オリックスバファロー ..
[2ch|▼Menu]
64:代打名無し@実況は実況板で
07/04/27 21:34:20 42XYSNih0
乙です。
加藤じゃ無ければあの銃声は一体…

65:代打名無し@実況は実況板で
07/04/28 01:43:17 FlXVcC0sO
乙です。
か、川越ぇぇぇぇぇ!!

66:代打名無し@実況は実況板で
07/04/28 17:43:37 6hEoh8GL0
   ∧_∧
  (・−・´ )
 G(  G_j)
   /  / ⌒) 
  (__ノ` ̄ =3 =3 =3



67:代打名無し@実況は実況板で
07/04/28 21:03:55 f3RfiOdT0
これは菊様と昆布やばいな・・・
川越も心配だしハラハラするなあ

68:代打名無し@実況は実況板で
07/04/28 23:59:44 2nughdUi0
乙です!
ああやっぱり字余りは禁止ですか…

川越がすっかり元の性格に戻ってるのが、いたたまれない気持ちにさせられるなあ。
そんな張り切って飛び出して行くなよ…(ノД`)゜. 


69:代打名無し@実況は実況板で
07/04/30 00:19:27 9z0oepUl0
ほしゅです


70:代打名無し@実況は実況板で
07/04/30 07:44:09 m56zVCRNO


71:代打名無し@実況は実況板で
07/04/30 19:56:40 jjc+OlakO
ほしゅっとな

72:代打名無し@実況は実況板で
07/05/01 19:10:26 P3PLPd/7O
|´△`|人<〇ー〇>

73:代打名無し@実況は実況板で
07/05/02 11:40:03 sS8vaCuXO
ほしゅ

74:代打名無し@実況は実況板で
07/05/02 21:55:47 qxdDOF/V0
ほしゅ

75:代打名無し@実況は実況板で
07/05/03 00:44:38 Jq7V7vs4O
なんか今日ミッチー先発らしいので保守

76:代打名無し@実況は実況板で
07/05/03 06:57:35 +jqSdOyFO
ほしゅ!

77:代打名無し@実況は実況板で
07/05/03 16:23:53 IKUzrpC1O
ほしゅ

78:代打名無し@実況は実況板で
07/05/04 05:57:48 F1s//RZcO



79:「132・メンバー交代 1/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/05 00:06:51 fREFyVI/0
「ピッタリ3個じゃないと…」
ルックスからは似合わないような不安げな声を出し、大西は大久保の顔を見た。大久保も
困ったような表情で大西を見た。そして2人同時に萩原を見た。
2人から少し離れた場所に立っている萩原の左腕の中には、小さな1匹の子猫が丸まって
いた。すっかりその居場所が気に入ったらしく、時折眠そうに目を細める。
右手には、一丁の銀色に光る銃が握られていた。
数十分前、何の前触れもなくその銃から1発の銃弾が発射された。
そばにあった高い木、そのちょうど天辺付近を狙って。
ご丁寧に萩原は子猫を地面に下ろしてから、両手で銃を持って発砲した。突然の破裂音に
大西も大久保も驚いて萩原を見た。萩原は表情ひとつ変えず、相変わらず何を考えている
のかわからないボンヤリさで狙った先を見つめていた。
「……オ、オギさん?どうしたんですか?」
大久保が恐る恐る声をかけると、銃を握ったまま、萩原が振り返った。そして改めて子猫
を抱き上げた。
「いや、この銃もらってからさ、一度も撃ってないから、本物かどうか知りたくて……」
「だ、だから木を狙ったわけですか?」
「そう、本当にすごい音したな。木も揺れたし、本物なんだな」
「そ、そうですか……」
何を考えているかわからない。ルックスからは想像もつかないようなナイーブな人だとは
知っている。特に大久保は一緒にブルペンで過ごした時間が長い。けれどこの訳のわから
ない行動が余計に萩原の存在を不可思議なものにしている。右手に銃。左手に子猫。
(本当にオギさん、試し撃ちしただけだったのかな……)
そう思ったのは大西だった。逆に大西はあまり萩原とは接点が無い。故にもっと多くの可
能性を考える余裕があった。
(ひょっとしたら、あの木の上に敵がいて、それを狙ったのかも……)

80:「132・メンバー交代 2/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/05 00:07:24 fREFyVI/0
都合のいい解釈ではある。萩原を好意的に捉える解釈。
(だとしたらオギさんすげえ!こりゃしばらくオギさんと一緒にいた方がいいぞ!武器も
持ってるし)
大西は自分の握っている武器を見た。頼りないことこの上ないスコップ。大久保は火炎放
射器を肩から提げている。一番不利なのは自分だ。
ジジ…という音がした。大西は改めて大久保の手元を見た。鞄に手を突っ込み、何かを探
している。
「どうしました?」
声をかけた。ひょっとしたらとんでもない武器を持っていて、萩原の行動に影響されてそ
れを取り出すのでは……そんなことを思ったのだ。
「い、いや、別に」
大久保は鞄の中からサッと右手を引き出し、素早く何かをズボンのポケットに突っ込んだ。
キラリと光る何かだった。
(小銭かな?ジュースの販売機でもあったのか?)
ナイフの可能性も考えた。しかしズボンに入れたら突き破ってしまって危険だろう。折り
たたみ式かもしれない。それだったら納得出来る。またはもっと小型な銃。スパイ映画に
出てくるような、掌サイズの銃かもしれない。ポケットをよく観察した。膨らみはほとん
ど無い。平面型の銃なんてあるのだろうか。やはりナイフと考えた方が正しいのだろうか。
そこまで考えて、大西は自分が萩原よりも大久保を警戒していることに気づいた。
萩原を大久保より信頼しているのではない。
大久保を萩原より警戒しているのだ。
何故だろう。
(多分……)
大西は萩原を見た。正確にはその左腕を。

81:「132・メンバー交代 3/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/05 00:08:01 fREFyVI/0
(オギさんがあの子猫を抱き続けてる限り、俺はオギさんを信じられる)
静かに歩み寄った。
「オギさん、行きましょう。【K】をあと1個探さないと」
「……ああ」
そうして歩き続けて数十分。時折大声で呼びかけても仲間に出会えることなく、3人は歩い
ていた。残り20分を切り、歩調は早歩きに変わった。
大久保はずっと黙ったままだ。一番重そうな荷物を持っているのだから仕方のないことか。
萩原の銃はもうズボンのベルトに納まっていた。時々辺りをキョロキョロしながら歩いて
いる。仲間を探すこの状況下でも敵を警戒しているような仕草に、大西はまた小さな安堵
感を覚えた。
(オギさんと一緒なら大丈夫だ!)
過剰な信頼感かもしれなかったが、今はそんなものででも自分を支えていなければ弱音を
吐きそうだった。あとひとつ【K】が見つからなければ自分たちは死ぬのだ。あまり現実
感は無いが、殺されるのだ。
(ふざけんなよ、俺はまだこれからなんだぞ)
ふいに萩原が立ち止まった。少し横を向き、「ちょっと」と言って木々の茂るそちらへと歩
き出した。
「どうしたんですか?」
誰かを見つけたのだろうか。慌てて大西は駆け寄った。
「ションベン」
拍子抜けする返事に、大西は答えた。
「お、俺も!」
「連れションかよ」
「お、俺も我慢してたんで!」
大久保と2人きりにはなりたくなかった。出来れば萩原と一緒にいた方が安全な気がした。

