時間を潰してしまう事がしばしばあった。
 当然、生徒からは疎ましがられ、まだ二十代半ばと若いこともあって、陰では新米や素人
などと、あまり好ましくない呼ばれ方をされていた。
 杉山はもう教室にいるだろう。いつも、チャイムとほぼ同時にやってくる。
 遅れて教室に入ったら、なんと言われるだろう。
 水谷のように粘着質ではないし、ねちねちと責められる事も無いとは思うが──
 授業中の教室に一人で戻れば目立ってしまう。
 クラス中に知られてしまっているし、またみんなに見られるのは恥ずかしい。
──それに……。
 ブラウスに突起が浮かんでいる。
 また淫らな気持ちになってしまうかもしれない。
 三年男子の先輩たちの言葉──クラス中の性奴隷にされてしまう私の姿が甦る。
 考えてはいけないと解かっているのに考えてしまう。
 きっと、私が淫らな子だからなのだ。
 普通の子はこんな想像なんてしないだろう。好きな男の子との関係は妄想したとしても、
好きでもない男子たちに身体を弄ばれる想像なんて、誰がするというのだろう。
 ブラも着けず、ショーツも穿かずにクラスメイトの前に出るなんて、そんな子は私以外に
いないだろう──
 洗面台で手を軽く流す。
 気が滅入る。またこんな格好のままで教室に戻らなければならないのだ。
 私は更衣室へ何をしに行ったのだろう。擦れ違う生徒たちの視線に晒され、先輩男子たち
の下らない猥談に身体を火照らせただけだった。
 私の下着は、彼女らのうちの誰かのバッグに仕舞い込まれているのだろうか。
 だとしたら、誰のバッグだろうか。
 楠井舞香──だろうか。彼女は私と同じ小学校の出身で、その頃から私への嫌がらせを
していたのだ。きっと恨みも深いだろう。
 脇田千穂だろうか。彼女はグループのリーダー格だし、クラスでも発言力がある。彼女を
敵に回す事は、クラス全体を敵に回すに等しい。
 それとも、木嶋深雪だろうか──

311 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/07(火) 13:01:59 ID:F49kd+eY]
 いっそ彼女たちに声をかけてみるのも良いかもしれない。
「私の下着を隠したの、あなたたちでしょう?」
 そう言ってしまいたい。
 彼女らはどんな顔をするのだろう。
 きっと──嘲笑われて、逆に辱められるのが落ちだろう。
 私一人ではどうしようもないのだ。
 助けてくれる人など──
──羽山君なら……。
 彼なら、助けてくれるだろうか。
 羽山君の言葉になら、彼女らは素直に従うのだろうか。
──羽山君に頼るのはダメだよね……。
 確かに彼はさっき、金森から助けてくれたが、また助けてくれるという保証は無い。
 私は彼に酷い事をしたのだ。
 さっきはきっと、金森の暴挙を止めようとしただけなのだろう。押し倒されたのが私で
なくても、羽山君なら止めに入っていただろうから──
 蛇口を閉めて水を止める。
 手を拭こうとして、ハンカチが保健室で借りた下着ごと机の中なのを思い出した。
 ぷるぷると手を振って水気を飛ばす。
 手を振るたびに、胸も揺れてしまう。
──なんでこんなおっきいんだろ……。
 この濡れた手で、ブラウスの上から乳首を抓めば、透けてしまうかもしれない。急に降り
出した雨に濡れ、制服がぴったりと張り付いて透けてしまった事があった。その時はブラを
していたからまだ良かったが、今はきっと、鳶色に透けてしまうのだろう──
──またこんな事……。
 頭を二、三度振って溜め息をついた。
 考えても仕方が無いのだ。私はこのまま教室へ戻るしかない。
 そう思って廊下に出ようとした時、外からぺたぺたとだらしない足音が聞こえてきた。
 くたびれたスリッパでも履いているのか──五時間目の授業へ向かう教師だろう。
 人がいるとなると、躊躇してしまう。
 その足音が不意に止まった。
「お〜い、お前そこでなにしてんだぁ?」
 低くて太い間延びした声だった。聞き覚えはあるが名前が思い出せない。
──私の事じゃなさそうだけど……?
 他に誰がいるのだろう。廊下から人の気配は──
「ちょっと、クラスメイトを待ってます」
──今の、声って!?
 すぐそばから聞こえた声は、耳に馴染んだ声だった。
 落ち着いた調子の、よく通る澄んだ声色──顔が脳裏に浮かぶ。
「すぐ教室に戻りますから」
──やっぱり……。
 間違えようが無い。
 羽山君の声だ。
「おぉ? もう授業始まっとるぞぉ」
「はい」
「急いで戻れよぉ。でも、廊下は走るなよぉ〜」
 教師は、羽山君を咎めるでもなく、のんびりした声で言った。
「はい、走らず急ぎます」
「階段は気をつけろぉ。転ぶと痛いぞぉ〜」
「はい、転ばないように気をつけます」
「おう、じゃあなぁ〜」
 ぺたぺたという足音が外を通り過ぎてゆく。
 羽山君が動いた様子は無い
 私はぺたぺたが遠ざかるまで待って、トイレを出た。
 そこにいたのは、やはり羽山君だった。
 羽山君がわずかな微笑を浮かべて私を見た。
「長かったね」
「えっ……」
 妙な想像をされているのではないかと思ってしまう。
 彼がいつからそこにいたのかは判らないが、もし私がトイレに入った時からいたのだと
したら──



312 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/07(火) 13:02:48 ID:F49kd+eY]
──聴かれちゃった……?
 そこに触れたときに漏らしてしまった声──
 トイレが長かったという意味ではなく、その声から想像される行為が長かったと──
──そんな……。
 彼は、内心を読ませてくれない笑みを浮かべたまま、私を見ている。
 どういうわけだか、眼が逸らせない。
 恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまうのに、私は彼の瞳から視線を逸らせない。
 彼の微笑みが私の心を惹き止めて離さない──
 くすりと彼が笑った。
「冗談」
「え……?」
「ちょうど俺しかいなくて良かった」
 それは──
「可愛かったよ、声」
「──ッ!」
──やっぱり、聴かれてた……。
 羽山君に聴かれていたのだ。
 触れたときに出てしまった声を。
 そんなにも大きな、廊下にまで聞こえるような声だったのだ。
「わ、私……して、ない……から」
 私は何を言っているのだろう。
 勝手に言葉が出る。
「ちょっと、だけ……ちょっと、触ったら、声が……」
 しなくてもいいのに、言い訳をしてしまう。
「勝手に、出ちゃったの……変な声……」
 私の他には彼しかいないといっても、ここは学校の廊下なのだ。
 そんなところで、私は何を言ってしまっているのだろう。
 自分で自分が解からなくなる。
 ふふっと笑った彼の右手が、すっと持ち上がった。
 首を竦ませた私の頭に、ぽんと乗せられた。
「触っちゃったんだ?」
「ちょっと、だけ……すこしだけ……当たっただけ……」
 頭を撫でられる。
 親に責められている小さな子供のようだ。
「してもいいのに」
「え……えっ?」
 気が付けば、彼の左腕で腰を抱かれてしまっている。
 咄嗟に身を縮ませると、ぐいと抱き寄せられ、彼の肩口に顔を押し付けてしまう。
「胸、柔らかい」
「あっ、や……」
 彼の右手が私の首にふわりと巻きつき、優しく抱き締められる。
 幻ではない。
 彼はまた、私のもとに現れてくれた。
 私は彼を突き放してしまったのに、彼の差し出してくれた手を払い除けてしまったのに、
彼は教室で私を金森から助けてくれた。
 今、どうして彼がここにいたのかは解からないが──
 彼の体温が布越しにはっきりと感じられる。
「こうされるの、嫌?」
 耳元で囁く彼の言葉が、私の心を揺るがせる。
「……嫌じゃ、ない」
「こういう事も?」
 腰に回された彼の手がするすると下がり、スカートの上からお尻に触れた。
──ここ、廊下なのに……。
 ぴくんと震えてしまう。
 小さな丸みを確かめるように、ゆっくりと撫でられる。
 首に回された手が髪を撫で、耳たぶをくすぐられる。
 ぞくぞくと震えて、私もまた、彼の身体に腕を回してしまう。
 私には、彼のようにストレートに大胆に抱く事はできないが──
 おそるおそる腰を抱き、ワイシャツをきゅっと握った。
 いつまでもこうしていたいと思った。

313 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/07(火) 13:03:38 ID:F49kd+eY]
「パンツ、まだ穿いてないんだ?」
 スカートの下にショーツの感触が無いのに気づいたのだろう。
 彼はきっと、私が保健室でショーツを借りたと思っていただろう。それなのに今の私は、
相変わらず下着を身に着けていない。
「う……うん」
「借りられなかったの?」
「借りた……けど……」
「けど?」
──恥ずかしい……。
 便器に落としてしまったなんて──
 彼のワイシャツを握る手に力が篭もる。
「わ、私……」
「うん?」
 頭を撫でられる。
 お尻に触れていた手は、腰に戻っている。
 彼の身体が温かい。
「私、せっかく、借りたのに……」
 言いたくない。便器の中に落としてしまったなんて、馬鹿みたいではないか。
「ごめん、なさい……」
「なんで謝るの?」
 彼が私の耳元で苦笑した。
「だって……」
「ノーパンが癖になった?」
「そんなっ──!」
 そんなわけない。癖になるなんて──
 でも、ほんとうにそう言えるのだろうか。
 下着を盗られて以来、ずっと淫らな気持ちに囚われている私は、ほんとうはこの状態を
望んでいるのではないだろうか──
 そんな事は無いはずなのだが、違うのだと言い切れない。
「冗談」
 彼がぎゅっと私を抱き締めた。
 どこまで本気なのか解からない。
 けれど、このぬくもりは本物に違いない──
「パンツ……」
「うん?」
「落としたの……トイレに」
「トイレに?」
「うん……トイレに落としちゃって、穿けなくなって……」
「……そっか」
 髪を撫でられる。
 ほんのりと香る彼の汗の匂いが心地良い。
「ドジだなぁ、夕菜は」
「う、うぅ……」
 くすりと笑う羽山君。
 笑われて恥ずかしいのに、名前で呼ばれて嬉しい。複雑だった。
「これからどうしようか」
「え?」
「教室戻ったら、またみんなに見られちゃうだろ?」
「……」
 自分で解かっていても、改めて言われると、余計に意識してしまう。
 またクラスメイトの視線に耐えなければならない。
 授業中に、よからぬ妄想に耽って身体を熱くしてしまうかもしれない。
 ショーツの無いままで、さっきのように零れるほどに潤ませてしまっては、スカートに
大きな染みを作ってしまいかねない。
 そんな事になったら、席を立つことすらできなくなってしまう。
「見られたい?」
「えっ──」
「見られて、感じちゃうんでしょ?」
──そんなっ、そんな事……。
 彼の手が、スカートを捲ってゆく。

314 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/07(火) 13:04:29 ID:F49kd+eY]
 午後の授業が始まり、周りには羽山君と私以外に人の気配はない。
 だが、ここは一階の廊下なのだ。ほぼ東西の方向に延びた校舎の、百メートル近くも
続いているまっすぐな廊下なのだ。
 そんなところでスカートを捲られてしまう。
 スカートの下には、肌を隠すものが何も無いのに──
「は、羽山君……」
「大丈夫、誰も見てない」
「でもっ」
 正面から抱き締められている私には、自分の後ろ側はまったく見えない。彼がそちらへ
と注意を向けているであろう事が解かっていても、不安で身体が震えてしまう。
 彼は、ふふっと笑って手を止めた。
「エッチな気分、続いたままなんだね」
「そんな……」
「あのあと、保健室で何があったの?」
「えっ──」
 羽山君の気持ちを踏み躙り、独り保健室に残った私──
 彼を想って自慰をしてしまった。
 笹野先生に責められ、達してしまった。
 それを説明するなんて──
「夕菜、昼休みになるまで戻ってこなかった」
「……」
「笹野先生に、されてた?」
「──ッ!」
──気づかれてた……?
 いや、違う──
 彼の耳にも、笹野先生の噂は届いているだろう。生徒を喰っている──更衣室の前で
三年の先輩たちが話していた事からも、その噂は事実なのだ。
 もしかしたら、羽山君も彼女と──
「俺もされそうになった事あるよ」
 なった事ある──けど、しなかった、という事なのだろう。
 彼は私を責めた時、その手の行為は知識だけだと言っていた。
「笹野先生の噂、知ってるでしょ?」
「……うん」
「夕菜は、されたの?」
「わ、私は……」
 されてしまった。彼女の指に身体を震わせ、達してしまった。
 でも、それを彼には言いたくない。好きな人を目の前にして、そんな事をされただなんて
とても言えない。
「夕菜──」
 彼の両手が私の肩を掴み、正面から向き合う。
 羽山君のいつもと変わらぬ微笑が、私の眼を捕らえて離さない。
「夕菜は、可愛いなぁ」
「羽山君……」
 見つめられるだけで、くらくらしてしまう。とろけそうなほどの穏やかな視線──
 吸い込まれそうになって、眼を開けていられない。
 刹那、唇が──
「んっ……」
 温かくて柔らかい。
──キス……こんなとこで……。
 ちゅっと音を立てながら、彼の唇が触れては離れ、離れては触れを繰り返す。
 小鳥が木の実を啄ばむように──
 ふらふらとよろめきそうな私を、背中に回された腕が支えてくれる。
「んっ、んぅ……」
 ミントの香りが口に広がる。彼の舌が、私の唇を割って侵入してきた。
「んぅ……ふぁ」
 くちゅ、と小さな音がした。
 彼の舌と、私の舌とが触れ合う。
 肩と腰を抱かれ、逃げる事は叶わない。
 いや──私には逃げる気など無い。
 自ら、彼の舌を求めてしまっていた。

