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ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α6



1 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/08/24(金) 19:37:09 ID:3eN8TkYf]
スレタイの通り、ロボットやアンドロイド萌えを語りましょう。

前スレ:
ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α5
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151 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/04(木) 19:39:13 ID:E9eyWi+h]
ちょっ! なんか地方民にはうらやましすぎる話してるスレはここですか?

前にネットで動画見て以来、あそこの店長さんの作品がずっと欲しかったん
だけど、距離の問題でお店に行けなかったんで……自律駆動カメラでバーチャル
来店して、通販するんじゃダメかお願いしてみたんだよな。

結局、カメラ越しだけじゃ娘の善し悪しは分からない。近くでも良いから、実際に
触って確かめてから決めろ、って断られちまった。
まあその後、ウチの近くで店長と付き合いのあるお店を紹介してもらったんだけどな。

今じゃもちろん、その店で買った子と仲良くやってるよ。デジタルの最先端を
扱ってるクセに何てアナログな……とも思ったけど、店頭でないと分からない
雰囲気や細かいクセもあったから、店長さんの言うことは正しかったって良く
分かった。

>>148>>150も娘さんたちを大事にしてやってくれ。

152 名前:149 mailto:sage [2007/10/04(木) 22:31:56 ID:lFROLBZ9]
>>151
うはは、師匠らしいなあ。

俺が弟子やってた頃、同じような問い合わせしてきた人がいたんだけどさ、その人が香港在住の駐在員だったんだ。
駐在、ったって小さな会社でさ。所持雑事押し付けられて、毎日大変そうだった。おまけに独り身。

それで、身の回りの世話とかしてくれる子を探してたらしくて、うちに問い合わせてきたんだ。
たまたま修行中の俺がいたもんだから、サンプルの子連れて行って来い、って言われてさ。行って来たよ、香港まで。

昔の人造人間じゃあるまいし、電波の類なんて完全にシールドされてるのに、例の法律の改正前だったもんだから、
手荷物検査の兄ちゃんが「飛行機に乗る時は貨物扱いです」とか言いやがんの。
困っちまって師匠に電話したら、師匠怒り出しちゃってさ。「飛行機なんてやめて、船で行って来い!」ってことになっちまった。

遊びに行くわけじゃないから、店長のツテで貨物船に乗せてもらって、荷受作業用ロボットの整備しながら片道二週間。
予備部品もないし、設備も貧弱な船上だから、リソースの管理にも気を使わないといけないんだよな。
応力のかかりやすいところとか、消耗しやすいところを見極めて、過不足のない整備をしなきゃならない。
大変だったけど、整備の勘どころとか、すげぇ勉強になったよ。

……今思えば、あれも教育の一環だったんだろうな。
師匠ってさ、すげえ凝った筐体を作るんだけど、やってることはすげえ質実剛健なんだよ。
金にあかせて、高級品を組んだだけじゃないんだよな。……そこが、あの人のすごいところだと思う。

で、その二週間。そのサンプルの娘と一緒に行動したわけだけどさ。すげぇよく気が利くんだよな。
愛想はいいし、かといって出しゃばらないし。
普段は甲斐甲斐しく世話してくれるのに、俺が「今日はちょっとしんどいなぁ……」とか思ってたら、ちゃんと察して距離を置いてくれる。
空気を読むのが上手い、っていうのかな。
あれには感動したね。ごく普通の市販のAIでも、コーディング次第でここまでやれるんだ、って。

……あ、念のため言っとくけど、その娘には手を出したりしてないぜ。
大事なサンプルだからってのもあるんだけど、
「癒し系」ってのかな、性欲なんかに走らなくても心を満たしてくれるっていうか、そんな子だったんだよなぁ……

で、その子なんだけどさ。
その香港の人が一目見て気に入っちゃって、その場でお買い上げ。帰りは一人で飛行機で帰ってきたよ。
今でも時々連絡よこすんだけど、整備もきっちりやってもらって、十一年経った今でも元気でやってるみたいだ。

仕事もようやく落ち着いてきたし、今度の休みにでも会いに行ってみるかな……
俺の横でスリープモードに入ってる、こいつが妬きそうだけど。

153 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/05(金) 01:01:56 ID:5XtyubdC]
あの…わたしのところにも一人います。
長い黒髪をツーテールにした…ちょっとロリ入った娘です。
わたしも地方在住なんで、重要部のメンテの時は、一泊二日で都心まで出なくては
ならないんですけど、本人は旅行感覚みたいで喜んでますw

それにしても十一年とは凄いですね…うちのは、中古で来て三年です。
>>148で言われた「最低十年」ってのは実証済みなのですね。

そういえば…ふと思い出したんですけど、人工知性体保護法が出来て十年になりますね。
人造人間に準人権を…なんて、荒唐無稽だと思ってましたが、今こうして一緒に生活して
いますと、改めて良い時代になったなぁ…と思います。
まあ、AI自体、記憶や意識を完全に保ったままで、老化したパーツとか情報伝達システムの
交換とかできるようになって、最悪「心」だけでも取り出して別の身体に移せるようになったのが
大きいですけど。

でも…最近は身体の本体自体を換えなくても、きちんとメンテしておけば、新規に開発された
パーツに換えられるそうですから、本当にそのうち、一生ものになるかもしれませんよね…。
うちの娘も、いつまでも末永く可愛がってあげたいです。

でも、実はうちにくるまで、ちょっとした葛藤があったんです。

うちの娘は、ある裕福なお屋敷でメイドロイドをしていたんですけど、そこが事業に失敗して、
売りに出されたという悲しい過去があって…。
店長さんのお話しだと、例の保護法の大前提もあって、これまでの記憶と意識をどうするか、
本人に選択させていたそうなんです。
オーバーホールとリペアをする前に、決めるように…って。
そうしたら…ちょっと躊躇していて…。

丁度その時、たまたまわたしがその場にいたんですけど…良く良く聞いたら、元のご主人は、
手放すのを嫌がったのに…彼女、自分から、自分を売れば返済の足しになるから…って
言い出したって聞きました。
…見れば可愛いし、健気だし…結局店長に勧められて、お迎えを決定して、リペアの段階で、
彼女に改めてどうするか尋ねたら…驚きました。
「新しい旦那様にお仕えするのですから、総て消してください」って、毅然とした口調で
言われたんですけど…この時の表情が、もう忘れられなくて…。
一生懸命、笑顔を浮かべようとしているんですけど…済んだ黒い瞳が潤んでいて。
人工涙腺のタンクがカラで、涙なんか一滴も出ない状態の筈なのに…瞳が潤んでいるんです!
一目見て…消すことなんて出来なくなりました…いや…もうあの表情に魅せられました!

で、「いや、大事な記憶なんだから、無理して消さなくて良いよ」って
言ったら、もう背骨が折れる!ってぐらいに強く抱きつかれて。
胸は柔らかで気持ち良かったんですけどねw
ともかく凄く嬉しそうだったし…傍で見ていた店長の満面の笑みが、優しそうでしたっけ。

色々言われる保護法ですけど…その後、例のお屋敷の一家と再開した時の
笑顔を見ていたら、あれが無かったら、すぐフォーマットしていたかもなぁ…と、
ちょっとホッとしました。
まあ…あの店長さんの事ですから、止めてくれたかもしれませんが。

…あ、いけない…お忙しいのに、お引止めしてしまって済みません!!

154 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/05(金) 21:33:38 ID:yt9wFZGh]
なんでぇお前らっ!
そんなノロけ話なんか羨ましくないぞっ!
おれの相棒は 俺が生まれる前からウチにいた骨董品だけど
いまだに現役で
おれは赤ん坊の頃から今でも
相棒が全てで
それはこれからも変わらないのだけれど
メンテパーツのジャンクすら手に入らなくて……

155 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/05(金) 21:44:58 ID:L1PTh6mi]
>>154
廃盤パーツを趣味で自作してる物好き知ってるんだが、紹介してやろか?

156 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/05(金) 22:45:52 ID:Hmtlj1zY]
一瞬未来技術板のスレかと思ったがいい流れ

157 名前:149 mailto:sage [2007/10/05(金) 22:46:07 ID:IriaFgcE]
>>153
大事にしてるようで何より。その子もきっと幸せだと思う。

「心」だけでも取り出して、別の身体に移せるようにはなったけど、そうやって長く生きてきた子でも、
主人が亡くなったあと、ほとんど全ての子が人格データの消去を申し出てくるんだよなぁ……
切ないっちゃ切ないけど、主人と一緒に逝きたいという気持ちもわかるし、泣く泣く処置したっけ。

師匠も何体か、そういう子の処置をしたことがあるんだけど、いつもその後、深酒呑んでボヤいてたなぁ……

>>154
なに、大丈夫だよ。>>155もこう言ってくれてるし。
最悪、うちでも用意するよ。インターフェイスさえ今の規格に合わせればなんとでもなるし。
俺が扱ったので一番すごかったのはあれだな、八年前だったか、黎明期の機体を最新の筐体にリプレースした時。
規格の合うAIなんてもうなかったから、当時の最新のCPUにエミュレータ載せて、その上にOSと「心」を移植したんだけど、
その子が違和感を感じないように、エミュレート時のタイムラグを徹底的に削ったっけ。
タイムラグが最小処理フレームの1/3200秒に収まるように、一生懸命アルゴリズムを考えてさ。
一般的なコーディング用高級言語じゃ処理速度が全然足りないから、久しぶりに機械語レベルでソース書いたよ。

最後は三日徹夜したけど、すごく勉強になったし、めちゃくちゃ充実してた。

158 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/06(土) 01:33:42 ID:bSYfua0m]
>>157
八年前でそれって…あなたは神だ!

うちの奴も出始めの頃の機体で、その頃「載せ換え」したんだけどね。
オムニジャパンに技術者の友達がいたんで、無理言って頼んだんだけど、
どうしても1/800秒が限度とかで、当時出たての四倍のアクセラレータを
間にかましてやっと対応したっけ。
…それに、本当はディーラーがそういうカスタムするのって、ある意味
反則らしいんだけど、市場調査と技術的探求…っていう名目で特別に
許可してくれたらしい。

だけど、微電圧パルスがもうひとつ不安定で、何だか微妙にフレームが
ズレているみたいでね…。
載せ換えおわったら、何か、ぽわ〜んとした感じで少しトロいんだ。
それなりに…支障が無い程度で、まあ、一応きちんとは動作するんだけど。
何か、いつでもどこか眠そうな感じで…。
朝の挨拶も「おはよ〜ございます〜〜」みたいな間延びした感じだし。
技術屋さんも、結果にはひとまず満足していたけど…何かウケていた。
俺としては…結果的に、逆に実験台にされたような気にもなったんだけど…
あのトロそうな感じは、意図したものでない「天然」な個性なんで、
確かに笑えたし…気に入ってしまった。
…まるで、どこかのギャルゲーの姉キャラみたいだったんで、思わず
ポニーテールにしちゃいましたよ…巨乳ボディだし…w

それから数年たって、店長さんの所に行って、再調整してもらったら、
結構きびきびと動くようになったんだけど、あの間延びした口調だけは
結局直らないでそのまんま…w
本人も気に入っているみたいなんで、結局直さないでいるんだけど、
これって学習による個性の誕生って事なのかねえ。

ちなみに、今、おれの横で、まったりと鍋を作ってくれてます…w

159 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/06(土) 17:43:14 ID:ascpYwfQ]
家のオムニの旧型、身長250くらいあるんだけどさ
デカすぎて階段降りれないのよ、俺が先に行くと切なそうに脚出したり引っ込めたり見つめてくんの
可愛いのなんのって
でも対人センサーがかなり馬鹿で、こないだなんかバット持った強盗相手に機関砲構えて「じ、10秒以内に武器をすててくださいっっ!!><」って
やりすぎだろ



160 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/06(土) 20:55:02 ID:5NsGRnvZ]
友人の所の娘が「誘拐」された。
清楚で控えめな娘だったんだが…一ヶ月後に東南アジア軽の窃盗団から
「保護」されて帰ってきたら、中国服着て功夫(クンフー)の達人になっていた。
しかも口調が…声自体は萌え声のまま、男言葉みたいな尊大な話し方に
なっていて、友人は絶句。
…まあ、元を知らずに見ればタカラヅカの男役みたいに見えるけど…。
友人の事も知らないとか言ってたし…どうも護身用とか、潜入工作用とかに
改修される途中だったらしい。

でも、警察から引き取って、すぐ店長の所に連れて行ったら…
流石だね!
店長は、こういう事を想定して、予め複数…文字通りのバックアップ
メモリーを組み込んであってさ。
元の意識…いや「心」を取り戻す事が出来て、友人はホッとしてた。

