- 39 名前:オペラ座の空賊【74】 ◆WzxIUYlVKU mailto:sage [2009/01/12(月) 01:31:01 ID:8osiS2gE0]
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>>32-37のつづきです。 アーシェに引っ叩かれた後でヴァンが再び閉じ込められたのは、窓すら無い地下の独房だった。 本来なら重い罪を犯した者…もっとも、ラバナスタではそういった犯罪者は極めて少ないのだが、 そこにヴァンを入れると聞いて、バッシュは猛反対した。 しかし、アーシェはそっけくそれを跳ね除けた。 「甘やかすと、あの子の為になりません。」 ラーさーはその横で思わず吹き出す。 「お二人を見ていると、姉弟のようですね。」 「彼が弟でしたら、あの様な暴言、許しませんわ。」 「許すも何も、すぐに手が出ていたようですが。」 アーシェは深いため息を吐き、 「本当に、あの子ったら。」 アーシェとラーサーの二人が顔を見合わせ、くすくすと笑い出すのに、 バッシュはどう声を掛けて良いのやら分からない。 「ジャッジガブラス…心配しなくとも、陛下はちゃんと分かっておいでです。」 そんなバッシュを見かねてラーサーが声をかける。 アーシェも浮かない顔のバッシュに微笑む。 「あなたも気付いていたでしょう?ヴァンは今、何かにふり回されています。 自分でも気付かない内にね。頭を冷やし、それが何かを見極めなければ。 それに、責任も取らねばなりません。時間と、反省が必要なのです。」 「は。」 バッシュは恭しく頭を下げる。 「しかし、ヴァンをいつまで留めておかれるおつもりですか?」 「その内、誘拐犯が何か言ってくるでしょう。それまでです。」 アーシェは軽やかに言ってのけると、ラーサーに頭を下げる。 「ラーサー様、ご心配でしょうが、ご報告は密に致します。」 ラーサーは思わず苦笑いを浮かべる。 「それは…国でただ知らせを待てという意味でしょうか。」 「お気持ちは分かります。」 「すいません、愚痴でしたね。陛下、顔をお上げ下さい。」 アーシェは言われた通りに顔を上げるが、 無理に笑顔を作る幼い皇帝の顔を真っすぐに見る事が出来ない。 「あなた方と旅が出来て良かった…陛下の言葉を信じる事が出来ます。」 「ラーサー様……」 「一つ、教えて下さい。陛下は…どんな結末をお望みなのですか?」 「あの二人の心のままに。」 ラーサーは目を丸くする。 「良いお姉さん、でしょう?」 ラーサーはアーシェの手を強く握った。 「国に戻ります。今回の騒ぎで元老院が手ぐすねを引いて待っているのでね。」 「お察ししますわ。」 ヴァンとパンネロの処遇を聞いて胸を撫で下ろすバッシュだが、 (だが…) 若い君主二人が痛々しい。 (すぐにでも、飛んで行かれたいだろうに。) しかし、アーシェもラーサーも、君主故に負う責がある。 (こんな時に…君はどこに居るのだ…) バッシュは二人に気付かれない様、小さくため息を吐いた。
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