オリックスバファロー ..
2:代打名無し@実況は実況板で
07/04/12 21:54:19 SSBz4Onw0
保管庫
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3:代打名無し@実況は実況板で
07/04/12 21:55:11 SSBz4Onw0
広島東洋カープバトルロワイアル第三章
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千葉マリーンズバトルロワイアル第17章
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阪神タイガースバトルロワイアル第八章
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一億円プレーヤーバトルロワイアル第六章
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2323バトルロワイヤル
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各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ10
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野球バトルロワイアル総合雑談所3
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4:代打名無し@実況は実況板で
07/04/12 21:55:48 SSBz4Onw0
【まとめサイト】
讀賣巨人軍バトルロワイアル
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横浜ベイスターズバトルロワイアル
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広島東洋カープバトルロワイアル
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中日ドラゴンズバトルロワイアル
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URLリンク(cdbr2004.hp.infoseek.co.jp)(中日ドラゴンズバトルロワイアル2004保管庫)
福岡ダイエーホークスバトルロワイアル
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5:代打名無し@実況は実況板で
07/04/12 21:56:24 SSBz4Onw0
阪神タイガースバトルロワイアル
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千葉マリーンズ・バトルロワイアル
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ソフトバンクホークスバトルロワイアル
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ヤクルトスワローズバトルロワイアル
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プロ野球12球団オールスターバトルロワイヤル
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アテネ五輪日本代表バトルロワイアル
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鷲バト
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ビリオネア・バトルロワイヤル
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公バト
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6:「126・My Sweet Ripsea 1/3」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/12 21:57:52 SSBz4Onw0
『…………せんかー………』
どこかでそんな声が聞こえた。ような気がする。
気のせいだ。きっと気のせい。こんな場所で女の子の、しかも彼女の声がするはずなんて
ないのだ。何かを迷っている自分の心のせいだ。
もうすでに決断を下したはずだ。なのにまだ微かな迷いを抱いている自分がいる。
自分には出来るのだ。普通の人以上のことが出来るのだ。出来るはずだ。
この島に来てから、彼はずっと自分に自己暗示をかけ続けていた。それは普段野球をする
上でも同じことだった。自分の出番直前になるといつも、そっと目を閉じて考えた。
(出来る。俺なら出来る。必ず成し遂げる。そして勝つんだ)
もう何度その言葉を繰り返しただろう。自分に言い聞かせただろう。
一緒に歩く仲間は無言だった。時折思い出したように声を出す。
「誰かいないかー!」
彼もつられて、負けずに声を出す。
「誰かー!」
心なしか自分の持っている懐中電灯の灯りが鈍いような気がする。仲間の持っている物の
方が明るく感じる。自分の電池は残り少ないのだろうか。これからの夜を持ちこたえてく
れるだろうか。いや、昼間だって暗い場所に入れば懐中電灯は必要だ。大丈夫だろうか。
これも運だとオーナーは笑うのだろうか。
『………………かー!』
また声が聞こえた。高い声。鳥の鳴き声か何かを聞き間違えているのだろうか。それとも
誰か、悲鳴でも上げているのだろうか。
彼女の声のはずがない。
そう、彼女はいつもグラウンド上で微笑んでいるのだ。
音楽に合わせて踊り、元気に飛び跳ね、時折悪戯な子供にスカートめくりをされて、ちょ
っと照れながらも走り回る。短いスカートがまた翻って、紺色のパンツが見える。勝気で
おてんばなお嬢さん。
ただのマスコット。球団のイメージを上げる為に生まれたマスコット。子供の遊び相手。
作られたイメージの上の生き物。ずっとそう思っていた。
7:「126・My Sweet Ripsea 2/3」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/12 21:58:38 SSBz4Onw0
偶然見た光景があった。
その日、試合に出ることが出来ず、私服を着て一般客と同様のフリをして、けれど出来る
だけファンから離れた場所で観戦していた。完全に隔離されたVIP席に行かなかったのは、
自分のチームに対するファンの反応、思い入れなどを肌で感じてみたかったからだ。
試合が進むにつれて飲み物が欲しくなり、売店へと向かった。帽子を目深にかぶり、サン
グラスをして、うつむきがちの姿勢で歩いた。やや混雑している通路の中、まだ小学校前
と思われる1人の子供が泣いていた。どうやら迷子になったらしい。どこにでもこういうハ
タ迷惑な子供がいるものだ。どうせ親に「ここから動くな」と言われながらも勝手に動い
てしまったか、はしゃぎすぎてしまい自分の居場所がわからなくなってしまったかのどち
らかなのだろう。
厄介事に関わったら選手であることがバレてしまう。そうなったらサインやら何やらで余
計に面倒なことになる。早く立ち去ろうと思った。
そこに彼女が現れた。
泣いている子供に早歩きで歩み寄り、目の前にしゃがみ、その小さな頬を両手で優しく包
み込んだ。子供はキョトンとした顔で彼女を見上げた。すぐに係員が来て、子供の親を探
す声を上げた。その間、彼女は子供を抱き上げ、ずっと一緒にいた。抱き上げることをや
めてもしっかりと手を繋ぎ、その手を揺らしたり、頭を撫でたり、両手を繋いで一緒にク
ルクル回ったり、子供の寂しさや不安を紛らわそうと常に動いていた。
もうすぐ7回。彼女はグラウンド上で踊らなければならない。けれど、時間ギリギリまで一
緒にいるつもりなようだった。
やがてタイムリミットが来る。担当の係員が彼女に移動するように告げた時、ようやく子
供の親が現れた。子供は彼女から手を離して一目散に親に飛びついた。そして振り返り、
彼女に向かって満面の笑顔で手を振った。
「リプシー!大好き!」
たどたどしい言葉でそう言って。
彼女は何度もうなずき、手を振って、スタッフ通用口へと消えて行った。
直後、子供は親にせがんでリプシーのぬいぐるみを買ってもらっていた。きっとあのぬい
ぐるみを握って、7回に流れる『SKY』を踊るのだろう。リプシーお姉さんを真似て。ひょ
っとしたら赤い水玉のスカーフまで首に巻くようになるかもしれない。
8:「126・My Sweet Ripsea 3/3」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/12 21:59:22 SSBz4Onw0
なんとなく、見ていて心が温かくなった。野球という環境にはこんな出来事、コミュニケ
ーションもあるのだと知った。
それ以来、彼女の存在がとても目につくようになった。
『……………かー!』
また声が聞こえた。あれは本当に彼女の声だろうか。幻聴なのだろうか。幻聴だとしたら、
彼はかなり危険な所まで来ているようだ。
(………リプシー)
心の中で呟いた。あの笑顔を見れば、彼の危険な思考も正常な方へと向かうだろうか。
「誰かー!」
また一緒にいる奴が怒鳴った。うるさい。静かにしてくれ。今は彼女の声を探したいんだ。
彼女ならきっとわかってくれるんだ。俺がずっと感じていたつらさ、苦労、愚痴、いろい
ろなものを黙って受け止めてくれるんだ。あの笑顔なら……
「20分たちましたね」
同行者の冷静な言葉が彼を現実へと引き戻す。
実は買ってあるのだ。たまたま見つけて、彼女に似合うだろうと思って、なんとなく買っ
てしまった小さなブローチ。金色に輝く錨の形。いつか渡そうと思いながらずっとその機
会を逃してしまっていた。いつでも渡せるように自分の鞄の中に今も入っている。
誰の目にもつかないように。
自分の心を隠すように。
(………キミの笑顔で俺を導いてくれ)
【残り・28人】
9:「127・甲子園 1/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/12 22:00:29 SSBz4Onw0
時計を見た。バックライト機能付き。浮かび上がる文字盤を見る。トラップタイム終了ま
であと約35分といったところか。少し前、どこかで火薬が破裂したような音が聞こえた。
それが暗闇の中の2人を余計に不安にさせていた。
「おーい!北川はここやぞー!」
元気に北川が叫ぶ。
「誰かいませんかー!」
負けずに阿部健太も大声を出した。もう泣いている状況ではなかった。
自分で進まなければいけないのだ。逃げている場合ではないのだ。今回のトラップは誰か
と手を組まなければ生き延びることが出来ないのだ。
(生きるんだ!絶対生きるんだ!泣いてばっかりの情けない俺をペーさんは拾ってくれた。
手を差し伸べて助けてくれた。だから俺は、ペーさんの為にも生きるんだ!)
