- 486 名前:@巴のマスター mailto:sage [2007/11/22(木) 08:41:57 ID:4bx74MwZ]
- 「ちょっと待て!…システムがどうして巴を狙うんだ?それにおまえの本当の目的は何なんだ?」
すると巴はそっと両手を胸にあて、静かに首を振った。 「シンクロイド・システムは…巴がわたしの精神状態を乱す物として捉え、封印するか、改造しようと しています。…でも、わたしは違います」 「どう…違うって言うんだ?」 おれは少しずつ…トモミに対する警戒心が薄れていくのを感じていた。 明らかに敵意は感じない。 だが…信用するには、まだ早すぎる。 「わたしは…巴に会いたいのです…システムの一部としてで無く、同じひとの分身同士として」 「会って…どうするんだ…旧交でも温めるつもりかい?」 これまた皮肉混じりに言ったが、トモミは初めて満面に笑みを浮かべて、小首を傾げながら頷いた。 …これって…巴と同じリアクションじゃないか? そしてトモミは目をつぶり、祈るようにおれに囁いた。 「わたしは…わたしの欠けているものを…巴に分けてもらいたいのです」 「…欠けている…もの?」 「はい」 「それは…何だ?」 「それは」 トモミは僅かにためらいながら…静かに、小さな声で言った。 「朋さんの…心…です」 暫くの沈黙があった。 おれの頭の中に、巴の言葉が蘇る。 <ただ…ともねえ…『朋』としての記憶は殆ど受け継がれなかったのですが、意識…心は このわたしに遺されたのだと思います> <じゃ…巴の心は…> <たぶん…『朋』がベースになり、改めて巴として完成されたのだと思います> 「…それは…無理だろう」 おれの言葉に、トモミは目を見開き、どうして?という抗議混じりの表情を浮かべた。 「ともねえの心は…今は巴自身のものだ。ともねえの記憶が無くなって以後、巴自身が自分で 得たものであって…元のままではない」 「…それでも…それでも良いのです!!」 いつしか、トモミの声に悲痛なものが感じられ、おれは、何か胸をつかれる思いがした。 「それでも良いって…だってそれじゃ…君は巴と同じに…いや巴自身になるって意味だぞ?」 「そうです…わたしの望みは…それなのです!」 …トモミの言葉に、おれは暫く言葉を失った。 これが演技だとしたら…アカデミー賞…オスカーものだろう。 当然、そのまま信じられやしない…そう、言い切りたいところだか…。 気が付くと、トモミの蒼い瞳が僅かに潤んでいる事に気付いて、思わず吐息をついた。 「おいおい…泣くなよ。…って言うかさ…どうしてそんな事を言うのか、理解出来ないんだよ」 正直…先刻まで皮肉っぽい事を言っていたおれが、何だか意地悪しているような気がしてきて、 少しずつ…妙な罪悪感が心の奥底からこみ上げてきていた。
|
|