- 352 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/05/16(水) 23:18:08.87 ]
- >>347
つづき hooktail.sub.jp/algebra/GroupAxiom/ 群の公理 [物理のかぎしっぽ] 抽象群の成立過程 古代バビロニアや古代ギリシャ以来,19世紀まで,代数学の研究対象は数の性質や,計算法則でした.演算方法に関する研究も,例えば,ベクトルの演算,微分・積分,対数の演算など,個別の演算方法に関するものでした. 私達が高校までに習う算数・数学も,ほとんどが,個別の計算技法です.古典的な代数学は,方程式の解法や式変形,計算法則を研究する分野でした. ところが19世紀に,演算の本質は,対象物(数など)そのものにあるのではなく,対象物の間に成り立つ算法の法則こそが大事なのだ,という視点の転回が起こり, 扱う対象も,その対象に成り立つ演算も,すべて抽象化してしまって,『演算対象と,その間に成り立つ演算という 構造だけ 』を抜き出して考えるという,いわば代数学の抽象化が19世紀に進みました. 上の例で考えたように,普通の数の足し算と,ベクトルの足し算はまるで違うものですが,こういった計算を,包括的に扱うことが出来るようになった時点で,非常に大きな質的な変化が数学に起こったと考えて良いでしょう. もちろん,数学が,それ以前の数学に比べて,論理構造のみを追う論理学や哲学に近くなり,敷居が高くなってしまったのは残念です. あまりに抽象化が進むと,『何の役に立つんだ!』と言いたくなることはあります(特に自分が理解できない場合!). しかし,抽象化は人類の素晴らしい能力であり,大局的な視点が養われれば,ずっと見通し良く,様々な対象を一段高い視点から捉えられるようになります. 本稿以降に,有限回転群,クラインの四元群などを見ていきますが, 日常生活の上ではまったく異なった操作だと思える,数の演算,ベクトルの演算,物体を回転させること,物を並び替えること,物を折り返すこと,などが, まったく同じ議論でまとめて扱えることの強力さとエレガントさを,どうか味わって下さい.
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