82:「132・メンバー交代 4/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/05 00:08:54 fREFyVI/0
「こっち見んなよ」
「……男同士で何言ってんですか」
「シャイなんだよ、俺は」
「自信ないんですか」
「ふざけんなよ」
軽い冗談をかわして萩原はより木々の深い方へと歩いた。大西もそれに続く。
「ついて来んなって」
「いや、別に……」
元いた場所から20メートルほど離れた辺りで萩原は足を止め、大西に背を向けた。


1人残された大久保は、ズボンのポケットに右手を突っ込んだ。さっきそこにしまった物に
触れる。それに触れていれば、少しでも勇気がわくような気がした。
大久保は金子を襲った。襲ったが、何も出来なかった。逃げられた。そして数時間後、放
送で金子の名前が呼ばれた。誰に殺されたのだろう。
(俺よりももっと確実な方法で手を下した奴がいる)
ポケットの中の物を握る。
(わかってるんだ。こんなことしちゃいけないって。誰かを殺すなんて……)
けれど、こうしなければ自分の命の保障が無い。生き残れるのはたった1人なのだ。
「大久保さん」
背後からの声に振り返った。
「香月!」
最後に会った時よりも髭の伸びた香月が立っていた。右手に携えているのは矛。先が三叉
に分かれた矛。球団イラストのネッピーが持っているような道具だ。
「香月お前、1人か?」
「はい、こっちの方で声が聞こえたから来てみたんですけど……大久保さんも1人です
か?」
「いや、オギさんとジミーがいる。【K】があと1個足りないんだ」
「じゃあ……」

83:代打名無し@実況は実況板で
07/05/05 00:09:38 fREFyVI/0
香月は思案げな表情をして、両手で矛を抱きしめるようにして抱え込んだ。
「今は2つ?」
「ああ、オギさんがゼロ、ジミーが1個、俺も1個。今トイレ行ってる」
「ふうん……」
ゆっくりと、香月の表情が変わった。それはどこか余裕ありげな笑みだった。
「俺、2個持ってるんですよ」
逆に大久保の表情が険しくなった。ずっと【K】を探していた。しかし、数をオーバーし
てしまっては意味がない。大久保にとって、香月は余分な存在と確認された。
けれど、今ここで大久保と香月が組めば【K】は3つ。グループが成立する。
大久保の心の中に焦りが生まれた。残り時間は20分を切っている。その瞬間の決断が生
死を分ける。あの時、金子への攻撃を失敗したように。
(どうする……)
萩原たちはすぐに戻ってくるだろう。大久保は迷っていた。
「かつ……」
その名前を呼びかけた瞬間、香月の矛が大久保めがけて勢いよく突き出された。
「っ!!」
思わず言葉を飲み込み、横へ飛び避けようとしたが、遅かった。ドッという鈍い音がして、
大久保の左脇腹に激痛が走った。
「ぐぅっ!!」
間髪置かずに香月は矛を突き出した。大久保は地面に転がりながら、かろうじてそれを避
けた。今度は矛が振り上げられた。ガツッという音と共に、大久保の右肩が打ち込まれた。
「っあ!!」
短い叫びを上げ、大久保は這い蹲るようにしてその場から逃げようとした。背中にまた激
痛が走る。何かが刺さった感触。
「……うぅ……っ!」
それでも大久保は立ち上がった。鞄をしっかりと持ち、必死の足取りで木々の間へと逃げ
込んだ。残念ながら、萩原たちの歩いて行った方向とは逆に。
香月はそれ以上は追わなかった。残り時間は20分弱。その間に大久保は仲間を見つけら
れるだろうか。あの怪我を負って。おぼつかない足取りで。

84:「132・メンバー交代 6/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/05 00:10:41 fREFyVI/0
(タイムリミットでアウトか、体が持たずにアウトか)
香月は大久保が去った方向を見つめていた。大久保が元近鉄の選手なら、一時的にでも手
を組む気にもなれたのだ。だが違った。だから傷を負わせた。とどめを刺す為の深追いを
しなかったのは、自分が【K】のグループから離れてしまっては意味がないから。もうす
ぐ萩原と大西が戻って来る。20分後に萩原を消せばいい。萩原は【K】がゼロなのだから
すぐに消してもいいが、それだと大西からの信頼を失う。ひとまずは手を組んで安心させ
た方が得策だ。
(ジミーさんは……どうしようかな)
上手いこと口車に乗せて、共同戦線を張ろうか。そして、その時が来たら……
今だけは仲良しこよし。手を繋ごう。だがその時間が終わったら全てはまた元に戻るのだ。
香月は矛先を地面へと擦りつけた。ついてしまった血やその他の生々しいものを拭う為。
手にはまだ感触が残っている。人間の肉の弾力。拭いながら改めて矛先を見た。肉片のよ
うな塊が土にまみれてついていた。今度は岩にこすりつけるようにしてそれを落とした。
肉をえぐった時にちぎりとってしまったのだろう。
考えてみれば、本気で誰かを攻撃したのはこれが初めてではないだろうか。
香月の手は震えてすらいなかった。
(……案外いけるもんだな。一撃必殺とまではいかないけど……)
それなりの怪我を負わせているはずだ。精神的ダメージも強いだろう。痛みだってそう簡
単には消えないものだ。
「あ、あれ?香月?」
草を揺らす音がして、木々の暗闇の中から大西が顔を出した。
「香月?」
続いて萩原も現れる。2人は揃ってキョロキョロと辺りを見回した。
「あれ?大久保さんは?」
「え?大久保さんも一緒なんですか?」
とぼけた声を出して香月も一緒に辺りを見回す。
「大久保さーん」
それほど大きくない声で、香月が呼んだ。何も返事は無い。もう一度呼んだ。それでも物
音ひとつ返ってはこなかった。
「探しましょうか」

85:「132・メンバー交代 7/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/05 00:11:22 fREFyVI/0
「あれ、待てよ?」
大西が香月に歩み寄る。香月はギクリと体を硬くした。
「香月、お前【K】何個?」
「2個です」
「じゃあ、これでちょうど3個だ!」
大西が喜びの笑顔を隠さずに、萩原を振り返る。萩原は黙っていた。
「こ、これでグループ成立ですよ!」
大西が続ける。萩原は猫の頭を撫でながら呟いた。
「……大久保はどこに行ったんだろうな」
静かにその目が香月を見た。
「お前がここ来た時、大久保はもういなかったか?」
「はい、いませんでした。ちょっとこの辺をウロウロしてたらジミーが出て来て」
「………そうか」
萩原が小さく息を吐いた。
「………大久保、どこ行ったんだろうな」
罪悪感など香月は感じなかった。とにかくこの1時間を乗り越えなければならないのだ。そ
う簡単にグループを作れるはずなどない。このトラップでそれなりの人数が脱落するはず
だ。自分は決してそこには入らない。そう固く誓い、信じていた。その為には何だってす
る。生き残る為には。元ブルーウェーブの連中を消す為には。
「と、とりあえず、これでグループ成立ですよ!」
場の空気を取り繕うように大西が言う。大西自身も後ろめたいものを感じていた。自分は
大久保を信じなかった。萩原を選んだ。その結果、大久保が消えた。どこへ消えたのかは
わからない。そして突然現れた香月。何かがあったのかもしれない。けれどそれは憶測で
しかない。今はそれを追及する時ではない。少なくとも、あと20分は。
大西と香月は萩原を見ていた。
萩原は何をするでもなく、ただ地面を見つめていた。

