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118 名前:名無し物書き@推敲中? mailto:sage [2010/06/05(土) 23:47:51 ]
 僕に二人目の母出来たのは、丁度中学に上がったくらいだった。二人目の母親は、京子さん、と言った。長く真っ直ぐな黒髪と、琥珀色の透き通った瞳を持つ人だった。
笑うとえくぼが落ち、綺麗な二重瞼がとても幸せそうに丸みを帯びた。父にはもったいないくらいの美人だった。時折目にかかる前髪を、とても自然な仕草で耳にかけることが出来る人でもあった。
 すらりと伸びる五本の指は、僕がそれまでの人生で見たものの中で最も美しかった。けれどその手から作り出される文字は、一人目の母ほどは美しくなかった。僕は二人目の母親の事を『母さん』とは呼ばず、『京子さん』と呼んだ。
 その容姿とは裏腹に、家事はからきしだった。僕はフライパンの油の敷き方から、洗濯機に入れる洗剤の量まで、家事の一つ一つを京子さんに教えていった。
京子さんは溶け落ちるツララの雫を受け止めるように、僕の言葉を、行動を、しなやかな指へしみこませていった。何か一つの事が出来るようになるたびに、京子さんは心底嬉しそうに、僕に報告した。そして、父が心奪われたその瞳を向けて、
「ありがとう」
 と言ってくれた。
 その度に僕は首を横に振って
「どういたしまして」
 と言うのだ。






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