健太の足取りはしっかりしていた。もう泣きながら逃げ惑っている時の足運びではない。
(もしペーさんに何かあったら……)
唇を噛み締める。
(俺がペーさんを守るくらいの気持ちで行くんだ!)
本当にそういった行動が取れるかどうかは自信がない。けれど、それくらいの気持ちで健
太は歩いていた。
(絶対に)
その後に続く言葉は沢山ある。それら全てを健太は可能にしようとしていた。信じていた。
「誰かおるかー!」
北川の言葉の語尾が少し掠れた。自分の鞄からペットボトルを取り出し、水を飲む。そし
て健太の顔を見ると、いつもの笑顔を浮かべた。
「ええ顔つきになったな」
「はい?」
「さっきまでの泣き虫坊主とは違う、ええ顔つきになった」
「そりゃあ……ペーさんに会ったからですよ」
照れながら切り返す。北川も笑ってくれた。
「その調子や」
ペットボトルが健太に差し出される。健太は手を軽く振って遠慮すると、自分のペットボ
トルを取り出した。北川の気遣いに感謝しながら。
10:「127・甲子園 2/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/12 22:01:11 SSBz4Onw0
「このトラップタイムが終わったら、落ち着くトコ探して軽くメシにしような」
「はい」
生き抜くことを信じている。
「あと1人でええんやけどな…【K】は2つあるんやから」
世の中うまくはいかないものだ。そんなことは身をもって知っている。
「なあ健太」
「はい」
「お前、高校ん時に甲子園行ったよな?」
「はい」
突然何の話だろう。健太は北川の顔をじっと見た。
「俺もな、3年の時に初めて甲子園行ったんや。キャプテンでキャッチャーで3番」
「すごい期待されてる感じですね」
「ああ、学校自体も初出場でな、えらいこと盛り上がってなあ」
「そりゃそうでしょうねえ」
「でもな、俺の打席、4打数1安打、フォアボール1つ」
北川は苦笑いを浮かべた。
「とても3番の仕事やないわな。当然試合も初戦負け。落ち込んだー。あん時はほんまに落
ち込んだ。申し訳なくてなー。自分はこんなに頑張ってんのに、何で上手くいかへんのや
って、自分を責めてな」
「………俺もそうですよ」
今度は健太が話し始める。
「俺の場合は、けっこう勝ち進んだんです。準決勝まで行って」
「すごいやん」
「2年生で背番号10なのに5試合全部先発して。俺が調子崩すと3年生の背番号1のエースが
出てくる感じで。俺、かなり点取られましたよ。自分でもヒット打ったけど、ラッキーが
重なったんです。トリプルプレイまでやったんですよ」
「そりゃまたすごいやん。運も実力の内。お前、実質上エースやったんとちゃうか?」
健太はその問いかけには答えなかった。ただ意味ありげな笑顔を浮かべた。
「最後の試合は俺、すっごくいい感じだったんです。好投してたんです。無失点で5回投げ
切って。でも、6回からエースに交代させられたんです」
11:「127・甲子園 3/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/12 22:01:51 SSBz4Onw0
「………まあ、監督次第やしな」
「多分、俺が疲れてるって思ったのか、この次の試合のことを考えたのか……。でも結局、
そのエースが打たれちゃって、負けました」
「あー……高校野球にはよくあることやな。一度も負けへんチームはひとつだけやから」
「俺、すっごく思いましたよ。俺が投げ続けてたらどうなってただろうって。どうして思
い通りにいかないんだろうって。自分が打たれて負けたならまだ自分を責められるのに」
健太の声が少しだけ弱まった。
「………俺たち、すっごく頑張ってるのに、どうしてつらいことが次から次へと来るんだ
ろうって。試合の中のことならまだ無理矢理納得させられるのに、それ以外の部分で、俺
らの力が及ばない部分でどうして……いろんなことが………」
北川は何も言わないまま、健太の肩に手を置いた。
「………俺ら………頑張ってるのに………ただ…野球が好きで……野球を仕事にしたいだ
けなのに………どうして………上の人は……どうして………」
ポンポン、と北川が肩を叩いた。少しだけ泣き声になっていた健太は鼻をすすり上げると、
小さく「すみません」と呟いて顔を上げた。
「誰かいませんかー!」
気持ちを切り替えるように声を張り上げた。
ガサリ。
遠くでそんな音が聞こえた。思わず北川と健太は顔を見合わせた。
「……誰か……いる……?」
健太の表情がまた不安げなものに変わってゆく。
「……健太、何があっても大丈夫なように、逃げられる準備せえ」
やはり敵の可能性を考えてしまう。仲間を必要とする特殊なトラップの下にあっても、最
悪の事態に備えて気持ちだけはどちらにでも動けるように準備しておかなければならない。
(ずいぶんと理不尽なトラップやな)
またどこかで小さく音がした。2人の体に緊張感が走る。
ふいに、木々の間に何か白いものが見えたような気がした。健太は思わず立ち止まり、そ
の方向へとじっと目を凝らした。
「どうした?」
「あ、あの……木の向こうに何か見えたような……」
12:「127・甲子園 4/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/12 22:02:39 SSBz4Onw0
「人か?」
「わ、わかりません、白っぽい感じの……」
「ユニフォームやったら白やぞ」
健太の顔を覗き込むようにして北川が尋ねる。
「ええ……でも自信無い……」
弱々しい声になる。北川は大きく一回深呼吸をすると、懐中電灯を右手で握り直した。
「ええか、灯りでそっちの方照らすぞ」
「は、はい」
「もし向こうが敵やったら俺らはヤバイことになる。そしたらええか、お前はとにかく逃
げろ。俺のことは気にせんでええ。俺は足は遅いけど、それなりに逃げられるからな。お
前はとにかく走れ」
「で、でも……」
「大丈夫や。向こうが敵やった場合や。でも今のトラップを考えたら、そんなことまずな
いやろ。念の為や」
笑って見せる。健太も少しだけ笑った。引き攣ってはいたが。
「あっちか?」
北川が指差す。
「はい、あっちです。あの木の向こうの方にチラッと……」
「きっと仲間や。俺ら、日頃の行いええからな」
自分を励ますように呟いて北川は、健太が指差した方へと懐中電灯を向けた。いつの間に
か健太は北川の鞄の紐をしっかりと握り、身を寄せていた。
(………嶋村)
北川は心の中で呟いていた。地面の上に倒れていた嶋村の姿がハッキリの浮かぶ。そして、
彼の笑顔も。
(嶋村、俺らを守ってくれ。都合のいい頼みやってことはわかっとる。でもな、俺、約束
したな。絶対戦わん。誰とも戦わん。仲間を信じる。俺がお前に言うたように、俺は仲間
を信じる。せやからもしもの時は健太だけでも助けたってくれ。導いたってくれ。もしお
前が俺のこと恨んでるんやったら、俺だけ連れていけ。健太は助けたってくれな。頼む)
暗い木々の間へと灯りが差し込む。所詮懐中電灯だ。遠くまでは届かない。北川はその灯
りを左右に揺らした。誰か仲間がいたら気づいてくれるように。
13:「127・甲子園 5/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/12 22:03:34 SSBz4Onw0
