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現代数学の系譜11 ガロア理論を読む27



237 名前:訳者である村田全氏は数学史には3つのアプローチがあると云う。ひとつは本書のような数学の中における自律の発展史という見方である。
第二に人類文化史や社会経済史、哲学史、自然科学史など全体の歴史の中のひとつの要素として数学の歴史を捉える見方である。第三に数学の中へ持ち込まれた他の影響を調べるアプローチもあるという。
いずれにせよ文化科学や社会科学においてそれぞれの歴史学が存在する(政治史、経済史、哲学史などなど)が、数学や自然科学には歴史という見方が稀薄である。これには自然科学は実学で現在でも立派に通用しているから、歴史的にしか存在しないものは乗越えられたという見方からきているようだ。
古代ギリシャの論証体系の確立に始まり、近代には記号論的演算力の切れ味が応用され、17世紀には科学革命の推進力となった。今日では圧倒的な数理科学にまで成長した。この数学の驚異的発展の恩恵は測り知れない。
ところが数学の発展はいつも実学の要求に応じて開発されたものかというと、全くそうではない。20世紀においても数学は理論数理物理学の欠かせない手段となったが、それが物理学が利用したまでの事であって、数学は自律的抽象化の道を歩んだにすぎない。
数学者の関心の的が「時代の子」として物理学に注がれることは事実だが、別にその請負仕事ではなかった。数学の歴史には20世紀を分かれ目として、19世紀的な輝かしい具体的数学と、20世紀的現代抽象数学がある。ブルバキは当然現代抽象数学の先端を行くものであろう。

つづく
[]
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