- 235 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で mailto:sage [2009/03/06(金) 07:45:42 ID:MoXJ6DPL]
- 【秋生】「…この町と、住人に幸あれ」
そう言い残して、歩き始めた。 冬が来た。 凍てつくような冷たい空気。 カーテンを開いて、窓の外を見る。俺は、はっと息を呑んだ。 一瞬… すべてが白い雪に埋め尽くされているように見えたのだ。 建物さえもなく… どこまでも、どこまでも延びる雪原が見えたのだ。 でも、それは気のせいだった。何年も、この町には雪が積もっていない。 降っても、すぐ解けて水になり、地面を濡らすだけだった。部屋に目を戻すと、汐が寝ているだけ。 他には何もない。汐と、俺の生活があるだけだった。長い長い闘病生活が。 俺は、ずっとそばにいた。 貯金はもう尽きていた。 これからどうするか、当ても何もなかった。 俺と汐はどうなっていくのだろうか。 汐の額に手を載せる。この三日、高熱が続いていた。さらに、朝から熱は上がっていた。 苦しいに違いなかった。 【朋也】(汐…) その手を取る。 汐が薄く目を開いてこっちを見た。 【朋也】「な…汐」 【汐】「………」 【朋也】「もう一度、旅行にいこうか…」 【汐】「………」 【朋也】「今度はさ…仲良くふたりでさ…」 【朋也】「遠い場所までいこう…」 【朋也】「な…」 【汐】「…うん」 頷いてくれた。 よかった。 俺はその小さな体を起こして、着替えさせた。
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