中日ドラゴンズバトル ..
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85:126
04/11/21 20:25:50 tyAPZvkN
「……」
倒れこむように膝を折り、そっと松中の身体に触れた。
決して穏やかとは言い難い死に顔の、見開かれたきりの両目を閉ざしてやる。
怒りとも悲しみともつかない感情に震える手を持ち上げ、掌を合わせた。
もう泣いている場合ではなかった。せめてもの手向けにと、彼の冥福を一心に祈る。
(マツ、お前の意志は俺が継ぐ)
どうか安らかに ─ きつく閉じた瞼を開いた小久保は、彼の腕に引っかかっている狙撃銃を見た。
地面の上を引きずられていたために、土と草があちこちに付着した銃を手に取る。
昨日、姿も分からぬ誰かに狙撃された自分と高橋を守ってくれた、松中の銃。
(結局、最後まで守られてばかりだったな…)
高橋と物別れした今、唯一信じられる身近な仲間は松中だけだった。
信頼 ─ 脳裏をよぎった言葉に小久保はふと、顔を上げた。
風がまた、耳元で鳴った。天候の変わる前触れかもしれない。漠然とした考えを意識の隅に置きながら、
自分たちから少し離れて佇む今岡の姿を視界におさめる。
「今岡」
呼びかけたが、斜めに立ち、横顔を見せている彼が振り返ることはなかった。
何を考えているのかわからないという、第一印象の通りに、ぼんやりとある一点を見つめている。
─ もしも。不意に浮かんだその考えは、本来ならば忌避すべきものだったのかもしれない。
けれど、警鐘に反して思考は続いた。
(もし、逆の立場なら、俺はマツを信じていただろうか)
死んだのが桧山で、殺したのが松中なら。松中が狂ってしまった、いや、狂わされたのなら。
今岡は泣いただろうか。殺してやると喚いただろうか。松中を止められなかった自分を逆恨みして ─
(……っ)
脳の血管が切れてしまうような錯覚に、小久保は首を横に振った。
今岡、と乾いた唇を動かしてもう一度呼びかけ、思うように動かない身体を起こした。
足を引きずって彼に近づく。右手に下げたライフルが振動で音を立てた。
それに反応してか、今岡がこちらを見た。彼の特徴とも言うべき無表情を目の当たりにし、小久保は
用意していたはずの台詞をなぜか失念してしまっていた。
「……古田さんたちはどこにいるんだろう」
結果、口から滑り出たのは全く意図しない言葉だった。何を言ってるんだ俺は、とほぞを噛む。

86:126
04/11/21 20:26:38 tyAPZvkN
今岡は小久保の葛藤に気づいた様子もなく、少しの間を置いて、荷物の中から地図を取り出した。
広げた地図の印部分を示し、ここです、と言った。
「古田さんらはもう着いてるはずです。ここからだいたい二十分くらいですね」
「……合流するのか?」
「しないんですか?」
きょとんと首を傾げて、今岡が聞いた。
小久保は思わず眉を寄せる。この状態で古田たちと合流するということはつまり……。
「小久保さん怪我してはるやないですか。それの治療もせなあかんし、キャンプに合流したら
とりあえずは安全でしょ?」
「ちょっと待てよ。けど、桧山さんのことは……」
「このことは古田さんにちゃんと話しますよ。全部信じてもらわれへんかったとしても、桧山さんが
危険やってことは伝えとかないと」
今岡の口調には抑揚がなかった。わけもわからず腹立たしい気分になり、小久保は息を吸い込んだ。
「……そうじゃない! 今の桧山さんは誰を殺すか分からないんだぞ!? それこそ、先にキャンプ地へ
行ってしまったんなら、その場の全員を皆殺しにする可能性だってあるんだ!!」
それなのに、何でお前はそんな冷静なんだ ─ 音声にならない叫びが胸中で渦巻く。
「何度も言わせないでください」
瞬間、今岡の表情がひずんだ。目一杯開かれた瞳孔に、灯のともるさまを見た気がした。
「 ─ 俺は桧山さんを信じてる!! 俺にはそれしかできないんですよ!!」
抑えられた呟きに続いた怒号は、波状の響きを持って小久保の耳を打った。
冷や水を浴びせかけられたような感覚に、身体全体が硬直する。
疑心暗鬼に陥るのは簡単だ。自分が傷つかないために、相手を先に疑うことは呆れるほどに容易い。
それを戒めたのは、他ならぬ己自身ではなかったのか。
ここで今岡を信じないということは、自らを裏切ることにならないのか。

87:126
04/11/21 20:27:16 tyAPZvkN
小久保は今岡の目を見た。双眸には光がある。力がある。
揺るがない意志が ─ ある。
自分の目も今岡にそう見えていることを願った。
「すまなかった」
うつむいて、小久保は謝罪を口にした。
「俺は、お前を信じる」
その言葉の何と頼りないことかと、思う。
「だからお前も、俺を信じてくれ」
しかし口に出さなければ、決して伝わらない。そのための言葉なのだ。
小久保は右手に持った銃を、彼に差し出す。
「銃…、これを持ってろ。お前のは取られたんだろう?」
「……小久保さんは?」
「俺は持ってる」
ちら、と小久保は背後を振り返るようにする。先程の場所に荷物は置き去りのままだった。
松中が中村に託されたというその銃を、もう一度持ち上げてうながす。
「俺は、マツとその銃に守られた。だからお前もそれで、お前の信じる相手を守ってやれ」
今岡は小久保を見て、それから銃に視線を落とす。ややあって、ずっしりと重いそれを受け取った。
─ これでいいよな。小久保は亡き友に向けて呟いた。
ふと口許を綻ばせた自分に、今岡も自然と表情を緩めた。
その時、互いに交わされた言葉はなかったが、小久保にとってはそれで充分だった。

【残り17人・選手会11人】

88:代打名無し@実況は実況板で
04/11/22 12:28:48 FqhpAdb5


89:代打名無し@実況は実況板で
04/11/22 13:43:10 SCuxnplW
乙です!

今岡と小久保いいコンビになりそう。

90:代打名無し@実況は実況板で
04/11/22 17:20:21 IJqhHuuH
小久保と今岡と井端と正津と平井はかっこいいな…
特にもう平井はいないし、正津はリアルで新天地だからな

91:代打名無し@実況は実況板で
04/11/22 22:56:49 Q1pqLsx1
激しく今更なんだけど。

>>11-12で、ナベが立浪と落合より年上みたく書いてるが
実際はナベ34歳、立浪&落合35歳のハズ・・・

92:358
04/11/23 00:13:34 4g+rIpA8
>>91
orz
また何か勘違いを…保管庫の方に訂正文載せておきます。
112氏の仕事増やしてばっかりだな…

