中日ドラゴンズバトルロワイアル第九章
at BASE
1:代打名無し@実況は実況板で
04/11/07 12:47:51 tGybuiw1
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中日ドラゴンズバトルロワイアル第八章
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2:代打名無し@実況は実況板で
04/11/07 12:48:47 eT2TGGzM
2GET そして大予想
来年は中日連覇です
1 中日 川上山本昌朝倉小笠原ドミンゴ平松高橋大回転 福留復活ぶっちぎり
2 ヤクルト ラミちゃん川島新人王藤井復活も
3 横浜 三浦番長根性の復活&打撃爆発も防御率脅威の9点台で。
4 広島 嶋が奇跡の確変続行に打撃陣に怪我なしも投手陣が・・・
5 阪神 井川福原以外にダークホース金澤15勝も兄貴が・・・・・ 打撃大不振
6 巨人 上原に加え内海が予想以上の活躍も。ラビ封じられ大炎上
反論 ありえなーい
3:代打名無し@実況は実況板で
04/11/07 12:48:52 tGybuiw1
他球団バトロワ・現行スレ
横浜ベイスターズ バトルロワイアル6
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プロ野球12球団オールスター・バトルロワイアル
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近鉄バファローズ・バトルロワイヤル
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千葉マリーンズ・バトルロワイアル
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阪神タイガースバトルロワイアル
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他球団バトロワ保管庫
讀賣巨人軍バトルロワイアル
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横浜ベイスターズバトルロワイアル
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広島東洋カープバトルロワイアル
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福岡ダイエーホークスバトルロワイアル
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阪神タイガースバトルロワイアル
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近鉄バファローズ・バトルロワイアル
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千葉ロッテマリーンズバトルロワイアル
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4:代打名無し@実況は実況板で
04/11/07 13:27:51 eT2TGGzM
来年の萌えドラ
1回山井が三三振
2回朝倉三三振
3回昌でも三三振
もーえーどらごんずー
4回川上三三振
5回あきふみ三三振
6回川岸三三振
もーえーどらごんずー
7回山北三三振
8回久本三三振
9回岩瀬が守護神だ
もーえーどらごんずー
5:代打名無し@実況は実況板で
04/11/07 17:38:54 Hf9S9UvX
前スレ容量超待ち保守
6:代打名無し@実況は実況板で
04/11/08 00:50:39 EwPl2HAU
保守
7:代打名無し@実況は実況板で
04/11/08 04:39:04 w6qJrHCg
==、,-、 、ヽ、 \> ,, '''\ _
メ゙ヽ、\ ̄""" ̄--‐ 、 \ /ゝ、\
=─‐\\‐ /─'''''ニ二\''' |レレゝゝ、\
 ̄く<<く >, ゙、/<三三二\ ̄\ゝゝゝゝゝゞ''ヽ、 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<<<<〈__入 ゙、く彡三三三二ヽくゝ\メメメゝ、_ゝ、\ | さあ幕田の顔写真をかせ・・・
くく<<<<<< ゙、 ゙、ミ三三二ニ─ゝゝゝゝゝ,,,,,,,、 '( ゙''ヽ、ヽ、 < どんな表情でもにこやかな
くくくくくく彡‐ヽ ゙、ミ三三二ニ'''くくゝゝ_ゝゝ、\\_,>」ノ, | 顔にかえてやろう
く く く く く 彡゙、゙、三三二ニ‐くゝ、/ ,,,,,,,,メメゝヽ''''"ゝゞ丶、 \_____
二─二二彡彡、゙、三三二==くメゝ/ ゙'ヽ、メゝゝゝゝゝゝゞ''ヽ-、,,,,,,_
‐'''" ̄ \彡彡ミ、゙、三二=''"く<メ/:: \''-、メメゝゝゝ_ゝ 、 ,,、ヽヽ
、 ,,,,- ゙彡//ヾ、三二= くゝ/:::.... \>∠レ-,-‐ニ二メヽ''ヽ ノ
゙ヽ、,,,-‐//_///,,、゙、三二= ゙、 ""''' ヽ>//レレヽ,,___ /
-,,,,,,-‐'''"""/////,,ヽ ゙、三二─ ゙ヽ. //-ヘヘ,、 レレレレノ
''" ,l|"////ノ,、\彡'''''‐-ニ,、 ::::::::::,,,,,,,,// ゙ヽフ/|/| レ'
/ゝ、/ヽ|ヽレ,,゙ヽ、゙''ヽ、,,,,,,_ヽ''ニ='',,-'"、─-,,,,,_  ̄"'ノ
/メ / レ/,''"へへべ''─---- ̄-メヽ"ゝゞゝヽ、 >---''"
8:代打名無し@実況は実況板で
04/11/08 16:52:03 SexlpNd6
URLリンク(dragons.cplaza.ne.jp)
9:代打名無し@実況は実況板で
04/11/08 21:02:49 7awPLL7w
フラッシュ化きぼん。
10:代打名無し@実況は実況板で
04/11/08 22:41:16 tMUfJPuq
前スレ梅完了 乙
11:358
04/11/08 23:20:51 FAg/Vi1x
135.独り
潮騒が近い。そこにある林を抜ければ海に出るのかもしれない。
川相がぼんやりと林のほうに目を向けたとき、波の音に混じった、談笑の声を聞きわけた。
(またか……)
表情を維持するために力を入れる。渡邉は気づいているのだろうか。
どこか様子見のできる場所は……と視界に入る情報を分析している後ろで、渡邉が足を止めた。
「川相さん、ちょっと待ってください」
聞こえているが、わざと無視して進む。すぐにベルトをつかまれた。
この様子だと、声の主がわかったのかもしれない。抵抗せずに林を見つめていると、
ユニフォームと思わしき姿が三つ、次第に輪郭をはっきりさせてきた。
けれどその一つは、やけに赤黒く見える。
「やっぱり。立浪だ」
渡邉が言ったのとほぼ同時に、その赤黒い影がその人であることを
理解した。隣で肩を支えるようにしているのは落合、後ろにいるのは……
「おーい」
控えめな叫びが向こうから飛んできた。二人に気がついたらしい。
「行きましょう」
渡邉は有無を言わさず強引に、川相のベルトを引いて三人に近づいていった。
12:358
04/11/08 23:21:09 FAg/Vi1x
お互いが状況報告している間、川相は退屈そうなそぶりをして空を眺めていた。けれど次々と
告げられる死者や殺戮者の情報に、一つ一つ確認を取って聞き返したい衝動が絶えず彼を襲った。
渡邉は言葉数少なく、そうか、と時々合いの手をうつだけだ。三人は、川相がおかしくなっている
という事を聞くと、それ以上何も追求しなかった。空を一羽の鳥が、すっと横切っていく。
「これから、どうするんだ?」
話が一段落して、渡邉が聞いた。今までの出来事を改めて振り返ったせいだろう、
三人の俯いた顔には暗い影がさしている。
「…こいつの状態も良くないんで、落ち着いて治療できる場所を探します」
立浪が一度、視線を落合に当てたが、諦めたように目を伏せた。酷い有様だという自覚はあるのだろう。
彼のユニフォームは白の部分よりも血濡れた部分の面積の方が大きくなってしまっている。
渡邉は軽く頷いて、ふと地図を取り出し指さした。昨晩己らが使った穴蔵の事を思い出したのだ。
「使えるかどうか、わからないけどな」
「いえ、ありがとうございます」
一礼して、川相の方に目配せすると、彼は尋ねた。
「ナベさんは…どうするんですか?」
「俺は、この人についていくよ」
「でも、川相さんは……」柳沢がなぜか必死な様子で、口を挟んだ。
「わかってる。でも、この状態で一人にするわけにいかないだろ」
渡邉の物静かな口調がまた、正気の川相の心を揺さぶった。
三人の沈黙が、渡邉への同情と自分への呵責のように感じられた。
薄ら笑いの喉の奥に、ぎゅっと力を込めた時だ。
青空を縦に裂く細い光の筋が目に入った。間をおかず、雷鳴が駆けていく。
川相はほぼ無意識的に立ち上がり、ありったけの力で走り出した。
「川相さん!」
―背後の声が、聞こえなくなるまで―
その思い一つ、彼を動かした。
【残り18人・選手会12人】
13:112
04/11/09 01:23:55 leMZPf5I
136.笑顔の意味
雷鳴がとどろき、井上は顔を上げた。
視線の先には雲一つない青い空。
(こんなにいい天気なのに、雷?)