しかし風景は変わらなかった。ただ鬱蒼と茂る緑と、それを押し潰そうとする闇。そこに
弱々しい灯りがぼんやりと点っているだけだった。
「………すみません、俺の気のせいみたいです……」
元気のない声で健太が謝る。
「期待させて、すみません」
「いや、気にすんな。きっとお前は見たんや。何か白いものを見たんやけど、間に合わへ
んかっただけや。俺らの判断がちょっと遅かったんや。残念賞や」
北川は懐中電灯の灯りと元通り自分達の足元へと戻した。
「また歩いたらええ。きっと仲間がみつかる。な?」
「……ええ、俺ら、日頃の行いがいいですから」
「そうや」
満面の笑顔になる。冗談を言える心の余裕がある。痩せ我慢かもしれないが、それでもい
い。今は気力が必要なのだ。気力を失ってしまったら、ここを生き抜くことは出来ない。
少しでも諦めた者が脱落するのだ。ほんの少しの勇気と、精一杯の気力。それが今の彼ら
を支えていた。
「ほな、行くか」
健太の肩をポンと叩いたその時、彼らがつい今しがたまで見ていた方向から微かな灯りを
感じた。慌てて二人は顔を上げた。灯りの方を見た。
「……そこにいるの……誰ですか?」
おずおずとした声が聞こえた。わざと声色を変えたような、誰かは判別出来ない声だった。
小さく健太は息を飲んだ。北川は即座に懐中電灯の灯りを向けた。
双方から照らしている灯りの中で、白いものが揺れていた。
何か布のようなものが、緩やかに左右に揺れていた。
「北川や!阿部健太もおる!」
「ペーさん!」
途端に大きな明るい声が聞こえた。
「その声はシモか!」
「はい!下山です!」
「シモさん!」
「健太―!俺もいるぞ!高木高木!」
14:「127・甲子園 6/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/12 22:04:16 SSBz4Onw0
「高木さん!」
「光原もいますー!」
「うおー!ミツー!」
北川は健太の腕を掴むと走り出した。健太も安堵と喜びの混じった笑顔だった。
少しずつ灯りが大きくなる。ハッキリしてくる。
向こうからも人が草を踏んで駆けて来る音が聞こえた。
やがて、その人影が見えた。
懐中電灯を持っているらしき下山。続いて走ってくる高木。白い布をつけた旗を持った光
原。3人が3人とも喜びに満ちた表情で駆けて来た。
「ペーさん!!」
「みんなー!無事かー!」
「よかったー!!」
5人は飛びつくように抱き合い、スクラムを組むようにして互いの体を抱きしめた。光原の
持っている旗がガツガツと健太の頭に当たったが、そんなことはどうでもいい。
「おい、【K】はいくつや?俺と健太は1個ずつで合わせて2個や」
「ビンゴ!俺ら、3人で1個なんです!」
「合計3個!」
「よっしゃあ!」
「揃ったぞこの野郎!!」
すでに健太と光原は抱き合って泣いていた。嬉しくて。ホッとして。また光原の持つ旗の
棒が健太の頭を何度も打っていたが、それすら気にしなかった。気づいた高木がそっと片
手で旗を支えた。
「無事やったか!みんな無事やったか!頑張ったか!」
北川は1人1人の頭をクシャクシャ撫でながら声をかけた。今はただ喜びたかった。
再会出来た仲間。少なくとも、このトラップを生き抜ける仲間。
そして、これから一緒に生き抜く為に行動を共に出来るはずの仲間。
信じるべき仲間。
仲間。
【残り・28人】
15: ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/12 22:05:52 SSBz4Onw0
ようやくスレ立て出来ました…
今回は以上です。
16:代打名無し@実況は実況板で
07/04/12 22:55:34 kXwRpbPYO
乙です。
光原好きだwwww
17:代打名無し@実況は実況板で
07/04/12 23:07:12 XLshfjTG0
乙です。
光原wwwww感動的なシーンなのに
お前のせいでぶち壊しだよwwwww
でも、健太よかったなぁー(泣)
18:代打名無し@実況は実況板で
07/04/13 00:32:23 D9MICLnMO
泣ける…!
素直に北川と下山が会って嬉しいと思いました
光原可愛すぎwwwww
19:代打名無し@実況は実況板で
07/04/13 02:19:41 gb+YmgDGO
前スレ落としてしまい申し訳です。スレ立て&投稿乙です!
リプシーに想いを寄せる人が気になる!
20:代打名無し@実況は実況板で
07/04/13 06:44:47 4WIV2sRAO
スレ立て&投下乙です!
下山たちが出会ったのが北川たちでほんと良かった〜!
21:代打名無し@実況は実況板で
07/04/13 20:44:22 5+tOXp2U0
うお、もうスレ立ってたのか…
新作乙です!
檻で甲子園といえば何といってもキヨだけど
生き残っている中では最多安打記録を持つエイエイも印象深いな〜
そういえばエイエイと健太は出身校が同じだよな……
22:代打名無し@実況は実況板で
07/04/14 18:40:58 viIuH37B0
白旗組応援保守
23:代打名無し@実況は実況板で
07/04/16 01:14:15 q+D+N5t1O
保守
24:代打名無し@実況は実況板で
07/04/16 15:12:59 e2qQ3y6wO
保守
25:代打名無し@実況は実況板で
07/04/17 14:44:07 ReaOKB4dO
☆ゅ
26:代打名無し@実況は実況板で
07/04/18 09:38:21 71JKqtVEO
保守
27:代打名無し@実況は実況板で
07/04/19 00:24:24 cfx2Baut0
ほ
28:代打名無し@実況は実況板で
07/04/19 21:53:13 OiWXQyW8O
ひょ
29:代打名無し@実況は実況板で
07/04/20 15:45:20 UWQTc8zNO
☆ゅ
30:「128・危険な合流 1/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/20 21:01:13 EQLQ5ftG0
「水さん、肩貸します」
塩崎の申し出を水口は笑いながら断わった。
「俺が怪我してるのは肩だぞ。両足はピンピンしてる。なんで肩借りる必要があるんだ?」
「いえ、荷物、俺が持ちますって意味で」
「……なるほど」
傷ついたのは右肩。左肩に鞄をかけている。これでは何かあった時、動く左手も上手く使
えない。けれどまた水口は手を振った。
「大丈夫。お前こそ、そんな重そうな物持ってるんだから大変だろ?」
「この程度なら楽勝ですよ」
小型チェーンソーの使い方はもう何度も読んだ。けれど、どうしても現実に繋げることが
出来ない。自分が操作するということを、まだ受け入れられないでいる。もう迷う時間な
ど無いのだ。躊躇う必要など無いのだ。何かが起こったら戦う。そう決意して閉じこもっ
ていた小屋を飛び出したはずなのに。
仲間が出来たから弱気になってしまったのだろうか。しかも出会ったのはベテラン水口。
一応ベテランと呼ばれる塩崎も年上の水口には全幅の信頼を置き、心が頼ってしまう。
(いかん、水さんは怪我してるんだぞ。何かあったら俺が戦わなきゃいけないんだ。その
為の武器だろ?)
