- 823 名前：見ろ！名無しがゴミのようだ！ [2007/05/27(日) 09:59:43 ID:bz8gpRzM]
- 情感はあるが、“情”がない
全編を支配する、決定的な無神経さに気づかず、
主人公のイキの良さに素直に乗っかることができれば、
かなり満足できる作品なんでしょうね。
青春期の独りよがりを、素直に「自分が大好き」と
いう感情に屈託なく変換できる神経というのか…。
なんでしょう、
人の恋愛感情とか、あまつさえ生き死にまで、
ヒロインの都合ひとつでリセットしまくってるって
物語構造に、やはり抵抗感が拭えません。
そのくせタイムリープ後で、真琴の身替りに
調理実習の失敗をかぶせられたキャラクターは、
なぜか無用に現実的で突き放した扱いでほったらかし。
なんでこの人物にここまで冷酷なのか、意図が分からない。
生き死にさえリセットできる物語構造の中から、
完全に弾き出され、寄る辺の無い立場に置き去りに
されているんですよね。
単にお笑いのひとつとして流す方法もあるはず
なのに、なぜあそこまで執拗に貶める必要が…？
また、なんというか、周辺人物の記号化と、
世界が主人公中心に回っていることとの格差が
薄気味悪い位徹底しています。
それが、なまじ「爽やかで切ないジュヴナイル」の
体裁を取っているだけに、見終わって
一旦は「あー面白かった！」という気持ちの後で、
徐々に違和感ばかりが浮かんでくる。
緻密に描きこまれた夏の空気、夕闇迫る川辺での
語らいなどなど、「絵」としての情感と、
意表をつく物語展開の構造的な組立ては見事です。
その中で、泣き、わめき、笑う真琴の
分かりやすい感情表現で、観客の感情を
操作する手管にも長けている。
でも、あらためて見直すと、このヒロインの行動は
「面白い」けれど、実は共感できる要素、ほとんど
無いんじゃないかなと思うんですよ。
言ってみれば、貞本義行の絵の魅力と、
キビキビ動くアニメーションに上手く
誤魔化されただけのように思える。
全てが真琴のご都合だけで話が進み、
登場人物の感情までが、物語の構造を作る
パーツとしてしか考えられていない。
娯楽映画として、本当に共感を呼ぶべき
“情”が驚くほど欠如しています。
あと、「放課後に男友達と３人でキャッチボール
するのが何より楽しい女子高生」なんて設定、
タイムリープを超える“大嘘”だと思うんですが。
この細田守監督、「ハウルの動く城」の元々の
監督候補だったそうです。いやでもこれは、
降ろされて正解でしょう。申し訳ないが10年早い。
「ハウル」には不満も多かったですが、
これでは宮崎駿の足元にも及ばない。
そんなスレた大人の目で見るんじゃなく、
皆さんの好評からも、「青春を思い出して泣けた！」と
素直に感動できると期待して観たんですが、
こんな自分が少々ショックだったりしてます(^^;)。
宮崎監督以降、「日本映画」としての良さを
継承する映画作家としてアニメーションを
創り得ているのは、今のところ原恵一監督だけだと思います。
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