ToHeart2 SS専用スレ ..
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369:名無しさんだよもん
09/02/27 00:10:37 Vk98c/Bu0
周囲の盛り上がりなんぞ気にするよりも目の前のSSに>>367

370:1/1
09/02/27 14:26:04 80u0Xqrp0
「じゃあるーこさんも明日一緒に見ませんか?
私たち、明日もまたここで彗星を探す予定なんです」
「るー」
 るーをするるーこ。雰囲気からして、了承のつもりのるーらしい。
「じゃあまた明日」

 翌日、18時半。
「たかちゃんおそい!ゆきちゃんなんて5時半にはもう居たんだよ!」
「ごめんごめん」
 少し息を切らしながら2人に頭を下げる貴明。顔を上げてみると、るーこがいないことに気がついた。
公園に住んでいるらしいのだが、見当たらないことがたまにある。神出鬼没という言葉が似合う。
でも、不思議な力で現れたり消えたりしてるわけではないのだろう。たぶん公園のどこかにいるはずだ。
「るーこ居ないね」
「ですね。わたしが来てからまだ見かけてません」
「むむ。なんか怪しいんよ」
 そういえばるーこは前、笹森さんに目を付けられていた。
笹森さんまだあきらめていない様子。
「まぁ、何か用事があるんだろう。約束はしてるからゆっくり待ってればいいんじゃないかな。夜は長いんだし。」

「見てください。レグルスが明るいですよ」
 双眼鏡と方位磁針と星座板を器用にもってなにやら空を眺めている草壁さん。
「おぉ。そろそろかな。たしか土星とレグルスの近くにでるはずなんよ」
 全身から期待のオーラを放って、笹森さんも同じ方向に双眼鏡を向ける。
草壁さんは、貴明に寄り添うように近づいてきた。
「あっちですよ。ほら。あそこの明るい星です」
 出来るだけ2人の目の位置を近づけるように密着する。
必然的に体も密着するわけなのだが、彼女は気にしているのか気にしていないのかわからない。
貴明はちょっと体が硬くなったが、なんとなく気づかれるのが嫌で、自然に振舞おうとする。
草壁さんは貴明の肩越しに星を指差すので、やわらかかったり暖かかったりするものが貴明を襲う。
うれしいやら苦しいやら感じていた。ひたすら耐えようと意識することで、いろんな感覚が鈍くなってくる。
さらに拍車をかけるように耳元で彼女はささやく。
「あそこです。あの左下あたりに出てくるはずですよ」

371:名無しさんだよもん
09/02/27 21:58:20 BKzZD6S+0
なんて羨ましい。これはもう星どころではないなw

372:名無しさんだよもん
09/02/27 22:16:12 eDPj3kcb0
続けるならタイトルつけて一気に投下した方がいいかもね

373:名無しさんだよもん
09/02/27 22:42:12 2tpKz/Qe0
いや、これはこれでいいと思うぞ。ぜひマイペースで続けてくれ。

374:名無しさんだよもん
09/02/28 11:39:27 ORpZQEB80
1/1がタイトルでは?
しかし、本当に久しぶりだから、作者さんのペースでやりたいようにやってほしいね。

375:名無しさんだよもん
09/02/28 14:09:44 PNrNda/v0
一番輝いてる星がすぐ隣にいる

376:1/1
09/02/28 14:15:31 mltverf60
 どれほどの時間がたっただろうか。
三人は静かに星を眺めていた。
「るーこ来ないね」
 笹森さんが静けさを破る。
「そうですねー。ちょっと遅いですね」
「探しにいくんよ!グレイから程遠いけど、もしかしたら地球人に偽装してる宇宙人で、
今頃真の姿で徘徊してるかもしれないんよ!」
 『もしかしたら偽装している宇宙人』などど今更いうほどに、
グレイの姿でないるーこが宇宙人でないことをほぼ確信しているのならなぜそんなにアクティブなのか。
と、貴明は思うが、るーこが来ないのも少し心配になってきた。
「じゃあ公園の中を探してみよう。もしかしたら集合場所間違えてるのかもしれないし」
 集合場所は指定していないので、来る気があるのなら昨日会った場所、ここに来ているはずなのだが、
今はとりあえず探しに行きたかった。だから行動に否定的な議論をする気は起きない。
 草壁さんの表情からは特に何も読めない。微笑んでいるだけだ。

 少女は空を見上げていた。
真っ暗な空だ。
否、空をじっと見つめる少女はしっかりと、淡く輝く星々を捕らえていた。
腰まで届くほどの長い髪を持つ彼女。
夜の公園はとても静かで、人が感覚するものは風と街灯の光くらいしかなかったが、
彼女はそれらすらも、すこしばかり鬱陶しく感じた。
天の赤道に目をやった彼女は、そこで眉をひそめる。
 彼女の後ろには、いつの間にか中学生くらいの少女が佇んでいた。
「手紙が届いたのか」
「両親からのメッセージだ」
 るーをしながら振り返るるーこ。
「そりゃよかったな。
今でも、帰りたいと思うか」
 るーこが少しの間沈黙していると、声が聞こえてきた。
「るーこー!見つけたんよー」

377:名無しさんだよもん
09/02/28 23:22:25 hFBblq6q0
乙。にぎやかなお話になりそうですね。
下心のあるときほど、思惑通りにはいかないもの。
でも、せっかくの機会、本命の草壁さんとはもっと親睦を深めたいところw

378:名無しさんだよもん
09/03/02 20:15:50 aJMCNu4z0
そういえばOVAのオマケだと毎回絡んでるけど
草壁さんと花梨が絡むSSってあんまりないよね
この二人が手を組めば(主に草壁さんがなんとかしてくれそうw)、まーもねじ伏せられそうな気がするw
基本的にトラブルメイカーのまーだが、たまにしてやられるのも面白くないかなあ

379:1/1
09/03/02 21:00:08 V0Za81el0
 笹森さんを後ろから追ってきた貴明は、るーこのそばにいた少女をみて
少しぎょっとする。
「約束に遅れてすまない。メッセージの暗号解除に手間取った」
 謝罪のるーだろうか。相変わらず万歳をして、謝る。
暗号解除とは、パソコンか何かの話だろうか。
「めっせーじ?やっぱりあの彗星はカロン星人の交信だったんだね!」
 笹森さんの目が輝きだした。
「やーやーちみたち。その格好は天体観測かえ?」
「えぇ。ルーリン彗星を見に来たんです」
「ほー」
「見るだけじゃなくて、交信するんよ」
 実現の可能性がとてつもなく低そうな目的を話す。
ふむ……と、間を置く。
「口は無く、耳を与えられ
見知らぬ惑星へ送り込まれた少女」
 演劇口調で続けるまーりゃん先輩。
「着いた先では足さえも失った。
その少女の善意の行いは、
上層部にとってはただの規定違反でしかなかった。
足どころか口も無い少女は、
両親がこっそりと送った伝聞に答えることすら出来ない。
あぁ、なんという薄幸少女」

