ToHeart2 SS専用スレ ..
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85:郁乃専用メイド4 5/6
08/02/25 00:05:22 jmESA6E70
気分も優れないまま午前の授業が終わる。
今日は何を食べようかしら。お弁当もないし学食かな。
黒板を背伸びして一生懸命に消しているこのみの後ろ姿をぼーっと眺めていたけど
クラスメートの呼び声で現実に引き戻される。

「小牧さーん!シルファさんって人が来てるよー!」

シルファ?何をしに学校へ来たのだろう。
どうでもいい事だったら張り倒してやるんだから。
朝の憤りを未だに抱えた私は、少し不機嫌そうに教室の入り口を伺う。
少し不安げな顔でシルファはそこにいた。

「なに?」
「あの、お弁当をお持ちしました。今朝持って出られませんでしたので」

朝、あれだけの罵詈雑言を浴びせたのにわざわざお弁当を届けてくれたのだ。
正直、受け取る気分ではないかったがクラスメートがみているここで、
そのまま追い返す訳にも行かなかった。

「そう。ありがと」

弁当箱を受け取り、そのまま踵を返す。
スタスタと去り行く私の背中にシルファは声をかけてきた。

「あの、郁乃様!今日のお夕飯は如何致しましょう?」

学校の教室そんな事を大声で叫ぶシルファ。
ホンっトに何考えてんのかしら!?私をさらし者にしたいのかしら。

86:名無しさんだよもん
08/02/25 00:05:29 5fGePlBp0
深淵

87:郁乃専用メイド4 6/6
08/02/25 00:05:42 jmESA6E70
「何でもいいわよ!」

そう怒鳴ってそのまま席に着く。もちろんシルファの方なんかは見ない。
まだ何か言いたそうな気配はしたが、諦めたのかクラスメートにお辞儀をして帰って行った。
事の顛末を知らないこのみが日直の仕事を終えて、トテトテとこちらに歩いてきた。

「郁乃ちゃん!一緒にお昼食べよ!」
「私、今日は学食だから」

未だに尾を引いていた私は少しつっけんどんに返す。
きょとんとしたこのみの表情を見て気がついた。
しまった…このみには何の非もないのに…。
でもそんな私の気持ちを知ってか知らずか。

「でもそれ、お弁当箱だよね?」

さらにしまった!隠すのを忘れてた。私とした事が。

「私はこれ食べたくないのよ。だから今日は学食」
「でもシルファさんが作ってくれたんでしょ?」
「だからよ。さっきわざわざ持って来てくれたわ。頼んでもいないのに」
「そんな言い方ダメだよ。あ、じゃあ私がそれ食べたい!」
「はぁ?いきなり何を。それに2つもお弁当食べれるなんてどんな胃袋してんのよ」
「さすがに私でも2つは食べれないよ〜」

ニコニコと笑っているこのみ。何が言いたいのかしら。

「だから、私のとお弁当交換しようよ。そうしたら無駄にならなくて済むでしょ?」

そういう事か。その提案は悪くない、と思ったので飲む事にした。
ただ単純にこのみがシルファの弁当に興味があっただけなのは、私が知る事はなかった。

88:名無しさんだよもん
08/02/25 11:15:56 yEAIT24w0
乙。
2chの書き込み時間表示ズレてる?

89:名無しさんだよもん
08/02/26 12:37:36 T6jtF68+0
ADでて落ち着くまでここは鳴かず飛ばずなんだろうなぁ。

90:名無しさんだよもん
08/02/26 12:41:20 gw5xBeXv0
静かだ…ネタバレ防止にここ封印しだす奴らが出てきてるんだろうな

91:名無しさんだよもん
08/02/26 13:44:14 fWziyWwPO
書きたいけど仕事が忙しくて書けませんorz

92:名無しさんだよもん
08/02/26 13:54:09 O47qMjMSO
>>91 自宅警備も大変だな
ガンガレよ

93:名無しさんだよもん
08/02/26 19:02:54 8pF8Kc8l0
完成させずに放置してるものは何本かあるんだけどな
うち1本はADでたら多分お蔵入り…

94:名無しさんだよもん
08/02/26 20:07:59 MEMhcRpD0
ああ俺もだ
ちゃるとよっちのふたなりレズとか
まーりゃんが世界征服する話とか
タマ姉の母乳プレイとか

アイディアがあっても文章が書けないってのは結構辛い

95:名無しさんだよもん
08/02/26 21:07:54 WkCoxSfS0
んじゃあ、漏れ的AD前ラストに超短編いくのん物いきまつ

96:悪夢 1/2
08/02/26 21:09:34 WkCoxSfS0
あたしは草原に立っていた。

見渡す限りの青野の果てに、頂を白く染めた山脈が小さくもはっきりと見える。
はっきりと? あれ、おかしいな。あたしの眼が遠景を綺麗に映すわけがないのに。

歩き出す。それも変。立つのがやっとで、立ったら痛いあたしの脚が。
痛くない。走る。痛くない。跳ねる。身体が軽い。呼吸が軽い。鼓動が軽い。あたし、死んだかな。

(死んでなければ、夢ね)
嫌だなぁ可愛くない。いいじゃない、夢なら夢で。あたしは駆けだした。

景色が疾風のように流れる。あはは、夢ね。これじゃ車からの景色だわ。
でも、そのまま空を見上げて走る。陽の光が眩しくない。雲が綺麗。こんな風景、昔テレビで見たかなあ。

キキーッ。
道路もないのに車がやってきた。パパとママ。
(郁乃、病院に行くわよ)
なんだ。やっぱり。治ってないんだ。ちょっとがっかり。でも、これは凄く良い寛解じゃないかしら。

病院に着く。車を降りて、廊下を行儀悪く小走り。もう、こんなに元気なのに、診察なんて。
(検査、嫌だなあ、時間かかるし)
拗ねて見せたら、両親は顔を見合わせた。はいはい、似合わないのは分かってるわよ。
(本当に、お前は優しい子だな)
何それ。
(自分の事みたいに感じているのね。……の病気を)

えっ?

病室の扉が開く。いつものあたしの病室。あたしの、いつもの、あたしの、ベッド、あたしの、そこで、弱々しく、身を起こす、あたしの……
「あっ、郁乃、来てくれたんだ」

―お姉ちゃん。

97:悪夢 2/2
08/02/26 21:11:06 WkCoxSfS0
 
「っ!」
がばっと身を、起こす体力はなくて、せいぜい身体がビクってなったくらい?
「……夢、か」
醒めた瞬間は明瞭だった気がする意識は、寝起きで朦朧としてからもう一度覚めてくる。

「どうした。喰おうとしたうまか棒に足が生えて逃げられる夢でも見たか?」
枕元で、声がした。
「……なんでそう限定して思うのよ」
天井を向いたまま、河野貴明の軽口に呆れるあたし。
「酷い顔してるからさ」
う、レディーの寝顔を観察してるなんて不躾な奴。
「今日は、アンタ一人?」
「ふっ、たまには妹を慰めてやるのもお兄ちゃんの務めかと思ってさ」

「―、ぅ、」
あたしは無言でナースコールに手を伸ばしかけて、痛む腕に顔をしかめた。
「冗談だよ。愛佳もすぐ来るって。っつーか、大丈夫かおい?」
「良かった。腕が痛い」
「だから冗談を真に受け……なにが良かったって?」

