- 1 名前:ぷぅぎゃああああああ ◆Puug571Ifs [2010/05/02(日) 10:29:01 ]
- 急遽、新装開店!(`・ω・´)
掌編、いつでも募集中! 採点、100点満点! 評価、コメント数行! 結果、コメント一行! 前スレ ワイが文章をちょっと詳しく評価する![2] love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1254570717/ ワイが文章をちょっと詳しく評価する! love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1249125836/ 文章の一部、よい! オチがない、よい! 他人の文章、ダメ! 点数の意味 10点〜、日本語が書ける! 20点〜、日本語の意味がわかる! 30点〜、読み物に近い! 40点〜、形にはなっている! 50点〜、楽しめる域に入る! 60点〜、作品として出せる! 70点〜、欠点がほとんどない! 80点〜、佳作の域に突入! 90点〜、未知の領域! 満点――、神様は評価できない! ここまでの最高得点78点!(`・ω・´)
- 50 名前:名無し物書き@推敲中? mailto:sage [2010/05/23(日) 19:56:04 ]
- 雲一つない青空から、温かい春の日差しが冬の終わりを告げるようにぽかぽかとした、
木の葉の隙間から漏れる黄金の木漏れ日を浴びながら、僕のお気に入りの場所であるモク ジイ(庭にある古い大きな木のことを僕はそう呼んでる)にもたれ、本を読んでいた僕は、 その素晴らしく魅力的な空想の世界にのめり込んでいた。 その世界は夢と希望に溢れ、主人公達は皆美しく、気高く、勇気溢れる心優しき者達で 心躍る冒険や、悪党との危険に満ちた闘い、どきどきするロマンスが繰り広げられ、小さ い頃から体が弱く病気がちな僕を魅了して離さない。 勇敢な凛々しい騎士が激しい闘いの末、悪人に掠われた美しいお姫様を助け、決して実 ることのない愛の炎を燃やしている。しかしお姫様は悪人を愛していて、愛する人の後を 追おうと胸に短剣を突き刺し生き果てる。騎士は絶望に駆られ、姫の傍で自決する。 何度も読み擦り切れたこの本の中でも、一番好きな場面がここだった。悪人も騎士もお 姫様も、皆死を賭して一途な愛を貫き通して死ぬ悲しい物語だけれど、僕はその至高の愛 に憧れずにはいられなかった。 父も義母も異母兄弟の双子達も愛しているけれど、それは家族愛にしか過ぎない。僕は 恋愛がしたい。命を賭けるほどの愛を経験したい。 僕の運命の人はどこにいるの? 美しい人?醜い人? 名前は何て言うの? お姫様の ように、綺麗な黄金の髪? 夜空のような、美しい漆黒の髪? そう、青い空に問いかけていた僕の目の前に、突如現れた双子の兄達――猫みたいな顔 をしていて、義母にとてもよく似ている――が僕の想いを乱し、陽に焼けた健康な腕で無 理矢理立たされた。 「義務の時間だ、弟よ」 「我々の聖戦の目撃者となれるのを喜ぶがいい」 厳粛な顔で両手を胸の前で組んだ兄達は、機械のようにいつも決まった文句を並べたて、 まるでそれがこの世で一番大切なことのように言う。 「そろそろ僕を解放してくれないかな? もう十分償いはしたよ」
- 51 名前:名無し物書き@推敲中? mailto:sage [2010/05/23(日) 19:56:58 ]
- 僕は本を閉じて立ち上がると、兄さん達の幼稚さに呆れながら言い、先月、兄達が大事
にしていた(と言い張るんだけど、埃を被ったそれは、とても大事にしているようにはみえ なかった)掌サイズの馬の置物を了解を得ずに捨ててしまったせいで、くだらない誓いをた てさせられてしまったことを思い出していた。 「我々の勝負がつくまでの約束ではないか弟よ。誓いは守らなければならないのだ」 「おまえはいつも僕らに言っていたな?約束を守らない人間は屑だと。自分の言葉に責任 を持つのだ」 確かに僕は、兄さん達のだらし無さを改めさせようと、ルールを守らない兄さん達に事あ るごとに言うけれど、それとこれとは話が別だ! 「約束はしたよ。でも、もう一月近くやってるじゃないか! 義務は果たしたんだから解 放してくれ」 「何を言う、約束は[神の目となり、我々の戦いを見届ける]ことだぞ。いつまで、とは明 言してはいないじゃないか、そうだよな? 惣治」 「うむ、惣一の言う通りだ。それに、僕たちはおまえの秘密を知っているんだよ、セイント」 そう言いながら兄達のそっくりな顔がニヤニヤ笑う様を見ると、沸々と怒りが込み上げてくる。 「そうかもしれないよ、惣一。僕たちが暴力を振るわないと思って、調子に乗ってるようだか らね。修一、最近のおまえからは僕たちを疎んじる態度が見え隠れしているよ。こんな些細な事 で仲違いをするようなら、おまえの言う助け合う社会なんてそもそもの間違いじゃないのか? さあ、今ならまだ間に合う。謝るんだ」 どうして僕が謝らなきゃいけないんだ? 謝らなければいけないのは兄達なのに! 歳も同じ なのに、ただ数ヶ月先に生まれただけで兄面するずる賢い双子の悪魔にはうんざりだ!消えちまえ! そう思いながらも、兄達の冷ややかな顔を見ると、僕の心の中を臆病風が駆け巡り、口から出た 言葉は、僕の意に反するものだった。 「……ごめん。でも、もういい加減やめてもいいんじゃないかと思っただけだよ。なんだか奴隷 になったみたいで、いやだったんだ」
- 52 名前:名無し物書き@推敲中? mailto:sage [2010/05/23(日) 19:57:39 ]
- 兄達は心外だ、というような顔で僕を見、さきほどとは打って変わった優しい顔をして、あやす
ような声音で言う。 「奴隷だなんて、そんなふうに思ってたのかい? 僕たちはただ、おまえを楽しませようと思っ ただけだよ」 「そうだよ、修一。罰なんて与えたくなかったから、空想好きなおまえにはぴったりの遊びだと 思ってさ」 兄達の意外な言葉に、僕はとても悪いことをしたような、ばつの悪い気持ちになった。 「そうだったの?……ひどいこと言ってごめん。でも、これで最後にしてほしいんだ。僕は他に したいことがあるから」 「かしこまりました、王子の仰せのままに。それでいいよね、惣治」 「あら、もちろんよろしくってよ、惣一」 惣治が裏声でオカマ言葉を言う様が可笑しくて、僕は笑い、つられて兄達も笑い出した。笑うこ とによって僕の心に蟠っていた汚れは綺麗に洗われ、温かい感情が溢れてくるにつれて、さっきま で口喧嘩をしていたことなどなかったように、仲の良い兄弟に戻ったことが、なぜかとても嬉しかった。
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