見上げた空に関川の面影が浮かんだ。
最後に見せた、あの笑顔。
(俺って、顔に似合わずロマンチストなのかな?)
井上は苦笑する。
ーセキさんは、本当に俺を殺すつもりだったんだろうか。
その疑問は、ずっと井上の中にあった。
外野手を殺してレギュラーを取り戻す、そう言っていたのに、実際の行動は…。
「馬鹿ですよ、セキさん」
口に出して言ってみる。
「レギュラー獲りたいんなら、迷ったら駄目ですよ。俺を逃がしてる暇なんか、ないでしょうが」
あの後関川がどうなったのか…それを確かめに行く勇気はなかった。
木にもたれかかったまま、井上は呟いた。
「なんであのとき笑ってたんですか、セキさん…」
14:112
04/11/09 01:24:57 leMZPf5I
とどろいた雷鳴に、空に目をやるが、すぐに視線を戻す。
どこに敵が潜んでいるかわからないのだ。一瞬の気のゆるみが、死につながりかねない。
ーー死ーー
思考の中に浮かんだその単語に、ぶるっと、高橋の体が震えた。
あのとき、額に銃を突きつけられ、死ぬ、と思う暇もなく引き金を引かれて、
…偶然弾が切れていたから、俺は今ここで生きている。
ほんの紙一重の差だったのだ、生と死は。
「ーーなんであのとき笑ったんだよ、あいつは」
必殺の機会を、弾切れで逃した。それは失策だったはずだ。
試合での失策なら負けるだけだが、殺し合いでの失策が意味するところは…死。
それがわかっていたはずなのに、何故笑えたのだろうか。
「わかんねーよ…」
考えても仕方のないことだ、とわかっていても、頭から離れない。
(こんなことじゃ駄目だ、由伸)
自分に言い聞かせる。
(俺は、あのジジイを殺すんだ…絶対に)
そう思いながらも、キャンプ地の方向に自然と足が向いていた。
ついさっき味わった恐怖が、一人でいることをためらわせた。
どこか弱気になっていたのかも知れない。
(なんで笑ったんだろう)
森の中を慎重に歩いていく由伸の心を、もう一度疑問がよぎった。
(もしも、俺が死ぬときはーー俺も、笑うんだろうか?)
【残り18人・選手会12人】
15:代打名無し@実況は実況板で
04/11/09 18:04:29 vs41IYGo
16:代打名無し@実況は実況板で
04/11/09 19:16:50 cv0Lpar/
職人さん乙です。
17:代打名無し@実況は実況板で
04/11/09 19:21:18 kEAsxmxY
プロ野球バトルロワイアルにも職人さん来て下さい
スレリンク(base板)l50
18:代打名無し@実況は実況板で
04/11/09 19:38:10 v/wmWMmh
川相には生き残って欲しいなぁ…
でも無理なんだろう…
19:代打名無し@実況は実況板で
04/11/09 23:09:15 9AGHOG8a
>>18
最後のほうで死ぬんだろうな。
話は変わるけど誰か生き残ってるメンバーまとめてくれ。
20:代打名無し@実況は実況板で
04/11/10 03:59:58 tT2uBjfB
>>19
ドラゴンズ
福留・荒木・立浪・渡辺・井端・川相・森野・井上・川上・岩瀬・正津・柳沢・落合英
山本昌・小笠原・英智・大西・高橋聡・中里
選手会
古田・清原・緒方・高木大・桧山・小久保・黒木・高橋由・佐伯・今岡・松中・中村
間違いあったら訂正ヨロ、そういえばしばらくバトロワ書いてないなぁ
21:代打名無し@実況は実況板で
04/11/10 06:56:22 rSHMMCoS
>>20
森野は98章にて死亡しますた
22:代打名無し@実況は実況板で
04/11/10 17:47:07 E2dbin8S
23:代打名無し@実況は実況板で
04/11/10 17:51:56 X3d1btQ5
後は仲澤・ゴメス・俺竜、オーナー共かな(中日は死亡)
24:代打名無し@実況は実況板で
04/11/11 01:03:17 Bl61lZpB
保守
25:代打名無し@実況は実況板で
04/11/11 13:01:28 c9o2lvZ9
26:代打名無し@実況は実況板で
04/11/11 23:03:08 zCO86HCV
ほしゅ
27:代打名無し@実況は実況板で
04/11/11 23:25:31 cEcFY6SI
マップはないのかな
選手会のキャンプ移動経路とか
井端(のユニ)が落ちた崖と荒木・福留の距離とか
気になるんですが…
28:代打名無し@実況は実況板で
04/11/11 23:44:24 8zxUIkzR
>>27
正直マップ作ると破綻が生じると思うのだが・・・・
29:代打名無し@実況は実況板で
04/11/11 23:45:59 cEcFY6SI
そこを力技でなんとかw
30:代打名無し@実況は実況板で
04/11/11 23:57:41 YBHCefB+
正直、これ以上、職人さんに負担かけるのも忍びないよ…
31:112
04/11/12 00:13:32 RZWZJpa9
>>27
作ろうとしてみたんですが俺では無理っぽい…orz
情報が少ないし、どうやっても矛盾ができてしまう。
32:代打名無し@実況は実況板で
04/11/12 12:47:54 1LD2Jjv3
ホシュ
33:代打名無し@実況は実況板で
04/11/12 16:43:28 qrA4WPb9
まあ最初から地図があって話をつくってんじゃないんだから、しゃーねーべ。
34:代打名無し@実況は実況板で
04/11/12 18:09:36 y+LDQnXv
地図作って、職人さんが
「こいつらが海岸に行くとこいつらと遭遇するからダメポ・・・」
なんてことになったら困るしな。
35:代打名無し@実況は実況板で
04/11/12 21:35:14 R4QQU0FN
>31
そうですか、無理言ってすみません…
前章からの雷みたいに、いろんな職人さんがいっこのテーマをつなげるの
カッコイイなあと思ったもんで。
あと前田問題みたいのの防止になるかなーと思ったんですが、
そういう場合は先に制約つくっといてリレーする形式の場合かもしんないですね。
36:代打名無し@実況は実況板で
04/11/13 01:05:32 Wc/gmvE5
前田みたいになったら、中日の選手にさっさと殺させくぁwせdrftgyふじこ
37:代打名無し@実況は実況板で
04/11/13 08:41:40 4datsP7u
捕手
38:代打名無し@実況は実況板で
04/11/13 17:29:19 bzn2BC/B
39:代打名無し@実況は実況板で
04/11/13 21:08:56 4datsP7u
137.狂気の爪痕
小久保は目の前の光景に我が目を疑った。
─なぜ、今岡の首をチームメートでもあるはずの桧山が締め上げていたのか?