腕が痛くて、良かった。
相変わらず病気のままで、良かった。
相変わらず病気なのがあたしのままで、お姉ちゃんじゃなくて、良かった。

そんな格好悪い事は、あたしは言わない。黙って腕を顔に被せる。
だのに、貴明はその上から髪を撫でてきて。

「本当に、どんな夢を見てたんだよ」
うるさい、年ひとつしか違わない姉の彼氏の癖に、いつも子供扱いばっかして。
「……病気が、治る夢」
それでも何故か、仏頂面で答えてしまったあたしはポツポツと、貴明に心を吐き出してゆくのだった。

98:名無しさんだよもん
08/02/26 21:13:42 WkCoxSfS0
以上こんだけで失礼。かなり前に書いたSS中で使ったネタを起こしてみました
漏れの中のいくのんは、こんな感じなんだよなぁ……これがADでどうなるかな

99:名無しさんだよもん
08/02/26 22:22:47 O47qMjMSO
>>98 看護婦とイチャイチャしてんだろなw


100:名無しさんだよもん
08/02/27 00:46:25 6LO/iK0i0
>>98氏にあやかって
俺もなげっぱだったのを仕上げてみたので投下してみる

15レス程度あるんで、途中で止まったら去るさんだと思ってちょ

101:はじめてのおつかい 1/15
08/02/27 00:47:22 6LO/iK0i0
 寒さも厳しくなり、今年も残り少なくなった12月3日の事だった。
「たかあき〜お茶が入ったよ。」
 そう言いながらキッチンから顔を覗かせたのは河野家の居候その1のミルファだった。
 手に持ったお盆には暖められたカップとティーポットとお茶請けが乗っている。
 ミルファが鼻歌交じりで貴明の待つテーブルの前へと歩いている途中、ソファの横を
通ったときにミルファとは別の、形の良い足が一本ミルファの足元へひょいと突き出された。
「わっ!」
 突き出された足に驚いたミルファがたたらを踏む。その隙を突いてミルファの手から
お盆をするりと奪い取ったのは、河野家の居候その2のシルファだった。
「…ろうぞ…なのれす。」
 お盆を奪われてむっとしたミルファのことなどそ知らぬフリで、シルファはティーカップを
貴明の前に置いてティーポットから熱いお茶を注いだ。
 そして…その一部始終を見ていた貴明は頭を抱えた。


    はじめてのおつかい


「どうして二人ともそんなに仲が悪いんだよ…」
「あたしは悪くないよ。貴明のお世話しようとするとシルファが邪魔するんだもん。」
「…ご主人様のお世話はシルファのお仕事なのれす。
 お姉ちゃんは邪魔しないれくらさい、なのれす。」
 睨むミルファと、視線をそらしたまま膨れるシルファ、そして頭を抱える貴明だった。

 そもそも二人がなぜ河野家に居ついてしまったのかというと、話は少し前に戻る。
 夏も終わり、そろそろ秋という頃に貴明は珊瑚の頼みでHMX−17姉妹の末っ子の
シルファを預かって、メイド修行の面倒を見ることになった。
 そして、それに時期をあわせるようにして現れたのが謎の転校生「河野はるみ」こと
ミルファだった。
 ミルファもまた、紆余曲折を経て自分の正体を明かし、貴明の元に身を寄せることに
なったのだが…


102:はじめてのおつかい 2/15
08/02/27 00:49:03 6LO/iK0i0
 元々貴明の元でメイドとして暮らしていたシルファと、そこに割り込んで貴明専属の
メイドを標榜するミルファとの間で利害の衝突が発生することとなり、日を追うごとに
「貴明のお世話権」を巡る争いは激化する一方だった。
 別に仲が悪いわけではない。むしろ姉妹仲はいいのだが、こと貴明のこととなると
互いに譲らないので結果的に大喧嘩になってしまうのだった。

「はぁ…うわさ以上のえげつなさやな。」
「みっちゃんもしっちゃんも、喧嘩したらあかんよ〜」
 うわさを聞いて様子を見にやってきた姫百合姉妹は、噂の斜め上を行く有様を見てそれ
ぞれに苦言を呈して見せたが、相変わらずメイドロボ姉妹に反省の色は見られなかった。
「別に喧嘩してないよ。ただシルファがたかあきのお世話をさせてくれないから」
「…河野家の家事一切はシルファのお仕事なのれす。お姉ちゃんは学校に行ってる間らけ
 ご主人様のお世話すればいいのれす。」
「えー、あたしだってたかあきにお料理作って食べさせたりしてあげたいもん。」
「もう、いい加減にしてくれ…」
 うんざりした口調で貴明は言い争いを始めた姉妹を止めた。
「さんちゃん…どっちか家につれて帰ったほうがええんちゃう?」
「でもなぁ…二人とも、貴明のことすきすきすき〜やし。」
「そうです。あたしはここがいいんです。」
「ここはシルファの仕事場なのれす。
 …お姉ちゃんはご主人様と学校に通ってるらけなんれすから、珊瑚様のマンションに
 住めばいいのれす。」
「い・や。あたしが家のこともやればいいんだから、シルファこそ珊瑚様の所に行けば
 いいのに。珊瑚様にいつも甘えられるほうがいいでしょ。」
「あーもう!いい加減にしろ!」
 耐え切れなくなった貴明が声を上げた。
 普段極力我慢して怒鳴らない貴明が大声を上げたことにミルファとシルファ、それに
珊瑚と瑠璃もびっくりして言葉を失い、目を丸くしていた。
 貴明は電話台にあったメモ帳を手に取ると一筆筆を走らせて1枚破り取った。
「今日は罰として二人でお使いに行ってくること。俺が頼んである品物を取ってきて。
 内容はこのメモに書いてある。品物はシルファが受け取ること。ミルファはシルファの
 付き添い。」

103:はじめてのおつかい 3/15
08/02/27 00:51:03 6LO/iK0i0
 畳み掛けるように言ってメモをシルファに差し出したが、シルファはメモを受け取ろうとはしなかった。
「でも…シルファは外には…」
 シルファは河野家での生活でメイドロボとしてはかなりのスキルを発揮するように
なっていたのだが、未だに人見知りが激しく、外出することはままならなかった。
 そんな妹のことを慮って、外出の必要な用事はミルファが済ませるように自然と役割
分担がなされていたのだが…
「外に行く用事ならあたしが、」
「今回はシルファに行ってもらう。ミルファはあくまで付き添いだからな。」
 少しの間、ミルファと貴明はにらみ合っていたが、貴明が本気だと悟ったミルファは
諦めて視線をそらした。
「…わかったよ。シルファ、メモを受け取って。」
 ミルファに言われてシルファはしぶしぶメモを受け取った。
 シルファを適当に隠れさせておいて自分がひとっ走り行って用事を済ませればいいか、
とミルファは考えていた。
 だがそんなことはお見通しだったようで、貴明はしっかりと釘を刺すことを忘れなかった。
「…言っておくけど、後で店に電話して二人で来たか聞いておくから、ズルしてもわかるぞ。
 ずるした場合は家に入れないからな。」
「む〜!たかあきのいじわる〜!」
 そう言ってミルファはばたばたと暴れだしたが、貴明は青い顔をしているシルファ共々
首根っこをつかんで引きずり出し、玄関からそのまま表に放り出した。
 続けて二人の靴も放り出し、ドアを閉めて施錠してしまった。
『ああっ!ひどい!たかあき開けてよ。』
 どんどんとドアを叩く音と共にミルファが大声で文句を言ってきたが、貴明は耳を貸さなかった。
「おつかいを済ませて戻ってきたら家に入れてやる。それまではダメ。」
『たかあきのオニ!悪魔!人でなし!』
「人でなしで結構。」
 貴明はミルファの抗議を無視してリビングに戻った。