93:代打名無し@実況は実況板で
04/11/23 11:41:07 8aDxIXiS
保守

94:代打名無し@実況は実況板で
04/11/23 21:42:34 3CttHeSD


95:代打名無し@実況は実況板で
04/11/24 09:33:56 ANcXOJgW


96:代打名無し@実況は実況板で
04/11/24 17:05:53 uqqDLqbV
hosyu

97:代打名無し@実況は実況板で
04/11/25 12:41:52 5sVhM/Zd


98:代打名無し@実況は実況板で
04/11/26 02:42:47 2nm0YDBr
捕手

99:代打名無し@実況は実況板で
04/11/26 19:26:37 PatWTZU8


100:代打名無し@実況は実況板で
04/11/26 21:59:53 BOudkiXr
100

101:代打名無し@実況は実況板で
04/11/26 23:44:53 RjbYdgFT
101

102:358
04/11/27 00:10:23 L0LheeV0
147.生者を思う気持ちの鎖

別れの挨拶もなおざりに、渡邉は川相を追って走り出した。
その後ろ姿が遠ざかるにつれだんだんと、立浪の視界の中でぼやけていく。
チーム最年長のベテランでさえ、『逃避』してしまうような状況の中でも、
石川は最期まで優しかった。最期まで、自分以外の人間のことを気遣っていた。
自らの危機をも顧みずに立浪を庇って、そして命が果ててしまうほどに……
その対比が言いようのない感情となって、立浪の眼から涙を押し出した。
(石川、お前は……)
両手で顔を覆う立浪を見て、落合は静かに肩を叩いた。
「俺は、生きなあかんねや……」
「…ああ」
(もう、心配ない。後は俺たちが必ず守る。だから―)
落合が、立浪の背後にある光に向かって語りかけると、それは逡巡しているかのように、
二度三度輪を描いたが、やがて高く空へ舞い上がっていった。
(安らかに眠れ、石川)
見上げた空は相変わらず、禍々しい物たちが渦巻いていたが、彼の無垢な魂は惑わされず
それを超えて天へたどり着ける。そう、確信できた。

103:358
04/11/27 00:10:37 L0LheeV0
視線を下ろしてくると、柳沢が何かを必死で求めるような目で、渡邉らの消えていった先を見つめていた。
「…どうした?」
「どうしたって…追いかけないんですか?」
どこかヒステリックな響きを持った彼の声に、泣いていた立浪も振り向いた。
「あのスピードには無理だ。川相さんはどこ行くかわからないらしいし、
今追いかける余裕はないよ」
「けど、川相さんも渡邉さんも、あれじゃ、あれじゃ死ぬに決まってるじゃないですか!」
(やばいな―)落合は口の端をきっと引き締めた。
柳沢は、自分一人が取り残されること、自分を置いて死なれてしまうことを極端に恐れている。
三人で行動するうちに、少しは治まってきたかと思っていが、やはりそう簡単にはいかないらしい。
狂った川相と、それにただひたすらついていく渡邉。落合も立浪も内心は、
あの二人がそう長く生き延びられるとは考えていなかった。
それは柳沢も同様で、二人が走り去った事が彼には、この世から消えていくようにさえ感じられたのだ。
眠りかけていた絶望的な感覚を、指で弾いてしまったら……
「それはわからない。けどな、柳沢。軽々しく死ぬなんて決めつけるな」
「だって、見ましたか? 渡邉さんの武器。あんなちゃちな銃で、何ができるんですか。
向こうは狙撃銃持ってるんですよ、おもちゃで対抗できるはずなんか―」
喚き立てながらついには髪の毛をかきむしって、彼はうずくまった。
「やっぱり死ぬんだ、みんな、俺を残して…」
呪詛のように死ぬ、死ぬと呟き続ける柳沢の背後には、彼のことが気がかりで
昇天できない魂が二つ、おろおろとしているかのように漂っているのが落合には見えた。
あまりに、救いようのない光景だった。

【残り17人・選手会11人】

104:代打名無し@実況は実況板で
04/11/27 09:28:20 qWbrgFuB


105:代打名無し@実況は実況板で
04/11/27 10:15:07 eiw29DT8
職人さん乙〜。

落合かっこいいなー。

106:代打名無し@実況は実況板で
04/11/27 12:10:43 g4Upz0E+
英二の設定はおいしいよなー
使う側も上手いけど

107:代打名無し@実況は実況板で
04/11/27 19:44:36 X/rTko98
職人さん乙!
あの…落合は設定じゃなくてホントに霊感体質ですからw

108:代打名無し@実況は実況板で
04/11/27 20:43:22 LLL1zb+k
15 名前:代打名無し@実況は実況板で[sage] 投稿日:04/11/07(日) 17:49:34 ID:SxE3c8dl
また中日ネタでスマヌが、前スレの最後のほうにあって未収録のままのやつ

【霊感】
中日落合英二投手のこと。文字通り霊感が強く、頻繁に霊を見たり予言をしているらしい。
例としては
1.新人時代、沖縄のホテルで誰もいないところを指差して「あそこの女の子がいる」とのたまい、
一緒にいた選手らを不気味がらせるが、あんまり頻繁に口走るため最後には先輩たちから
「今日は何が見える?」と聞かれるのが日課に
2.どのバットで打席に立とうか悩んでいた大豊選手に「これがいいですよ」とアドバイス
その打席で大豊は見事ホームラン
3.試合中にベンチで突然「ここでホームラン打たれる」と口走った途端、味方投手被弾
4.山崎武司に送った年賀状に「今年のあなたには『6』という数字が見えます」と予言
そしてその年の最終戦、その日までホームラン14本の山崎はふとその予言が浮かんだあと、
その日2本ホームランを打ち16本でシーズン終了
5.沖縄キャンプの休日。後輩らと港へ遊びに行った際に防波堤上に女性の霊を目撃
ここ数年伸び悩んでいた山田洋(現山田博士)に「ツキが変わるかもしれないから
女性霊の所に行って来い」と命令し、それに従った山田はその年のシーズン中に横浜へトレード。
6.高津を見て右腕の肘から下が見えないと言ったら高津の肘に故障発生

コレだな

109:代打名無し@実況は実況板で
04/11/27 20:49:45 OGDw1cDI
一番下のが怖いな…

110:代打名無し@実況は実況板で
04/11/27 21:04:37 QPpOWMOz
>>108
そんなに凄かったのか・・・・・

111:代打名無し@実況は実況板で
04/11/27 22:27:59 Y30z1slX
>107
あーゴメン、それは知ってたけど言い方が拙かったねw

将来、落合英二監督になったら大変な采配しそうだねー
新人投手に沢村栄治を表意させたりしそうだw

112:代打名無し@実況は実況板で
04/11/27 22:28:35 Y30z1slX
憑依だスマソ

113:623
04/11/28 10:47:24 BqzoSLZW
148.嵐到来

海の天気は変わりやすい。
誰もが一度は耳にする言葉だが、それを実際に体感したことがあるものは
意外と少ないのではないだろうか?
だがいま現実に、否応なしに体感させられている者たちが存在していた。

「うわぁ!!!」
「おい、うるさいぞ!雷くらいで、いちいち叫ぶなよ!!!」
先程から度々あがる大の大人のものとは思えない情けない悲鳴に、
仲澤は一瞬だけ振り返り、八つ当たりも兼ねて怒鳴りつけた。
「だって俺、雷がこの世で一番苦手………
 あああぁ!またでかいのキタ━━(゚∀゚)━━!!!!!」
叫び声の主が誰なのか……確かめる気も起きなくなった仲澤は、今度は振り向きもせず、
返事すらしない。代わりに鉄を蹴りつけたような音が響き、辺りに気まずい空気が流れる。

突然の嵐に見舞われたのは、いまから十数分前―
間の悪いことに『協力者』である軍の男の助言で、針路を少々変更した直後のことだった。
そのことは艇内に、別の嵐をも巻き起こしかけている。疑心暗鬼という名の嵐を…。
しかし、そもそもはもうとっくに着いてもいいはずの島に辿り着かないことに疑問を持った
仲澤達のほうから男に助言を求めたのだ。
当然、仲澤にしてみたらこの事態がおもしろいはずもなく、ついつい気が荒くならざるをえない。
少し落ち着こうと、島が見えてくるはずの前方に注意を払ったままに深呼吸などもしてみるが、
黒雲とガスに覆い隠された視界は、ますます仲澤を苛立たせるだけだ。
「頼むよ…こんなところで立ち止まってる場合じゃないんだ……」
それは、祈りにも近い言葉だったが誰の耳にも届かなかった。