……なぜ……それを止めようとした松中が血に染まって地に倒れ伏しているのか………?
『小久保さん、逃げて!!!』
松中が倒れる間際に発した悲痛な叫びは、いまだに耳にこびり付いている─
にも関わらず、小久保は動かなかった、いや動けなかったのだ。
視線に囚われた、そう言ってもいい。
─この戦いを楽んでいるようにすら見えた高橋由伸ですら、
その目の奥には歪んではいたが信念のようなものが垣間見えていたというのに…
松中の叫びに反応して顔を上げた桧山の目の奥には、ただ虚無だけが広がっていて……
その得体の知れなさは、小久保を恐怖の淵に追いやるには十分過ぎるものだった。
そんな小久保をさらに追い詰めようとするかのように、桧山がゆっくりと近付いてくる。
「……ロス……殺す……裏切りもんも、逆らうやつも、英智も……お前はどっちや?」
問いの意味を理解できずに黙り込む小久保をしばらく無表情で眺めていた桧山だったが、
小久保が無意識に零した涙を目にした瞬間、おかしくて仕方がないと言わんばかりに
腹を抱えて笑いだした。
「……なんや、ただの腰抜けかい!?」
桧山にやっと戻ってきた表情……それは狂気を宿した嘲笑だった。
「殺す価値もないなぁ。」
吐き捨てるように言い放ったあと、桧山は松中を撃ったと思われる銃で小久保をひとつ殴打し、
顔に嘲笑を貼り付けたまま立ち去っていく……
40:代打名無し@実況は実況板で
04/11/13 21:09:32 4datsP7u
その背中が見えなくなったあとも、しばらくは痛みと残された恐怖に動けずにいた小久保だったが、
先ほどの場所からまったく動かず横たわったままの松中が視界に入った瞬間、呪縛が解けたかのように
身体が動き出した。
「マツ、マツ……嘘だろ……」
這いずるかように松中の側まで歩み寄り、その身体を揺さぶってみる。
「パリーグの…プロ野球界の灯を消す気か? 起きろ…目を開けろよ……マツ!!」
しかし、松中から返事を得られることはない。
「……すんません……すんません………止められなくてすんません………」
かわりに、すぐ近くで咳き込むような音と共にそんな声が聞こえた気がしたが、
小久保は、動かない松中から視線を外すことができなかった。
「マツ……」
小久保が松中を呼ぶ声は、やがて慟哭へと変わり、自らを罵倒する言葉に変わり…
そして、桧山とオーナー達への怨嗟に形を変え……あたりに響き渡った。
【残り18人・選手会11人】
41:代打名無し@実況は実況板で
04/11/13 21:36:02 F8/suCEV
乙です!
ひーやん怖いよひーやん
42:358
04/11/13 22:22:38 rDoScCeU
138.36、再び戦場へ
報告その1。中日の背番号35の選手は、「前日海岸で射殺された」模様。
断末魔の悲鳴(再生したが、すぐに宮内は切るよう命じた)の後、波の中を掻き分けているような水音が
続き、そこで生命反応が途切れた。狙撃手は断定しきれないが、恐らく
小久保・高橋の選手会人員二名だと思われる。
報告その2。背番号35の選手は、現在既に死亡している可能性が非常に高い。
カメラに後ろ姿が映ったが、真っ直ぐに進めばその先のカメラにまた映りこむはずである。
しかしあの後4時間以上が経過しているが、そのカメラはおろか付近のカメラにもそれらしい人物は
映っていない。恐らく途中で何者かに襲われ殺害されたと考えられる。ちょうど、直線を結ぶと
背番号51の生命反応が無くなった位置とぶつかるため、ここで何らかの戦闘が行われたと思われる。
報告その3。背番号11、21の両者は依然生死の確認がとれていない。
事務員風の男が直立不動で、印刷された紙を棒読みしていた。その横を別の男が、軽食やら酒を
盆に乗せせわしなく往復している。渡辺はモニターに見入ったまま、こちらを見向きもしない。
ウィスキーだけはしっかり受け取っていたが。
「わかった。お前は11番と21番の生死を早く確認してくれ。誤作動の対策は別に任せておく」
「了解しました」
一礼して、彼が宮内に背を向けた時だ。ドアが乱暴に開けられ、個性のないスーツ姿が部屋に飛び込んできた。
「失礼します」
「何事だ、騒々しい」
その落ち着きない様子から、また何かあったのがすぐにわかり、宮内はうんざりしたように息をついた。
43:358
04/11/13 22:24:00 rDoScCeU
「その…右のモニタ、お借りします」
渡辺が鬱陶しそうに事務員を睨んだが、彼はそれに気づく余裕もなくスイッチを操作した。
画面は、誰の姿もない病院の廊下から、まばらに杉の木が立ち並ぶ風景へと変わる。
「これはここの様子なのですが…」
数字の散らばったモニタを指した時、渡辺の肩に彼の腕が当たったが、やはり軽く詫びただけで
それ以上は気にしていない。指先の位置に向かって、6の丸数字が接近してきている。
やがてそれは重なり、木々の映していたカメラにその後ろ姿が現れたのだが―
「……どういうことだ?」
「わかりません。けど、恐らくこれも誤作動の可能性が……」
宮内は頭を抱えた。はっきりと映し出された背番号は、36だったのだ。謎の多い35と
1つ違いだというのが、余計に彼の不安を駆り立てる。
「36…死んでるじゃないか。死亡時の様子は?」
「それが……先ほどのシステムダウンの時だったのか、記録が残ってないんです」
「ふん。責任者をあの部屋に招待すべきだな」
ウィスキーを嘗めながら、渡辺が気味の悪い笑みを浮かべて呟いた。
誰かの血が見たいだけなのかこいつは。宮内は心の中で毒づいた。
「今はそういう時じゃないでしょう。君、この36を……」
36を、どうすればいいのだ。機械のことは何一つ知らないわけだし、
ここは島ではない。捕まえて確認するという手段もとれない。
「誤植はまず訂正するものだろう。6を36に直しておきたまえ」
言葉の途切れた宮内を馬鹿にしたように、渡辺は指示した。事務員は、はい、と
かしこまって、部屋の端にあるコンピュータを触った。すぐに、丸数字の6が36に置き換わる。
「誤作動か何か知らんが、早く正常に動くようにしてくれ。こちらも色々かかっているのでな」
低い笑い声が部屋に響く。宮内は一瞬、全ての数字が地図上に戻ってしまうような錯覚にとらわれた。
そんなはずはない。この計画は、成功させる。手元にあったウーロン茶のグラスを、一気に傾けた。
【残り18人・選手会11人】
44:代打名無し@実況は実況板で
04/11/13 22:36:13 bYHNNVHd
乙!桧山とうとう壊れたな((((;゚д゚)))
45:代打名無し@実況は実況板で
04/11/13 22:45:02 WhE8yHzL
乙です!