「…シルファ、おつかいに行こう。そうしないと本当に家に入れてもらえないみたい。」
 しばらくドア越しに叫んでは見たものの、無駄だと悟ったミルファは青い顔で座り込んだ
ままのシルファに手を差し出した。


104:はじめてのおつかい 4/15
08/02/27 00:53:03 6LO/iK0i0
 シルファはしばらく泣き顔でうつむいていた…涙が出るなら実際泣いていただろう…が、
一つ頷くと立ち上がって、転がっていた靴を履いた。
「さっさと行って帰ってきてたかあきに謝ろう。」
「うん…お姉ちゃん。」
 ミルファは少しでもシルファの不安感を紛らわそうと手を繋いで、そして門を出て歩き出した。

「…貴明も結構オニやなぁ。」
 貴明とリビングの窓から二人が歩いていくのを見ていた瑠璃が先ほどのやり取りを思い出して、ぼそりとつぶやいた。
「瑠璃ちゃんまでひどいなぁ…二人で話し合って欲しかっただけだよ。
 …それと、時間かせぎにもなったでしょ。」
 そう言って貴明は瑠璃に肩をすくめて見せた。そして珊瑚のほうに振り向いた。
「珊瑚ちゃん。今のうちにイルファさんに連絡を。」
「おっけーや。」
 そう言うと珊瑚は河野家の電話で姫百合家に待機しているはずのイルファへ連絡を取り始めた。
 貴明はそれを見届けると、まだミルファたちを見送っていた瑠璃のほうに振り返って話しかけた。
「瑠璃ちゃん。」
「なんや?」
「そんなに気になるなら、俺たちはあの二人に付いていってみようか。」
 貴明は家から遠ざかっていくミルファたちを指差して言った。

                   ◇

 最初のほうこそ手を繋ぐ程度だったが、しばらく歩くうちにシルファはミルファの腕に
しがみつくようにして歩く様になっていた。
 視線は泳ぎっぱなしで、歩く姿もどこか腰が引けている。
 ミルファはそんなシルファを気遣いながらゆっくりと歩いていた。
「まだ他人は怖い?」
「…うん。」
 シルファの中では、表の世界はまだ好奇心よりも恐怖心が勝っているのだ。
 ミルファはぎゅっと左腕にしがみつくシルファの手に右手でそっと触れた。
「確かに外には悪い人や怖い人もいるけど、でもいい人もいっぱいいるよ。」
 そう言って、ミルファは笑顔を見せた。

105:はじめてのおつかい 5/15
08/02/27 00:55:04 6LO/iK0i0
「あたしはたかあきと学校に通ってるけど毎日とっても楽しいんだ。
 学校でいっぱい人間の友達が出来て、友達が増える度にあたしの世界も広がって行くの。」
 楽しげ答えるミルファの顔を、シルファはまぶしそうな表情で見ていたが、
「…お姉ちゃんが羨ましいれす。シルファには、研究所とご主人様のお家らけ。」
 そう言って、シルファは視線を落とした。
 その言葉を聞いて、ミルファはふと気が付いた。
「…もしかして、あたしが家の事するの嫌がってたのって…」
「…お姉ちゃんがご主人様のお世話すると、シルファの居場所がなくなっちゃうのれす。」

 元々人見知りの強いシルファにとって、河野家は自分が「メイドロボ」としての意義を
証明できる数少ない場所だった。
 「メイドロボ」ではなく「娘」として扱われる研究所では得られないそれを奪われるのは、
自分の存在意義を左右する大問題といっても良い。
 だがミルファはそれとは違う見方を持っていた。

「ねえ、シルファ…たかあきは私たちの事、ロボットじゃなくって普通の女の子と同じ
 ように見てくれてるってわかってるよね。珊瑚様だって、私たちの事をメイドロボ
 としてじゃなくて、友達や家族になって欲しいから心を与えてくれたんだし。」
 メイドロボとして自分の存在意義を見出そうとしていたシルファに、ミルファは自分の
思いを話し始めた。
「私はね、そんなたかあきの気持ちが嬉しいんだ。
 …メイドロボとしてじゃなくて、女の子としてたかあきの事が好きだから。
 だから、あたしはメイドロボとしてじゃなくて、たかあきが一緒にいたいと思ってくれる
 女の子になりたいの。」
 そう語るミルファの横顔は笑顔だったが、同時に少し寂しげだった。
「…お姉ちゃんは、ご主人様の恋人になりたいのれすか?」
「うーん…なれるならなりたいけど、でも私たちはやっぱり人間じゃないから
 …私たちがいくら人間と同じ心を持ってても、本物の人間にしか出来ない事ってあるし。」
 シルファの疑問にミルファは苦いものを含んだ笑みを浮かべながら答えた。
「…シルファには、お姉ちゃんの気持ちは解らないのれす…れも・・・」
 シルファはあまり豊かとは言えないボキャブラリーを総動員して必死に慰め始めた。


106:はじめてのおつかい 6/15
08/02/27 00:56:06 6LO/iK0i0
「れも、さっきお姉ちゃんが言ったのれす。ご主人様はシルファたちの事普通の女の子と
 同じように見てくれるっれ…それなら…少しは期待してもいいと思うのれす。」
「シルファ…」
 少し照れながらも一生懸命な言葉に、ミルファは感極まってシルファをその胸に抱きしめた。
「もうっ、シルファってばかわいい〜〜」
「お、お姉ちゃん、苦しいれすぅ!」

「あの二人…道の真ん中で恥ずかしいことを…」
 こっそりとミルファたちの後をつけていた貴明は、道の真ん中で抱き合ってはしゃぐ
二人を見て、頭を抱えた。
 一方、一緒に二人をつけてきていた瑠璃のほうは複雑な面持ちだった。
「…どうしたの、瑠璃ちゃん。」
「…ウチには、シルファの気持ちがなんとなくわかるねん。うちもイルファが来た時は、
 同じ事思うとったから。」
「あ…」
 瑠璃が家出して河野家にやってきたときのことを思い出して、貴明は思わず声を漏らした。
 それは解決した過去のこととはいえ、今でもデリケートな事柄には違いなかった。
「えっと…」
「ウチとイルファは今は上手くやっとる。貴明のおかげでな。…貴明がおらんかったら、
 イルファは研究所に戻って、ウチはさんちゃんにも合わせる顔がのうなって、今頃
 どうなっとったかわからへん。」
 そう言ってから、ちょっと頬を赤らめて瑠璃は言った。
「…うちらにとって、貴明は恩人…ううん、大事な人やねん。そやから、」
「そやから?」
「ミルファとシルファのことも任せられるねん。あの二人にはウチにも責任あるからな。」
 そう言う瑠璃の眼差しは母親のそれだった。
 イルファたち3人を生み出した母は珊瑚だが、3人を日向へと連れ出した瑠璃もまた
イルファたちにとって母親なのだから。
「そやから、あの二人泣かしたりしたらしばく。」
 だがしかし、最後にいつもどおりの一言も忘れなかった。
「解ってるさ。俺も二人のことは大事に思ってるからね…でもできればちょっと失敗しても
 蹴ったりしないでくれると良いな…あ、商店街に着いたよ。」

107:はじめてのおつかい 7/15
08/02/27 00:58:04 6LO/iK0i0
 貴明が指差した先では、ミルファとシルファが夕方の賑わいはじめた商店街のアーケードの
中へと消えていくところだった。

