- 508 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2009/06/23(火) 00:11:02 ID:vChHhtKr0]
- あれから10年、
そこそこ大きい会社に入って日々這いずり回っていた。 小金が入れば自分への投資にまわした。 資格もとった。技術もとった。進んで出張も転勤もした。今の足元なんてどうでも良かった。 あれから20年、 頑張りすぎて逆に残金が危なくなることもあった。 それでも多少は認められてきたのか、やったなりの金は手に入るようになった。 支えてくれる妻も見つかった。 それは他の生き方への分岐路を閉ざす枷でもあったけれど、さらに頑張るための磐石な土台でもあった。 あれから30年、 若いころの成果が実ってやった以上の金が手に入るようになった。 既得権益とか言われるが、これがなければここまで頑張れた自信はなかった。 郊外に家も買った。大きすぎるくらいの土地に、豪快に面取りされた上物を。溜まった金も一気に減った。 それでもいつか、妻と一緒ならばこの枷も越えられると信じて頑張った。 あれから40年、 若いころから見れば不当なほどの金が手に入るようになった・・・のであれば美談だったが、結局そこまで出世はできなかった。 それでも子供も大きくなり、二人の稼ぎにも余裕ができた。 感慨がないままに、いつしか家族の貯金は家を建てたときよりも増えていた。 相変わらず転勤出向続きで滅多に帰ることのない家の庭に、俺たちは丸天井の建物を作り始めた。 あれから幾年か、 想像していたよりはずっと小さな丸天井に、想像していたよりはずっと小さな単球。 朝の暗闇の中で、10席だけの客席のひとつに寝転がる。 どんな夢をみていたんだろう。 何を追いかけていたんだろう。 もう、何のためにここまで頑張ってきたかなんて忘れかけていた。 うつらうつら。 不意に単球の電源が入れられた。 いまや銀髪となった妻が前にいた。 流石に恥ずかしかったのか、精一杯に大きなリボンをして 忘れかけていた、半世紀前の言葉。
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