- 352 名前:わんにゃん@名無しさん mailto:sage [2011/09/27(火) 18:35:43.54 ID:rLccQqOH]
- [ 炭酸ガス麻酔は安楽な麻酔効果を得られるか ]
上地正実(日大・獣医・内科) 【はじめに】 炭酸ガスの麻酔効果は古くから知られているが、粘膜への刺激が強い上に炭酸ガス濃度に応じて 低酸素になることも問題となる。炭酸ガス麻酔による意識状態と循環動態の変化のバランスによ って適切な麻酔効果が評価される。今回、炭酸ガスおよびイソフルレンによる麻酔導入効果と循 環動態の変化について検討を行った。 【方法と結果】 炭酸ガスチャンバーには、酸素、二酸化炭素、窒素のセンサーをそれぞれ設置して各ガス濃度を モニターできるようにした。繁殖をリタイヤしたビーグル犬雌17 頭、8-12 kg を用いた。実験犬 には、動脈圧測定用のカテーテルを大腿動脈、脳波測定用(BIS)の電極を頭頂部皮下にそれぞれ留 置した。実験犬は、急速炭酸ガス注入(Rapid)群 (n=7)、ステップ炭酸ガス注入(Step)群 (n=6)な らびにイソフルレン-炭酸ガス注入(ISO)群 (n=4)の3群に分けた。Rapid 群は、チャンバー内二酸 化炭素が95%の時に動脈血圧(BP)と心拍数(HR)の急速な低下を認めたが、BIS値は覚醒を示す92±1 0 であった。血液ガス測定では急速な二酸化炭素分圧の上昇と酸素分圧の低下を認めた。Step 群 は、チャンバー内の二酸化炭素の上昇に伴って徐々にBP とHR が低下し、BIS値も二酸化炭素60%で 53±21、80%で41±23、95%で31±19 と低下した。また、血液ガス測定では急速な二酸化炭素分 圧の上昇が認められたものの、酸素分圧は段階的な低下を認めた。ISO 群では、イソフルレン注入 後にBP の低下とHR の上昇を示しBIS 値は54±10 であった。その後炭酸ガスの急速注入でHR とBP とBIS 値29±20 の低下が認められた。また、血液ガス測定では二酸化炭素注入後に急速な二酸化 炭素分圧の上昇が認められ、酸素分圧は段階的な低下を示した。 【考察】 二酸化炭素の急速導入による麻酔の導入は、中枢よりも先に循環動態への影響が大きく、覚醒下で 低酸素に陥ることが明らかとなった。また、段階的な二酸化炭素の導入においては麻酔効果も段階 的に現れたが、炭酸ガスによる刺激のためか忌避行動が観察されたため、安楽な麻酔状態ではない と考えられた。イソフルレン麻酔の併用では、イソフルレン麻酔による非覚醒状態で炭酸ガスを導 入するため、他の注射麻酔による深麻酔と同等な効果が得られると考えられた。 [BIS値]=脳波モニタの値 [イソフルレン]=吸入麻酔薬 [BP]=血圧 [HR]=心拍数 [Rapid郡] = 急速に炭酸ガスを注入 [Step郡] = 段階的に炭酸ガスを注入 [ISO郡] = 吸入麻酔薬も注入
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