そう言えば。
(水さんの支給品て何なんだろう?)
水口は片手で器用に地図を広げた。塩崎が懐中電灯を照らす。
「ここ。印のつけてあるとこ」
「はい」
「ここが『Cafe Bs』。中立地帯だ」
「中立地帯?」
「そうだ。相川と外人勢がいる。ブランボーにデイビーにガルシア、グラボースキー」
一瞬塩崎はキョトンとした顔をした。
「あいつらはオーナーの手伝いをしてるらしい。相川はサーパスのメンバーを助ける為だ
って言ってたけどな。……まあ、それも本当のことなんだろうな。みんな何かの為に必死
なんだ。外人勢だって何かを引き換えに強要されてるのかもしれないし……にしては楽し
そうだったが」
31:「128・危険な合流 2/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/20 21:01:56 EQLQ5ftG0
小さくため息をつく。
「ここで落ち合うって阿部と約束したんだ」
ふいに、どこか遠くの方で叫び声が聞こえた。それは確かに言葉だった。悲鳴ではなく、
喜びを表すような音だった。声は複数聞こえた。水口は静かに微笑んだ。
「どうやら誰かがグループ成立みたいだな」
「行ってみましょうか?」
「どこだかもわからないんだぞ、無理だよ。それよりこっちだ」
トントンと地図を指で弾いた。
「俺は【K】がゼロ。阿部もゼロ。お前は2個。なんとかあと1個見つけなきゃいけない
んだ。そうしたら俺も阿部もお前に貼りついて助かるんだ。……塩崎」
地図から顔を上げ、塩崎を見た。
「俺はメチャクチャに走り回ったんで、現在位置がよくわからないんだ。教えてくれ」
「はあ……俺もちょっと自信ないんですけどね」
「コンパス見ながら歩いたんだろ?」
「ええ、でもやっぱり暗いと自信ないですよ。多分、この辺にいると思うんですけど」
塩崎の指さす場所は、少々『Cafe Bs』からは離れていた。
「水さん、阿部を探すことも大事ですけど、先に【K】を探すべきです。あと1つなんで
す。で、水さんの手当てもしなきゃ」
「手当てなんて後でいい」
「ダメです。傷の手当てが遅くなって、肩が動かなくなったりしたら大変でしょう。まず
水で洗うとか、添え木をするとか、何か手当てをしなきゃ」
塩崎が言っているそばから水口はさっさと歩き出した。それが答えだった。あまり動かせ
ない右手で地図を持ち、左手で懐中電灯を持って。仕方なく塩崎も後から続いた。水口の
赤く染まった肩が痛々しかった。そして鮮明な血の赤が、塩崎に現実を突きつけた。
(本当に怪我をした人がいる……襲われた人がいる……襲った相手もチームメイト……ど
うしてそんなことが出来る?)
まだ現実を受け入れられないでいる。自分の足で歩き出したはずなのに。
肩に感じるチェーンソーの重みは、野球道具を入れた時の重さに少しだけ似ていた。
(なんで俺、こんな夜に、暗い森の中を歩いてるんだろう……)
そっと首元に手をやった。硬く冷たい感触がある。
32:「128・危険な合流 3/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/20 21:02:39 EQLQ5ftG0
(本当にこの首輪、爆発するんだろうか)
(脅す為のオモチャなんじゃあ……)
(じゃあ、引っ張ってみるか?)
(………そんな勇気もないくせに)
自嘲気味に笑った。仲間を呼ぶ為に大声を上げることも出来なかった。水口が襲われた敵
を呼び寄せてしまうかもしれないからだ。2人は慎重に歩いていた。
ふと、どこかでキーキー何かが鳴く声が聞こえた。と同時に「わっ!」という人間のよう
な叫び声。動物の声を聞き間違えた可能性もあるが、片方はどこか人間っぽい声だった。
「動物、ですかね?」
「だな」
「凶暴なのだったら困りますよね」
「行ってみようか」
「は?」
「なんか起こってるのかもしれないぞ。人間対動物。誰かいるのかもしれない」
水口の表情はどこかワクワクしたものになっていた。仲間がそこにいるかもしれないとい
う希望を持ったからだ。しかし塩崎の場合は心配の方が先行した。
「だから、凶暴な動物だったらどうするんですか?こんなに緑がある場所なんですよ?も
し虎とか豹とか、人間を襲う生き物だったらどうするんですか」
「じゃあ今襲われてる奴を見捨てるのか?」
当たり前な問いかけだった。襲われている人間はチームメイトの可能性が高い。それを見
捨てるのかという質問。塩崎は自分のことで精一杯な自分が恥ずかしくなった。水口はこ
んな状況ですら、仲間のことを気にかけている。ここにはいない、けれどこの島のどこか
で困っている仲間を思っている。
うなだれる。顔を上げることが出来ない。そんな塩崎の肩を水口は軽く叩いた。
「誰だってそう考えるさ。俺はお前よりちょっと経験が多いだけだ。だから俺は、調べに
行きたい。誰かいるかもしれないんだ。でもお前がイヤだって言うなら行かないよ」
再びキーという鳴き声が聞こえた。続いて明らかに人の声。2人は揃って音の方を見た。
「……水さん」
「おう」
「行きましょう」
33:「128・危険な合流 4/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/20 21:03:38 EQLQ5ftG0
塩崎の表情は自分の意思を持っていた。水口はまた嬉しそうに笑った。
「そうこなくっちゃな。これが男ってもんよ」
傷を考えて走ることは出来ない。出来るだけ早歩きで音の方へと急いだ。
「俺、先に行って様子見ましょうか?」
塩崎が振り返る。
「いや、この暗さだからな、すぐにはぐれるぞ。俺と阿部だって声は近かったのに会えな
かったんだ。スピードを上げよう」
水口が小走りになる。塩崎は止めようとしたが、また水口は笑った。
「この程度の小走りなら大丈夫だ。もう血だって止まったようなもんだしな」
キーキー鳴く音がまた聞こえた。ずいぶん近くまで来たようだった。枝が頬を打つような
深い茂みを抜けると、急に視界が開けた。途端に鳴き声が大きく聞こえた。
「近くか?」
「どっちに……?」
その時、聞き覚えのある声が聞こえた。
『川越さん!来ちゃダメです!猿です!』
また水口と塩崎は顔を見合わせた。
『やべえ、囲まれた!』
思わず2人はうなずいた。
『マイムマイムじゃねーんだから!来るなっ!』
また聞こえた声に弾かれて2人は走り出した。同時に声を上げた。
「本柳っ!」
「ガブっ!」
『は?』
目の前に現れたログハウスの向こうから惚けた声が聞こえた。急いで声の方へと回ると、
そこには奇妙な光景があった。
ログハウスのドアが開いていて、そこに手作り風の丸椅子を持った川越がいた。
外には本柳が、両手で何かの袋を抱えて立っている。
