- 540 名前:文責・名無しさん [2023/07/16(日) 09:29:49.35 ID:A0G1X+KJ0.net]
- 3つの条件がそろわなければ、役者は仕事にならないという。脚本、演出、そしてチャンスである。「いくら名優と言われようが、仕事がなければただの人」と言ったのは永六輔さんだった(岩波新書『芸人』)。
▼役者(俳優)の敵といえば、次の都々逸も思い出す。<役者殺すにゃ刃物はいらぬ/ものの三度もほめりゃいい>。役がなければ仕事にあぶれ、かといって安い拍手に舞い上がってもいけない。難しい稼業には違いない。昨今は、新たな強敵が足元を脅かしている。 ▼いわゆる生成AI(人工知能)の台頭である。米ハリウッドの俳優ら約16万人が加入する全米映画俳優組合は、AIの規制などを訴えてストに突入した。人の声や容姿、演技を学習すれば、仕事を奪いかねない―と。米国では、脚本家らの組合もストを続けている。 ▼同時ストは63年ぶりといい、過激なアクションで過酷なミッションに挑むトム・クルーズ氏の、新作公開に合わせた来日が中止となった。作品のネット配信をめぐる報酬のあり方も、制作者側の見解と隔たりがある。大作が1本撮れそうなハリウッドの危機だろう。 ▼来年の米大統領選では、AIを悪用した候補者の偽映像が有権者の判断を狂わせかねないと危ぶまれている。AI開発が人類に及ぼす危険を、「核戦争と同列にみるべきだ」と指摘する研究者も多い。「映画の都」の騒ぎは、誰にとっても遠い対岸の火事ではない。 ▼顔は化粧でごまかせる。目は、そうはいかない。「だから、役者は目ン玉を見れば分かるんだ」。先の書には、そんな言葉もある。いくら成長著しいAIでも目玉までは。そう笑い飛ばせる眼力が見る側に求められる時代らしい。AIが人間に突きつけた難しいミッションである。
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