315 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/07(火) 13:05:32 ID:F49kd+eY]
 二人の舌が絡み合う。
 彼はまだ私を想っていてくれた。
 あんな風に突っ撥ねてしまった私を、こうやって抱き締めて、深いキスをしてくれる。
 私はなんて愚かだったのだろう。
 彼はこんなにも私を想ってくれていたというのに──
 自分の事ばかり考えて、彼を信じられなかった。今まで彼が助けてくれた事が無いから
といって、保身に走ってしまった自分が情けない。
 私だって──
 他の男の子たちとは違う雰囲気をもつ彼に、一方的に密かな想いを密かに抱いていた
だけだったではないか。気持ちを表に出さずとも、彼に手助けした事など一度も無かった
ではないか。
 いくら彼が優秀で抜きん出ていると言っても、同い年の男の子なのだ。彼にだって、でき
ない事はいくらでもある。
 さらりと受け流してしまうが、彼もからかわれる事があったし、上級生や、たちの悪い
教師から無理難題を吹っかけられる事もあった。
 それを見ていた私は、彼になにかしただろうか──
 なにもしてはいない。
 自分には関わりが無いと、眼を逸らしていたではないか。
 なのに、自分の事を棚に上げて、彼にはそれを求めるなんて。
──私、やっぱり自分勝手だ……。
 頭の中で、くちゅくちゅと響く音が不意に止んだ。
「どうした?」
 唇が離れ、眼を開けると、彼が心配そうに覗き込んでいた。
 頬を伝う感触──
 涙だった。
「夕菜?」
 伝い落ちる雫を、彼の指がそっと拭う。
「羽山君……」
「うん?」
 彼に謝らなければ──
「保健室で、私……ごめんなさい」
「夕菜──」
「私、羽山君に助けてもらって……なのに、私……」
 眼を逸らしてしまいたい。
 でも逸らしてはいけない。
 彼の眼を真っ直ぐに見ながら言わなければ、嘘になってしまうような気がした。
「ごめんなさい、羽山君。私……」
 彼は黙って私の眼を見つめ返している。口元に、ほんのわずかな笑みを湛えて。
「私、自分が可愛くて、羽山君を、傷つけた」
「……」
「だから……ごめんなさい」
 彼が眼を伏せる。
 ゆっくりと瞼が閉じられ、少しだけ首を傾げ、眼を開いた。
「俺、すごくショックだったな」
「──ッ!」
 身体中の血液が、一瞬にして凍りついたようだった。
 彼の腰にまわしていた腕が、ずるずると落ちてゆく。
「夕菜は俺の事、好きなんじゃないかなって思ってた」
 抑揚の無い声だった。
 私は顔を伏せた。
 彼の言葉を正面から受ける事なんてできなかった。
「階段であんな事したのに、本気で抵抗されなかったし……いや、それ以前から、夕菜が
俺の事を好きなんじゃないかって思ってた」
 淡々と続ける彼。
 ここから逃げ出したい。
 けれど、脚が竦んで動けない。立っているだけでやっとだった。
「保健室で胸まで見せてくれた時、やっぱりそうだったんだって思った」
 聞きたくない──
「なのに、あんな事言われて──」
 彼の言葉をこれ以上聞いたら、私は──

316 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/07(火) 13:06:24 ID:F49kd+eY]
「……ごめ……なさ……」
 俯いたまま、だらりと下げた両手を握り締めて言った。
 かすれて、声にならなかった。
「ごめんなさい……」
 もう一度言った。
「夕菜──」
 彼の声が、耳元で──
 私は、抱き締められていた。
「俺の話、まだ途中だってば」
「羽山君……?」
 声色が、変わった。
「ここからがいいところなんだからさ」
 凍りついた私の身体を優しく解かしてくれるような、冗談めかした声音だった。
「あんな事言われてさ、俺、ショックだったんだよ」
 彼の手に、髪を撫でられる。
「ああ、俺は失恋したのかな、って」
 口元に浮かんだ笑みは──自嘲、だろうか。
「それで、気づいた」
 髪を撫でていた指が、すっと頬に触れた。
「──本気だったんだな、俺、ってね」
 羽山君は、私を──
 本気だったと言った彼の言葉は、震えているように思えた。
「俺、昔は泣き虫だったんだよ。だから──」
──羽山君が、泣き虫……?
 今の彼からは想像ができない。
 けれど、ならば、だとしたら──
「あの時、俺ほんとは、泣きそうになっちゃってね」
 振られて泣くなんて、かっこ悪いだろ? と彼は笑った。
 あの時彼は、泣きそうな自分を見られるのが嫌で、背を向けたという事なのか──
「色々と鍛えられて……もう泣く事なんて無いと思ってたのになぁ」
 独り言のように呟く。
 濡れた頬を撫でる指も、私を抱き締めている身体も、わずかに震えているようだった。
「教室まで独りで戻る間……正直言って、寂しかったな」
 ほんとに泣きそうだったよ、と続けた羽山君の指が、私の涙の痕を拭う。
 ならば──
──同じなんだ……。
 私も──寂しかった。
 自分の言葉に悔やみ、やりようのない気持ちを、自ら慰めて誤魔化した。
「まぁ、当たり前だよね」
 彼の身体が離れる。
 両手で頬を挟まれ、上を向かされた。羽山君の、照れたような笑みがそこにあった。
「あんな事されて、好きなんて言われても、信じられないよな。夕菜は謝らなくていい」
 彼ははにかんだように少しだけ眼を逸らした。
 手が離れ、彼が背を向ける。
 背を向けたまま、天を仰ぎ──
「でもさ、俺って諦めが悪いんだ」
 どういう意味かと思う間も無く、彼が振り向いた。
「何度でも言うよ」
 透き通った暗褐色の瞳に、真っ直ぐに見つめられる。
「俺は、夕菜の事が好きだ」
 はっきりとした、曇りの無い言葉だった。
 私は遠回りをしてしまっていたのだ。
 今なら確信できる──彼はこんなにも、私のことを想ってくれていたのだ。
「夕菜、好きだよ」
「羽山君……」
 もう迷う事などない。
 思うままを口にしよう。
 私は素直に、その言葉を紡ぐ──
「私、羽山君の事が……好き」
 二人の唇が、重なり合った。

317 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/11/07(火) 13:12:34 ID:F49kd+eY]
今回は以上です。
どうやらエロい事ばかり考えていて数も数えられなくなってしまったようです。
8レスでした(´・ω・`)
夕菜はまだパンツ穿いてないので、これでは終わりませんw

>>307
それはそれでステキなシチュエーションですなぁ〜
金森は書いていて楽しいキャラなので、まだ出番はありますでございますですわ♪

318 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/07(火) 15:55:31 ID:L0F6WXU/]
いいよいいよー
次もまってるよー

319 名前:名無しさん@ピンキー [2006/11/07(火) 16:41:16 ID:kQtn6Lct]
>>317
羽山か金森のちんぽをチョンパ汁

320 名前:名無しさん@ピンキー [2006/11/07(火) 18:26:15 ID:FzprZ9lN]
>>317
GODJOB
また続きお願いします
夕菜可愛すぎ
幸せになってもらあたいな

321 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/07(火) 19:11:32 ID:s9y46ifh]
>>320
興奮しすぎて手元が狂ったか

>>317
ネ申



322 名前:佐奈 mailto:sage [2006/11/07(火) 20:30:30 ID:g3Rm1Nvh]
私は中3です。3月10日、卒業式でした。
そして、卒業式が終わっていえに帰って、友達と遊びに行っていました。
そしたら!!彼氏に見つかって(?)彼氏の家に急遽行く事になりました。
そして行き成り彼氏は私の胸を触り始めて、ベッドにたおれました。
そしたら制服のスカートをめくり上げて、パンツの中に手を入れて、
チンコの中に指を入れて・・・「クチュクチュクチュ」って。わざといやらしい音を立てて・・・。
そして彼氏はこういいました。「服脱いで」と。
私はビックリしたので「え?」と聞き返しました。私はもちろんエッチはやったことはあります。その彼氏と。ほかの人ともやった事はありますが・・・(藁
そして、彼氏は「オレ、脱いでる所とか写メとるの好きだから」っていいました。
私は納得して、自分でぬぎはじめました。
そして彼氏は私の体で遊び始めました。チンコに指を入れてクチュクチュいやらしい音を出したり、胸をもみもみしたり、なめたり。
そして彼氏は写メもとりまくってました。私のチンコの穴。胸。全体など。
そして彼氏は我慢できなくなったらしく、こういいました。
「オレのズボン脱がせて」と。私は喜んで脱がしました。
ズボンのチャックを開けて、ズボンを下ろして、ガラパンを下ろして。
そしたら彼氏のもうすでに大きくなっているあそこが出てきました。
そして私は彼氏をベッドに寝かし、私はうえにのぼって彼氏のあそこと私のチンコを押さえつけるようにしながら写メをとりました。
とても気持ちよかったです。
この写メを見たい人はこのスレを8箇所に張ってください。
そしたら[               ]←ここにアドレスが出てきます。
それをクリックすると、彼がとった写メすべてのってます。
私がとった写メも、動画も載せてます。
動画はわかりにくいようにしています。
「☆」をクリックすると動画がみれます。
このスレを1箇所にも張らなかった人は、不幸がおこります。
大好きな人が一年以上学校に来なかったり。
嫌いな人があなたの席の隣になったり。
親戚が亡くなったり



323 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/08(水) 00:20:30 ID:jQITqIOD]
突っ込むばかりがエロ要素じゃないってことだよ
素晴らしいよ神

324 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/08(水) 01:39:56 ID:Q0JkT0HQ]
憑き物が落ちたような気分だ。
羽 山君とお幸せに。


で、この後さらにどんな事態が待ち受けているのだろう・・・

325 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/08(水) 02:06:00 ID:7LW3fNPr]
よかった…
いろんな意味でよかった!

326 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/11(土) 13:44:02 ID:zZpfPxGO]
エロ要素少なめでもこれスゲェ好きなんだが

327 名前:名無しさん@ピンキー [2006/11/14(火) 10:14:48 ID:wqt9dt/C]
営業で来る女の子なんかに

「ノーパンで来たら契約する」
なんて言ったりしたツワモノ
いませんか?

328 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/14(火) 11:57:26 ID:Yrh3SP9/]
タイーホされるお

329 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/14(火) 12:45:33 ID:BQQaHajp]
>>327
妄想の世界ではいいかもしれない
現実には危険
相手が怖い女性団体とかの団員だったらヤバいことになるよ

集団が会社へやってきて実名で抗議活動
生きていけなくなります

330 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/14(火) 13:10:54 ID:azR1xV8O]
このスレから逮捕者がでたら
記念カキコとか来るのかなあ

331 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/14(火) 13:13:57 ID:azR1xV8O]
tokyo.cool.ne.jp/myuyan/satomi52.html
コウシン キテタ



332 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/16(木) 07:59:30 ID:EQz+4+dT]
派遣、アルバイト女性を狙う テレビ業界の悪質セクハラ体質
news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2723387/detail?rd

アナウンサーもの おながい

333 名前:名無しさん@ピンキー [2006/11/16(木) 15:12:05 ID:i4UidZjW]
ノーパン部活少女
ノーパン制服美少女

334 名前:名無しさん@ピンキー [2006/11/16(木) 20:25:43 ID:/p/wwGQ5]
いぬかみっ!でのノーパンねたがすばらしかった!舞ーHIMEといい深夜放送アニメは要チェックだぜ!!

335 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/16(木) 20:36:53 ID:0K1r0Koe]
>>334
何話?

336 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/16(木) 23:10:14 ID:ZJMgNIhK]
20話 白布に想いをっ!

337 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/17(金) 16:18:19 ID:mGnKoHtf]
>>336
素晴らしい

338 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/17(金) 16:27:12 ID:lQ8hqrJ2]
もう一つの方は
 舞ーHIME 第四話「風のイ・タ・ズ・ラ」
であってる?

339 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/17(金) 21:44:37 ID:lASi/vB+]
>>338
ご明察。あれこそはノーパン羞恥の極みだった。

340 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/18(土) 09:03:21 ID:Bz2ODfqQ]
玖我なつきはいいな!

341 名前:名無しさん@ピンキー [2006/11/18(土) 09:35:15 ID:yClBPmT3]
この変態どもめっ!!



342 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/18(土) 13:28:16 ID:y9p4QW3V]
>>341
ありがとう。最高の(ry

343 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/19(日) 01:15:30 ID:6pW0rOkS]
今日初めてこのスレを発見し、一気に最初から読みあさった。
何このネ申スレ・・・
たった一人の職人さんだけでここまで盛り上がるか?

344 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/19(日) 08:10:31 ID:wLAGGLms]
職人だけじゃなく、多くの変態たちがいてこそのスレだ

345 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/20(月) 03:38:52 ID:we4txc1N]
返す返すも、1スレ目にあったノーパン学園(勝手に命名)が荒らしの所為で
うやむやになったのが悔やまれる。(あんぐらいブッ飛んでるのも好きだったのに)

346 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/11/20(月) 15:34:37 ID:IKGztgEX]
また日が開いてしまいました。
しかも困ったことに、内容が……。
異論反論覚悟で投下したいと思います。