その周りを囲むように、4〜5匹の猿がいた。猿はジリジリと本柳に歩み寄り、飛びかかる
タイミングを伺っているらしい。
「水さん!塩崎!」
34:「128・危険な合流 5/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/20 21:04:29 EQLQ5ftG0
川越が気づき、声を上げた。途端に猿の意識が2人の方へと向けられる。本柳はダッシュで
ログハウスの中に駆け込んだ。
「水さん!早くこっち!」
川越が慌てて手招きをする。2人も急いで入り口へと飛び込んだ。猿も本柳の動きに気づい
てログハウスへと突進してきたが、間一髪でドアを閉めることが出来た。しばらくはドン
ドンと体当たりをしていたが、やがて音は消えた。ドアを開けられないよう体ごと抑えて
いた川越と本柳も、ようやくテーブルと椅子だけを重しにして、部屋の中へと入った。
「……何だったんだ、今の?」
水口が尋ねると、本柳はペットボトルの水をグイグイ飲みながら答えた。
「この袋っす。ちょっと離れた家にパンを沢山見つけたんで、食料として持ってこようと
したらあの猿に見つかりまして」
袋の中からいくつものパンを取り出す。自分達が支給されたパンと同じもののようだった。
本柳はそれらを手に取って調べた。
「………15・カロトって書いてある。カロトって何だ?」
「………15・加トって書いてあるんじゃないのか?加藤大輔のか、それ」
水口も言いながらパンを覗き込む。
「……そのパン、ひょっとしてあの猿たちが蓄えた物だったんじゃないかな?何かがあっ
て、大輔がパンを落として、それを猿が拾ったと」
川越が穏やかに出来事を整理する。水口がわざと大袈裟な口調で続けた。
「ガブ、お前、猿の餌を盗んできたのか?」
「いや、だから、最初は猿のものだって気づかなかったから………と、とりあえず、水さ
んも塩崎さんもご無事で!」
話題を誤魔化すように本柳が元気に言う。水口も塩崎も、暗い野外から灯りのある室内へ
と移動出来てようやく気持ちが落ち着いたようだった。
「水さん、怪我」
いつの間にか川越が水口の背後に来ていた。カタン、と何かの箱を置く。赤い十字マーク
のついた救急箱だった。
「これ、俺の支給品なんです」
「へえ、川越らしいアイテムだな。博愛主義っちゅーか、相手を傷つける武器じゃないも
んな。ホント、お前よくここまで生き残ってたな。ガブに守られてきたか?」
35:「128・危険な合流 6/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/20 21:05:19 EQLQ5ftG0
川越はいつもの困ったような笑みを見せた。本柳もつられて苦笑いをしている。特に詳し
い返事はなかった。これまでの行程をあまり語りたくないのかもしれない。水口もそれ以
上深いことは聞かなかった。ひょっとしたら、かなりつらい思いをしたのかもしれない。
仲間を助けられなかったとか、見捨てざるを得ない状況だったとか。水口も塩崎も、自分
なりの解釈をした。
川越は取り出した小さなタオルをペットボトルの水で濡らした。
「まず血を拭きますね。傷口も……どうしたんですか、これ」
水口はかいつまんで話をした。阿部とすれ違ったこと。敵に襲われたこと。大きめな刃物
の武器だったこと。本柳はあからさまに眉をしかめ、腕を組んだ。
「ヤバそうな奴っすね」
「いきなりだったからな……いてっ!」
「あ、すみません、マキロン吹きつけました。消毒しておかないと」
「なら先に言ってくれよ、しみるからよぉ」
文句を言っているはずの水口の口調は、どこか嬉しそうだ。
「すみません」
謝りながらも川越は甲斐甲斐しく処置をしてゆく。消毒液を染み込ませたあて布をし、包
帯を巻く。この処置方法が医学的に正しいのかは全くわからない。けれどこれが今出来る
精一杯だった。
「水さん、骨とかは大丈夫ですか?木とかで腕を固定した方がいいですか?」
「固定したら今後の対応がちょっと不安になるからなあ……このままでいいよ。サンキュ」
「ひょっとしたら中立地帯にちゃんとした手当ての道具があるかもしれないですね」
「中立地帯?」
本柳が塩崎の言葉に首を突っ込む。塩崎は自分が水口から聞いたことをそのまま本柳たち
に伝えた。本柳も川越も、揃って悲しそうな顔をした。
「良太が……」
「オーナー側に……ガルシアたちも……」
「あとで行くつもりなんだ。上手くいけば阿部と合流出来る。少なくとも60分は休めるん
だ。有効に使おう」
水口の言葉に3人がうなずく。
そして、塩崎が呟いた。
36:「128・危険な合流 7/7」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/20 21:06:08 EQLQ5ftG0
「で、今、5個なんだけど……」
ようやく大事なことを思い出す。
「水さんゼロ、俺2個、ガブ1個、川越2個。合計5個」
「………あと1個、どっかから見つけてこなきゃいけないのかな……」
「3個以上でオッケーならそれでいいんだけど……」
4人が顔を見合わせる。
「残り20分になったらまた放送があるはずだ。そこで何かその辺の説明が無かったら、あ
と1個を探しに行くってのはどうだ?」
水口の提案にそれぞれがうなずく。
「ひょっとしたら、3個以上で大丈夫かもしれないですしね。少しこのまま待機してみまし
ょう。もしダメだったら、その時はその時です。水さんの怪我もありますしね」
川越が同意する。水口の肩に巻かれた白い包帯にはすでに、小さな赤い点が浮き上がっ
ていた。
表情の曇った者がいた。
(折角無事だったのに……)
心の中で、本柳が呟いた。
(無事に1時間を切り抜けられるはずだったのに……)
(もしもの時は、どうすれば……)
息苦しい時間だった。
その一方で、救急箱をしまおうとした川越は奇妙なことに気づいた。
中に入っていた1本のメス。
最初に入っていたのとは違う方向を向いている。
そして、刃の部分に曇ったような濁りがついている。一度汚れたものを洗って拭き取った
ような印象を受けた。
(………俺は触ってないのに………)
川越はただ首を捻るしかなかった。
頭の隅で白い靄が小さく蠢いていた。
【残り・28人】
37:「129・愉快犯VS透明人間 1/3」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/20 21:07:24 EQLQ5ftG0
リプシーに教えられた櫓を目指し、吉井は闇の中を早足で歩いていた。
地図とコンパスを見比べ、時折遠くの空を見上げる。木々の間から櫓が見えることを期待
したが、鬱蒼と茂る緑はなかなか目的物への視界を広げてはくれなかった。
(まだか……)
