- 934 名前:官兵衛×鶴姫 9/9 mailto:sage [2010/02/01(月) 02:40:16 ID:5Us+C05X]
- 忌々しげに吐き捨てる。
あの手枷は嘘ではなかったのかと、鶴姫は目を伏せ、ぼんやりと胸中で振り返った。 「奴がここに来たということは、姫様の力のことを知ったからでしょう。和議を結んでしまった以上、次は姫様の 力を己が野望に使うことを強いてくるかと。決して、奴に心を許してはなりませぬぞ」 頑なな口調で紡がれた当て推量に、鶴姫は緩くかぶりを振った。 「私の力は、要らぬと言っていました」 「こちらを安心させる詭弁に違いありませぬ」 「でも……嘘を言っているように、見えませんでした」 「もっともらしく騙す者は、真実の中に一片のみ嘘をひそませるものといいます」 あらゆる害毒から守ろうとする強い意思で、そう兵が断言する。 反論できなくなり、鶴姫は唇を結んだ。 (嘘、だったの?) 確かに最初は騙された。 けれど、正体を明かした後に語った言葉は。 人を救えても己を守ることができぬ力など、振り回される前に捨ててしまえと、惜しみもせず言い切り、失わせ ようとした、あの行為は。 何を信じればいいのか分からなくなり、答えを求めて鶴姫は顔を上げ――目を瞠った。 小さくなりつつある商船の舳先に、こちらを見送るように官兵衛が佇んでいた。 「――――」 目を凝らす。せっかく風が髪を揺らして顔が見えるのに、遠すぎて読み取れない。何を考えているのか、分からない。 (知りたい) 胸の奥に、願いが湧き起こる。 彼の真意を、ちゃんと知りたい。 戦いへと赴くために、官兵衛の船が動き出した。彼の姿もすぐに舳先から消え、完全に見えなくなる。 それでもまだ分かりたくて、まばたきを忘れて、鶴姫は一心に船影を見つめた。 心臓がとくんと脈打つ。 その鼓動の早まりを何と呼ぶのか、少女はまだ、知らなかった。 おわり。 改行多すぎと途中で言われてしまい、レス数増えてもうてスマン。
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