- 34 名前:名無しさん@お金いっぱい。 mailto:sage [2015/02/26(木) 22:40:18.50 ID:d47l1BMq0]
- 「兆や兆るんや!!!兆らなければただのゴミ!こう教育された」
これが彼の口癖だった 事あるごとに「兆!兆!兆!!!!」と1Rの部屋で声を発し ある時はトレードをしながら、ある時は明日買う銘柄を考えながら、そして深夜に目を覚ましては突然シャウトした 頭のなかは株と兆のことでいっぱいでこの狭い部屋が彼の兜町だった けれども、毎日それを言っているうちに回数がどんどん増えていき、しまいには壊れたロボットのように 「兆!兆!兆!いい感じ!兆!兆!兆!兆!いい感じ!ウォウォウォウォウォウォ ストックレボリュショーン〜」 などとわけの分からないことを歌い始め止まらなくなった 大声で歌っていたために異変を感じた近隣住民が通報し、彼は警官に連れて行かれそのまま病院へ直行した 鎮静剤を打たれて落ち着いてから彼は医師に診断結果を告げられた 「あなたは盲兆です」 「盲兆?それはなんです?お腹は全然いたくないのですが」 「兆を意識しすぎて他のものが何も見えなくなる病気です。株などの投資をしている人が陥りやすい禁断症状として近年注目され始めています」 「それで、私は一体どうしたらよいのですか?」 「そうですね株を辞めるのが一番ですよ」 「そんな!兆ることが私の人生の目標なのです。それがなければ生きていけません」 「そうでしょうね。この病気の人はみんなそれが生きがいなのです。無理をして辞めて自殺してしまう例も多いのです」 「それでは私は歌いながらトレードをするしかないのでしょうね」 「方法はあります。あなたが兆ればよいのです。兆ればこの呪縛から解放されます」 「なるほど兆れば解決ですね!一刻も早く兆らなければ!」 「興奮状態ではトレードもままならないでしょう。鎮静剤を処方します。しかし、効かなくなるのでなるべく使わないようにしてください」 「しかし、薬がなければ兆への衝動が抑えきれ無いと思いますが」 「心のコントロールも重要です。兆を忘れなさい。忘兆です。無心でトレードすることで結果もついてくるでしょう」 「努力します」 その日から、盲兆を克服するために彼はマーケットが開く前に十分間の座禅を組んだ 無心になり忘兆でトレードするにはこれが最適ではないかと直感したからだ 次第にザラ場中に兆のことを考えることなくトレードができ飛躍的に資産が増加していった それから十年が経ったが、彼は今も自分の兜町でトレードをしている その日は久しぶりに先生が往診に来る日であった 「調子はどうですか?」 「ええ、最近は兆とつぶやくこともなくなりました。無心でトレードして資産も毎年増えています」 「それは良かった。ところで後いくらで病気を克服できそうなんですか」 「そういえばしばらく損益だけで合計の資産額を見てませんでした。ちょっと計算してみます」 彼はテキパキと分散した口座の資産や不動産の価格を電卓に叩き込んだ 「あ、兆ってるやん」
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