【残り・28人】

86:「133・ふらり 1/1」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/05 00:12:49 fREFyVI/0
よろめきながら大久保は走っていた。いや、走るという速度ではなかった。けれど気持ち
は間違いなく走っていた。ただ、体がその速度についてこないだけだった。
(畜生……畜生………畜生!!)
心の中で叫び続ける。香月の狡猾さにやられた。自分の体が悲鳴を上げているのがわか
る。あと20分弱で仲間を見つけることが出来るだろうか。【K】をあと2つ。
香月は仮面をつけている。無難な人間のように見せかけて、相手の隙をついて攻撃してく
る。萩原と大西は大丈夫だろうか。けれどもうそんなことは大久保の知ったことではない。
今は自分が生き残ることが最優先だ。声を上げることも憚られた。もし香月に追って来ら
れたら……。萩原と大西を口車に乗せて、大久保を敵に思わせて、追って来ていたら……
(いや、向こうにそんな余裕は無いはずだ)
誰かに助けを求めなければ。グループを組める仲間を求めなければ。
「誰か……っ!」
叫びかけてむせこんだ。口元に手をやった。その手を灯りに照らして見る。赤い。
(血だ……)
さっき脇腹の傷口を押さえた時についたのだろう。鮮明な赤が大久保の目に焼きついた。
(こんなこと……こんなことって……)
微かな眩暈を感じた。脇腹から伝い落ちる血の流れが広がり、ユニフォームに染み込んで
いる。ズボンの方にまでペタペタした感触があった。
(やべえ)
病院があればそこに飛び込みたいが、飛び込んで何が出来るのだろう。止血か。だがその
技術が自分にはあるのか。脇腹と肩はなんとかなるかもしれない。だが背中の手当ては誰
かの手を借りたい。どちらにしろ、仲間が必要なのだ。
「誰……か……っ!」
必死になって声を絞り出した。
右手をズボンのポケットに入れた。指先に触れた冷たいもの。それを握って取り出した。
自分を励ますようにギュッと握り、ふらつく足を前へと押し出した。
「……誰かっ!!」
視界が揺れている。それでも大久保は歩き続けた。

【残り・28人】

87:「134・登録名か、本名か 1/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/05 00:13:55 fREFyVI/0
「だから!俺はどっちなんだよー!!」
「ユウキ、落ち着け」
出発地点への道の途中、とうとうユウキが怒鳴った。登録名換算なら【K】は1つ、本名換
算なら2つ、それによってユウキと平野恵一の運命は大きく変わる。ユウキがキレるのも無
理はなかった。
「あと20分も無いんだぞ?どっちなんだよ俺は!」
文句を言いながらも小走りの状態は緩まない。出発地点に戻ればきっとオーナーか誰かが
いる。そこでユウキはどちらで考えられているのか聞こうという計画。しかし残り時間も
少なくなり、焦りは隠せなかった。そもそも出発地点にオーナーがいるとは限らない。な
のにそこに行こうとしている。それしか思い浮かぶ方法がないのだ。せめてもの可能性を
信じて2人は進んでいた。
少しずつ、平野恵一の足取りが遅くなっていた。言葉数も少なくなっている。ユウキは横
目で平野の顔を見た。まだ怪我の治りきっていない体。苦痛に耐えているのだろう。
けれど、速度を緩めるわけにはいかなかった。彼らにはクリアしなければならない問題が
多すぎた。新たに仲間を探すとしても、残り時間はあとわずか。どうしようもない状況だ。
(俺が本名でカウントされてるなら、それが一番なんだ)
ユウキは平野へと手を差し伸べた。
「鞄、貸せ」
「え?いいよ」
「大丈夫だよ、持ってやる」
「いいって」
「俺に食料とラッキーカード預けるのはイヤか」
冗談めかした口調で言った。
「ち、違うって。ちゃんと自分で持てる!」
平野は本気で受け取ったようで、真顔で反論した。けれどそれはある意味正解だった。ユ
ウキの心の奥底を読めるなら。
ふいに、流れている音楽が大きくなった。
『残り15分になりました』
放送が流れた。2人は足を止めずに放送を聞いた。
『先ほど大事な連絡を忘れておりましたので………ユウキくん』

88:「134・登録名か、本名か 2/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/05 00:14:29 fREFyVI/0
名前を呼ばれ、ビクリと体を震わせた。2人の足が止まった。
『君はユウキで登録されていますね。この場合【K】が1つ。フルネームだと2つです』
ユウキは無言のままうなずいた。
『どちらがいいですか?』
笑いを含んだような声が尋ねてきた。
「フルネーム!絶対フルネーム!!」
ユウキが叫ぶ。どこにいるかもわからないオーナーに向かって。
『その設定は初めから決まっています。ただ、発表しておくのを忘れてしまいまして……
ですから、賭けてみませんか?』
「………は?」
『自分がどちらでカウントされているのか、賭けてみませんか?こちらからは教えません。
自分で判断して行動して下さい。君の【K】は1個なのか、2個なのか』
ユウキはあからさまに不機嫌な顔をした。
「なんで俺だけ!不公平だ!」
まるでその声が聞こえたかのように、オーナーが続けた。
『とにかくこちらではもう最初から決まっています。ではこうしましょう。今知りたけれ
ば、今教えて差し上げます。けれど賭けに乗るなら、勝った場合はこのトラップタイム終
了後に……』
ゴクリとユウキは唾を飲み込んだ。
『ラッキーカードの意味を教えましょう』
思わず顔を見合わせた。平野の持っている支給品、ラッキーカードには謎のメッセージが
書かれている。意味はわからない。ただその言葉に導かれて島の端、橋を渡った小島にあ
る研究所へ行こうとしていたのだ。それをこのトラップタイムで妨げられた。
ラッキーカードの意味。それは喉から手が出るほど知りたいものだった。ラッキーという
くらいなのだから、この島で生き残る為の方法を少しでも教えてくれるのだろう。そして
マーマレードが何の役に立つのかも。
けれど、それらは2人の生死を賭けた勝負と引き換えだった。
平野はユウキを見つめていた。
「俺は………」
ユウキは言葉を詰まらせた。命を賭けた大勝負に出るか、否か。

89:代打名無し@実況は実況板で
07/05/05 00:17:48 ca3mn0elO


90::「134・登録名か、本名か 3/4」 ◇UKNMK1fJ2Y
07/05/05 01:10:03 DyFJM2QF0
(ここで俺の【K】の数を聞いたとする。もしそれが1個だったら、俺らはまた誰かを探し
て走り続けなきゃいけない。15分以内に見つからなきゃ死ぬ……あれ?)
ひとつのことに気づいた。
「あの、質問です」
『はい』
「もし俺が【K】は1個だって方に賭けたとします。それが当たってたとします。で、その
後、俺が【K】を3個集められなかったらやっぱり死ぬわけですか?当たってたのに?それ
じゃあラッキーカードの意味も聞けないし、賭けとしてはこっちが圧倒的に不利じゃない
ですか?メリット少ないですよね?」
『……まあ……そういう考えもありますね』
(ユウキの声が、オーナーに聞こえてる?)
平野は気づいた。ユウキはもう大声で怒鳴ってはいない。その場で喋っている。けれどそ
の言葉にオーナーは反応している。
(どっかに集音マイクがあるのか、それとも盗聴するような装置があるのか)
辺りを見回した。懐中電灯を片手に木々の高い場所を照らしたり、地面をよく見つめたり
した。しかしそれらしい物は見当たらなかった。夜の闇の中では難しかった。
「結局、何を選んでも俺らには不利ってことですね」
ユウキは小さくため息をつくと、小さく拳を握った。
「とにかくこの状態であやふやじゃあ、恵一にも迷惑かけるもんな」
自分に言い聞かせるように呟いた。
「今、俺の【K】の数を教えて下さい」
『……ほう、賭けはしませんか』
「賭けをしたら、恵一まで中途半端な立場にするじゃないですか。だったら今知りたいで
す。それで【K】が足りなければすぐ走り出しますから」
平野はユウキを見ていた。今回の問題は一蓮托生だ。ユウキが賭けをしようがしまいが平
野には関係ない。しかしグループ成立か否かの問題は平野の命まで左右してしまう。ラッ
キーカードの意味を知りたいのは山々だが、自分たちの立ち位置をしっかり見極めること
が先決だとユウキは判断したのだ。
『ならば、お教えしましょう。ユウキ君の持つ【K】の数は……』