「というわけで、ちみたちも一緒にお手紙を送るかい?」

380:名無しさんだよもん
09/03/03 21:45:32 cuLGg9lm0
送る! でいってみようw

381:黒やぎさんはお返事書いた1/1
09/03/04 20:28:17 TfMH3Ufg0
"生徒会では、人生を楽しくしたい、という人材を募集しています。
そこのちみ。生徒会活動、やらないか。”
 数日前から掲示板に掲げられた、学校の許可印の無い新聞の見出し。
その見出しと共に、この前の天体観測中の写真が下手な合成で背景に星空を添えて、
貼られていた。
「まーりゃん先輩……」
 涙を流す貴明。その目線の先には先ほどの新聞。
「生きて……いたんだね……」
 泣き崩れる貴明。おいおいとなく貴明。そこへ。
「たかりゃん。そんなに心配してくれてたんだね」
 まーりゃん先輩が現れた。シリアス顔である。
「えぇ。とっても。……とっても、この機会を待っていました」
 捕まえました。という声を聞くと、貴明は振り返った。
貴明の顔は泣きはらした顔ではなく、したり顔。
「困るんよ。ミステリ研の活動なのに生徒会の手柄にしてもらっちゃあ」
 草壁さんと笹森さんに捕らえられ、それは喚きだす。
「謀ったな!放せこのーいやーおかされるー。
ふっ、まぁいいさ。煮るなり焼くなり。でも……初めてだからやさしくしてね」

 後の尋問において少女は、「ちょ、ま、おぎゃ、まって、それだけはまって」などと意味不明な供述をしており、
真相の解明が待たれます。

「ふふふ。さて、貴明さん。がんがんいっちゃいましょう」
「あの。くーりゃん。キャラクター変わってないかえ」

382:名無しさんだよもん
09/03/04 21:42:59 EZWlSD8Y0
手紙文より手紙を送るポオズかよ! 謀られたわ!!!

つか、たぶんラストだと思うので……
背中越しのどきどきも、きっつい下げも、充分堪能しました。
激しく乙でした。

383:黒やぎさんはお返事書いた1/1
09/03/05 20:47:51 Z7d7ngSH0
「る!?」
 まーりゃん先輩の「お手紙を送る」という言葉に驚いて、そちらを見るるーこ。
眼差しの先の顔はニヤニヤしていた。
「面白そうですね。るーこさんがいいのなら、ぜひ参加させてください」
 またむちゃくちゃな。と、あきれた口調でいう貴明であるが、内心、彼もまんざらではなく口角が上がる。
また、笹森さんにいたっては、意思表示に言葉すら使わなかった。

「出来るのは一回こっきりだ。」
 るーこを囲うように、珍妙なポーズをとらされている。
「さぁ、いくぞ。上を向いて目を瞑り、送りたいことを念じるのだ」
 戦隊モノの決めポーズを古代文字にしたような格好。これは恥ずかしい。
『ほいや〜』
 まーりゃん先輩は力強く奇声を放った。その瞬間ぱっと辺りが明るくなり、
驚いて瞼を開くとひらひらと紙切れが舞い降りてきた。
『らんこうするときはあちきもよんでくり』
 その一行だけが書かれていた。また遊ばれた。と思い、草壁さんと一緒に苦笑い。
まーりゃん先輩のいた方向に目を向けたが、そこにはもう彼女の姿は無かった。
「あれ……?」
 隠れるところも無いのにまーりゃん先輩が見当たらない。
 はっとする。
「一回こっきり……まさか……
い、いっちゃったのか、まーりゃん先輩……」
 嘘だろ?そんな……先輩……。
でも……最後くらいはちゃんと送ってあげよう。
そんな先輩でも、好きだったよ。天国で見守っていてね……地獄かもしれないけど……。

 なんだかぼーっとしてる笹森さん。草壁さんは相変わらず貴明に微笑みかける。
そして、るーこの表情は、懐かしかった。
おしまい。
暗号解除キー
URLリンク(nullpo.vip2ch.com)
実は前回で終わりではなかった。読みにくかったり、わかりにくかったりしたらごめんね。ありがとう。

384:名無しさんだよもん
09/03/05 20:49:20 Z7d7ngSH0
みすった。
上の投稿の名前欄

白やぎさんもお返事書いた1/1

にするつもりだった。そんじゃ。

385:382
09/03/05 21:32:03 Fufbo1K00
……orz

わかりにくかったわけじゃないんだ。
手紙を送るときにしたことが妄想できたからなんだ。
でも、結果的にネタばらしに……スマンねほんと。
懲りずにまた書いてください。待ってます。

386:名無しさんだよもん
09/03/07 01:06:53 5GieCkyo0
>>383
アクセス数118 View

人多いな
なのにSSは少ない

387:「ありがとう」1/4
09/03/07 02:51:52 FRYOgW1y0
「よいしょ、っと」
あたしは、少し勢いをつけて身を起こした。
ぬくぬくとしたベッドの上、いつもなら昼寝でもしている時間だ。
だけど、今日はそんな気分じゃない。
横になって、目を閉じる。あたしにとっての日常が、今日は退屈に思えてしまうのだ。

大きく開かれたカーテン。病室に差し込んでいる、あたたかそうな春の陽射し。
包帯を取ったばかりのこの目には、まだ外の光はまぶしく感じられるけれども、
頼んでそうしてもらっている。
だって、今日はそんな気分だから。

ふと、窓の外に目を移す。
瞳に映るのは、青空。どこまでも澄み渡った、きれいな青空。
ちょっと不思議な感覚だ。今まで、空を“きれい”だなんて感じたことはなかったから。
やっぱり、手術を決断して良かった。

……違うな。
もちろん、視力が回復したおかげなのは確かだ。
でも、それだけじゃない。
あたしがこんなに素直な気持ちになっているのは多分……いや、きっと―

388:「ありがとう」2/4
09/03/07 02:53:47 FRYOgW1y0
コン、コン

そんなことを考えていた時に、遠慮がちなノックの音が静かな病室に響いた。
時間的にもそうかな? どうやら、その人物がお見舞いに来たっぽい。
「どうぞ」
「……」
しばしの静寂。なかなかドアが開く気配がない。
ふぅ。どうやら来客は想像通りで間違いないようだ。
まったくしょうがないなぁ、手術が成功した事は先生から確認済みだろうに。
「どうぞ」
あたしはドアに向かい、もう一度強めの声で返事をした。
おそらくはドアの外で変に緊張しているであろう、我が姉を促すように。
「……」
ゆっくりとドアが開き、恐る恐るといった感じで姉が病室に入ってきた。
無言でドアの所に立ったまま、怯えるように、ただあたしをジッと見つめている。
「なに突っ立ってるの? こっちに来なよ」
「…………」
あたしの声が聞こえているのか。
姉はただ、あたしをジッと見つめている。
「あぁ、もう! 先生から聞いたんでしょ?
大丈夫だから。お姉ちゃんのその辛気臭い顔だってハッキリ見えてるから。
いつまでもそんな所に立って―」

あたしの言葉を止めたのは、姉の涙だった。
「郁乃ぉ〜……良かった……」
あたしを見つめているその大きな瞳から、涙があふれていく。
止まらない。止まらない。セキを切ったように、次々と、次々と。
まるで、全てを流し出しているかのように。
心配性の姉の、心に溜め込んでいたであろう、たくさんの不安・感情を。
「良かったよぉ……良かったよぉ……グスッ」
「……」

389:「ありがとう」3/4
09/03/07 02:56:47 FRYOgW1y0
姉のその姿に、グッと込み上げてくるものを必死に抑える。
姉が泣くであろうことは想定内だった。
でも、あたしに向けられているこの表情は……。

そこにあったのは、笑顔。
涙でクシャクシャの、ひどい笑顔。
だけどそれは、あたしが今まで見た中で一番の笑顔だった。
誰よりもあたしのことを想ってくれている、世界一のお姉ちゃん。
その喜びが伝わってくる、最高の笑顔だった。