347 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/20(月) 15:35:24 ID:IKGztgEX]
──夕菜ちゃん、夕菜ちゃん……ごめんね夕菜ちゃん。
 竜介はずきずきと痛む喉と側頭部をさすりながら廊下を歩いていた。
 夕菜を追って教室へ戻り、いきなり彼女が抱きついてきた時には、驚いて抱きとめて
あげる事ができなかった──と、竜介は思っている。
 自分の身体に弾かれて倒れてしまった夕菜を、抱き起こしてあげようと思った。
 しかし、クラスメイトたちは下品な言葉で自分たちをからかった。
──あいつらっ、あいつら許せない!
 彼女の大きな膨らみを揉んだのは、あの下品な連中に、彼女と自分の仲を見せ付けて
やろうと思ったからだった。彼女の乳房に触れるのは、自分にだけ許されている事だ。
夕菜は自分のものなのだと認識付けるには、ああするのが一番だったのだ。
 竜介は、自分が何をし、どう見られたのかを解かっていない。竜介は自分と夕菜とが、
固い絆で結ばれていると、主従関係にあるのだと勝手に思い込んでいる。
 いや、思い込みなどではなく、彼の世界には事実として刻まれていた。
──あいつ! 羽山の奴ッ!
 恭也に蹴り飛ばされ、夕菜は窮地を救われた。
 だが、竜介の中での恭也は、自分と夕菜を暴力で引き裂こうとする、最低で凶暴な極
悪人という事になってしまっている。
──でも大丈夫だよ夕菜ちゃん。僕が守ってあげるからね……。
 竜介は意識を取り戻すと、おもむろに立ち上がり足元に落ちたビニール袋から、クラス
メイトに頼まれたパンとドリンクだけ取り出し、ロッカーの後に置いて、何も言わずに
教室を出たのだった。
 自分の分だけビニール袋に残し、左手にぶら下げて廊下を足早に歩いている。
──夕菜ちゃん、どこへ行ったのかなぁ。
 ふと嫌な気配を感じて顔を上げると、廊下の壁に寄りかかっていた恭也と眼が合った。
──あいつ! なんで、こんなとこに……。
 竜介は濁った眼で睨みつける。
 しかし、恭也はおどけたように眼を丸くして、すぐにいつも通りの涼しい顔に戻った。
──気取りやがって……。
 恭也の口元に湛えられた笑みが、竜介の心を抉る。
──あいつ……いつも僕を小馬鹿にしたような眼で見やがって!
 鼻息荒く恭也の方へと歩いてゆく。
 たまたま自分の進行方向に恭也がいるというだけなのではあるが、竜介はこれから彼と
殴り合いの喧嘩でも始めるような気分になってしまっている。
 さっき自分を蹴り飛ばしたのが、恭也である事は認識している。あの時は油断していた
から喰らってしまったが、今はそうはいかないぞ、と意気込む。
 澄ました顔をしていられるのも今のうちだと、両の拳をぎゅっと握り締める。
──こいつで不意をついて……。
 まず、左手にぶら下げた、パンとドリンクの入ったビニール袋で牽制する。そっちに
気を取られた隙に右の鉄拳を叩き込む──
 竜介は体格は良いのだが、喧嘩はからっきしだった。小学生の頃には地域の柔道教室に
通っていたが、格闘技をやっているからと言って喧嘩に勝てるわけでもない。そもそも、
彼は下級生にすら遅れをとる程度の技量しかなかったのだ。
 取っ組み合いになれば体格を活かして抑え付ける事も可能だろうが、まともに喧嘩した
経験も無く、頑丈なだけで俊敏性に欠ける彼が、恭也に敵うはずもない。
──でも、学校で喧嘩はダメだな……。
 あと数歩で恭也に手が届くというところになって、竜介は拳を緩めた。
──いつかきっと落とし前はつけるからな!
 竜介本人は、理性を働かせて殴りかかるのを抑えたつもりになっているのだが──
 実際はそうではなかった。
 恭也は、左手を学生ズボンのポケットに突っ込んで、右手はだらりと下げたまま、壁に
もたれていた。口元に僅かに笑みを浮かべ、緊張感の欠片も感じられない姿だというのに、
一分の隙も無い──
 つまり、竜介は本能的に悟ったのだ。
 自分では刃が立たないと──
 そういう意味では、竜介は格闘者としての才能があるのかもしれない。自分より強い奴
を嗅ぎ分ける力を備えていると言えるのだから。
 ともかく竜介は戦意を喪失し、恭也から眼を逸らして廊下を進んだ。
 恭也の前を通り過ぎ、今頃になって、これからどこへ向かおうかと考える。
 竜介は行き先を考えていなかった。教室にいるのは我慢ができず、しかし食事は摂らね
ばならないのでパンとドリンクだけは持って、無意識のうちに教室を出たのだった。

348 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/20(月) 15:36:40 ID:IKGztgEX]
──図書室はダメだなぁ。
 飲食物の持ち込みが禁じられている事を思い出す。
──屋上にしようかな……。
 屋上なら滅多に人が来ない。
 校舎の屋上へ抜ける金属製の重たい扉には、大仰な南京錠が掛けられ、普段は生徒の立ち
入りが禁止されている。
 ここで彼が屋上と意識しているのは、屋上の手前の小さなスペースの事だった。
 屋上へ続く階段を登りきると、数メートル四方の小部屋のような空間があり、屋上自体が
立ち入り禁止のため、生徒も教師もほとんど寄り付かない場所になっていた。
 竜介はそこで独りで昼食を摂ろうと考えたのだが──
「なぁ、どこ行くの?」
──ッ!?
 すぐ後から聞こえたのは、恭也の声だった。
 足を止めて振り返ると、竜介の嫌いなあの微笑があった。
「俺も一緒していい?」
──なんでこいつが……なんの用なんだ?
 全く恭也の意図が掴めず、竜介はただ立ち尽くす。
「どっかで飯食うんだろ?」
 竜介の下げたビニール袋を指差す。
「ど、ど、どこだって、いいだろ」
 どもりながら言って、前を向いて歩き出した。
 恭也も、竜介に並んで歩き出す。
「まぁ、どこでもいいんだけど」
 そう言って、ふふっと笑う。
──お前、なんなんだよぉ!
 怒鳴りつけたい衝動に駆られるが、それを抑え込む。本能的に──
 竜介が無言で歩く。
 恭也も無言で歩く。
 廊下にはそれほど人がいなかったが、二人の名はクラスだけでなく、学年全体にも知れ
渡っている──もちろん正反対のラベリングを施され──この異色の取り合わせは、
擦れ違う全員の眼を奪った。
 竜介がやや先導し、斜め後に恭也が従う形になっている。しかし、恭也に促されておず
おずと先を行く竜介──と見る者の方が多かった事だろう。
──なんなんだ、なんなんだよまったく!
 竜介の思考は、ずっとその繰り返しだった。それ以外には何も浮かばない。
 それでも彼は歩を進め、廊下を折れて階段を登った。
 二人はそのまま竜介の目的地へと辿り着いてしまう。
「ここで食うのか。暑くない?」
 恭也は、暑いと感じているようには見えない顔で言った。
 たしかにここは、空調の吹き出し口が取り付けられていないし、いくつかの小さな窓は
全て填め殺しで、屋上へ抜けるドアに無骨な南京錠が掛けられている。
 その所為か、校舎の中では一番高いここは、階段を通して全ての熱気が集まってくる
ような気にさせられる場所だった。
「あ、暑いなら、きょ、教室戻ればいいだろ」
 竜介はその壁際にどっかと腰を下ろし、胡座をかいてビニール袋からパンとドリンクを
がさがさと取り出した。
「けっこういいね、ここ」
「……な、何が?」
 自分で言っておきながら恭也は竜介の問いに答えず、階段の手すりにもたれて階下を
覗き込んでいる。
──なんだよ、用が無いならさっさと帰れよ。
 恭也の態度に苛立ちを隠せず、包みを乱暴に引き千切り、パンをがぶりと頬張った。
 水気の少ない菓子パンに咽ながら、コーヒー牛乳のパックにストローを突き刺す。
「それ、美味い?」
 恭也が後を見もせずに言う。
「……べ、べ、別に。普通だけど」
「ふうん」
──なんだよ! 興味あるのか無いのかどっちなんだよ、はっきりしろよ!
 その台詞を面白おかしく表現できたのなら、竜介ももっと周りと打ち解ける事ができる
のかもしれない。

349 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/20(月) 15:38:37 ID:IKGztgEX]
 恭也はまるでうしろが見えていたかのように、竜介が最後の一口を飲み込むのと同時に、
振り向いた。
「ご馳走様は?」
 すっとぼけたような口調でそんな事を言う。
「食べる前は頂きます、喰ったらご馳走様だろ?」
「……う、うるさいな」
「俺も毎回言うわけじゃないけどさ」
──だからなんなんだよ、何が言いたいんだ!
 こんなに苛々した食事は久しぶりだ、と言ってやろうと思った時だった。
「リュウは、なんであんな事したの?」
「は……?」
 恭也は手すりに背を預け、竜介を真っ直ぐに見る。
「夕菜を、押し倒したじゃん?」
──夕菜……夕菜だって? 僕だってちゃんづけなのに、呼び捨てか!?
 ちゃんづけは竜介の頭の中だけに過ぎないのだが、そんな事は彼にとっては些細だ。
恭也が夕菜と呼び捨てにした事は、極めて重大で我慢ならない。
 彼女と親しくしていいのは自分だけなのだ。女子たちが呼び捨てにするのはまだ許せるが、
他の男、特に恭也のような女誑しが呼び捨てにするなんて、自分を差し置いて夕菜と呼び
捨てるだなんてのは、絶対にあってはならない事なのに──
 瞬間湯沸かし機のごとくに沸騰した頭だが、しかし別の考えも浮かんでくる。
──押し倒した? 僕が? 夕菜ちゃんを?
 あれは自分が抱き留めてあげられなくて、彼女が倒れたしまったのであって、押し倒した
わけではない。その後の事を言っているのであれば、もっと簡単だ。
 二人の絆をクラスの連中に知らしめるため──押し倒したなどと人聞きの悪い言い方を
するこいつは──
「は、は、羽山君は、う、う、羨ましいの?」
「どうかな」
──そうだ、羨ましいんだろう? そうだよ、そうに違いない!
 竜介は残っていたコーヒー牛乳をずずっと吸い上げて飲み干すと、にやりと笑った。
 柔らかな乳房の感触が甦る。剥き出しになった夕菜の二本の白い脚が──
「む、胸、や、や、柔らかくて……す、スカート捲れてただろ? あ、脚だって、きき、き、
綺麗なんだぞ」
 虚勢を張った竜介の台詞に、恭也は眉をぴくりと動かした。
「ふうん? スカート捲れてたもんな。見えた?」
「え? あ、あ、当たり前だよ」
 夕菜ちゃんは僕だけにスカートの中を見せてくれたんだ──と。
「し、白、白くて、可愛いかったぞ、ゆ、夕菜ちゃんの、ぱ、ぱ、パンティ──」
 竜介のどろどろと濁った眼を、恭也は射抜くように見据えている。
「ま、真っ白で、あの、あ、あの毛、毛だって、す、透けてたんだ」
 スカートが捲れ上がり、竜介にだけ見えた純白の下着。そこにうっすらと透けた夕菜の
秘密の茂み──
 眉を顰めて、毛? と訊き返した恭也に、勝ち誇って踏ん反り返る。
「け、け、毛だよ、ま、まん──い、陰毛、知らないのかい?」
 知ってるけどさ、と答えた恭也の声は震えていた。
──どうだ、お前なんて一生かかっても見る事は叶わないんだぞ!
 竜介の得意げな顔に、だが、恭也は複雑な笑みで応えた。
──なんだよ、なんだその顔は?
「ふうん、なるほどね」
 恭也は納得したように、眼を閉じて溜め息をついた。
「想定外って奴だけど、面白いな。それに、そんなイメージなのか」
──想定外? 面白い? イメージ? 何を言ってるんだこいつは?。
「なんか、リュウって、思ってたより凄い奴なんだな」
──褒めて取り入ろうって考えか? 悔しくないのか? もう降参か?
 恭也は、よっ、と声に出して、跳ねるように手摺りから離れた。
「夕菜のあそこ、つるつるで可愛いよな」
──ッ!? なんだよ、なんだそれっ!
 竜介の世界がぐらりと揺らぐ。
 自分が世界の中心から追い出されたような気になってしまう。
「つつ、つ、つ──ッ!」
 竜介は自分でも驚くほど俊敏に立ち上がり、恭也の二の腕を掴んでいた。

350 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/20(月) 15:39:20 ID:IKGztgEX]
 恭也の左腕を握り締め、鬼のような形相で睨みつける。
 横を向いた身体で、顔だけを竜介に向けた恭也の口元には、平時と変わらぬ僅かな笑みが
浮かんでいた。
 しかし竜介には、それが自分を嘲り、蔑んでいるように見えてしまう。
「な、な、なんだっ、お、お前っ、なな、な、何が言いたいんだよっ!」
「何って、本当の事だよ」
 竜介の怒声を、恭也はさらりと受け流す。まるで相手にしていないように。
 つるつるで可愛いよな──恭也の台詞がフィードバックする。
「つ、つ、つつ、つる……」
 舌が縺れて言葉にならない。
 ただでさえ喋るのが苦手な竜介は、恭也の言葉に思考を掻き乱されてまともに話せない。
「つるつるがどうした?」
「つ、つっ、つるって──」
 恭也の身体が揺れた──と思う間も無く、彼の自由な右手が翻り、二の腕を掴んでいた
竜介の右手首を捻り上げていた。
「痛ッ!」
 それほど力を篭めたようにも見えないのに、手首を内回りに捻られた竜介の身体が、痛み
から逃れようと、くるりと回ってしまう。
 体格差をものともせず、流れるような動作を一呼吸で終えた恭也は、苦痛に歪んだ竜介と
は対照的に、顔色ひとつ変えていない。
「そんな強く握ったら痛いだろ?」
 そうと思えない口調で、完全に背中を見せてしまった竜介を解放する。
──くそ! くそっ、くそくそくそくそくそぉっ!
 竜介は、よろめいた身体を壁に手を突いて支えた。
 肩越しに恭也を睨みつけるが、恭也は僅かな笑みで応える。
「もう一度よく思い出せよ」
「な、なにを──」
「夕菜のスカートの中身だよ」
 竜介の思考が停止する。
──こいつは、何を……。
 恭也の言葉が理解できない。理解不能の焦燥に駆られて冷や汗がにじむ。
「下着は穿いてたのか?」
「し、下着──」
「本当に透けてたのか?」
 教室でぶつかった夕菜は、竜介の前で、膝を立てたまま尻餅をついてしまった。白い
太腿が露になって、捲れ上がったスカートは──
「あ、あ、当たり前だ! 当たり前だろっ!」
「いいか、リュウ。もう一度だ」
 がなり立てる竜介をなだめるように、恭也は穏やかな声を投げかける。
「もう一度、落ち着いて、ようく思い出すんだ」
 何度思い出しても変わらない。夕菜のスカートからは、白い下着が見えていたのだ。
「下着は見えたのか?」
 白い布が、そこを覆っていた。夕菜のそこは、白い布に覆われ──
「ほんとに、毛が透けてたのか?」
 恭也の声が、竜介の意識に染み込んでゆく。
 竜介の世界に亀裂が走る──
 白い布は、そこを覆ってはいたが、ショーツのように密着していたわけではなかった。
皺を作ってそこに被さっているだけで──
「それは、本当にお前の眼に映ったものなのか?」
──違う……違うんだ。
 自分の眼が捉えた光景が、今ははっきりと竜介の脳裏に甦っていた。
 彼の世界が、音を立てて崩れ始めた。
「あ、あ、あっ、あれは……」
 白い布地は確かに見た。
 だがそれは──ブラウスの裾だ。
 ブラウスの裾が、夕菜のスカートの裾から覗いていただけなのだ。
 彼女のしなやかな太腿の間から、それが顔を出していただけで──
 竜介は俯いた。
「せ、せ、制服の、す、裾だよ……」
 恭也の眼が、ふっと緩んだ。