91:「134・登録名か、本名か 4/4」 ◇UKNMK1fJ2Y
07/05/05 01:10:55 DyFJM2QF0
平野は目をつぶった。片手で鞄の肩紐を握り締め、すぐにでも誰かを探す為にスタート出
来る準備をした。
『2個です。では放送を終わります』
再び音楽が流れ出した。ユウキと平野は顔を見合わせた。
「………3個?」
「………合計3個!」
「オッケー!」
思わず抱き合ってその場で飛び跳ねた。
「いてッ」
「あっ、ごめん!大丈夫か?」
平野が鎖骨の辺りを手で押さえて動きを止めた。ユウキは平野の背中を支えるようにして
様子を見た。
「とりあえず、俺らの勝ちだ。グループ成立したんだ。少し休もう。恵一、ずっと無理し
て走ってたろ」
「……少し休んだら、また研究所の方に戻ろうな」
相変わらず気の強いことを言う。ひとまず2人は木々の影に隠れるようにしてその場にしゃ
がみこみ、短い休息を取ることにした。


放送が終わったその時、阿部真宏は唇を噛み締めて走り出し、川越は少しだけ泣きそうな
顔になりながら走り出し、鈴木は腹を抑えたまま前屈みに歩き出し、的山は肩で息をしな
がら走り出し、大久保は右手の拳を握ったままよろめき、日高はネッピーと共に菊地原を
背中におぶったまま彷徨い歩き、吉井は地図を持たないまま木々の間を迷い、田中は地図
を握り締めたまま一直線に走り、山口は清原の体の横で眠っていた。

そして、萩原が心の中で呟いた。
(ユウキが持ってるラッキーカードって何だ?生き残るのに有利な物なんだろうか……)

【残り・28人】

92:代打名無し@実況は実況板で
07/05/05 01:11:56 DyFJM2QF0
保管庫の避難スレにあったので代理投下しておきます

93: ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/05 01:41:05 SlCEjr6h0
代理投下ありがとうございます。助かりました。
規制がかかってしまって、中途半端なところで…orz

94:代打名無し@実況は実況板で
07/05/05 02:31:08 Sn42rJjmO
乙でございます

そうか…2個だったのか…

てか大久保…大丈夫か…

95:代打名無し@実況は実況板で
07/05/05 06:04:05 Y4lKJWDp0
投下乙です!
良かったな田中祐貴(あえてこう呼ぶ)……
ってかオクボーン大ピンチだし!!!

96:代打名無し@実況は実況板で
07/05/05 17:47:36 vxNAm/WLO
乙です!

残りたったの15分な人達が…
みんながんばって走るんだ…

97:代打名無し@実況は実況板で
07/05/06 00:18:38 fhH0u3uB0
投下乙です。
ああ、もうみんな心配だよ頑張って・・・

98:代打名無し@実況は実況板で
07/05/06 19:57:42 TMEHcqx40
オリオタの特徴。
楽天にだけは負けたくないとやたらと敵対心を持っている。
関西での阪神の圧倒的人気に露骨に嫉妬して反発し続ける屈折した感性の人達。
清原が本気で戦力だと信じている。
今年はシーズン1位が優勝なのに「3位にさえなればいい」という卑屈な発想の持ち主。
全国の清原ファンより全国のオリックスファンの方が数が少ない。
タダ券バラ撒き・社員大量動員・悪質水増しのトリプルコンボで過去二年無理やりパリーグ3位の観客動員を「捏造」し続けた事を必死に否定する。
他球団で活躍するノリ・谷・早川を「どうせ残ってたら活躍しなかった」と必死に現実逃避。
毎年シーズンオフと四月前半までは戦力分析スレでやたらと強気発言を繰り返す。
2球団のいいとこ取りの悪質極まりない合併をしたくせに糞弱い現状を「1+1は必ずしも2」ではないという苦しい言い訳を繰り返し、
残りカスを押し付けた楽天についに順位で抜かれて最下位に落ちる事となる。

オレがオリオタで一番嫌いな所は上を見ないで、すぐに下を見ること。
チームが弱いと「楽天よりマシ」
客が入らないと「楽天(西武)よりは入ってる」
GW全敗すると「阪神だって全敗」
いかにオリオタが屈折した思考の持ち主だということがわかる。
12球団1不人気で12球団1弱い。
ノリキヨ・ラロッカ・デイビー・菊地原・ローズ・村松・セラフィニと他球団のお下がりばかりアテにしたハイエナ球団。
負ければ全て「暗黒」・「負広」・「ノリ」の一言で片付け、ハイエナ選手頼みで若手が全く育ってないことは完全スルー。
ハイエナ球団オリックスはこのオフには誰を狙うの?
福留?カブレラ?和田?よしのぶ?
もういいかげんにしてください。


99:代打名無し@実況は実況板で
07/05/06 19:58:58 TMEHcqx40
ちょっと苦手なあの目線〜♪
こっち観てぇ〜♪

100:代打名無し@実況は実況板で
07/05/06 20:02:37 TMEHcqx40
オリオタの特徴。
楽天にだけは負けたくないとやたらと敵対心を持っている。
関西での阪神の圧倒的人気に露骨に嫉妬して反発し続ける屈折した感性の人達。
清原が本気で戦力だと信じている。
今年はシーズン1位が優勝なのに「3位にさえなればいい」という卑屈な発想の持ち主。
全国の清原ファンより全国のオリックスファンの方が数が少ない。
タダ券バラ撒き・社員大量動員・悪質水増しのトリプルコンボで過去二年無理やりパリーグ3位の観客動員を「捏造」し続けた事を必死に否定する。
他球団で活躍するノリ・谷・早川を「どうせ残ってたら活躍しなかった」と必死に現実逃避。
毎年シーズンオフと四月前半までは戦力分析スレでやたらと強気発言を繰り返す。
2球団のいいとこ取りの悪質極まりない合併をしたくせに糞弱い現状を「1+1は必ずしも2ではない」という苦しい言い訳を繰り返しておきながら、
残りカスを押し付けた楽天についに順位で抜かれて最下位に落ちる事となる。

オレがオリオタで一番嫌いな所は上を見ないで、すぐに下を見ること。
チームが弱いと「楽天よりマシ」
客が入らないと「楽天(西武)よりは入ってる」
GW全敗すると「阪神だって全敗」
いかにオリオタが屈折した思考の持ち主だということがわかる。
12球団1不人気で12球団1弱い。
ノリキヨ・ラロッカ・デイビー・菊地原・ローズ・村松・セラフィニと他球団のお下がりばかりアテにしたハイエナ球団。
負ければ全て「暗黒」・「負広」・「ノリ」の一言で片付け、ハイエナ選手頼みで若手が全く育ってないことは完全スルー。
ハイエナ球団オリックスはこのオフには誰を狙うの?
福留?カブレラ?和田?よしのぶ?
もういいかげんにしてください。