ただ…ダミーのメインメモリーを消された後、上書きインストールされていた
「意識」が自我を持ったらしくてさ…。
それ自体は、別の領域に隔離してあったんだけど、それを消さないで、
改めて残して欲しいって彼女に懇願され、友人が面食らっていた。

言ってみりゃ、OSに入り込んだウイルスが切り離されたみたいなもので、
そのままデリートするのが普通なんだけど…。
どうもひとつの身体の中で、ふたつの意識が「会話」どころか「和解」…いや、
「意気投合」でもしたのか…記憶を共有したまま、バランスを保てるように
なっちまったみたいでさ。
何ていうか、リアル二重人格っていうかねえ…。

店長も流石にアタマを抱えてしまったけど…見ている前で、瞬時にして
表情とか口調が変わるのは壮観だった。
しかも、器用な事に一言ごとに、二人が自問自答するように話したりも
するんだもんなぁ…。
ほら、落語とか一人漫才で複数の役をやるだろう?あんな感じでさ。
でも、ちゃんと元の人格の方を「立てて」いる辺り、何か良い感じに収まった
みたいで、ちょっと興味深いものがあった。
ちなみに、男言葉の方は「チャイナさん」と名づけられて…困惑してた…w

ところで…後で聞いたら、そのチャイナさんのテクがまた凄いらしい。
店長が吸い出したデータをチェックしたら、四桁近くの房術に関する医学的
データがあったとかで…。
ことによると色々な所に潜入して、男を篭絡して、その後、用済みに
なったらばっさり…何てことも想定されてたらしい。

でも…羨ましい事に、そのテクで、あいつすっかり骨抜きでさ…w
しかもチャイナさん…女の子としては不器用なんで、一見するとツンデレ
そのまんま…元々消される筈だったから、あいつへの思慕も強いし。
さらに、本来の清楚な娘にテクを「伝授」しちまったものだから、
正に「一粒で二度美味しい」とかで、一晩二回はデフォだとさ。

そのうち腹上死しちまうんじゃないか?って言ったら、まあ、あいつも
あの娘も真っ赤になってテレちまって…く〜…すっかりノロけてやんの。
もう、好きにやってなさい…w

161 名前:149 mailto:sage [2007/10/06(土) 22:11:09 ID:wljOyx6r]
>>158
あるある。AIの自己認識ロジックに、「まったりぽやぽや系」でキャラ付けができちゃったんだな、それ。
まあ、緊急プログラム……護身術とか救助技能とかそのへんは、人格とは別に条件反射モジュールになってる。
その筐体のネイティブコードで書いてあるから、いざと言う時のことは心配ないよ。

ところで、最近狙って「まったりぽやぽや系で」って注文してくるお客が多くてさ〜……
違和感を感じないように、意図的に処理速度を落とすのって、案外難しいんだよな。

>>159
あるある……珍しいけどw
業務遂行のために大型の筐体を持った子はそれなりにいるけど、やっぱり室内での取り回しは大変みたいだね。
ここ最近のトレンドは「モジュール構成」かな。頭だけ、あるいは頭と胴だけを、一回り大型の筐体に内蔵合体するタイプ。
これなら、業務が終わったら分離して人間サイズに戻れるし。

……しかし、「マトリョーシカみたいな入れ子で、パーツ分離なしの三体合体」ってのを注文してきた、あのお客にはまいったなぁ。
昔そんなアニメを見たなぁ、とか思って請けてみたんだけど、中の筐体の肩から拳までを外の筐体の肩から肘までに納めるしかないから、
倍々のサイズで大きくなってってさ。最外殻は「それどこの重機?」って感じだった。どこで運用する気なんだか。


>>160
残念ながら、あるある、と言わざるを得ないのがなんとも……
あのあたりはいろいろキナ臭いし、部品取りやら裏社会で使うために、手っ取り早く「誘拐」しようとするんだよな。
しかし、見つかってよかったな。最近ホント多いんだよ、その手の事件。
店長も昔、それで大事な子をなくしててさ。すごく慎重なんだよ。
最近の作品は、メインメモリーをダミーにして、それとは別に最低三箇所にパリティデータを保存してる。RAID形式だな。
だから、そのうち二箇所が回収できれば元に戻せるぜ。

……しかし、リアル二重人格でやっていけてるってのは珍しいな。噂では聞いてたけど、まさかあんたの友達だったとはね。

ただ、その「チャイナさん」が持つ機能が法的にヤバいもんじゃないか、一通りチェックしたほうがいいかもしれんね。
まあ、店長が処置したなら、そのへんは大丈夫だとは思うけど。
裏業界にも変に詳しいし、警察ともコネがあるから、厄介なことにはならないと思う。
……ホント、未だに謎の多い人だよ、あの人は。

162 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/07(日) 00:05:48 ID:8nzIPEgT]
ああ、ここの面子に貰われてッた子達は幸せだな。

ちょいと前まで、俺、親方日の丸の下請けというか孫請けでさ、海外派遣予定の子達を調整したんだ。
ほとんどが民生パーツその他って感じで特に面白みがある仕事って訳じゃないし、
それまで専用で開発されてたものがここまで民間技術だらけになったのかとため息をついたよ。
でな、民生パーツってマイスターの調整が無い場合、制御ユニットのほとんどがワンパッケージでさ、
軍事運用に必要ないのもあるわけ。…そう、人格データ構成が民間のそれと同じなんだ。

休眠状態で訓練データとか覗くとさ、その中で、一緒に訓練してた生身の新兵さんとか、演習場の花とか、虫とか、
休憩時間に見た子猫とか、夕焼けの雲とか、難しい顔した訓練担当と、その後の笑顔とか…
戦術データ以外にそういうデータも転がっててさ、俺は法案適例コード使ってアシモフプロテクトを
基礎カーネルから外す作業のついでに、近いとこに領域確保して、訓練時の余剰データを残した。

自分自身なら、見るのも、消去するのも、すぐできるように。
他からは決して、触れられないように、消されないように。

俺のエゴってのはわかってるんだけどね。
遠くに聞いた、海外の戦闘ドロイドみたいにしたくなくてな…隊長さん、隊員さん、みんなで戻って来れる事を祈ってる。


163 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/07(日) 06:38:52 ID:GX9OOalr]
>>161
ども…>>160で悪友にバラされたマスターですw

いやもう、二度と会えないかと思っていたんで、帰ってきてくれた時は嬉しかったです。
警察の話だと、最近じゃ部品取り目的で、新旧構わず盗まれるとかで…。
>>154でも言われた初期モデル…東南アジアあたりだと未だに数多く残っていて、メンテパーツは
不足気味だし、載せ換えだと高いので、旧いタイプでも飛ぶように売れるから油断出来ないって。
「護身術…入力しないといけないかもなぁ」なんて言っていた矢先なんです。

警察で保護されたって言うので出向いたら…チャイナ服着て、長い髪をお団子二つにまとめてたんで、
一瞬…あれ、美鈴か?って…あ、美鈴ってうちの奴の名ですけど…ちょっとピンときませんでした。
何か表情が大人びていて…別人と言うか、双子の姉妹…みたいな感じで。
おれを見ても、誰だこれ…みたいで何の感慨も無いみたいで…。
でも、店長さんが同行して下さって、その場でチェックして頂いたら、やっぱり記憶とか意識が全部
上書きされて消されているって仰って愕然…。
もう目の前が真っ暗になりました。
もう、二度と元の美鈴に戻せないのか…って思ったら悲しくて…。
だから、店長さんが「大丈夫…こんなこともあろうかと…」って仰った時は、本当に奇跡かと。
目の前でみるみる表情が変わっていく様は…もう言葉になりませんでした。

メモリーバックアップシステムは必須ですね。
最近では旧いモデルでも付けられるに開発されたそうですし、近いうちに最低ひとつあれば、本人の
意識と、最近一年程度の記憶まで復元できる物も出るとか。
ここにおいでの皆さんも、まだなようでしたら、是非付けてあげてください。

それから…>>149さんの仰る違法データの事なのですが、幸い、直接的な「殺人データ」は
無くて、むしろ医学的な人体への物理的、直接的影響に関するデータがメインだったので、
美鈴本人に改めて了解を取った上で店長さんに吸い出してもらい、警察に渡しました。
格闘技や武器の扱いのデータは…軍隊のらしいのでどうしようか…と思ったのですが、
むしろ護身用として「身に付けて」いた方が良いでしょうから…と。
あ、ただ、武器の詳細なデータ自体は…軍極秘とかあるそうで流石にマズそうなので、コピーを
提出後、消してもらいましたが。
ちなみに警察と防衛省の両方に出されたようで…店長さんの人脈の広さには驚きですw

二重人格化のことは…あれ、本当に面食らったです。
まさか美鈴が言い出してくるなんて…。
美鈴の奴、保護されて復元された後、再チェックの為スリープモードに入ったのですが、
その時に隔離されている「もうひとりの自分」の「心」と遇ったとか。
イメージとしては、自分そっくりな娘が、鎖に繋がれて格子の入った牢にいるものだとか。
その時、色々聞いていくうちに…何か可哀想になってしまったそうです。
ただ…本当はかなり危険な面もあるようで、きっちりしたバックアップの無いモデルだと、
下手すると人格統合の為、自動的に「二人」を強制融合させようとして、人格崩壊してしまう
ケースもあるようで、流石の店長さんも、後で美鈴をきつく叱っていました。

でも…美鈴に「あの娘を…もう一人のわたしを残してあげてください」って懇願された時と、
その後、メイリンに…あ、これはチャイナさんの方の名ですが…
「一生お仕え致します」と言われた時は、本当に驚きましたね。

164 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/07(日) 07:31:12 ID:GX9OOalr]
それと…これはその…下な話で何なのですが…。
メイリンの房術…これがもう凄いんですけど…実はその…良く調べてもらったら…美鈴の
人工性器とか胸とか、少々弄られていて…これが…テクと相まって…すごく具合が良いんです。
いや…あの…挿入た時の締め具合とか、心地よい温かさとか…濡れ具合がもう良くて…。
乳首は勃起して硬くつんと上を向きますし…触れたときのレスポンスとか…。
しかも乱れた時の表情が絶品で…あれだけでその…イッてしまいそうになりました。

でも、本来は清楚系が好みだったんで…少々慣れない監視で控えめに恥ずかしそうに…っていう
設定だったから…気持ちは良かったのですけど…ちょっと凹んでいたら…。
そっちも残っていて…吃驚です!

悪友には二倍美味しいとか言われてますけど…。
実はテクが二通り、人格が二人だから…四倍なんです。
清楚なのに乱れると凄い美鈴とか、大人っぽいのにウブなメイリンなんて設定もできますから…w

ちなみに…今、店長さんに頼んで、美鈴と同じベースモデルの娘を探してもらっています。
今の「二重人格」も、なかなか楽しいんですけど…美鈴としては、やっぱり自分がメインに
なっている為に、メイリンが表に出られない事が多いのが、気になっているようで…。
メイリンも、わざわざ自分を残してくれた美鈴に申し訳なく思っていますし…。
それで…いずれは二人のうち、どちらかを移してあげたいな…と。
もし、二人が分離できたら…二人の「心」を、各種の通信波でもってマルチリンクして、互いの記憶を
共有させて、文字通り「以心伝心」な状態にするつもりです。

ただ…払いが…(汗)
美鈴ですら、48回払いの半分をやっと過ぎる位なので、どう頑張っても、あと二年は
先になるのですけど…。
でも、店長さんと相談したら、美鈴のベースモデルが、万一製造中止になる場合でも、その時は
最終生産型を確保して下さるか、探して頂ける…と。
美鈴もメイリンも、喜んでくれまして…ローンの足しにするからって、おれが勤めに行っている間に
限って、コンビニとファミレスと店長さんのショップでバイトを始めました。

まだまだ、先の事ですけど、その日が来るのが楽しみです。

165 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/07(日) 12:58:18 ID:GX9OOalr]
>>162
最近じゃ軍向けにも民生機のコが入ってる聞いたけど、やっぱりあるんだね。

でも、微妙なのはさ、例の人工知性体保護法が、どの範囲まで適用されるかだよな。
日本とか大半の国では、人造人間の準人権が、結構きっちり守られているけど、
軍事向けに廻された場合のみ、特例として人格データを外せるからね。

幸い、日本の場合、自衛隊に居る友達の話じゃ、それじゃ味気ないっていうか、
無味乾燥な任務に潤いが無いっていうんで、人格、意識データは入っているから
それぞれに、異なった個性があるそうだけど…。
海外派遣から帰ってきたコに久々に会ったら…任務の後に、大半の記憶を消されて
しまったとかで、件の娘は、友人に会ってもすっかり「忘れてしまった」とかで、
…あいつ大分凹んでた。
どうも出発前の送別会で…あいつコクったみたいなんだよな…。