トラップタイムが始まって、もう30分が経過しようとしている。思った以上に時間がかか
る道のりにいらついた。木々が邪魔をして真っ直ぐ歩けない。時折姿を現す小屋ですら迂
回するのも鬱陶しい。歩く方向を変えるそのたびに、コンパスを見なければならない。ひ
とつひとつの細かい作業が面倒だと思うのは悪い傾向だろうか。
リプシーの話では、菊地原と日高がそれぞれ【K】を2個ずつ持って待機しているという。
菊地原が動けない状況ならしい。日高はその付き添いというわけか。
(なんとも美しいバッテリー愛だねえ)
吉井が今まで相手をしたキャッチャーはどれくらいいるだろう。海外にも渡ったせいで、
すでに記憶から抜け落ちている選手もいるに違いない。その中で、コイツこそ恋女房と呼
べるキャッチャーはいただろうか。
(………候補はいるな、うん。いるよ、確かに)
シーズンを重ねるごとに、自分がキャッチャーを導き、育てるようになった。あえて若手
のリードにうなずき続けて打たれたりもした。そうしなければ若いキャッチャーは育たな
い。打たれて初めて自分のミスに気づくのがキャッチャーという仕事だ。
いつの間にか、自分の息子でもおかしくないような年齢のキャッチャーも現れた。当然、
ピッチャーも。その中で自分の存在をどこに置くか、吉井は常に計算しながら生きてきた。
若手を育てる為に。
自分を更に育てる為に。
実際、自分を慕ってついてくるピッチャーもいる。このチームではユウキや光原だ。特に
ユウキとはキャンプ地で一緒に自転車を転がして散歩に行ったりした。
(……人間の絶頂期なんてのはな、あっけないんだよ、本当にあっけない)
それは全てにおいて言えることだ。栄華を極めても、その時間は短い。天国と地獄を味わ
った吉井の言葉だからこそ、多くの経験話を若手達は真剣に聞いた。
(なんだか皮肉だな……若い奴が先に消えて、俺が残ってる)
38:「129・愉快犯VS透明人間 2/3」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/20 21:08:04 EQLQ5ftG0
また地図を見た。どれくらい歩いたのだろう。まだ距離はあるのだろうか。
(やれやれ、【K】を集めるのにこんなに苦労するとはな。オーナーも考える)
「吉井さん」
突然の声に驚いて吉井は振り返った。姿は見えない。木の影に隠れているのだろうか。
「どこ行くんです?」
「……人にものを尋ねる時は、ちゃんと姿を見せろ。それがお前の礼儀か」
あまり聞き覚えのない声。常時1軍にいる選手ではなさそうだ。
「ええ、これが俺の礼儀です」
相手の声には妙な自信があった。しかし、どこか揺らいでいた。麻薬中毒者が薬でトリッ
プしている時のような、どこかフラついた声。
「……俺はね、いつでも吉井さんを狙えるんですよ。だから素直に答えて下さいね」
まだどこにいるのかわからない。方向はなんとなくわかるのだが、そちらを見ても闇しか
見えなかった。懐中電灯を向けても無駄だった。
「吉井さん………そうか、【K】を1個も持ってないんだ。使えないなあ」
「うるせえ」
「で、どこに行こうとしてたんです?」
「別に、フラフラとお前以外の仲間を探してんだよ」
「嘘だ」
声の主はキッパリと言い放った。
「さっきから地図見ながら歩いてる。目的地はあるんでしょう?」
吉井は心の中で舌打ちをした。ここはおとなしく言いなりになった方が得策だ。もし相手
が銃を持っていたら、この状況ではひとたまりもない。吉井からは相手の姿が見えない。
自分が腰に差した消音銃に手をやったら、すぐに撃ってくるだろう。圧倒的に不利だった。
「……日高と菊地原に会いに行く」
「へえ…………そうか、4個か」
声の主は何かを考えたようだった。
「………ラッキー」
39:「129・愉快犯VS透明人間 3/3」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/20 21:09:38 EQLQ5ftG0
突然ガサッという音がしたかと思うと、吉井の首に何かが巻きついた。
「ぐぇっ!」
思わず呻いたが、一瞬にして息が出来なくなった。必死になってもがいた。だが敵は完全
に背後に回っており、足を後ろに蹴り上げようとしても上手くいかなかった。息が苦しい
と言うよりも、首を締め付けられて痛かった。だがこの体勢ではどんなにもがいても敵わ
ないことはすぐにわかった。敵は何かで繋がった2本の棒を器用に使ってギリギリと吉井の
首を締め上げている。
しばらくして、やけにあっさりと吉井の体から力が抜けた。首に巻きついていたものの力
も抜け、吉井の大きな体がドサリと地面に落ちた。そのままうつ伏せに倒れた。
「………あっけないの」
声の主は小さく笑うと、吉井の手から地図を奪い取ろうとした。まだ吉井の指先に力が残
っているらしく簡単には取れず、無理に引っ張ったらその部分だけ千切れてしまった。
「………なるほど、このマークか。ここに日高さんと菊地原さんがいるわけだ。合計6個。
バッチリだ」
田中彰はまた小さく笑った。
「………の野郎っ!!」
いきなり吉井の体が起き上がった。そのまま田中に飛び掛ろうとする。まるでそれを読ん
でいたかのように田中は吉井の腕を避け、一気に暗闇の森の中へと駆けて行ってしまった。
「この野郎!!待ちやがれっ!!」
勝ち目の無い追いかけっこだとはわかっていたが、吉井は後を追わざるを得なかった。
木々の暗闇の中へと消えてゆく田中の背中。地図を失った吉井は必死に追い縋った。
【残り・28人】
40: ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/20 21:10:52 EQLQ5ftG0
いつも保守ありがとうございます。
今回は以上です。
41:代打名無し@実況は実況板で
07/04/20 21:27:45 xFQAiyA50
sage
42:代打名無し@実況は実況板で
07/04/21 00:10:44 Aa+uNGKq0
投下乙です
川越が心配だー
43:代打名無し@実況は実況板で
07/04/21 00:25:57 SYDqo3bXO
乙です!
こちらこそありがとうございます。
田中&吉井面白いですね。
水口&塩崎どうなるんだろ…。本柳…。
44:代打名無し@実況は実況板で
07/04/21 01:06:57 GlRceSS50
新作乙です!
塩崎優しいな
23バトでのMARUHAGE Destroyerっぷりとは大違いだw
真実に気づきかけてる川越が不安だ…
地図を奪われちゃった吉井も心配
45:代打名無し@実況は実況板で
07/04/21 07:58:51 sx3bKc4ZO
乙です
田中が恐いよ〜!!
