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もうすっかり夏ですね、ではとっておきの怖い話を



299 名前:99 197 [2007/08/20(月) 15:15:13 ID:cWcekbRNO]
>>292
「限り無い陵辱と屈辱の果て。激しい苦痛と悲しみの果て。メドゥーサという名のお前が死を願ったのは、16歳の誕生日を迎えた時の事だった。」
メドゥーサはソファから腰を浮かせるほど、震え上がっていた。
俺を締め付ける力を緩める事なく、喉の奥からは血の味が感じられた。
双方の意識が共有化され、ヴィジョンが目前に広がってきた。
…太古の世界。温暖な南国を思わせる花々や果実。鬱蒼としたジャングルに、どこまでも続く白い砂浜。打ち寄せる波。青よりもっと青い、世界で一番、美しい青と表現しても構わない空と海。
空の彼方からは、スコールをもたらす雨雲が近寄り、雷鳴が聞こえてくる。
この美しく大きな島は、ムー大陸だ。
こんな楽園のような雰囲気の中で神妙な面持ちで岩が剥き出しになった険しい山を登るボロ切れの麻を纏った少女が一人。
元は綺麗な長い黒髪であっただろうが、ボサボサに乱れ、元はツルッとしていたであろう小麦色の肌は荒れて、小さく細い手足には無数の切り傷が見えた。
麻の布切れを捲れば、体中至る所に傷や痣を見ることができただろう。
険しい山を放心状態でいて無我夢中に登る度に、大粒の汗が滴り落ちる。
この少女がメドゥーサだ。
頂上まで登り詰めるとしばらく、歩いて突然、目の前が開けた。
崖の真上である。
恐る恐る崖の縁に足の指をかけて、下を覗き見る。
荒波が打ち寄せ、岩盤を削り、牙のような岩が天空に向けて口を開けているのは、遥か彼方に見える。
彼女は固唾を飲んで、その場に留まっていた。







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