101:代打名無し@実況は実況板で
07/05/06 20:03:46 TMEHcqx40
オリオタの特徴。
楽天にだけは負けたくないとやたらと敵対心を持っている。
関西での阪神の圧倒的人気に露骨に嫉妬して反発し続ける屈折した感性の人達。
清原が本気で戦力だと信じている。
今年はシーズン1位が優勝なのに「3位にさえなればいい」という卑屈な発想の持ち主。
全国の清原ファンより全国のオリックスファンの方が数が少ない。
タダ券バラ撒き・社員大量動員・悪質水増しのトリプルコンボで過去二年無理やりパリーグ3位の観客動員を「捏造」し続けた事を必死に否定する。
他球団で活躍するノリ・谷・早川を「どうせ残ってたら活躍しなかった」と必死に現実逃避。
毎年シーズンオフと四月前半までは戦力分析スレでやたらと強気発言を繰り返す。
2球団のいいとこ取りの悪質極まりない合併をしたくせに糞弱い現状を「1+1は必ずしも2ではない」という苦しい言い訳を繰り返しておきながら、
残りカスを押し付けた楽天についに順位で抜かれて最下位に落ちる事となる。

オレがオリオタで一番嫌いな所は上を見ないで、すぐに下を見ること。
チームが弱いと「楽天よりマシ」
客が入らないと「楽天(西武)よりは入ってる」
GW全敗すると「阪神だって全敗」
いかにオリオタが屈折した思考の持ち主だということがわかる。
12球団1不人気で12球団1弱い。
ノリキヨ・ラロッカ・デイビー・菊地原・ローズ・村松・セラフィニと他球団のお下がりばかりアテにしたハイエナ球団。
負ければ全て「暗黒」・「負広」・「ノリ」の一言で片付け、ハイエナ選手頼みで若手が全く育ってないことは完全スルー。
ハイエナ球団オリックスはこのオフには誰を狙うの?
福留?カブレラ?和田?よしのぶ?
もういいかげんにしてください。


102:代打名無し@実況は実況板で
07/05/07 08:01:20 YztuQu7tO
↑保守どうも

103:代打名無し@実況は実況板で
07/05/08 01:21:01 B+4q1djt0


104:代打名無し@実況は実況板で
07/05/08 23:15:18 oy59fpTu0
ほしゅ

105:代打名無し@実況は実況板で
07/05/09 21:42:55 CgE41fxpO
連敗止まったよ、今日はしあわせだ保守!

106:代打名無し@実況は実況板で
07/05/09 21:48:12 OUOfCKVeO

∩(´∀`゚)゚・゚.。・。゚.


こっちの選手もガンバレ! 保守

107:代打名無し@実況は実況板で
07/05/10 15:28:57 m3JWflog0
あげ

108:代打名無し@実況は実況板で
07/05/11 03:02:48 Yo3UdhDWO
捕手

109:「135・求めていたもの 1/8」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 01:08:53 nCkj/W1d0
「畜生!あのクソガキ!」
追い続けていた白い背中は、とうに見えなくなってしまった。
それでも吉井は走らなければならなかった。グループを成立させた選手を見つける為に。
時間は残り15分を切った。【K】をひとつも持たない吉井は、他の誰かにすがるしかなかっ
た。元々向かおうとしていた日高と菊地原のグループは【K】が4個でオーバーしている。
しかしそこに田中彰が加われば【K】は6個。グループ成立だ。今の状況から考えてそこに
合流することが一番の近道に思われた。
しかし地図を失った今、日高たちの位置もうろ覚えだった。
(この俺が、あんなガキに!)
時間との勝負の他に、もうひとつ。禁止エリアとの勝負がある。禁止エリアの位置もあや
ふやだ。なんとなくこの辺り、という感覚でしかない。
(行ってやるぞ畜生!合流してやるからな!)
憤怒に押されるようにして、吉井は走り続けていた。
(生き抜くんだ!)
そう、あの時のように。パーティで聞いた仰木監督の一言。
「吉井を取って下さい」
吉井の目の前で球団幹部に上訴したあの一言。チームを解雇となり行き先を失った自分と
再度契約するよう、仰木監督自ら球団へと進言してくれた。
ずっと嫌われていると思っていた。仰木監督と自分の考え方は合わないのだ、そう思って
いた。なのにその人が自分を必要だと言ってくれた。この信頼に答えなければ男ではない。
『個人のわがままを聞いていると、チームが成り立たない』
そう窘められたのは若い日のこと。吉井はもう過去の自分を見つめ直し、糧とすることが
出来る大人になっていた。
感謝。
その一言を胸に、このチームを育てる為に、吉井はマウンドに立ったのではなかったか。
仰木監督への感謝、チームメイトへの感謝、野球への感謝、家族への感謝、支えてくれる
人たちへの感謝。
けれど、今の吉井にはそれらの言葉は動きを阻む枷でしかなかった。
生き残る為に、人の心を消した。
残り13分。

110:「135・求めていたもの 2/8」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 01:09:38 nCkj/W1d0
(やべえよ!マジやべえよ!)
阿部真宏は辺りを見回しながら走っていた。
「誰かー!誰かいないかー!」
懐中電灯を振り回す。
「俺1個も持ってねえんだよー!誰かー!」
なりふり構わず叫び続ける。
さっき見かけた踊る猿。あの猿の向こう側に見えた、灯りのついた家。そこに行けばよか
ったのだろうか。勇気を出して不気味な猿を突っ切って行けば、仲間に出会えたのだろう
か。こんな状況で「もしも」の可能性を考えても仕方が無いとはわかっているのだが。
「だーれーかー!!」
叫びながら、はぐれてしまった水口のことを考えた。
(水さん大丈夫かな……怪我したっぽいし………まさか早川に襲われてたりはしないよな
……水さんを襲ったのも早川だったのかな………)
自分を襲ってきた早川のことを思い出す。早川自身はグループに入ることが出来たのだろ
うか。あの尋常ではない目つきを考えると、仲間を得ることは難しそうだ。彼はどうする
のだろう。何かに憑かれた不思議な目をしたまま、仲間を探しているのだろうか。それと
もそんなことを考える余裕もなく、狂気に流されてタイムアウトを迎えるのだろうか。は
たまたラッキーな偶然が重なって、見事にグループを成立させているのだろうか。
(こんなに清く正しく頑張ってる俺が放浪中で、おっかない早川がグループ成立なんて不
公平じゃないか?神様なんとかしてくれよ!)
心の中で愚痴を吐きながら、阿部は暗闇を駆け抜けた。
(放送じゃあ、ユウキのラッキーカードがなんとかって言ってたけど……)
今は自分に関係ないことを考えるのはよそう。とにかく仲間を探そう。その為に叫び続け
よう。時間は残酷なまでに限られているのだ。
「誰か仲間に入れてくれーっ!!」
残り12分。

111:「135・求めていたもの 3/8」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 01:10:16 nCkj/W1d0
(かっこつけすぎたかな……)
自分の選択は間違っていたのだろうか。川越は考えながら走っていた。
仲間を助けたかった。自分がいなくなれば本柳、塩崎、水口はグループ成立で助かるのだ。
だから走り出した。選手会長という責任感を背負って。
(俺だって……俺だって生きたいよ!)
半泣きになりそうな自分を抑え込んで、川越は耳をすませた。さっきどこかで誰かの叫び
声のようなものを聞いたからだ。
「おーい!」
自分からも呼びかける。
「誰か【K】1個持ってないかー!」
もしここで死んだとしたら、自分は誇りを持って死ねるだろうか。自分で納得出来るだろ
うか。自分の行動に後悔はしないだろうか。
(納得出来ないから走ってんだよ!生きたいんだよ!)
約束したのだ。グループを成立させて、生き延びて、本柳たちの所へと帰るのだ。
時折脳裏を掠める白い靄のようなものが気になるが、今はどうでもいいことだ。不確かな
記憶についてはまた後でゆっくり考えればいい。
残り11分。