あと川越もどうなるのか…
46:代打名無し@実況は実況板で
07/04/22 01:01:27 kEj6xtu40
乙です。
>「………あっけないの」
葉鍵ロワ(野球板以外にあるロワの一つ)見てきたばかりの身としては
この口調を見ると一ノ瀬ことみを思い出すww
47:代打名無し@実況は実況板で
07/04/22 12:43:38 kr24hEVwO
☆
ゅ
48:代打名無し@実況は実況板で
07/04/23 01:12:15 Z5pxhp3JO
加藤大輔応援保守
49:代打名無し@実況は実況板で
07/04/23 16:02:28 Lt0jQO7mO
トリオザカトウ応援保守
50:代打名無し@実況は実況板で
07/04/24 16:11:34 wEaVsGbj0
白旗5人組ほしゅ
51:代打名無し@実況は実況板で
07/04/25 03:58:52 cY9euTjBO
阿部ちゃん頑張れ保守
52:代打名無し@実況は実況板で
07/04/25 19:29:41 GVNy0B230
☆
53:代打名無し@実況は実況板で
07/04/26 10:02:44 yhGci9qPO
☆☆
54:代打名無し@実況は実況板で
07/04/26 21:49:51 lhXhB7y3O
☆☆☆
55:「130・いつか、吉野の里に 1/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/27 19:28:07 dP916YMR0
今、加藤の目の前に見えるものは、鈍く光る銃だった。
その銃の向こう側には、マシンガンを抱いて床に横たわっている歌藤がいる。目を閉じ、
微動だにせず眠っている。余程疲れているのだろう。夜、加藤が寝ている間も歌藤は出来
るだけ寝ずの番をしていたようだ。5分だけ寝かせてくれと言って横たわったまま、もう30
分が経過した。神経質な性格が疲労を蓄積させてしまっていたらしい。
引き金に指をかけたまま、加藤は動けずにいた。
風が吹く。窓ガラスが鳴る。隙間風がカーテンを揺らす。自分の息遣い。天井から吊るさ
れた小さな照明も揺れる。影も揺れる。別な生き物のように揺らめく。加藤の心まで揺れ
る。自分の影が笑う。何かを囁く。不安。戸惑い。未知な物事への畏怖。また風が吹く。
カーテンの衣擦れの音。普段は優しい物音すら加藤を追いつめる。
この引き金を引いて良いものだろうか。
ここまで一緒に行動してきた仲間を狙ってもいいのだろうか。
扉のそばにいる猿はもう踊ってはいない。じっとこちらを見ている。すっかり歌藤になつ
いている猿。猿は加藤が今、歌藤に対して何をしようとしているのかわかっているのだろ
うか。わからずじっとしているのだろうか。
トラップタイムが終わるまでは一緒にいなければならない。2人でちょうど【K】が3つ。
トラップタイムが終わったら、引き金を引けばいい。そうすれば生き残る為のライバルは1
人減る。あのマシンガンを貰って走り出せばいい。簡単なことだ。
自分に危害を加える敵が現れたら撃つかもしれないと歌藤は言った。その敵が自分を指す
かもしれない可能性に、加藤は気づいてしまった。もし最後に生き残ったのが自分達2人だ
ったら。
猿はじっとこちらを見ている。
56:「130・いつか、吉野の里に 2/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/27 19:28:55 dP916YMR0
もしここで歌藤を消したとして、それからどうやって自分は残り時間を生き抜くのだろう。
これまでの道のりも、2人だから歩いてこれたのではないだろうか。1人だったら不安で、
寂しくて、どこかで挫けていたかもしれない。そう、出発地点の近くで清原に出会ってし
まった時のように、頭の中が真っ白になって何も出来なくなってしまうかもしれない。
以前、雑誌でこんな言葉を読んだ。
『オリックスの中継ぎ。剛の加藤、柔の歌藤』
剛速球で威圧的に押しまくる加藤と、変化球で巧みにかわす歌藤。性格も一直線な加藤と
どこか飄々とした歌藤。正反対でちょうどいい組み合わせなのだ。
(………どうする?)
額に汗が滲んだ。指先にも微かなぬめりを感じる。
猿はまだこちらを見つめている。
『大輔、このトマトやるよ』
ある日の夕食、プチトマトが加藤の皿に放り込まれた。
『俺だってトマト苦手っすよ』
『好き嫌いしてたら大きくならねえぞ、って、お前はこれ以上太らない方がいいか』
『歌さんの方が細いんだから、トマトちゃんと食って下さい』
散々トマトを押しつけあった結果、2人分のプチトマトは本柳の皿に放り込まれた。
そんな些細な出来事でじゃれ合う仲だった。
(歌さんを……俺が……殺す?)
言葉にすると、やけにリアルな気がした。自分がこれからしようとしていることが、ある
程度の重さを持って感じられた。
『生きて帰って、一緒に吉野餅食べよう。俺が吉野の里案内してもいいぞ』
奈良出身の歌藤がそう言って、約束したのは何時間前のことだったろう。吉野の里の桜を
観に行く約束もした。その為には2人で生き残らなければ。満開の桜の下、吉野餅を2人で
頬張る約束。
57:「130・いつか、吉野の里に 3/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/27 19:29:38 dP916YMR0
『………お兄ちゃん』
声が聞こえる。
『お兄ちゃん、お友達を殺すの?』
可愛い妹たちの声。
『チームメイトを傷つけるの?』
『お兄ちゃんが?』
『優しいお兄ちゃんが?』
『私たちの自慢のお兄ちゃんが?』
『嘘でしょう?お兄ちゃん』
繰り返し、その声は心の奥底から聞こえてくる。
『お兄ちゃん』
ゆっくりと、加藤は銃を下げた。少しだけ震える手で、元々しまっていた場所である右腰
のベルトに挟んだ。
大きくひとつ、息を吐いた。
自分は何をしていたのだろう。
何を考えていたのだろう。
もう少しで取り返しのつかないことをしてしまうところだった。
トテトテトテ。
音が聞こえた。猿が歌藤の方へと歩いてくる音だった。そしてペタリと歌藤の肩のそばに
座った。じっとその顔を見つめている。そして再び加藤を見上げた。真っ直ぐに。まるで
何かを訴えるように。
「………すまなかったよ」
責められているような気がして、小声で謝った。
「もうしないよ。大丈夫だよ。お前の歌さんを傷つけたりしないよ」
猿は小さな手で歌藤の頬を撫でた。ピクリと歌藤の瞼が揺れる。
「おいエテ公、歌さん起こすな、休ませてあげろよ」
慌てて歩み寄って猿を引き離そうとした。途端に歌藤の目が開いた。
58:「130・いつか、吉野の里に 4/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/27 19:30:29 dP916YMR0
「あ……」
数回瞬きをして、加藤を見上げた。そして弾かれたように起き上がった。
「やべえ、俺、どれくらい寝てた?」
「大丈夫ですよ、まだトラップタイム始まって35分経過ってところ」
「……5分で起こせって言ったろ」
歌藤が目を擦りながら腕時計を見た。
「でも歌さん、よく寝てたから。起こすの悪いと思って」
加藤は苦笑いをしながら答えた。そして何気なく猿の方を見た。猿はじっと加藤の顔を見
つめていた。今だに加藤の行為を責めているように。
『お兄ちゃん』
『悪いことをしたら謝らなきゃね』
また声が聞こえる。加藤は少し躊躇ったが、小さく拳を握り、勢いよく頭を下げた。