「もう〜、みっともないなぁ。いいかげん泣き止んだら?」
つっけんどんに言い放つ。
これ以上やられると、あたしのほうも耐えられそうもない。
「だ、だって……」
「だってじゃないでしょ?
そんなんじゃ、アイツ、いつまでたっても入ってこれないよ?」
「え? ど、どうして……?」
キョトンとした顔で、とまどう姉。
よしよし、どうやら驚きで涙のほうは止まってくれたみたいだ。
それにしても予想通りか。やっぱりアイツも来ているらしい。まあ最近のことを考えると、
来てないほうがおかしいワケで。現在は廊下で待機中といったところだろうか。
一緒に入ってこなかったのは、最初は姉妹だけで、というアイツなりの気遣いなのだろう。
あたしにとっては、余計なおせっかいでしかないけど。

390:「ありがとう」4/4
09/03/07 03:01:27 FRYOgW1y0
……そう、さっきの桜もどきにしたってそうだ。
初めてあざやかに見えた空に舞った、時期はずれの桜吹雪―

姉だけではあんな無茶なことを思いつかないし、まして実行なんてできないだろう。
きっと、アイツが絡んでいるに違いないのだ。
アイツも、姉に負けず劣らずのお人好しなのだろうか?
まったく……本当に…………なんかムカツク。
「……郁乃?」
「!」
姉の声にハッとする。
っと、いけないいけない。ついあのバカのことを考えてしまっていた。
「と、とにかく! 早くアイツも中に入れなよ。他の人達の迷惑になるでしょ」
「……うふ」
「何? その笑い?」
「ううん。別に?」
……うう、最悪。ニコニコとニヤニヤを足して2で割ったような姉の微笑みが心地悪い。
少しキョドってしまったのが失敗らしい。どうやら、アイツへのあたしの感情に対して
変な誤解を持たれてしまったようだ。
「じゃあ、たかあきくんを呼ぶね」
「あっ、ちょっと」
うれしそうにドアへと振り返った姉を、あわてて呼び止める。
本当は“2人に”と決めていたことだけれども、とりあえず姉だけにしておこう。
アイツには、この先いつか機会を見て……ということで。
「ん? なぁに?」
「お姉ちゃん―」

あたしは、告げた。
伝えなければいけない、この言葉を。

「ありがとう」

素直な、今のこの気持ちを。

391:名無しさんだよもん
09/03/07 03:06:53 FRYOgW1y0
「ありがとう」の作者です。こちらへは初めての投下でした。
SSとしては微妙〜になってしまった感もありますが……。
皆さんの暇つぶしにでもなれば幸いです。

392:名無しさんだよもん
09/03/07 14:49:35 rAViQKjpO


393:名無しさんだよもん
09/03/07 19:45:22 EB+rN7L90
おれ、ADやってないんだ。ごめん。郁乃んって、何の病気だったっけ?
車いす登校=足萎えになるほどの寝たきりだったし、心臓かなと思ってた。
それと、身内の白内障の手術がそうだったけど、眼科の手術は完全失明の
リスク回避のために片目ずつするもんだと思う。
うまいだけに、そんな細部がとても気になりました。生意気でスマン。

394:名無しさんだよもん
09/03/07 21:32:20 4hax7iIU0
糖尿病だった気がする。

395:名無しさんだよもん
09/03/07 22:05:10 RUHZfujj0
一型糖尿病。両目同時に手術するのは原作どおり
そして>>387乙。設定は愛佳ED直後か。4日遅れの誕生日SSみたいでいいね

396:名無しさんだよもん
09/03/10 13:28:48 pBjghjEwO
やっぱ

397:名無しさんだよもん
09/03/14 17:17:26 hpxajnvN0
ちょうど愛佳ルートを初クリアした後で>>387を読めたのでちょうど良かった
遅くなったが、乙

398:名無しさんだよもん
09/03/18 23:33:58 JH72eUiR0
4日遅れですが…
13レスあるんで途中で投下が止まるかもしれませんがそのときはしばらくお待ちください

399:彼女の欲しいものは? 1/13
09/03/18 23:39:00 JH72eUiR0
 正月も過ぎ去り、今はもう2月。
 3学期も始まって、もう残り少ない2年生の日々を楽しみながら過ごしていた。
 もちろん、楽しいと思えるのはタマ姉、このみ、雄二といった大事な仲間達と、そして
俺にとって大切な、恋人の草壁さんと過ごす日々があっての事だ。

 しかし毎年恒例の事だけど、女の子が苦手な俺にはつらい日が今年もやってきた。

 ─所謂、バレンタインデー

 女性が意中の男性に愛を告白する……最近はそればかりでも無いけど……その日なわけだ。

 まあ、俺の場合はせいぜいうちの母さんと春夏さん、それにこのみに貰うぐらいだったけど、
今年は本命をくれる相手……草壁さんがいるわけで……今日は土曜で半ドンという事もあって、
放課後に二人でデートする事になっているからそのときにもらえる……と思う。

「はい、タカ君。」
「おっ、ありがとう。今年はもしかして手作り?」
「そうでありますよ!お母さんに習って昨日作ったのであります!」
 いつもの面子で学校へ向かう通学路で、俺はこのみの差し出したその小さな箱を受け取った。
「はい、ユウ君も。」
「サンキュー、って、今年も貴明より小さいじゃねぇか。」
 渡されたチョコの大きさを見比べて雄二のやつが不平を漏らす。
「む〜、文句言うなら返してよ〜」
「いんや、これはこれで貰っとくぜ。ちびっ子のでもあるの無いとじゃ大違い…って、いて、
 いてててて、わっ、割れる割れる〜」
「あんたはどうして素直に喜べないの。このみに謝りなさい。」
「ごっ、ごめんなさい!許して、許しておねぇさま!」
「相変わらずですねぇ……」
「ははは……」
 タマ姉のアイアンクローを食らって身体をじたばたさせる雄二を見ながら、俺と草壁さんは
引きつった笑いを浮かべた。

400:彼女の欲しいものは? 2/13
09/03/18 23:42:00 JH72eUiR0
「まったく……この子はなんでタカ坊みたいに素直に感謝できないのかしら……
 そういえば、優季はタカ坊にはもうあげたの?」
 地面に打ち捨てられた雄二の屍に一瞥をくれながら、タマ姉が草壁さんに尋ねた。
「いえ、私は学校が終わってから渡そうかと。」
「ふぅん、放課後は二人でデートか。じゃあ遠慮せずに……っと、これは私からね。」
 そう言うと、タマ姉はカバンの中から手のひらに乗るほどの小さな箱を取り出した。
「放課後は優季がタカ坊を独り占めするんでしょうから、今のうちに渡しておくわ。」
「ありがとうタマ姉。大事に食べるよ。」
「もう……タカ坊ったら可愛いんだから。」
 そう言ってタマ姉がぎゅうっと抱きついてくる……ちょ、ちょっと……
「いつもの事ながらタカ坊の抱き心地は最高ね……
 タカ坊も、今からでもタマおねぇちゃんに乗り換えてみない?」
 そう言いながらタマ姉は更に腕に力を込める。
 ほ、骨が……それに背中にアレが当たってる当たってる!
「ちょ、ちょっとタマ姉!」
「あー、タマおねぇちゃんずるい〜、私もタカ君にくっつきたい〜!」
「ちょ、ちょっと、環さん! 貴明さんも!」
 草壁さんが少し怒った表情で詰め寄ろうとしたところで、タマ姉は俺を開放した。
「冗談よ。ちょっとからかってみたくなっただけ。」
「……」
「冗談にしてもいっていい事と悪い事があるよ……」
 俺が抗議すると、タマ姉はちょっとだけがっかりした表情をして、それからすぐに悪戯を
思いついたときのようににやりと笑って答えた。
「そうねぇ……じゃあ、ちょっと早いけどタカ坊は優季に返してあげるわ。」
 そう言ってタマ姉はぽんと軽く……見えたけど実際は結構な力で俺の背中を叩いた。

