- 193 名前:本当にあった怖い名無し mailto:sage [2006/10/29(日) 01:43:45 ID:PP1zt3NsO]
- 長くなったけど、つづきだ。多分これで終わる。
そうだ。あの日も畑さんはいつものように店に来てくれた。 なにしろこっちはメチャ忙しくて一人一人のお客に丁寧な接 客なんて出来やしない。けど、畑さんは別だ。 常連さんってだけじゃなくて、クルーみんなが大袈裟に言え ばファンだったからな。畑さんの。 野郎どもだけじゃなく女の子たちも、畑さんを好きだった。 旦那さんに先立たれて、子供を育てるためにろくに休みも取 れない仕事してて、それで、なんであんなに良い人で居られ たんだろう?オレにはわからない。 寒い日だったよ。ホット商品の補充も半端じゃなく多かった。 いつもなら、おにぎりと惣菜をふたつ位買って帰ってたけど、 その日はレジ横のおでんも買ってくれた。 客が多かったから、二言三言しか話せなかったけど、オレは いつものように軽口きいて、畑さんも笑ってくれたっけ。 秋口の夕方、駅前は帰宅ラッシュの車の列がずーっと連なっ てて、それはいつもの風景だった。 畑さんは赤いスクーターに乗って通ってたんだが、いつも、 店の前を通るときに必ず短くクラクションを鳴らしてた。 オレらはクラクションを聞くと、店の中からでも手を振って 見送ってた。 クラクションは鳴らなかった。店のすぐ前の交差点で、畑さ んは信号無視してきた車にスクーターごと軽く五メートル以 上飛ばされた。
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