選手会が一人・・・・・・一人ってことは今岡はまだ生きてるのか。
って言うか怖いよ桧山怖いよ((((;゚д゚)))
井端はどうなるんだろう・・・・・。
46:代打名無し@実況は実況板で
04/11/14 00:44:03 BQmSli7E
乙です。
怖いよ桧山、怖すぎだよ(((゚Д゚)))ヒィーガタガタ
以前選手会側は進行が遅いと言っていた人が居たが、これで話が進みだしそうだな
それにしても、今まで以上にこのあとが気になりだした
小久保と今岡はタッグを組むのだろうか…
しかし、今岡の首を絞めてたかと思ってたら、松中をすぐに銃殺とは行動早いな、桧山
47:代打名無し@実況は実況板で
04/11/14 12:13:23 0QTDObs6
保守
48:代打名無し@実況は実況板で
04/11/14 13:24:21 6TFxVleN
なるほどな…これで井端は完全に井端じゃなくなったってことか
なかなか深いもんだなぁ、平井、改めて乙
それはそうと桧山怖杉w
このままだと英智、あっさり殺されてしまうぞ
49:代打名無し@実況は実況板で
04/11/14 17:35:53 U+UKICK0
ひーやんと今岡のコンビ、好きだったんだけど
これからどうなっちゃうんだろ…そして井端も…
50:代打名無し@実況は実況板で
04/11/15 10:50:49 7pcZ6PyU
51:代打名無し@実況は実況板で
04/11/15 12:07:27 SWVdXCch
>>49
ノシ
殺伐とした中で、笑いアリのいい味出しているコンビで好きだっただけに、
今回の豹変振りはショックだった。
職人さんはその落差を狙っていたんだろうが、思った通りに振り回されました。
だからこそ、もうこのまま桧山は突っ走ってもらいたい。
あと、佐伯もどうなっちゃうんだろう。
とにかく、職人さん乙でした。
52:112
04/11/15 23:30:50 VRavs+Og
139.祓うべき魔は
荒木はひたすら走っていた。
福留とはぐれてしまったことは気づいていたけれど、
それよりも井端のことが重要だった。
―嫌な予感ばかりが胸に浮かんでくる。
6のユニフォームが落ちてくる前に聞こえた銃声―
あの崖から落ちて、井端さんは無事でいられるのか―
自分の武器である弓矢を握りしめる。
「弓矢って魔除けになるんだぞ。破魔矢ってあるだろ?」
山本昌の言葉を思い出す。
(井端さんが誰かにあの崖から撃ち落とされたんだとしたら…井端さんを撃った人が、魔)
井端を撃った魔を、討ち果たす。
自分の武器、魔を破る矢は、その役目にふさわしいように思えた。
(でも、井端さんから仕掛けたんだったら…井端さんが、魔…?)
そのときは、手にした弓矢で、魔である井端を祓うべきなのだろうか?
とりとめもない考えを浮かべていたせいだろうか、走る速度がゆるんでしまっていたことに気づく。
荒木は、ぶんぶんと頭を振って、よけいな考えを追い出した。
―今は、どうしようもないことを考えている場合じゃない。
(井端さんを見つけて、助ける!)
それだけを考えて、荒木は再びスピードを上げた。
53:112
04/11/15 23:32:37 VRavs+Og
森が切れ、急な上り坂が見えてくる。
坂道の前で、荒木は一度足を止めた。
(たぶん、ここを登ればさっきの崖にでるんだろう)
さすがに、走り続けで息が切れていた。この状態では坂を登り切ることは難しい。
少し息を整えようとした荒木の視界の端に、自然にはあり得ない青色が映った。
急いでそちらを見ると、自分と同じユニフォーム姿が、森の中に入っていこうとしていた。
(36番、平井さんだ。今このあたりにいるのなら、井端さんがどうなったのかを知っているかも…)
「待ってください、平井さん!」
荒木は大声で呼びかけ、駆け寄る。
近づくにつれて、少し違和感を覚えた。
(あれ?平井さん、あんなに背が小さかったっけ?もっと大きかったような―)
立ち止まり、ゆっくりと振り向いた36番を見て、荒木は絶句した。
―なんで、あなたが…?―
「井端さん…?」
呆然と呟く。
青い空に、雷鳴が走った。
【残り18人・選手会11人】
54:126
04/11/16 02:21:33 Fe+c8hrS
140. 火種
“オーナーを殺せ!!”
─ そう、事の始まりは、この言葉からだったのだ。
気づけば、この島に来ていた。
球界の未来に暗雲をもたらす者たちを排除する ─ それを大義名分とし、自分たちは
当たり前のように武器を手に取った。
オーナーは『人』ではなかった。消去しなければならないただの標的。
だから、何の疑いも、ためらいも持っていなかったのだ。……最初は。
オーナーを殺す。邪魔する者は容赦しない。
その信念に揺らぎが生じたのは、『敵』が中日ドラゴンズの選手であると分かった時だ。
選手という同じ立場の人間が敵。その事実がかすかなためらいを心に生んだ。
名前も顔も知らない、傭兵か何かならばともかく……。
『やられたらやり返せ、でしょ?』
自分が言った台詞を、もちろん憶えていないわけがない。
けれど、もし敵が傭兵だったのなら、自分は、そして桧山は何と言っていただろう。
邪魔する奴は殺せばいい ─ そういう結論になっていたのではないだろうか?
