- 58 名前:名無し物書き@推敲中? mailto:sage [2010/05/25(火) 13:32:55 ]
- ――気づくと、私は海の中にいた。目の前にはあの女性がいる。
腰まで届きそうな長い黒髪を漂わせ、美しい裸体を惜し気もなく披露し、 エメラルドグリーンに輝く鱗に縁取られた優雅な鰭。彼女はとても美しく、 満面の笑みを浮かべて私を手招きしている様は、まるで一幅の絵のようだった。 私は彼女触れたさに歩み寄ろうとするが、一向に前へ進めない。 そんな私を冷やかすように、彼女は妖艶な微笑を浮かべながら私の手を取り、海の底へと導いていく。 まるで風が吹いているかのように後ろへと靡く長い髪から 覗く美しい横顔に見取れていると、いつの間にか海底にたどり着いていた。 周りを漆黒の闇が彩る海底で、まるで灯台の常夜灯のように、 仄かに光る彼女の姿は、抗いようのない魅力に溢れていた。 彼女は艶かしい表情を浮かべながら、ゆっくりと私に近寄ってくる。 彼女が欲しくて堪らないのに、私の体は石のように動かず、 亀のようにゆっくりゆっくり近づいて来る彼女を見ているうちに、 燃え上がる情欲は押さえようもないほどに高まり、もどかしさに気が狂いそうだった。 彼女はゆっくりゆっくり近づいて来る。後少し、もう少し。彼女の唇、彼女の胸、彼女の―― ――あーあ、まだ次の獲物は来ないの?私もう死にそう・・・・・・。 ――おやおや、しょうがない子だねえ、もう少し辛抱強さを身につけてほしいよ、まったく。 ――あら、私はお婆ちゃんと違って育ち盛りなのよ、辛抱強くしてたら干からびちゃうわよ。 ――そう思うなら、今度からはゆっくり味わいな馬鹿娘。 ――言われなくてもそうするわよ、このくそば――あ、見て見て、獲物よ、獲物が来たわ! ――おや、ほんとだね。そらそら、準備だよ馬鹿娘。今度はゆっくり味わいな。 ――分かってるわよ、お婆ちゃん♪
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