雷を従えたまま、雨は降り続けている。
目指す島影はまだ見えない……

【残り17人・選手会11人】

114:623
04/11/28 17:54:56 BqzoSLZW
149.負けたくない

嵐に巻き込まれ立ち往生している仲澤たちを、知らず追い越していたゴメスたちは、
今まさに目的の島の目の前にいた。
このあたりの海のことを知り尽くしている漁師の男は、うまく嵐をくぐり抜け、
ほぼ最短の時間でこの島にゴメスを導いてみせたのだ。
「思ったよりも簡単に着いたな!」
短すぎる船旅の間にもすっかり打ち解けていた二人は、顔を見合わせて笑いあう。
「さて、どこか船をつけられるとこ探さなきゃ。」
そう言いながら操舵室に戻っていく男を見送ったゴメスが、男と出会えた幸運に感謝して、
十字を切り、顔をあげた時の事だった…ゴメスの視界に、海の色ではない青色が入り込む―
「wait!マッテ!!!」
それが何なのか、確信が持てなかったゴメスは、操舵室に一歩足を踏み入れていた男の元に
急いで駆け寄って、その方向に注意を促した。
「……人か?!」
男は急いで舵を握ると方向転換をして、人影と思われるものに向かって船を走らせ始めた。
近付いてみるとそれは確かに人のようで、そのいでたちからからするに中日の選手
―しかも、どうやら二人いるようだ―。
そのうちの一人はぐったりとして動く様子がなく、もう一人の方がその身体を支え、
必死に岩にしがみついているのがわかる。だがそれも限界が近いらしい…
ゴメスたちが近付いていく間にも、何回か海に沈み込みそうになっていた。
「しっかりしろ! いま助けるから、それまで頑張れ!!」
声を掛けながら男が急いで、しかし慎重に船を寄せていく。
限界まで近付いたところを見計らって、ゴメスが手を伸ばす、が届かない……
焦って身体を乗り出したところを、逆に背中をつかまれ引き戻されてしまった。

115:623
04/11/28 17:55:10 BqzoSLZW
「危ない!お前さんまで落ちる気かい?ちょっと、待ってな!」
男は救命浮き輪を掴んで戻ってくると、すかさず海に投げ込んだ。
「つかまれ! 連れのこと絶対離すなよ!!」
意識を保っているほうの選手が声に反応して、なんとか浮き輪を掴んだのを確認すると、
ゴメスたちはロープを引っ張り始めた。
大人の男二人を一度で助けようとするのは容易なことではなく、ロープが食い込む腕は悲鳴を
上げていたが、そんなことを気にしている余裕もない。
そのかいもあって、徐々にだが船に近付いてきた選手二人の身体をタイミングを計って掴むと、
渾身の力を込めて船に引き上げた。
ゴメスが真っ先にしたことは、動かなかった選手の無事を確認すること―大丈夫…生きている!
「はぁ…こんな大物釣り上げたの久しぶりだぜ……。」
自分の安堵のため息と重なるように出た男のセリフと、さっそく二人の選手を救うことができた
喜びに、ゴメスが声をあげて笑った。
その声に反応して、床にうずくまって息を整えていた選手が顔をあげる。
「?…??……レオがどうしてこんなところに???」
「マズ、テアテスル。ハナシ、アト。OK?」
うなずきながらも、不思議そうな顔をして自分を見つめてくる、一緒にプレイをしたこともある
後輩にそう声を掛けると、気を失ってしまっている背番号21…正津の手当てをゴメスは始めた。
「さて、じゃあ兄ちゃんの手当ては俺がするとしよう。ちょっと乱暴かもしれんが勘弁しろよ。」
今度はまったく見知らぬ顔が現れたことに、更に不思議そうな顔になった背番号11番…川上の腕を
男は構わずに取ったが、その有様におもわず顔を顰めた。
左腕の傷もさる事ながら、二人分の体重を支えていた両手は殆どの指の爪が剥がれ落ち、
手の平にも数え切れないくらいの擦過傷と切り傷が出来ていて赤黒く腫れ上がってしまって
いたのだ。

116:623
04/11/28 17:55:25 BqzoSLZW
「こりゃひでーや……兄ちゃん、よく頑張ったなぁ。」
「負けたくなかったんす……絶対、負けられない試合だった……か…ら………」
「?」
突然言葉が途切れたことに不審に思って顔をあげた男の目に映ったものは、
目を閉じ横向きに倒れていく川上で……
「わっ!ちょっと待て!」
慌てて支えようとはしたものの、タイミングが合わず一緒に床に倒れこんでしまった。
「いてて……いきなり寝るなよ!……まったく…」
文句を言いながらも、男は身を起こし、気を失ってしまった川上の手当てを続けようと
消毒液を手に取ったのだが…その時、船が風に煽られ大きく揺れた。
「こりゃ、いけねぇ。嵐が来るな……」
身体に感じた風にその事を確信した海の男は、手当てを中断し操舵室に戻りながら、
ゴメスに声を掛ける。
「ゴメスさん、その旦那の手当てが終わったら そっちの兄ちゃんのほうも頼む!
 少しの間、島から離れるぜ! 風に煽られて岩場にぶつかったりしたら船に穴が開いちまうから!!」
早口でまくし立てられた為、言葉の意味の全てはわからなかったが、ゴメスは男を信じてうなずいた。

こうして、船は島から離れるべく動き出す。
島から離れられないはずの二人を乗せたままで…

【残り17人・選手会11人】

117:代打名無し@実況は実況板で
04/11/28 21:20:04 p7T1wX+m
乙です!

ケンシン助かったー(つД`)

118:126
04/11/29 00:17:29 P6C6CPvD
150. 蜘蛛の巣

新しいキャンプ地は断崖に面しているためか、時折吹きつける風の勢いがことさら強く感じられる。
木の根元に腰を下ろしている緒方は、ざわざわと枝のしなるさまを視界の中におさめ、その先に広がる
空の変化を見てとった。
(雲が出てきたな)
朝方は見られなかった、灰色がかった薄雲が青の領域を侵しつつある。今すぐとは言わないまでも、
いずれ天気が崩れるのかもしれなかった。
節くれだった木の幹に後頭部を当てて空模様を遠くに眺めながら、何でもいい、と意識の隅に思った。
─ 舞い落ちる枯葉。地面を這い回る蟻。風の音。他愛のない会話 ─ 何でもいい。
とめどなく思考することを止めずにいられる材料が、今は何より自分には必要だった。
抗いがたい睡魔のように、意識を埋めつくそうとする暗闇が迫る。
右耳の、外せずにいるイヤホンのスピーカーから、可聴域ぎりぎりのかすれた『声』が ─
「緒方」
ふわり、と意識の浮き上がる心地がした。柔らかな声音が耳元をさらう。
振り向くと、真顔でこちらを見ている中村の顔が目に入った。緒方は目配せで応じ、首を傾ける。
「それ取ってくれないか」
彼が指さした先には、ペグ打ち用の鎚が転がっていた。さっきテントを張る際に使ったものだ。
手を伸ばしてそれを拾い上げ、中村に手渡した。
「考え事か? ホームシックなわけないよな」
木のそばに張られたテントの前に腰を下ろしながら、中村が口を開く。テントの四隅を固定する金具が
気になるらしく、触って具合を確かめている。
「いいえ、何でも…。そんな深刻そうに見えましたか、俺?」
「あー、やっぱペグ打ち甘かったなあ。……というより、お前そんなに喋るの得意じゃないほうだろ」
「…得意ではないですね」
答えた緒方に、だろ? と中村は鎚の柄を向けた。
「実は俺もなんだけどな。あれだ、類友。そんな気がしたんだよ」
視線をペグに戻した横顔で、中村が言う。そのまま、金具を鎚で叩きはじめる。
彼の意図を読めずにいると、少し離れた前方の平地にいる古田の声が聞こえてきた。