                   ◇

 シルファは買い物客が横を通り過ぎるたびにびくびくしていたが、ミルファは慣れたもので、
顔見知りの買い物客とすれ違うと笑って答えていた。
「あら、ミルファちゃん。今日もお買い物?」
「あ、こんにちは。今日は妹の付き添いなんだ。これが妹のシルファ。」
「…こ、こんにちわ、なのれす。」
 おずおずと挨拶すると、そのおばさんはくしゃくしゃの笑顔で答えた。
「はじめまして、シルファちゃん。今日はあなたがお買い物?がんばってね。」
「は、はい。」
 おばさんはシルファの頭を撫でて去っていった。
「…お姉ちゃん、あの人は誰れすか?」
「名前とかはしらない。でもお買い物に来ると良く会うんだ。いい人でしょ?」
「やさしそうな人なのれす…でも、良く知らない人と知り合いになれるなんて、シルファ
 には想像も付かないのれす。」
 感心したようなシルファの言葉を、ミルファは首を振って否定した。
「ううん。あった瞬間に仲良くなれるわけじゃないよ。何度もお買い物に来るうちにどんな
 人かわかって自然に仲良くなっただけ。まるっきり知らない人と仲良くしてるわけじゃないもん。
 難しいことをしてるわけじゃないよ。シルファだって、ちょっと勇気出せばきっと友達に
 なってくれる人はいるよ。」
「勇気…」
 そう呟きながらシルファは考え込んだ。
 果たして、それが自分にもできるのだろうか、と。
「あ、1件目は金物屋さんじゃなかったっけ?金物屋さんはここだよ。」
 そう言って、ぶつぶつと呟きながら歩いていたシルファの手を引いていたミルファが
立ち止まった。
 顔を上げるとそこは貴明に貰ったメモの1件目の金物屋の前だった。


108:はじめてのおつかい 8/15
08/02/27 01:00:04 6LO/iK0i0
「おう、ミルファちゃんいらっしゃい。」
 二人が店に入ると、人のよさそうな店番のおじいさんが声をかけてきた。
「こんにちわ〜…ほら、シルファ。」
「は、はい、なのれす。」
 おずおずとミルファの後ろから前に出ると、シルファはおじいさんに声をかけようとして、
でもなかなか最初の一言が切り出せなかった。
「…あんたがシルファちゃんだね。」
「ろうしてシルファの名前を知っているのれすか…」
「さっき河野さんとこから電話があったからね。この間頼んでいったものを取りにお使い
 に来たんじゃろ?」
 そう言うとおじいさんはレジの下の棚から手のひらサイズの平べったい箱を一つ取り出した。
「ほい、ご注文の品物。お代は先にいただいとるから要らないよ。」
「は、はい…あ、あの…」
「なんじゃね?」
 シルファは喉元で消えそうになる言葉を、勇気を振り絞って口に出した。
「あ、ありがとう、ございます、なのれす。」
 詰まりながらもそう言って、深々と頭を下げた。
「そんなにかしこまらなくても良いんじゃよ。こっちもこれが商売だからね。」
「そ、そうなんれすか…?」
 人と触れる事を恐れ、避け続けていたシルファにはどうもさじ加減が解りかねた。
「シルファはあんまり人付き合いしたこと無いから、ちょっと大げさなの。
 ごめんねおじいちゃん。」
「いやいや。」
 ミルファのフォローにおじいさんもからからと笑って答えた。
「でも、たかあき一体何頼んだのかな?」
「ああ、そうじゃった。」
 ミルファの一言で店主は思い出したのか、ぽんと一つ手を打って言った。
「中身を教えちゃイカンと言われたんじゃった。もちろん、見てもいかんそうじゃ。」
「え〜〜…ちぇっ。たかあきのけちんぼ。」
 この場にいない貴明に一つ文句を言って、ミルファはきびすを返した。
「じゃ、シルファ、次に行こう。おじいちゃん、また来るね。」
「ああ、毎度。」

109:はじめてのおつかい 9/15
08/02/27 01:02:03 6LO/iK0i0
 シルファもミルファに促されて出口へと足を向けた。
 そのシルファの背に、店主が声をかけた。
「シルファちゃん。またきておくれ。」
 シルファが振り向くと、店主の老人は笑って手を振った。それを見たシルファも、
少しだけ笑って、ぺこりと一つ頭を下げて店を後にした。

 次のお使い先は、同じ商店街にある洋服屋だった。
 洋服屋といってもブティックのようなものではなく、普段着やTシャツ、下着、靴下、
それに学校の制服といった物を扱う地元の洋品店といった趣の店だ。
 二人はそんな店の入り口をくぐって、色とりどり布の間を入っていった。
「こんにちわ〜」
「こ、こんにちわ…なのれす。」
 シルファは先ほどよりも幾分積極的に…といってもやっぱり体の1/3ぐらいはミルファの
陰に隠れたままだったし、少々腰が引けていたが…店に入った。
「あらあら、ミルファちゃん。きょうも彼氏のパンツでも買いに来た?」
「ぱ、ぱんつ…」
 店主の中年の女性が言った言葉にシルファはちょっとショックを受けて赤くなっていたが、
ミルファはなれたものだ。
 実際、貴明の靴下や下着を買いに来ることもあるので別に色っぽい意味で言われたわけではない。
「もー、おばさんったら。今日はそっちのお買い物に来たわけじゃないの。」
「ほほほ。解ってるわよ、さっき電話があったから。妹さんの付き添いでしょ。」
 そう言ってミルファの後ろに立っていたシルファを見た。シルファははっと我に帰ると
わたわたとミルファの前に進み出て、おずおずと口を開いた。
「え、えっと…河野貴明様のご指示れ、荷物を受け取りに来たのれす。」
「へえ…あなたがシルファちゃんね。」
 おばさんはシルファを値踏みするように頭の天辺から足の先まで見回すと、
 いきなり近づいて首から提げていたメジャーでシルファの体を採寸し始めた。
「え、えっと、あのあのあの…な、何れすか?」
肩から袖口までの長さをはかり、身長をはかり、バストとウエストを素早く測ると、何事か
納得したように頷いた。
 一方、突然体中測られたシルファは今にもなきそうな顔だった。
「し、シルファ…」

110:はじめてのおつかい 10/15
08/02/27 01:04:04 6LO/iK0i0
「あ、あら、ごめんなさいね。ちょっと確かめたかったものだから、つい。」
 おばさんもシルファの表情に気が付いて謝罪した。謝りながら、自分の子供にするように
シルファの頭を優しく撫でた。
「…」
 泣きそうな顔だったシルファが、頭を撫でられるにつれて、表情が和らいでいった。
 そして店主の顔を見ると、店主はにこっと笑っていった。
「いつもの仕事の癖でついつい…ごめんなさいね。」
「いえ…シルファも…ごめんなさいなのれす。」
 店主はその言葉に一つ頷くと、店の奥へと一度引っ込んだ。
 次に出てきたときには一つ大きな箱を抱えていた。服などを入れる平べったい箱だ。
「はい、ご注文の品。お代は貰っているから。今袋に入れるわね。」
 そう言って大きな紙袋に入れるとシルファに差し出した。
「ハイどうぞ。」
「あ、ありがとう、なのれす…」
 先ほどのお店ではバカ丁寧すぎたが、少し慣れたのか今度は深々としたお辞儀はせずに
軽く頭を下げた。
「あ、そうそう。中身は見ちゃだめだそうよ。」
「え〜〜、また?」
 ミルファが不満の声を上げた。ミルファは中身に興味津々だったが、大好きな貴明に
しかられるリスクを考えると諦めざるを得なかった。
「見ちゃダメって言われると見たくなっちゃうよ…シルファ、早く帰ってたかあきに中身
 見せてもらおう。」
「うん。」
「それじゃ、おばさん。またね。」
 そう言ってミルファは店から出ようと出口に向かって歩き出した。そしてシルファも
それに続こうとしたのだが、
「ああ、待ってちょうだい。」
 店主に呼び止められてシルファは振り返った。
「ちょっと後ろを向いてもらえるかしら。」
 そういわれてシルファは後ろを向くと、店主はシルファのお下げの先に、店先に並べてあった
リボンを1本とって結びつけた。
「わ…」