351 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/20(月) 15:43:33 ID:IKGztgEX]
「そっか、裾だったのか」
 恭也の言葉で、それを改めて認識する。
──僕は、見てなかった……夕菜ちゃんのパンティーを、見てなかったんだ。
 自分の眼の前で尻餅をついてしまった夕菜は、白い太腿を剥き出しにしていた。眼を
奪われた竜介は、スカートから覗くブラウスの裾を、ショーツだと勘違いしたのだ。
 しかも、皺が寄って陰になったそこに、夕菜の陰毛を幻視してもいた。
 それどころか、彼女の脚の付け根の映像が、竜介の記憶には存在しなかったのだ。
 全身の力が抜けてしまうようだった。ひどく心細い。
 世界の中心から追い出され、虚空を漂っているような寂然とした気持ちだった。
「リュウは、見なかったんだな」
 恭也はいつの間にか、彼の横の壁に背を預けていた。
 うん、と頷き、竜介も壁にもたれた。
「み、見えなかったよ」
 竜介は恭也を嫌っていたはずなのに──どういうわけか、今は彼が隣にいる事で、
寂しさが和らぐような気になっていた。
「残念だったな」
「はは……そ、そうかもね」
 力無く笑った。
 やはりこいつには勝てない、と竜介は思う。
──いや、最初から勝負になるわけがないんだ……。
 横目で恭也の顔を見ると、彼も竜介を見ていた。
 全てを見抜くような彼の視線から、眼を逸らしてしまう。
「リュウは、おっぱい好き?」
 ぶっと吹き出してしまう。
 いきなり何を言い出すんだと、表情の読めない彼の顔をまじまじと見てしまう。
「夕菜のおっぱい、すごいよな」
「ゆ、ゆ……か、柏原さんの……」
「夕菜ちゃん、って言えばいいじゃん。さっきは言ってたろ?」
 慌てて顔を伏せたが、視線は痛いほどに感じられる。
「俺、実は巨乳好きなんだよ」
「えっ……」
「好きなんだろ、夕菜の事?」
「──ッ!」
「やっぱ、巨乳は良いよな」
「な、なっ、そ、そんな事で、僕はっ──」
「最初はそんなもんでいいじゃん。切欠はそんなんだろ? 見た目が好みとか、喋り方が
可愛いとか、ちょっと優しくされて嬉しかったとか、さ」
 そういうものなのだろうと、竜介も思う。
 最初に興味を持ったのは、彼女の胸だった。規格外の乳房に触れてみたいと思った。
日が経つにつれ、どうやら彼女は自分と似た境遇なのだと理解できるようになり、仲間
意識を覚え始めた。そして、日々妄想に耽り、彼女への想いを強めていったのだ。
──妄想、なんだよな……。
 それは彼のたったひとつの拠り所だった。
 自分の世界を創り上げ、そこに心を留め置く事で、辛い外界から守っていたのだ。
「まだ痛むか?」
 言われて思い出す。教室で蹴られた痛みは、まだ少し残っていた。
「謝らないからな」
「うん……」
 今の竜介には、自分が何をしたのか理解できている。
 夕菜は嫌がっていた。恐怖に怯えていた。謝るのは自分の方だ。
「たぶんリュウはさ、どっかでギアが噛み合わなくなってただけなんだろうな」
 責めるでもなく、慰めるでもない淡々とした口調で言い、俺にもそういう時期があった
からな、と恭也は笑った。
 彼がそんな事を自分に言う理由が解からず、竜介は何も応えられずに床を見続けた。
 不意に、恭也はもたれていた壁から身体を起こした。
 竜介の肩に手を乗せ、顔を上げた彼の顔を正面から見据える。
「ま、あの胸から、つるつるなのは想像できないよなぁ」
 不敵に笑って、初めて歯を見せた。真っ白で、濁りの無い歯だった。
 竜介は、敗北を悟った。
 と同時に、どこか安らかな気持ちに包まれているのも感じていた。



352 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/11/20(月) 15:45:11 ID:IKGztgEX]
というわけで今回は以上です。
エロ要素もノーパン要素も皆無で……すみません。

353 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/20(月) 16:37:20 ID:1SvNNKpR]
ムキー!
この我慢汁をどうしてくれるんだ。
次まぁだぁ〜まぁだぁ〜チンチン
待ってるよ〜チンチン

354 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/20(月) 17:34:15 ID:XlCKGjrh]
恭ちゃん男前だな……
惚れたぜ

355 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/20(月) 23:17:13 ID:6lilnOfE]
なんていうか大人だな

ゆっくり自分が書きたいものを書いてください。

356 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/21(火) 17:00:00 ID:M8wpVZB1]
>>352
待ってたよ。
羽山はちょっとスーパーマンすぎるかな?とも思ってたんだけど
今回のエピソードで俄然親近感わいたよ。
まんこ見られたか知るためにあんなまわりくどい聞き方したり、独占欲丸出しだし
可愛いじゃないかwちゃんと夕菜の事好きみたいで安心したよ。
今後の夕菜と羽山の絡みが楽しみだ。中の人ガンガレ。

357 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/11/23(木) 13:14:12 ID:Wiee+zf5]
こんにちは。皆様コメントありがとうございます。
ひとまとまり書けたので投下します。
今回は深雪タンのお話。エロ要素はは相変わらず……(´・ω・`)


358 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/23(木) 13:16:41 ID:Wiee+zf5]
「おっ、羽山どうしたん?」
 男子の声に、深雪は顔を上げた。
 あと少しで弁当を食べ終えようという時、恭也が教室に戻ってきた。
 深雪が顔を向けた時にはもう、恭也は深雪の眼を捉えていた。
「深雪、ちょっといい?」
「え?」
 突然声をかけられ、深雪は戸惑ってしまう。
 勘の鋭い彼の事だ。夕菜の下着を自分たちが隠したのだと気づき、追及しようというの
かもしれないと、不安に駆られる。
 それとも──自分の秘密の趣味を知られてしまったのだろうかとも思う。
「まだ途中か。食った後で良いよ。俺も途中だしさ」
 え、そう? という、呆けたような深雪の返事に恭也は苦笑する。
「さっさと食えよ。込み入った話になるかもしれないし」
 深雪は、心臓を鷲掴みにされたようだった。
 そんな彼女を気にも留めない様子で、恭也は自分の席に戻ってしまう。
「お前どこ行ってたんだよ?」
「トイレだよ」
「なんだ、うんこか」
「そんなとこ」
 男子の台詞は下品だったが、恭也は意に介さず、食べかけの弁当を突付き始めた。
「ねぇ、ちょっと深雪。今のって……」
 隣にいた楠井舞香に囁かれ、深雪は我に返った。
「羽山君、気づいてるんじゃ……」
 彼女もそう思っていたのかと、いっそう不安になる。
「何も言わなきゃ判んないって」
 しかし、机を合わせている脇田千穂は、さらりとそう言った。
 舞香は、小柄で可愛らしい顔立ちと幼い体型の所為か、小学生に間違われる事も多い。
甘え上手で男子にも人気が高い。だが、彼女こそが、深雪に夕菜へのマイナスイメージを
植え付けた張本人だ。
 一方の千穂は、すらりと背が高く、凛とした美貌の持ち主で、アイドル顔負けの美少女
だった。何事もはっきりと自分の意見を出すタイプで発言力があり、彼女を敵に回す事は、
クラスメイト全てを敵に回すのに等しい。
 千穂は深雪とは小学生の頃からの付き合いで、家が近所だったのもあって、よく一緒に
遊んでいた。舞香とは中学になってから知り合ったのだが、同じテニス部で席も近かった
ため、よく喋るようになり、入学してひと月もする頃には、三人はグループを形作って、
夕菜に対する攻撃をするようになった。
「うん……そうだよね」
 深雪は千穂の言葉に頷いたが、どうにも調子が狂っているのを自覚していた。
──あんな姿を見ちゃったから?
 脚を広げて尻餅をついた夕菜の姿が頭をよぎる。はっきりとは判らなかったが、夕菜は
竜介に秘処を見られてしまったかもしれないのだ。
 深雪があんな提案をしなければ、夕菜はそんな目に合わなかったかもしれない。深雪は
夕菜の事を嫌っているが、どうしてなのかと問われれば、答えに詰まってしまう。
 舞香がそう言っていたから。千穂もああいう子は気に入らないと言ったから──
 その程度なのだ。出所は、深雪自身の意思ではない。
 中学生になり、初めてのクラスに幼馴染みの千穂がいたのは嬉しかった。クラスの大半
が知らない顔で心細いところに、仲の良い千穂がいてくれたのは、えもいわれぬ安堵感を
与えてくれた。
 千穂がテニス部に入るというので、自分もそうした。一年生は基礎練習と玉拾い、用具
の手入ればかりで、部活のメニューは大して面白くもなかったが、部員たちとのお喋りは
楽しかった。
 ちっちゃくて可愛らしいクラスメイト、舞香とも部活を通じて仲良くなった。
 舞香は、深雪の斜め前の席の夕菜の事を嫌っていた。確かに、地味でおとなしく、少々
とっつき難い子だとは思っていたが、胸の大きな暗い子、という程度の認識だった。
 舞香を中心に夕菜への風当たりが強まり、深雪もなんとなく一緒に夕菜を疎外している
うちに、夕菜を疎む気持ちが大きくなっていった。
 千穂がクラスでの発言力を高めていくのも手伝って、深雪たち三人は夕菜虐めの急先鋒
のような立ち位置になっていた。
 深雪の席が今の位置──教室の後の出入り口の近く、千穂の斜め後ろ──になった
のは、ついひと月ほど前であり、千穂の影響力の強さを表していた。

359 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/23(木) 13:18:23 ID:Wiee+zf5]
──別に、あの子がどうなろうが、私の知った事じゃ……。
 夕菜の最初の印象は、自分より胸が大きい、というものだった。
 中学に上がったばかりとしては、深雪もかなり目立つサイズだ。
 深雪も小学生時代には、その膨らみをからかわれる事もあったが、夕菜と違って深雪は
大きな胸に嫌悪感を抱いた事は無い。むしろその逆で、表に出す事はなかったが、同級生
よりも大きい事に優越感を持ってもいた。
 それに、そばにはいつも千穂がいたため、虐められるという事が全く無かった。
 深雪は、虐げられる側に回った事が無い。からかわれる事ぐらいはあっても、夕菜の
ように、クラス中からそっぽを向かれるような状況は経験していないのだ。
 故に、夕菜の気持ちなど考える事も無く、彼女に辛く当たる事に抵抗が無かった。
──でも、やっぱり……。
 あんな場面を目の当たりにしてしまって、そんな彼女も良心の呵責を覚える。
 竜介の行動は予測も理解もできなかったが、自分が発端となったようなものなのだと
思うと、あんな案を口にしなければ良かったと後悔する。
 と同時に、夕菜に同情している自分を意識し、複雑にもなる。
 下着を着けていない夕菜と、人に言えない趣味を持つ自分とが重なり合う。
 家の近くのごく短い距離を歩く間だけの、誰にも言えない秘密の趣味──
 一度だけ、独りで遠出した時に試した事もあった。
 今年のゴールデンウィークのある日、千穂と出かける予定だった深雪は、彼女が急な
用事でキャンセルになってしまったおかげで、しおれた気持ちを持て余していた。
 舞香を始め、親しい友人は軒並み家族で旅行中なのを知っていたし、兄も学生時代の
友人と集まるとかで留守だった。
 家にいてもつまらないと、深雪は独りで駅に向かった。繁華街方面に向かうつもり
だったが、なんとなく、反対方面行きの各駅停車に乗ってみた。
 がらがらの座席に腰を下ろし、バッグを膝の上に置いてぼーっと揺られていると、
通路を挟んで反対側に座っていた大学生ぐらいの青年の視線に気づいた。
 彼は携帯電話を弄びながら、ちらちらと深雪に眼を向けていた。
 それもそのはず、その時穿いていたスカートは、深雪の手持ちで一番短く、バッグが
無ければ容易く下着を拝めるほどだったのだ。Tシャツにパーカーを羽織っただけの
上半身も、中学生になったばかりにしては大きい彼女の胸が目立っていた。
 若い男が彼女の剥き出しの健康的な膝と、幼いながらもふくよかな膨らみに眼を奪われ
てしまったのもむべなるかな──
 深雪は、男の視線を気にすれば気にするほど、危険な想いに駆られてしまった。
 脚を開けば見られてしまうだろうか。バッグをどければ見えてしまうだろうか。見られ
たらどうなってしまうのだろうか──兄の成人向け雑誌で見た、いくつもの淫らな場面が
浮かび上がった。
 それらをかろうじて押し留め、平静を装っていた。
 窓の外は、高層建築と低層住宅のひしめくごみごみした住宅街から、次第にのどかな
郊外の景色へと移ろっていった。
 やがて青年は電車を降り、その車両にいるのは、深雪から離れたところにいる数人だけ
となった。
 深雪は、少しだけ脚を広げた。さっきまでいた青年に見られているところを、その先
までもを想像し──官能的な昂ぶりに支配され、湧き上がる熱を抑えられなくなった。
 家を出てからおよそ一時間の後、深雪は、一度も降りた事の無い小さな駅のホームに
立っていた。
 改札口の手前にあったトイレに入り、ショーツを下ろした。そこは驚くほどに潤んで
いて、淡いピンクの生地に大きな染みを作っていた。
 深雪は高鳴る鼓動を聴きながら、ショーツを脱いでしまった。
 股下が十センチ程度しかないデニムのスカートだ。ローライズのヒップハングだから、
下ろして丈を稼ぐ事もできない。
 そんなあられもない姿で、深雪は知らない町を歩いた。
 駅前商店街だというのに人影は疎らで、所々に畑が見えたりもする小さな町は、深雪の
育った都心に近いごみごみした街とは大違いだった。祖父が暮らす山間の田舎町とも違い、
異界にでも迷い込んだような気にさせられた。
 深雪は羞恥に頬を染め、濡れた秘処をさらに潤ませて、ふらふらと彷徨った。
 一度、ふらつく脚が縺れて転びそうになった時は、心臓が飛び出るような思いだった。
 見慣れたファーストフードを見つけ、安心したようながっかりしたような気分でポテト
とコーラを注文した。
 それを口にするより先に、深雪はトイレに向かった。
 呆れるほどに濡れそぼった秘処に触れると、あっけなく達してしまったのを憶えている。