それにしても「心」を確立する上で、本来、人格の他、意識と記憶は、本来きちんと
両立していなくてはならない訳だけど、軍務絡みだと、記憶の一部を消さなくては
ならない事もあるって聞いた。
もちろん、本人に承諾をとるのが前提だけど…。

それに、海外に派遣された時、傷ついて動けなくなった所をゲリラに「拉致」
されて、データの吸出しをされる可能性もあるとかで…。
>>162さんの施した処置は、本当は、他の技手さんにもお願いしたい程だよ。

それにしても、海外に派遣されたコたち…
無事に任務を終えて帰ってくる事を願うよ。

166 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/07(日) 18:22:55 ID:8nzIPEgT]
>>165
キツい話になるが、うちが請け負う前は戦闘AI化と任務後の「全消去」は当たり前だったらしい。

結局、戦場で決め手になるのは人の意思なのにな。
一緒に帰ってきた同僚…この場合はロボでもさ、道具みたいに扱っても、やっぱり愛着が沸くんだそうだ。

アメリカだっけか、大昔のエピソードで地雷処理ロボがぶっ壊れたときに、担当兵が泣きながら「こいつは俺の戦友なんだ」って。
AIも積んでない、人の形すらしてない地雷処理ロボだって、現場で頑張ってる人には掛替えの無い戦友だから。

自分の事を忘れてるってのが堪えた人が多くて、優秀な人ほど入れ込みも強かったみたいでさ、
色々問題があったというか、規定緩和の嘆願書が多く出されてるみたいだね。

うちに派遣する子に使う置換プログラムが来たんだけど、ぱっと見て酷い代物だった。
うちで手を加えて…と思って調べてたら、仕様にないコマンドで別のGUIが出たんだ。

どこの孫請けがやったか知らないけど、隠れてたドキュメントの中身が大手担当の悪口のオンパレードでね。
多分、仕様の通りしか許されなかったからその通りに作ったうえに、全部スパゲティにわざとやったんだろうね。
思わず笑っちゃったよ。で、よく見てみたら記憶データを圧縮して、領域の奥に格納するようになってたんだ。

記憶全部消されて人物情報が無くなった子も、もしかしたら元に戻れるかもしれないよ?
裏UIのモードだと大分優秀でね、かなり詳細にフィルタリングできる。
ということで、領域確保は俺の手柄じゃないんだよね。うちはしがないメカ屋でさ、本来、重機が本業なんだ。
いったい、どこの誰が作ってくれたんだか…。


167 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/08(月) 00:30:46 ID:YjLx1E97]
いつになったらロボ娘の軍事利用は禁止されるんだろ…。
軍用ロボ娘に萌えるのは妄想の世界だけでたくさんだよ。

168 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/08(月) 06:42:22 ID:TfaybCGa]
謝れ!EDー209タンに謝れ!

169 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/08(月) 09:58:50 ID:pxDXg6HF]
軍用レプリカ娘が、今度出るんだって?
ベースモデルに、好みの髪と瞳の色を選べる、セミオーダーでさ。
それも実戦モードに「キャストオフ」できるとか。
もちろん、悪用防止に、両腕のダミーの銃身の口は塞がっていて、しかも金色!に塗られているが。
もっぱらサバゲー対応なんだそうだけど、女性の護身用にもどうぞとあった。
でも、今の、このご時勢で、良く発売する気になったよねえ。



170 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/08(月) 13:57:07 ID:DoU+J5Uq]
>>169
両腕の銃は内蔵式だ。書き方が悪くてすまん。
ちなみに、エアソフトガンか各種スタンガン、または催涙スプレーは装備可能だと。
ただし、当然悪用厳禁だけどな。

171 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/08(月) 20:54:08 ID:YjLx1E97]
迷彩頭髪は装備してくれるの?
カメレオンがないとレプリカ買う意味なんてないなー。

172 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/08(月) 21:21:11 ID:YAkGABzS]
>>171
陸軍用、海兵隊用ならあるよ。
但し、ヅラ仕様と植毛仕様のどっちかを選ぶようだw

173 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/09(火) 13:23:16 ID:71QZMZr/]
ちょっと覗いてなかったらすごい流れになっててワロタ
俺も貯金する!

174 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/09(火) 19:14:05 ID:BIOCeyVw]
【実はまだ】相変わらずの独り言劇場11【いました】

総務課のSKさんがすきだ。
一見、人間にしか見えない彼女は、実は秘かに試験導入された事務用ロボットである、
というのが、俺の妄想用脳内裏設定。

今週、観光振興課のE課長の奥さんがなくなった。もしかすると先週かもしれないが、
俺にはわからない。
それで、うちの課でもN課長以下、みんなでお通夜のお焼香に行った。

E課長のお宅に行くと、総務課の人たちが総出でお手伝いをしていた。SKさんもその一人だ。いや、一台だ。
黒い服に身をつつみ、少し寂しそうな表情で黙々と弔問客に接する彼女の胸に去来するものは何であったか。


   ヒト。ニンゲン。・・・
   人間のみなさんは、なぜ年をとるのですか。なぜ死ぬんですか。
   わたしは・・・わたしは年をとらない。「死ぬ」ことはない。

   「死ぬ」って何?人はどんな気持ちで「死んで」いくの?
   わからない。わたしにはわからない。
   人が「死ぬ」。わたしたちが「壊れる」のと同じこと?
   それって、寂しいことですか。
   それって、悲しいことですか。

   わからない。わたしにはわからない。



なんてことをカナちゃん(SKさんのこと)が本当に思っていたかどうかは
俺にはわからない(笑)。

175 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/09(火) 19:50:08 ID:yiBGtZzq]
>>174

おひさし乙!
まだぶっちゃけてないようで何よりですw

176 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/09(火) 19:56:42 ID:/+zhgmzr]
>>174
あんたの独り言劇場大好きだ。次回も楽しみにしてる。

177 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/09(火) 20:46:42 ID:LMrIsaBz]
さりげなくカミュのパロディか?

178 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/09(火) 23:23:08 ID:Eset3DJX]
>>174
残念ながら…つまらん。

179 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/09(火) 23:27:48 ID:E/xJzKpf]
こういう、エロ漫画誌の箸休めに入ってる4コマコメディみたいなのは好きだぞ



180 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/09(火) 23:45:28 ID:Eset3DJX]
うむ…趣旨は判る。
だが、萌えがない…w

181 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/10(水) 00:07:27 ID:l39yNfgl]
萌えが無い訳ではない
ただ常人には理解しにくいレベルの高さなのだ

182 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/11(木) 18:29:25 ID:hm45PJ2m]
メカ少女アンソロジーっての有ったけど、どうなの?
萌えるの?抜けるの?ロボなの?生身なの?壊れるの?

183 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/11(木) 19:30:03 ID:k31HIbRY]
>>182

アレのことだったらイマイチだったな

184 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/11(木) 23:15:23 ID:EhSNZCQz]
キルタイムから出たやつだろ?
あれはメカ少女萌えもアンドロイド萌えも中途半端だった。ビキニアーマーにすりゃ良いと思っているのか?コンピューター用語を使って状態を表せば良いのか?って感じ。
エロは触手か無理やりのどちらか。絵もアンソロ系としては上手いけどね……
でも個人的には第二段希望。アイアンメイデンのアンソロよりはマシだったからね。あれはロボ萌え一切無し。よくあるH中にテクニカルタームすら使わないしね。

185 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/14(日) 17:20:36 ID:k4d07HIB]
ホシュ

186 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/14(日) 19:20:23 ID:84X68kcJ]
ホシュたん乙!

187 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 02:47:31 ID:2SwTdb9z]
ご〜〜〜ん!…という、お寺の鐘の様な、低く長く伸びる金属音が響き、
「ひゃん!痛ったぁい…!!」という若い女の悲鳴がして、おれは思わず
額に手をやり苦笑した。
…お〜い…またかよ〜。
ガレージの鋼鉄の天井の梁に、また巴(ともえ)の奴が頭をぶつけたらしい。

あ、巴っていうのは、うちのメイドロイドの名前だ。
顔立ちは、まあまあ可愛い…というより、清楚な可愛らしさで合格!
黒い瞳、黒い髪で二十前位の日系顔。
長い髪を後ろ頭のやや上で結ってポニーテールにしている。
料理、洗濯、掃除から、各種下の世話の面倒までOKな万能メイドであり、
プロポーションも抜群で、一見、問題どころか非の打ち所など無いように
思える。
…ただひとつ…身長が198センチあることを除けば…。

巴という古風な名前は、使っているAIがコードネーム「tomo」だった事が
由来としているが、それに加えて、何でも、鎌倉時代にいた巴御前という、
美人の女武者から取った名だとか。
まあ、確かに、顔立ちは美人だし、髪の結い方なんてポニーテールというか、
ちょっと若武者風な感じで、忙しい仕事の時は「気合を入れるから」などと
鉢巻にたすきなんて巻いているからなおさら納得できたりする。
…もっとも、巴御前って、敵の武者を押さえつけて、その首を引きちぎった…
なんて伝承まであるから…
もしかしたら、そっちから来てるのか?と、勘ぐりたくもなる。
ともかく…大きな上…実は馬鹿力なのだ…。

188 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 02:48:53 ID:2SwTdb9z]
「あいたた〜」
頭に手をやったまま、窮屈そうに身を屈めた巴が、三間(約180センチ)のドアを
開けて、そ〜っとリビングに入ってきた。
「またやったのか…」
「ごめんなさい…」
頭をさすりながら、巴は申し訳なさそうにぺこりと頭を下げる。
こんな仕草は、嫌いじゃないし…可愛くない…わけでもない。
それどころか、癒されるものがある(笑)
しかし…。
「まあ、最近は天井をぶち破らなくなったからいいけどさ…でもな」
おれは恐縮し切っている巴に畳み掛ける。
「そんなに何度も頭ぶつけてると、本当に終いにゃパーになっちまうぞ」
「…あ…大丈夫です」
顔を上げ、巴はにこっと笑った。
「頭蓋骨はチタン合金製ですし、皮膚は特殊フォームラバーですから…」
「あのなあ…お前…これでも一応は精密電子工学の結晶なんだろ?」
「そうですけど…」
巴は軽く前髪を撫でつけながら、小さく小首を傾げる。
「でも〜中東に行った娘は、至近距離で一トン爆弾が炸裂して、20m飛ばされても
かすり傷で帰って来てますよ…ちなみに高さ20mですが…」
「…どういう例えだ」
そういえば、こいつは元々、アメリカの軍事関連メーカーで造られたドロイドを
民間用に手直した物を、日本の工場でライセンス生産したタイプだっけ…。
「わ〜った…もういい」
おれは苦笑しつつ、右手をひらひらと振りながら話を打ち切った。

そのまま巴はキッチンに入り、ポットに水を入れるとレンジにかけて点火し、
手慣れた仕草で、上の食器棚にあった湯のみと急須を難なく下ろして支度を始めた。
「すぐにお茶をお入れしますね」
…紺色のメイド服の後姿を見ていると、腰の大きな白いリボンが、時々チョウの様に
ひらひらと揺れながら、前後左右に踊っている。
少々屈んだ姿勢なので、当然の如く尻を付き出した格好なのだが…。
これがまた…まろやかな形の大きくて柔らかそうな臀部ときていて…。
そのメイド服の中身を想像して、思わず勃起しそうになった。
こんな「大女」なのに…そそられるじゃないか。
あー畜生!今日もむらむらしてきやがった。

189 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 02:50:35 ID:2SwTdb9z]
おれは軽く頭をかきむしり、ソファに転がって天井を見上げた。
今日は久々の休暇で朝から今までごろごろしていた。
…ちょっと落ち着こうと大きく息をつき、ちらと巴の後ろ姿を見、再び溜息をついた。
少しばかり自己嫌悪な気持ちに陥りながら目を閉じる。

恥ずかしながら…おれは、ここ半月ほど、毎日のように巴を抱いてしまっている。
抱くと言っても抱き枕としてじゃない…れっきとした「女」としてだ!
それも一晩に何度も…。
…大抵が、おれの上に巴が跨って、がっちりおれを押さえつけ、恍惚とした表情で
髪を振り乱しながら腰を使い、おれのモノを優しく…かつ激しく擦り上げ、温かな
膣で包み込むようにして締め上げ、搾り出す…そんな感じなのだ。

