- 3 名前:鬼の副長 mailto:sage [2017/08/12(土) 20:35:05.66 ID:TN44FiOH.net]
- これもねヤバイ良い顔でゴール走り抜けるのが容易に想像できる
俺の幼馴染に、男の癖に弱虫で涙もろい奴がいた。 ただそいつは天性のマラソンランナー、陸上部では英雄だった。 俺も同じ種目だったが、どうやっても追いつけない。 いや、他の誰でも−先輩でさえあいつの走りには勝てなかった。 悔しくて悔しくて、俺はあいつに負けない練習量をこなし続けた。 そして中学に入ってすぐの頃、俺は初めてあいつを抜かした。 でも、俺が速くなったからじゃない。向こうが遅くなったんだ。 全身の筋萎縮症。詳しい病名は忘れたが、それが医者の診断だ。 あいつは生きる希望を、俺は勝利の機会を永遠に失った。 なのにあいつ、元気一杯に俺を応援し続けるわけよ。 「僕は走るのも、走ってる人を見るのも好きなんだ」て。 俺が地区予選で優勝したときなんか、人前で大泣きしちゃってさ。 車椅子の中で、自分のことみたいに顔をくしゃくしゃにしてた。 あれが恥ずかしかったのかなあ。 それとも、やっぱり走れないことが辛かったのか? あいつはそれからしばらくして逝った。 その後もあいつを追い続けた俺を、人は「最速の男」と呼ぶ。 けれど、それは間違いだ。 まだ、一度もペースメーカを抜けたことがないのだから。 何年も見続けたあいつの背中が、今日も俺を引っ張っている。 いつまでだって、その後を追ってやるさ。 あいつの残像に追いつくまで……追い越すまで。 そして、同じところに召されるまで。 誰にも見えない、ゴールインの直後を駆け抜けるんだ。 2、ゲット
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