360 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/23(木) 13:20:11 ID:Wiee+zf5]
 深雪はそんな性癖を、一番の親友である千穂にも話していない。その切欠を作ったとも
言える兄にだって話した事は無い。話せるはずも無い。自分一人だけの真の秘密なのだ。
 恭也にだって知られたくない──
 幼い頃を知っている恭也にだって、こんな自分を知られたいとは思わない。
──あたしが、こんなエッチな事してるなんてばれたら……。
 どう思われるのだろうと、不安になる。
──きっと軽蔑されちゃうよね……。
 いや、既に軽蔑されているのかもしれない。
 恭也は勘が良い。洞察力が鋭い。きっと──
 舞香の言葉が甦ってきた。
──恭ちゃん、気づいてるのかなぁ。
 バッグの中の夕菜の下着──
 男子の中には夕菜の身体に触れたりするような者もいたし、彼女らも多少はそういった
嫌がらせをした事もあったが、中心になっていたのは、いかにもこの年頃の少女らしい、
精神的な、社会的な虐めだった。
 いや、虐めなんてものはどんな年代であっても大した差は無いのだろうが──
──もし、気づいてたら……どうしよう。
 今現在、深雪たちのグループは千穂のおかげでクラスの主流派であり、彼女らに敵対
しようとする者は誰もいない。
 だが、千穂に対抗しうる存在を敵に回したとなると、話は別だ──
 向かいに座った千穂は、空になった弁当箱を包み直していた。
 猫をモチーフにしたキャラクターの描かれたハンカチは、凛としたイメージの千穂とは
結び付き難いが、彼女が幼い頃からそれに目が無いのを、深雪はよく知っていた。
 千穂はいつもと変わらず、悠然とした佇まいをしている。
 なのに──深雪は、どこか違和感を覚える。
 よく見れば、千穂の眼はほんの僅かに潤んでいる。
──千穂……動揺してる?
 原因が、さっきの恭也の台詞にある事は考えるまでも無かった。
 千穂もまた、恭也が夕菜を二度も庇ったのを目にしているのだ。
 恭也はあまり表に出ないタイプだが、男女どちらからも一目置かれている。中学生とは
思えぬ泰然とした雰囲気は、きりっとしていて物怖じしない千穂とも通ずるものがあるが、
あまり人と連まないところは大きく違っていた。
 恭也にもそれなりに仲の良い友人はいるが、千穂と深雪のように、べったりというわけ
ではない。男女の違いもあるだろうが、群れるのが苦手という彼の性質でもある。
 一匹狼と言ったら大袈裟だろうが、それでいて、周りとも上手くやってゆける。
 それは彼の心の強さであり、人望の高さも物語っていた。
──恭ちゃんが、もし……。
 夕菜の側に立ったのだとしたら、深雪たちに宣戦布告したのならば──
 千穂は、自分たちが砂上の楼閣にいるも同然だと理解している。
 舞香もまた、無意識的に悟っていたし、深雪も漠然とした恐れを抱いていた。
 だからこそ、舞香は恭也の態度に不安を表し、千穂も動揺しているのだ。
──恭ちゃん、やっぱりあの子の事が……。
 認めたくない。たとえクラス全員を敵に回しても、それだけは認めたくない。
 自分の立場がどうなろうと、恭也の心を夕菜に奪われてしまうのだけは我慢できない。
 しかし、深雪自身にも解かっていた。
 彼の心が、夕菜へと向いている事を──
「そ、そういえばさっ、昨日のあれ見た?」
 唐突に、舞香が不自然なほどに明るい声を上げた。
「あっ、見た見た!」
 深雪は心の中で感謝し、彼女に倣ってわざとらしいくらいに明るく応えた。
 舞香のこういうところに深雪は時々感心する。いつもはきゃいきゃいと騒がしいだけに
見えるが、話題の転換が巧いというか、空気を入れ換えるのが巧いというか──
 場を読む力に長けているのだろう。それは深雪には真似できない事だった。
 千穂もまた、舞香のそんなところに感謝していた。
 三人は、鼻先の問題から眼を逸らそうと、テレビドラマの話題に花を咲かせた。
 深雪は直前までの暗澹とした気分が吹き飛び、ドラマの主演を務める男性アイドルと、
ヒロイン役の女性アイドルとの噂話にのめり込んでいた。
 夕菜が教室を出て行った事など気づきもせず──
「深雪、もういい?」
 恭也の声に驚き、がたんと大きく椅子を鳴らして笑われてしまった。

361 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/23(木) 13:21:44 ID:Wiee+zf5]
 深雪は、恭也に連れられて席を立った。
 縋るような眼で千穂を見たが、眼を伏せた彼女は、深雪の視線に気づかなかった。
──千穂っ、助けてよぉ!
 自分がピンチの時には、いつも傍にいてくれた千穂が、今は助けてくれない。
 彼女が意図的に逃れようとしているのではないとは解かるのだが、恨めしく思う。
 教室を出て、廊下を並んで歩く。
 廊下には多くの生徒が出て、お喋りに興じたり、よくわからない遊びで盛り上がったり
していた。それぞれの教室からも、がやがやとざわめきが溢れている。
「何の話か、判るよな?」
 深雪はびくりと肩を竦ませた。
 恭也の声は普段と何も変わらないのに、詰問されているような気になってしまうのは、
深雪の心に疚しさがあるからだ。
 深雪は答えられずに無言のままだった。
 恭也もそうと予測していたのか、何も言わずに歩き続ける。
「こっちだよ」
 階段へと折れ、二人は登ってゆく。
 屋上へ抜ける階段は、誰も通らない。この季節は空調の利き難いそこへ生徒が来る事は
ほとんど無い。
 顔を上げると、深雪の視界に一人の男子生徒の姿が映った。
「あれ? まだいたのか」
「あ、は、羽山君……」
 見知った少年が座っていた。太り気味でがっしりした体格の、陰気なクラスメイト。
 アニメや漫画、ゲームなどのオタク趣味に傾倒し、ぼそぼそと聞き取り難い声で喋る彼を、
深雪は嫌いだった。クラスの誰もが、彼に良いイメージを持っていない。
 突然夕菜に襲い掛かり、恭也に蹴り飛ばされた後、どこかへ行ってしまったと思って
いた金森竜介が、そこにいた。
──まだいたのか、って……どういう事?
 恭也は竜介がここにいた事を知っていたというのだろうかと、深雪は疑問に思う。
 恭也に助けられた夕菜は、知らぬ間に教室からいなくなっており、すぐ後、恭也も教室
を出て行った。その後に、竜介が男子たちから何か言われながらも、何も答える事無く
出て行ったのを憶えている。
 恭也が出て行ったのは、夕菜を追いかけたのだろう。竜介が出て行ったのは、教室に
居辛かったからだろう。
 恭也と竜介はどこかで合流し、二人でここに来ていたのだろうか。それとも、夕菜も
一緒だったのだろうか──
──あれ? そういえば……。
 それからしばらくして、夕菜は独りで戻ってきたはずだった。だが、今自分が恭也に
連れられて席を立った時には、彼女の姿は無かったように思える。
 あんな格好のままでどこへ行ったのだろう──と思うと同時に、自分が連れ出された
わけを思い出す。
──あたし、どうしよう……。
 夕菜をそんな格好にさせてしまったのは、自分が元凶なのだ。
 恭也は気づいている。問い質し、追及するために連れてきたのだ。
「ちょっと、ここ借りて良い?」
「え? え、あ……うん」
「込み入った話になりそうだから、いいかな?」
 言外に、席を外して欲しいと言っている。
「あ、ああ、いいよ、ぼ、ぼ、僕もそろそろ、も、戻ろうと思ってたし」
「そっか、悪いな」
 立ち上がった竜介が自分の方を見ているのに気づき、深雪はふと違和感を覚えた。
 それがなんなのか理解する間も無く、恭也に腕を引かれて屋上手前の開けたところへと
登ってゆく。
「い、いいよ、別に、ぼ、僕の場所ってわけじゃ、ないし」
「ありがとな」
 手に提げたビニール袋に、パンの包み屑とコーヒー牛乳の紙パックが透けていた。
「き、き、木嶋さん……」
 不意に竜介に名を呼ばれ、びくっとそちらを見た。
 彼は眼が合うと、怯えたように逸らしてしまう。
 そして、俯き加減で、落ち着き無く床と深雪を交互に見ながら言った。
「し、し、下着……その、や、や、やりすぎは、よくないよ」



362 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/23(木) 13:23:45 ID:Wiee+zf5]
──下着? やりすぎ、って……!?
 こんな奴にまで気づかれていたのかと、深雪は愕然とする。
「じゃ、じゃあ僕は、い、行くよ」
「ああ、またあとでな」
「う、うん、また」
 竜介を、恭也は片手を上げて見送った。
 階段を降りてゆく竜介の姿を、深雪は見ている事ができなかった。
 竜介にまで気づかれているのなら、クラス中の全員が気づいていると思うのが妥当だと、
深雪は絶望感に打ちひしがれていた。
 夕菜の下着を隠し、恥ずかしがらせてやろうと提案した自分。大はしゃぎして面白そう
だと頷いた舞香。そして、実行の意思を固め、計画を練った千穂──
 千穂が決めたんだ、自分が決めたわけではない。夕菜のバッグから下着を取り出したの
は舞香だし、自分はバッグを提供しただけで直接手を下したわけではない。言い出しっぺ
は自分でも、やろうと決めたのは千穂だし、やったのは舞香だし──
 だが、恭也に、いや、クラスメイト全てに追及されたとして、自分はやってないなどと
言っても、誰も聞いてはくれないだろう。
──千穂……舞香……。
 自分だけ責任逃れをしようとすれば、今までずっと一緒にいた千穂や、せっかく親しく
なった舞香との仲が壊れてしまいかねない。
「深雪」
「えっ、なに?」
 呼ばれて振り向くと、恭也がじっと見ていた。
 全てを見抜くような瞳にたじろぐ。
「夕菜の下着、どこやった?」
「──ッ!」
 抑揚の無い、単刀直入な台詞だった。その言葉を予想はしていても、深雪の心は激しく
揺さぶられ、彼が夕菜と呼び捨てた事も意識できなかった。
「あ、あっ、あたし──」
「隠したんだろ?」
「あ、あたしは……」
 言い訳をしてしまいそうになる。
 だが、そんなものは無駄だとも解かっている。
「どこに隠したの?」
 幼い頃の恭也は、こんな自信に満ちた言葉を吐けるような子ではなかった。
 小学生の六年間で、恭也はすっかり変わってしまった。
 同級生とは見違えるほどに逞しい心を持った、一人前の男とも言える少年になっていた。
 深雪も変わっていた。
 弱者を虐げる側になってしまっていた──
「深雪、どうしたんだ?」
「あ、うっ──」
──怖い……!
 恭也の眼が、自分を責めているようで、全ての罪は自分にあるのだと言っているようで、
罪を償うには罰が必要だと迫られているようで──
 恭也に咎められるのが辛い。恭也に糾弾されるのが辛い。
 あんな事を言わなければ良かった。あんな提案をしなければ良かった。
「深雪は、そんな子じゃなかっただろ?」
──あたしは……。
 幼い恭也は、いつもびくびくしていて、力の強い子たちから虐められていた。
 深雪はお姉さん風を吹かせて、そんな恭也の世話を焼いたり、庇ったりした。おかげで
酷い目に遭った事もあるが、恭也を守ったという満足感の方が大きかった。
「俺をいつも助けてくれたじゃないか。俺、嬉しかったぞ」
 なんで夕菜を虐め始めたんだろう。舞香の言葉に乗せられなければ、幼い頃のように、
人としての道を逸れずにいれば、こんな想いにはならなかったろうに──
「うっ、うぅっ……ひっ、うぐ……」
「深雪……」
 恭也の口元が緩んだ。しょうがない奴だなぁ、と呟く。
 潤んで霞んだ深雪に眼は、彼の戸惑ったような、なだめるような顔が映っていなかった。
「泣くなよ、深雪」
「あぅ、うぅっ、恭ちゃん、ううぅっ──」
 立ち尽くしたまま、深雪は子供のような泣き声を上げた。

