- 64 名前:異邦人さん [2021/12/16(木) 09:45:57.85 .net]
- >>62
お父っつぁんの仕度もできました、庭では峰一がそりを出して斑犬(ぶち)に縛りつけている、 万事万端整いますと、おっ母さんも庭に下りて藁火の用意をする、斑犬(ぶち)はゴロゴロと 戸外(そと)へそりを引き出す、ヒラリと峰一はそのそりに乗って、合図をする、斑犬(ぶち) は一生懸命飛鳥(ひちょう)のように駆り出す、お父っつぁんはその跡を追って、顔も向けら れぬ吹雪の中を、ものともせず追っかける、風は強くなる雪はますます多く降ってくる、 が峰一は少しも寒さを知らないで 「愉快、愉快」 とそりの上で吹雪の中に元気よく申しております。 https://dotup.org/uploda/dotup.org2670648.jpg 身を切るような高根颪(やまおろし)に、親子はひるまず山の方へと走りました、もうかれこれ 半里も走ったと思うころ、斑犬(ぶち)はハタと立ち止まって、あたりを嗅ぎ始めました。 ここだと言わんばかりに、尾を振りながら前足で雪を堀りかけました、峰一はそりから飛び 降りて、お父っつぁんの加勢をして、小さな手を雪の中に差し入れて、段々と深く掘っていき ますと、山の雪は豪気なものです、斑犬(ぶち)が帰ってきてから、わずかニ十分足らずの間 ですのに、早や旅人を埋めてしまい、その上に十二尺も積もっています、やっとのことに掘り 出して、そりへと乗せて、斑犬(ぶち)に合図をすると、斑犬(ぶち)は一目散に駆け降りる、 それに続いてお父っつぁんは峰一の手を曳きながら、せっせと着いて走り出した。 https://dotup.org/uploda/dotup.org2670649.jpg
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