ちなみに反対におれが上になる場合、巴に「乗る」という感じになるのだが…(汗)
どうも、この所の仕事疲れで、巴上位というのが殆どなのだ。



190 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 02:51:41 ID:2SwTdb9z]
しかも…巴の奴…。
何を考えたのか、最近は母乳タンクに特濃ミルクとスタミナドリンクを入れてある。
行為の最中、おれのものを締め上げながら「どうかお飲みください」と言って、
大きな胸を差し出し、乳首をおれの口にそっとあてがってくるのだ。
「お忙しくて、食事も抜かれがちでしょうから」
いや、まあ確かにそうだけど。
おれの方が連日違うモノを抜かれてるんですけど…。
乳首を口に含んだ途端、僅かに眉根を寄せ、「あ…」と小さく声をあげる。
ちょっと待て…これって、良く考えたら…赤ちゃんプレイの変形か?
しかも巴がデカいものだから、ナニを挿入れながら、巴の乳首を吸いつつ、その柔らかな
胸の谷間に顔をうずめる…なんて心地の良い真似ができるのだ。
サイズの比率から考えても、巴の母親役なのは最良だ。
しかも…この柔らかく暖かな感触は、気持ちを穏やかにする。

巴がおれを抱き締め、とても人工のものとは思えない、うっとりした美しい表情で、
時々乱れながら声をあげる仕草は、あっと言う間におれの理性を奪っていった。
それから頭の中が真っ白になるまで、何度も巴の中に精を放ち…
気が付くと、総ての後始末が終わっていて、巴が優しく包むようにおれの上に
横たわっている…というのが最近のパターンであった。


191 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 02:53:10 ID:2SwTdb9z]
一応、硬派を気取っていたおれが、今では、悪く言えばダッチワイフの延長のような、
それも顔立ちこそ可愛らしいが、おれのひとまわり以上もでかい巴に、すっかり
ハマってしまっているという事実が…少々気持ちを落ち込ませる。

…いや…。
本音を言えば、それは…あくまで建前だ。
家族としてなら好意を持っても良いのだろうが、性欲処理の対象として巴を見ている
自分に、どこか恥ずかしさを感じているのだ。
それも…気持ち良いだけに、やめられないでいるという事実…。
…いや、それと同時に、最近では巴を「女」として意識し始めている事に、おれ自身が
気付き…葛藤しているのだ。

おれが巴と初めて出合ったのは一年前。
仕事に就いて数年後、転勤を機会に、実家を出て一人暮らしする…と宣言した時、
オムニジャパンの技術者をしている両親が、餞別代りとしてメイドロイドを進呈すると
言われたのがそもそものきっかけだった。
最初…メイドロイドなど面倒だから要らない…と言い切ったが、放っておけば、どうせ
掃除も洗濯もろくにしない事は明らかだ…とお袋に切り返され、さらに親父にも、
メイドロイドが居れば、風俗になどいかずに「処理」できるから…と。
おいおい…親父…セクサロイドを息子にあてがうのかよ?
お袋も、これなら悪い病気にならないし、若さを暴発させるより、遥かに健全よ…と
にこにこしながらたたみかける。
言っていること自体は間違っちゃいないし…
結果的にそうなっているけどさ…。
うちの親は…絶対どこかヘンだ…!

192 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 02:53:59 ID:2SwTdb9z]
まあ、とは言うものの、タダだと言うし、メンテナンスは会社でやるから…というので、
しぶしぶ承諾はしたものの、正直、初めて巴と出合った時は、本当にびっくりした。

ともかく…デカい。
可愛い外観だが…無茶苦茶デカいのだ。
初見の感想は、遊園地のアトラクションで良く見かける、「アニメのヒロインの姿を
した着ぐるみ」だった。
まあ、等身は高めで、グラマラスで…かつ、整ったプロポーション自体は良かったが。
てっきり小柄で「小間使い」と呼びたくなるような娘を想像していたおれは、正直
両親の選択を…というより、二人の頭を疑った。
即座に「こんなのいるか!」と言いそうになったが…。
恥ずかしそうに長身を屈めて、丁寧にお辞儀し、頬を赤く染めながら、おずおずと
こちらを見つめる巴の、その澄んだ瞳に…何も言えなくなってしまっていた。

…あ〜…何か、可愛いじゃないか〜。
顔立ちも良いけど…何よ、この萌える仕草は。仕様か?(笑)
おれより30cm近くでかいし、確かこのタイプは、どちらかと言うとボーイッシュか
お姉さま系のデザインの娘が多かったはずなのに。
何だっけ…昔、大きな女の子と小柄な主人公というカップルのマンガがあったけど、
おれとの対比は調度そんなところか?
…第一印象は、そんな感じだった。

193 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 02:55:02 ID:2SwTdb9z]
ちなみに巴はオムニジャパンが二番目に発売した本格メイドロイドシリーズの一人で、
発売は14年前。当時のキャッチコピーは「遂に2mを切りました!」だった。
たった2cmの違いだけどな…。

だけど、この直後、他社でほぼ完全な人型サイズで、完璧なAIを搭載したモデルが
登場してしまい、オムニジャパンも、急遽、新型を投入する羽目になった。
親父とお袋も、この為、この頃、連日、徹夜で新型機の開発の為に研究所に詰めて
いたっけ…。
ただし、巴の同型体自体は結構ヒットし、主に企業向け、法人向けにかなりな数が
造られており、最終型の一人である巴の製造は7年前。
実は結構なロングセラーである。
前にも言ったが、ベースが軍事用だったので、その強靭さと運動性能はピカイチで、
イザとなればセキュリティ用ガードロイドの代わりも努められるばかりか、大きいので
設計に余裕があるので、メンテナンスも容易な点が買われたらしい。
まあ、約2mというのは微妙だが、業務用なら問題ないし、当時はまだ人工知性体
保護法の成立前で色々言われていたので、一目見て人間で無いと判る大きさという
点でも良かったと聞く。
最近では「心」の載せ換えで、その数が減ってはいるものの、まだあちこちで巴の
姉妹たちを見かけることができる。

194 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 02:56:11 ID:2SwTdb9z]
しかしなぁ…。
大きな疑問が幾つか残っている。
このサイズで…擬似性行為が出来るなんて聞いていないぞ!
…というか、もしやこれは後付けのオプションなのか?
いや、第一、どうして両親はこんなデカいメイドロイドを寄越してきたのか…。
全く理解に苦しむ…。

とはいえ…時々、適当にポカをするものの、メイドとしての役割は万全で、友人や
会社の連中には「大きなともちゃん」として知られている。
でもまさか…この巴と毎晩のように…なんて、ふつう誰も思わないだろうな。
あるいは…それが狙いだったのか?

195 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 02:57:08 ID:2SwTdb9z]
「お待たせ致しました」
ふいに巴の声がして、目を開けると巴の顔がそこにあった。
「今日は掛川茶です」
「あ…ああ」
黒い瞳が一瞬丸く見開かれ、それから巴はくすっと笑い…そーっと顔を寄せた。
「坊ちゃま…あの…もしかして」
「なんだ?」
「……その…少し……溜まって……おられます?」
うわ!!…しまった…やべ!
巴の嗅覚センサーは犬並みだ。
…カウパー腺液の匂いなど一発だ。
さっき欲情した時…ちょっとばかり…。
「ば、ばか!そういう身もフタも無い事を口にするな!」
慌ててがばっと飛び起き…立ち上がった。
「あ…ごめんなさい」
思わず手を口に当て、巴はぺこりと頭を下げる。
…いや、謝るのはいいけどさ…。
おれが何に対して欲情したか…判っているのか?
時々、巴の感性が良く判らない時がある。
基本的には真面目なのだが、変なところで茶目っ気があり、子供っぽい時もあれば、
妙に大人の女のような艶を感じさせる時もあるのだが…。
これが「判って」やっているのか、「天然」なのか怪しい時が稀にあるのだ。

196 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 02:58:06 ID:2SwTdb9z]
とはいえ、このままでは、パンツの様子がちょっと気になる。
匂いってのは自分じゃ意外と気付かないものらしいし、巴が気付いて指摘して
いるとなるとなおのことで。
「…やっぱ、先にひと風呂浴びて着替えてくるわ」
「あ…でもお茶…入れたのですけど」
巴がちょっと悲しそうな顔をする。
「温度も今が最適で…あの…冷めてしまいますから…」
「でもパンツ…いや、やっぱり先に風呂をだな」
「………」
無言で、しょげた顔をする巴。
だから…頼むからそういう顔をするなって!
「…しょうがねえ……わ〜った!…先に茶にしよう」
「はい!」
途端に、ひまわりの花を満開に咲かせたような、明るい笑顔を浮かべる巴…。 
おれはふっと苦笑し、首筋をかきながらソファに腰掛けた。

197 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 02:59:13 ID:2SwTdb9z]
やっぱり巴の淹れてくれた茶は美味い!
少しずつすすると、お茶の軽い渋みの奥にある甘みが口中に拡がり、鼻腔をくすぐる
つんとした香りが、じんわりと沁み入ってくる。
「なあ、巴」
湯呑みを手にして、おれは正面のシングルソファに腰掛けた巴に尋ねた。
「ここに来て、そろそろ一年だけどさ…お前、ここに来る前は何をしてたの?」
両親の話だと、巴は七年前に製造された後、メーカーのモデル見本として
ショールームを廻ったものの、モデルチェンジの為に引退、その後、モデルとして
既に稼動後だった為、買い手が付かなかったので、巴に意思確認の上で、
一時機能停止、モスボールに近い状態で保管されていたらしい。
それが一年前、在庫整理の為に確認したところを見つけ出され、うちの両親が
格安で引き取り、各種のパーツを現在の仕様に直した上で再起動したと聞く。


198 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 03:00:19 ID:2SwTdb9z]
然るに、今まで本人から直接、その話を聞いた事は無かった。
「再起動して頂く前は…オムニジャパンのショールーム・モデルを務めていました」
巴は淀みなく答えた。
「それこそ、日本全国、津々浦々廻りましたです」
「キャンギャルみたいな格好で?」
巴の巨大なレオタード姿を一瞬想像しながら尋ねた。
「いいえ」苦笑混じりに、即座に巴は首を振る。「OLさんの格好です」
なるほど…その長身ならスーツは似合うか。
もっとも、その頃はポニテだったのかな?
「時に…うちの馬鹿親とは、その頃からの知り合いだったの?」
「…馬鹿なんて言っては失礼ですよ」
ちょっと抗議するように言ってから、いつになく遠い目をして巴は続けた。
「…そうですね。その頃から、存じ上げていました」
「モデルチェンジで、仕事が無くなったから休眠してたって聞いたけどさ…。
その頃の先代モデルって事なら、業務用って事で残れたんじゃないの?」
「え?」
不意のおれの質問に、巴の動きが一瞬止まった。
「いや…だって、聞けば、実働半年ぐらいで、まだまだ新品同様な訳だろ?」
「ええ…確かに…そうなのですけど…」
巴の反応がいつになく重い。
少々うつむきながら、僅かにおれの視線を逃れようとしているようにも見える。
…人間で言えば、口が重い…というところだが、巴は本来、機敏な対応が
可能な筈で…どうも妙な違和感を感じる。
「企業の都合…って奴なのかな?」
「た、たぶん…そうかと思います…」
「そうか…」
おれもそれ以上、詮索するのはやめておいた。
とりあえず、今、この場では、だが…。
「…お茶」
おれは湯のみを差し出した。
「…はい?」
「お替り…もらえるか?」
「はい!」
巴はにこっと笑って湯のみを手にした。
ああ…なんのかんのと言っても…巴と一緒にいると、やっぱり和むわ…。

199 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 03:04:25 ID:2SwTdb9z]
>>187>>198です。
長文駄文で済みませんが、ちょっと過疎ってるので投下させて頂きました。
こんなので良ければ、続けさせて頂きたいと思うのですが…。

つまんないようでしたらやめますw



200 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 07:18:59 ID:i4b5crHr]
作品がよくても自虐のせいで台無しだな…。


201 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 09:56:10 ID:vEl0YU30]
そうだとしても言ってはならんこともある……。大人気ないぞ。

202 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:28:11 ID:6zqsKeg8]
>>200
いや…電気炊飯器嬢とか、名作が続いているので…。

>>201
どうもありがとうございます。

では、ちまちまと続けさせて頂きます。

203 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:29:08 ID:6zqsKeg8]
やっぱり巴の淹れてくれた茶は美味い!
少しずつすすると、お茶の軽い渋みの奥にある甘みが口中に拡がり、鼻腔をくすぐる
つんとした香りが、じんわりと沁み入ってくる。
「なあ、巴」
湯呑みを手にして、おれは正面のシングルソファに腰掛けた巴に尋ねた。
「ここに来て、そろそろ一年だけどさ…お前、ここに来る前は何をしてたの?」
両親の話だと、巴は七年前に製造された後、メーカーのモデル見本として
ショールームを廻ったものの、モデルチェンジの為に引退、その後、モデルとして
既に稼動後だった為、買い手が付かなかったので、巴に意思確認の上で、
一時機能停止、モスボールに近い状態で保管されていたらしい。
それが一年前、在庫整理の為に確認したところを見つけ出され、うちの両親が
格安で引き取り、各種のパーツを現在の仕様に直した上で再起動したと聞く。