111:はじめてのおつかい 11/15
08/02/27 01:06:03 6LO/iK0i0
 金髪のお下げの先に結び付けられたリボンはシルファの瞳と同じグリーンだ。
「さっきのお詫びよ。また来て頂戴。今度は私にあなたの服を見立てさせてちょうだいな。」
 そう言って、店主の女性が微笑むと、シルファもまた笑顔で頷いた。

「どう?結構良い人だったでしょ。シルファも外に出るようになれば、自然といろんな人と
 仲良くなれるよ。」
 入り口で待っていたミルファがそう言うと、シルファは少し考え込んで、そして思い切って
自分の望みを口にした。
「お姉ちゃん。あのね、シルファは…行きたいところがあるのれす。」

「何とかお使いも済んだようやな。」
 洋服屋から紙袋を抱えた二人が出てきたのを少し離れた場所から見届けていた瑠璃が、
ちょっと安心したように言った。だが二人は店の前で一言二言言葉を交わすと、来た時とは
反対方向に向かって歩き出した。
「どこ行くんやあの二人。行き先は貴明の家のほうやないな。ウチらのマンションでも
 なさそうやし。」
「ちょっと寄り道でもしていくのかな?…まあ、ミルファが付いてるから大丈夫だと思うよ。
 それより俺たちも戻ろう。先に戻らないとつけてたのばれちゃうし。」
「そやな。」
 貴明に促されて、瑠璃は一度だけミルファたちの後姿を見送って、河野家への帰途に着いた。

                   ◇

 長く続く坂を上って、二人は学園の校門前に立った。
 ミルファが貴明たちと通う学校を、シルファが見たがったからだ。
 シルファは校門から一歩足を踏み入れて、学園の校舎を見渡した。
 遠くからは部活の生徒のものらしい掛け声も聞こえてくる。
「ここがご主人様とお姉ちゃんが通ってる学校れすか…」
「ねえ、シルファも一緒に通ってみない?
 あたしもたかあきもいるし、きっと新しい仲間が出来ると思うんだ。」
 そう言ってから、ミルファはぺろっと舌を出した。


112:名無しさんだよもん
08/02/27 01:06:15 DthGUEaE0
支援

113:はじめてのおつかい 12/15
08/02/27 01:08:03 6LO/iK0i0
「それにね、本当は私がシルファと一緒に学校に通ってみたいんだ。
 姉妹で通えたら楽しいと思って。」
 自分を囲む貴明とミルファと人間の友達…それはシルファにとって恐ろしくもあり、
そして好奇心を刺激する、魅力的な未知の世界にも思えた。
「…シルファにも、お友達出来るれしょうか。」
「うん!だから珊瑚様にお願いしてみよう?学校に通えたら、きっと楽しいよ。」
 そう言うとミルファはシルファの手を取って走り出した。
「そうと決まったら膳は急げってね。早く家に戻って珊瑚様にお願いしなくっちゃ。」
「お、お姉ちゃん、危ないのれす!」
 まるで弾丸みたいな勢いでミルファが坂道を駆け下りてゆく。
 シルファは倒れそうになりながらもそれについて走り出し、そして坂道から見渡せる
町並みに目を奪われた。
「…きれいなのれす。」
 夕暮れに染まった秋の町並みに、シルファは知らず知らずのうちにそんな言葉を漏らした。
 そして…まだまだ自分の知らない世界を見てみたい…安全な狭い世界だけを望んでいた
シルファの中で、そんな思いが芽生え始めた。

                   ◇

 かなりのスピードで街中を駆け抜けて、二人は河野家に帰りついた。
「ただいまぁ。お使い行ってきたよ。」
「はいはい。お帰り。」
 そう言ってドアを開けた貴明はにこやかで、まだ怒っているかと気にしていた二人は
ホッと安堵した。
 二人が靴を脱いでいる間に、荷物を受け取った貴明は先にリビングに戻っていった。
 ミルファは玄関にまだ珊瑚と瑠璃の靴があることを確認して、シルファに言った
「まだ珊瑚様たちいるから、一緒にお願いしよ。」
「うん。」
 シルファは一つ頷いた。二人でリビングのドアを開けて、中へと入った。すると、

「「「「ミルファ!シルファ!お誕生日おめでとう」」」」

114:はじめてのおつかい 13/15
08/02/27 01:10:04 6LO/iK0i0
「わ、な、何?」
 リビングでは貴明と、珊瑚、瑠璃、そしてイルファが待っていた。
「え?お誕生日?」
「みっちゃんは今日誕生日やろ、明日はしッちゃんの誕生日。だからおいわいや〜」
 そういわれてミルファが今日の日付を確認した。たしかに自分の誕生日だった。
「お祝いの準備するのに二人を何とか家から遠ざけておきたくて、ちょっとお使いに行って
 もらってたんだ。ごめんな。」
 そう言って貴明は二人に謝った。よくよく見れば部屋の中も色々飾り付けられていた。
 やりすぎ感漂う「ミルファ・シルファお誕生日おめでとう」の大段幕まである。
 そんな中でミルファとシルファは進められるままにいすに座って誕生日パーティが始まった。

「じゃ、これは俺からのプレゼント。」
 そう言って貴明が取り出したのは、小さな箱だった。
「あ、それさっきの、」
「そう。二人に取りに行ってもらったものだよ。」
 箱を開けると、中から出てきたのはクマと小鳥のキーホルダーの付いた2本の鍵だった。
「何をあげようか迷ったんだけど、二人にはこれがいいと思ったんだ。」
 そう言って貴明はくまのキーホルダーが付いた鍵をミルファに、鳥のキーフォルダーが
付いた鍵をシルファに差し出した。
「これは家の鍵。…二人は俺にとって家族だから、その証。」
 家の鍵は家族に与えられるもの。貴明はそれを二人をただのメイドロボではなく、家族
として認める意思表示として用意したのだった。
「たかあき…あたしこれ大事にするよ。」
「し、シルファも、大事にするのれす。」
「そう言ってくれると嬉しいかな。」
 目を輝かせたミルファとシルファの様子に貴明は満足して笑って答えた。
 が、姫百合家の皆さんは不満だったようで、、
「あー、ウチも欲しい〜」
「う、ウチは別に要らへんからな…どうしてもっちゅうなら受け取らんでもないけど。」
「あー…考えとくよ。」
 それぞれに要求されたが、貴明は苦笑いして即答を避けた。