401:彼女の欲しいものは? 3/13
09/03/18 23:45:00 JH72eUiR0
「うわわわ!」
「きゃ!」
 俺は勢い余って前に立っていた草壁さんに寄りかかってしまい、とっさに受け止めた
草壁さんとお互いに抱き合う体勢になってしまう。
「これから明日までは二人だけの時間にしておいてあげるわ。また月曜日の朝に会いましょ。
 さ、このみ、雄二行くわよ。」
「うん! 優季さん、また月曜日にね!」
「お、おい、ちょっと待てって〜!」
 抱き合ったままの俺たちを置いて、タマ姉たちは先に帰っていった。

「えっと…」
 しばらく抱き合ったまま、どうしたものかと考えあぐねているとすこしして草壁さんの方から
すっと離れた。そして、何事もなかったかのように歩き出す。
 俺は落としていたカバンを拾い上げてそれに追いすがった。
「……えっと、怒ってる。」
「……いいえ。」
「……いや、怒ってるでしょ。」
「……ちょっとだけ、怒ってます。」
 そう言って振り返ると俺を見上げて問い詰めるような口調で言う。
「環さんに抱きつかれたとき、ちょっとにやけてました。」
「いや、そんなことは無い……と思うけど。」
 口元を手で撫でて一応確かめる。鼻の下はいつも通り……だよなぁ。
「本当ですか? 抱きつかれた時、ちょっと気持ちよかったな〜とか思いませんでした?」
「思ってない思ってない。」
 俺が必死で否定すると、草壁さんは少しの間じっと俺の瞳を見つめて、その後でいつもの
優しい笑みを浮かべた。
「じゃあ、ホワイトデーに私のお願いを一つ聞いてくれるなら許してあげます。」
「……無茶な事じゃなければ。」
「うふふ……じゃあ何か素敵なお願いを考えておきますね。」
 そう言いながら飛び切りの笑顔で草壁さんが笑った。
「お手柔らかに……ね。」
 一方、俺は引きつった笑いを浮かべたままで一緒に校門をくぐった。

402:名無しさんだよもん
09/03/18 23:45:26 lTLeKlgU0
支援

403:彼女の欲しいものは? 4/13
09/03/18 23:48:00 JH72eUiR0
                   ◇

「あれ?」
 自分の下足箱を覗き込んで、中の上履きの上に何か乗っかっているのに気が付いた。
 下足と一緒に取り出すと、それはうすっぺらい小箱だった。
「な、何なんだ……」
 俺はその小箱を見て困惑していた。
 箱にはハート型の窓が付いていて、中にはやはりハート型のチョコが入っていたのだが、
その表面にはアイシングを使ってでかでかと、

「義理」

と書いてあったからだ。
 しかもその横に小さくご丁寧に「勘違いするんじゃ無いわよ!」とまで書いてあった。

 一体誰がこんなもの……

 そう思ってチョコを見ていた俺は、ふと背後に気配を感じて振り向いた。
 ……言うまでも無く、そこには草壁さんが立っていた。すごくいい笑顔で。
「いや、あの、これは……」
 にこにこ。
「いや、ほら、これ義理チョコだから。ほら、ここにでっかく「義理」って。」
 ニコニコ。
「だからヤキモチとか焼く必要ないし。」
「貴明さんはモテモテですね〜(棒)」
「……」
 にこにこ。
「お願い、もう一つ追加しても良いですよね。」
「……はい。」
 やっぱり女の子に頭が上がらない運命からは逃れられないんだと実感した瞬間だった。

404:彼女の欲しいものは? 5/13
09/03/18 23:51:01 JH72eUiR0
「たーっかちゃーん!」
 草壁さんと二人で教室へと向かう途中、余り聞きたくない声が聞こえてきた。
「たーっかちゃん! たかちゃんてば!」
 あー、あー、聞こえない聞こえない。
 迂闊に反応したりすればろくな事にならないのは解りきってる。
「もう! たかちゃんてばっ!」

 ばふっ、ぎゅうううぅぅぅ……

「ぐ、ぐえぇぇ、し、締まってる締まってるって!」
「もう、たかちゃんが無視するからなんよ。」
 首に絡みついた腕が解けるのを確認して渋々振り返ると、予想通りミステリ研会長こと
笹森さんが満面の笑顔で立っていた。
「で、今日は何? 今日は部活には行けないけど。」
「今日は、って、最近全然来てくれないじゃない。たかちゃんてばつれないんよ。」
「元々無理矢理だったじゃないかぶつぶつ……」
「で、今日はそんなたかちゃんにサービスなんよ。はいこれ。」
 そう言って笹森さんが綺麗にラッピングされた小さな箱を差し出した。
「これってやっぱり……」
「花梨ちゃん特製、手作りチョコなんよ♪ これで気分を良くしたたかちゃんは部活にも
 出てくれるようになる、と。」
「勝手に妄想しないでよ……」
「ま、いざとなったら、この写真を『うっかり』落としちゃったりするかも……」
 そう言ってスカートのポケットから取り出したのは……まさか!


405:彼女の欲しいものは? 6/13
09/03/18 23:56:01 JH72eUiR0
「ちょ、ちょっと、その写真は!」
 俺が手を伸ばすと笹森さんは反対の手に写真を逃がしてた。
「くそっ。」
「へっへーん……あら?」
 俺の手がむなしく空を切る一方で、写真に別の第三者の手が伸びた。
 ……言うまでも無く、草壁さんだ。
 草壁さんは写真をあっさり奪い取るとそれを見て固まった。
「あー、えっと……もしかして修羅場とか……よ、用事を思い出したから教室に戻るんよ。
 それじゃ〜ね〜」
「あっ、ちょ、ちょっと……」
 笹森さんは草壁さんから放出される不穏なオーラを感じ取ったのか、止める間もなく
逃げ出した。
 そして、その場には俺と草壁さんの二人だけ……き、気まずい……
「えっと……それは、不可抗力というか、物の弾みというか……」
 重い空気にたまりかねていい訳などしてみたものの、この空気が和らぐわけも無く。
「……貴明さん。手を出してください。」
 写真から目を上げた草壁さんが俺の目をじっと見たまま言った。
 不安を感じながらも、俺は右手をおずおずと差し出す。
「こ、これでいい……かな?」
 草壁さんは俺の差し出した右手をむんずと掴むと、そのまま自分の胸に押し付けた。

 ふにょん。

 うわ、すご……柔らかくて……でも結構な弾力もあってすごくあったかいし。
「これでおあいこですね。」
「へっ? あ、ああ。そう……なのかな?」
 草壁さんの胸の感触にうっとりしていた俺ののぼせた頭でもなんかおかしな理屈だとは
思ったけど……まあ、草壁さんがそう思っているならそれで良いか。
「あ、それから……」
「何?」
 草壁さんはにっこり笑って言った。

