- 206 名前:ほんわか名無しさん mailto:sage [2007/06/22(金) 23:41:03 O]
- 事の発端は、朝食中の彼女の何気ない一言だった。
「やっぱし、目玉焼きには醤油よね」 彼女はそう言いながら、目の前の目玉焼きに今にも醤油をかけようとしている。僕はメジャー選手も真っ青のダイビングキャッチで醤油を奪い取ると、床に転がった。 手から醤油が滑り落ち、床で割れる。アウト。いや、目玉焼きにかかるのだけは阻止できた。セーフ。 「キャッチ失敗だからアウトにはならないじゃない」 「だからセーフだって」 「セーフの意味が違うのよ」 椅子に座ったまま彼女は、醤油まみれで床に転がる僕を見下ろしている。 「それより、一体全体何のつもり? 私は優雅な朝食を今にも楽しもうってとこだったのに」 「目玉焼き程度で優雅か……ふっ」 僕は鼻で笑った。 「うざい」 殴られた。 「少なくとも目玉焼きに醤油をかけては、優雅な朝食にはならない」 鼻血と醤油にまみれて床に転がりながら僕は言った。 「何ですって」 「醤油じゃ駄目だ、と言ったんだ。それじゃ優雅じゃない。ノットスマートだ」 「ノットスマートって言い方が優雅じゃないしスマートじゃないよね。スマートじゃない、て言いなさいよ」 僕はとりあえず彼女の言葉を聞き流して、何事も無かったように席に戻った。ゆったりとした動きで、それを取り出す。 「いいか。目玉焼きには――ソースだ」 「ベタね。今大勢の期待を裏切ったわよ」 僕がソースの瓶を傾けると、その先端から茶色いとろりとした液体が流れ出てきた。 「いいか、目玉焼きにはソースでなければならないんだ」 僕は目玉焼きにソースをかけることの素晴らしさを説明し始めた。ここに書くとそのあまりの素晴らしさに聞き惚れて夢の世界に行ってしまう人がいるだろうから、省略する。
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