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73:『雄二の光源氏大作戦』後編(1/17)
08/10/24 19:53:13 Yv58y36Y0
 その日の放課後、俺は張替え予定の掲示物を携えて校内を一人、徘徊していた。
 いつもならこの手の外回りの雑用は先の生徒会から引き続いて今生徒会でも雑用係一号の雄二がやる
のが普通なのだが、ここ1週間の雄二ときたら舞い上がってしまって役に立たない。
 珊瑚ちゃんに頼んだ例の「リーナ」の仕上がりは順調らしく、先日「もうじき外にも出られるように
なるで、そしたら生徒会室に連れて行くで〜」と言われてからというもの、昼休みも放課後も生徒会室
でワクテカしていやがる。
「まったく、生徒会長っていってもやっぱり実感わかないよなぁ……」
 というわけで、仕方なく今日のところは俺とミルファ(ちなみにミルファは生徒会雑用係2号である)
が手分けして外作業をやっていた。
 ……それにしてもやはり荷が重いよな。いくらタマ姉に「辛うじてでもまーりゃん先輩に対抗出来るのはタカ坊だけ」と唆されたと言っても引き受けるべきじゃなかったよなぁ。
「まぁ、愚痴を言っても始まらないか……」
 そんな事をぼんやり考えていたせいだろうか?
 俺が廊下を歩いていた小さな白い影に気が付かなかったのは。

          『雄二のト☆キ★メ☆キ♪光源氏大作戦!〜後編〜』

 ぼむっ!

 ん? 今何か蹴飛ばさなかったか? そんなに重いものではないようだったけど……
 それでも何か気になってきょろきょろと前方を見回すと。
「ね、猫!?」
 俺の前方数メートルに、白い猫(?)がよろよろと起き上がろうとしているのを発見した。
 って、何で校内に猫? まさか「はるみちゃんの猫」が戻ってきたとか??
「うわっ! うわっ! 大丈夫かい!?」
 慌てて駆け寄った俺だったが、
「ぬ、ぬいぐるみ???」
 そう、その猫はどう見てもぬいぐるみだった。
「動くぬいぐるみ……珊瑚ちゃんのロボット、だよな?」
 気付いててみればここはコンピューター室にも程近い。

74:『雄二の光源氏大作戦』後編(2/17)
08/10/24 19:56:04 Yv58y36Y0
 その猫型ロボットは何が起こったかわかっていないのか、おどおどと辺りを見回している。
 そして俺の姿を認めると、
「あ……」
 まるで怯える様に、じりじりと後ずさりながら震えはじめた。
 無理もない。いきなり知らない男に蹴飛ばされたのだから当たり前だ。
 ……それにクマ吉の例もある。もしかしたら女の子かもしれないじゃないか?
 そう考えた俺は極力驚かさないようにそっと荷物を置くと、極力身体を低くして目線を近付け、穏や
かに話しかけることにした。
「ごめんね、前をよく見ていなかった俺が悪かったね」
 この通り、と頭を下げる。
 珊瑚ちゃんの作る「友達」が人間と同じデリケートな心を持っているのはよくわかっているつもりだ。
 傷付けてしまった事をよく詫びたかったのだ。
 すると。
“ぽんぽん”と下げていた頭が優しくたたかれた。
 もふもふの肉球?なので妙にくすぐったい。
 顔を上げるとネコちゃんは何度もぷるぷると頭を振っている。
 なんとなく、“もういい”と言っている様な気がする?
「そうはいかないよ。いくらなんでも蹴飛ばしちゃうなんて、俺が俺を許せないよ」
 すると、ネコちゃんはじぃ〜〜っと俺を見つめると、“すりすり”と俺の手に頭をすり付けてきた。
 ……どうやら、許して貰えたみたいだ。
「大丈夫? どこも怪我はない?」
 そっとネコちゃんを抱き上げてたずねると、ネコちゃんはどこか嬉しそうにと頷いた。
 うん。良かった。さて……
「ところでキミは、珊瑚ちゃんのロボットだよね?」
“こくこく”
 やっぱり。……ん? この人間くささはまさか?
「え〜〜〜っっと……もしかしてもしかしたら……リーナちゃん??」
“こくこくこくこく”
 なんとなく目を輝かせてリーナちゃんが頷く。
 やっぱりそうか……なんとなく普通のマスコットロボットじゃないと思ったんだよ。

75:『雄二の光源氏大作戦』後編(3/17)
08/10/24 19:58:59 Yv58y36Y0
「そっか。俺さ、キミのご主人様予定の向坂雄二の友達で、河野貴明っていうんだ。よろしくね?」
 しーーん
 あ、あれっ? リーナちゃんが固まってる?
 やべっ! やっぱりどこか壊れた?
「リーナちゃん? 大丈夫?」
 クマ吉と同じリモートコントロールなんだろうけど……わかっていてもやっぱり焦るものは焦る!
 こ、こういう時は……
「さ、珊瑚ちゃ〜〜んっ!!」
 俺は慌ててコンピューター室に向かって駆け出していた。

            ◇  ◇  ◇  ◇

「大丈夫や〜。ちょっと一度にたくさんの情報が入ってフリーズしてただけや〜」
 あの後、珊瑚ちゃんに少しシステムをチェックしてもらうと、リーナちゃんはすぐにまた動けるよう
になった。今は珊瑚ちゃんの腕に抱かれて生徒会室に向かう途中だったりする。
「だめやで〜、り〜な。まだまだ外に慣れてないんやから、冒険はもう少し落ち着いてからや」
「まったく、急にいなくなるからあせったで」
 珊瑚ちゃんの腕の中のリーナちゃんは、瑠璃ちゃんにも注意されて、少ししゅんとしてしまっている
ようだ。しっぽがなんとなく元気なさそうに揺れている。
「まぁまぁ。クマ吉もよくあっちこっちうろついてたじゃない? そういう人間らしさもDIAならで
 はなんでしょ?」
 あ、ぴくんとしっぽがはねた。
「まぁ、そらそうなんやけどな」
 どこか納得していない風の表情ではあったが、珊瑚ちゃんははにかむように微笑んだ。
「とりあえず、あとは雄二をマスター登録すればみっしょんこんぷりーとや〜」
 ん? マスター登録?
 あれ? 確かDIAって……
「DIAはマスター登録がない、って聞いた様な気がするけど?」
「いっちゃんらにはあらへんよ? でも、量産機でそれはまずいやろ〜いう話でな? り〜なのOSに
 はマスターに対する“好意”を誘導するスクリプトが組まれてんねん」

76:『雄二の光源氏大作戦』後編(4/17)
08/10/24 20:03:28 Yv58y36Y0
 少し寂しそうな表情で珊瑚ちゃんはそう教えてくれた。
 そうか……量産機のリーナちゃんは、最初から「メイドロボ」なんだ……。
 あくまでロボット達とは友達でありたい彼女にとって、それは「鎖」に感じるんだろうな。
「そっか……。仕方のない事なんだろうけど、なんだかちょっと寂しいね」
 また少し、リーナちゃんのしっぽが揺れた気がした。

