- 327 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2017/07/09(日) 13:43:13.51 ID:a9i4ymOs0.net]
- >>319
軽く触れた瑞々しい唇が、名残惜しげに離れる。 途端、全身を震えが包んだ。 それは想いを成就させた興奮。愛する人を手中に収めた充足感によるものか。 それとも、全てを塗り潰さんとする恐怖によるものか。 それそのものが眠気を誘うように、心地良いリズムで寝息を立てる天使。 眼前の彼女の口元に実るは、まさしく禁断の果実であった。 彼女のことは大切にしてきたつもりだ。 彼女も、そんな私に心を開いてくれた。 今こうして、同じ布団で眠ることさえ出来ているように。 そして私は、遂にそれを裏切った。 一時の気の迷いでは済まされない、欲望の奔流を叩きつけるかのような行為。 出会い、知り、育んできた理性が、共に育まれた欲望に屈服した何よりの証。 それを、彼女は知る由も無い。 手放した意識の隙間につけ込むという、卑怯極まりない手段に私は逃げたのだから。 もう一度、唇が重ねられる。 欲望に押し切られたとは言え、微かに残る理性は、秘めたる情欲を唇に抑え続ける。 禁断の果実に魅入られた悪魔は、それに抵抗することで手一杯であった。
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