119:126
04/11/29 00:19:10 P6C6CPvD
「あ、中村おった」
そちらに視線を移すと、古田が手振りと口の動きで「中村呼んで」と言っている。緒方は中村の肩に
触れて、古田が呼んでいることを伝えた。中村は金具を打つ手を止めて後ろを振り返り、頷いた。
鎚をその場に置き、彼が立ち上がる。その動きを追った自分に、ふと目を向けてくる。
「あんまり溜めこむなよ。話せることは話したほうがいい」
な、とこちらの肩を軽く叩き、中村は古田のいる場所へ足を向けた。柔和な笑みを残して。
中村の姿が遠ざかった後、緒方は視線を落とし、自らの肩を手でつかむようにした。
(話せることなら ─ )
今すぐにでも洗いざらい全部吐きだしてしまいたい衝動に、背筋が震えた。
心のストロボが伏せた瞼の裏を灼き、この身に降りかかった事象を鮮明に映しだす。
あの時、背骨に沿って押しつけられた銃口の冷たさと、『彼』の発した声。

─ 興味があるんですよ。あんたがどんな風に狂っていくのか。

(コロセ)
殺せ、と、右の鼓膜を絶えず打つ吐息が、思考の焦点を奪う。五感と、シナプスとの直結が鈍っている。
目はただのレンズ。耳はただの集音機。口は壊れたスピーカー。
眼窩に収まったレンズが、差し向かいに座り込んで話す二人の男を捉え、さらにその様子を腕組みして
傍観している男(こちらは木にもたれて立っている)に向けられた。
集音機は吹き荒れる風の音を拾うばかりで、彼らの会話まではつかめない。
そして吸い寄せられるように、レンズはそれを見た。
前方から左側へ。テントの緑色の先、目立たない場所を選ぶようにして座っている人物。
地面に置いた小さな道具を、面白くもなさそうに片手で操作する ─ その動きを止め、顔を上げた。
彼の両目が冷たく細められ、笑顔となる。嘲るそれに。

─ でも俺の予想だと、緒方さんはあっさりと狂ったりはしないと思うんですよね。

(高木)
知っている。自分は知っている、それでも。
闇に侵食され、塵と化していく自我がそれでも、まだ意志を保とうとしていることを。
じわじわと『狂っていく』己自身を、第三者の目で見ていることを。
知っているのだ、何もかも。緒方の思考は虚をさまよう。

120:126
04/11/29 00:20:58 P6C6CPvD
元凶は、無線機から繋がる右耳のイヤホン。だがこれは外せない。いっそのこと外してしまえば楽に
なれるだろうことを分かっていても、生存本能が否応なく先に立つ。
(腹の中にある爆弾、か。本当にドラマだな)
選手会役員全員の体内にあるという、カプセル入りの爆弾の存在を告げたのは高木だった。
少しでもおかしな真似をすれば、監視しているオーナーがそれを爆発させるという。
想像は恐怖を生み、生まれた恐怖は自身を束縛する糸となる。袋小路のメカニズム。

殺せ、殺せ、と急きたてる声が、果たして聴覚が捉え続けているものなのか、それとも脳内でリフレインを
起こしているだけなのか、判別すらできなくなっていた。
ああ、殺してやるよ ─ 緒方は思う。この場にいる人間を片っ端から撃ちぬくのはどうだ。それでは
面白くないから、ここにある鎚で頭を叩き割ってみようか。
誰を最初に? 誰から? ふつふつと熱くなる脳とは対照的に、冷やりとしたものが掌に触れた。
知らないうちに、鎚を握りしめていた。緒方は表情をひきつらせた。笑いたかった。
(残念だな、高木。俺はとうに狂ったみたいだ)
掌に張りついて放せないそれを固く握ったまま、緒方は立ち上がる。夢遊病者のように危なげな所作で。
だがそれでいて、無駄のない素早い動きで。


「古田さん」
その時彼が ─ 清原が発した声を、古田は危うく聞き逃してしまうところだった。
中村との会話の間隙ができた瞬間でなければ、低く平坦な呟きはたやすく風に紛れていただろう。
そちらを振り返ると、腕組みをした清原が元々のいかつい顔をさらにしかめて、ある方向を見つめていた。
「……緒方がおらん」
ただ読み上げられただけの台詞は、理解するためのわずかな猶予を古田の脳内に生んだ。
まさか、とその人物がいたはずの場所へ視線を転じ、そして清原の告げた言葉に偽りのないことを知る。

降りそそぐ木漏れ日が、灰色の雲に翳った。

【残り17人・選手会11人】

121:126
04/11/29 00:27:46 P6C6CPvD
しつこいようですが、体内爆弾は高木のウソです。

122:112
04/11/29 00:43:56 4lUM38Co
151.勝利条件

乾いた笑みと、向けられた銃口―それが、佐伯の裏切りを確信させた。
オーナーに好き好んで与しようという佐伯の気持ちは、由伸の理解の範疇を越えている。
…まだ小久保の考えていたことの方が理解できる気がした。甘い考えだったけれど。
(佐伯さんがどういうつもりでも…殺し合わずにすむわけがないな)
自分の銃は狙撃銃、佐伯の銃は自動拳銃のようだ。
懐に入られたら、やばい。
距離を詰められたらどうなるかは、ついさっき身をもって確かめたばかりだ。
ただし、と由伸は思う。
(無理して殺さなくても、逃げられればそれでいい。
 …殺すのがベストだけどな)
裏切りが知れているのとそうでないのとでは、危険度が全く違う。
逃げきって、佐伯の裏切りを選手会の誰かに伝えることができればいい。
目の前に敵がいるというのに、思ったより落ち着いている自分に気づき、由伸は薄く笑った。
(とにかく、生きてこの場を切り抜けること。それが、俺の勝利条件)


憎しみのこめられた視線と、向けられた銃口。―それが、裏切りの発覚を確信させる。
(よりによって由伸か…ナベツネさん怒るやろうけど、しゃあないな)
由伸の銃は狙撃銃、自分の銃は自動拳銃。この距離なら十分優位に立てる。
ただし、と佐伯は思う。
(逃がしたらまずい。絶対殺さんとあかん)
逃がして裏切りが知れてしまえば、今後の行動が著しく制限される。それは避けたい。
いずれ露見するにしても、タイミングは遅ければ遅いほどよいのだから。
(何が何でも仕留めること。それが、俺の勝利条件)


123:112
04/11/29 00:46:25 4lUM38Co
「なあ、由伸」
少しだけ足を踏み出しながら呼びかける。
一応説得だけはしておかなければならない。
由伸が応じることはないだろうが、ナベツネへの弁明のためだ。
「できたら、お前は殺したくないんやけど」
何気ない風を装いながら、少しずつ距離を詰めていく。気づかれないように、ゆっくりと。
「今更何言ってるんだ。あんた、ジジイどもの手先だろ?」
気づかれないように、少しずつ後ずさる。少しでも距離を稼いでおかなければ。
「んー、まあそうやね。でも、お前殺したら渡辺さんに怒られてまうからなあ」
銃口を向けたまま、軽く肩をすくめてみせると、由伸の表情が僅かに強張った。
「渡辺さんはお前のこと心配してるで。恩を仇で返すのはよくないんとちゃう?」
「恩なんてねえよ」
吐き捨てる。あるのは、憎しみと怒りだけ。
睨み付ける由伸に、いっそ優しい口調で問いかける。…決して受け入れられることのない問いを。
「お前が協力してくれたら楽できる。…なぁ、俺と来んか?」
「断る。あのジジイに従うつもりはない」
「そうか…」
ならば、ここから先は殺し合いだ。
少しの静寂の後、双方の表情が同じようにゆがんだ。