「やっほ〜、雄二〜。り〜な連れてきたで〜」
 さっきまでの沈んだ雰囲気は何処へやら、珊瑚ちゃんは元気良くリーナちゃんを掲げながら生徒会室
へと突入した。……もしかしたらあれは「るー」なのか?
「うほっ! 待ってましたよ珊瑚ちゃん! 愛しのリーナちゃんは……お、そのぬいぐるみだね?」
「あ、ダーリンお帰りー。掲示物の張り替え終わったよー、ほめてほめてー」
「わぁ〜〜、可愛い〜〜! このみにも抱かせて〜〜」
「相変わらず連れて来るのは女ばかりね」
 生徒会室には最近いつも詰めている雄二をはじめ、外回りを済ませたらしいミルファや、また書記に
なったこのみ、何故か会計監査の郁乃ちゃん(このみに引っ張り込まれた)ら、いつもの生徒会の面子
が集まっていた。
 副会長の小牧さん(郁乃ちゃんが生徒会入りする事になったら「空いてるポスト、なんでもいいです
から!」と言ってきたのでお願いした。おかげで根回し等がすごく楽)や会計の草壁さん(いつの間に
か「なら私は会計という事でいいですよ」と、イスに収まっていた)は見当たらないが……多分クラス
会かクラブ会との交渉だろう。そろそろ年末イベントの準備がはじまっている。
 会長は雑用か?とか、女ばっかだな?とかそういうツッコミはなしの方向で。
 ……どうせ既に「河野ハーレム」とか「小牧さん=かいちょー、河野=裏会長」とか言われてるよ。
 まぁ、そんな何かを解説する様な回想はさておき。
「ほならいくのん、パソコン借りるで〜〜」
「いくのん言うな。……また怪しい改造する気?」
「今日は改造ちゃう〜。り〜なのマスター登録するんや〜」
 今日は、かよ。
 郁乃ちゃんもちょっと呆れたような顔をしたが、諦めているのかちょっと肩をすくめただけで何も言
わずに素直にパソコンを明け渡した。

77:『雄二の光源氏大作戦』後編(5/17)
08/10/24 20:06:41 Yv58y36Y0
 ちなみにこのパソコンは生徒会活動の為と言う名目でコンピューター室からパチって来たものだ。
 まぁ、もちろん役には立っているが、実質郁乃ちゃんと雄二のおもちゃ状態である。
「したら、いくで〜」
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ…………
「おおっ、相変わらず見事なキーボード捌き」
 雄二が感心したようにつぶやく。
 ほんと、いつ見ても「眼にも止まらぬ」ブラインドタッチである。
 ものすごい勢いで幾つものウィンドウが開き、「何か」が進行している。
「あたりまえや。ウチのさんちゃんは天才やで」
 何故か瑠璃ちゃんが胸を張るのもいつもの事だ。
「このみぃ、そろそろり〜な寄越してんか〜」
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ…………
「はぁ〜〜い」
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
「瑠璃ちゃん、ケーブル取って」
「これやな? さんちゃん」
 固唾を呑んで成り行きを見守る一同の緊張をよそに、来栖川エレクトロニクスのコンピューターを呼
び出したらしい珊瑚ちゃんは、鼻歌交じりでリーナちゃんをコンピューターに繋いだ。
「マスター登録は無線で出来へんねん。ちゃんと有線で接続せんとあかんからホンマは雄二を研究所に
 連れていかなならんのやけど、ウチにかかれば……」
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
「よっしゃ、出来たでぇ。雄二、こっち来てり〜なの前に座って〜な」
「はいはい、っと」
 う〜ん、なんとなくリーナちゃんは緊張しているみたいだなぁ。
 しっぽとかなんだか突っ張ってるみたいだよ。
「いよいよ俺の時代が来たって感じだな! 最新型の試作機のご主人様になれるなんて、男冥利に尽き
 るね。全く、持つべきものは真の友と書いて真友だ!」
 雄二の方はすでにめちゃくちゃ浮かれている。
 なんだかなぁ。
「うわっ。ちょっと引くわね……。マジでキモいわ」
 この件に関しては郁乃ちゃんの意見に全面的に賛成だな。

78:『雄二の光源氏大作戦』後編(6/17)
08/10/24 20:11:17 Yv58y36Y0
「そんなヘンな事言ってるとリーナに嫌われるよ〜?」
 いつも冷ややかな郁乃ちゃんのみならずミルファにも引かれてる雄二って……。
 やはりヤツとの友情は考え直した方がいいのだろうか?
「大丈夫大丈夫。優しくするよ〜、リーナちゃん」
 ……
「そういう事じゃないんだけどなぁ……」
 能天気な雄二の様子を見つめながら、ミルファがポツリとつぶやいた。
 う〜〜ん、この間もミルファはこの作戦に懐疑的だったけど、なんか気になるな。
「何か気になる事があるの?」
 なので、思い切って尋ねてみる事にした。するとミルファは、
「うーん、上手く言えないんだけど……私がそうだし、お姉ちゃんやひっきーも、誰かを“好き”と思
 う気持ちってすごく特別だから……リーナにも心があるなら、どうなのかなぁ〜って」
 何度も首を捻って、やはり上手く説明出来ないようだった。
「好きと思う気持ちが心になる……みたいな事を言ってたね、そういえば」
 ちょっときょとんとするミルファ。
 ああ、そういえばそれを言っていたのは「はるみちゃん」だったかな?
「それ、はるみが言っていたの? ……でも確かによくわかるかな〜」
 そりゃあ、はるみちゃんはキミだからねえ。
「うん、やっぱそこが気になるのかな。好きは思うものなのに、好きにする事なんて出来るのかな?」
 わかったようなわからないような……。
 でも確かに俺もちょっと不安になってきた。
 そんなに上手くいくのかな……。
 ……
「したら雄二、自己紹介してや〜」
「お、おう。……はじめまして。俺が向坂雄二、キミのご主人様だよ〜」
 そんな俺たちの不安をよそに。コンピュータのモニターに雄二の映像や声紋?が取り込まれ、目まぐ
るしくプログラムが流れていく。
 そして最後にゆっくりと、その一文が表示された。

『はじめまして、ご主人様。HMX−18diaリーナと申します。よろしくお願いいたします。』

79:『雄二の光源氏大作戦』後編(7/17)
08/10/24 20:16:17 Yv58y36Y0
               ◇  ◇  ◇  ◇

 リーナちゃんがやって来てから2週間ほどが過ぎた。

 最初はどうなる事かと思っていたが目立ったトラブルもなく、珊瑚ちゃんによると順調にデータも蓄
積されているとの事だった。
 雄二に対するリーナちゃんの『好意』にも特に問題は見られないらしい。
 正直雄二は舞い上がったままで見るに耐えないと思っていたが、実は案外上手くやっているのか?
“きーんこーんかーんこーん……”
「さて! 愛しいリーナちゃんと、愛をはぐくみますか!」
 放課後のベルが鳴るや、今日も雄二はいそいそとカバンを手にとって教室を駆け出していった。
 なんでも今日は色々とプレゼントを持ってきたらしい。
 昼休みはリーナちゃんは調整中とかで渡せなかったので、雄二は一日悶々としていたのだ。
「早く行ったところで珊瑚ちゃんたちが急いでくれるわけでもないのにな」
 誰へともなしにそんなコトをつぶやいていると、。
「それにしても向坂君、すごい荷物ですねー」
 さしもの小牧さんも呆れ顔である。
「なんかね〜、リーナのボディが出来たら着せたい服とかを持ってきたみたいだよ〜」
 ミルファはにやにやと笑っている。
 何故かリーナちゃんはミルファに対する懐き(ぱっと見猫のぬいぐるみにしか見えないから、そうい
う扱いでも仕方ないだろう?)が悪いためか、最近のミルファは心配するより生暖かく見守っていると
言う感じが強い。
 イルファさんやシルファちゃんとも色々トラぶるし、イルファさんとシルファちゃんの仲も良好とは
言えないし、DIA同士は色々相性に問題があるのだろうか?
「あら、ではメイド服とかでしょうか? ティータイムにでもちょっとお借りしてみたいですね」
 あいかわらず草壁さんはにこにこと能天気である。
 そういえばリーナちゃんは結構草壁さんには懐いているように見える。
 珊瑚ちゃんいわく、
「優季ねーちゃんは『お淑やかなお嬢様の鑑』みたいな感じがするで、見習いたいんちゃうか〜?」
 という事らしいが……。