363 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/23(木) 13:25:23 ID:Wiee+zf5]
 恭也のハンカチが、深雪の涙を拭い取ってゆく。
 ひとしきり泣いた深雪を、恭也は包み込むでもなく、突き放すでもなく──いつも通り
幽かな笑みを浮かべたままで、涙を拭いてあげた。
 そんな恭也の態度が、深雪には嬉しくて、しかし、寂しかった。
「ごめんね、恭ちゃん……」
「ん?」
──だって、ハンカチ、汚れちゃったでしょ?
 うっすらと乗せたファンデーションがついてしまっただろうから。
 千穂から教わったメイクはまだ慣れていなくて失敗する事もあるが、自分でない自分に
なったような気分になれるのが嬉しかった。魔法のような、という言葉通りだと思う。
 あまり派手にはできないが、学校のある日もメイクをしていたし、コンパクトや化粧水
などを入れたポーチをいつも持ち歩いている。今日は水泳があったから──
──違う、そんな事どうだっていい……。
「恭ちゃん……」
「どうした?」
 恭也の表情は変わらない。
 深雪にはそれが責めているようにも見えるし、全く無関心のようにも見えた。
──そんなの、やだ……。
 責められるならいい。だが、無関心なのは嫌だ──
「深雪は、後悔してる?」
 後悔──していた。
 夕菜と自分とは、ほんの少ししか違わないのだと理解したから。
 自分の傍にはいつでも千穂がいたが、彼女には誰もいなかった。千穂がいなければ、
深雪だって夕菜のようになっていたかもしれないのだ。
「……うん」
「ならいいじゃん」
「え──?」
「やりすぎた事を反省して、後悔して……だから泣いちゃったんだよな?」
 やりすぎは、よくないよ──
 竜介の顔が浮かんだ。
 見るだけで嫌悪感を抱く、暗く濁った眼をしていていたのに、さっきの彼は──
「あっ──!」
 違和感は、そこだったのかと──深雪は納得する。
 ん? と眉を上げた恭也に、ふるふると首を振った。
 少しだけ色を抜いたセミロングの髪が、軽やかに揺れた。
「うぅん……なんでもない」
 あんなにも澱んでいた彼の瞳は、吹っ切れたかのように透き通って見えた。
 恭也と交わした言葉も、いつものようにどもってはいたが、別人のような声だった。
 その響きは、幼い頃の内気で気弱だった恭也のようで──
「恭ちゃん……金森と、何か話したの?」
「んー、色々とね」
 どんな内容だったのかは解からない。だが、きっと、恭也の言葉は竜介に大きな衝撃を
与え、彼の中にあった何かを解き放ったのだろう。
 深雪は改めて、恭也の懐の深さを見せ付けられたような気になった。
「ま、それはそれとしてさ──」
 謝る相手が違うだろ? と言った恭也に、深雪は素直に頷いた。
「夕菜の下着、ちゃんと返さないとな」
──やっぱり、恭ちゃん……。
 夕菜、と口にした彼の、穏やかな表情に、つい口にしてしまう。
「あの子の事……好き?」
 言ってから、しまったと思う。無意識に口を抑えたが、もう遅い。
 恭也は照れたように眼を逸らし、すぐに戻した。答えは解かりきっていた。
「うん、好きだよ」
 一点の曇りも無い言葉が、深雪の意識に染み渡ってゆく。
「ごめんな、深雪──」
 謝らないで欲しかった。謝られたら、余計に惨めになるから──
「今のままじゃ、深雪をお嫁さんにもらうわけにいかないよな」
 恭也のはにかんだような笑みは、深雪の心を熱くした。
 そんな言葉を憶えていたなんて──
 嬉しさと恥ずかしさと、悔しさでまた泣いてしまった。

364 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/11/23(木) 13:28:06 ID:Wiee+zf5]
今回は以上です。
サブキャラ三人の絡みを続けたおかげで、夕菜が置き去りに……。
タイトルに異議あり! ですねぇ(´・ω・`)

365 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/23(木) 13:38:24 ID:27a2p8EO]
おつであります!
今最初から全部読もうとしてます(`・ω・´)
これからもがんがってくらさい

366 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/23(木) 14:15:18 ID:dXD1x8zw]
超乙

367 名前:名無しさん@ピンキー [2006/11/23(木) 14:45:59 ID:US2OAO+C]
なんてこった
金森 x 深雪のカップルが誕生してしまうなんて

ご主人様の複線が
露出っこ深雪に関連づけられるなんて気づかなかった

368 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/23(木) 18:32:54 ID:UIcNxi98]
GJ!深雪可愛いな
恭ちゃんは相変わらずかっこいい。

369 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/23(木) 21:01:39 ID:HU4IMXy+]
下着隠したこと誰にもバレてないと思ってる辺りまだ子供なんだなぁ
なんか安心してしまったよw

370 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/24(金) 03:26:50 ID:rMeg9fHn]
>359だけでも充分エロかったよ

>>367
ちょwww
流石にそれはwwwww




371 名前:変態さんの個体生息数調査 [2006/11/24(金) 12:54:03 ID:vzPpfA5P]
vote.rentalcgi.com/html/myuyan.html

やいっ、変態ども!!投票汁



372 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/24(金) 19:23:57 ID:/Xn8K4Vm]
反省&仲直りの5Pエンドで

373 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/27(月) 02:30:27 ID:QhW6YdhV]
なんつうか早くエロ書けよ



とか言えないくらい読み物としておもすれぇGJ!

374 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/27(月) 15:37:46 ID:tT8m5P9W]
「このあと、どうする?」
 長い長いキスの後、羽山君が言った。
「今更教室戻っても、杉山の奴がうるさいよな」
 肩を抱きながら、頭を撫でてくれる。
 五時間目は国語だ。担当教師の顔が浮かぶ。
「フケる?」
「え?」
「サボろう」
 彼の顔は今までと変わらない。うっすらと笑みを湛えたポーカーフェイス。
 それでも私には、前よりも彼の表情が解かるようになっていた。
 彼の口元に浮かんでいるのは、悪戯っぽい微笑み──
 そこは二人の唾液で潤んでいて、私は恥ずかしくなって眼を逸らしてしまう。
 とろけるようなキスだった。
 二人の舌が絡み合い、私たち以外には誰もいない静かな廊下に、くちゅくちゅと淫靡な
音が響いていた。
 その音は、潤いを取り戻した私の秘処から聞こえてくるようで、むずむずと湧き上がる
恍惚に支配されてしまいそうだった。
「よし、行こう」
「え……どこへ?」
「いいところがあるんだ。先客がいるかもしれないけど」
──先客って……?
 人がいるかもしれないようなところへ、連れて行こうというのだろうか。私が未だに
恥ずかしい格好なのを知っているのに──
 戸惑う私を見ながら、羽山君は笑っていた。
 意地悪な顔だった。
「行くよ、夕菜」
 小さく頷いた私は、彼に促されて歩き出した。
 一階の廊下を進み、階段を登る。乳房が揺れて、幽かな刺激が私を責める。
 あの場所に来ると、羽山君もそれを意識していたのか、足を止めた。
「羽山君……?」
「また、する?」
「えっ……」
「冗談だよ」
 冗談に思えない。
 事実、彼は私の背中を押していた手を、すっと下ろしてお尻に触れたのだ。
 私はぴくりと震えてしまう。
「やっぱ、しちゃおうかな」
「ええっ?」
 片方の手で腰を抱かれ、もう片方の手でスカートをたくし上げられる。
「あっ──」
 四時間目の途中で彼に助けられた私は、ここで淫らに責め立てられ、そしてまた、こう
して恥ずかしい事をされようとしている。
 長いキスに身体を火照らせてしまった私には、抗う事ができない。
 しかしまだ、自ら求めるほどには乱れていない。
 どうする事もできずに立ち尽くしてしまう。
 羽山君は頬が触れそうなほどに顔を寄せ、じっと私の眼を見つめている。恥ずかしいのに
逸らせない。恥ずかしがる私を見て欲しい──そんな気持ちにさせられてしまう。
「可愛いなぁ、夕菜は」
 耳元で囁いた彼は、私のスカートを捲り上げてしまった。
 スカートの中に押し込んだブラウスの裾ごと持ち上げられ、子供のような腰周りが露に
なった。小さなお尻も、つるりとした恥丘も、隠すものも無く晒されてしまった。
 こんなところで、そんな格好をさせられて、私の身体はさらに熱を帯びてゆく。
 秘処がますます潤んでゆく。
 更衣室から戻った時のように、滴るほどに濡れてしまいそうで、自分がとても淫らに
思えてしまう。
 しかし彼はきっと、そんな私を優しく受け入れてくれるのだろう。むしろそれを望んで
いるのだろう。
 でなければ、こんな事をしようとは思わないだろうから──
「夕菜って、エッチだな」
 彼の口元が、もっといやらしくなって欲しいと言っているようだった。

375 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/27(月) 15:38:57 ID:tT8m5P9W]
「自分で持って」
「うん……」
 羽山君のそんな言葉にも、素直に従ってしまう。
 彼の手が纏め上げたスカートとブラウスの裾を、お臍の上で両手で握る。
 学校の階段の踊場で、私は自らそこを露にしてしまっているのだ。
 剥き出しのそこから淫らな匂いが立ち昇ってくるようで、呼吸を躊躇ってしまう。
 上階からも下の階からも、授業をする教師と、生徒たちの声が聞こえてくる。
 誰も来るはずはないと思っても、もし誰かが現れて、私を見たらどう感じるのだろうと
考えてしまう。
 こんな格好をしている私を、淫らな一年生だと思うのだろうか。無毛のそこを、中学生
にもなってまだ生えていないのかと笑うのだろうか。
 隣に立つ羽山君は、どうするのだろう。
 私をもっと恥ずかしがらせようとするのだろうか。ブラウスのボタンを外し、自分が
借したタンクトップを捲り上げて、私の膨らみを晒してしまうのだろうか。乳房を揉み、
尖った蕾を弄び、私をもっと淫らにさせてしまうのだろうか。
 はぁっ、と大きく息を吸い込んだ。
 大丈夫、匂わない──
 いや、大丈夫なものか。こんなところでこんな格好をしているのだ。大丈夫なわけが
ないのだ。
 それなのに、いやらしい光景を想像し、それに忌避も抱かず身体を火照らせている。
──私、エッチだ……。
 顔を上げていられなかった。
 すぐ下に膨らんだ乳房には、尖った突起がぽつりと浮き上がっている。
 私は昂ぶりを抑える事も忘れ、ますます淫らな気持ちに侵されてゆく。
──羽山君は、どうなんだろ……。
 彼も興奮しているのだろうか。
 俯いたまま、視線を滑らせる──
──おっきく、なってる?
 彼のそこが、盛り上がっていた。
 羽山君の──男性の象徴は、学生ズボンの中から自らの存在を声高に叫んでいるよう
だった。
「どこ見てるの?」
「あっ──」
 彼の囁きが、私を震え上がらせた。
「そんなとこ見て、やらしいなぁ」
 言われるまでもなく解かっている。私はいやらしい女の子だ。
 でも、そう言われるのは嫌じゃない──
 もっと言って欲しい。
「夕菜はエッチだな」
 この言葉を聞くのは何度目だろう。
 小学生の時から、男子にも女子にも、いやらしいから胸が大きいのだと言われたり、
胸がエロすぎるとからかわれたりした。
 そんなふうに言われるのは苦痛でしかなかった。
 こっそり自慰をしている事を見抜かれているようでもあり、快楽に溺れて気を紛らわす
自分が嫌になるのに、それでもやめられなくて──
 いっそ本当にいやらしい子になってしまえば、誰にでも身体を許すような子になって
しまえば楽になれるのかもしれないと、刹那的な深みに沈みそうになった事もあった。
「すごくエッチだ」
 彼の言葉に、身体が疼く。彼の前でなら、もっと乱れてみたいと思ってしまう。
 彼の思うまま、彼の望むままに、全てを受け入れてしまいたい。
 けれど──少しぐらいは抵抗させて欲しい。素直に従うだけなのも癪ではないか。
 私は顔を上げた。
 口を尖らせ、眉を顰めて言ってやる。
「は、羽山君だって……エッチだよ」
 子供じみた私の反撃に、羽山君は頬を緩ませた。
「そうだな。俺もエッチだ」
「ひゃっ──」
 耳に息を吹きかけられ、びくんとなってしまった。
 身体中が敏感になっている。きっとどこを責められても、声を上げてしまうのだろう。
 やはり私は、彼に責められている方が似合ってる。反撃なんて柄じゃない。

376 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/27(月) 15:40:07 ID:tT8m5P9W]
「夕菜、行くよ」
「えっ──」
 背中を押される。
「そのままで、ね」
「──ッ!?」
──そのままって、このまま? こんな格好のままで……?
 捲り上げたスカートを掴み、下腹部を晒したままなのに──
「そのまま、階段登ろう」
「ええっ……」
 なんて事を言うのだろう。
 こんな格好をしているだけでもおかしくなってしまいそうだというのに、このまま移動
しろと言うのだ。
 そんな事──
「できない?」
「あ、ぅ……」
 できるわけがない。
 今ここで、こんな姿になっているだけでも危険なのだ。移動すれば、それだけ人目にも
つきやすくなる。
 空想だけなら何も危険は無い。だが、現実に見られてしまっては、どうなってしまうか
予測もつかないではないか。
 だというのに、理性はそう訴えているのに──
──してみたい……。
 そう思ってしまう。
 つるんとした丘も、子供っぽいお尻も、しとどに濡れた秘処も晒して、校内を歩いて
しまいたい。
 淫らな露をぽたぽたと滴らせながら、羞恥の快楽に包まれたい──
 そんな想いに駆られてしまう。
「羽山君……」
「ん?」
 彼の意地悪だけど優しい瞳を、縋るように見つめる。
「お、お願いだから──」
 彼がいるから、そんな事を思ってしまうのだ。
「離れちゃ、やだ……」
 彼がそばにいていくれるなら、私はどんな恥ずかしい事でもできてしまう。
「解かってるよ」
 彼は優しく微笑む。
「絶対、だよ?」
「ああ。絶対、離れない」
 唇が重なった。
 彼の柔らかな唇から、彼自身も昂揚しているのが伝わってくるようだった。
 短い口付けのあと、背中に添えられていた手がすっと下がる。
「んっ……」
 彼の左手が、剥き出しのお尻に触れた。
「ずっとこうしてる。離れたら判るだろ?」
「うん……」
 温かな手に安堵する。
「でも、時々悪戯するかも」
「えっ?」
「こんなふうに──」
「ひぁぅッ!」
 彼の指がお尻を伝ってそこに触れ、私は自分でも驚くほどに声を上げてしまった。
 いきなりの刺激に、全身から力が抜けてしまうようで、羽山君が咄嗟に支えてくれなけ
れば、その場に倒れこんでしまっただろう。
「すごいね、大洪水だ」
 私の腰を抱き支え、まだそこに触れたまま、耳元でそんな事を言う。
「うっ、ん……はぁっ、あっ……」
 秘処に触れられているだけで、掻き乱されているわけでもないのに、断続的な刺激が私の
身体を侵してゆく。
 びくびくと身体が震えて、もっと強い刺激を求めてしまう。
 羽山君の意地悪な指で、今すぐそこを掻き回して欲しかった。

