- 1 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2010/06/30(水) 17:04:20 ID:mKBw+TJI0]
- ドラクエシリーズシナリオスタッフ募集
www.square-enix.com/jp/recruit/career/job/game/dq_index.html
- 399 名前:1/2 mailto:sage [2010/07/09(金) 05:50:16 ID:ibMVIiv3Q]
- 暗い闇の中、その者は生まれる。
全てが無い世界に忽然と現れた彼は、自分の体も生まれた理由も知らず、ただ自意識 だけを宙に漂わせるのみである。 そんな彼が唯一出来ること、それは、漠然とした意識の奥底から湧いてくる声に聴覚 を傾けることであった。 多種多様なその声は決して自分に向けられたものではなかったが、聞いている内に彼 は理解した。 これは何者か一人が体験している声、あるいは体験したであろう記憶にある声である こと。知らない世界が存在して、少なくともそこに自分以外の生き物がいること。 歓喜した彼は、このなにも無い世界から出られる手懸りも見つかるかもしれないと、 当分の間を、声の中で生きることにした。 その者はある時、一国の姫に仕える騎士だった。 平民の出だった彼だが、才覚に秀で、出で映えする容姿を持つために、本来は成り得 ない位を受けたのである。 国王からの信頼も厚く、後見人としても補した彼は、親密な姫との間柄にいけない噂 が立つほどであった。 事実、姫から胸中を語られたことも幾度かあった。騎士も思いは同じで、実に喜ばし いことだった。しかし、自分の立場をわきまえる彼はその度に姫をいさめるのである。 そんな、幸せ鳴りやまぬ内の出来事だった。 国王が暝目し、姫がそのまま円滑に位を継ぐかと思われた矢先、昔に亡くなった叔父 王の息子を擁立するものが現れたのである。 この王位継承の争点は、伝説の剣にあてられた。 自国に語り継がれる話によると、初代国王が位に就く時に神から授かったという剣が あるらしい。そして今回のような問題が起きた場合、その剣を手にする者が正統性を拳 証できるのだと。 現在、王家からは紛失しているその伝説の剣を、姫とその騎士は身を粉にして探した。
- 400 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2010/07/09(金) 05:54:46 ID:JA6h/QGLO]
- キーワードがひとつしかないね><
- 401 名前:2/2 mailto:sage [2010/07/09(金) 05:55:57 ID:ibMVIiv3Q]
- しかし、見つけたのは従兄弟である王子の側だった。
王位を取られるばかりか、後に謀反の嫌疑をかけられた姫はそのまま打ち首にされて しまった。件の剣でである。 騎士は、その位を追いやられ、唯一である愛しい君をも失った。 彼は嘆き渡る。なぜ神は自分を独りにさせるのかと。届く声ももはや雑言に他ならず、 闇の中をたださまよい続ける。 そして数百年の時が流れたが、その者は生きていた。 哀傷が彼を変貌させたのかはたまた初めからそういう者として生を受けたのか。ただ、 時が来るのを堪え忍んでいたのである。 否、違った。 長い年月の間に、この絶無の世界に己が存在する理由がわかったのだ。そして今とい うこの瞬間を待ち続けた。 彼を満たすのは狂喜で、それもそのはず、自分を苦しめた伝説の剣に再び、いや三度 会えることが出来るのだから。 入り日の光に射されたその者は、己の眉間に両手をかざしていた。 一本の剣が深く突き刺さっているのを感じた彼は、それを一息に抜く。血肉がほとば しる音を他所に、立ち上がって、己の身体を確認する。 一国の騎士でありながらその主を無くし、落ちに落ちて今は魔族の女帝として君臨す る者の姿があった。 多くの貴女をも魅了しつつも、決して弛むことなく磨き続けられた身体は健在。その 居所を甲冑から皇帝鎧へと移すも、なお雄勁で艶麗な、兼備の様相を醸していた。 そして、その者は相対する男へと口を開く。 「く、くくく……っ! 思い出したよ勇者ァ!! 久しぶり、いや、貴様にとっては数 瞬に足らんか。まあまた会えたことに感謝するとしよう。そしてさようならだ。我が積 年の苦しみ、今ここで晴らさせてもらう!!」 かつてどれほど切望し欲したか、そして、君を自身を貫いて意識を暗い奥底へと閉ざ させた伝説の剣。 どれほどの思いを胸にか、彼女はその剣を手にし、今一度、勇者へと戦いを挑むので あった。
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