80:『雄二の光源氏大作戦』後編(8/17)
08/10/24 20:20:33 Yv58y36Y0
 まぁ、言わんとする事はわからないでもない。
 特にミルファあたりにも見習って欲しいと切に願うものである。
「……ダーリン、今何か失礼な事考えてなかった?」
「滅相もない」
 謂れなき疑惑?はノータイムで否定したが、ミルファはまだ横目で睨んできている。
 まったく、『女の勘』まで働くなんてDIAは高性能にもほどがあるよ、珊瑚ちゃん。
 や、やばい。どう言い逃れたものか……。
「と、とにかく生徒会室に行きましょうよ〜」
 おそるおそる小牧さんがそう言い出してくれなかったら、思わず土下座してしまう所であった。

「タカ坊、これから生徒会?」
 生徒会の面々とともに廊下に出たところでタマ姉に呼び止められた。
 生徒会を引退したタマ姉は、朝や昼は行動を共にすることが多いが、さすがに放課後は進学の準備な
どを進めている。とはいえ図書館で勉強して帰りは一緒、などという事も珍しくないのだが。
「小牧さんと草壁さんもご苦労様」
「こんにちは、向坂先輩」
「こんにちは、向坂先輩。先輩はこれから図書館ですか?」
「私はご苦労様じゃないの〜?」
「ミルファはタか坊と一緒にいたいだけでしょ? ……そのつもりだったんだけど、雄二が浮かれて妙
 なものを学校に持ってきたでしょう? それが心配になったから様子を見に来たの」
 あいかわらずミルファとタマ姉は仲がいいんだか悪いんだか……。
 どちらも「赤い人」だけあって下手につつくとぼうぼうに燃え上がるからなー、一人一人でさえ「火」
なのに、二人合わさると「炎」になるから厄介だ。
「……ダーリン、今何か失礼な事考えてたでしょ」
「奇遇ね、ミルファ。私もなんだかそんな気がしたの」
「め、滅相もない」
 断定かよ。勘弁してくれ。こんな時だけ息ぴったりですね、あんたら。
「まぁまぁ。早く生徒会室に行かないと〜」
 ううっ、小牧さんが天使に見えるよ……。
「今日の仕事の段取りが終わったら、ゆっくり話し合ってくださいね♪」

81:『雄二の光源氏大作戦』後編(9/17)
08/10/24 20:24:26 Yv58y36Y0
 ブル〜〜タス!お前もか〜〜!?
「そうね。小牧さんの言うとおりだわ。……タカ坊、後で二人でゆっくり話し合いましょう」
 何故かそこで獲物を狙う豹のような目になるタマ姉である。
「あらあら、大変ですね、貴明さん」
 草壁さんに突き落とされたところで俺たち一行は生徒会室の前に辿り着いた。

 ……ん??

「お姉ちゃん? 何でこんなところに……」
 生徒会室の前には瑠璃ちゃんと、そして近未来的なメイド服に身を包んだ青いショートボブヘアの女
性……イルファさんが立っていた。
「あら、貴明さん、みなさん、こんにちは。……環様、ご無沙汰しております」
 そう言うとイルファさんは優雅に一礼した。
「久しぶりね、イルファ。元気にしていた?」
「ええ、おかげさまで。この度は妹までお世話になってしまい、申し訳ありませんでした」
 以前イルファさんが向坂家でテストを行って以来、イルファさんとタマ姉は本当に仲が良い。
 というか、これが理想的な主人とメイドロボの関係なんだろうな〜〜。
 ……これ以上思考を巡らすとまたミルファに睨まれそうなので、俺は物思いを中断して瑠璃ちゃんに
状況を尋ねてみる事にした。
「瑠璃ちゃん、どうしてイルファさんがここにいるの? 何か忘れ物とか?」
 我ながらアホな質問だとは思ったが、案の定瑠璃ちゃんに肩をすくめられてしまった。
「なにが悲ししゅうて放課後に忘れ物届けさせなあかんねん。……リーナが本体に同調出来たから、早
 速連れてきたんやて」
「「「ええっ?」」」
 あれっ?でも……
「ミルファの時は一度引き上げて、本体になるまでずいぶん時間かからなかった?」
「あれはミルファちゃんが色々ワガママを言ったり、暴れて壊れたり壊したりを繰り返していたからで
 すわ。リーナちゃんは大人しい子ですし、もともとフォーマットは出来ていましたから」
「お姉ちゃんっ!」
 あー、そういえばそんな話も聞いたような聞かないような。

82:『雄二の光源氏大作戦』後編(10/17)
08/10/24 20:27:38 Yv58y36Y0
「だ〜〜ってぇ〜〜」
 口を尖らせたミルファはぶつぶつとなにやら言い訳している。
「ダーリンは大きなおっぱいが好きだ、って言うし……」
 そこかよ。それはもういいよ。
 タマ姉は『ふふん』って感じで威張ってるし。
「やっぱりそうなんですね〜。ミルファちゃんも向坂先輩も大きいですもんね〜、胸」
「大丈夫ですよ。小牧さんも結構あるじゃないですか」
「草壁さんほどじゃないよぉ〜〜。草壁さんは元が細いからいいけど……」
 だから胸はもういいから……。
 っていうか何故こんなところでおっぱい談義をせねばならんのだ。
「そ、それはさておき、じゃあもうリーナちゃん来てるの? 生徒会室の中?」
「そうや〜。今雄二に挨拶しとる。別に席外すほどの事でもないんやろうけど、なんとなくな」
 まぁ、気分はわからなくもない。
 不器用ながら、瑠璃ちゃんはとても優しいコなのだ。
 ……すると、廊下の騒ぎを聞きつけたのだろう。生徒会室の扉が開けられた。
「貴明〜、みんな〜、る〜〜♪」
「「「る、るー!」」」
「廊下でなにしとるん? 別に部屋に入ってもええのに。今、り〜なが雄二に貰うたメイド服に着替え
 終わったトコや」
「ちょ、雄二ってば、目の前で着替えさせたの!?」
 珊瑚ちゃんはいつもの調子であっけらかんと放った言葉だったが、耳聡いタマ姉は瞬時に目の色を変
えた。……確かにこの生徒会は女子生徒が多いから着替え用のスクリーンはあるのだが……主にまの付
く先輩の盗撮対策に。
「せやかて、雄二やないとあんなビラビラしてパーツいっぱいある服、着せられへんもん」
 あああああ〜〜、タマ姉の怒りゲージが〜〜
「ふふふふっ……雄二ったら……」こきっこきっ
 雄二よ、線香くらいは上げてやるぞ。
 向坂の墓に入れるかどうかはわからんけど。