“殺意”の火種は、おそらく選手会全員の心にあったのだ。
しかし、選手同士の殺し合いに躊躇をおぼえたその瞬間から、今岡の内にある火種は徐々に
くすぶりを弱くしていった。
そのことが、ゆがんだ方向を示していた彼の精神の、軌道修正をうながす契機となった。
『桧山さん。やめましょ』
今岡の心が正気への道筋をたどった結果が、この台詞だったと言っていい。
時すでに遅し、桧山の心はとうに狂気に魅入られていたわけだが ─ ……
55:126
04/11/16 02:22:21 Fe+c8hrS
堤義明はホテルの一室にてデスクトップパソコンのモニターを見つめながら、含み笑いを漏らした。
「ふむ。付け焼刃の“暗示”にどれほど効果があるのかと思っていたが、まさかここまでとはな」
今回の試作プログラム実行に際し、渡辺のコネクション(とは言っても、あくまで間接的なものだが)を
介して、武器調達や島全体の管理等、様々な面で某国の協力を得ることとなった 。
─ だが協力とは名ばかりの、お粗末な援助に過ぎなかったことはあえて伏せられている ─
ともあれ、その見返りとして、某国の軍からプログラムの中でぜひ試すようにと要請された事柄が二つある。
一つは、強力覚醒剤および筋肉増強剤の人体実験。
もう一つは、サブリミナル ─ 潜在意識操作の軍事的応用における実践的試験。
要は、薬物と暗示、この二つによって『殺人マシーン』を作るという構想を持つ某国軍の、試験場に
使われたということだ。
そのあまりに荒唐無稽な妄想を、最初、堤は鼻で笑ったものだったが。
「無線を使ってのサブリミナル攻撃など、絵空事に過ぎんというのが本音だったよ。しかし、実際に
この目で見たからには、確信を持つより他にないということか」
そう言って、堤は傍らに立つスタッフに目を向ける。
精神科医による鑑定結果を綴ってあるファイルを開き、スタッフは頷いてから口を開いた。
「個人差はあるようですが、第一の“暗示”はほぼ全員に効力を及ぼしているようです。
特に、被験者、M-54に見られる人格の混乱などはその延長線上で起きたものであると思われます」
「だが、持続時間の限界がある。すでに何人かの暗示が切れかかっているようだな」
「ええ。ですが、第一の暗示はこの島に来たことを疑問に思わせないためのものですから、被験者たちが
島に閉じこめられた今となっては、暗示が切れたとしてもさほど問題はないかと」
(さて、それはどうだろうか…)
あっさりと断定するスタッフの口ぶりを、堤は胸中で皮肉る。
56:126
04/11/16 02:25:19 Fe+c8hrS
彼は知らないのだ。完全に『正気』を取り戻した時、誰よりも賢しく立ち回れるだろう人物がいることを。
そしてその人物が、こちらの ─ 主催者側の大きな障害となるに違いないことを。
堤が一瞬だけ浮かべた笑みに気づくことなく、スタッフは事務的に報告を続ける。
「被験者、T-24は完全な成功例と言って良いでしょう。催眠暗示、殺人衝動操作共に
効果が表れています。T-07は残念ながら、暗示から逃れた模様ですが」
「まあ、失敗が前提のような試みだ。結果がどうあれ、こちらの腹は痛くならんさ。それよりも、
高木君はずいぶんと手ぬるいことをやっているな。遊んでいる場合ではないというのに……」
「私的な見解を許していただけるのなら 、高木氏は、あまり積極的とは言えませんね」
余計な台詞をはさんだスタッフを、堤はじろりと一瞥する。
無言の圧力を受け、彼はわざとらしく咳払いをし、一度閉じたファイルをまた開いた。
「…高木氏と行動していたC-09の殺人衝動操作については、成功しそうですが ─ 」
「報告はもういい」
堤は話題を打ち切り、片手を振る。下がれという合図だった。
「……。失礼いたしました」
複雑な表情で一礼し、スタッフはその場を辞した。
彼の姿がドアの向こうに消えるのを見送り、堤は椅子の背もたれに身体を沈ませながら、吐息をもらした。
「ふん…所詮はただの余興だ」
あの老人の好みそうな演出ではある。
せいぜい、今の内に楽しんでおくがいいさ ─ 渡辺に対する嘲笑を口許に刻みながら、だが堤とて
この盤上ゲームの行方を気にかけていないわけではなかった。
渡辺の天下気取りもあと少しで終わる。それまではゲームの展開を見守るのもまた一興だろう。
「案外にもろいものだな。人の心というやつは」
ぽつりと洩らされた堤の言葉は、的確に示唆していたと言っていい。
誰もが“狂気”の予備軍であることを。
【残り18人・選手会11人】
57:代打名無し@実況は実況板で
04/11/16 03:36:07 lvcNwxf9
職人さん方、乙
ようやく、そして遂に荒木と井端が出会ったか…
スゴイ裏側も見えてきたな
58:代打名無し@実況は実況板で
04/11/16 13:32:40 YzAjDehR
59:代打名無し@実況は実況板で
04/11/17 01:45:24 bZ0uLZbJ
捕手
60:代打名無し@実況は実況板で
04/11/17 11:34:54 JoGUd00P
hosyu
61:代打名無し@実況は実況板で
04/11/17 20:31:54 A+Rc7N6W
サブリミナルか・・・
62:代打名無し@実況は実況板で
04/11/18 03:00:29 939AHRBO
保守
63:代打名無し@実況は実況板で
04/11/18 17:19:07 2+8h01b1
64:代打名無し@実況は実況板で
04/11/19 01:48:06 WfHKdakE
ひたすら保守
65:126
04/11/19 19:40:52 3tEPjSsb
141. 偶像を見つめる瞳
四つんばいの姿勢で灼けるように熱い喉を手で押さえ、今岡は何度も咳きこんだ。
生理的な涙に濡れた両目に、ぼんやりと霞がかった景色が映る。
(生きてる……?)
脳に集中していた血の気が引いていくと同時に、今岡は自らが命拾いしたことを認識した。
まともに呼吸ができない。力任せに気道を締めつけられた感覚がまだ、喉に残って……。
(桧山さん、の……)
喉を圧迫する指の感触。間近にのぞきこんだ双眸の、底知れない、闇 ─
そのすべてがフラッシュバックし、今岡の思考は一瞬白く弾けた、のだが。
「起きろ…目を開けろよ……マツ!!」
耳を打った悲痛な叫びが、ヒステリー状態に陥ることを踏みとどまらせた。
今岡は声の方向にぎこちない動きで首をめぐらせ、地面を染める血の色を見た。
倒れ伏す松中の胸の位置あたりから、赤黒い液体が生々しく広がっている。
ハッと目を見開いて、今岡は身を起こし、右肩に手をやった。
狙撃銃を肩にかけるために付いていたストラップの感触が、そこにない。
あの時 ─ 朦朧とする意識の片隅に松中の叫び声が聞こえた時、桧山が自分の狙撃銃を
奪ったことを、記憶の断片から辛うじて思い出す。
突然締め上げられていた首を解放され、強烈な目眩とともに前後左右の感覚が消失した ─
その後の空白の間に、桧山が松中を撃ったということなのだろう…。
事切れた松中の傍らには、先ほどの声の主 ─ 小久保の姿があった。
蒼ざめた顔で、ただひたすら松中の身体を揺さぶっている。二度と動くことのないその身体を。
すんません、と今岡は口走っていた。叫び出したい衝動と吐き気とが一気にこみあげてきた。
「……すんません………止められなくてすんません………」
言葉のほとんどは嗚咽と咳に取って変わった。小久保はそれに対して反応することなく、松中に
視線を落としたきり、とめどなく悲嘆の叫びを洩らし続けた。
─ 許さない。
やがて小久保が震える声で呟いたのを、今岡は聞いた。
「…殺してやる。オーナーも、桧山さんも、俺がこの手で殺してやる…!!」
「小久保さん!!」
今岡の怒鳴り声に、弾かれたように彼が顔を上げた。
目の前にいるのが誰なのかを再認識しているかのような長い沈黙ののち、呆然とした声で呟く。
66:126
04/11/19 19:41:48 3tEPjSsb
「…どういうことだよ…」
真っ直ぐに向けられた小久保の目は、言い知れぬ怒りに満ちていた。
「説明しろよ! さっぱりわかんねえよ!! なんなんだあの人は!!