115:はじめてのおつかい 14/15
08/02/27 01:12:09 6LO/iK0i0
「あ、そうだ!珊瑚様」
 プレゼントを受け取って幸せに浸っていたミルファが我に帰って、珊瑚の手を取った。
「ん〜?なんや、みっちゃん。」
「一つお願いがあるんです。誕生日のお願いです。」
 そう言って、きょとんとしていたシルファの肩を引き寄せると珊瑚に言った。
「シルファもあたしと一緒に学校に通わせてあげてください。」
「…しっちゃん、学校に行きたい?」
 母親のような優しい雰囲気で、珊瑚はシルファの顔を見て聞いた。
 シルファはしばしその珊瑚の視線を受け止め、考えて、そして答えた。
「シルファも…もっとお友達が欲しいれす。」
「…そっか…しっちゃん、強うなったな。」
 そう言って、珊瑚は貴明のほうを向いていつもの蕩けるような笑顔で笑った。
「たかあき、プレゼント無駄にならんかったな。」
「そうだね。…シルファには、これもプレゼント。」
「え、それもさっき受け取ってきた箱じゃない。」
 貴明が取り出したのは、さっき洋服屋で受け取った大きな箱だった。
「開けてごらん。」
 そういわれて、シルファは受け取った箱を開いた。
 中に納まっていたのは目にも鮮やかな桜色のセーラー服。貴明たちの学園の女子制服
だった。
「珊瑚ちゃんたちと相談してたんだ。でもシルファが受け取ってくれるか不安だったんだけど…
 学校に行く気になってくれたのはミルファのおかげかな?」
 そう言うと、ミルファは少し赤くなって照れたようだった。
「そ、そんな事…あたしは、シルファと学校に行けたら楽しいなって、そう思っただけだから。」
「貴明様…珊瑚様、瑠璃様、ありがとうなのれす。」
 そう言ってセーラー服を抱きしめるシルファは本当に嬉しそうだった。

「…いいですねぇ。ミルファちゃんもシルファちゃんも。」
 皆が盛り上がってる横で、今まで沈黙を守っていたイルファさんがそんなことを言って
はぁ、とため息をついた。
「二人とも貴明さんや瑠璃様珊瑚様と一緒に学校に通って、貴明さんの家に家族として受け
入れられ…しょせん年増は飽きられてしまうものなんですね…」

116:はじめてのおつかい 15/15
08/02/27 01:16:06 6LO/iK0i0
 イルファはいつの間にかシルファの引きこもりの定位置である部屋の隅のダンボールに
引きこもっていた。
「いや、年増って…イルファさんだってミルファたちとそんなに変わらないでしょうに。」
「いいえ、私は家で独り寂しく家事をしながら、瑠璃様の帰りを待つのだけが楽しみの
 しがない旧型メイドロボですから。」
「…」
 すっかりすねてしまったイルファに貴明は二の句を告げなくなってしまった。
 そんな空気を読んだのか読まなかったのか、珊瑚がイルファに言った。
「ほんなら、いっちゃんも学校に通う?」
「え、私もですか?」
 珊瑚の言葉にイルファはぱぁっと顔を輝かせたが、すかさず瑠璃の一言がイルファの
 気分に水をさした。
「却下や却下。学校でまでイルファにまとわり付かれたないわ。」
「そんな…瑠璃さまぁ〜」
 なんだかいつもの姫百合家の風景が繰り広げられる横で、あきれていた貴明の右腕をついつい、と引っ張る者がいた。いつの間にか横に来ていたシルファだった。
「ご主人様、これからはクラスメイトとしてもよろしくお願いします、なのれす。」
「ああ、良いけど…代わりにひとつお願い。」
「?…何れすか?」
 きょとんとした顔のシルファに貴明は答えた。
「ご主人様、じゃなくて貴明。クラスメイトなら名前で呼んで欲しいな。」
 その希望に、シルファは少し赤くなってもじもじして…しばらくして顔を上げて、飛び切りの笑顔で答えた。
「どうぞよろしく、貴明さん…なのれす。」


117:名無しさんだよもん
08/02/27 01:19:23 6LO/iK0i0
というわけで、姫百合姉妹エンド後AD風味という内容でした

読んでわかるとおり、元々ミルシル誕生日SSとして書き始めたものだったんですが、
結局間に合わず、挙句まとめきれずにしばらく放置してたものです。

間で何度か加筆を繰り返していたのですが、今日改めて見直して書き上げました。
特に間でキャラの詳細の雑誌発表を挟んだせいでシルファの台詞は大幅に書き直ししています。

ともあれ明々後日0時にはADも発売されるので、これでミルシルはリセットですね。

118:名無しさんだよもん
08/02/27 03:01:38 /abFfBvf0
リセットって聞くと山瀬が思い浮かぶな
怪我なく代表を引っ張って欲しいぜ…

119:名無しさんだよもん
08/02/27 06:20:25 dJqPvSx60
>117
乙〜。俺はシルファに関しては今はイメージが無くなってるや。キャラ紹介の寡黙って設定と「なのれす」口調が統合できなくてw

120:名無しさんだよもん
08/02/27 10:33:40 0mapngUd0
>>96-97
乙。
小牧姉妹と旅行の人だよね。
俺あのSS好きです。

・・・・最初あれのパクリかと思ってごめんなさい・・・。

121:名無しさんだよもん
08/02/27 14:49:42 uaT8AOdn0
>>117
乙&GJです

ミルファはそう極端に変わらないかもしれないけど、シルファに関してはまったくの白紙と言ってもいいような気がするモンな。
いずれにせよ限られた情報の中でうまくほのぼのした話になってて面白かったっす。
アフターADもがんばりましょーね。

122:名無しさんだよもん
08/02/27 22:14:27 WagovQFB0
>>117
乙〜

ミルファはシルファに比べると、情報があるけど、シルファに関しては情報が
少ないのに、本当にこんな感じだなって思えるくらい自然な印象に見えたよ。

とても文章力のある方だと思いました。
読んでて、面白かったです。

123:名無しさんだよもん
08/02/28 00:13:31 mh302Ubh0
というか、今までは攻略できなかったわけだから
恋仲になっていない段階での話が多かったキャラも(郁乃とか)
AD発売後は、そういう話は少なくなって
エンド後が前提である話が増えるわけか・・・

124:名無しさんだよもん
08/02/28 00:28:51 PMaIUesA0
まったく関係ないスレでバレ画像見て涙目orz
言うまでもないことだがみんなうかつに画像開かん方がいいよ

125:名無しさんだよもん
08/02/28 06:21:05 soX2Pubp0
ADまで出ちゃって大変だろうけど書庫さん頑張って!

126:名無しさんだよもん
08/02/28 20:50:08 /QFW/fTY0
>>119
>>121
>>122

感想どもです

確かにシルファは難しかったですね。
無口という設定なのでどのくらいしゃべらせて良いものなのか加減がわからん、とか
口調に関しても一人称はシルファ、だ行→ら行変換で良いかと当初は思ったけど
意外とそれだけじゃ雰囲気が足りないな、とか

でもそれほど違和感無く受け入れられたようで何よりです。

さて、漏れもこの後地元のとらの0時販売に突撃してきますわw

127:名無しさんだよもん
08/02/29 02:41:07 0Ka5/nCG0
 ADももう発売という昨今。
 今更ながら、仮想シルファシナリオを書いてみました。
 もっとも情報収集が完全じゃない上に、いくつかの明確な矛盾点がありますが。
 かなりの長さになるので、臨時に掲示板を借りてそこに書き込んでおきます。
 (もう全部書き込み終えてます)
 待たずに読みたいという方がいらっしゃるなら、そちらでお願いします。
 このスレッドには書けるだけのペースでゆっくり書き込ませて頂きます。
連投規制にかからなければそのまま行きますけど多分無理。
 なにしろ51レスもあるし。
 投稿規制かかったら一旦諦めて今夜は寝ます。
 