 ともあれ。ぞろぞろと生徒会室の中に入っていくと、

83:『雄二の光源氏大作戦』後編(11/17)
08/10/24 20:33:30 Yv58y36Y0
「やっぱりよく似合うね〜〜」
「……恐れ入ります。ご主人様」
 そこには思い切り鼻の下を伸ばしまくった雄二と、黒を基調にした、スカートが短めだからフレンチ
タイプ……だったかな?のメイド服に身を包み、黒いロングヘアが印象的な楚々とした佇まいのメイド
ロボが背を見せて立っていた。
「いいよいいよ〜〜。……お、みんな来たみたいだな。ど〜〜だ貴明、羨ましいだろ〜〜」
 その言葉にゆっくり振り返ったメイドロボちゃんは……
 黒くてストレートのロングヘア、濃い緑色の瞳の、切れ長の眼が印象的な落ち着いた感じのする顔立
ちに、小振りなイヤーバイザーが付いている。顔やスタイルのバランスは似ているが、背はイルファさ
んたちよりも少し高めのようだ。微妙にタマ姉に似ているような気がするが……まぁ、雄二の好みを総
合するとまんまタマ姉だからなぁ。
「なんだか向坂先輩に似てません?」
 早速草壁さんに突っ込まれているよ。
「雄二の好みどおりにしたんやでぇ〜?」
「ゆ、雄二……あなた……」
 タマ姉もノリがいいなぁ、最近。
「んなわけねーだろ! ……おい、そんな目で俺を見るな! つか全然違うだろうが!!」
 みんなにじっとりとした視線を向けられてさすがの雄二もジタバタしている。
 けっ、ざまーみろ。俺もいつもそんな想いしてんだよ。
 それにしても雄二には似て見えないんだろうな。不思議なもんだ。
「ふわ〜〜、これがリーナちゃん……きれい〜〜」
 ともあれ、総合すると小牧さんのこの呟きが一番しっくり来る感想ではあるのだが。
 そうして再び皆の注目が集まったところで、リーナちゃんは一歩前に出ると優雅にお辞儀をした。
「改めてはじめまして、と申し上げた方がよろしいでしょうか。HMX−18dia、リーナと申しま
 す。今後ともよろしくお願いいたします」
 そして更に、
「小牧様。いつも可愛がって頂いてありがとうございました。ご主人様ともども、これからもよろしく
 お願いします」
「はっ! はいっ! こ、こちらこそどうじょよろしく〜〜」
 丁寧に一人ひとりに挨拶をする気のようだ。うわー、出来た子だなー。

84:『雄二の光源氏大作戦』後編(12/17)
08/10/24 20:38:14 Yv58y36Y0
 ……どうでもいいけど小牧さん、噛んでるよ。
「草壁様。ようやくこの姿でお目にかかることが出来ました。色々教えていただきたく思いますので、
 よろしくお願いします」
「ええ。まずは一緒にお茶でも淹れましょうね」
「光栄です」
 ああ、やっぱり草壁さんに憧れてるってホントだったんだ。
 草壁さんもまんざらではない様子でにっこり微笑んでいる。
「環様。イルファ姉さまに続いてしまって申し訳ありませんが、よろしくお引き回し下さい」
 そしてリーナちゃんはタマ姉の前で深々と頭を下げた。
 その様子にそれまでは表情を強張らせていたタマ姉もようやく顔をほころばせた。
「私の方こそよろしくね、リーナ。それより雄二のワガママに付き合わせちゃって申し訳なかったわ。
 変な要求なんか突っぱねちゃっていいんだからね? 私が許すから」
「……そう、なんですか?」
 んん?
「当たり前よ。特に夜は、姫百合さんの所でも研究所でも戻っていいから」
「おいおい、姉貴ぃ〜〜」
 リーナちゃんは真剣に何かを考え込んでいるようだ。
「わかりました。がんばりますので、色々教えて下さい」
「よし。みっちり、仕込んであげるわね」
 どうやらこの二人は上手くいきそうだ。
 まぁ、あまり心配はしていなかったけどね。
 次にリーナちゃんは……
「リーナってば、私はシカトなの?」
「ミルファ姉さまには何度かお目にかかっていると思うのですが……」
 あれ? なんかバチバチって……
 っていうかミルファがじりじりと俺とリーナちゃんの前に移動している。
「リーナ……あんたやっぱり……」
 え? リーナちゃんにじっと見られているような……やっぱりって……
「貴明様……」
「は、はいっ!?」

85:『雄二の光源氏大作戦』後編(13/17)
08/10/24 20:43:12 Yv58y36Y0
 それまでの控えめな声音とは打って変わったリーナちゃんの声に、ついつい俺の返事は裏返っていた。
 なんというか、すごく背中がむずむずする。
「やっとこの姿で御目文字が叶いました……」
「リーナ、ちょっと待ち……うわわわ、お姉ちゃん!なにするのよぅ〜〜?」
「はいはい、ミルファちゃんはこっちに来ましょうね〜〜♪」
 うわ、イルファさんすごいいい笑顔だ(汗)
 じたばたしながら引き摺られていくミルファを尻目に、リーナちゃんはすっと俺の前に進み出てきた。
 それにしてもこの雰囲気はなんなんでしょうか……。なんか周囲のみんなも固まってるし……。
「初めてお会いした時からずっとお慕い申し上げておりました……」
 う、うえぇぇぇっ!?
「「「えええぇぇ〜〜っ!?」」」
「貴明様はずっと私をただのロボットではなく、一人の女の子として扱って下さいました。そんな貴明
 様に良く思われたい、褒めていただきたい……そんな気持ちが私の中で日に日に大きくなっていきま
 した……」
 コノコハ、ナニヲイッテイルノダロウ……
「この身はご主人様にお仕えする一介のメイドロボに過ぎませんが、暖かい気持ちを、人を愛する心を
 下さったのは貴明様です……」
 ア、ユウジガマッシロニモエツキテイルヨ?
「貴明様に愛して頂けるミルファ姉さまが羨ましい……貴明様にお仕え出来るシルファ姉さまが羨まし
 い……でも私はご主人様の物。草葉の陰で、貴明様の想い出をよすがに生きていく他ないと思ってお
 りましたが……」
 クサバノカゲッテアナタ、ユウレイジャアルマイニ。
「せめて、せめてこの気持ちだけでもお伝え出来れば本望と思っておりましたが、環様が通いでも良い
 と仰って下さるなら、是非、是非私も貴明様の妻の末席にお加え下さいっ!!」


 …………はっ! お、俺は今なにを聞いた!?
「貴明さすがや〜〜。メイドロボキラーや〜〜♪」
「あんたミルファやシルファだけでは飽き足らず、リーナまでかいな……」
「うわぁ〜〜〜ん!! ダメダメダメっ!! もうダーリンの妻の席はいっぱいなのぉ〜〜っ!」