406:彼女の欲しいものは? 7/13
09/03/18 23:59:00 JH72eUiR0
「えっと……お願い、また追加して良いですよね。」
「……好きにしてください。」
 笹森さんとのことを誤解されるよりはマシ、と思う事にした。

                   ◇

「河野くん。」
 2時間目の後の休み時間に、俺の名前を呼ぶのんびりした声が聞こえてきた。
 顔を上げるとそこには予想通り小牧さんが立っていた。
「ん?何か用事?」
「え、えっとね……その……」
 小牧さんはもじもじと何か言いづらそうにしていた。まあ、いつもの事なので辛抱強く待つ。
「えっと……あの! こ、これ!」
 そう言って小牧さんが俺の前にずいと差し出したのは綺麗にラッピングされた小箱なわけで。
「これ……やっぱり……」
「チョコだな。」
 後ろの席で見ていたらしい雄二が俺の台詞を先回りして答えた。
「優季ちゃんと言うものがありながら、罪作りな男だな……というか、死ね! お前は死ね!
 世のもてない男達のためにぽっくり死んでしまえ!」
 そう言いながら俺を蹴ろうと足を繰り出してくる。

407:彼女の欲しいものは? 8/13
09/03/19 00:03:00 qLAXuOb/0
「ややや、そ、そう言うんじゃないんですよ! 本命とかじゃなくって、書庫の事とか
 お世話になってるお礼というか、そ、そんな感じですからっ!」
「じゃ、それ義理チョコだってんなら俺にも一つくれよ。」
 雄二がそう言うと、小牧さんは横に置いてあった紙袋(多分クラス中の男子に配る分)
から、一つ包みを取り出した。
「えっと……じゃあ、これ。」
「おっ、さんきゅ〜……って、あれ?」
 雄二が貰ったのは、透明なセロファンの袋とリボンで可愛らしくラッピングされた
「チ○ルチョコ」各種詰め合わせ(60円相当)だった。
「同じ義理なのにこの差は……気合違いすぎじゃねぇの?」
「そ、そんなことありませんよ?」
 小牧さんが視線を泳がせながらうそぶくと、雄二のやつはなぜか俺の方を一度ぎろりと
睨んで……そしてぶわっと目の幅涙を流して教室から飛び出した。
「ちくしょぉぉぉ……一人寂しく屋上で食ってやるぅ……」
 遠くから雄二の魂の叫びが聞こえてきた……何なんだあいつ。
「そうですねぇ……義理にしては手作りはちょっと気合入りすぎかもしれませんね。」
 背後から聞こえてきたその台詞に俺の背筋がぴんと伸びた。
 こ、この声は……
「あ、こ、河野君、そ、それじゃ、あたし他の男子にも配らなくちゃだから!」
 そう言って小牧さんは俺を見捨てて逃げるように去っていった。

 孤立無援。
 そんな言葉が俺の頭を過ぎった。
「えっと……本人も言っていたように、義理だからね。」
「ええ、わかってますよ。」
 そう言って、草壁さんは俺の前にするりと回りこむ。
 顔は笑ってるんだ……笑ってるんだけどさ……

408:彼女の欲しいものは? 9/13
09/03/19 00:06:00 qLAXuOb/0
「にこにこ」
「……」
「にこにこにこ」
「……」
「にこにこにこにこ」
「……」
「にこにこにこに「お願い1回追加でいいです」
「ありがとうございます貴明さん。」
 タマ姉といい、俺ってやっぱり女の子の尻にしかれる運命なのかな……

                   ◇

 ……とまぁ、バレンタインデーはそんな感じだった。
 勿論その日は午後からデートして、草壁さんからはチョコも貰った。
 その後もいつも通りで、喧嘩したりという事もなかったし。
 それだけに、何をおねだりされるのかすごく不安だ……まあ、相手が草壁さんなので、
俺を困らせるような事で無いとはおもうんだけど。

 というわけで、今日は3月14日、ホワイトデーだったりする。
 そして4つのお願いのうちの1つは1週間前にすでに言い渡されていた。
 草壁さん曰く─チョコをくれた人全員にお返しをすること。しかも俺の手作りで。

 俺はあわてて春夏さんに頼み込んでチョコの作り方を教えてもらった。
 そしてその場で春夏さんとこのみにお返しを送り、勿論タマ姉と笹森さん、小牧さんにもお返しした。

 それから差出人不明の義理チョコは、草壁さんが「きっと由真さんですよ」と言うので、
お返しを持って行って見たら……結果は大当たりだった。何でわかったんだろう?

 そして……午前の授業を終えて学校を出たところで俺たちは一旦別れ、今は待ち合わせ場所の公園で、
残った一つの本命チョコを手にベンチで草壁さんを待っていた。

409:彼女の欲しいものは? 10/13
09/03/19 00:09:00 qLAXuOb/0
「お待たせしました。」
 聞きなれた声に顔を上げると、そこには初めて出会ったときと同じハイウエストのスカートに
白いブラウス、上にカーディガンを羽織って大きなバックを持った草壁さんが立っていた。

「待ちましたか?」
「いや、あんまり。あっと、とりあえずこれ。」
 そう言いながら、俺は持っていたチョコを草壁さんに差し出した。
「初めてだから、あんまり上手く出来なかったかも……」
「いいえ、貴明さんが作ってくれたものなら、私は嬉しいですよ。開けてみてもいいですか?」
 そう言いながらチョコを受け取った草壁さんは俺の横に腰を下ろした。
 俺が一つ頷くと、草壁さんは包みを開けてチョコを一つ取り出した。
 それを口に入れると、草壁さんの顔が幸せそうに綻んだ。
「とっても美味しいです。」
「良かった。それで……残りのお願いってなんなのかな?」
 チョコが気に入ってもらえたので、気になっていた件を切り出した。
「それなんですけど……」
 そう言いながら、草壁さんは人差し指を立てた。
「さて突然ですがここで問題です。私と貴明さんが再会した日は何時でしょう?」
「えっ? ええっと……」

 ……俺が車に轢かれかけて入院したのが4月の最後の辺りだったからそれより前のはずだけど
 ……何日だったっけ?

「……ぶーっ、時間切れです。」
「あっ、ちょ、ちょっと待って、今思い出すから。」
「酷いよ……二人にとって記念すべき再開の日なのに。」
 そう言って草壁さんはちょっと膨れて見せた後で、答えを教えてくれた。

410:彼女の欲しいものは? 11/13
09/03/19 00:12:00 qLAXuOb/0
「学校の裏で再開したのは4月14日、ちょうど来月の今日ですよ。」
「ああ、そうだったのか。」
 ……今度は忘れないようにしとか無いと。ホワイトデーの1月後だな。よし、覚えた。
「私と貴明さんが再会して、もうすぐ一年なんですよ。」
「もうそんなになるのか……」
 不思議な再会ではあったけど、それからは平凡だけど幸せな日々を送ってきた。
 そのせいか、時が過ぎるのがずいぶん早かったような気がする。
 だけどそんな俺の気持ちとは裏腹に、草壁さんは不満そうに少し拗ねたような口調で言った。
「そうですよ。一年も経つのに貴明さんは私の事、一度も名前で呼んでくれた事ありません。」
「うっ。な、なんというか……照れくさくってさ。」
「と言うわけで、2つ目のお願いです。私の事、名前で呼んでくれませんか?」
 草壁さんはそう言うと、期待の眼差しで俺を見た。
「う……」
「じ〜」
「…………ゆ、」
「ゆ?」
「ゆうき……」
 俺が搾り出すようにそう言うと草壁さんの顔がぱぁぁっ、と輝いた。
 ……もうやけくそだ!
「ゆ、優季。」
「はいっ! 貴明さんっ!」
 ……ああ、もう。そんなこぼれるような笑顔されたら、もう二度と苗字でなんか呼べない
じゃないか。
「俺、今すっごい照れくさいんだけど……」
「大丈夫ですよ。そのうち慣れます。」
「そうかなぁ……」
 まず雄二がこのことを知ったら滅茶苦茶からかうだろうな……

