- 117 名前:文責・名無しさん mailto:sage [2016/05/18(水) 05:21:10.73 ID:Aa2Xfr0+0.net]
- 【産経抄】蓮実節再び 5月18日
「もっと新しい人、新しい作品に当てられるのがよいのではないか」。 山本周五郎がこんな理由で、昭和18年の直木賞を辞退したエピソードは広く知られている。 ▼実はそれに先立ち、15年の芥川賞にも辞退者がいた。 『回想の芥川・直木賞』(永井龍男著)によると、現在の東大教養学部に当たる一高のドイツ語の教授、高木卓である。 「素直に受けてくれないと、審査するものは迷惑である」。 賞を創設した菊池寛は、当時の「文芸春秋」に憤懣(ふんまん)をぶちまけた。 ▼三島由紀夫賞と山本周五郎賞は、芥川賞と直木賞の向こうを張って昭和63年に始まった。 将来「回想の三島・山本賞」が編まれるとしたら、今回三島賞を受賞した蓮実重彦(はすみ・しげひこ)さんは、必ず取り上げられるだろう。 「新鋭」という賞の規定に、80歳の蓮実さんはあてはまるのか、審査員の間で議論が交わされたはずだ。 仏文学や映画評論の分野では、すでに第一人者の地位にある。 ▼受賞当日の記者会見ものちのちまでの語り草になりそうだ。 「全く喜んでおりません」「日本の文化にとって嘆かわしい。若い方がお取りになるべきです」。 蓮実さんは終始、不機嫌だった。 ではなぜ、辞退しなかったのだろう。 ▼「抱負は?」「よく分からない」「好きな映画は?」「答えたくない」。 実は平成9年に東大学長に選出されたときの会見でも、迷惑といわんばかりの返答に記者はとまどったものだ。 それでも職責は全うした。 華麗な文章同様に、独特な会見のスタイルも「蓮実節」なのかもしれない。 ▼受賞作の「伯爵夫人」は、日米開戦前夜の東京を舞台に、帝大受験を控えた若者と年上の謎めいた女性との交情を描いている。 エロチックな描写の連続にすっかり酩酊(めいてい)してしまった。
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