FFDQバトルロワイアル PART3
at FF
148:1/3
02/11/29 06:41
世界を渡る旅の扉、抜けた先にあったのは銀世界だった。
雪に覆われた山道に自分は立っている。
「…さむ」
吹き付ける風に、マントをすり合わせるセリス。
辛い事はこれまでにもあった。雪山で剣を振るった事もあった。
でも、その時にはそばに誰かがいてくれた。…『あの人』がいてくれた。
「……ロック……」
今は誰もいなかった。それが、堪らなく寒かった。
何でも、今自分達は殺し合いをしているのだという。
聞こえてくる放送では、仲間であるセッツァーがすでに誰かの手に掛かったそうだ。ケフカも、逝ったらしい。
だが、セリスには信じられなかった。仲間たちの強さは自分が一番知っているし、
それに自分は…この『ゲーム』が始まってから、誰にも会っていなかった。
実際にはすぐ側で殺戮が繰り広げられていたのだが、神懸り的な偶然でセリスはそれらに遭遇もしていない。
だが、それは逆にセリスの孤独を煽った。
もう、自分ひとりしかいないのではないか。いや、最初から誰もいないのではないか…
寂しさと不安がセリスを包む。
私は…たった一人で、朽ちていくのだろうか…?
耳の奥で、ケフカの笑い声が聞こえてきた。マリオネットを操る道化師の笑い声だ。
ああ…気が、狂いそうだ。
思い切り叫ぼうとした、そのときだった。
人の気配に気付いたのは。
「…誰」
思わず、口に出していた。
自分の命を狙う者かもしれない。それでも、出さずに入られなかった。
そして、物影から一人の男が現れた。
「こんにちわ。あなたも、今回の事に巻き込まれた人ですよね?」
一見友好的な態度。ヘンリーだった。
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02/11/29 06:42
セリスは戸惑った。こんな非常事態に、これまで誰にも会わなかったのに、突然現れた男。
男は何事もなかったように平然としている。まるで、何事もなかったかのように。
もしかして、自分は騙されていたのかもしれない…ゾーマと名乗る、狂言師に。
何が正しくて、自分は何を信じればいいのだろう。
そんな事を考えているうちに、ヘンリーは歩み寄ってくる。
「そうそう、僕は『とんぬら』というんですよ。あなたは?」
笑顔。だが、後ろ手には幾人もの血を吸った斧が握られている。
後もう少し、そこが必殺の間合いだ。
なにやら考えているトロそうな女を見ながら、ヘンリーは口の中で笑った。
だが、その笑いは、凍りついた。
「マリア…です」
セリスは、ただ単に不用意に名乗るのはまずいかもしれないと思ったから、偽名を使ったに過ぎない。
『マリア』という名前も自分が初めて使った偽名で、咄嗟に頭に浮かんだからだ。
だが、ヘンリーにとっては違った。その名前はヘンリーにとって無二のもので…奇しくも、セリスと妻、マリアは同じ金髪だった。
硬直するヘンリーに、怪訝そうな表情を浮かべるセリス。
どうかしたのか。そう口を開こうとして、セリスは咄嗟に状態を逸らした。
「何をやっているっ!」
怒声。女のものだ。衝撃と痛みがセリスの頭をシェイクした。
何か、飛礫のようなものをぶつけられたらしい。右肩に当ってしまったが、咄嗟に身を逸らしたおかげで砕けてはいないようだ。
痺れる肩を抱きながら、ヘンリーから飛び離れる。再び飛礫がきたが、避けるまでもなく明後日の方向へ飛んでいった。
着地すると同時に腰に佩いていた剣を抜こうとして…
「え?」
セリスは、足元を見た。崩れる地面、奇妙な浮遊感。
次の瞬間、セリスは宙に投げ出されていた。
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02/11/29 06:43
「キサマ、やる気あるのか!」
アグリアスは怒鳴った。
ヘンリーは、セリスが落ちていった崖を見ている。その姿は、腑抜けたものに見えた。
――この男、思った以上に役に立たんかも知れんな。寝首をかく日も遠くないようだ。
しばらくして、ヘンリーは、崖から視線を外した。
「どうする、止めを刺しに行くか」
「この崖を降りて、か?行きたければ一人で行け」
「キサマ…」
「ふん…行くぞ」
ヘンリーは歩き出す。
マリアと名乗ったあの女は、やはり自分の妻であるマリアとは違った。
わかっている、違うことは。
わかっているのに…ヘンリーの内には、小さなしこりが残ったままだった。
【ヘンリー 所持武器:ミスリルアクス イオの書×3 火炎瓶×1
現在位置:ロンダルキアの祠西の山岳地帯 行動方針:皆殺し】
【アグリアス ジョブ:ホーリーナイト スキル:時魔法
装備武器:スリングショット ダイヤソード なべのふた
現在位置:ロンダルキアの祠西の山岳地帯 行動方針:ゲームにのる】
【セリス 所持武器:ロトの剣
現在位置:ロンダルキアの祠西の山岳地帯 行動方針:錯乱? 崖下へ転落】
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02/11/29 12:57
《午前8時四十分前後》
「愛する者の命のために。」
まっすぐなエリアの眼差しを正面から受け止めながら、セシルは答えた。彼女の問いに。
その言葉に、エリアの微笑が消え、何か別の表情が取って代わる。
「…そのために命を奪うのですか?沢山の、同じ、命を。」
我知らず手を握りしめながら、エリアは静かに言った。自分を押さえていないと、怒鳴りだしてしまいそうだ。
「僕にとって、命は“等価”じゃない。このゲームに参加してる全ての人間より、僕にとってのローザの命は重い。」
彼自身、冷たいなと驚くほどの声音でセシルが言う。まるで自分に言い聞かせるみたいに。
セシルは、ウソを言ってはいなかった。少なくとも今の時点では。
昔は、ゲームに参加する前は、そうは思っていなかった。全ての命は等価値だと思っていた。
だけど、気づいた。彼女が死んで。
彼女は何よりも大事だ。だから、他の命を奪ってでも彼女を生かす。
決意した時、彼はゾーマの操り人形になる事を決め、己を捨てた。
リディアと出会い、まだ僅かに心に残っていた己に気づき、再びソレを放棄した。
カインと出会って、再確認した。
セシルは今、誰だって殺せる。エッジでもカインでもリディアでも。ましてや知らない他人の命などそれ以前だ。
「…分かります、あなたの思いは…だけど、私にも背負うモノはあります!同じくらい、重いモノが!」
思わずそう叫んで、エリアは携帯していたミスリルナイフを抜いた。
エリアの心の中で焔(ほむら)が唸った。優しき水の心の中で、炎が怒りの産声を上げた。勇気の炎が。
その瞬間、セシルの表情が変わった。顔が強ばる。顔の裏で激情が爆発する!
どぉぅんっ!と、エリアの足下で黒の衝撃が弾け、ばっと雪が散る。周りに生えている木の一本が衝撃で倒れる。
剣の切っ先をこちらに向け、セシルが低く叫んだ。先ほどの黒の爆発も彼の仕業か。
「分かるものか…あなたに…!」
剣の切っ先に黒い光を集め、それをエリアに向ける。
…このまま話していたら、捨てたはずの己が戻ってくる。ソレは駄目だ。
ローザを生き返らせるためには、みんな殺すためには、何よりも、甘い自分自身が不必要なのだから。
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