411:彼女の欲しいものは? 12/13
09/03/19 00:15:00 qLAXuOb/0
「じゃあ、後2つの願い事は何?」
「えっと……1つは、貴明さんの御家の鍵が欲しいです。」
「鍵? それはやっぱり恋人だから?」
「それもありますけど……鍵って、家族の証じゃないですか。」
 草壁さんはそう言ってじっと俺の瞳を見つめる。
「貴明さんが苗字をくれるって言った事は勿論女の子としても嬉しかったんですけど……
 なにより、苗字をくれるって言うのは家族になってくれるって言う事だと思ったんです。
 あの時の私は、家族の絆と言うものについて、とても不安になっていたんです。」
「そっか……」
「だから、私は貴明さんともう一度巡り合いたいと願うのと同時に、もしめぐり合えたなら、
 ずっと一緒に居られるように……苗字を貰うのに相応しい、家族としても認めてもらえるように
 なりたいと思ってたんです。」
「うん……わかった。」
 俺は立ち上がって、草壁さんに手を差し出す。
「草壁さんの鍵を作りにいこう。」
 すると草壁さんはちょっとだけ怒った顔でその手を取って立ち上がった。
「貴明さん、さっきの約束忘れてますよ。」
「え? あ、あっ! ああ、優季、だったね。」
「はい。」
 ……だから、その笑顔は反則だって。

                   ◇

 俺と草か……じゃなかった、優季は二人で公園の出口へと歩き出した。
 歩き出すと優季は自然に俺の左腕に右腕を絡めて寄り添ってきた。
「そういえば、そのバックは何が入ってるの?」
 絡めた腕とは反対側。
 先ほど現れたときから持っていた大きなバッグが気になって聞いてみた。
 いつもならもっと小さいショルダーバッグとかを持っているはずだけど。
「あっ、えっと、これはですね……」
 ……なぜか優季が耳まで真っ赤になった。

412:彼女の欲しいものは? 13/13
09/03/19 00:19:05 qLAXuOb/0
「その……最後のお願い聞いてもらえますか?」
「もちろん、俺にできる事なら。」
 俺が安請け合いすると、優季はなぜか真っ赤なままうつむいてしまった。
「……どうかしたの?」
「……あっ、あのっ!」
 俺が心配して顔を覗き込もうとしたら、意を決したように優季が顔を上げた。
「その……今日は貴明さんを独り占めしたいなって、思って……」
「ああ、今日は一緒に過ごそうって事?」
「いえ、そうじゃなくて……今日、っていうか……明日まで、ずっと一緒に居たいなって
 ……ダメですか?」
 そう言って俺を見上げる優季の恥ずかしそうな顔が反則的に可愛くって……
 と言う事は、その大荷物って……お泊りセット?
 俺だって男だし……可愛い恋人にそんなことをおねだりされたら断れるはずも無く、
「い、いいんじゃ、ないかな。」
 思わずそう答えてしまった。
「じゃ、じゃあ、お夕飯は腕によりをかけちゃいますね。金物屋さんの後はお買い物して
 帰りましょう。」
 優季も照れ隠しにそう言って、絡ませたままの腕で俺をぐいと引っ張って走り出す。
「あ、危ないって。」
「大丈夫ですよ!」
 俺の手を引く優季の顔はまだ真っ赤なままだったけど、その顔はいつも以上に幸せそうな
笑顔で……気が付けば俺も一緒に笑顔になっていた。
「だって……貴明さんと一緒なんですから!」

                  ◇

 再会してもうすぐ一年。
 この先、俺たちはどんな風に過ごしていくのか……それは解らないけど、でもこの手だけは
決して、二度と離さないでいようと思う。

 笑顔がまぶしくて、そして少しやきもち焼きなこの子の手を。


413:名無しさんだよもん
09/03/19 00:22:56 qLAXuOb/0
話の最初がバレンタインデーで何で4日遅れやねん、と思った方もいるかと思いますが、実はホワイトデーのタカ坊の回想だった
……といいつつ、実はバレンタインに間に合わなかった分を再利用してるだけなんですが orz
なんかまとまりがいまいち


他にも書きたいストックネタがあるので、書けたらまた落とします

414:名無しさんだよもん
09/03/19 00:23:30 L6bnPA6D0
終わりかな? バレンタインでのやきもち、ある意味定番なネタだけどそんなこと
関係なく楽しく読ませてもらったよ。GJです

415:名無しさんだよもん
09/03/19 03:59:23 ++/EiZW30
乙です。
草壁さん最高、素晴らしいです。
読みやすいしテンポいいし面白かったです、ぜひ他のも書いてください。

416:名無しさんだよもん
09/03/19 21:55:55 gti+pms1O
投稿乙です。面白がったですのよ。

本編では、隠しキャラという事もあり、あまり語られないタマ姉をも凌駕すると言われる、
その隠されたポテンシャル(きょぬー的な意味も含む)は、反則なのですのよ。
次回作も期待していますのよ。

417:名無しさんだよもん
09/03/20 00:39:02 w1GWaMED0
タマ姉のアレは爆乳だと思うのですよ
タカ棒を挟んだまま先端をなめられそうなふいんき(なぜか変換できない)だし
草壁さんも勿論たゆんたゆんなんですが…
タカ坊うらやましす

418:名無しさんだよもん
09/03/20 12:33:27 ItnOjK4q0
確かに改めてサイズを見るまでは巨乳ってイメージは全然なかったな
ToHeart2のキャラだと何番目くらいなんだろう

419:名無しさんだよもん
09/03/20 12:36:03 ZV/Q+Kka0
乙乙。草壁さんに受け止められるってのはいいシチュだぜい
タマ姉はボリュームがあるけど、草壁さんはロケット型なイメージ<乳

420:名無しさんだよもん
09/03/20 19:10:27 NcYPY7+hO
マジ乙。
こういう草壁さんもいいよなぁ…。

421:名無しさんだよもん
09/03/20 23:46:14 oTEAvscy0
>>418
胸のサイズ順に並べてみた。

環(89)>はるみ(88)>ささら(87)>よっち(86)>由真(85)>イルファ(85)>優季(84)>花梨(84)>
愛佳(83)>シルファ(82)>瑠璃(80)>るーこ(79)>ちゃる(77)>郁乃(77)>珊瑚(76)>このみ(74)

順位的には7位と決して上位とは言いがたいけど
ウエストのサイズが54cmと全キャラ中最も細いので(このみより細いです)
相対的に胸が大きく見えるんじゃないですかね。