204 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:31:37 ID:6zqsKeg8]
>>203
間違えて上げてしまいました。すみません。

205 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:32:25 ID:6zqsKeg8]
それからもう二杯、お替りをもらい、おれはシャワーを浴びる事にした。
「脱いだものは籠の中にお入れくださいね」
廊下から巴の声がした。
「着替えは今、お持ちして置いておきますから」
「はいよ」
適当に返事をしてバスルームに入る。
温度を調整して栓をひねり、少しお湯を出して手で温度を確かめてから、
シャワーホースを手にして、身体に掛けはじめた。
あ〜これも適温だ。
前は調整がいい加減で、熱かったり、ぬるかったりだったのだが、巴がきちんと
季節に合わせて直してくれるようになってから、安心して使えるようになった。

…ふと、巴がこの家に来た最初の日の事を思い出した。
いきなり玄関に入ろうとして頭をぶつけ、頭を下げながら入り、顔を上げた途端に、
派手にもう一度ゴン!と。
コテコテの漫才を見たみたいで、思わず吹き出した。
本人は、ちょっと不満そうに一瞬ぷっと膨れたが…。
何を思ったか、おれの顔を暫し見つめ…それから穏やかな笑顔で優雅に一礼した。
「あらためまして…巴と申します。
ふつつか者ではございますが、どうぞよろしくお願い致します」
…大型で、近代化改修されたとはいえ、当時、既に旧式なメイドロイドではあったが、
巴の仕草は普通の人間に近いもので、最新鋭のドロイドと遜色無く感じられた。
ただ…ちょっとそそっかしい所があったりするのは、どうかなぁ…と思ったりも
するのだが…それも仕様と考えれば、まあ、ありかもしれない。

206 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:34:31 ID:6zqsKeg8]
ただ…その晩、風呂に入っていた時、いきなり、何の前触れも無く巴が入り込んで
来た時は、驚きのあまり、正直、あごが外れそうになった。
「お背中…お流しします」
…と、まだそれは良い。
問題は、巴自身も一糸まとわぬ「すっぽんぽん」だったこと。
…いや、確かにつくりものの身体ですよ…でかいしね。
でも…継ぎ目ひとつ無い美しい肌…それも温かな色合いの、柔らかそうな
白い裸身をいきなり見せつけられたら…。(当然、局部にボカシもないし…)
てっきりメイド服か水着、あるいは奇をてらって三助さんの服でも着て入ってくるかと
思っていたので、その、あまりに刺激的な姿に…目が点になった上、マジで鼻血が
噴き出てしまった。
その上、風呂に入っていて体温が上がっていたものだから、頭がくらっときて、
そのまま湯船にドボン…。
「…バスタオルくらい巻いてこいよ…」
巴に介抱されながら、確かそんな事を言ったら、
「…わたしを…女性として見て下さるのですね」
と言って、満面の笑顔で思いっきり抱きつかれ…その圧縮機の様な馬鹿力で全身を
締め上げられ…そのまま気が遠くなり…辺りが真っ暗になった。

207 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:35:47 ID:6zqsKeg8]
気が付くと服を着せられ、ベッドに横たわっていた。
まだ朦朧とした意識の中、すぐ横をちらと見ると、しょんぼりと肩を落として椅子に
腰掛けている巴と、その前で苦笑まじりに、親父とお袋が話している様子が見えた。
「…まあ、そんな事もあるさ」
「本当に…申し訳ございません」
「いいわよ…元々女っ気の無いコだし、あれで結構、気に入ったとみたわ」
「ああ…あいつは、嫌ならキッパリ断るからな」
「構わないから…頃合がきたら、押し倒しちゃっていいからね」
「え゛?」
巴の声が裏返る。
「なまじヘンな所行って処理するより、貴女となら、こちらも安心だから」
「…あの…でも」
「冗談よ…メイドロイドが主を逆レイプなんて…あり得ないものね」
だが、お袋は続ける。
「でもね、半分は本音。貴女なら、絶対に安心して託せるから」
「うん…おれも同感だ」
って…何ですか、両親揃って、おれの意思は無視ですか?
なんちゅう身勝手な連中だ。
「…でも…嬉しいです」
巴の声が震えている。
「わたし…こんな姿ですし、なかなか思うように動けませんから…」
「まだ、初日が過ぎたばかりじゃない…頑張ろうよ、ともちゃん」
「は…はい」
お袋の巴に対する接し方は、まるで自分の娘に向けるようにも思えた。
て言うか、明らかにおれにたいする接し方より優しいですぞ…(苦笑)
「…ともかく、あいつが目覚めたら良く謝って…それから、これからについて、改めて
きちんと色々話し合うこと。君もあいつも、意思の疎通が不器用な所があるからな」
親父殿…何だか、いつものいいかげんな言動に、実に似つかわしくない発言です。
しかし、シャクだが確かにそう思えるし…。
ただ、一番シャクなのは、巴が予想以上に好みで、ものの見事にお袋の思惑に
ハマりつつあることだろう。
…などと、そんな事をぼんやりと考えていると…。
再び頭が朦朧として、そのまま意識が無くなった。

208 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:37:22 ID:6zqsKeg8]
…あれから一年か。
そういえば、巴が来てから、人間の女の子と、まともに付き合ってないなぁ…
などと、ぼんやり思う、
それはそれで悲しいものがある。
だが…妙なことに、以前より優しくなった…と言われる事がある。
会社の後輩とか、行きつけの飲み屋のお姉ちゃんとかが口にしていた。
何だか、女性に優しくなったみたいで、気が付いてくれる様になった…と。
まあ、だからと言って付き合うという所まではいかないようだが。
もしかすると、巴に感化されたのか?

「久しぶりにお背中…流しましょうか?」
ふいに洗面室の方から巴の声がして、おれは我に返った。
「あ、いや、もう出るよ」
「…ちっ……それは残念」
「む…何か言ったか?」
「い〜えいえ…気のせいでございます」
「………」
本当に、こいつはメイドロイドなのか?
時々、妙な掛け合いをする事があり、思わず失笑する事がある。
実は中に人が入っている着ぐるみじゃないのか???
…いや、絶対に違うけどね。

209 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:38:17 ID:6zqsKeg8]
久しぶりの休みの午後…。
このままごろごろしているのも、勿体無いですよ…という巴の勧めもあり、
思い切って外に出てみることにした。
とはいえ、給料日前で、そんなに金は無いし、外食は…というと、巴の作って
くれる料理の方が、断然美味い事の方が多いので…パス。
結局、ウインドウショッピングぐらいなものだ。
最初、クルマで行こうかと思ったが、日曜では渋滞と駐車場の確保だけで
数時間かかるのが目に見えているので、結局、二駅先のドロイドショップまで
歩いて行く事にする。
ドロイドショップなら、巴も行くという事になり…当然、電車で行く事を考えたのだが、
巴が恥ずかしがって嫌がるので、結局、歩く事にしたのである。
そういえば、歩いて一緒に行くのは初めてだったりする。



210 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:45:52 ID:6zqsKeg8]
「こんにちは!トモちゃん」
「はい。こんにちはです〜」
道行く途中、色々な人から挨拶され、その都度、巴は丁寧に会釈していた。
…て言うか、いつの間に、こんなに知られているのか?
確かにデカいから目立つ外観だが…。
なんだか、ちょっとしたアイドルか有名人?みたいな扱いだ。
「そちらの人は旦那さま…かい?」
ふいに、気の良さそうなおばさんが現れ、ちらとおれを見ながら訊ねた。
「はい、わたしのマスターです」
二人っきりでない時は、巴はおれをマスターと呼ぶ。
するとおばさん…何を思ったか、おれの手を取り、ぎゅっと握りしめた。
そして感極まった表情でおれを見、頭を下げた。
「…本当に、この前はありがとうね!」
「え?あの、何か」
「ともちゃんのお陰で、ボヤで済んでね…」
「あ…」
とっさに思い出した。
そうか…この前、帰って来たら、上から下まで真っ黒になっていて、警察の
事情聴取を受けてたっけ。
火事があって救助の手伝いをしたとは聞いていたが…これか…。
おばさんは、何度もおれの手掴んだまま、ぶんぶんと振った。
「しかもだよ…ドサクサに紛れた火事場泥棒を捕まえてくれてさ…。
もう…本当に助かったよ…お陰で、路頭に迷わなくて済んだよ!!」
「そ、それは…良かったですね」
様は、巴のマスターだから…という事で感謝されているわけだ。
おれ自身は何も教えていないし、全く何もしていないのだが…。

211 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:46:34 ID:6zqsKeg8]
おばさんに散々お礼を言われて、あげく、果物の入った大きな袋まで渡され、
おれは半ばぽかーんとしながら、商店街を歩き続けた。
「あ、マスター…それはわたしが」
おれが袋を手にしたままである事に気付いて、巴が手を差し出す。
「いいよ…おれが持ってるよ」
「でも…それはわたしの」
「ま、確かにこれは本来、巴のものだよな」
「……わたしは食べられませんけどね…」
「て、ことは、当然、おれが食わせてもらう事になる訳だしさ、自分の物ぐらい
自分で持つよ」
「でも、わたしはマスターのものですから…!」
「…ま…まあそうだけど…」
周囲の視線に気付いて、おれはちょっとどきっとした。
気が付くと、周囲の老若男女、皆、妙な笑顔を浮かべて、好奇のまなざしで
こちらを見守っている。
…なんなんだ、このびみょーな空気は。
「ともねぇちゃん…」
ふいに小柄な男の子がやってきて、巴はしゃがんでその子の頭を撫でる。
半ズボンに野球帽なんていう、典型的なワルガキのいでたち。
誰だ…この子。
「そいつ、ねぇちゃんのいいひと?」
なんてこと言うんだこのヤロ!
「はい!この世で一番大事な方です」
また、巴の奴がぽっと赤くなって答えちまう…。
途端にわっと周囲から声が上がった。
「おー!にくいぞ、この、いろおとこー!」
男の子がにゃ〜っと笑って声高に囃し立てる。
このクソガキ…。
「こ、こらっ!」
周囲に誰もいなければ、とっ捕まえて小一時間説教してやるのだが…。
この衆人環視の下では何もできない。
「と、ともかく行くぞ、巴」
おれはそそくさと退散する事にした。
「はいです」
ワルガキに片手を上げて、にこっと笑いかけながら巴も歩き出した。

212 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:47:29 ID:6zqsKeg8]
この数年で、人々の人造人間に対する意識が変わってきたとは知っていたが、
ここまで馴染んでいるのとは思わなかったので、ちょっと意外だった。
「お買い物とか、お使いに、良くここを通るんです」
おれの疑問に答えるかのように、ふと巴が口を開いた。
「…本当は…はじめ、ちょっと恥ずかしかったんです」
おれははっとした。
「でも、皆さん、とっても良い方たちで…」
いや…それだけじゃないだろう。
巴が、とても純粋で…かつ天然な事に、好感が持たれたのだろう。
目立つ外観でありながら、あまりメカメカした人造人間らしくなく、人懐っこく
感じられるからであり、しかも愛嬌があること。
それと…たぶん、ここ一年の間で、巴自身が地域住民に馴染もうと努力したに
違いない。
…おれの知らない所で、こいつは色々頑張っていたんだな…。
「ちょっと驚いたよ」
おれは振り返り、巴の顔を見上げる。
「それに…あんな生意気なワルガキにまで人気があるなんて、驚いたぞ」
「…あ、いえ、あの子は」
巴の話では、最初は色々と悪さをされたらしい。
スカートめくり…などという古風なものから、どっきりオモチャみたいなもので
驚かされたり…。
けれど、ある時、あの子が母親の大事な時計を持ち出して、それを失くして
途方にくれていた時、一緒になって探し、見つけ出してあげたことがあり、
その時から、すっかり巴に懐いたそうだ。
まあ、巴なら実にありそうな逸話だな。

213 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:51:12 ID:6zqsKeg8]
けれど…その話を聞き終えた時、ふと…何だか、懐かしい気がした。
遠い昔、そうだ…あれは、おれの幼い頃の初恋の女性との思い出だ。
…おれもイタズラ好きなワルガキで、親父の大事な懐中時計を持ち出して
原っぱで失くしてしまったのだ。
その時、半分べそをかいていたおれに、手を差し伸べてくれたのが…
「…とも…ねぇちゃん…」
思わず呟いたおれの目の前に、その少女の顔が映り…思わずはっとなる。
そして少女の顔は、一瞬後、目の前の巴の顔とダブって消えた。
「はい?…あの、マスター?」
きょとんとした顔で、巴がおれの顔をじっと見つめていた。
「あ…いや、何でもない…」
慌てて手を振りながら…おれは自分自身が口にした言葉に疑問を覚えていた。


214 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 12:52:40 ID:6zqsKeg8]
>>205>>213
今日はここまでです。

215 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/17(水) 19:17:53 ID:kgk8IB9h]
これはこれは楽しみな作品ですこと
期待してます

216 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 01:32:27 ID:0qXF8FHN]
この巴ほどじゃないが、背が高くて名前の読みが同じな娘が同僚に
いる
なかなかの美人で巴とはまた別の方向に可愛いんだなコレがまた


これを読むと、なんかいろいろな意味で彼女を見る目が変わってし
まうなw

217 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:15:21 ID:KhQ7gkPL]
>>215
ありがとうございます!