377 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/27(月) 15:41:30 ID:tT8m5P9W]
「して欲しい?」
 訊かなくたって解かるだろうにと恨めしく思いながらも、意地悪な言葉に被虐の悦びが
湧き立ってしまう。
「ここ、いじって欲しいの?」
「んっ!」
 指がほんの僅かに動くだけで、私はがくがくと身を震わせる。
「夕菜?」
「い、いじって、欲し──ひっぁ!」
 言い終わるより早く、彼の指が秘裂を抉った。
「はっ、はぁっ、はぅっ、あぁっ……」
 ぐしょぐしょの入り口を掻き乱され、私は淫らな声を上げてしまう。
 階段の踊場だというのに、彼がもたらす刺激に飲み込まれてゆく。
「声、聞かれちゃうよ?」
「あぅ、やっ、だめ……ひゃっ、んくぅ──」
 腰を引き寄せられ、身体が密着した。
 大きな乳房が押し潰され、彼の襟元に口を押しつけた。
 けれど、くちゅくちゅという水音を消す事はできない。
「んっ、ふぁ、ひっ!」
 淫らな音が私を責める。口を抑えているのに声が漏れる。
──気持ちいい……すごい気持ちいい……。
 身体から力が抜けてしまう。ふらふらと倒れてしまいそうな私を、羽山君が心強い腕で
しっかりと抱き留めてくれている。
 羽山君の左手は、私の卑猥な露が絡み付いて、ぬるぬるになっているのだろう。
 私の劣情は、止め処なく溢れ出している。
「はぁっ、あぁっ、んはぁっ!」
 最も敏感な膨らみにはまだ触れられていないというのに、羽山君が与えてくれる激しい
刺激に、私は全身を震わせてしまっている。
 二時間近く前にも、この場所で責め立てられた。
 その時よりもはるかに強く感じてしまうのは、あの時と違って、全てを受け入れたから
なのだろう。
 彼に疑いを持つ事も無く、自分自身の気持ちにも素直になったから──
「んっ、ふぁっ、んぁぅっ!」
 だからこんなにも声が出てしまうのだろう。
 刺激に耐えるように、手にしたままのスカートをぎゅっと握り締める。
 その手は彼と私の身体に挟まれていて──
──硬い……これって!?
 手とお臍の下に触れている、こりこりした感触は──彼の、その部分だろうか。
──羽山君の、こんなになってる……。
 男の子のモノなんて、小学校の低学年の頃に見たきりだ。羞恥心など全く育っていない
少年が、女の子をからかうためにそれを曝け出していたのを憶えている。
 でも、その時に見たものは、小指ほどの大きさしかない可愛らしいもので、こんなにも
硬くいきり立ったものではなかった。
 もちろん父親のものは見た事があるが、当然それは硬直してなどいなかったし、いつも
仕事で帰りの遅い父とは、もう何年も一緒に入浴した記憶が無い。
 インターネットのアダルトサイトを見れば、無修正の画像や動画がいくらでも転がって
いるが、私はわざわざそれを見たいとも思わなかった。
 当然、触れた事など一度も無く、空想の中にしか存在しないものだった。
──羽山君、気づいてるのかな?
 きっと気づいているのだろう。
 彼の事だから、意図的に押し付けているのかもしれない。
 触れているのを私が意識しているのも、とっくに気づいているのだろう。
──触ったら、どう思われるかな……。
 もっと触れたい。
 握ってしまいたい。
 彼を両手で包み込んだら、感じてくれるのだろうか。
 私ばかりがされているのではなく、彼にもしてあげたい。
 彼の望む事を、私の望む事の全てをしてしまいたい。
「夕菜はエッチだなぁ」
「あぅ、うぅっ……」
──やっぱり、見透かされてる……。

378 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/27(月) 15:42:28 ID:tT8m5P9W]
 不意に彼の指が離れた。
 私の腰を抱いていた腕の力が緩む。
「羽山、君……?」
 不安になる──が、それも一瞬の事。
「歩ける?」
「えっ──」
 そうだった。彼は私に、こんな格好のままで歩けと言ったのだ。
「そのまま、階段を登るんだよ」
 腰に回されていた彼の右腕が、促すように私を押し出す。
 彼が傍にいてくれる。離れずにいてくれるなら、私は──
「うん……」
 お腹までスカートを捲って握り締めたまま、私はぐらつく身体を支えられて、なんとか
歩き出す。
──恥ずかしい……こんなの、恥ずかしすぎる……。
 一歩ずつ交互に脚を出すというだけの単純な動作が、今の私には気が遠くなるほどに
困難だった。
 彼に腰を支えられていなければ、すぐにでもよろめいて崩れ落ちてしまいそうになる。
 脚を上げ、一段々々登ってゆく。
 上階の、廊下と教室を隔てる壁が眼に入り、何人もの生徒に見られているような錯覚に
陥ってしまう。
──誰か来たらどうしよう。見られちゃったら……どうしよう。
 恥ずかしくて震えているはずなのに、彼の指遣いにとろけてしまった私の頭は、そんな
震えですら、官能の疼きに変換されてしまう。
 並んで歩く羽山君は、温かな手で私を支えてくれる。
「羽山君……」
「ん?」
「わ、私……恥ずかしい……」
 言いながら、一段登る。
 声まで震えてしまっている。
「こんな格好だもん、恥ずかしいよな」
「うん……」
 また一段。
 少しずつ、上の階へと近づいてゆく。
「夕菜は自分でスカート捲って、丸見えにして、階段登ってる」
「あ、ぅ、だって……」
 彼の囁くような声が、私を責める。
「あそこ、あんなにびしょびしょにして」
「うぅ……」
 三階の廊下が水平に見えたところで、脚が止まってしまう。
「嫌なら、手を離せば良いだけだろ?」
「あっ、う……」
「そんな簡単な事なのに、夕菜はどうしてしないのかなぁ?」
 彼の言う通りなのだ。嫌ならそうすれば良い。
 だが、私は彼の言うままに、こんな格好を保っている。
「ほら、脚が止まってる」
 彼の右腕が、腰を押す。
「う、うぅ……いじわるぅ」
「ふふ、俺は意地悪だぞ」
 彼の左手が眼の前に翳された。
「あっ──!」
 その中指には、ぬらぬらとした半透明の粘液がたっぷりと絡み付いていて──
「夕菜をいじってたら、こんなになっちゃったしなぁ」
「あぅ、ううぅ……」
「綺麗にしてくれる?」
「えっ──」
「夕菜がこんなにしたんだから、夕菜に綺麗にしてもらわないとな」
 それは、私に、自らの──
「夕菜の口で、綺麗にしてよ」
 羽山君はエッチだ──私なんかより、ずっと淫らで刺激的な想いを持っている。
 だから私は、もっと彼を知りたくて、彼に近づきたくて、頷いてしまったのだった。

379 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/27(月) 15:43:58 ID:tT8m5P9W]
 口を開き、舌を伸ばす。
 鼻先に迫った彼の左手の指に、舌で触れた。
 つんとした淫らな匂いが鼻を衝く。
 自らの淫液が絡み付いた指に、伸ばした舌を滑らせる。
「自分の愛液の味はどう?」
「うぅ……」
 恥ずかしい事をさらりと言ってしまう。
 すっぱいような、しょっぱいような味だった。
「舐めた事ある?」
 私はふるふると小さく首を振った。
 そんなところ、好き好んで舐める子などいないだろう。
 同級生にも、もう大人の男性と淫らな経験をした子もいるというが、彼女らもこんな事
をさせられているのだろうか。
「口開けて、銜えて舐めて」
「ん……」
 内側に折り曲げられた中指を、口に含んでしまう。
 いやらしい匂いが口の中に広がって、舌に触れる。
 塩気と酸味と苦味とが複雑に入り混じった、すぐにでも吐き出したくなるような奇妙な
味がした。
「んっ」
 彼の指が蠢く。
 そこを刺激していた時のように、細かく震えながら私の口内をまさぐっている。
「夕菜の舌、柔らかくて温かいね」
「んぅ」
 ついさっきまで秘処に触れていた指が、ねっとりとした私の露と、溢れ出す唾液を掻き
混ぜて、くちくちと淫靡な音を立てている。
 内側から響くその音は、脳を直接刺激されているようで、私は舌を指に絡ませてしまう。
 私は階段で恥ずかしいところを曝け出し、自身の汁の絡んだ指をしゃぶっている。
 恥ずかしいのにやめられない。いやらしいのに求めてしまう。
 彼の指が奥歯の内側に当たり、歯茎を撫でてゆく。
「んっ、うぅ……」
──気持ちいい……。
 どうしてだろう。身体が震える。
 口の中というのは、こんなにも敏感なところだったのだと、改めて気づかされる。
 歯茎も舌も粘膜なのだから、敏感なのは当然かもしれない。
 けれど、こういう刺激を覚えるような器官だとは思ってもいなかった。
 そういえば、口は第二の性器だなんて言われたりもするらしい。
 という事は──人は誰も、いつも人目に性器を晒し、性器で会話しているのだろうか。
口紅を塗るのは、性器を強調して異性を惹きつけるためなのだろうか。口淫は擬似性交
などではなく、性交そのものなのだろうか。
 私は今も、彼に性器を蹂躙されているのか──
 なんていやらしいのだろう。
「んぅ、んっ……!」
 歯茎を伝い降りた指が、舌の裏側に潜り込んでゆく。
 びくびく震えてしまう。
 人差し指と薬指が、鼻の頭と頬に触れている。それらの指にも自身の露は絡んでいて、
顔を穢されているような官能が湧き立ってくる。
──エッチだよ……すごい、エッチだよぉ。
 ここは学校なのに──神聖な学び舎なんて言葉は、今時流行らないだろうが、それでも
こんな淫らな行為に似つかわしくない場所である事には変わりあるまい。
「夕菜、このまま登れる?」
「んっ……!」
 彼に腰を押される。ふらふらしながら、階段を一歩ずつ登ってゆく。
 目線が上がり、廊下の幅が広がってゆく。授業中の教室から、ざわめきが聞こえている。
 すぐ目の前の教室のドアが開かれたら、どうすればいいのだろう。
 スカートは、手を離せばすぐに元通りになるだろう。顔を背ければ、彼の指も抜ける
だろう。彼も、何事も無いかのような顔をするだろう。
──でも、見られちゃったら……。
 それでも私は、こんな姿のまま、三階の廊下を足で踏みしめた。
 震えながら半時計回りに廻り、四階──私たちの教室がある階へと向かった。

380 名前:夕菜 mailto:sage [2006/11/27(月) 15:46:00 ID:tT8m5P9W]
 ゆっくりと、一段ずつ登る。
 階下に人が現れたら、お尻を見られてしまうだろう。両脚の付け根の潤んだところも
見られてしまうだろう。
 急がなければと焦るのに、脚を思い通りに動かせない。羽山君に支えられていなければ、
その場に蹲ってしまいそうだった。
 彼の手が腰を支えていてくれる。彼がいるから、こんな姿でいられる。
 いやらしい自分は、いやらしい彼の言うままに、彼の指を口に銜え、恥ずかしいところを
丸見えにして──それが私を昂ぶらせ、そこは零れそうなほどに潤んでいた。
 あと少しで、踊場に届く。
 あと五段、あと四段──
──垂れちゃう……。
 溢れた雫が、内腿にまで流れ出す。
 並んで歩く羽山君は気づいていないだろう。
 彼が見たらなんと言うのだろう。また、エッチだと言われるのだろうか。
──羽山君の方がエッチなのに……。
 あと一段。
 右脚を踏み出し、重心を前に向け、ふらつきそうになりながら、脚に力を篭める。
 腰に触れていた彼の手が、手伝ってくれた。
「夕菜」
 羽山君の指が、ちゅっと音を立てて抜かれた。
 ぐいと左から抱き寄せられ、頭を抱えられて撫でられた。
「よくがんばった」
「うん……」
 耳元で囁いて、彼は私の頬に口づけた。
──当たってる……。
 彼のそこが左の腰骨に触れていた。
 彼も興奮している。学生ズボンの下で、硬く反り返っているのが判る。
 彼の手が私の強張った指に触れ、一本ずつ解きほぐしてくれる。スカートが、はらりと
垂れ下がって、剥き出しになっていた腰周りを覆い隠した。
 だが、彼のものが触れている左の腰に引っかかり、そこだけが不自然に捲れあがった
ままになってしまっている。
 今腕を下ろすと、彼のそこに触れてしまいそうで、私はそのままお腹の前で手を握る。
 彼にだってそれは解かっているのだろう。何も言わずに頬にキスを繰り返す。
「ん……」
 舌が伸ばされ、つつぅと肌を滑った。
 身を震わせてしまう。
──綺麗に、してくれてるんだ……。
 彼の舌が触れているのが、私の露が付着したところだと気づく。
 鼻の頭も舐められてしまい、恥ずかしくて眼を開けていられなかった。
「夕菜」
 彼の舌が離れ、腰との間にできた空間を、スカートが降りる。
 開けようとした私の瞼に、キスが降ってきた。
「夕菜って、睫毛長いんだね」
 そんな言葉が嬉しい。
「髪伸ばして、化粧したら、みんな振り返るぐらいの、すごい美人になるんだろうな」
──お化粧なんて……。
 小学生の頃から、化粧をしていた子もいる。学校で直している子もいる。
 けど、私は小さな頃に、親を真似てこっそりと試した事があるくらいで、今は興味が
無いし、知識も全く無かった。
 でも、彼が望むなら、試してみようかとも思ってしまう。
「お化粧……した方が良い?」
「どうかな。今のままでも好きだし──」
 おでこにキスされる。
「独り占めできないのは、嫌だな」
──独り占め……。
 彼は、化粧をすれば私は美人になると言う。
 私なんかでも、きっと彼の言葉通り、美少女になれるのかもしれない。
 私も彼を独り占めしたい。彼に独り占めされたい。
「私……羽山君の前でだけ、お化粧する」
 彼が微笑んだ。

381 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/11/27(月) 15:49:30 ID:tT8m5P9W]
今回はここまで。
週末ぐらいには続きを投下したいと思います。

しかしほんとに長々と続いてしまっていますね。
皆様のレスを糧に、目指してがんばります。



382 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/27(月) 15:51:34 ID:eXmNhtHE]
お疲れ様です!!
・・濡れちゃいますね(´Д`*)

383 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/27(月) 17:05:53 ID:bT4vroN5]
エロス! エロス!

384 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/27(月) 17:47:17 ID:LbcjAhw/]
読んでて不思議な書物だなぁと思った。主人公はエロい松田優作みたいだ。

385 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/11/28(火) 01:09:20 ID:ReK5XvGL]
>>381だと何を目指すのかよくわかりませんねw
完結目指してがんばるのです。
もうじき、この話は終わりそうです。

>>384
羽山の将来は、刑事か探偵?w

386 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/28(火) 01:11:25 ID:YjjC6zB2]
変態神は深夜に活動してる方なんですか?