 借りた掲示板 URLリンク(www2.atchs.jp)

128:箱入り娘が届いたら 1/51
08/02/29 02:42:20 0Ka5/nCG0
 それは一週間のうちで、もっとも開放感を覚える時間。
 土曜日の最後の授業が終わった学校からの帰り道を俺は歩く。 
 特に予定があるわけではないけど、それなりに心が躍る時間を俺は楽しんでいた。
 さて、今日はなにをしようかな……

「あ、スンマセン。このあたりで河野さんのお宅って、ご存知ありません?」
「はい?」

 いきなり呼び止められて振り向くと、そこに若い男性が制服姿で俺に手を上げている。
 おそらく宅急便の配達員さんだ。
 この手の人は一目でそれとわかる格好をしているから助かる。

「えっと、河野なら俺の家ですけど?」
「あ、そうなんですか。あなたのお宅に荷物が届いてますけど」
「ありがとうございます」

 ……と、お兄さんの傍らにそびえるのは軽く40インチテレビのサイズはあろうかという大きな段ボール箱。
 このでかいのが俺への荷物?
 まあ疑問点はさて置いて、俺は荷物運びに苦労している様子の配達員さんに声をかける。

「あ、運ぶの手伝いますよ」
「スンマセン、助かります」

 二人がかりでやたらと重いダンボールを持ち上げようとすると……
 ぐ! 重い!?
 持ち上げようと力をいれた瞬間、ハンパじゃない加重が腕と腰に加わった。


129:箱入り娘が届いたら 2/51
08/02/29 02:43:08 0Ka5/nCG0
「く……」
 
 精一杯の力を腹に込めて、玄関まで二人がかりでダンボールを運び込む。
 やばいことに、重さでダンボールの底が抜けそうだ。
 ここで箱が壊れたら面倒なことになる。どうか玄関まで持ってくれよ……
 俺の祈りが通じたのか、なんとかダンボールは崩れることなく玄関まで到着した。

「はあ、はあ……ほんと、助かりました。お客様、こちらにサインを……」

 荷物を運びなれているはずのお兄さんも息を切らせている。 
 俺の方は言うに及ばずだ。

「い、いや……どういたしまして」

 しびれる腕をふって俺は答える。
 お、重かった……正直、手伝いを申し出たことを後悔したくなる重さだった。
 でも一人で運べる重さじゃなかったろうし、仕方ないか……

「はい、サインありがとうございました。それでは」

 配達のお兄さんが帰って、静かになった玄関には重くて巨大なダンボールが残された。
 狭い玄関の8割を占領してしまうダンボール箱。
 さて、こいつはいったいなんなんだ?
 興味しんしん、俺はダンボールを軽く検品してみる。

「えっと、差出人は……姫百合珊瑚?」


130:箱入り娘が届いたら 3/51
08/02/29 02:49:19 0Ka5/nCG0
 その名前を見た時点で、ちょっと悪い予感はしていた。
 珊瑚ちゃんに関わると、いつも面倒に巻き込まれることが少なくない。
 本人はとてもいい娘なんだけど……どうしてかなあ。
 荷物の品目の欄には太文字で大きく『だいじなもの』と書かれているだけだった。
 ある意味珊瑚ちゃんらしい。

「結局開けてみないと中身は分からないか……」

 覚悟を決めてダンボールに手を掛ける。
 まさか爆発するようなことも無いはずだ。多分。
 中身がなんだか分からないので慎重に開けるべきだろう。
 カッターは使わずに手で表面のガムテープを少しづつはがして行く。
 とりあえずダンボール箱の上辺が剥がされると、中身もやたら厳重に梱包されているのが隙間からかろうじて見える。
 これは中身を出すのには苦労しそうだな。
 とりあえず、中身を確かめる為にダンボールの隙間から手を差し込んで……

 むにゅ。
 
「へ?」

 今、俺の手のひらに触れた柔らかくも暖かい感触はなに?

「あ、あれれ……?」

 むにゅむにゅ。
 まるで生き物に触れてるみたいな、暖かくて柔らかい感触。
 き、気持ちいいけど……
 このサイズにこの感触は。
 この箱の中身は……女の子??


131:箱入り娘が届いたら 4/51
08/02/29 02:50:19 0Ka5/nCG0
「ちょ、ちょっと待て。これは……やばいだろ、いろいろと」 

 焦って引き抜こうとした手がまた触れた。
 や、やべ。い、今触ったのはどこだ???
 もう、むちゃくちゃ犯罪くさい。こんなことしてていいのか?俺?

「いや、だってこのままにしておくわけにもいかないし……なあ?
 と、とにかくこの箱からこの子を出してあげないと……だろ?」

 と、誰に対してのいい訳だかわからないものをぶつぶつと繰り返しながら。
 俺はなおもダンボールの解体作業を続けていく。
 し、慎重に……爆弾の解体だって、こんなにドキドキしないよなあ。
 いや、ある意味この箱は爆弾そのものだ。
 苦労して作業を続けるうちに、ダンボールの中に閉じ込められていた『だいじなもの』が、少しづつその姿をみせていく。
 青いメイド服の端。 美しくて柔らかそうな金髪。そして、やや幼さを残した顔立ちがダンボールの中から。

「はあ……」

 思わず溜息が出る。 もう、目の前の現実は否定しようがない。
 梱包を解いたダンボールの中には、年頃の美しい少女がまるで眠りついた子猫のように膝を抱えて丸まっていたのだ。
 一仕事終えた俺は、額に流れる汗を拭いながら一言。

「やばい……犯罪だ」

 この現状を言い表す言葉はそれに尽きる。
 年頃の女の子がダンボール箱に詰められて俺の家に配達されてきた……ってか?
 どんだけ性質の悪い冗談なんだよ。

「これがご近所さんに知れたら、俺は確実に逮捕だな……」
 

132:箱入り娘が届いたら 5/51
08/02/29 02:50:52 0Ka5/nCG0
 思わず額に冷たい汗が流れる。
 例えば配達のお兄さんとこの箱を運んでいたとき、もし底が抜けて中身を見られていたら?
 つーか、これがどうやって荷物検査を通りぬけてきたんだ??

「ふう……まあ、それさておき」

 で、それらのさまざまな葛藤と焦りはとりあえず置いといて。
 いったい、この女の子は誰なんだ? 俺はダンボールの中身をじっと観察。
 安らかな呼吸音と微かに小さな胸が上下する様はここからでも見てとれる。
 彼女が生きていることには間違いない。
 だが少女は未だに目覚めない。天使のように安らかな寝顔は美しくもまだまだ発展途上の幼さを残していた。
 その可憐さがさらに俺の罪悪感をかきたてるのだが。

 ところでこの女の子。
 出会ったことはないはずだけど……でも、どっかでみたような気もする。 
 えっと、誰だっけ? 記憶がもうここまで出掛かってるんだけど。
(なあ……君は誰なんだ?)
「ん……」

 と、俺の心の中の呼びかけが届いたかのように、女の子の閉じたまぶたが震えた。
 ダンボールに包まれた眠り姫が、今目覚めようとしてるのか。
 って、いや! ちょっと待ってくれよ!!!!
 俺の方はまだ心の準備が……

 ぱち。

 願いもむなしく、青い瞳がぱっちり開く。
 目と目が遭う瞬間。
 澄んだ青い瞳が真っ直ぐに俺を見つめている。
 その光景だけならまるで恋の始まりみたいだけど……なにしろ状況は最悪である。
 俺の心臓はバクバクだ。
 もちろん恋のときめきなどではなく。