中日の選手だけじゃ飽き足らずに、仲間まで殺して回る気なのかよ!!」
彼の叫びに今岡は瞠目した。その勢いのまま開きかけた口を、だが寸前でつぐむ。
( ─ 違う)
反駁の言葉は胸の奥へ押し戻され、己の内にのみこだまして消えた。
違わない、何も。見せつけられた現実がすべて。それは分かっているのだ…。
「…あの人はマツを殺した…! 俺の目の前でだ! 狂ってる……普通の目じゃなかった。
人を撃っておいて笑ったんだぞ!? あれじゃあ、まるで……」
─ 殺人鬼じゃないか。吐き捨てられた彼の台詞に、今岡は戦慄する。
「桧山さんは……」
反射的に、声がこぼれていた。
「狂ってしまった。それは間違いないと思います。でも」
自分は殺されかけて、松中は殺された。手を下した人物の目は確かに狂気を宿していた。
でも ─ と、今岡は続ける。
「狂わされたんです。人為的な方法で」
こちらに向けられている小久保の表情が、憮然としたものに変化する。
「何なんだそれは」
本気で言っているのか、とでも言いたげに、彼の目が嘲りの色を帯びた。
「『狂わされた?』……はっ、人殺しをかばうにしても、もっと言いようがあるだろう。
桧山さんは自分から狂ったんじゃないって言いたいのか?
仮に狂わされたんだとして、それであの人のやった事が正当化されるってのか?」
「俺は桧山さんをかばう気はないです。そうやなくて…」
ほんの少し、今岡はかぶりを振った。
「……罠、やと思うんです。俺らは現に、いつ狂ったとしてもおかしくないような環境におるんです。
さっき、小久保さんも言うてはりましたね。殺してやるって」
「……」
「すいません、揚げ足取るつもりじゃないんです。桧山さんも中日の選手に恨み持ってたみたいで、
そいつを殺してやるって言うてました。実際やりかねへん感じでしたけど。
でも、それは見境なしのもんではなかったと思います」
小久保は黙ったままでいる。嘲笑はいつしか消え、厳しい眼差しが今岡を見据えていた。
67:126
04/11/19 19:42:23 3tEPjSsb
「どう考えても腑に落ちひんのです。俺の首を絞めた時の桧山さんは、絶対に桧山さんじゃなかった。
何かに操られたみたいな…。まあそれも、かばってる言われたらそれまでなんですけど」
無意識のうちに、右手が喉元に触れていた。まだ痛い。目を閉じる。
「……きっかけがあったってことなのか」
低く、小久保が重い口を開いた。
「桧山さんが狂わされたって。お前がそう思った、きっかけが」
「ありました。はっきり断定はできませんけど、それが罠なんやと思います」
「……」
「俺は桧山さんを信じてます。俺が自信持って言えるのはそれくらいのもんです。せやから」
(人殺しにならないで)
伝えられなかった言葉が心に甦る。今岡は唇をかみしめた。
だから、桧山がもし自らの意思とは別に、人殺しになったとしたなら ─
自分のするべきことは、ひとつしかないはずだ。
今岡の心は決まった。立ち上がり、小久保を振り向く。
「……そうか」
彼は身じろぎし、傷ついた足をかばうようにして姿勢を変えた。
目線は今岡から外れ、地面へと向いている。
小久保を説得できるとは思っていない。彼に慰めの言葉をかけたところで、何の意味もなさないことは
分かっている。
ましてや、同行者の凶行を止められなかった自分のことを、信じてもらえるとは到底思えない。
かと言って怪我人を放っていけるわけもなかった。
ざあっ、と頭上で風が逆巻いた。突風にあおられた木立がざわめく。
小久保に声をかけようとして ─ だがそれより早く、彼が口を開いた。
「由伸とは違うってことか……」
独白まじりに呟いて。
憂いをたたえた瞳を、小久保は静かに伏せた。
【残り18人・選手会11人】
68:112
04/11/19 21:15:17 XPe857de
142.理不尽な電話
砂原は、ゆっくりと床に落ちた資料の一枚を拾い上げた。
何度見てもそこに書かれた文字が変わるわけもなく、―佐伯が石井とデニーを殺した事実も変わらない。
(…佐伯に確かめなければ。どういうつもりなのか)
砂原は携帯のメモリーから佐伯の番号を選び、発信ボタンを押した。
もしかしたら確かめない方がいいのかも知れない、という不安に躊躇いながら。
(しっかし、毒なんてえげつないもん持っとる奴がおるなんてなあ)
間違いなく「えげつないもん」の域に入っているであろう、サイレンサー付きの銃をもてあそびながら、佐伯は森の中を歩いていた。
(ほっといても人数減らしてくれそうやな。古田さんには手を出さんといてほしいけど―)
佐伯の思考は、スーツの胸ポケットに入れた携帯の振動で断ち切られた。
着信だ。
(誰や?ナベツネさんか?)
軽く舌打ちする。
(誰か見てたらどうすんねん、不用意に連絡してくるなよオッサン)
とりだした携帯の画面に表示された番号を見て、佐伯は眉をひそめた。
「…砂原オーナー?」
「ご無沙汰してます。こっちから連絡しようかと思っとったんですけど」
電話の向こうから聞こえる佐伯の声は、いつも通りに明るい。
その事実に、絶句する。
チームメートを二人殺しておいて、いつもと同じ態度がとれるような人間だったのだろうか、佐伯は?
69:112
04/11/19 21:15:50 XPe857de
「…あれ、オーナー?聞こえてます?」
「……ああ」
なんとか返事を返すと、佐伯が苦笑する。
「そうですか、ならよかった。実は、謝らんといけんことがありまして」
「石井とデニーのことか」
「なんや、もう知ってらしたんですか」
「何で殺したんだ!」
「なんでって…そういうゲームでしょ、これは」
思わず怒鳴りつけた砂原に、淡々と答えが返ってくる。
「選手会役員と古田さんを殺して、10球団1リーグを実現させる。それが俺の役目です。
まあ琢郎とデニーさんはできたら殺したくなかったですけど、あの人らも役員ですから。例外には出来ないでしょ?」
「…君なら、うまくやってくれると思っていた」
砂原は言葉を絞り出した。
「横浜の選手を守って、その上で渡辺さんの希望に答えてくれると思っていた。
…君なら、出来ると思った」
佐伯に掛けていた過大な期待が、砂原の中で理不尽な変貌を遂げていく。
失望に、嫌悪に、憤怒に、憎悪に。
それを叩きつけるべく、砂原は携帯を強く握りしめて、大きく宣言した。
「横浜ベイスターズは君と来季の契約を結ばない」
「なっ………!オーナー!ちょっと待って…」
電話の向こうで息をのんだ佐伯が、何か言おうとするのを遮る。
「君はFA権があったな。FA宣言してどこへでも行ってくれ。
…ベイスターズの選手を害するような奴は、必要ない」
言い捨てると、砂原は乱暴に携帯の電源を切り、床に投げつけた。
【残り18人・選手会11人】
70:代打名無し@実況は実況板で
04/11/19 21:51:17 a6VP3I8B
…上手いなあ、ネタの絡ませ方が。
思わずニヤニヤしてしまったよ佐伯
71:623
04/11/20 09:30:47 DWcEw8Z2
143.奇妙な追跡劇
井端さん―
荒木が再びその名を口にしかけた瞬間、井端の顔をした男は荒木に背を向けて走り出していた。
「あっ、待って!!」
すぐに後を追おうとした荒木の足は、しかし二、三歩踏み出したところで止まった。
さっきまで、共に行動していた福留のことが脳裏に浮かんだからだ。
―孝介、なにグズグズしてるんだよ!