112:「135・求めていたもの 4/8」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 01:11:08 nCkj/W1d0
自分では必死に走っているつもりだった。けれど的山の足がついてこなかった。年齢的な
もの、体力的なものと言い訳をすることは簡単だ。けれどスポーツ選手としてのプライド
がそれを認めたくはなかった。
ベテラン。
そんな言葉で全てを誤魔化せる年齢になった。けれど密かに的山はこの言葉を嫌っていた。
逃げの言葉と解釈した。
(俺だって……まだまだ出来るんだよ……)
息切れの中、自分を励ます。
(こんな所で死んでたまるかよ)
声を出そうとした。誰かに呼びかけたかった。けれどその為には呼吸を整えなければなら
ない。荒い息はなかなかおさまりそうにもなかった。
「誰……かっ!!」
途切れ途切れの声は、暗闇に響かない断片的なものだった。これが野次将軍の早川や下
山なら遠くにもよく響く声を出したのだろう。
こんな所で年齢を感じるとは思わなかった。また少し時間を作り、呼吸を整えた。
「誰かーっ!」
返事はない。だからまた走り始める。不毛な行動の繰り返しに思えてしまうが、それでも
止めることは出来なかった。これだけが、唯一生き残りへの方法なのだ。
(ジミーは……大丈夫か……?)
つい他人のことを考えてしまう優しさ。それが本来の的山であるはずなのに。
残り10分。

113:「135・求めていたもの 5/8」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 01:11:49 nCkj/W1d0
『残り10分になりました』
また音楽が大きくなり、放送が流れ始めた。
『そろそろ音楽が徐々に早くなっていきますので、それを目安にして下さい。では』
「もうイヤだもうイヤだもうイヤだっ!!」
「日高さん!落ち着いて!」
菊地原を背負ったまま、日高が絶叫する。前屈みになって声を振り絞るようにして叫んだ
為、菊地原の体が背中からずり落ちそうになった。
「危ない!」
ネッピーが慌ててそれを支えた。
「日高さん、落ち着きましょう、ね?」
同時に日高の肩に手を置き、必死に気持ちをなだめようとする。だが日高の表情は、見て
いる方がつらくなるくらい絶望的だった。
「なんで俺たちがこんな所で死ななきゃいけないんだよ!」
「死ぬと決まったわけじゃないです!頑張りましょう!」
さっきから何度もネッピーは通信機でリプシーに呼びかけていた。しかしリプシーからの
応答は無かった。気づいていないのか、それとも通信事態が何かの障害を受けているのか。
「日高さん、頑張りましょう!誰かを探しましょう!」
「誰を?!」
オウム返しに怒鳴る。冷静さを欠いていることは明らかだった。普段の日高らしからぬ様
子に、ネッピーも返事に詰まってしまった。
「畜生!もうイヤだ!」
「何がイヤなんです?」
ふいにのんびりとした声がした。日高とネッピーは驚いて声の方を見た。
「田中です。田中彰。【K】は2つ」
声はとても穏やかだった。
「日高さんが2個、菊地原さんが2個、合計6個、グループ成立じゃないですか?」
シン…、とその場が静まり返った。ただ聴きたくもない音楽だけが流れていた。

114:「135・求めていたもの 5/8」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 01:13:10 nCkj/W1d0
『残り10分になりました』
また音楽が大きくなり、放送が流れ始めた。
『そろそろ音楽が徐々に早くなっていきますので、それを目安にして下さい。では』
「もうイヤだもうイヤだもうイヤだっ!!」
「日高さん!落ち着いて!」
菊地原を背負ったまま、日高が絶叫する。前屈みになって声を振り絞るようにして叫んだ
為、菊地原の体が背中からずり落ちそうになった。
「危ない!」
ネッピーが慌ててそれを支えた。
「日高さん、落ち着きましょう、ね?」
同時に日高の肩に手を置き、必死に気持ちをなだめようとする。だが日高の表情は、見て
いる方がつらくなるくらい絶望的だった。
「なんで俺たちがこんな所で死ななきゃいけないんだよ!」
「死ぬと決まったわけじゃないです!頑張りましょう!」
さっきから何度もネッピーは通信機でリプシーに呼びかけていた。しかしリプシーからの
応答は無かった。気づいていないのか、それとも通信事態が何かの障害を受けているのか。
「日高さん、頑張りましょう!誰かを探しましょう!」
「誰を?!」
オウム返しに怒鳴る。冷静さを欠いていることは明らかだった。普段の日高らしからぬ様
子に、ネッピーも返事に詰まってしまった。
「畜生!もうイヤだ!」
「何がイヤなんです?」
ふいにのんびりとした声がした。日高とネッピーは驚いて声の方を見た。
「田中です。田中彰。【K】は2つ」
声はとても穏やかだった。
「日高さんが2個、菊地原さんが2個、合計6個、グループ成立じゃないですか?」
シン…、とその場が静まり返った。ただ聴きたくもない音楽だけが流れていた。

115:「135・求めていたもの 6/8」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 01:15:18 nCkj/W1d0
田中のその異様なまでの落ち着きっぷりに、日高は違和感を感じた。グループ成立という
ことは、自分はこのトラップから生き残ったことを意味する。それは無条件で喜ばしいこ
とだ。今さっきまで狂ったように叫んでいた状況が一気に好転した。両手離しで喜びたか
った。けれど、それら全てを引き潮のように鎮めてしまう何かが、田中の口調には籠もっ
ていた。日高は動けなかった。
「……どうしたんです?グループ成立ですよ?半径1メートル以内に集まらないといけな
いんでしたっけ?」
田中の呼びかけにも、日高は動けなかった。菊地原を背負ったまま、足を動かすことが出
来なかった。
すると田中の方から歩み寄ってきた。ゆっくりした足取りで、無邪気とも言える笑みを浮
かべて。
「よかったですね、これで成立」
田中は日高の顔を見、目を閉じたままの菊地原を見、ネッピーを見た。
「………田中」
「はい」
日高の呼びかけに、素直に田中は答えた。
「吉井さん、見なかったか?」
「吉井さん?どうしてですか?」
不思議そうな表情で尋ね返す。
「さっきネッピーがリプシーと連絡取って、吉井さんがこっちに向かってるはずなんだ。
吉井さんは【K】を1個も持ってないから、上手くこっちに向かってくれてればって思って」
「へえ……そうなんですか……俺は全然知らないですね」
「………ふうん………」
日高はそれっきり黙ってしまった。どうしても田中から感じる違和感を消せなかった。
菊地原はまだ目を覚まさない。
残り8分。