133:箱入り娘が届いたら 6/51
08/02/29 02:52:07 0Ka5/nCG0
「……い……」

 少女の小さな唇が震えて、そこから微かに声が漏れだす。
 それはもっと聞きたいとさえ思うような、美しい声だった。

「い??」
「い……」
「…………」
「いやああああああ!!」

 でも、流石に悲鳴は勘弁して欲しかった。 
 ご近所に響き渡る大声で叫ぶ女の子。
 ああ、親父……母さん。
 俺、明日から塀の中で暮らすことになるかもしれません……


 不幸中の幸いか。結局少女の叫び声がご近所様に通報されて、警察官が駆けつけてくるようなことにはならなかった。
 それでも俺が現状の危機から脱したわけではない。
 女の子の涙はある意味核兵器より恐ろしい。
 すくなくとも彼女の涙は俺の平凡な日常を再起不能に打ち砕ける可能性を持っている。

「あ、あなたは誰なんれすか! シルファをこんなところに連れ込んで……いったいなにをするつもりだったのですか?」

 ひとしきり叫んだそのあとで、焦った様子で少女は俺に矢継ぎ早に質問を投げかかる。
その様子を見る限り、とりあえず身体は元気なようでそれは良かった……なんて言っていられない。
 少女の不安と問いかけは実にもっともなものではあったが、あいにくと俺はそれに答える術が無い。

「いや……目的もなにも。それは俺が聞きたいくらいで……」
「あなたが何を言っているのか、シルファには訳が分からないのれす!! あなたは、とっても変な人なのれす!!」

 そ、そうかもしれんが……

134:箱入り娘が届いたら 7/51
08/02/29 02:52:59 0Ka5/nCG0
 だとしても、それは俺の責任じゃないぞ。
 と、女の子は何か恐ろしいことに気が付いたという表情をして、とつぜん自分の身体をかばうかのように抱きしめた。

「し、しかも……眠ってる間に身体のあちこちを触られた形跡が、シルファのデータに残っているのれす……」

 ぎく。そ、それは……
 青い瞳が怯えの影をたたえて俺を見つめていた。
 その瞳の真剣さからは逃れられない。
  
「あ、あなたが……眠っているわたしの身体に触れたんれすか……?」
「じ、実はそうです……」

 罪悪感が咄嗟に正直な答えを俺の口から出した。
 でも、次の瞬間には後悔。

「あう……」

 涙交じりの声が少女の口から。 
 ああ。君の気持ちはよく分かるよ、でもこっちにもいろいろ事情が……
 お、お願いだからそんな目で見ないで……

「いやあああああああああああああ!!! 変態ーーーーー!!!!!!!!!」

 少女の叫び声が再び耳に響き渡る。
 俺の胸にも突き刺さる。
 ……すいません。ごもっともですね、はい。


135:箱入り娘が届いたら 8/51
08/02/29 02:53:34 0Ka5/nCG0
 自らの名を『シルファ』と名乗ったこの少女。
 はて、どこかで見たことがあったような。
 名前も聞いたことが……あったっけ?
 でもとりあえず俺には思い出せない。

「いきなりこんなボロイお家に連れ込まれて、ものすごく怖いのです……
 しかもよく分からない人が、意味不明のことを口走って、眠っているシルファの身体に触っていたのです。
 こわいのれす、やばいのれす……シルファは無茶苦茶ぴんちれす……」

 少女は……いや、シルファは涙さえ流しながら切々と訴える。
 もうその言葉は俺に対して向けられた言葉ではなく、独り言のような形に移行しているようだ。 
 言葉の端々に微妙に毒も含まれていて、案外見た目のイメージとは異なる性格なのかもしれない。

(言ってることは全て間違ってはいないけどな……)

 けれどもこうやって一方的に言ってみれば、明らかに俺の方が変質者だよ。
 シルファの立場からみればそういう風にしか見えないのだろうけど。
 とにかくなんとか状況を説明して俺の無実を…… 
 いや。そのまえに俺の方が状況を知らんとどうにもならんだろ。
 そして何らかの情報を持っていそうなのは、この子だけだ。
 俺は意を決して少女に問いかけた。

「あ、あのさ、君はなにか聞いてないの? 俺、珊瑚ちゃんの友達なんだけど」
「さ、珊瑚さまのおともだち……れすか? あなたが?」

 あ、やっぱり珊瑚ちゃんのことは知ってるな。 
 でも、俺の言葉を信じた様子が無いぞ。

「でも……とてもそうは見えないのれす」
「ま、まってくれ。これを見てくれよ」


136:箱入り娘が届いたら 9/51
08/02/29 02:54:18 0Ka5/nCG0
 疑いの目を向けるシルファに、俺は慌ててサイドスタンドにあった写真立てをつきつける。

「あ、これは珊瑚さま……の写真なのれす」
「な? お、俺も写ってる。 ちゃんと仲良さそうだろ?」
「は、はい……本当なのれす。驚きれす」

 シルファは、とても驚いた顔で俺の差し出す写真を見つめていた。

「では……珊瑚さまのおともだちが、どうしてシルファのことを誘拐したりするのですか?」
「してないよ!! 誘拐なんて!」
「きゃっ……」

 危険な言葉に思わず怒鳴り返してしまった。
 シルファはまた怯えたようにすくんでしまう。

「す、すまん……怒鳴ったりして悪かった。
 別に脅かすつもりは無かったんだ」
「こ……怖いのれす、やっぱり怖いひとなのれす」

 いや、君が怖いのもわかるけどさ。
 俺の方も君の言葉がすげえ怖いよ。
 さっきから心臓がバクバク鳴りっぱなしだよ。  

「俺のほうは、なにもしてないよ。
 さっき、君がとつぜん宅急便で俺宛に送られてきたんだ。
 俺は君のことだって、さっきまで全然知らなかったよ」
「そんな話、とても信じることが出来ないのれす」
「…………」
 

137:名無しさんだよもん
08/02/29 03:06:27 anpvKXop0
深淵

138:箱入り娘が届いたら 10/51
08/02/29 03:15:20 0Ka5/nCG0
 シルファは冷たい瞳できっぱりと言った。
 そりゃそうだ。と俺は思う。
 俺だってこの状況が信じられないし。
 どんな犯罪者の言い訳だってこれよりはマシだろ。
 でもこれが事実なんだから仕方ないじゃないか。

「ねえ、君の方はどうなの? 今日の君に何があったのか教えてくれないか?」
「今日のシルファ、ですか? シルファは、気が付いたらここにいたのれす」
「だからその前だって」
「え、と……」

 シルファは視線を下に向けて、考え込む仕草を見せる。
 その顔立ちは……やっぱり、どこかで見たことがあるような。
 俺はこの子を知っている……のか?

「今日は……珊瑚さまがシルファの緊急メンテナンスがしたいって。
 研究室に連れられて、それで強制スリープ状態になって……
 そこから先の情報はほとんどありません……」

 そのシルファは頭の中の記憶を思い出すように語る。
 メンテナンス? 強制スリープ?
 この子ってなんだか自分が機械みたいなことを言うんだな、と思いかけて。
 その瞬間になって俺はやっと気が付いた。

「君はイルファさんたちの妹の……」
「は、はいれす。シルファはイルファ姉さまたちの姉妹機の最新型メイドロボれす」

 そ、そうか。
 そういえば、さっきだって『データに残ってる』とか言ってたもんな。
 焦っていて気が付かなかった。
 


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