- 473 名前:魔窟の伝説 mailto:sage [2007/11/23(金) 03:17:49 ID:CL87sYTN]
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「クッ、うううううぅぅぅぅぅっ!」 「へ? あ、絢華さん!?」 そう、その穴へと墜ちたはず……だったのだがその一歩手前で俺を引き止めている人が居た。 「ま、間に合ってよかった……」 「間に合ってって、あ、ああ、絢華さんが掴んでくれて……」 そう。絢華さんは穴に墜ちる瞬間の俺の右手を、驚異的な反射神経で掴んでくれていたのだ。 「ええ、引き上げるわよ。少し待ってて……って、クッ!」 と、そうは言ったものの、ただでさえ重いうえに装備と資料を持った男の俺を、女の絢華さんの細腕で持ち上げれるとは思えな い。 だがそんなことは構わずに離すまいと必死で俺の手を掴む絢華さん。だが、見上げるその顔には脂汗が浮かんでいる。 「んっ、んんんんんっ!」 「む、無理ですよ絢華さん。冷静に考えたら持ち上げれるわけ無いです!」 「でもっ、ここで諦める訳にはいかないでしょっ!」 「そうですけど……」 だが、そう言っている傍から俺だけではなく、俺を持つ絢華さんまで少しずつ穴に引き込まれていく。 「んっ、んんんんんっ! 手が、手が滑るわ、明良君、軍手取れないっ!?」 「無理言わんでください! やっぱり無理ですって、うっ、くっ、このままだと絢華さんも落ちますっ」 「でも、諦めるわけには行かないって言ってるでしょ!」 「そうですけど、二人とも落ちたら元も子もありませんし、ここはいったん俺を落として絢華さんが救援を呼んだほうが」 「くっ、馬鹿なこと言うんじゃないわよっ! そもそも深さがどれだけある穴なのかも解からないのに! もしも深さが10メートル以上あったら骨折じゃすまないわよ!」 「で、でも……」 そう言っているそばからズリズリと絢華さんと俺は穴の中へと滑っていく。 「もう無理ですっ、離して下さい!」 「駄目よっ、私がこんなところで君を諦める事ができるわけ……って、きゃああああああああぁぁぁぁっ!!」 「うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 そう、そこまでが限界だった。 結局、俺と絢華さんは仲良く底の知れぬ暗い穴へと落ちて行ったのだった。 ♯今回はここまで。何箇所か改行ミスってすみません。次回から二人きりです。
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