116:「135・求めていたもの 7/8」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 01:16:45 nCkj/W1d0
すでに大久保は歩いてもいなかった。
ふらつき、よろめく足で、少しずつ、ほんの少しずつ、立ち位置を変えていた。
顔色は蒼褪めている。意識もぼんやりしてきた。ただその場で右へ左へ揺れているだけの
状態だった。
放送を聞いた。けれど聞き流していた。残り10分という言葉は聞こえた。けれどもはや大
久保にはたいした意味を持たなかった。
大久保は、自分の残り時間を感じ取っていた。
ジェノサイダー。
それが大久保の役割のはずだった。この島に運ばれて、ルールを教えられて、そう決意し
たはずだった。けれどそう簡単にことは運ばなかったようだ。何かが足りなかったのだろ
うか。覚悟。殺意。憎しみ。開き直り。
信用してしまったのだ。ほんの少しだけ、チームメイトを。それはジェノサイダーには相
応しくない感情だった。
下半身、左側は脇腹から流れ出た血で真っ赤に染まっている。おそらく背中もそうなのだ
ろう。激しい肉体の損傷を伴うこれほどの出血量、圧倒的な赤に染まっても人は動けるも
のかと大久保は妙に感心していた。
それは執念。
ひとつのことへの執着。
けれど、それも限界が近づいていた。
ザッ。
音を立てて、膝から崩れ落ちた。
ドッ。
前のめりに倒れこむ。重い音と共に鞄が左肩から落ち、体の横に転がった。
大久保は右手を伸ばした。何かをずっと握ったままの震える手で人差し指を立てた。地面
にゆっくりと、その文字を書いた。

117:「135・求めていたもの 8/8」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 01:17:32 nCkj/W1d0
『リプシーへ』
彼女はいつも笑顔だった。楽しそうに踊っていた。どんなにつらくても、彼女は周りを元
気づけるべく立ち振る舞っていた。子供たちのアイドル。そして大久保の。
掌を返す。文字の横で、指を広げた。
金色の、錨の形のブローチ。
(……君に………渡したかったんだ………)
いつか、この小さなプレゼントは届くだろうか。
自分の秘めたこの気持ちも届くだろうか。
(………もう一度………ハイタッチ………したかった………)
少しずつ、全ての記憶が遠くなる。
『………誰かー………』
どこかで彼女の声が聞こえたような気がした。
大久保はそっと微笑み、目を閉じた。

【×大久保勝信 残り27人】

118:「136・カウントダウン 1/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 01:19:00 nCkj/W1d0
『残り5分です』
音楽のテンポが早くなる。川越は無我夢中になって走っていた。
「誰かいるかー!2個持ってるぞー!」
可能性は限りなく低い。【K】をひとつだけ持っている人物ただ1人と出会わなければいけ
ないのだ。
「誰かー!!」
懐中電灯を振りながら、川越は走っていた。気づくとやや急な坂道を登っていることに気
づいた。いちいち地図を出すのももどかしく、頭の中で地図を描く。これは中央辺りにあ
った丘だろうか。こんな所に仲間がいるのだろうか。
誰でもいい、返事をして欲しかった。1人でいることが嫌だった。もうすぐ自分は死ぬかも
しれない。その瞬間を1人で迎えることにも何故か恐怖を感じていた。誰かに出会ったとし
ても、それがすでに成立しているグループだったら自分の居場所は無い。それでも誰かと
対面して死ぬ方がマシな気がした。この暗闇の中、何の希望を得ることもなく独りぼっち
で死ぬのは嫌だった。
どちらにしても、死ぬことには変わりないのに。
「誰かーっ!!」
半狂乱に近い形相で叫んだ。
『残り4分です』
刻一刻と、執行猶予時間が減ってゆく。
「誰かーっ!!返事してくれーっ!!」
絶叫した瞬間、遠くでガサガサという音がした。弱々しかったが、木の枝を故意に揺すっ
たような音だった。
「誰だ?!」
思わず叫んだ。足はその方向へと勝手に向かっていた。夜の闇を生きる獣かもしれない。
だがそんな考えは微塵も浮かばなかった。残り4分。一抹の望みに縋ろうとしていた。
「川越だ!【K】は2個!そっちは!」
ガサガサとまた音がした。今度はさっきよりもやや激しく。それが返事のように思えた。
「音をくれ!そっちに行く!」
道しるべとなる音を求めた。またそれに答えるように、葉の擦れる音が聞こえる。間違い
ない。そこに誰かがいるのだ。そして川越に返事をしているのだ。音は続いた。

119:「136・カウントダウン 2/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 02:21:38 E730ijbH0
最後の賭けだった。川越は音だけを頼りに走り続けた。音が徐々に大きくなってくる。
『か……えさん!』
誰かが呼んだ。そして咳き込む音。草の音。間違いない。そこに誰かがいる。
川越を待っている。
『残り3分です』
音楽のテンポが川越を焦らせるように急激に早くなる。
だが木々の間から微かな灯りが見えた。音もその場所から聞こえてくる。
「そこか!」
走った。生い茂る木々を駆け抜け、頬を打つ葉も気にすることなく真っ直ぐに。
そして、その小さな場所に出た。
地面に転がった、灯りのついた懐中電灯。座った体勢のまま一本の長い枝を掴み、その周
囲に茂る木々を必死に揺らしている背中。
44番。
「鈴木!」
その背中に飛びついた。
「ぐっ!」
鈴木がうめく。川越は慌てて鈴木の顔を覗き込んだ。そして思わず目を背けた。
顔中が血で汚れていた。腹部も、両手も、ユニフォームも。顔は鼻の辺りを中心に無残に
傷つき、腫れていた。チーム内では端正なマスクを誇る鈴木とは思えない有様だった。
「す、鈴木!【K】は?!」
川越は慌てて尋ねた。鈴木が震える手で血だらけの指を1本立てた。
「1個か?1個だな?!俺は2個!これでグループ成立だぞ!成立なんだぞ!あと3分頑張
れ!助かるんだぞ!」
川越は鞄を降ろすと急いで救急箱を取り出した。
『残り2分です』
音楽がまた早くなる。早回しにした音が高くなり、妙に耳に障った。
「鈴木!怪我、大丈夫か?!」
『……―い!』
どこかから、誰かの声がした。慌てて川越は息を潜めた。

120:「136・カウントダウン 3/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 02:22:27 E730ijbH0
やっとグループが成立したのだ。【K】はジャスト3個でなければならない。それ以上でも
以下でもいけないのだ。またさっきのような事態だけは御免だ。残酷だとは思いながらも、
川越は今を生き残ることに必死だった。もしもの時は鈴木まで死ぬことになる。
『誰かーっ!!』
声が近くなる。川越は鈴木の肩を抱きこむようにして地面に体を近づけ、木々の影と一体
になるようにした。時折鈴木が痛みに呻いたり咳き込みそうになったが、必死にそれを堪
えた。
『俺1個も持ってねーんだよー!!』
その絶叫に川越は身を起こした。
「誰だ!」
思わず尋ねていた。
『阿部!阿部真宏!どこにいるんですか!』
「こっちだ!声の方に来い!!」
川越は片手で懐中電灯を掴むと360度グルグルと振り回した。
「急げ!!」
『残り1分です』
音楽のボリュームが一段と上がった。そしてテンポも。狂った音楽が島の中に流れ始める。
「阿部!!急げ!!」
土を蹴る音。草を打つ音。何かが必死になって近づいてくる。川越はその方向へと灯りを
振った。
「頑張れ!!こっちだ!!」
『残り30秒』
何も出来ない。灯りを振り、声を出すこと以外、何も。それでも川越は必死だった。阿部
がここに辿り着くことだけを祈っていた。頭の中がいっぱいになり、呼吸もままならない
状況で、ただ自分の心臓の音だけがやけにハッキリと聞こえていた。
「阿部―っ!!」
阿部は何も答えない。声を出す余裕も無く、ただひたすら走っているのだろう。
『残り20秒』
音楽はただ川越の精神を圧迫する。そして阿部の焦りをけしかける。

