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CHEMISTRY No.273



705 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [2021/07/12(月) 08:10:02.74 ID:VCdNjGr+d.net]
738 :俺より強い名無しに会いにいく [sage] :2019/01/08(火) 18:26:11.01 ID:F/56iY8U0
 満月の夜。朝日が昇る手前の最も闇の濃い時刻。
二人の従者を引き連れた晋の眼前に、一人の侍が立ちはだかった。

「浅草の領主にして貫家が嫡男、晋であるとお見受けした! 我が名は力丸門吉! 今からお主を心太堕ち致す!」

 門吉がそう叫んで刀を引き抜くと、従者の一人が晋を後方に引き寄せ、もう一人の従者が庇うように前へ飛び出し、肛門を向けた。
次の瞬間、男の肛門から熱を帯びた鋭きキーマの雨が門吉目掛けて発射された。しかし、先手を打っていたのは門吉であった。
抜刀と共に地面を強烈に踏み込むと、地面と平行に進むキーマの遙か上を飛び越えながら距離を詰め、着地と同時に従者を斬り捨てた。

 門吉は素早く構え直し、本命に目を据える。だが、晋はそれを意にも介さず、従者の死体へ駆け寄ると、それを思い切り蹴り上げた。

「あっはっは! まーーーーーじかーーーー!なに死んでんだよこくぅ〜wまァじで動かないじゃんねぇ?」晋はけらけらと笑いながら、背後の従者に語る。
「思いついたんだけどさぁ〜こくの骨と皮で足の重りを作ったら丁度良くない?・・・・・・まぁいいや。友達じゃないから。こくとは」

 今にも刀の切っ先が触れそうなほどの距離であるにも関わらず、晋のあまりの行動に門吉は一拍だけ気を逸らされてしまった。
しかし、次に強烈な怒りが門吉を襲った。この莫迦で不愉快な男は、配下の命をも笑って踏みにじるのだ。

「笑ってるんじゃねーよ!」

 門吉は刀を振りかぶった。だが、突如として静止したかと思うと、頭部から肛門に至るまで真っ二つに裂け、崩れ落ちた。
いつの間にか、晋の肛門から血が滴り落ちているのが見えた。晋は既に、目にも見えぬ速さで肛門から巨大な成敗棒を捻り出し、それと同時に居合いの如き要領で門吉を両断していたのだ。
それがいつ行われていたのかは斬られた門吉にも解らなかった。抜刀どころか納刀の様子すら見えなかったのだ。
それはまさに、人の定めを違反した速度がもたらす晋速の抜刀術であった。

「三の村の奴らキレっそうなんだけど」少し遅れて駆け寄ってくる従者に晋が声をかける。
「お見事でございます。しかし、何故に村の者だと?」
「わっかんねー」
「お言葉ですが、他の者を納得させるような物証がなければ・・・・・・」

 それを聞いた途端に、晋は大声で笑った。

「そうなんだよね〜でもさぁ〜−宣ちゃんも気付きな?そろそろ。俺がそう思ったならそうなんだって事に」

 地面に横たわる二人の亡骸には目もくれず、晋は村へ向かって歩み始めた。
反逆を企てた者の村ともなれば、それまで晋のパワハラを辛うじて食い止めていた体裁というものも不要になる。

「宣ちゃん。今日は楽しくて寝られないね」

 夜中三時半の青白い月光が、暴君の邪悪な笑みを不気味に照らした。






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