422:名無しさんだよもん
09/03/21 01:51:07 MrTe+o6Y0
春夏さんのスリーサイズが気になるところ・・・

まあ、サイズではなくカップだよね。

423:名無しさんだよもん
09/03/21 01:55:26 2eLupjAA0
じゃあ身長と3サイズでも置いとこうかな

柚原このみ  150cm 74/55/77
向坂環    165cm 89/58/82
笹森花梨   156cm 84/56/82
十波由真   158cm 85/57/81
草壁優季   157cm 84/54/80
姫百合珊瑚  152cm 76/56/78
姫百合瑠璃  152cm 80/56/79
るーこ    162cm 79/57/78
小牧愛佳   154cm 83/58/84
小牧郁乃   151cm 77/54/78
河野はるみ  153cm 88/56/82
久寿川ささら 163cm 87/57/83
吉岡チエ   156cm 86/58/85
山田ミチル  158cm 77/56/78
イルファ   153cm 85/56/82
シルファ   153cm 82/56/82
まーりゃんと奈々子と春夏さんは不明。

草壁さんって157cmしかなかったんだな。なぜか長身のイメージがあったよ

424:名無しさんだよもん
09/03/21 02:17:35 3tjot2bs0
立ち絵が細長いからじゃないかな
悪く言うとノッポのようなイメージがつくんじゃないか

425:名無しさんだよもん
09/03/21 03:08:53 4K24JkGbO
ていうかるーこって割とでかいな

426:名無しさんだよもん
09/03/21 03:27:25 cOMDi3Yz0
バストTOP3のうち、タマ姉とささらは身長もあるしまだわかる
はるみというかミルファの身長に対するバストは正にチートだな

427:名無しさんだよもん
09/03/21 04:58:46 3tjot2bs0
実際チートじゃん
ぶっちゃけ作り物だし

428:名無しさんだよもん
09/03/21 08:39:24 GZORbAYX0
>>427
男の願望が入りすぎです
嬉しいけどさ

429:名無しさんだよもん
09/03/21 12:14:57 ed3FXLhI0
本当に男(ってか貴明)の願望を意識してでかくしてもらった訳だしな

430:名無しさんだよもん
09/03/21 14:52:21 17RNR5k10
カップ数計算スクリプトなるものを見つけたので>>423の数字をぶっこんでみた
数値は身長、3サイズ、アンダーバスト、カップの順
同じカップ数の場合はアンダーの細いほうを後ろにしている

河野はるみ  153cm 88/56/82 64.18826 Gカップ(爆乳)
向坂環    165cm 89/58/82 67.49506 Fカップ(巨乳)
久寿川ささら 163cm 87/57/83 66.45726 Eカップ(巨乳)
吉岡チエ   156cm 86/58/85 66.10996 Eカップ(巨乳)
十波由真   158cm 85/57/81 65.68776 Eカップ(巨乳)
笹森花梨   156cm 84/56/82 64.64996 Eカップ(巨乳)
イルファ   153cm 85/56/82 64.18826 Eカップ(巨乳)
草壁優季   157cm 84/54/80 63.34386 Eカップ(巨乳)
小牧愛佳   154cm 83/58/84 65.80216 Dカップ(適乳)
シルファ   153cm 82/56/82 64.18826 Dカップ(適乳)
姫百合瑠璃  152cm 80/56/79 64.03436 Cカップ(普乳)
小牧郁乃   151cm 77/54/78 62.42046 Cカップ(普乳)
るーこ    162cm 79/57/78 66.30336 Bカップ(普乳)
山田ミチル  158cm 77/56/78 64.95776 Bカップ(普乳)
姫百合珊瑚  152cm 76/56/78 64.03436 Bカップ(普乳)
柚原このみ  150cm 74/55/77 62.99656 Aカップ(微乳)

こうしてみるとはるみはともかく皆乳でかいなw
人間トップは勿論タマ姉だけど、草壁さんは並居るEカップ軍団の中でもっとも細い

431:名無しさんだよもん
09/03/21 16:17:09 ed3FXLhI0
>>430
ちょうどカップ数知りたかったんだ、乙
ってかOVAファミレスチーム何気におっぱい偏差値大きいな
一番小さい愛佳でDか・・・

432:名無しさんだよもん
09/03/21 17:18:27 2eLupjAA0
>>430
423だけど乙。実は探したけど計算式が見当たらなかったんだ
半分が巨乳以上ってなんかすごいな。他のゲームではどうなんだろう?

433:名無しさんだよもん
09/03/21 21:48:34 8r/rUlsJO
どうかな

434:名無しさんだよもん
09/03/21 22:17:32 3tjot2bs0
よっちめ…ゲームではDと言っていたくせに実際はEだったのか

435:名無しさんだよもん
09/03/21 23:20:29 cOMDi3Yz0
病気だったいくのんよりも哀しい体型のこのみに泣ける

436:名無しさんだよもん
09/03/22 00:00:36 7sCVbMDW0
>>432
計算にはここのを使わしてもらったので、良ければドゾー

URLリンク(www.d9.dion.ne.jp)

峰 不二子のKカップ(魔乳)にワラタ

437:名無しさんだよもん
09/03/22 00:03:39 /ON1VTQf0
以外にもこのみって身長150cmあるんだな。
ミニモニって150cm未満だっけ?

このみは146cmぐらいだと思っていたよ。
でも、春夏さんの娘だから高校生になってから成長して、
ナイスおっぱいになるかも・・・?

438:名無しさんだよもん
09/03/22 00:29:41 i2uC1EBj0
このみの乳は父さんに似たんだよ……

439:名無しさんだよもん
09/03/22 20:10:20 fLXzdY3WO
このみのオッパイは、タカ君に大きくしてもらうんだよ

440:にゅー・じぇねれいしょん 病院編2 0/16
09/03/22 22:35:01 7PP8/KUi0
とっても間が空きましたが>>123の続きです。

貴明が女の子をかばって交通事故にあって入院中
ある夜、添い寝したこのみにキスされた、というところまでが前回

さるさん喰ったら途中で止まるかも。でわ

441:にゅー・じぇねれいしょん 病院編2 1/16
09/03/22 22:36:15 7PP8/KUi0

 結局、俺の三学期はベッドの上で終わった。

「……終わっちゃったんだな」
「……終わっちゃいましたねえ」
 俺の呟きに同情した口調で同調してくれたのは、見舞いに来てくれた同級生の小牧愛佳。

「でも、不幸中の幸いですよね。奇跡的に内臓に損傷がなくて、複雑骨折もなかったなんて」
「うん。でも、やけに説明的だねその台詞」
 まるで誰かに教えられたような。
「や、やだなぁ、そんなことありませんよ? まだ、全然動けないんですか? 長引きそう?」
「もうすぐリハビリを始めるんだ。けど、医者の話ではゴールデンウィークあたりを目途にって話だし、先は長いなあ」
「新学期には顔を見られないんですね」
 痛々しそうに、包帯だらけの俺に視線を向ける。

 あ、誤解のないように付言しておくと、彼女は俺と個人的に親しいってわけじゃなくて、
「これ、溜まってたプリントです。けど、お家に届けた方が良かったかな?」
「いや、家にも誰もいないから。そこに置いといてくれれば」
「あ、うん、はい」
 クラス代表で、何度か伝達事項その他もろもろのフォローに来てくれていた。

「いつも悪いね。雄二を使ってくれていいのに」
 とは言いつつ、信頼度では悪友と比べ物にならない我らがクラスの委員長、
「まぁ、ついでですから」
「病院に? いいんちょ……小牧さんって、持病でもあるの?」
「い、いえ。あたしじゃなくて、って、あたしは委員長じゃないぃ〜」
「気づかれたか」
 もとい、副委員長が来てくれるのは有り難い。

 ちなみに小牧さんは非常に面倒見が良い性格と行動ゆえ、ついたあだ名が“委員長”。
 おまけに、実は最近うちのクラス委員長が俺と同じく交通事故で入院していたので、
 その間は副委員長である“委員長”が事実上の委員長として……ああややこしい。