86:中の人
08/10/24 20:51:19 4la7kdG/O
ついにさるさんにタイーホされました……。
ほとぼりが冷めた頃に再び続きを投下いたします。

87:名無しさんだよもん
08/10/24 21:14:34 TmoR0PYd0
wktk

88:名無しさんだよもん
08/10/24 21:39:26 tv44fdBX0
なんか雄二涙目→ダッシュ フラグがビンビン立ちまくってる予感。

89:『雄二の光源氏大作戦』後編(14/17)
08/10/24 22:06:15 Yv58y36Y0
「仕方ないですわね。リーナちゃんが粗相をしないように私も一緒に貴明さんの寝所に……」
「それはもっとダメ〜〜っ!!」
「こ、河野くん……まるで人間磁石……磁石だけにロボがよくくっつく……」
「お姉ちゃん、それちっとも上手くないから」
「貴明さんってばもう……第一夫人の座はまだ空いてるみたいですからいいですけど……」
「本妻の座はわたさへんで〜〜♪」
「このみもこのみも〜〜♪」
「さんちゃんアカンっ! ヘンタイがうつるっ!」
「みんなダメぇ〜〜っ!!」
 な、なんか、阿鼻叫喚の地獄絵図??
 いつの間にやってきたのかこのみや郁乃ちゃんも加わり、生徒会室は混沌の坩堝と化していた。
「ちょ、何故こんな事に……ってあだだだだだっ!姉貴っ!ぎぶっぎぶつ!!」ぎりぎり……
「ゆ・う・じぃ〜〜。アンタが余計な事ばっかするから……」みしみしみし……
 うわ〜〜、なんかいつもより歪んでないか?頭蓋骨的に。
「歪むっ!砕けてしまいます〜〜……がくっ」ばきっ!ぽいっ
「ど〜〜だ雄二、羨ましいだろ〜〜」
 うわ、郁乃ちゃん。それは容赦なさすぎだよ……?
「ふんっ! 使えない弟ね。……リーナぁ? メイドは年中無休、24時間営業よね〜〜?」
 お姉さま……なんかすごい音がしましたよ?
 それ、一応あなた様の弟なんですが……。
「そ、そんなぁっ!?」がーーーーーーーーーーん!
 うわぁい、リーナちゃんの後ろにでっかい効果音が見える。
「おんやぁ〜、タマちゃん。一度口にした言葉を違えるのかにゃぁ〜?」
 げげっ、いつの間にか窓枠にまーりゃん先輩!?
「ま、まーりゃん先輩……」
「ほれ、ぽちっとな。『……特に夜は、姫百合さんの所でも研究所でも戻っていいから』」
 おいおい、いつから聞いてたんですか、アンタは。レコーダーまで仕込んで……。
「うううっ……」
 畳みかける様にまーりゃん先輩はタマ姉ににじり寄る。

90:名無しさんだよもん
08/10/24 22:08:10 KjUW+bGv0
支援

91:『雄二の光源氏大作戦』後編(15/17)
08/10/24 22:10:07 Yv58y36Y0
「向坂の家は武士の末って言ってたよな〜、タマちゃん?『……変な要求なんか突っぱねちゃっていい
 んだからね? 私が許すから』」
「それは雄二が変な事を……」
「武士に二言は〜〜??」
「ぅあ、ありません……」
 すげー、タマ姉が言いくるめられてる。
 ……って、感心してる場合じゃないし!?
「うししっ、良かったのう、り〜な。タマちゃんのお許しが出たぞえ?」
「はいっ! ありがとうございました! えっと……あなた様は……」
「うむ。まー神様とあがめたまへ」


 まぁなにはともあれ。
 何とか生徒会活動を終え(まーりゃん先輩に妨害されて大変だったが)、姫百合家と幼馴染一同は俺
の家に集まって来ていた。
「まぁ、リーナちゃんがそう言うんじゃ仕方ないよね〜〜。とほほほ……」
「申し訳ありません、ご主人様。精一杯お仕えしますので、お許し下さい」
 とりあえずリーナちゃんの希望通り(?)、彼女は雄二のメイドロボとして向坂家に仕えつつ、人間
のメイドさんと同じようにに休みを貰ってプライベートは自由に行動する事に決まったようだ。
「それにしても例のスクリプトは働かなかったの?」
 そう珊瑚ちゃんに尋ねてみると、
「ちゃんと働いとるで? リーナ、雄二にもちゃんと懐いとるやないか」
 きょとんとした顔でそんなコトを答えられた。
 でもそれなのに他の男に恋をするなんて、ねえ?
「好意と恋は違うってことだよ、ダーリン」
 するとミルファがしたり顔で答えた。
「ぷぷぷっ。おぽんちのくせにウマい事を言ったつもりれすか?」
「うっさいわね、根暗ロボ」
 そこにシルファちゃんが飲み物を持って現れ、すかさず茶々を入れた。
「二人ともいがみあわないで……で、どういう事?」

92:『雄二の光源氏大作戦』後編(16/17)
08/10/24 22:13:40 Yv58y36Y0
 ミルファに話を振りなおすと、彼女はう〜〜んと首を捻りながら説明してくれた。
「言葉通りなんだけど……それになんて言うかな、ダーリンもゆーじくんも優しいのは一緒なんだけど、
 受ける印象は全然違うんだよね。ゆーじくんに好意は持てるけど恋にはならない、ダーリンには恋せ
 ずにはいられないって気持ちは、わからなくもないかなぁ?」
 見ると、シルファちゃんもその言葉にうんうんと頷いている。
「ゆーじがシルファやリナリナを見る目はめいろろぼを、可愛いとは思われているみたいらけろ、やっ
 ぱりお人形さんを見る目れす」
 言葉を繋いだシルファちゃんは、ちょっと苦しそうに「お人形さん」と言った。
「れも、ご主人様がシルファたちを見る目は女の子を見る目れす。多分ミルミルもリナリナもそれがう
 れしいんらと思います。シ、シルファも、ご主人様にそんな風な目れ見られるのが……すごく、すご
 く嬉しいんれす。らから……」
 シルファちゃんはつっかえながらも、最後は熱っぽい瞳で力強く言い切った。
「らから、シルファはご主人様に恋をしたんれす」
 あ〜〜。嬉しいんだけど、みんなの前でそういうセリフはちょっと照れるかな……。
「うんうん、わかるわかる〜〜。いつもはムカつくけど、今日はシルファが可愛く見える〜〜」
 ぐっと拳を握り締めてミルファが、
「そうっ! そうなんですよ! やっぱり姉さま方も同じ気持ちだったんですね!」
 身を乗り出してリーナちゃんがその言葉に同意する。
「ミルミルぅ〜〜! リナリナぁ〜〜!」
 なんだかミルファとシルファちゃんとリーナちゃんは妙に意気投合したらしく、呆然とする俺の横で
がっしりと抱き合っている。
 ……イルファさんもなんだか頬を赤らめてくねくねしてる?
「これは……いい話、なのかしらね?」
「あはは……とりあえずこのみはちょっとうるっと来ちゃったかな」
「このみは単純やなぁ」
「みんならぶらぶで、ハッピーエンドや〜♪」
「……俺はハッピーじゃないやい。結局貴明のヤツの当て馬になっただけじゃねーか」
 いじいじと不貞腐れる雄二。
 ま、そう言うな雄二よ。賭けてもいいが、きっと俺にとってもあまりハッピーエンドじゃないから。

93:『雄二の光源氏大作戦』後編(17/17)
08/10/24 22:17:46 Yv58y36Y0

 それからというもの……

 ぴんぽーん
『ダーリーン♪ 朝だよ〜〜。今日はお休みだよ〜〜、一緒に遊ぼうよぅ〜〜』
『また懲りずに現れたれすね、ミルミルっ! 今日のご主人様はシルファとお買い物に行く予定なんれ
 す! おぽんちめいろろぼと遊んれる暇はないれすよっ!』
『なんですってぇ〜〜!? あんたはいつも一緒にいるじゃない。今日は私が一緒にいるの!』
 どかーん!がしゃーん!
 ああ、何が起こってるんだろうなぁ……。
 がらがら。
 おや? 窓が開いたぞ?
「おはようございます、貴明様。昨日環様からお給金を頂いたのですが……いつもお世話になっている
 お礼にお食事にでもまいりませんか? ホテルのラウンジなど、この季節気持ちいいですよ?」
『むっ! ご主人様の部屋に正体不明の熱源1れす!』
『な、なんですってぇ! ……さてはリーナ!』
 うわー、何が仕掛けてあるんだろー、この部屋……。
「ちっ、気付かれたようですね。貴明様、さ、お早く」
「そうはいくかぁ〜〜!!」
「クセモノ〜〜!!」

 頼む……平和な休日をギブミー。
 こうして今週も河野家の日曜日は騒がしく始まり、暮れていくのだった。
 こんなでも、雄二は羨ましいって言うんだろうなぁ……orz

                  〜〜終わり〜〜

94:中の人
08/10/24 22:42:35 Yv58y36Y0
以上で終わりになります。
支援、ありがとうございました。

ちょっとキャラクター出し過ぎてごちゃごちゃしちゃったかなーと反省しきり。
次はもっと落ち着いた作品を書きたいものです。

>>88
そりゃまぁ、雄二涙目はお約束でしょう??

