- 581 名前:枯れた名無しの水平思考 mailto:sage [2008/04/07(月) 01:18:44 ID:MyiCeLXeO]
- 「彼は僕のたった一人の親友でしたよ。」
私の問いに対して彼、ジミー氏は静かに、だけれど力強くそう言った。 今から一ヵ月前にロサンゼルスのとある郊外で大規模な玉突き事故が起こった。 およそ60台にも及ぶ車がクラッシュするという正に前代未聞の大事故だった。 しかしそんな大事故だったにも関わらず幸運にも、とは言えないが犠牲者はたったの一人だったのである。 犠牲者の名前はショーン・T・ゲイムス氏。 事故のほとぼりが醒めてきた今、生前ショーン氏の友人であったというジミー氏に私は取材に来たのだ。 「気が弱くいつもいじめられていた僕にとって初めての友達でした。 ゲームを通じて知り合ったんですよ、パズルの。 何気なく出場してみたそのパズルゲームの大会で運が良かったのか僕は快調に勝ち進んだ。 そして決勝まで勝ち上がったときに目の前に居た対戦相手がショーンだったんです。」 事前に少しばかりジミー氏とショーン氏の関係を調べていた私はその事を既に知っていた。 「確かぷよぷよのロサンゼルス選手権ですよね。 当時無名だったあなたはその大会では完全にダークホースだったと聞いています。」 お恥ずかしいです、と言い頭を掻きながら彼は続けた。 「ええ、そのロサンゼルス選手権で僕は優勝しました。 それも嬉しかったんですがそれよりもそこでショーンと出会えた。 それが何より嬉しかったんです。」 それはジミー氏にとって本当に大切な思い出なのだろう。 彼と話し始めてから初めて私に笑顔を見せてくれた気がする。 だがすぐに表情を曇らせてしまった。 「彼は僕にとって本当にたった一人の友人だったんです。 ……なのに何であんな事になったのか、正直未だに信じられません。 来年は世界で日本勢を見返してやろうって約束したのが事故の二週間前ですよ。こんなのってないです。」彼はそう言ったきり黙ってしまった。 沈黙のまま五分ほど流れただろうか、俯いた彼に私は今回の取材の本題を切り出した。 「ジミーさん、きっとショーンさんは最後までその約束を守ろうとしたんだと思いますよ。 いえ、そうでなければこれはあり得ないんです。」 私の言葉を聞いてジミー氏は顔を上げた。 「………?」 怪訝な表情を見せるジミー氏に私は一枚の写真を見せた。 そうして彼はその写真を僅かの間見つめた後こう呟いた。 「………15連鎖で発火点は君か。本当に君らしい大連鎖だよ………」 テーブルの上にはまるでぷよぷよの連鎖のような色とりどりの車が並ぶ、上空からの事故現場の写真があった。 ●●□□ ●◎◎◎○ □□○●●● ●◎◎○○□ 2005年世界選手権 ジミー氏123位 ショーン氏97位 2006年世界選手権 ジミー氏ベスト24入り 2007年世界選手権 ジミー氏9位入賞 ショーン氏との悲願トップ8入りには未だ届いていない。
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