442:名無しさんだよもん
09/03/22 22:36:56 /ON1VTQf0
いくのんがでるなら、愛佳もでてくるとうれしいのですがね・・・

443:にゅー・じぇねれいしょん 病院編2 2/16
09/03/22 22:38:41 7PP8/KUi0

「えとえと、それで、あたしじゃなくてですね、その、ちょっと」
 委員ちょ……いや小牧さんは、そこで若干言い淀む。
「親戚、の、子が、入院してるから」
「そうなんだ」
 沈んでいくような口調。もしかして、重病なのかな。

「みんな元気? 変わりない? それこそ入院明けの委員長とかさ」
 なんにせよ、あまり深く立ち入るものではないだろう。俺は話題を変えた。
「元気ですよぉ。交代で交通事故に遭ってるから次は誰だろうって話で盛り上がってます。あっ、そうだ!」
 がさごそごそ。
 しゃがみこんで何やら荷物を弄りだす。
「クラスのみんながですねえ。河野くんの為にって」
 小牧さんがカバン―そういや妙にふくらんでいた―から取り出したのは、大きなタオル? 手ぬぐい?
「終業式の後に、みんなで書いたんですよ」
 ばばっと広げると、そこには小さい文字がわきゃわきゃと。
「これは、寄せ書き?」
 顔を近づける。
<早く良くなれよ><ひと足お先に><新学年で待ってるぜ!>
 並んだ言葉は、ありきたりなものばかりだったけど、今の俺には心に沁みた。
「……ありがと」
「えへへ、この辺に掛けて置いていいですか?」
 小牧さんは、ベッド横にあるキャビネットのタオル掛けに寄せ書きタオルをぶらさげる。

 あれ? 離れて見ると、寄せ書き全体が何かの文字になってる?
「あっ、これは委員長のアイディアでですね、クラス全体でメッセージをばとレイアウトを工夫しまして」
「見にくいな。何って書いてあるんだろ、カタカナ?」

<イ`>

「……やっぱりそのまま持って帰って」
「荷物だよぉ(泣)」

444:にゅー・じぇねれいしょん 病院編2 3/16
09/03/22 22:41:32 7PP8/KUi0
 ◇ ◇ ◇

 それで、寄せ書きはまあ、丁重に畳んで収納される事になったのだけど、
 困った差し入れというのは、実は他にもあって。

「……雄二のやつめ」
 俺はベッドの上で唸る。
 つい先程お昼過ぎ、雄二がやってきてひとしきり無駄話をしていった。
「いやー、姉貴がこの春からこっちに戻ってくる予定だったんだが、取り消しになってさ」
「それで機嫌がいいのか」
 雄二は姉に頭があがらない―子供の頃は俺も同じだったけど―ので、同居を回避できて嬉しいらしい。
「ったく、友人がベッドの上で苦労してるってのに」
「お、そうそう、それそれ」
「何だよ」
「くくく、喜べ貴明、病床に伏せるお前の欲求不満を解消する為に、親友がいいものを持ってきたぞ」

 でまあ、雄二が持ってきたってのはその、定番というか、簡単に言えばエロ本だったんだが。

「……どうするよ、これ」
 まだ自力ではベッドからの移動もままならない状態で、こんなもん貰っても困る。
 おまけに春夏さんとこのみは変わらず毎日来てくれて、
 特にこのみなんかほぼ四六時中貼り付いてるってのに、見つかったらどうなることやら。
「と、とりあえず隠そう」
 雄二が帰った後、ちょっとだけ中身をめくって―義理だよ義理!―から、
 ひとしきり悩んでともかく手が届く枕元の収納に、

 がちゃり。
「うわっ!?」
 仕舞うか仕舞わないかのうちに、病室のドアが開いて。
「ちわーっス。先輩、起きてますかー?」
「失礼します」
 春夏さんでもこのみでもない、でも聞き覚えはある声がした。

445:にゅー・じぇねれいしょん 病院編2 4/16
09/03/22 22:43:05 7PP8/KUi0

「き、君たちは……」
 入ってきたのは、眼鏡をかけた細身の女の子と、その、胸のおっきい、こほん、女の子。
 このみの友達だ。えーっと、名前なんだっけ?

「山田ミチル。こっちの胸がデカいのが吉岡チエ」
 眼鏡の子がボソっと答える。
「あ、そうそう、“ちゃる”と“よっち”だね。って、心読んだ!?」
「名前なんだっけ? って顔してた」
 平然と、えーっと、山田さん。
「先輩、まだ名前覚えてくれてなかったんスか。酷いなあ」
 腰に手を当てて唇を尖らす、うーっと、吉岡さん。
「せーっかく、可愛い後輩がお見舞いに来てあげたのに」
 ぷいと横を向く。
 その動きにぷるんと胸が揺れて、
「ご、ごめん」
 つい目を逸らしながら謝る俺。心臓に悪いなあ、もう。

「ま、本当の所はこのみと遊びに行く待ち合わせなんっスけどね」
 ニカっと笑う吉岡さん。
「あ、うん、さっき買い物に行ったから、そろそろ戻ってくると思うよ」
 俺はそう答えて椅子を勧める。
「じゃ、遠慮なく」
「どうぞ、座って……って、何をしてるの?」
 椅子に座らず、ベッドの脇にしゃがみこんだ山田さんに尋ねたら、
「家捜し」
 え?
「おおうっ、そういえば先輩はただいま入院中」
 ぽんと手を叩く吉岡さん。なに?
「部屋に戻れない禁欲性活、看護婦さんのお尻を眺めつつ、枕元には処理ネタが!」
「そ、そんなことっないって!」
 ……ないって、なかったんだよ、ホントになかったんだ、ついさっきまでは。

446:にゅー・じぇねれいしょん 病院編2 5/16
09/03/22 22:48:55 7PP8/KUi0
「ふむ、なし、つぎ」
 てきぱき。てきぱき。
 やたら事務的な手つきでキャビネットや冷蔵庫を検分する山田さん。
「出ってくるかな出ってくるっかな、はてさてふふーっ♪」
 調子っぱずれな歌を口ずさみながら、俺のベッドの回りを眺める吉岡さん。

「いや、君たち、先輩の病室で私物を捜索するのはどうかと思うんだけど、俺は」
「まあまあ、お約束っスよこういうのは」
 そんなお約束はいらない、って、あっ、そこは。
「この辺かなー? うーん、無いか」
 ほっ。
 俺の左手側を担当する吉岡さんの探し方は、ちょっと的が外れていた。
「よっち」
「あによ」
「その辺、怪しい」
 うっ、こういうのは山田さんの方が鋭い?
「此処はあたしが探したってば」
「でも」
 トコトコと吉岡さん側にやってくる山田さん。
「こっちの下の方とか……」
 俺の枕付近に屈み込もうとする。が、
「今そこ見ようと思ってたのっ!」
 どん、と吉岡さんが山田さんを押しのけた。
「っと?」
 よろめく山田さん。
「あっ、大丈ぶ痛っ!?」
 支えようとしてロクに身体も動かず、俺は半端に上体を起こす。
「おっ、とっ、とっ?」
 そのせいで、ベッドに手をつこうとしていた山田さんの動きが躊躇、うわわっ、こっちに倒れて!?
 ごちん。むにゅ。

 俺の目の前に山田さんの顔が飛び込んできて、硬い感触と柔らかい感触が同時にあった。


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