95:名無しさんだよもん
08/10/24 22:42:53 /Q1nPGKe0
超乙!
おいしくいただきました。

同じようなオリキャラでも、例の奴とはレベル違うよねぇ〜
全然嫌味も違和感もなかったし
次回作も期待しますよ〜

96:名無しさんだよもん
08/10/24 23:05:07 pk16hrQM0
>>95
折角の良作投下なのに、あんな糞作家引きあいにすんなよ…

ともあれ>>94氏乙
すげー面白かった

97:名無しさんだよもん
08/10/24 23:06:31 ZDp4yG0y0
>>94
乙乙

イイヨイイヨ

98:名無しさんだよもん
08/10/24 23:32:26 uV76eOHI0
オリキャラ出した時点で同レベルだろ

99:名無しさんだよもん
08/10/25 01:15:53 3FKhz1940
オリキャラよりまーりゃん先輩が出てくるとつまらないってことは分かった

100:名無しさんだよもん
08/10/25 01:21:31 r/dIDrlu0
ADの再現率は高いのに、ADの再現率が高いと貴明その他が気持ち悪いってのは
もう作家さんの書き方とかの問題じゃないよなあ、コレw

101:名無しさんだよもん
08/10/25 06:27:39 cpsdsbMR0
超乙

102:名無しさんだよもん
08/10/25 10:28:18 //8mASAD0
ちょい質問。

オリキャラを嫌う理由を教えてくれない?
オリキャラだらけってのならともかく、納得いく内容なら、面白ければ何でも良いんじゃない?

103:名無しさんだよもん
08/10/25 11:00:52 4JSlXwUu0
納得いく内容じゃない、面白くない。
それってオリキャラ以前にSSがつまらないだけじゃん。

オリキャラを出す是非については、面白さとは別の話をすべきだよ。
つまらないから出してはいけない、面白いなら出して良いなんて主観の話をしても意味ないでしょ。

104:名無しさんだよもん
08/10/25 11:06:52 //8mASAD0
>>103
そうじゃなくてさ、一般論としてオリキャラを嫌う人、って多いでしょ?
そこを聞きたいんだって。
オリキャラが出た時点でダメ、って>>98が言ってるでしょ。
オリキャラが出た時点で本当にダメなのかなーと思ったわけさ。

105:名無しさんだよもん
08/10/25 11:20:07 bf1PGgOF0
二次創作の中に、書いている作者個人を直接または半直接的に感じ取れてしまうものがあると、
とたんにその版権世界から現実に引き戻され、幻滅してしまう
作者個人の願望や実体験をへたくそモロに書くこともしかり
もし、ものすごく上手い人で、
そんな個の気配を微塵も感じさせないSSに仕上げられるなら、
またはオリキャラそのものをプロットにおいて強力な武器にできるなら、
もしくは、神や職人とあがめられオフラインでも名が通ってお遊びを赦される人ならともかく、
それほど腕に自信がない人(=ネット以外では書けない人)は、
どうしてもここでエキストラ要員が必要という場合以外、
オリキャラの使用はハナから捨てておいたほうがいい

106:名無しさんだよもん
08/10/25 11:23:04 4JSlXwUu0
>>104
>>98は別にダメっていってないんじゃね?
オリキャラだしたという時点で同レベルだとしかいってないし。
>>95が「作家として上だ」みたいなこといってたからそれに対する批判なんじゃないの?

一般論として嫌う人が多い理由ねえ。
たとえば、読みに来る人は作家のオリキャラが出張ってるSSじゃなくて原作の作品のキャラのSSだから、とか。
あとは、二次創作は原作をリスペクトして作る物だと考えている人には、オリキャラは原作を汚す行為とも言える、とかかね?
まあ人によっていろいろあると思うけど、
逆に、出してもいいと思える人は、どういう考えでオリキャラを出してもいいと思っているのか聞いてみたいな。

107:名無しさんだよもん
08/10/25 11:38:27 //8mASAD0
>>105
ふむ。納得のいく理由だね。

>>106
結局そこに尽きるわけなんだろうな<原作キャラのSSが読みたい
汚すとか言われてもそこはなんとも言えんけど。

書いてる人間は、色々同機はあるだろうけど基本的には書きたくい事を垂れ流してるだけだからね。
何故出していいと思っているかと聞かれても正直戸惑う。
出していいも悪いも勝手に出てくるんだもん、ってところかな?

108:名無しさんだよもん
08/10/25 13:08:11 r/dIDrlu0
結局、読者装ってオリキャラ肯定してる作者だったのかw

俺は正直オリキャラ出ようが出まいがどーでもいいんだけどさあ
94さんのSSに関しちゃ、オリキャラのリーナ?よりそれ以外の設定の方が引っかかるかな
貴明生徒会長とか愛佳郁乃優季が生徒会メンバー入りしてるとか
前提となってる設定が脳内、しかも作中でダラダラと説明加えるのがキッツイw
まぁこのSSがコレで終わるならまだマシだけど、同設定でコレの続編とか書かれるとアウトだわ〜

109:名無しさんだよもん
08/10/25 13:21:24 4JSlXwUu0
>>107
読者としての疑問かと思ってたけど作家かよ。
実力がなくつまらないSS書いてる人がオリキャラ肯定を叫んでも無意味。
実際の作品でありと思わせるしかない。
読者としてなら作家をバカにしすぎ。考え無しに出てくるから出してるって作家をなんだと思ってるんだよ。

110:名無しさんだよもん
08/10/25 15:12:03 3hlC6KPtO
>>108&>>109
ちなみに他の作家だけど作者じゃない。
しかしそんなに作者が反応するのが嫌いかねえw?

111:名無しさんだよもん
08/10/25 16:42:18 +CgzkG2HO
>>110
エロパロ板のss読み控え室見て来い。書き手として書き込むのは禁止だ。

つまり、そういうことなんじゃないのか?

