- 395 名前:YRP常駐from群馬 [04/08/03 02:46]
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その画期的なシミュレーション・システムが稼働して翌日の事だった。 「何?全系のシミュレーションをかけると実時間で20msまでしかテスト できないだと?」 上位の上位の会社の部長(全体の中では「少佐」に相当)が朝から叫んでいた。 20msしか再現できないとは、俺たちの部隊のデバッグしているアプリの起動 準備すら出来ていない段階であった。問題の本質はハードディスクの容量が 厳しいとの事であった。そう、シミュレーションで再現する時間の20msで ディスクが一杯になってハングアップしてしまうのだ。 その20msの再現まででも丸々1日かかるらしい。ハード屋は20msを一晩で 処理できるのは画期的だと弁解していたが、期待していた俺たちもどうかしていた。 「すぐにもディスクを増設するのだ」少佐が唱えたが、 「無理です。設備の予算申請手続きに半年以上かかります!」と大尉が返した。 今回のシステムにしても、大尉が膨大なレポートを作成して予算の申請に1年前から 取り組んだ結果なのだ。ようやく申請が通る時期になって、より安価な新型機種への 変更が許されなかったという事務処理上のハードルについては、もはや誰も口にしな かった。 俺たちは、ソフト開発部隊1個中隊のPCをリニューアルできる予算を投じたUNIXマシンを 半ば呆れ果てた顔で眺めていた。瞬きよりも短い時間をシミュレーションするのに 1日〜2日もかかるとは。 Linuxマシンにして安価な高性能システムを構築するなんて言ったら、上層部を説得する のに2〜3年は優にかかる、と少佐殿はおっしゃった。 ハード部門のシミュレーション技術開発部の中尉が、それでも可能なテストについて 必死に説明していたが、少佐の一喝で黙ってしまった。
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