- 832 名前:水先案名無い人 [2021/01/19(火) 23:25:43.24 ID:vpI+h3+w0.net]
- ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。
やがて御釈迦様はその池のふちに御佇みになって、水の面を蔽っている蓮の葉の間から、ふと下の容子を御覧になりました。この極楽の蓮池の下は、丁度地獄に当って居りますから、水晶のような水を透き徹して、落選地獄の景色が、丁度覗き眼鏡を見るように、はっきりと見えるのでございます。 するとその地獄の底に、井脇ノブ子と云う男が一人、ほかの罪人と一しょに蠢いている姿が、御眼に止まりました。このノブ子と云う男は、本当は女なのでございますが、子供を殴ったりゲロを飲ませたり水道代を払わなかったり虚言をしたり落選したり、いろいろ悪事を働いた大悪人でございますが、それでもたった一つ、善い事を致した覚えがございます。と申しますのは、ある時この男が深い林の中を通りますと、小さなちんぽちゃんが一匹、路ばたを這って行くのが見えました。そこでノブ姉は早速足を挙げて、踏み殺そうと致しましたが、「いや、いや、これも小さいながら、命のあるものに違いない。その命を無暗にとるちゅう事は、いくら何でも可哀そうじゃ。」と、こう急に思い返して、とうとうそのちんぽちゃんを殺さずに助けてやったからでございます。 御釈迦様は地獄の様子を御覧になりながら、このノブ子にはちんぽちゃんを助けた事があるのを御思い出しになりました。そうしてそれだけの善い事をした報には、出来るなら、この男を地獄から救い出してやろうと御考えになりました。幸い、側を見ますと、翡翠のような色をした蓮の葉の上に、ちんぽちゃんが一匹、白濁の糸をかけて居ります。御釈迦様はそのちんぽちゃんの糸をそっと御手に御取りになって、玉のような白蓮の間から、遥か下にある地獄の底へ、まっすぐにそれを御下しなさいました。 こちらは落選地獄で、ほかの罪人と一しょに、落ちたり沈んだりしていたノブ子でございます。何しろどちらを見ても、まっ暗で、たまにそのくら闇からぼんやり浮き上っているものがあると思いますと、それは肉味噌やゲロでございますから、その汚さと云ったらございません。ですからさすが大悪人のノブ姉も、やはり肉味噌に咽びながら、まるで死にかかったオッサンのように、ただもがいてばかり居りました。 ところがある時の事でございます。何気なくノブ姉が頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、ちんぽちゃんの糸が、一すじ細く光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。ノブ姉はこれを見ると、思わず手を拍って喜びました。この糸に縋りついて、どこまでものぼって行けば、きっと落選地獄からぬけ出せるのに相違ございません。いや、うまく行くと、厚生大臣になる事さえも出来ましょう。 こう思いましたからノブ姉は、早速そのちんぽちゃんの糸を両手でしっかりとつかみながら、一生懸命に上へ上へとたぐりのぼり始めました。 しかし地獄と極楽との間は、何万里となくございますから、いくら焦って見た所で、容易に上へは出られません。ややしばらくのぼる中
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