「…じゃあ、死んでもらうしかないわなぁ?」

【残り17人・選手会11人】


124:代打名無し@実況は実況板で
04/11/29 01:28:35 Y1OTsfNA
152 宴の支度〜浸透〜

「目標の内部システムは全て掌握しました。いつでも仕掛けられます。」

先刻からもう三度も同じ報告をして来る。早く仕掛けさせろとの催促だろう。軽く頷き、
男はチェシャ猫のような笑みを顔に貼り付けてゆっくりと答えた。

「まだだよ。まだその時じゃ無い。」

何日も風呂に入らない人間特有の体臭と、ジャンクフードの臭いが充満したその部
屋で端末に向かう太った男たち。彼の会社の後ろ暗い部分を担当する部署、社長室
第二別室。

既に「プログラム」の管理システムは密かに彼の掌中にある。命令ひとつでいかように
も操れる。だがたかがアナログメディアの主と言えど相手の力は強大だ。安易に正面
切ってこの「プログラム」を崩壊させた所でその後に狩られるハメになるのは目に見え
ている。

彼は待っていた。後ろから殴り倒すタイミングを。その一撃を老人達の致命傷へと結び
つけることが可能な一瞬の隙を。

無論、仮にも企業家である。単なる私怨だけでリスクは取らない。それに見合うだけの
収益は毟り取る。英雄として球界に迎え入れられる新たなる盟主の座、そしてその知名
度と信用を武器にIT業界の中心に躍り出る。

その為には─選手どもにはもう少し踊っていて貰おう。

「俺の知らない会社、ね・・その侮辱、後悔させてあげるよ?爺さん。」

【残り17人・選手会11人】


125:代打名無し@実況は実況板で
04/11/29 06:23:57 LxqhX4i9


126:代打名無し@実況は実況板で
04/11/29 13:04:10 WGFG9gwk
新作キテタ━━(゚∀゚)━━!!!!!
職人さん達GJです!

とりあえず憲伸と正津が(つ∀`)

127:代打名無し@実況は実況板で
04/11/29 20:18:10 +7aFz5n/
職人さんたち乙
ホリエモン光臨しとる…w
スケールがどんどん大きくなっていくな

そしてゴメス頑張れ

128:代打名無し@実況は実況板で
04/11/29 21:43:22 0x+U0t5h
やべえホリエモンがかっこよすぎる
ぞくっとした

129:代打名無し@実況は実況板で
04/11/29 22:33:19 LgVPHGmA
ホリエモン臭キタ━━(゚∀゚)━━!!!!!

130:代打名無し@実況は実況板で
04/11/30 18:14:40 BHU1EKmf
ひそかにヨシノブと佐伯も修羅場

131:代打名無し@実況は実況板で
04/12/01 11:29:00 nF9mLVGk


132:代打名無し@実況は実況板で
04/12/02 02:20:44 863L2j/j
ホシュ

133:代打名無し@実況は実況板で
04/12/02 22:16:35 EAPDofC+


134:代打名無し@実況は実況板で
04/12/03 21:36:56 dJESKXA7


135:代打名無し@実況は実況板で
04/12/04 15:29:26 epSYug56
hosyu

136:代打名無し@実況は実況板で
04/12/05 02:19:47 leJK943G
降臨期待あげ

137:112
04/12/05 07:54:20 hN4GYhj3
153.踏んだり蹴ったり

「死んでもらうで、由伸!」
先に動いたのは佐伯だった。
手にした銃を撃ちながら突っ込んでいく。銃弾が由伸の周囲で撥ねた。
「―死ぬのは、あんただっ!」
佐伯に照準を定めて、由伸は引き金を引いた。
しかし、走ってくる人間を狙うのは、やはり容易なことではない。
胸を狙ったはずの銃弾が逸れて肩をかすめる。赤い血が散ったが、佐伯は止まらない。
必殺を狙った初撃が外れた。…ならば、無理はしない。生き残ることが最優先なのだから。
木を盾にしながら逃げ、チャンスがあればまた撃つ。
由伸は身を翻した。

(一撃離脱ねぇ…悪うないで、由伸)
潔いほどの逃げっぷりに、佐伯は目を細めた。
「ただし、お前の足が万全だったらの話やけど」
その視線は由伸の足に向けられている。井端との交戦で負傷した足。
痛むのだろうか。僅かに引きずるような形になり、スピードを殺してしまっている。
あまりの足の速くない佐伯でも、容易に距離を詰められるほどに。

銃声が近づいていることに気づいて、由伸は舌打ちする。
負傷した足。なんとか一人で歩けるくらいにはなっていたが、走るのはまだ無茶だったようだ。
このままでは、そのうち追いつかれて、そして―
銃声と共に由伸の右腕が跳ね上がり、激痛が走る。
銃を取り落としそうになるが、両手で何とか支えて振り返り、発砲した。ろくに照準もつけないままに。
当然命中するはずもなく、銃の反動が右腕に強く響いた。
右腕が銃から離れ、だらりと落ちる。追い打ちを掛けるように、脇腹を銃弾が削いだ。
地面に膝をついてしまった由伸の右腕と脇腹からは、真っ赤な色がにじみ出ていた。


138:112
04/12/05 07:54:47 hN4GYhj3
「畜生…」
それでもなんとか立ち上がり、佐伯を睨み付ける。
気の弱い投手ならおびえて制球が定まらなくなるような視線の先で、
佐伯は悠然と銃のマガジンを取り替えた。
「その足でよう頑張ったけど、ここまでみたいやね」
銃口が由伸の胸に向けられる。
「じゃあな、由伸。…恨まんといてな?」
引き金を引こうとした佐伯の動きが、急に止まった。


佐伯の顔が困惑にゆがむ。胸ポケットに振動を感じて。
それは、携帯電話の着信を知らせる振動だった。
―由伸にとどめを刺そうという所に電話してくる奴が誰かなんて、確認しなくても…考えなくてもわかる。
(ナベツネさん…!この大事なときに!)