112:名無しさんだよもん
08/10/25 19:35:57 mr2ziuLM0
今からSSを投稿します。
いわゆる卒業式SSです。時期はずれかとは思いますが。
本編は19レスの予定。
恐らく規制にかかると思いますので、投稿の停止はご容赦下さい。



113:河野貴明の卒業式1/19
08/10/25 19:37:59 mr2ziuLM0
それは記念すべきその日に相応しい言えるほど、よく晴れた空の下で。
 俺はその日、少しばかり早起きして一人学校へと向かった。
 その行為に別に深い意味は無い。
 ただなんとなく、その日は少し早く目を覚ましてしまっただけだ。
 別に卒業を控えてセンチメンタルな気分になって、なんとなくひとりで登校してみたくなった……
などという心境ではなかった。はずだ。

「おはよ」
「で、お前がなんでここに居る?」

 そして。
 何故だか校門の前で不機嫌を絵に描いたような表情を浮べて立っていたのは、半年前まで車椅子登校していた少女。
 愛佳の妹。口の悪い下級生。

「あたし、卒業生にこれを渡す係」

 これ。と言って郁乃が捧げたその手には卒業生の胸を飾る小さな花飾り。
 きっと卒業生が式に参加するにあたって、身に着けておくものだろう。 
 そんなものを郁乃が卒業生に手渡しするなんて。
 はっきり言って意外だった。

「お前がよくそんな係を引き受けたもんだな」
「ジャンケンで負けたから」
「うへえ」

 実に嘆かわしい。卒業生を見送る係がジャンケンで決定かよ。
 卒業する身として、これは感慨もわびさびもあったものではないな。
 とはいえこれも時代の流れか。
 こんな面倒なだけの役目を喜んで引き受けてくれるような可愛い後輩は、もはや絶滅寸前だろうな。
なんだか無性に悔しい俺だった。


114:河野貴明の卒業式2/19
08/10/25 19:38:37 mr2ziuLM0
「よし。せっかくだから、お前がそれを俺の胸元に着けてくれ」
「えー」

 なんだよ。そんな露骨に嫌そうな顔するなよ。
 だが『なんであたしがそんなこと……』とぶつぶつ言いながらも、いちおう郁乃は俺の希望を聞いてくれた。

「胸を針で刺さないでくれよ」
「じゃあ動かないでよね」

 少しばかりの時間をかけて、女の子の小さな手が胸元に花を飾る。
 花飾りは桜の花びらをあしらった素朴なものだった。
 ふと家から学校へと続く路に並ぶ美しい桜並木を思い出す。
 うん、これは卒業には相応しいかもしれないな。  
 そう思うと俺も少しばかり気分は良かった。

「なあ。お前から卒業するセンパイになにか送る言葉はないのか?」
「……」

 郁乃は少し黙ったあと、

「二度とくるな、馬鹿」

 と、一言だけ言った。



115:河野貴明の卒業式3/19
08/10/25 19:39:14 mr2ziuLM0
 郁乃と別れて俺は校舎の方へと歩き出す。
 朝の早い学校は静かだった。
 この学校を生徒として歩く時間は今日が最後だろう。
 しかし、こうして一人校内を歩いてみても、その実感はほとんどない。
 当たり前だが、毎日普通に登校して見てきたこの景色はいつもとまったく変わるところはない。
 俺が体育の時間に走ってきたグランドも、昼休みにジュースを買っていた自販機もいつもと同じ姿でそこにある。
 明日も、あさっても、これからもずっとそこで走ったり、飲み物を選んだりしている自分の姿しか思い浮かばない。
   
 でも現実は違う。
 今日、俺はこの学校を卒業する。
 そして、春にはこの街を出て地方の大学に進学することが既に決まっていた。
小さな頃から生まれ育ったこの街を、俺はもうすぐ出て行く。出て行かなければならない。
 ……さて、そろそろ体育館に行こうかな。もうすぐ卒業式も始まるだろう。

116:河野貴明の卒業式4/19
08/10/25 19:39:51 mr2ziuLM0
「ふう……」  
 
 卒業式を終えて人の列と共に体育館から出てきた俺の口から漏れたのはさめた溜息。
 式はあくびが出るほど退屈で、特に校長先生の長いお話は今日も健在だ。別の意味で泣けた。
 あんたは何年校長やってんだよ、と言いたくもなるな。
 大事な生徒を送り出すっていうのに、あんな形式どうりの言葉だけでいいもんかね。
 でも、あれで泣いてる女の子もいたみたいだな。
 あんな式で泣けるとか。全然分からんなあ。
 
「でも、それも違うのかな……」

 俺は今まで卒業式で泣いたことは無い。
 小学生のときも中学生のときもそうだったな。校歌とか君が代とか、わりとどうでもよかったし。
 つまり俺自身がそういう人間だということなんだろう。
式がどうとか、思い出がどうとか、そんなことは多分関係が無い。

 けどどうしようか。このまま何事も無く家に帰るっていうのもなんとなくわびしいもんだな。
 一応、今日が最後なわけだし。

「貴明ー! 卒業記念にみんなでラーメン食いにいくけど、お前も来いよ!」

 少しばかり遠くで騒いでいた集団が俺の名を呼んだ。
 なんでそれが卒業記念なんだよ、と思わなくもなかったが。でも悪くはないか。
 まあ他にすることも無いし、それでいいかなとも思った。
 連中に手を挙げて応えようとしたその時。 

「待ってくれ!」

117:河野貴明の卒業式5/19
08/10/25 19:46:00 mr2ziuLM0
 そのとき、不意に聞きなれた声が俺を呼び止める。
 
「雄二?」

 振り向くと、長く見慣れた―だがここ数ヶ月は見かけなかった幼馴染の姿がそこにあった。

「雄二。お前卒業式にも出てなかったのか?」
「ああ。今さっきここに着いたとこだ。式にもなんとか出たかったけど……
 やっぱ無理だった。なにしろ時間が無くてな」

 お前そこまで忙しいのかよ、と内心不満に思わなくもなかったが俺は口には出さなかった。
 雄二が本当に忙しいのは事実なのだろう。
 ただなんとなく納得出来ないだけだ。
 ちいさな頃からずっと一緒だった幼馴染の雄二が、卒業式に出られないとか。

「今日も来ないのかと思ったぞ」
「無理言ってなんとか抜けてきたんだ。でもすぐ帰らなきゃな」
「マジかよ……」

 とんでもない忙しさだ。
 これが本当に雄二の生活だなんて、どうにも信じる気になれない。

「とにかく貴明、大事な話があるんだ。ちょっと屋上へ行こうぜ」
「あ、ああ」

 それははっきりとした口調だった。
 反論する余地はなく、その勢いに俺は頷かされる。
 いつになく、押しの強い雄二がそこにいた。


118:名無しさんだよもん
08/10/25 19:59:36 oXlm8W490
支援

119:河野貴明の卒業式6/19
08/10/25 20:09:29 mr2ziuLM0
 雄二と上がった屋上には、俺達二人以外にだれもいなかった。
 なにしろ卒業式の後だ。今更わざわざ屋上に昇る奴は滅多に居ない。
 つまり、雄二はだれも来ない場所で俺と話したかったということだろうと、改めて気が付いた。

 何故、この男がずっと学校に顔を見せなかったのか。
 実は俺達の中で一番早く卒業後の進路を決めたのがこの雄二だった。

 それは俺達が三年生になったばかりのある日のことだ―

『向坂家の長男として、事業を継ぐことにしたんだ』
 
 雄二がそう言った時、俺も心底驚いたものだ。
 それは雄二が一番嫌がっていた道だったからだ。

『なんでだ? お前は家を継ぐのだけは絶対イヤだって言ってたじゃないか』
『上手く言えないけどさ。ホントはイヤじゃなくて、俺には無理だって思ってたんだ。
 でも家出した姉貴とか見てると、そんなこと言ってる場合じゃないって思えてきてな』

 雄二が言ったように、タマ姉は雄二とは逆に向坂家とは絶縁して一人自立した道を歩んでいる。
 自分でバイトして生活費を稼ぎながら、奨学金を貰って大学に通っているらしい。
 きっとハンパじゃないほど毎日が忙しいのだろう。
 この街を離れて以来、俺達にもほとんど連絡は無い。

120:河野貴明の卒業式7/19
08/10/25 20:10:12 mr2ziuLM0
『姉貴は誰にも頼らず、自分の力だけで何かを掴もうとしてるんだろうな。
 まあ、姉貴だったら出来るかもしれないけど、俺にはそんな真似できそうにないし。
 でも御曹司っていうのは、俺が持ってるすごいチャンスには違いないからな。
 俺みたいな凡才は、チャンスがある時には頑張っておかないと、後で後悔するんだよな』
『……うん』