>>216
「ともえ」さんですか。羨ましいですね。

…それではちょこっと追加させて頂きます。

218 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:16:43 ID:KhQ7gkPL]
ともねぇちゃん…。
さっきのワルガキが呼んでいた呼び名。
それは偶然にも、かつておれが慕っていたひとの名だ。
その名を改めて心の中で呼ぶと、ちょっと恥ずかしくも、甘く切ない思い出が蘇る。

十歳頃だったか…親父たちが、新型ドロイドの開発でオムニジャパンの研究所に
篭りっぱなしになった時、食事を作りにきてくれたのが、ともねえだった。
確か…歳の頃は十五か十六ぐらいだったと思う。
すっぴんでアイドルが出来そうな愛らしい美人で、それでいてどことなく理知的な
印象のする不思議な少女だった。
長い赤毛を左右に束ねたツーテールが、とりわけ印象的で、笑うと小首を
傾げながら口元に手をあてる癖があった。

お袋に頼まれて手伝いに来た…と言っていたが、その頃のおれは半ばガキっ子に
なっていて、一人だけで生活することに慣れかけていたので、初対面の時、
わざわざそんな事しなくてもいいから帰ってくれ…とかなんとか、色々とマセた事を
言ったと思う。
「わたしで、ごめんなさいね」
それが、初めて聞いた、ともねえの言葉だった。
「でも、あなたのお母さんは、今、大事なお仕事で、研究所から出られなくて…」
「いいよ。どうせひとりっ子だしさ…一人で何とかするから要らないってば」
今にして思えば、随分生意気で失礼な事を言ったものだ。
だが…本音を言うと、ともねえの優しく愛らしい笑顔がまぶしくて…本当は…
一目惚れに近い状態なのに…照れくささや恥ずかしさが先に立ってしまい…
つい、素直になれないでいたのだ。
あ〜…本当に馬鹿でナマイキなガキだったと…今思い出しても顔が熱くなる。

219 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:17:45 ID:KhQ7gkPL]
ともねえは、そんな失礼なおれを、暫らく、じっと見つめていたが、やがて
にこっと笑い、それから、おれの頭にそっと手を載せ、優しく撫でてくれた。
「そうですね。それじゃ今日から…わたしがあなたのお姉さんになりましょう」
「へ?」
いきなり…正に突拍子も無い事を言われて、おれは面食らった。
「家族なら…おねえちゃんなら、遠慮する事なんてないでしょう?」
「ちょ…ちょっと…」
「それとも…わたしじゃ…いや?」
じっと見つめられ、おれはどぎまぎした。
言葉も表情も優しく、穏やかなのだが…どこか有無を言わせないものがあり、
それでいて…何だか、甘酸っぱい気持ちが込みあがってくるのだ。
そして…おれは…いつしか黙って「そんなことはない」と小さく首を振り、同意の
意を示していた。

はあ…その時の事を思い出すと、恥ずかしながら、今でもちょっとクるものがある。
初めて…異性というものを意識した瞬間だった。
思えば…あの日は、結局、ともねえは泊り込んで、宿題の手伝いやらゲームの
相手だの色々してくれて…。
何だか、とても心地よいものを感じたものだっけ。

もっとも……その晩…初めて夢精してしまったなんて口が裂けても言えなかったし、
てっきりおねしょかと思って、結局、最後まで、ともねえには、それからもパンツ洗い
だけはさせなかったのも…実に恥ずかしくも…懐かしい思い出だ。



220 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:19:02 ID:KhQ7gkPL]
ちなみに後で知ったのだが…ともねえは、まだどこかの学生の身分だったのに、
オムニジャパンに努めていたらしい。
何をやっていたのかは良く判らないが、かなり色々な手伝いをしていたらしい。
時々、晩にノートパソコンに向かって、色々考え事をしながら入力していたし、
両親と親しかった事を考えると…今にして思えば、プログラマーの手伝いか何かを
していた奨学生だったのかも知れない。

「……ぼっちゃま?」
暫く黙り込んでしまったおれを、巴が幾分心配そうに訊ねかけ、おれは我に返った。
「どうか、なさいましたか?」
「あ、いや、なんでもない…」
ふっと巴に笑いかけると、ともねえの言葉が蘇る。
<家族なら…おねえちゃんなら、遠慮する事なんてないでしょう?>
そうか…巴って…おれにとって、昔のともねえの位置にいるんだな。
最近、巴無しの生活が考えられなくなっている自分に、改めて気付く。
…そういえば、おれはずっと、ともねえ一筋で来たんだっけ。
理想の女性として、ずっと抱いていた想い。
だから、まともに彼女も作らなかった…というより作れなかったのだ。
いや、もちろん、巴が姉さんっていうのは、明らかに違うけどさ…。
ただ…そばにいて、心安らぐ存在という点では同じだ。

あれ…そう言えば、巴のAIって、開発コード「tomo」だったよな。
ふと、そんな事を思った。

221 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:20:09 ID:KhQ7gkPL]
商店街を抜け、某駅の前を抜けると、住宅街に入った。
目的のドロイドショップは、住宅街の一角の五階建てのビルの一階にある。
「そういえば、新しい超高速演算プロセッサが出たそうだな」
「はい。ただ、オムニ純正では無いんですよね」
「う〜ん…ベンチテストが終わっていたら、巴に付けてやろうかと思ったんだが」
「え〜?どうしてですかぁ」
少し不満そうに巴は口元をとがらせる。
「時々ポカするのを、それで直してやろうと思ってさ」
「これは、元からの仕様です〜」
「そんな仕様、要らね〜よ」
「あ〜ん、これが萌えで、今の流行りなんですよ〜」
小さく両手の拳を固めてふるふると振る巴。
全く、デカい図体して…可愛いじゃないか(爆)
おれは思わず吹き出しながら、わざと意地悪くにやりと笑った。
「そんなにボケるのがか?それは天然じゃね〜のか」
「はい、もちろん天然です。だから良いんじゃないですか」
「良いのか?」
「はい…」
妙に自信たっぷりに巴がやり返す。
「この前も、転んだわたしを見て、ある人が萌える〜って褒めて下さったんですよ」
「……それ、やっぱりヘン」
「え〜ん…ヘンじゃないですよ〜コアでレアなんですよ〜」
これって自爆ギャグのつもりなのか?
巴のセンスはやはり時々ヘンだ。

222 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:22:16 ID:KhQ7gkPL]
ほどなく、目的地のビルに着き、おれはメンバーズカードを取り出して、出入口の
右横に設けられたセンサーに軽くタッチした。
ここは会員制になっていて、盗難や強盗防止の為、入館する時、カードを提示するのだ。
やがて、ゲートの上に「いらっしゃいませ」と文字が表示され、すっとオートドアが開いた。
「ここに来るのも久しぶり…」
そして中に入りかけ…思わず立ち止まった。
「な…なんだこりゃ!?」
「ぼっちゃま!」
巴が反射的に身構える。
…店内は、まるで嵐が吹き荒れた後の様な有様だった。
床にはメカや工具が散乱していて、何体かのドロイドがバラバラになって転がっていて、
思わず目をそむける。
「ひどいです…」
巴が両手を口にあて、おれも黙って頷く。
いくつもの陳列棚が倒され、ガラスや陶器の類は粉みじんに吹き飛ばされている。
一体…どういうことなんだ?
何があったんだ?
数歩先に進むと…カウンターの奥に店長らしき人物が突っ伏しているのが見える。
「マスター…これは?」
巴の声にも緊張感がある。
「警察だ!巴、110番だ」
とっさにおれは事件性を考えて怒鳴っていた。
「あ、はい!」
こういう時の巴は実に頼りになる。
即座に左腕に内蔵された通信機のコンソールを操作しはじめる…が。
「動くな!」
ふいに鋭い男の声がして、おれたちは振り返った。

223 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:23:28 ID:KhQ7gkPL]
「…なんだ…OJ-MD2か」
スカーフを覆面代わりにした男が、巴のシリーズ名を呟きながら、両手でかなり大きな
銃をこちらに構えつつ、店の奥に立っていた。
年齢はおれと同じか、少し上くらいか?
長身で、黒の皮のツナギを着ていて、黒豹を思わせるしなやかさと、刃物の様な鋭さを
感じさせ、一瞬、冷たいものが走った。
…こいつ…何かのプロか?  
黒い瞳がぎらりと光って、こちらを見つめる。
「…ご…強盗か?」
男の手にしている銃は…確か45口径はあるオートマチック銃だ。
<世界の銃>年鑑で、特集が組まれていたやつだ。
一発で即死か、運が良くて重症だろう。
…畜生…今になって、少しずつ足が震えてきやがった。
「マスター!」
巴がおれの前に立とうとすると、男は出し抜けに天井に向けて一発ぶっ放した。
とたんに天井のモルタルが、いくつかばらばらと崩れ落ち、軽く粉塵を撒き散らす。
…ち、本気かよ。
「動くなと言ったはずだ」
男が抑揚のない声で言い放つ。
「次は、本当に撃つぞ」
「マスターに手出しはさせません」
だが、巴はキッと男を見据えたまま、なおもおれの前に立とうとする。
「…お前…」
一歩も引かない巴の様子に驚いたのか、男の瞳に驚きの光が見えた。
銃を手にした腕が僅かに宙を泳ぐ。
と、その一瞬の隙をついて巴が男に向けて、矢のように素早く突進した。
そして、構えようとしていた銃を無造作に掴むや、指先でぐしゃりと銃口を潰し、
素早く男の両手を掴み上げた。
「マスターを撃たせやしません」
「…やるじゃないか」
巴の力には人間では抗えない。
然るに、男の瞳に微かに悪戯っぽい表情が見えた。
「だが…残念だったな…」
「?」
「動かないで!」
ふいに別の女の鋭い声がすると共に、おれは首筋に冷やりとする金属の棒を
突き当てられて、思わず歯軋りした。

224 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:24:45 ID:KhQ7gkPL]
いつやってきたのか、金髪、蒼眼に、こちらも全身黒皮のレザースーツに身を包んだ
若い女が、電撃スタンガンをおれに突きつけていたのだ。
…ち、もう一人いたとは油断した。
巴…すまん!
……しかし、気配を全然感じなかったぞ。
どういうことなんだ?
「そこの大きいの…マスターを離しなさい!」
「マスター?…ってことは、こいつは」
「…ジェーン!」
男が鋭く命ずる。
「不用意な口をきくな…」
「でも……はい」
男の言葉にジェーンと呼ばれたドロイドは少ししゅんとなった。
ちょっと外タレを思わせる端正な顔立ちのコだ。
へえ…予想外に殊勝な感じじゃない…いや、そうじゃなくて…。
「人造人間は、人間に危害を加えてはいけないんじゃないのか?」
おれはここぞとばかりに言い切った。
「お前、違法アンドロイドか?」
「!!!」
ジェーンの顔が一瞬、こわばる。
当惑したと言うか、叱られたような、複雑な表情で「マスター」の方を向く。
…あれ…これまた、意外と可愛いらしい顔をしてるじゃないか。
こんな表情もできるのか。
それにこの反応は…正常そうだぞ。
「マスターに危害が及びそうな時は例外だ…」
男が、微かに苦笑しながら言い放つ。
「現に、今、おれがその状況だし、お前のメイドロイドも同じではないか」
「……確かにな」
そう言いながら、スタンの先端をちらと見た。
…おれは…あまりおおっぴらに言っていないが…。
これでも、一応、柔道、空手、合気道、剣道と合わせて16段持っている。
腕にはそこそこ自信があるつもりだが…スタンガンを持つドロイド相手では、
やはり分が悪い。
だが…その反対に、巴も男を拘束している。
五分五分か…。

