- 145 名前:恋人は名無しさん [2011/03/22(火) 07:03:18.12 ID:MNO+S4TK0]
- 今の彼と友人期間を経て、付き合い始めてから二ヶ月目の事。
その日は二人で平塚で映画を見た後、茅ヶ崎の海に行った。 まだお互い友人の延長線でしかなく、目を合わせるのも、手を伸ばせば触れる手の距離も、 相手の顔色を伺ってはそれを誤摩化していた。 夜になって海辺に座りながら、今日観た映画の話をする。 途中、彼の顔を見てキスする所を想像しては急いで目線を変えた。 夜中になって私の携帯に二人の共通の友人から電話が来た。 話は一、二時間と長引いてようやく終わり、私はその電話の内容を話題に、 照れ隠しをする為に絶え間なく彼に話しかける。それをまるで見透かす様に、彼は聞いた。 「○○さん」 「なに?」 「キスしてもいいですか?」 私は焦り、本当はずっとしたかった癖にと自分を責めながら顔を隠した。 「実はずっとしたいなって思ってたんだけど、中々言えなくて」 そう続けて言う彼を前に私は必死で言い訳を吐いた。 「さっきまでいつもの○○さんの顔だったのに、すぐに女の子の顔になるんですね」 と言われ更に顔を隠した。そして性懲りも無く話をそらす内にまんまと朝になった。 期待と安堵と高揚とが混じる中、車に戻った時、彼が再度問いかけた。 「キスしたら駄目なんですか?」 私はおそるおそる「あの…手をつないだり…してからしたいなって…」と言うと、 彼はすぐに手を差し出した。私は躊躇しつつも、彼の手を握った。とても暖かかった。 付き合う前に彼と朝まで公園で話した事、彼に好きだと伝えた時の事、 俺じゃ駄目だと一ヶ月連絡が取れなくなった時の事、今までの出来事すべてを思い出し、 「ああ今まで彼はこんな体温だったんだ」と、私の体が理解した様だった。 それから「キスしていい?」と聞かれ、「うん」と小声で答えた。 聞こえないでいて下さいと、思いながら。彼は、覆う様にして私の唇を包んだ。 今まで交わしてきたどんな会話よりも一瞬にして彼の考えが解った様な気がした。 それと同時に、私の思いも寸分違わず彼に伝わっている気がした。 それから随分経った今日、彼に「結婚しよう」と言われた。 これから何度もこの初めてのキスを思い出すと思う。 平塚や茅ヶ崎に行ったり、彼とキスをする度に。
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