元来た道を振り返ってみるが、福留がやってくる気配は感じられない。
そうこうしているうちにも『36番』の背中はどんどん遠ざかっていく…
それでも、この場にさえ留まっていれば必ず福留と再会できるという確信―
―裏を返せば、ここを離れたら二度と会えなくなるかもしれないという不安
は、荒木の足をこの地に縫いとめて離さないかのように見えた。
だが結局、この拘束は長くは続かなかったのだ。
必死に目で追っていた背中を木陰が一瞬だが隠してしまったとき、
荒木の中から『福留を待つ』という選択肢はきれいさっぱり消え去ってしまった。
「ごめん孝介、もう待てない……」
荒木は、知らず握り締めていた一本の矢を地面に突き刺すと、
(自分が確かにここに来たという証と、親友でもある福留を魔から守って欲しいという
願いが込もった矢だ。)
後は振り返らずに、再び井端の影を追い始めた。
72:623
04/11/20 09:31:30 DWcEw8Z2
宮内の目の前のモニターが背番号36を映しだしたのは、ちょうどこの前後のことだ。
荒木が走り出すのがもう少し早かったなら…いや、せめて宮内がもう少し冷静な状態で
モニターの見続けていたのなら、『36番』を背番号2番―つまりは同じ中日の選手が
執拗に追いかけまわす奇妙さに気付き、誤植の訂正をしばらく思いとどまらせ、
監視を続けさせるなどの対処を確実に行っていたであろう。
だが現実はというと更に信じられないことに、誤植の訂正後の36番の動向に
誰も注意さえ払ってはいなかったのだ。
見せ付けられる狂気と、度重なるトラブルはオーナーたちの判断力をも確実に狂わせている。
だが当人たちはそれには気付かず…あるいは気付かぬ振りをしてそれぞれの思惑をめぐらせている。
【残り18人・選手会11人】
73:代打名無し@実況は実況板で
04/11/20 11:23:24 GgGP1aHV
職人の皆さん、いつも乙です。
小刻みな展開で大変だろうけどがんばってください。
>112さんへ
「謝らんといけん」よりは、「謝らんとあかん」の方が自然な希ガス。
細かい指摘で申し訳ないけど、
琢郎→琢朗です。訂正おながいします。
佐伯のこれからが気になる…。
74:358
04/11/20 22:15:06 s4hLZPkA
144.執着
中里は躊躇わず、聡文の懐にとびこんだ。同時に、ガラス器具がはじけ飛ぶような音が
背後で散らばった。散弾銃の弾は目標である中里を逃し、備品庫の奥の棚で炸裂した。
そして、中里のメスは、標的の右胸に深々と突き刺さった。
中里はにやりと冷たい笑みを浮かべ宣告した。
「やっぱり、僕とお前だったら、明らかに僕が生き残るべきだよな」
聡文の戦慄の表情から目をそらし、メスを右下へ向かって走らせる。
ユニフォームの繊維が刃にまとわりつき思ったより力がいったが、
それでも肉が切れていく感触は非常に気持ち悪く、生暖かい返り血が中里の顔を曇らせた。
けたたましい悲鳴が部屋の壁に打ちつける―
70番を追って、傷だらけの体を引きずっていた黒木は、薄暗い廊下で
誰かの悲鳴を聞いた。最初は大波のような激しい声であったが、やがてゆるやかに
波が引いていくように、弱く弱くなっていく。
黒木がよろめきながら廊下の奥へ進んでいった時だ。奥の部屋から血まみれの人影が
躍り出てきたのだ。それは、ぎょっとして足を止めた黒木を見て、
懇願するような瞳を向けたが、黒木はその目を見てはいなかった。
彼の目線は胴体の右下部分に釘付けだった。切り刻まれてているユニフォームの、番号部分に。
男は黒木の方に手を伸ばし、口を開いた。ぽたぽたとそこからも血液が滴る。
「…助けて………」
掠れた声を最後に、その人物は自分の作った血だまりの中へ、音を立てて倒れ込んだ。
背中にも、あちこちに刃物で刺したような後が残っている。
ぼろぼろになっている背番号は、67だった。
75:358
04/11/20 22:16:07 s4hLZPkA
興奮で体の震えがおさまらない。中里は息を整えながら、なかなか立ち上がれない自分に苛立っていた。
(なんだよ……ちょっと聡文が暴れたからって、こんな、びびることなんか……)
右手の出血がどうなっているのかわからないぐらいに、両手が真っ赤に染まっていた。
左手なんて、指を動かすと粘着するような液音が聞こえる。
(ああ、嫌な音だ…こうなる前にさっさと死ねよ。どうせ生きてても役立たずのくせに……)
聡文は部屋の外へ飛び出していったが、あの傷では到底生き延びられるとは思えない。
どうせ、部屋を出てすぐぐらいの所で事切れているだろう。
まだ呼吸は元に戻らなかった。何度も首を振って、メスに映った自分を見つめる。
(あいつが抵抗したし頑丈だったから、疲れただけだ。銃だったら、そう、
銃だったらもっと楽だったのに…あのクソハゲ、次見つけたら絶対殺す)
殺す―考えたところで少しげんなりした。またこれと同じエネルギーを費やすのは
もうごめんだ。刺殺は嫌だ。殺すなら楽な方が良い。
(…そうだ、あいつの散弾銃もらっとこう。早くしないと、あのスクラップがまた
性懲りもなく襲ってくるだろうしな)
立ち上がってみると、随分息苦しいのに気づいたが、それをかえりみる余裕はない。
聡文は言っていた、あと3人だと。もう自分とあいつしかいないはずだ。
「ポンコツ……待ってろよ、お前―」
76:358
04/11/20 22:16:24 s4hLZPkA
その時だ。引き戸のすぐ向こうから、ぴちゃ、と液体が跳ねる音がした。
(ちっ、もう来やがった)
こちらにはやはりメスしかない。不意打ちを仕掛けるつもりで中里は構えた。
ところが、戸の向こうにいるであろう人物は、なかなか次の一歩を踏み出してこない。
(…罠のつもりか?)
中里がじりじりとしていると、相手は唐突に呟いた。
「7ばっかり……」
それは間違いなくあの男の声であったが、さっきとは全然違う、絶望に近い感情が混じっていた。
「ゴキブリみたいだ、殺しても次々出てくる…」
(何言ってんだあいつ…?)
相手の思惑が読めず、うんざりとするような緊張が全身を縛り付けている。
「お前を殺せば終わるか?70、そこにいるんだろ」
聞こえた瞬間、扉に向かって駆け出した―が、血だまりに足を取られそのまま転倒した。
振り返った中里の目に一瞬、恨めしげな目をして足首を掴む聡文の幻影が映った。
【残り17人・選手会11人】
77:代打名無し@実況は実況板で
04/11/20 23:31:27 N0mJ/6pO
聡文…(´Д⊂
78:代打名無し@実況は実況板で
04/11/20 23:36:07 +k/QHzx1
聡文…((((;゚д゚)))
勘弁してよ、さっきまでオカ板にいたんだからさあ
79:112
04/11/20 23:44:27 tAc0Kckj
145.発覚
とりとめのない考えを巡らせながら歩いていた高橋は、木々の向こうに人影を見つけた。
薄暗い森の中にとけ込むようなスーツ姿。背格好から見るに、佐伯のようだった。
由伸は少しほっとした。独りでいるのは不安だ。…また、中日の選手に殺されかかってはたまらない。
声を掛けようと踏み出した由伸の足は、しかしすぐに止まる。佐伯の手に握られた物に気づいて。
(携帯電話…?)