225 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:26:20 ID:KhQ7gkPL]
「で、どうする気だ…?」
おれは、覚悟を決めて尋ねた。
「このままでは埒もあかないだろう…ここで一気にケリをつけるか?」
「…そうしたいのは山々だがな…」
男は、だがどこか楽しそうな口調で続けた。
「やめとくよ。ジェーンがスタンで君を倒した途端、このチャーミングな
お嬢さんのリミッターが外れそうだ」
「ええ。マスターにそれを使ったら…容赦致しません」
巴が男の両腕を掴んだまま、いつになく凛々しい表情で男を睨む。
「…ジェーン…スタンを下ろせ」
男が静かに命じた。
「え…でも」
当惑した顔で、金髪のアンドロイド娘はちらとおれを見、再び男の顔を見る。
「よろしいのですか?マスター」
「先に手を出したのはこちらだしな…ならば、退くのもこちらが先だろう」
「で、でも…」
おれは妙な事に気付いた。
このジェーン嬢(笑)、先刻からマスターの命令に素直に従わないのだ。
いや、厳密に言うと、マスターの身を案じて、最後までマスターの指示に
従いきれないでいるのだ。
…良く言う二律背反という奴だが…。
普通は、というか、今現在存在するアンドロイドの殆どが、最終行動規程は
マスターの直接指示が第一義としてある…。
勿論、厳密に言うと、本来は法律に抵触しない範囲で…だが。
しかし、このジェーンは、マスターの身を案じて、自らの判断で躊躇しているのだ。
こいつは、相当高性能なAIを搭載しているとみた。
ならば…。
この状況を変えるには一か八かやってみるしかない。
「…巴」
おれは思い切って口を開いた。
「…もう離して良いよ」
「え…でも」
意外にも巴も当惑した表情を浮かべ、指示に反して手を離そうとしない。
「でも…マスターが…まだ…」
おいおい…巴もなのか!?
いつもなら、少し躊躇しながらも従うはずなのに…。
参ったな…これでは文字通りの膠着状態だぞ。

226 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:27:17 ID:KhQ7gkPL]
けれども…緊張感溢れる場面の筈なのに、おれはちょっとおかしく思った。
しかも、不思議な事に、次第にこの二人に対してある種の親近感が湧いて
きているのだ…。
「ふふ…どうも、お互い、大事にされているようだな」
男が静かに声をたてて笑った。
どうやら、おれと同じ考えらしい。
「仕方ない…同時に離すしかあるまい」
「そのようだな」
おれも思わず小さく苦笑した。
そして、少し表情を引き締めて改めて命じた。
「巴、手を離すんだ」
ほぼ同時に男も鋭く命じる
「ジェーン、スタンを下ろせ」

暫しの沈黙の後、巴とジェーンの視線がぶつかり合い…
やがて二人はゆっくりと指示に従った。

227 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:28:33 ID:KhQ7gkPL]
>>218>>226
今回は、ここまでです。

228 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 03:35:59 ID:jzS22hcC]
リアルタイム遭遇GJ!
続きを楽しみにしています

229 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 11:22:10 ID:EdMMzmoW]
ガキっ子につっこみつつGJ!



230 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 12:05:28 ID:KhQ7gkPL]
色々とありがとうございます。
では…ちょっとだけ追加です。

231 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 12:06:42 ID:KhQ7gkPL]
暫く無言のまま、おれと巴は、男とジェーンの二人と対峙していた。
全く…つい一時間前まで、こんなひっ散らかった店内で、二対二で命懸けで睨みあう
ことになるなどとは、夢にも思わなかった。
それに、お互い、開放はしたものの…
これでは、あまり状況は変わらない気もするが…まあ、緊張感溢れる死闘開始直前の
状態よりは断然マシか。
それに実質、どちらも切り札がアンドロイドのお嬢さんだし。
それにしても…倒れている店長を介抱しなくては…と思うのだが、おれたち自身の
安全すら保障されていない現状では、どうしようもない。
果たして…どうしたものか。

232 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 12:07:43 ID:KhQ7gkPL]
「君は、この店の常連だな」
ややをして、何を思ったのか、ジェーンに指先で指示しながら、男が口を開いた。
「ここに入るには、専用の認証カードが要る筈だ」
「当たり前だろ…ここはそういうシステムなんだから」
「マスター…見つけました」
ジェーンは周囲を見渡すと、奥のモニターに気付き、そちらに向かった。
おいおい…今度は何をするつもりだよ。
モニターの前にあるコンソールテーブルに就いたジェーンが男に頷きかけ、男が
小さく頷いて返すと、手早くキーを打ち始める。
なんだぁ…この場でハッキングでもする気か?
「ここで何が行われていたか…知っているな」
何を持って回った言い方をするんだ?
おれは、半ば呆れながらヤケクソ気味に言った。
「メーカーの代理店で、かつカスタムパーツの製造、販売、改造、それにメンテ…」
「違う!」
男はぴしゃりと言い切った。
「違法パーツの製造販売だ」
「え゛?」
おれは思わず間抜けな声を上げていた。
「違法…?ここが…だって!?」
ここは有名なフランチャイズのチェーンショップだぜ。
「嘘だろう?」
「しかも…その取り付けと言った、様々な違法改造もしているのさ…」
「なんだって?」
おれはちらと巴と顔を見合わせた。
「そんな馬鹿な…」

233 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 12:08:56 ID:KhQ7gkPL]
「常連なら、知らないはずないでしょう!」
ジェーンがこちらを向き、冷然と言い放つ。
ちぇっ…可愛い顔して…キツいコだぜ。
しかし…こいつ、ドロイドにしては随分と人間臭い反応の仕方だな。
「あのさぁ…お嬢さん」
おれは左のこめかみに指先を当て、かるく掻きながら、舌打ちまじりに言った。
「おれたちは、ただの客なの!」
気が付くと、男がいつの間にかサングラスを掛け、覆面代わりのスカーフを外している。
その素早さと手慣れた感じにちょっと驚き、改めて警戒しながらおれは続けた。
「ここはさ、『全国427店舗』を誇るフランチャイズショップのひとつなんだよ」
「もちろん知っているわ」
「会員数、老若男女合わせて20万人超…お前さん、その全員が違法改造グループの
一員だっての?仮に…『ここ』がそういうところだとして、おれが他のショップで入会した
会員だとしたら全くの無関係じゃないのか?」
…ジェーンは口をつぐみ、暫しおれの顔を見据えた。
「でも、ここに…今ここに入ってこられたわ」
「ここに?今ここに…ってどういう意味だよ?」
おれの問いには答えず、ジェーンはモニターの方に向き直った。
「おい、勿体ぶらずに教えろよ」
すると、ジェーンはこちらの方は向かずに静かに言い切った。
「…それに、マスターがここを破壊したのは、あくまで正当防衛よ」
ち…はぐらかして話さない気か?それにだぞ…。 
「正当防衛だあ?」
おれは、思わず呆れて周囲を見渡しかけ…はっと息を飲んだ。
「マスター…」
巴も気付き、床に散らばっている無数の薬莢をそっと指差す。
いきなりドタバタと立ち回ったので気付かなかったが…確かにこれは異様だ。
しかもそれらは、バラバラになったドロイドの腕に空いた穴から出た形跡がある。
「まさか…戦闘用…ドロイド!?」
悪い冗談かと思ったが…改めて良く見ると、散らばっているドロイドの、砕けたり割れた
手足の隙間から武器…この日本には似つかわしく無い重火器の銃口や銃身が見える。
…こんなものぶっ放したら…。
「うそ…だろ…」
このショップは、テレビCMでも有名な、全国規模で展開されているチェーンストアのひとつだ。
それが…裏でこんな物騒な代物を抱え込んでいたなんて…。
流石にちょっとショックだ。

234 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 12:10:09 ID:KhQ7gkPL]
「すると…あんたたちが先に撃たれた…のか」
どうも状況からすると、その様になる。
まだ、信じて良いのか判らないが…。
男は警察官…なのか?
いや、それは違うぞ。
それなら、先刻、通報しようとして止めたりしないはずだ。
それに45口径なんて所持する筈はない。
普通はニューナンブか、SIG230辺りの中型拳銃だろう。
と、なると…。
そう思った矢先に、ジェーンの操作していたコンソールからピーという音がした。
「マスター…」
ジェーンが頷き、男がつかつかとモニターの前に行く。
そして、表示された何かを一通り見ると、ジェーンに言った。
「ここの入場記録を消してやれ」
「…え?よろしいのですか?」
「どうやら…本当に無関係な様だからな」
訝しげなジェーンに、男がおれの方を見ながら命じた。
……何にアクセスしたんだ?…まさか!おれの個人データか?
こんなところで、いともたやすく出来るって言うのか?

235 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 12:10:59 ID:KhQ7gkPL]
「君の事は、今、ちょっと調べさせてもらった」
男がサングラスを外した。
整った顔立ちで、日焼けした肌の、モデルでも通じそうな風貌の男だった。
先刻までの冷徹そうな雰囲気を感じさせない、爽やかな笑みを浮かべている。
か〜!伝説の松田優作とか、草刈正雄とか、そんな感じの二枚目じゃないの。
もしかして、これはドッキリとか、実はドラマか映画の撮影とかじゃないよな。
「…済まなかったな」
ふいに男は頭を下げた。
って…え?
「電子ロックしてあったんで、ここには絶対に誰も入れないと思っていたのでね」
「え…だって、それって…」
「君のカードは、ダイヤモンドカードだから…店長待遇で特別なのだよ」
「あ…」
そうだ…思い出した!

おれのカードは両親が手配してくれた物で、オムニジャパン本社・総務部発行の物だ。
このショップの会社に対しては、直接経営等に関与していないものの、資本的、人的共に
強い影響力があり、特に本社のトップで経営、開発に直接関わっている者に対しては、
ショップの店長並みの厚遇をする事になっているそうだ。

236 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 12:13:20 ID:KhQ7gkPL]
また…それに加えて、営業時間外であっても、中に店員がいれば入れてしまう…そんな
特別なカードだと、確か親父に聞いた事がある。
随分と無茶苦茶だな…と一笑に付したし半信半疑でもあったが…このカードは、事故や
災害等が原因で、ドロイドの緊急メンテや連絡などをする必要がある時、所持している者が
こういったショップで、より素早く中に入って行動出来る様、IDカードを兼ねているのだとか。
「そうか…中にまだ店長がいたから…」
「店長の認識と君のカードの認識で、偶然ゲートが開いたのだろう」
「でも…確かに『いらっしゃいませ』という表示が出ていましたよ」
不意に巴が口を挟み、男は静かに笑った。
「君は、実に良いパートナーを連れているな。洞察力も素晴らしい」
巴は一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐにはっとして頬を赤らめた。
この反応の仕方が可愛いんだよな。
とか、言っている場合じゃない。
…そうだ。まさしくその通りだ。
営業中の「看板」は出ていたぞ。
「我々が急にやってきた事もあるが…。いきなり、指定された日でも無いのに臨時休業
すると、やはりおかしく思われるだろう。営業中の表示を出しておけば、目立ちにくい」
「確かに…フランチャイズ系の店は、定休日はどこも同じだ」
「仮に客がきても…店内清掃中で一時閉めていた…とか言えば、言い訳も立つ」
「すると…最初はそのつもりだったんだな」
「ああ、だが…結局、こうなっちまったがね」
男は頷き、左手で顎をさすりながら、小さく咽喉から息をついた。
「……しかし、弱ったな」
「え?」
「君たちが善意の来客なのに、巻き込んだ上、危うく危害を及ぼす所だった。それに…」
「このまま…いっそ、おれたちが何も見なかった事にして、別れるって訳には…」
「いきませんね…絶対に」
ふいにジェーンが口を挟み、巴はきっとなってそちらを睨んだ。
「ここまで事情を知られた以上…仕方ないのよ」
「そんなのあんまりです」
両手の拳を固め、ちらとおれの顔を見てから、巴はまくしたてる。
「そちらの事情なんて知りませんけど…完璧にロックしなかったのは、そちらの責任では
ありませんか!何も知らずに来たのに…勝手なこと、言わないでください!」
巴の声が熱を帯びていき、男は微かに苦い表情を浮かべて首筋に手をやった。
「大体、貴女、さっきはなんですか!誤解とは言えマスターに武器を突きつけておきながら、
お詫びのひとつも言えないんですか!」
「あれは…だって!」
ジェーンが真っ赤になって声を荒げる。
「貴女の方こそ、マスターをあんな風に拘束するから!」
って、おいおい、随分と女の子らしい反応じゃないか。
…て言うか…何だか、巴と似た反応だな。

237 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 12:16:54 ID:KhQ7gkPL]
「わかった…」
男が決意を固めた表情で、口を開いた。
「君たちには…総ての事情を説明しよう。その上でどうするか考えよう」
「……それしかなさそうだな」
おれも素直に頷く
「マスター!?」
ジェーンが抗議混じりの声を上げる。
「ただし…一切、他人には口外しないこと。ここでの出来事もだ。それは約束してくれ」
「わかった。…巴もいいな?」
「はい…です」
ちらとジェーンを一瞥しながら巴が頷き、ジェーンはぷいと視線を逸らす。
…ここに来てから、いつもの呑気な巴らしくない…。
ジェーンをやりこめる辺り、何だか急に強くなったみたいな感じがする。
ひょっとして…おれを守ろうとして…なのか?
それはそれで…嬉しく思うけどな。

238 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 12:18:23 ID:KhQ7gkPL]
>>231>>237 今回はここまでです。

239 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 14:58:02 ID:inn78k/Z]
>>238
乙だったじゃないか…



240 名前:某四百二十七 ◆mjGnt7G.D2 mailto:sage [2007/10/18(木) 22:39:10 ID:QuOvNgMP]
GJ! どじっ娘メイド路線と思いきや、いきなりシリアスバトルな展開は少し予想外ですた。

241 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/18(木) 22:42:14 ID:XWcvedB3]
わくわくだぜぇっ!