387 名前:名無しさん@ピンキー [2006/11/28(火) 13:38:32 ID:IiWKNA09]
こんなネ申作品を読んだのは2年ぶりだw

388 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/28(火) 13:43:26 ID:Hiw15PJo]
>>387
2年前の神作品のURLぷりーず


389 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/11/28(火) 14:07:31 ID:ReK5XvGL]
いや、私は神などではないですが……。
でも素直に嬉しいです。皆様ありがとうw

390 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/29(水) 00:47:16 ID:mti7dfy1]
こいつアンマニアか?

391 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/29(水) 05:19:39 ID:4lx213rU]
最後どうなるか気になるけど終わって欲しくない…
そんな気持ちに久々になったよ
楽しみにしてます



392 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/29(水) 06:51:38 ID:0M2rMhUx]
>羽山の将来は、刑事か探偵?w
いや、俳優か孤高のサラリーマンだなw

393 名前:名無しさん@ピンキー [2006/11/29(水) 13:55:57 ID:3h/+oJUt]
>>388
探してるんだが見つからなんだ(´・ω・`)
菅能小説スレに投下されてた気がする。

394 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/01(金) 18:22:20 ID:RibvW2lf]
ノーパンメイド喫茶の話を読みたい。
御奉仕とかでなくて、メイドがドキドキしながら濡れちゃうような。

395 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/12/04(月) 03:32:54 ID:FGz3FGox]
ええと、週末に間に合いませんでしたが、続きです。
相変わらずな内容ですが……。

396 名前:夕菜 mailto:sage [2006/12/04(月) 03:33:48 ID:FGz3FGox]
「あっ、あ、ご、ごめん……」
 深雪が階段を降りると、そこには竜介がいた。
──聴かれてた……!?
 真っ赤になった眼を慌てて擦る。
 竜介の佇まいは、おどおどして怯えているようだし、自信無さそうに背は丸められている。
深雪を真っ直ぐに見ないのは、女の子に免疫が無いからなのだろうとよく解かる。
 それなのに、今までと違って感じられるのは、その眼が暗く濁っていないからだ。
 恭也とどんな話をしたのかは解からない。だが恭也の言葉は、竜介に大きな衝撃を与え、
彼の閉ざされていた心を解放したのだろう。
 深雪は、さきほど覚えた印象を、改めて確認する。
 彼はずっとここにいたのだろうか。だとしたら、きっと恭也と自分との会話も、泣き声も
聴かれていただろう。こんな奴に聴かれたなんて──
 そう思いはしたが、深雪は以前のような嫌悪を抱かなかった。
「だ、だ、大丈夫?」
「え?」
──こっち見るなよぉ……恥ずかしいんだから。
 そう思っても口には出せない。
「あ、え、えっと、だから、その……な、泣いて──」
「別に」
 冷たく言い放ってから、ちょっと悪かったかなと思って言い直す。
「別に……大丈夫だよ」
 そんな自分に、深雪は違和感を覚える。以前なら、言いっ放しだったはずだ。
──なんか、調子狂うなぁ……。
 泣いた直後だからかな、と思って自嘲する。
「ごめん……ほ、ほんとに……」
 竜介はちらちらと深雪の方を見て、心底申し訳ないという顔をしている。
──そんな顔されたら、余計恥ずかしいじゃん。
「き、き、聴くつもりじゃ、な、なかったんだけど……」
「別にいいって。どーせ他にも聴いてた人いるんでしょ?」
「あ、え……う、うん」
──やっぱ他にもいるのかぁ……恥ずかしすぎだよぉ。
 屋上の手前の小部屋は、まず人が行く事は無いが、その下は深雪たち一年生の教室が
並んでいる。
 あれだけ泣けば、きっと誰かがそれを聴いていただろう。自分だと気づかれたかどうかは
判らないが、それでも鳴き声を聴かれて恥ずかしくないわけはない。
──ていうか、こいつには聴かれてたんだし……。
 事実、深雪の鳴き声を耳にして、怪訝に脚を止めた生徒は何人かいた。
 だが、竜介がそこに佇んでいたおかげで、上へ見に行こうと思った者がいなかったのだと
いう事を、深雪は知る由もない。
 竜介が意図してそうしていたわけではないにせよ、深雪は竜介に借りを作った事になる。
 二人とも、そんな事は意識していなかったが。
「か、か、顔、あ、洗った方が……」
「解かってるよ、そんな事」
「ご、ごめんっ」
──ったく……調子狂いすぎ……。
 今この瞬間まで、深雪と竜介はほとんど言葉を交わした事が無かった。
 おそらく、入学から今までの数ヶ月間での会話は、この場でやりとりされているものと
変わらない程度だろう。
 竜介など、女子生徒と会話する事自体が稀なのだから、然もありなん。
 深雪は竜介を置いて歩き出す。顔を伏せ、擦れ違う生徒たちになるべく顔を見られぬよう
意識しながら。
──なんでついてくんの?
 すぐ後から、竜介が歩いてくる気配を感じる。
 深雪は足早に歩き、手洗い場に着く。少し離れたところで竜介が立ち止まった。
──なんで止まんの?
 居心地の悪さを覚え、何か言ってやろうかとも思う。
 けれど、それはそれで、自分が意識しているように思われそうなのが嫌だった。
──まぁいいか……。
 深雪は蛇口を捻り、冷たい水を顔に浴びせた。
 恭也の顔が浮かび、また少し泣きそうになってしまった。

397 名前:夕菜 mailto:sage [2006/12/04(月) 03:35:19 ID:FGz3FGox]
──やっばー、鞄の中かぁ……どーしよう。
 涙を流し終えてから、深雪はハンカチを持っていない事に気づく。
 とにかく手を振って水気を飛ばし、顔を数度拭って雫を拭き取る。
 当然、それだけで全て拭き取れるわけがない。
 スカートに手を突っ込んでみるがハンカチは無い。反対側は携帯電話が入っているので、
外側からぱんぱんと叩くだけだったが、やはりハンカチの感触は無い。
──どうしよう……。
「おいリュウ、なにしてんだぁ?」
 突然掛けられた、クラスメイトの男子の声に、深雪はびくっとしてしまう。
 竜介と二人でいる──そう思われたら嫌だと、反射的に思う。
──あ、こういうのって、よくないかなぁ。
 だが、すぐにそうも考える。恭也の言葉を思い出した。
「お前今、ミッチーのスカート覗いてただろ?」
「えっ? ち、ちがうよっ!」
 ミッチーというのは、男子が深雪につけたあだ名だった。深雪っち、転じてミッチー。
 あまり好きではない呼ばれ方だった。
──ていうか……見えるわけないじゃん。
 確かに、顔を洗っている間は前屈みだし、後に立っていれば、覗いているように見える
かもしれない。だが、そう簡単に見える事が無いというのは解かっている。
 一瞬、自分の秘密の趣味の事が頭に浮かび、深雪は慌てて掻き消した。
 雫の滴る顔を男子の方へ向ける。二人の男子が深雪と竜介を見ていた。
「やらしいなぁ、お前」
「牛の次はミッチーかぁ?」
 牛というのが夕菜の事であるのは言うまでもない。
「あーそーか、お前巨乳好きなんだろ?」
「ホルスタインだけじゃ満足できなかったんかぁ?」
「途中で羽山に蹴られたしな」
 二人はそんな事を言いながら笑っている。
「べ、別に、そ、そんなんじゃ……」
 横で竜介がおろおろしている。
──なんか、腹立つなぁ……。
 恭也に諌められたからだろうか──夕菜や竜介といった弱者を攻撃する彼らに、嫌悪を
抱いている自分に気づく。
「ってか、後からがばーって揉むつもりだったんじゃね?」
「あー、やりそうやりそう!」
「ち、違うって……」
──こいつら……頭悪いなぁ。
 彼らは竜介を馬鹿にしているつもりだが、すぐ横に深雪がいるのを意識していない。
 自分たちの台詞が、深雪をもからかっている事になるのだと、彼らは気づいていない。
「つかさぁ、教室であんな事しねぇよな、フツー?」
「だよなぁー、お前アニメ見すぎでおかしくなってんだろ」
「現実とアニメの区別ができません、って言われるぞ?」
──ほんっと、腹立つ……ったく。
 それは深雪自身に対する苛立ちでもあった。
 今まで自分は、立ち位置に甘えて他人を蔑ろにする事をなんとも思っていなかったのだと
改めて思い知る。
 わはは、と下品に笑う彼らを、深雪は生ゴミでも見るかのような眼で睨みつけた。
「あんたらさぁ──」
 雫が流れてブラウスに垂れる。透けちゃうかも、と少し躊躇う。
「あたしがいるのによくそういう事言えるねぇ」
「え?」
「な、なんだよ……」
 相手はクラスの中心グループの一人、深雪だ。さっきまでの威勢が消える。
「別にいいけどさぁ、女子の前でそういう話する?」
「あっ──」
「気づくの遅いよ、馬鹿」
 深雪が吐き捨てると、彼らは、ばつが悪そうな顔をして背を向けた。
──こういうのも、まずいかなぁ。
 虎の威を借る狐、という言葉を思い出す。それとも、祖父が好きな水戸黄門だろうか。
 まぁいっか、と呟いて振り返ると、竜介がハンカチを手にしていた。

398 名前:夕菜 mailto:sage [2006/12/04(月) 03:37:08 ID:FGz3FGox]
「あ、あ、えっと……こ、これ」
 おずおずと差し出されたハンカチ。
 深雪は無意識に受け取ってしまった。
「ありがと」
 そう言ってから、しまったと思う。
 男の子のハンカチで顔を拭く? しかも相手は竜介、クラスの嫌われ者──
 反射的に突き返しそうになり──しかし、押し留める。
──ああもうっ! こういうのダメだって……。
 恭也とのやりとりを思い出す。
──後悔か……してるよ、後悔。
 中学に上がってから、深雪は恭也とあまり会話していなかった。時々言葉を交わしても、
素っ気無い態度で、軽く流されているような印象だった。
 子供の頃はあんなにも親しかったのに、今では他の子と扱いが変わらない。むしろ避け
られているように思う事もあった。
 それは、自分自身の招いた結果だったと、深雪はようやく気づいた。
──今のままじゃ、お嫁さんは無理かぁ……。
 幼い頃の宣言──今のままでは無理と言った彼の言葉は、気持ちが夕菜に向いていると
いうだけでなく、自分の心が醜いからだろう、と深雪には思えた。
「……ありがとう」
 深雪はもう一度、竜介に言った。
 真っ白なガーゼのハンカチを顔に当て、水滴を拭き取る。
──あー、なんか……うー。
 竜介は学年でも有名人だ──悪い意味で。そんな彼と一緒にいて、しかも彼のハンカチで
顔を拭いているところを、何人もの生徒に見られているのだ。
 複雑な気分だった。
 竜介なんかと親しくしていると思われるのは嫌だ、という気持ちは、簡単には抜けるもの
ではなかった。ずっとそういう態度で接してきたのだから、当然だ。
 だが、少なくとも、表に出すのはやめようと思う。
 そう簡単にできない事だとは思うが、なるべく、少しずつでも、そうしてゆきたい。
──恭ちゃんのお嫁さん……なんて、気が早いけどっ。
 嫌われたくない。お嫁さんになれないのなら、友達でも良いから──
「サンキュ」
 顔を拭き、手も拭いて竜介にハンカチを返す。
 ここはやっぱり洗って返すべきなのかな、なんて事を思っていると、
「あ、あ、あの……ぼ、僕も、あ、ありがとう」
 竜介は、深雪と眼を合わせようとしないし、言葉もどもってはいるが、以前のような
陰鬱さは感じられない。彼もまた、変わろうとしているところなのだろうと思う。
「た、助けて、もらったから……」
──助けた? あたしが?
 そういう事になるのかもしれない──けれど、それは彼のためではなく、
「別に、あんたのためにやったわけじゃないけどね」
「あ、あっ! そ、そうだね……ごめん」
──あれ? これって、なんかどっかで……。
 自分の言葉に、どこかで聴いたような台詞だと思ってしまう。
 たしか、あれはティーン向けの情報誌で──
「あーっ、あれだっ!」
「えっ?」
「あー、なんでもないなんでもないっ! さっさと教室戻るよ!」
「う、うん……?」
 男の子が大好きな女の子はこれだ! という見出しの躍る、馬鹿馬鹿しい記事だった。
 少し前に流行った、オタクの青年と美女との恋物語──その影響で、オタク的な内容が
その手の雑誌にも氾濫した事があった。
──あー、きっと知ってるよね……好きそうだもんなぁ、そういうの。
 自分の言葉にそんな意味を勘繰られては困る──と考えてしまう自分がどうかしている
のかもしれないとも思う。
 二人はそれっきり無言のまま、少し離れて教室へと歩いた。
 教室に戻った深雪は、千穂と舞香を廊下に連れ出した。
 二人だけに聴こえるように小さな声で、しかし、きっぱりと言った。
「もう、やめにしない?」
 竜介と同じく、深雪の眼から濁りが消えているのを、彼女自身まだ気づいていなかった。

399 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/12/04(月) 03:39:57 ID:FGz3FGox]
以上3レス。
時間が空いた割に少ないのは、ちょっと他のスレにも
書いたりしてたもので……スミマセン。

これと関連した話を別スレに投下してたり。
直接関係は無いですがw

次は恭ちゃんと夕菜の本筋に戻ります。
ではまたノシ

400 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/04(月) 04:25:29 ID:9BcvCqle]
GJですが、ノーパン羞恥だけどテーマがそこじゃない小説は余り見ない気がします。
関連小説も読んでみたいですが、どのスレでしょうか。

401 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/12/04(月) 15:06:04 ID:FGz3FGox]
>>400
GJありがとうございます。
本来ならそうあるべきスレなのでしょうけど……
なんかこんなんなっちゃっててすみません。

関連した話というのは、サイドストーリィのような感じで、
夕菜の話に登場してるキャラのお話です。
「依存」で検索>「密会」というタイトルですので、よろしければ
どうぞ〜。




402 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/06(水) 09:38:37 ID:GKDz/itE]
GJ
心理描写上手いなー

「密会」も同じ作者さんだったのか
知らずに読んでた

403 名前:夕菜の中の人 mailto:sage [2006/12/06(水) 21:36:12 ID:Vy8qvMMr]
>>402
ありがとうございます。
そう言っていただけると嬉しいです〜。

というわけで、続きというか、ようやく本編終了──です。
投下します。







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