 そんな雄二の言葉にその場は頷いてみせた俺だけど、本当はそんな気持ちさっぱり分からない。
 いつもだらけていてやる気のなさそうだった雄二に、なんだか置いていかれたような気がした。
 いや、『気がする』じゃないだろうな。
 こうして決意を持った雄二は、間違いなく俺の先を進んでいると思った。
 そして雄二は進路を決めたその次の日から、ほとんど学校に来なくなった。
 だから今日こうして会えるのも、ほんとうに久しぶりということになる。

 その、やたら忙しいはずである雄二だが、何故かさっきから黙ったまま屋上から見える景色をずっと眺めていた。

「仕事、どうなんだ?」 

 何を話していいのか分からなかったので、俺は一番気になっていたことを雄二に聞いた。

「仕事ってほどのことはまだ出来ないさ。とにかく修行中だよ。研修とか、勉強とか」
「これからどこ行くんだ?東京か?」
「ああ。東京の本社。その後はアメリカ。半年くらいは家に帰れないってさ」
「……」 

 そうか、と頷くことさえ出来なかった。
 俺はといえば四月から大学生。まだ社会人の経験すらない
 それに比べて大会社の御曹司として将来重大な役目を担うかもしれない雄二が、今どんな苦労をしているのか。
 はっきり言って、俺には想像もつかない。 


121:河野貴明の卒業式8/19
08/10/25 20:11:41 mr2ziuLM0
「半年は……長いよな」

 それだけ言うのがやっとだった。

「ああ、でも本音を言えばそこまで俺の神経が持たないかも。
 それよりも途中で失格だって言われるのが先かもな。
 御曹司っていっても、最低限の仕事も出来ない奴はいらないって親父にも言われてるし。
「……厳しいな」  

 そう話している最中にも、ちらりと腕時計に目を走らせる。
 その面影がいかにも社会人、という感じで。
 なんかこう、俺の気持ちがざわついてしまう。

「まあ、やってみるさ。それしかないもんな」
「……」

 絶句するしかなかった。
 なんだよこれ。
 こんな雄二に俺は何て言ったらいいんだろう?
 頑張れよ、とか? すげえよ、とか。  
 だめだなあ。
 どんな言葉もすごく軽い気がして。

「おいおい。なんて顔してんだよ、貴明」

 だがそんな言葉と共に、俺は不意に肩を叩かれた。
 もちろん、雄二にだ。

122:河野貴明の卒業式9/19
08/10/25 20:13:02 mr2ziuLM0
「俺は、ちゃんと半年たったら帰ってくるさ。
 いままで俺とお前、十八年も付き合ってきた仲じゃねえか。
 それに比べたらたった半年だ」

 雄二はニヤリと笑ってそう言った。
 それはさっきまでの雄二とは違う、俺のよく知るガキっぽい雄二の笑顔だった。 

「半年たったら、また会おう。
 俺はそれだけを言いたくて、わざわざお前に会いに来たんだぜ」

 嬉しかった。ただ、素直に。  
 だから心から言えたんだと思う。

「ああ、また会おうな、雄二。元気でな。頑張れよ」 
「おう! ありがとな」

 堅く手を握り合って、幼馴染の親友と別れた。



 屋上を降りて校舎の方に戻ると、意外な二人が俺を待っていた。

「センパイ! 卒業おめでとうッス!!」
「……おめでとう」
「おお」
 
 眼鏡をかけたキツネっぽい娘と、ちょっと巨乳の元気な娘。
 山田さんと、そして吉岡さん。
 中学までこのみの同級生だった二人だ。

123:河野貴明の卒業式10/19
08/10/25 20:13:39 mr2ziuLM0
 わかりやすく言ったら、ちゃるとよっち。
 まさか今日、俺の卒業を祝いに来てくれるとは思わなかった。

「驚いたな、ふたりともわざわざ来てくれたんだ」
「当然ッスよ。だってセンパイがあたしたちの卒業式の日に迎えに来てくれたこと、忘れてないッスよ」
「義理と人情は大切。受けた情は忘れない」

 二人とも、そんなこと覚えていてくれたんだな。
 これは素直に嬉しかった。

「そんなセンパイの卒業を祝って……」
「祝って?」 
「”送る言葉”を歌います」

 山田さん……ちゃるはいきなりそう言った。
 歌うのかよ!ここで!!
 校門前だぞ? みんな見てるんだぞ?

「暮れ〜なずむ町の〜♪」

 歌ってるよ、マジで!
 とか、茶化すのも失礼なくらいちゃるはとても真剣に歌っていた。
 本気で歌っていた。周囲の目など気にもしていない様子だった。
 その歌からは、俺の卒業を祝ってくれる真っ直ぐな気持ちが感じられた。
 山田さんはどこまでも純粋な娘だ。
 でもそれだけにやはり恥ずかしい。

124:河野貴明の卒業式11/19
08/10/25 20:14:57 mr2ziuLM0
「ちゃる、空気読めないのもいいかげんにするッス
 センパイが困ってるッス!」
「そうなの?」
「い、いや、まあね。ちょっと恥ずかしいかな」
「ごめんね、センパイ……」
「ううん、ありがとう。でも、嬉しかったからさ。ほんと」
「うん。センパイがそう言うなら、よかった」
「まったくもう、ちゃるってば……」
「いや、ほんとありがとう。二人が見送りにきてくれたこと、すごく嬉しく思ってるよ」
「お世辞はいいッスから。 
 ほら、本命がセンパイのこと待ってるッスよ」
「本命?」
「このみに決まってるじゃないッスか」

 ああ、そうか。
 このみもやはり来てくれているんだな。でもなんでここに居ないんだ?

「なんでこのみは二人と一緒じゃないんだ?」
「なに言ってるんッスか。後でセンパイと二人っきりにするために決まってるじゃないッスか」

 ……なんか、それは余計なお世話だと言いたい。

「みなまで言うことないッスよ。最後なんだからこのみに言いたいこととかしたいこととか、いっぱいあるんじゃないッスか?」
「したいことってなあ……」

 何を言ってるんだ、この子は。

125:河野貴明の卒業式12/19
08/10/25 20:16:11 mr2ziuLM0
「ほら、アレとかアレとか、あるっしょ。
 ここであたしたちはおさらばするから、このみとよろしくやっるッスよ」
「アレ……って、何をすればいいのさ?」
「そ、そんなこと女の子言わせちゃだめッスよ!
 分かるっしょ? ア・レ!」

 わかんねえよ。

「ま、まさかセンパイ!アレがしたいとかいわないでくださいッスよ!
 駄目ッス!いきなりアレなんて! しかも外で!
 男はそれでいいかもしんないッスけど、女の子はいろいろ大変なんッスから!」 
「はあ……」

 アレアレっていわれても……
 代名詞ばかりで会話が全然分からない。

「そ、それじゃあアレはよしとくから」
「わかったならいいッス。せめて今日はアレとかアレくらいにしといてくださいッス。
 このみもセンパイも初心者なんッスから」
「ああ。わかった」

 本当はまったく意味が分からなかったが俺はそう言った。
 そうでもしないと、話がいつまでも終わらないと思ったから。

「じゃあ、そろそろ俺はこのみに会ってくるよ。あんまり待たせてもアレだろうし」
「それがいいッス」
「じゃあ、二人ともまたね」
「あ、ちょっと待つッス」
「?」


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