121:「136・カウントダウン 4/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 02:23:28 E730ijbH0
カタン、と小さな音がしたことに川越は気づかなかった。
鈴木の手が川越の救急箱に伸びていた。蓋を開けようとしているのだが、腕に力が入らず
上手く出来ないようだった。
『残り10秒』
「阿部―っ!!」
『9』
木々の間から零れる灯りは確実に大きくなってきていた。
『8』
救急箱の蓋が開いた。
『7』
土を蹴る音が近くまで来ている。
『6』
微かな灯りの中、鈴木は横目で救急箱の中身を確かめた。
『5』
震える指先が箱の中を探る。銀色に光るそれに触れた。
『4』
一際大きく、枝を弾く音がした。
『3』
「急げーっ!!」
川越は叫びながら、鈴木の体を抱えるようにして立ち上がった。無駄だとわかっていても、
少しでも阿部との距離を近づけようとしていた。
『2』
ガサリ、という音と共に大きな光が川越の目を射た。
『1』
「うわあああああああああーっ!!」
絶叫と同時に、阿部はヘッドスライディングをするように頭から2人の方へと飛び込んだ。

【残り・27人】

122: ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/12 02:24:19 E730ijbH0
今回は以上です。
次回はちゃんと連投規制かからないように計算して投下します…orz

123:代打名無し@実況は実況板で
07/05/12 08:10:56 EFg0ZYVA0
乙であります!
あ、阿部ちゃんは間に合ったの…!?
そして川越さんピーンチ?!

124:代打名無し@実況は実況板で
07/05/12 09:39:54 /zHKe/fpO
乙でございます!


うわぁーん…大久保がぁ、大久保がぁ…
そして阿部ちゃんは大丈夫かあ!!

125:代打名無し@実況は実況板で
07/05/12 18:07:21 OyS49ibb0
新作乙です!
ついに大詰めか……
オクボーン……。・゚・(ノД`)・゚・。
やっぱりリプシーの想い人はこの人だったか……
そして鈴木が一体何をするつもりなのか気になる。


126:代打名無し@実況は実況板で
07/05/12 19:57:16 Tn4iFDxJO
投下乙です!!


あべちゃん誕生日おめでとう、そしてどーなった?!



127:代打名無し@実況は実況板で
07/05/12 21:45:41 P3Yystbz0
すげー、読んでるだけでドキドキするわ。
オクボーンさよなら・・・。プチエースたちはどうなるんだろう。

128:代打名無し@実況は実況板で
07/05/13 21:45:22 fwrpYL2G0
乙です!
チーム状態に反してこちらはクオリティ高いなぁ(ノД`)

129:代打名無し@実況は実況板で
07/05/14 16:49:51 hFOPv4WS0


130:代打名無し@実況は実況板で
07/05/14 18:23:54 fLfaek2WO
>>129
こっちにしてくれw
つ☆

131:代打名無し@実況は実況板で
07/05/15 23:43:09 mQBxXEzFO


132:代打名無し@実況は実況板で
07/05/16 21:31:11 MXwheq1iO


133:代打名無し@実況は実況板で
07/05/17 05:57:14 C5RV2ixw0


134:代打名無し@実況は実況板で
07/05/17 22:14:42 nsIpdNkeO


135:代打名無し@実況は実況板で
07/05/18 19:12:05 KktNLPKFO



136:「137・神の判断 1/2」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/19 00:36:04 GC6hjBs30
『0』
ゼロ、という言葉がとても穏やかに響いた。
島内に流れている音楽が突然ピタリと止んだ。
それでも立ち止まることなく吉井は走っていた。もう少し、もう少しでその場所に着くは
ずだ。そう信じて走り続けていた。立ち止まることは諦めを意味する。自分から敗北を認
めることだけはしたくなかった。先に諦めた者に敗北は約束されるのだ。
『トラップタイム、終了です』
喜怒哀楽すら見せず、業務的な放送が続く。
『グループを成立させた皆さん、おめでとう』
吉井は走り続けた。微か遠くに見える灯りがあった。それを目指して走っていた。
『では、グループを作ることが出来なかった皆さん』 
ドクン、と心臓が一際大きく跳ねた。
『残念ですが、ここまでです』
(嘘だ!)
心の中で叫んだ。こんな馬鹿な話があるはずがない。そう簡単に人の命を扱えるはずがな
い。オモチャのように弄び、いらなくなったら捨てる。そんなことが。
スポーツ選手になった以上、監督やオーナーの意志で簡単に売買されることは諦めにも近
い気持ちで悟っている。すでに吉井は何度もその落胆と屈辱を味わった。
けれど、命までそんな風に扱える人間がこの世にいるものか。
もしいるのなら、神様はどこにいる?
吉井は生き残りたかった。家族の為に。野球の為に。
その為にチームメイトの命を奪った。オーナーに脅されたからだと自分に言い訳をした。
けれどそれは都合のいいように御託を並べただけだ。この島で簡単に人の命を扱い、オモ
チャのように弄び、いらなくなったら捨てた人間がここにいる。
故に、神様はいない。

137:「137・神の判断 2/2」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/19 00:37:19 GC6hjBs30
仲違いをし、気まずい関係になった吉井と仰木監督ですら、数年後に握手が出来たのに。
仰木監督、その人間性に触れ、その人の為に全力を尽くそうという気持ちになれたのに。
人間はどこかでわかり合えるはずなのに。吉井は常に『感謝』の二文字を胸にここまで生
きてきたのに。
なのに。
その人間的な感情すら持たない人間が、今、彼らの上に君臨している。
その人間的な感情すら捨てた自分がここにいる。
そして、そんな吉井の命を彼らは奪おうとしている。
(俺が……人を殺した罰か………)
因果応報。
全ては巡ってくるのだ。
(そういう道を選んだのは自分、か)
吉井は走ることを止めた。
手に持っていた消音銃を、鳩に餌でもあげるような動作で軽く投げ捨てた。
ダラリと両手を下げ、空を見上げた。
真っ黒な空に、月が煌々と照り輝いていた。
(山本と吉川の命を奪った俺は、あいつらにとって運命を握る神……悪魔か)
では、吉井の場合は。
『さようなら』
その瞬間、首に嵌められた吉井にとっての運命の神が爆発した。

【×吉井理人 残り26人】

138:「138・帰着点 1/2」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/19 00:39:18 GC6hjBs30
『残り2分です』
その言葉を的山も走りながら聞いていた。
気づいたら市街地の方まで来ていた。地図を片手に握ってはいるが、もう何の意味もなし
ていない。ただ禁止エリアを避ける為の道具。音か光を探してただ走り続けていた。
諦めたくはなかった。例え可能性は低いにしても、諦めることは自分のプライドが許さな
かった。2分後に殺される運命だとわかっていても、的山は走った。
すでに息が上がっている。これ以上走り続けるのはつらい、もうダメだ、もう諦めてしま
おうか、そう思いながらも1秒1秒を前に進んでいた。
一件の建物を曲がった所で、灯りの点いている建物を見つけた。公共施設のような大きさ
だ。暗闇の中に窓から漏れる灯りが見えた。
(誰かいるのか!!)
微かな希望ではあったが期待に胸をドキドキさせてその建物に駆け寄り、壁沿いに走り、
ドアを見つけた。ガチャガチャと力任せにドアノブを捻る。開かない。
(ダメか!)
諦めかけたその時、数メートル向こうに違うドアが見えた。少し開いているようで、その
ドアからも確かにぼんやりとした灯りが漏れていた。
(そこか!)
誰かいるのだ。ここに誰かが。的山は急いでその入り口へと駆けつけ、中へと飛び込んだ。
そして足を止めた。
多目的ホール。
見覚えがあった。
明るさが足りないと感じるくらいの中途半端な照明。
その理由はすぐわかった。
舞台の上に大きな照明器具が落ちているからだ。
飛び散っているガラスの破片、黒い塊。
そして。


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