自分の携帯を確認するが「圏外」の文字が表示されている。
この島にきてからずっと、電波は入ってこなかった。小久保や松中もそうだったはずだ。
(なぜ佐伯さんは、携帯電話を使えているんだ?)
ドラグノフを手にして、声が聞こえる範囲まで注意深く近付いていく。
何を話しているのかはわからなかったが、一言だけははっきりと聞き取れた。
「オーナー」という呼びかけだけは。
(佐伯さんの電話の相手は、オーナーなのか?!)
「圏外」のはずの島で、オーナーと電話。それは、つまり―
(なんてことだ。敵は、中日の選手だけじゃなかったのかよ!)
ここで佐伯を殺すか、それともキャンプに戻って佐伯の裏切りを伝えるか。
迷いながらも、とにかく距離をとろうとして後ずさった足下で、茂みが大きな音を立てた。
(しまった!)
失敗したと思ったが、もう遅い。舌打ちしながらドラグノフを佐伯に向ける。
80:112
04/11/20 23:44:44 tAc0Kckj
「オーナー!ちょっと待って…」
言葉の途中で切られてしまった電話を、呆然と見つめる。
「なんや、それ…」
横浜のために、それだけのために自分は動いてきたのだ。
渡辺に人身御供としてだされ、裏切りを、その手を血で汚すことを求められ、…そして、切り捨てられた。
「なんでや…」
うつむいて唇をかみしめる佐伯の耳に、ガサッという音が聞こえた。
(誰かおる?!まずい、さっきの話を聞かれとったら…!)
弾かれたように顔を上げ、音の方向に銃を向ける。
銃を構えて睨みつけてくる高橋由伸の姿が、そこにあった。
二人の視線がぶつかる。
乾いた笑いが、佐伯の顔に浮かんだ。
【残り17人・選手会11人】
81:112
04/11/20 23:47:54 tAc0Kckj
>>73
指摘ありがとうございます。
関西弁は難しい…気をつけます。
保管するときに訂正入れます。作業遅れまくっていますが。
82:代打名無し@実況は実況板で
04/11/21 00:07:15 DF/8iPgA
中日バトロワ再開してたのね。今日気付いたーヨ
なつかしひ・・・・
83:代打名無し@実況は実況板で
04/11/21 10:25:49 IvohIFG+
84:126
04/11/21 20:24:13 tyAPZvkN
146. 偶像を信じる心
『目を見ればわかる。こういう、極限状態だから余計にな』
小久保は自らが口にした台詞を思い返していた。
(あの人の目は…)
胸板を内側から突き上げられるように、鼓動が高鳴った。
記憶に刻まれた、あの時の銃声がこだまする。
ぐらりと大きく傾いだ松中の身体が、前のめりに倒れていく ─ その光景の向こうに見た、彼の姿。
小久保は動けなかった。恐怖か、畏怖か、おおむねそのようなものが自分を縛りつけた。
彼の目の奥に感情を見出せなかったことが、小久保には恐ろしかったのだ。
(由伸の目とは違った)
殺意のありありと感じられる、鋭い眼光を向けられた時のことを思い出す。
高橋のそれは、標的であるオーナーを ─ そして目的の障害となるものすべてを ─ 殺すという
明確な意志の色に染まっていた。
伝わってくるその意思を感じ取ったからこそ、小久保は彼との考えの違いから離別を選択したのだ。
だが桧山からは、闇に覆われたその瞳からは、何の心緒も読み取ることができなかった。
今岡の言葉を鵜呑みにするなら、あれが『狂わされた』ということなのだろうか。
(操られた……。マリオネット、ロボット……。くそっ、B級映画じゃあるまいし………)
陳腐すぎる。こみ上げる苦々しさに顔をしかめた。
黙ったままでいる小久保の目前に立つ今岡の足が、所在なげに少し地面を擦った。
それから彼が動き出す気配を察し、小久保はつと目線を上げる。
「……何してるんだ」
骸と化した松中の傍らにかがみこもうとしている今岡に、思わず咎めるような声が出た。
「このままじゃ晒しもんやから…」
ひざまずき、両手を合わせて黙祷した後、今岡はぽつりと言った。
「せめて、あそこにでもと思って」
彼が視線を移した方向を見やると、木のそばに草深くなっている場所があった。
今岡は地に伏す松中の両脇に手を差し入れ、少しずつその身体を草叢へ運んで行った。
彼も大柄な部類に入るとは言え、重量は松中の方が勝っていたはずだ。
事もなげに、とはやはり行かないようで、かなりの苦労をしながら引っ張っている。
小久保は片足を踏ん張って何とか立ち上がり、小刻みな歩調でその後を追った。
遅れてたどり着いた草叢の中には、仰向けにされた松中が横たわっていた。
85:126
04/11/21 20:25:50 tyAPZvkN
「……」
倒れこむように膝を折り、そっと松中の身体に触れた。
決して穏やかとは言い難い死に顔の、見開かれたきりの両目を閉ざしてやる。
怒りとも悲しみともつかない感情に震える手を持ち上げ、掌を合わせた。
もう泣いている場合ではなかった。せめてもの手向けにと、彼の冥福を一心に祈る。
(マツ、お前の意志は俺が継ぐ)
どうか安らかに ─ きつく閉じた瞼を開いた小久保は、彼の腕に引っかかっている狙撃銃を見た。
地面の上を引きずられていたために、土と草があちこちに付着した銃を手に取る。
昨日、姿も分からぬ誰かに狙撃された自分と高橋を守ってくれた、松中の銃。
(結局、最後まで守られてばかりだったな…)
高橋と物別れした今、唯一信じられる身近な仲間は松中だけだった。
信頼 ─ 脳裏をよぎった言葉に小久保はふと、顔を上げた。
風がまた、耳元で鳴った。天候の変わる前触れかもしれない。漠然とした考えを意識の隅に置きながら、
自分たちから少し離れて佇む今岡の姿を視界におさめる。
「今岡」
呼びかけたが、斜めに立ち、横顔を見せている彼が振り返ることはなかった。
何を考えているのかわからないという、第一印象の通りに、ぼんやりとある一点を見つめている。
─ もしも。不意に浮かんだその考えは、本来ならば忌避すべきものだったのかもしれない。
けれど、警鐘に反して思考は続いた。
(もし、逆の立場なら、俺はマツを信じていただろうか)
死んだのが桧山で、殺したのが松中なら。松中が狂ってしまった、いや、狂わされたのなら。
今岡は泣いただろうか。殺してやると喚いただろうか。松中を止められなかった自分を逆恨みして ─
(……っ)
脳の血管が切れてしまうような錯覚に、小久保は首を横に振った。
今岡、と乾いた唇を動かしてもう一度呼びかけ、思うように動かない身体を起こした。
足を引きずって彼に近づく。右手に下げたライフルが振動で音を立てた。
それに反応してか、今岡がこちらを見た。彼の特徴とも言うべき無表情を目の当たりにし、小久保は
用意していたはずの台詞をなぜか失念してしまっていた。
「……古田さんたちはどこにいるんだろう」
結果、口から滑り出たのは全く意図しない言葉だった。何を言ってるんだ俺は、とほぞを噛む。
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