242 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/19(金) 08:39:32 ID:v69jJlJl]
楽しんで頂けますと幸いです。
では、今日もちょこっとですが…。


243 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/19(金) 08:40:47 ID:v69jJlJl]
数分後、おれたち四人はビルの裏口に姿を現した。
そこには一台の白いワゴンが停めてあり、男が運転席に、ジェーンが助手席に、
おれと巴が素早く後部座席に滑り込んだ。
…と言っても、巴は長身なので、乗り込む順番は巴を先にし、例によって、慌てて入り口に
激突しないよう、素早くおれが巴の頭に手をあてて、高さを押さえてやったのだが…。
……放っておくと、また、勢いよくガン!とか、ぶつけかねないからな。
これでクルマが壊れたら、修理代出さなくてはならんのか?などと、お馬鹿な事を一瞬考える。
無事に乗り込んだ巴は、あは!と小さく笑って口元に手をあて、そっと小首を傾げてみせた。
こんな時でも巴は巴だ。
…はあ…ちょっと気が抜ける…と同時に、妙に癒され…ほっとする。

それにしても、乗用車に比べると、ワゴンは格段に天井が高いので、乗り降りはやはり楽だ。
おれも、格好付けてないで、クーペを止めて、巴の為にそろそろワゴンにするかな。

244 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/19(金) 08:44:06 ID:v69jJlJl]
…と、ふと、気が付くと助手席のジェーンが振り向いて、じ〜っとこちらを見ていた。
巴をシートに付かせるまでの一連をずっと見ていたらしい。
なんだ?何か言いたそうな感じだが。
けれど、目があった瞬間、すぐについと正面を向いてしまった。
「全員乗ったか?」
男がバックミラーを直しながら訊ねる。
「ああ」
オートのスライドドアを閉じ、シートベルトをつけながら返事をする。
ワゴンは静かに走り出した。

それにしても…あの店はあのままで良かったのだろうか?
店長だって放っぽったままだし…。
ちょっと気になり、窓越しに遠ざかって行くビルを振り返って見ると、男が言った。
「…さっき、警察には連絡した。後始末は気にしなくて良い」
「え?」
男の言葉に、おれと巴は、ちらと顔を見合わせた。
「おかしく思うのも無理はない…確かに、さっきは止めたんだからな」
男は続けた。
「だが…あの状況では仕方無かった。君たちが通報すると、当然、中央センターに連絡が
行ってしまう…しかし、それでは、折角、隠密裏に調査している事が無駄になってしまう。
だから、極秘に行動してくれる部署に、改めて連絡したんだ」
「でも、それならおれたちが、違法改造に加担していないって判ってたんじゃ?」
「……もちろん、それも考えたがね」
男がミラー越しに、ちらとおれの顔を見る。
「君が『組織』の安全保持の為、『トカゲの尻尾切り』をする可能性もあったからな」
「あ…そうか」
「あのショップを切り捨てて、あの場だけで済ませる手もあるし、警察内部に協力者が
いないとも限らない…」
「…それでつまり、『ああいう事件』専門の担当に通報したと」
「察しがいいな。日本警察で、『懇意にしてもらっている部署』があってね」
「…あんた…一体、何者なんだ?」
すると、何を思ったのか、男は小さく口ごもり…一段声を落として言った。
「……休暇中のFBI捜査官……表向きはだがな」
おれは思わず吹き出した。
「…そんなベタな話、信じられないよ」
「だから…おれも…あまりしたくなかった」
男は苦笑し、それから素早く懐から、黒い手帳の様なものを取り出すと、ちらと振り返り、
おれに向かってそっと放って寄越した。
…頼むから運転しながらそういう事しないでくれよ…。
と、それはさておき、それを受け取って開くと、中に金色の徽章があり、開いた下部に
身分証明も添付されてあり、英語でつらつらと色々記してある。
マークも確かに…FBIだ。
仕事で知り合った友人の親父さんのを見たことがある。
「バン・カドクラ…」
名前を読み上げると、男は再びミラー越しにおれを見た。
「そう…それがおれの名だ」
日本で言えばカドクラバンか…。
何か、アイテムでも使って変身しそうな名前だな。
「それでバン…」
おれは遂に最大の疑問を口にした。
「あんたたちは、一体、何をしにきたんだ?」

245 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/19(金) 08:46:17 ID:v69jJlJl]
暫し沈黙があった。
ジェーンが心配そうにバンの横顔を見、巴がおれの方を見つめている。
男…バンは正面を向いたまま、やがて静かに口を開いた。
「……ある物を捜索し、確保するか…破壊して、この国から出さない為に来た」
「マスター…それ以上は…」
「君たちに…重ねて誓ってもらいたい。この件は絶対口外しないと」
「…わかった」
やがて、クルマはある公園横の道路に横付けした。
「おれたちは…あるAIシステムを探しているんだ」
「AI…システム?」
「厳密に言うと、サポートシステムでもあり、双方向情報共有・独立連動システムでもある」
なんだか良くわからなくなってきた。
「双方向?AIとどこかでやりとりして…情報を共有しつつ…ってなんだいそりゃ」
「……シンクロイド・システムのことですか」
ふいに、巴が口を開き、おれは目を見開いた。
ジェーンが驚いた表情で振り返り、バンも少し意外そうな表情を浮かべている。
「巴…おまえ、何か知っているのか?」
おれの言葉に、巴はいつになく真剣な表情で頷いた。
「はい…わたしの記憶回路に…幾つか、かなり古いものですが…その痕跡が、あります」
「痕跡って…おまえ」
巴の黒い大きな瞳が、おれをじっと見据えている。
少し困ったような、温かで優しい笑みを微かに湛えた、年上の女性の表情がそこにあった。
巴が、ごく稀に見せる、おれを見守るかのような、落ち着いた雰囲気。
…あれ…この表情…。
昔…その昔、確かどこかで見たことがある。
「…それって…どういうものなんだ?」
だが…おれは…半ば無意識に、そう訊ねていた。
巴は頷き、普段からは考えられない、凛とした口調で言った。
「簡単に言いますと、複数のドロイドを、ひとつのマスターAIで制御する、というものです」
「???」
首を傾げながらも、そういえば、巴はかつて、ショールームモデルをしてたんだな…と思う。
いや、そうじゃなくて…ひとつのAIでっていうのは…リモコンみたいなものなのか? 
おれが判然としていない事に気付いて、巴は更に続けた。
「もっと簡単に言いますと、ひとつの意識で、同時に幾つもの身体を動かすシステムです」
「つまり、それを使えば…」
「はい…例えば…もしそれがわたしに使われたとしたら…と、この場合考えてみます。
『わたし』の意識や記憶は基本的に『ひとつ』です。でも、それと同時に、全く同じ、意識や
記憶を共有した、別の身体の『わたし』を存在させ、マルチリンクで動かすことが出来るように
なるのです」
おれの頭の中に、並んだ二人の巴が全く同じ動作をして踊ったり、掛け合い漫才をする
姿が思い浮かんだ…意味はわかるが…もうひとつピンと来ない。
「…それ…何のために作ったんだ?」
「人が…機械の身体に生まれ変わる為に…です」

246 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/19(金) 08:48:38 ID:v69jJlJl]
巴の言葉に、車内が一瞬、し〜んと静まり返った。
バンもジェーンも口をつぐみ、暫しじっとしたまま動かない。
どうやら…巴の説明で、総て事足りてしまったようだ。
「…それは…人の為に…作ったのか?」
「そういう風に…記録されています」
淡々と、だが、努めて穏やかな口調で巴は答えた。
「でも…生まれ変わるって…どういう意味だよ」
「仮に…重病で、寝たきりの患者さんがいたとします。その人にこのシステムを施術したと
したら…どうでしょう?」
「同時に…別の…ドロイドの身体を持った自分が、存在できる」
「しかも、意識そのものはひとつです」
「そうだな」
「そして、その患者さんが…亡くなったとしたら…」
「…ドロイドの身体が…残る…」
「はい。でも、亡くなった人の意識も記憶も…すべて残っているのです…それも死の間際まで
完全にリンクしたまま…」
「つまりは…その人間の『心』が移されたということなんだな」
「はい」
「でも、それって…それって、本当に生まれ変わりなんだろうか?」
「…そうですね。生身の身体にのみ魂が宿る…というのであれば、明らかに違います」
巴はそう言いながら、何故か一瞬、少し悲しげな表情を浮かべた。
「……そして…わたしの中にある記録では…臨床実験は一度だけだった様ですが…」

247 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/19(金) 08:49:55 ID:v69jJlJl]
「それでバン…何で、あんたはそれを破壊しなくてはならないんだい?」
おれは正面を向き直った。
「……それって…重病の末期患者とかには、考えようによっては、朗報なんだろう?」
「考えようによっては…とは、言いえて妙な表現だが…まさにその通りだ」
バンは振り返り、ちらと巴の方を向き、それからおれの方に向き直った。
「…お嬢さんが、適切な説明をしてくれたから…その先を話そう」
「でも、マスター…その先は…」
またもジェーンが口を挟むが、バンは首を振った。
そして、はっきりと通る声で言った。
「うちのプレジデントは…テロの親玉どもの手に、そのシステムが渡るのを恐れているのだよ」

おれは…思わず、あっと声を上げた。
そうだ…確かにその可能性もあるわけだ。
「自爆テロも辞さないような連中だ。指導者の替え玉どころか、機械で出来た本人の完全な
分身が幾つも出来るとしたら…」
「…いくら倒しても、拘束しても無駄になる」
「ああ…」バンは唇を噛んだ「おれにはそれが…許せないんだよ」
「バン…あんた…」
おれは口を開きかけたが…。
バンの顔に、言いようの無い怒りと悲しみの表情がよぎり、言葉を失った。
…そして、ふと気が付くと、そのバンを、ジェーンが複雑な表情で見守っていた。

248 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/19(金) 08:51:17 ID:v69jJlJl]
ともかく…無事、脱出はしたものの、これからどうするか…ということになった。
おれたちは…と言うと、とりあえず二人に協力することにした。
まあ、危ない真似などはできないし、バンもそういう手伝いはしなくて良いと言っていたが、
先刻の様子を見ていたら、このまま別れるのというのも…なんだか引っ掛かって…。
情報収集とか、補給物資の調達(武器は除くが(笑))ぐらいなら問題あるまい。
義を見てせざるは勇無きなり!とか、格好つける訳じゃないけど…それに近いかもなぁ。
それに…バンを見つめているジェーンを見ていると…何だか更に気になるんだよな。

それにしても、二人は日本に来て間もなく、まだきちんとした宿すら手配していないとの事だ。
さて、こちらはどうしたものだろう?
ここ数日間はワゴンやネットカフェで寝泊りし、銭湯に入ったりしているそうだが…。
その容姿じゃ、逆に目立ったろうなぁ。
日本語は流暢で、日本の慣習自体には問題ないようだけど…。
バンはスリムだが、骨太な印象の、役者のような二枚目だし…
また、ジェーンは…色白で、これで余計な口さえ開かなければ…(爆)、あちら風の清楚な
お嬢さまで通る美少女ぶりだ。
…ちなみにジェーンとは愛称で、本名はジェニファーと言うそうで、意外にも巴の名の
由来のひとつ「巴御前」の事を知っていて、それをネタに巴と色々やりあっていたが…。
何だか、ジェーンも巴自身も、どことなく舌戦を楽しんできているようで、おや?と思った。
…まあ、仲良きことはよき事かな。

249 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/19(金) 08:53:04 ID:v69jJlJl]
>>243>>248 今回はここまででございます。



250 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/19(金) 20:56:38 ID:LwcY0jkK]
いやぁ〜、先日から実に面白いわ

251 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/10/20(土) 12:10:13 ID:Tf2+I9qS]
>>250 恐れ入ります。

なかなか進まなくて済みませんが、少しだけ上げさせて頂きます。






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