「すみません!」
突然の加藤の行為に、歌藤は「は?」と答えるしかなかった。
「俺、今、歌さんが寝てる時……」
言葉が続かない。
「なに?俺が寝てる時何かイタズラでもした?顔に落書き?俺のパン盗んで食った?さっ
き分けてやっただろー、意地汚ねえなあ」
とぼけたことを尋ねながら、歌藤が自分の鞄を開けようとする。
「俺、歌さんに銃を向けました!」
歌藤の動きが止まる。
「俺、なんかよくわからなくなって、恐くなって、歌さんまでが恐くなって、銃、向けま
した!」
加藤はまだ頭を下げている。歌藤はじっと加藤の姿を見た。
「すみません!本当にすみません!でも俺、やっぱり1人じゃ生きて行けないし、歌さんい
ないとダメだし、吉野餅食いたいし……!」
頭に浮かんだ言葉をそのまま口から喋り続けた。
「すみません!でも、でも俺……!」
59:「130・いつか、吉野の里に 5/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/27 19:31:27 dP916YMR0
「お前、撃ってないじゃん」
相変わらずの歌藤の口調に、加藤は恐る恐る顔を上げた。
「俺、生きてるし。お前、撃ってないし。ならいいんじゃないか?」
「……でも……」
「普通そういうこと言わないで隠しとくもんだぞ?それを素直に白状して謝っちゃうのが
大輔だよなー」
歌藤が笑う。
「しかも撃てないあたりが大輔だよなー。情けないのー。だから俺がついてないとダメな
んだよ」
「あ……そうっすか……」
加藤も拍子抜けした表情になる。
「吉野餅のお陰で命拾い?俺」
「い、いや、そういう訳じゃ」
「………でもまあ、素直に白状してくれて嬉しいよ。性格わかるし。俺は大輔を信じるよ」
歌藤は床に座り直すと胡坐をかき、加藤を見上げた。表情は穏やかだった。
「一緒に生き残るんだもんな。なんとかここから抜け出すんだもんな。そんで一緒に吉野
の桜を見るんだ。なんだったら俺の地元の奈良公園も案内するぞ」
「そ、そうですよ!絶対一緒に生き残りましょう!桜見ながら吉野餅食いましょう!」
「結局そこかよ」
2人して笑った。張りつめた空気が穏やかになる。加藤の足に何かが当たる感触があった。
気づくと猿が加藤の足を繰り返し蹴飛ばしていた。
その時、ふいに野外に流れていた音楽が大きくなった。
『みなさんお疲れ様です。残り20分になりました』
放送が流れ始めた。
「大輔、お前の時計遅れてっぞ。もう40分たってるじゃねーかよ」
「やべ、直しとこ」
2人はそれぞれの行動を取りながら、放送へと耳を澄ませた。
【残り・28人】
60:「131・別離 1/2」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/27 19:33:00 dP916YMR0
『残り20分になりました』
その放送に、水口、塩崎、川越、本柳の4人は口をつぐんだまま耳を傾けた。本柳はじっと
地図を見つめている。水口は腕時計を。塩崎は水口の肩の傷を。川越は鞄の中の救急箱を。
『もう一度、ルールを確認します。各自の名前の中にある【K】を3つ集めてグループを作
ります。ひとつも持たない人は、3人集まってグループ成立です。20分後にグループを作る
ことが出来なかった人の首輪が爆発します』
4人が考えていることはただ1つ。3つ以上では駄目なのか。それとも3つ以上でもグループ
成立なのか。
『みなさんいろいろと走り回っているようで、こちらとしても心強い限りです』
「何言ってやがんだ、畜生!」
本柳が呟く。
『生き残りをかけて、皆さん頑張って下さい』
もう茶々を入れる気力も失せたのか、本柳は床の上に寝っ転がった。
『それから、隠しルールの発表です』
全員の顔が上がる。本柳も慌てて身を起こした。
『【K】は各グループ、ぴったり3個とします。ジャスト3個。それ以上では全員の首輪が爆
発します』
室内に言いようの無い緊張感が走った。
『【K】をひとつも持たない人たちが3人ジャストでグループ成立ですから、こちらもジャ
ストでなければ不公平ですね。それくらい、考えればわかることだと思いますが、念の為
ご連絡しておきます。親切心だと思って下さい』
塩崎は軽い眩暈がした。やっと仲間に出会えたのに、ここにある【K】は5個。2つ多すぎ
るのだ。2つ持っているのは塩崎と川越。この場合、どちらかが……
塩崎は川越を見た。川越も塩崎を見つめていた。同級生、同い年。投手と野手。それなり
の親しさと信頼を持って一緒にやってきた仲間だった。
元々は川越と本柳でグループが成立だった。そこへ塩崎と水口が迷い込んだ。
優先順位から考えれば邪魔者は塩崎だ。
(俺は………)
61:「131・別離 2/2」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/27 19:35:22 dP916YMR0
ふいに、川越が小さく笑った。
そのままカタンと音を立てて立ち上がる。肩から鞄を提げ、右手に鞭を持って。
「行きます。あと1個、探してきます」
「川越?!」
「川越さん!」
本柳が立ち上がる。川越はいつもの笑顔で本柳を見た。
「大丈夫だよ、すぐ見つけて帰ってくるから。水さんの面倒を頼む」
「でも川越さんは……!」
言いかけて口をつぐむ。ここで言ってはいけない言葉だ。それは本柳だけの秘密なのだ。
誰にもバレてはいけない、自分を守る為、本柳と川越が生き抜く為の秘密。
「おい川越!」
塩崎も水口も慌てて立ち上がった。
「大丈夫、選手会長、頑張って来ます!またあとで!」
そう言って、川越は勢いよく小屋から飛び出して行った。
「駄目です!川越さん!川越さんは……っ!!」
慌てて本柳も扉へと駆け出す。だがそれ以上追うことは出来なかった。今ここで本柳が川
越の後を追えば、水口と塩崎を見捨てることになる。ただでさえ水口は怪我をしていて不
利な状態だ。だが川越を見送ることも本柳にはこの上ない苦痛だった。尊敬する先輩ピッ
チャー。そして、川越の中には本柳のかけた危険な催眠術が眠っている。
本柳の手を離れてしまっては、いつ発動するかわからない危険な罠。
MCM 〜 mind control murderer。
「川越さん!!!」
闇の中に小さくなってゆく11番に向けて、どうしようもない思いを込めて本柳は叫んだ。
【残り・28人】
62: ◆UKNMK1fJ2Y
07/04/27 19:39:31 dP916YMR0
今回は以上です。
で、1個ミスに気づきました。
今回のトラップタイムの間、島には静かな音楽が流れているはずなのですが、
今までの文中で約2箇所ほどハッキリと「無音」を意味するような表現がありました。
保管庫さんに後ほど御連絡を取って修正したいと思います。
……保管庫さん、お手数をおかけしますが、よろしくお願いしますorz
63:代打名無し@実況は実況板で
07/04/27 20:42:46 Dq99NMUV0
投下乙です。
ついに残り20分か…
64:代打名無し@実況は実況板で
07/04/27 21:34:20 42XYSNih0
乙です。
加藤じゃ無ければあの銃声は一体…
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5363日前に更新/346 KB
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