渡辺は由伸に執着しているようだった。
ならば、この電話は―「由伸を殺すな」との叱責と、
「逆らったら横浜がどうなるかわかっているだろうな」との恫喝に決まっている。
(んなアホな。由伸逃がしたら、どうなると思ってんねん!…でも…)

佐伯の動きが止まったのを見て、由伸は素早く動いた。
手にしたドラグノフ、右腕の負傷でまともに構えることすら難しいそれを、思い切り佐伯に向けて投げつけると、
佐伯がバランスを崩してよろめくのを確認することもなく、森の中に飛び込む。
足が、腹が、腕が、焼け付くように痛むが、かまっていられない。
少しでも遠くへ行かなければ。生きて切り抜けて、誰かに―
気を抜けばかき消えてしまいそうな意識を叱咤しながら、由伸はひたすら森を駆けた。


139:112
04/12/05 07:55:44 hN4GYhj3
森の中へ消えていく由伸の背中に銃口を向けたまま、佐伯は動けなかった。
由伸は怪我をしている。銃も手放した。
今追いかけていけば、仕留められる、それなのに、追いかけることができない。
ポケットの振動は続いている。のろのろと携帯を取り出すと、案の定渡辺からだった。
―無視して撃てばええ。
 ええやんか、ベイスターズなんか、どうなっても。
 ベイスターズが潰されたって、知らない。そう、知らない……
「……んなわけ、ないやろ」
力のない呟きが漏れた。
佐伯にとってベイスターズは全てを擲って守るべきもの、愛するべきものなのだ。
―たとえ、それが自分を切り捨てた存在であったとしても。
苦虫を噛み潰したような表情で銃を降ろすと、やっと電話の振動は収まった。

「こういうのを、踏んだり蹴ったり、って言うんやろうなあ」
―チームメイトを、殺した。
―愛するチームから、切り捨てられた。
―裏切りがばれてしまった。
―自分に指示を出している人間に、由伸の殺害を邪魔された。
―由伸に逃げられた―
佐伯は天を仰いだ。
見上げた視線の先では、佐伯の愛するチームのシンボルカラーと同じ色の空が
急に出てきた黒雲に浸食されようとしていた。
まるで今の自分の心のようだ、と思う。

自然に、弱気な言葉が口をついて出た。
「…横浜、帰りたい…」

【残り17人・選手会11人】

140:2×4
04/12/05 08:23:57 p08aWv7o
ごめん、つまらん


141:代打名無し@実況は実況板で
04/12/05 11:27:15 zsTuDTOZ
佐伯…(つД`)

142:代打名無し@実況は実況板で
04/12/05 13:39:05 ujE6hjTt
>140

143:代打名無し@実況は実況板で
04/12/05 21:51:40 SjWr6ERJ
職人さんGJ・・・・
佐伯・・・・・本当にお前って奴は・・・・・(つД`)

144:代打名無し@実況は実況板で
04/12/06 17:26:41 X9hvXFHK
板が英智だらけ・・・

145:代打名無し@実況は実況板で
04/12/06 19:20:02 O+lOAHaY
age

146:代打名無し@実況は実況板で
04/12/07 05:35:28 S29bK7sU
保守

147:代打名無し@実況は実況板で
04/12/07 16:21:57 Vaap48ng


148:代打名無し@実況は実況板で
04/12/08 06:12:54 0tH2R66R


149:代打名無し@実況は実況板で
04/12/08 23:07:50 WH71Vgf3
tanisige

150:代打名無し@実況は実況板で
04/12/09 00:42:59 PcSh4TFj
ほす

151:代打名無し@実況は実況板で
04/12/09 21:45:16 J7iPZ+GR
保守

152:代打名無し@実況は実況板で
04/12/10 13:01:41 MZnPo6Nk


153:358
04/12/10 22:23:44 q5mNc7Wp
154.道化の目的

背後の足音は一向に遠ざからなかった。複数ではない。あいつ一人だけだ。
もう追ってくれるな…。走ってみると、一日分の疲れが濡れた布のように
身体全体にまとわりついてくる。反射的に走り出したが、さっきいた地点から
どちらの方に向かったか、どれぐらい離れてしまうと"コース"を見失ってしまうか……
衝動の後ろ髪を、理性がつかんだその時だ。
右足が障害物にぶつかって、深くすくいあげられた。
上半身は慣性の法則に従って、今までのスピードで前へ進もうとする。
当然、身体が宙を舞った。股のぞきした視界には横たわるユニフォーム姿の誰かと、
そして追ってくる背番号5が―
「ぐぁっ」
頭頂部では衝撃全てが吸収できなくて、首に反動が伝わった。遅れて、下腹部が
地面に叩きつけられ少し跳ねた。
「川相さん!」
ずっと前から聞き続けているような錯覚さえする、渡邉の叫びが耳に届く。
首の骨はどうやら大丈夫らしい。けれど、すぐには動けそうになかった。
吐き出す息で、目の前の雑草が振り子のように大げさに揺れるのが、ぼんやりと映った。
何に躓いたんだ……けれど、あれは多分中日の……
「川相さ―」
彼の台詞が途切れた。心音が、走ったのとはまた別の理由で大きくなるのがわかる。
誰だ、そして生きてるのか、死んでるのか。
次の言葉が出るまでが、やたらに長い時間のように思われた。
「…森、野?」
それを合図に、なんとか頭を動かしてみた。つま先の向こうに見えるのは、黒い染みが広がる
中でも鮮やかに浮かび上がる、赤い算用数字の8だった。

154:358
04/12/10 22:24:00 q5mNc7Wp
『そりゃ川相さんはいいですよ、世界記録持ってるし、
もう十分野球やって満足いってるのかもしれませんよ』
そう、人を罵倒して離れていったのはいつだったか。1日前の出来事だ。
なのに、随分昔の出来事のように思えた。
あの時、右手の拳が震えていたのを、こいつは気づいていただろうか。
殴りかかりたかった事を。ここへ来た自分を踏みにじられた屈辱感に、
怒髪天を衝くほどの思いでいた事を。恐らく彼は気づかなかっただろう。
そして気づかないまま逝ってしまった。あの時、怒りにまかせて彼を殴っていれば、
(確かに怪我はするだろうが)こうして一人死んでしまうことはなかったのではないか。
渡邉が懸命に、横たわった森野から返事を得ようとしていたが、それはもちろん叶わない。
彼のやりとりが急に遠ざかっていく。一つの疑問に、気がついたために。

―何のために、自分は狂ったふりをしているのか?

このままでは、抑えた怒りも悲しみも、全てが無駄になってしまう。
こいつらがあっけなく死んでしまっては意味がないのだ。多少の犠牲は出るだろうと
頭ではわかっていたが、目の当たりにしてみると違う。もっと強く切迫した自責の念が押し寄せてくる。
うかうかしていられない。地面に手をついてみた。しっかり力が入った。
じわじわと自分の体を地面から引き離す。渡邉は黙って、隣に佇んでいた。
こいつと鬼ごっこをしてる時間はない。走り出した時の胸に迫る思いも、こいつが
死んでしまえば何にもならない。
一刻も早く、"蛇"の巣へ。そこでたとえ、こいつらを救う決定的な手段が見つからなかったとしても、
今自分には、それしか方法がない。行くほかにないのだから―。
頭の中で地図を広げた。さっき進もうとしていた方向と、今自分が走ってきた方向、結ぶと
三角形の斜辺が現れる。右よりの道をとれば、元の方向に戻れるはずだ。
まだふらつく足取りで草を踏み分けていくと、その後ろをやはり、渡邉がついてきていた。
泣いてはいなかったと、思う。

【残り17人・選手会11人】

155:代打名無し@実況は実況板で
04/12/10 23:05:42 ywXdz53T
相変わらず巧い話運び。
川相の向かう先はもしかして・・・?

156:代打名無し@実況は実況板で
04/12/10 23:32:19 bmcVBkTC
久々の投下、乙です!
川相&ナベコンビ、本当に好きだー

157:代打名無し@実況は実況板で
04/12/11 22:38:08 5rzqcTcH


158:112
04/12/12 12:40:35 f/h7aZKt
この話の時期って、2004年夏頃、オリンピックの前くらいでいいのかな?
由伸の話でオリンピックネタ使ってみたいと思ったんで、今更ながら聞いてみる…orz



159:623
04/12/12 15:08:10 gOwSy157
>>158

自分も、それ少し気になってました。<この話の時期
とりあえず序章でナベツネさんが「今季首位で良い思いをしただろう」って
言っているのと(まだ優勝は決まってないが、それに近い時期?)、岩瀬と福留が
このバトロワにちゃんと参加していること、福留がまだ骨折してないことの3点を踏まえて、
8月後半くらいなのかなと自分は思ってました。
そしたら、ちょうどオリンピック直後になりますね。

160:126
04/12/12 15:19:30 KVEBKl4U
>>158

自分はオリンピック終了後の気持ちで書いてました。8月後半〜9月くらい?
(ドメの骨折は完全に頭から飛んでました…。ってことは9月はありえんわなorz)

オリンピック前の設定だとすると、日本代表がイタリア合宿に入ったのが8月5日
なので、それ以前(7月末くらいから)の話ってことになるんですよね。
それだと、ナベツネの「良い思いをしただろう」っていう台詞にちょっと無理があるかな、
と思うのですが。
2003年の阪神ならともかく、今年の中日はぶっちぎりってわけではなかったですし。

161:112
04/12/12 15:57:15 f/h7aZKt
>>159
>>160
今まで7月後半、オールスター休みくらいを想定して書いていました。
岩瀬とドメ、由伸がいること、ナベツネさんがまだ辞任してなさそうだったこと(はっきりと書いている部分は見つけられなかったけど)、
「第2の合併が行き詰まっている」と序章で白井さんがいってた辺りで
そう判断してました。

オリンピック終了後、8月末で進めた方が良さそうですね。
書く前に聞いてよかった…

162:112
04/12/12 16:18:09 f/h7aZKt
それと、これまた今更なんですけど、
参加者の現在の位置関係図とかって保管庫に置いた方がいいですかね?
個人的には、結構たくさんの選手が狭い範囲に集まっているような印象があるんだけど。

163:623
04/12/12 17:36:03 gOwSy157
155.哂う魔物

落ちてきた雨粒を感じて立ち上がった井上は、ただ歩き続けていた。
関川の生死を確かめる勇気はまだ出なかったが、この場を離れる気にもならず、
その輪を広げながら狭めながら、ひたすら関川とはぐれた場所の近くを巡り歩いていたのだ。
その足と同様にグルグルまわる思考の中で『もう、いっそのこと死んでしまいたい』という
井上自身の声と『お前は絶対生き延びろ』と訴える関川の声が交錯する。
目の前がぼやけるのは雨のせいなのか、それとも涙のせいなのか、それさえもわからない。
まるで迷路にでも迷い込んだかのように、彷徨い続ける井上の目にとうとう横たわる
ドラゴンズのユニフォーム姿が飛び込んできたのは、どの位の時間が経った頃だっただろうか?
「…セ、セキさん…?」
しかし、震える足を叱咤し何とか歩み寄った井上の目に映ったものは、関川ではなかった。
胸部から血を流し、倒れているのは背番号58、
死してなお、自分自身を守ろうとするかのように銃を構え、目を見開いたまま息絶えている大西で…
「……お前、こんなになってまで人に銃をむけるのか?そんなに生きたかったのか?
 そこまでして生きる必要あるのか……?」
(俺は、本当に生きてていいのか……?セキさん…大西…誰か答えてくれよ……)

「いい顔して死んどるなぁ。」
大西の死体に取りすがり、泣きむせんでいた井上の背に、何とも気軽なその声が掛かったのは、
井上がせめて見開かれたままの大西の目を閉じてやろうと手を伸ばしかけた時のことだった。
高橋由伸が戻ってきたのか?―と井上は身を強張らせたが、声も言葉のイントネーションも、
高橋のものとは違うことにすぐ気付く。
だが、目の端に映る服の色はドラゴンズのユニフォームの色ではない。
選手会の誰かであることは間違いないだろう…
無意識に自らの武器であるナイフの所在を確かめつつ、涙を拭って井上はゆっくりと振り向いた。
「……桧山さん……?」
「あっちには23番の死体が落ちてわ。お前がやったん?」
笑みを浮かべたまま告げられた言葉の内容に一瞬、呆然としてしまったが井上だったが、
目の前の男のあまりにも不遜な態度に、その心はあっという間に怒りに染まる。


164:623
04/12/12 17:36:15 gOwSy157

「落ちてた…ってそんな言い方……それに、なんで笑っていられるんです?
 あんたとセキさんは同じチームで一緒に戦ったこともある仲間でしょうが!!!」
だが桧山はその怒りに感銘を受ける様子もなく、井上の神経を逆撫でする笑みを更に深めながら、
井上を挑発するかのような言葉を重ねていく。
「仲間いうても、所詮勝ち負けの世界や。エゴが強い奴だけが生き延びる、野球もこのゲームもな…
 いい子ちゃんになった時点で負けやねん。それに…」
「それに?…何だってゆうんです!?」
「いまはただの敵やないか。敵は殺すだけ…死体になんぞ興味ない。」
「なっ…!?」
「聞こえんかったか? それが何様であろうが、負け犬になんぞ興味ない、そう言ったんや。」
そう言い放つと、何がおかしいのか腹を抱えて笑い出した桧山に、とうとう井上の怒りは頂点に達した。
「笑ってるんじゃねえよ!!!……殺す…あんたは許さない……いますぐ笑えなくして、
 あの世でいまの暴言と態度をセキさんに謝らせてやる!」

「おお、怖。ほんなら、殺される前に殺さんとあかんね。」
その言葉と共に、井上の足元に何かボールのような大きさのものが転がる。
(手榴弾………!!?)
井上は反射的にその場を駆け出したが、十分な距離は取れず、爆風に煽られ地面に叩きつけられた。
全身が切り裂かれたように痛みが走り、気が遠くなりかけたが何とか意識を保つと、近付いてくる
桧山の影に向かって、ナイフを一本投げつける。
「なっ、危ないやんか!無駄あがきせんで、あっさり死んどいたほうが楽やで。」
その言葉に、桧山の身体にナイフが当たらなかったことを悟った井上だったが、
ここで引くつもりは当然なかった。
「冗談は顔だけにしておいてくださいよ…」
(死んでたまるか…絶対、生き延びてみせる!!)
この期におよんで、ようやくそう決意できた自分に苦笑を浮かべると、井上は残ったナイフを構え桧山と再び対峙した。

【残り16人・選手会11人】

165:代打名無し@実況は実況板で
04/12/12 17:38:05 oCa/uBoj
冗談は顔だけキター!
人のこといえn(ry

166:623
04/12/12 17:39:11 gOwSy157
>>162

位置関係図、あれば助かります。ちょっとした地図代わりにもなりそうですし…
112氏の負担になりすぎないなら、作って頂きたいです。

167:代打名無し@実況は実況板で
04/12/12 21:23:02 fGUq9wNH
正直ゴリには生き残って欲しい。

168:126
04/12/12 22:48:59 KVEBKl4U
156. 鏡のこちら、鏡の向こう

─ バンッ! 磨り硝子のはめ込まれた引き戸が立てた音に、中里は身をこわばらせた。
亡霊の残像が瞳に灼きつく。ひきつった肺が上下する一呼吸の間に、その幻影は視界から消えた。
そこには、赤い液体に浸ったガラスの破片が散らばっているのみ。
(何 ─ だよ ─ )
中里はうめいた。見開いたままの両目を正面の扉に戻す。ふっ、と影がさした。
眼前にあるのは、スラックスの膝から下。血糊を引いた革靴。
生唾を飲みこむ音と、心臓が大きく跳ねる音、耳にはどちらの音が響いたのか ─
腕を支えに上半身を起こし、膝をひき寄せた中里の視野を、黒く丸い穴が覆った。
メスを握った左手を動かす契機を見つけられないまま、中里はその闇を見つめる。死の穴を。
革靴が一歩、こちらに踏み出してきた。引き戸がまた、がたんと揺れる。
……ああ、そうか。中里は得心し、瞳の焦点を絞った。像を結んだ銃口から視線を上げ、目の前に
立つ人物の隠せない震えを見てとる。
「………立ってるのも、やっとって感じだけど………?」
この期に及んでも旺盛さを失わない強がりと減らず口は、肌にまとわりつく緊張をはねのけるのに
丁度良い作用を及ぼしたようだ。
(焦るな、こいつは死にかけなんだ)
そう言い聞かせることで、一度萎えかけた闘争本能を呼び覚ます。相手を ─ 黒木を見上げる
中里の顔に、余裕の笑みが宿った。ゆるやかに。
さながら鉄仮面のようであった黒木の無表情に、ほんのわずかな亀裂が生じていた。
互いの視線がぶつかった時間は、そう長くはなかった。
ゆらめく双眸の奥に迷いが映った。その隙を見逃さなかった中里は、すっと姿勢を低くした。
標的を見失った銃口がさまよい、下がる。たたらを踏んで後退しかけた黒木に追いすがる形で
中里は床を蹴る。
欠けた指からの流血と、後輩を刺した際に浴びた鮮血。その両方によって赤く染まった右腕を黒木の
胸に押し当て、勢いもろとも後ろの扉に叩きつけた。
「!」
ばあん、と盛大な音を響かせる引き戸に身体を縫いとめられ、黒木の表情が驚愕の色に染まる。
磨り硝子の振動がおさまるのを待つことなく、中里は左手に握ったメスを振りおろす ─


169:126
04/12/12 22:50:32 KVEBKl4U
黒木は右手の銃を握りしめる。この扉の向こうに仇敵がいることは分かっていた。
「70、そこにいるんだろ」
そう言って扉に近づいた瞬間、急な目眩が黒木を襲った。よろめいた身体が引き戸にぶつかる。
─ バンッ! 鼓膜を叩く衝撃が全身にくまなく行き渡るまでの、ほんの一秒足らず ─
『……、7番のある背番号みたいやな』
水口を殺したのは、7のつく背番号の選手。
『酷い怪我だったから心配したが、大丈夫か?』
敵であるにもかかわらず、負傷した自分に手当てを施したあの選手。彼の背中についていたのは
「17」だった。
黒木の目の前に広がる血の海。そこに伏す死体の背には、「67」の番号が見える。
17、そして67。どういうことだろう、なぜ水口の仇が二人もいるのか。
『ゴキブリみたいだ、殺しても次々出てくる…』
─ 殺した? 誰が、誰を?  ─ 決まってる。水口を死に追いやった相手を、だ。
扉についた左手で身体を支え、コルトポケットを握る右手を顔の高さに持ち上げた。
─ この銃で殺した? これで仇を取ったというのか?
(まさか)

澱む水の中を黒木は進んだ。一歩一歩が果てしなく重い。
部屋の中に踏み入った足元で血溜まりが音を立てた。立ち込める鉄錆の臭いに吐き気を催すとともに
その先に倒れ伏す人物の存在を認め、脳幹のしびれが一層強いものとなった。
(70番…)
コルトポケットが標的を捉えた。呆然と、血にまみれた顔を上げてくる相手の眉間に銃口を向けたのは
しごく自然な ─ 反射的な動作であるはずだった。
忘れるはずもない、この顔だけは。傷の痛みに震える右腕の先の銃を懸命に固定し、トリガーに指をかける。
だが討ち果たすべきその相手を睨みつけた瞬間、目の前の映像が不意にすり替わった。
70番ではない人間が、額の中央に黒い穴を開けて後方へのけぞっていくのを、黒木は見た。
─ 簡単なんだな。憶えのない声が響いた。混乱に侵された脳が全身の動きを封じる。
「!」
右腕がだらりと下がったことに気づくまでに、致命的な時間差が生じていた。
霧散した幻覚の間から現れた70番の腕が胸元を突き、身体を後方に押しやった。固い引き戸に背中が
ぶち当たる。痛みにうめく黒木の眼前に、金属の閃光が迫った。
……意識が空洞と化す。再び。

170:126
04/12/12 22:51:24 KVEBKl4U

振りおろされたメスが、黒木の右頬をざくりと裂いた。
刃が肉を切り裂く擦過音と、鮮やかな血の色。その二つを知覚したときにはもう、中里の左腕は
乳白色の硝子を破り、廊下側に突き抜けていた。ばらばらと破片が床を打つ。
(こいつ…!)
黒木の首筋を捉えたはずの刃は、唐突に頭を沈ませた彼の動きに追いつけず、狙いを外したのだった。
死にぞこないが ─ 胸中で毒突き、憎悪に満ちた眼差しを返そうとするが、その前に顔の半分を
血に染めた黒木の双眸が中里を射抜く方が早かった。
「……っが…っ!?」
黒木の膝蹴りがまともに鳩尾を打った。流れる動作で振り払った左手の甲が中里の顎の辺りに命中し、
彼の身体はもんどりうって床に倒れこんだ。その拍子に中里の手から離れたメスを、黒木が靴の先で
遠くへ蹴り飛ばした。
回転しながら床を滑っていく凶器の行方を追おうとした中里の視線を、黒光りする銃口がさえぎる。
「俺は」
黒木が呟いた。がらんどうの意識。そこにはもはや、純粋な殺意しか存在していない。
─ 背番号70、俺は。
「お前を殺す」
紡がれる、死神の宣告 ─

空虚な闇に埋めつくされた意識の片隅、遠い場所に誰かの声を聞いた。
『黒木、やめろ!!』

(………岩本さん?)
我に返る脳に、トリガーを引く感触が伝わり、小さな銃が目前で弾ける。
乾きはじめた床の血痕の上に新たな血溜まりが広がっていくのを、ただ無言で黒木は見つめた。

【残り15人・選手会11人】

171:126
04/12/12 23:05:52 KVEBKl4U
>>162
ぜひお願いします。
まとめ作業に加えて、位置関係図まで作って頂けるのはありがたいです。
あれば本当に助かります。

172:代打名無し@実況は実況板で
04/12/13 02:22:43 HAR1Ba9D
人数減ってる・・・
中里死んだ?

173:112
04/12/13 02:50:32 IaQ1EZAP
まだまとめ切れてないんですが、今のところ。

・北東部 
  選手会キャンプ地 古田・清原・中村・高木
  選手会キャンプ地付近 今岡・小久保、緒方
・北西部
  立浪達3人、川相・渡辺
・中央付近
  英智・小笠原、桧山VS井上
・南西部
  由伸、佐伯
・南部
  井端、荒木、山本昌達3人

こんな感じではないかと。
つっこみ、訂正などあったらお願いします。

あと病院の位置がうまく決められない。島の右下で海に面しているみたいだが、
選手会キャンプ(旧)と微妙にかぶるんだよな…。


174:126
04/12/13 07:00:52 Dq0VPMvQ
>>172
今気づいた…。普通にコピペしてりゃ良かったのに_| ̄|○
すいません、先走りすぎですね。残り16人に訂正してください。

>>173
乙です。自分も病院の位置に悩んでました。
ドラゴンズの選手の位置関係で、自分の中でちゃんと確信を持てていたのが
南部の井端、荒木、昌さんたちだけってのも凹む話だ。
他の書き手さんたちの意見とも照らし合わせて、訂正・修正できる部分は
していった方がいいですかね?


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