オリックスバファローズバトルロワイアル第3章 at BASE
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150:代打名無し@実況は実況板で
07/05/19 18:05:26 4r8Hd95a0
乙です。
川越が心配だ...
これからどうなるか。
頑張れ二人とも。

151:代打名無し@実況は実況板で
07/05/19 22:26:11 iPiN+pIFO
乙です!
まーとーやーまぁぁぁぁぁ…゚・(つД`)゚・゚。

さて、トラップタイムが終わった瞬間からあの人やあの人やらがどう動くのかドキドキ

152:代打名無し@実況は実況板で
07/05/20 01:16:22 6gDpWt8r0
あげ

153:代打名無し@実況は実況板で
07/05/20 19:32:40 j+T2yFSOO
☆☆☆

154:代打名無し@実況は実況板で
07/05/21 03:01:13 J6N2NIIrO
一つ質問
Kはジャスト三つじゃないといけないってことだが
菊地原・日高・田中彰のグループの二個×3はOKなの?
3の倍数ならいいの?

155: ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/21 19:47:57 mb8bsj3w0
>>154
菊地原・日高・田中組の【K】6個の展開は、今週末か来週末の投下分でわかるようになっています。
伏線などの都合上、投下順序が他のグループよりも後にしてあります。
すみませんが、もう少々お待ちください。
それから、出来ればsage進行でお願い致します。次のスレではテンプレにも入れるようにしますね。

156:代打名無し@実況は実況板で
07/05/21 22:45:26 BNd4Avs4O
wktkにしてます

157:代打名無し@実況は実況板で
07/05/22 21:08:42 UBJhCR9QO
☆☆☆☆

158:代打名無し@実況は実況板で
07/05/23 03:37:43 qc+e9EyW0


159:代打名無し@実況は実況板で
07/05/24 00:10:04 XNOh/yYnO
保守

160:代打名無し@実況は実況板で
07/05/24 19:24:01 oYXS9LpaO


161:代打名無し@実況は実況板で
07/05/25 15:44:45 akH6mFNj0
ほしゅ

162:代打名無し@実況は実況板で
07/05/25 22:37:43 sAOt0E5vO
保管庫さん…

138.帰着点の話が変な事になってます…



163:代打名無し@実況は実況板で
07/05/25 23:31:46 y6dAuosL0
>>162
すいません直しておきました。
また何かあれば教えてもらえると助かります
よろしくおねがいします

164:「140・本当のこと  1/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/26 01:11:30 zNm4C0780
『トラップタイムは以上です』
その言葉の流れた5秒ほど後、早川が小さな息を吐いた。
グループが出来上がった後もしばらく歩き回っていたのだが、歩きつかれた早川、後藤、
平野佳寿の3人は、見つけた丸太の上に並んで同じ方向を向いて座っていた。近くからサ
ーッ、サーッという不思議な音が聞こえた。多分、波が打ち寄せている音だと後藤は思っ
た。かなり沿岸部まで来ているようだ。
「今、グループを作れなかった皆さんって言ったよな?」
早川が呟く。
「言ってましたね」
後藤が静かに答える。
「じゃあ、このトラップで生き残れなかった奴がいるってことだよな?」
「そうですね」
早川はまた息を吐いた。今度はため息だった。
「……下山とか、大丈夫かなあ……」
「元気印の野次将軍ですもんね」
「ベンチでよく俺とシモで並んでさあ、いろいろ大声出してたんだよなあ……あいつにだ
けは負けられんって感じで」
「そんなところで勝負しないで下さいよ」
後藤が小さく笑う。早川も笑った。その両手はしっかりと刀を握り締めてはいたが。
「あいつなら、なんやかんやで生き残ってると思うけどな………こういう状況だと、なん
だかわかんないけど些細なこととか思い出すんだよな……ホント、あいつの大声は耳に響
くんだよ。一度隣で聞いてみ?」
「遠慮しときます」
「でもさあ……」
早川はとても穏やかな目で遠くを見つめた。

165:「140・本当のこと  2/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/26 01:13:08 zNm4C0780
「こういう風に追いつめられた時にフッと肩の力が抜ける時ってあるじゃん、緊張感が切
れる時って言うかさ。そういう時に思い出すこと程、本当のことなのかもしれないよな」
早川の言葉の意味が平野にはよく理解出来なかった。何故なら平野の緊張感はまだ続い
ていたから。そして、そういう時に思い出すことなど何もなかったから。あったとしても、
印象にも記憶にも残らないような、取るに足らないことだろう。
「シモの馬鹿デカイ声思い出すんだよ。懐かしいんだよ。ついこの間までよく聞いてたこ
となのに。デカイ声、ベンチの声、見てる試合、野球をしている自分……全部大切って言
うか、俺にとっては本当のことなんだよ」
「シモさんの野次からそこまで繋げる早川さんがすごいです」
後藤が茶化したように言う。
「じゃあゴッツ、お前が思い出したこと、何?」
後藤の頭には、この島に放たれてからずっと考えていたことが当然のように浮かんだ。阿
部真宏を見つけなければならない。大切な一言を告げなければならない。そのまま言うの
はあまりに恥ずかしかったので、オブラートに包んだ。
「阿部ちゃんかなあ。同級生だし、大学時代からのチームメイトだし」
「そっか、阿部探してるって言ってたもんな。平野は?」
話題を振られて平野は軽く小首を傾げて見せた。
「特になにも」
サラリと告げる。早川が大袈裟に残念そうな顔をした。
「あー、まだ若いからかなあ」
「俺だってまだ若手ですよ」
後藤が負けずに自分を指差す。
「ゴッツが若手ならこの早川大輔は永遠の若手だぞ」
風が吹いた。周囲の草木がさわさわと揺れた。

166:「140・本当のこと  3/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/26 01:14:11 zNm4C0780
「あれ?」
何かに気づいたのか、平野が立ち上がった。木々の向こう、じっと一点を見つめている。
その方向へと数歩歩いた。
「どうした?」
後藤も立ち上がる。平野の隣に並ぶようにして、同じ一点を見つめた。
「……ゴッツさん」
「ん?」
相変わらずのとぼけた返事が返ってくる。
「どうしてゴッツさんはそう簡単に人を信じるんです?」
「さっきも言っただろ、俺はいつでも友達募集中だよ」
「……お人よしなんですね」
「違うよ………お前はまだ子供だな」
また自尊心を傷つけられて、平野は憎々しげに後藤を見た。後藤はニヤニヤ笑いながら、
平野が見つめていた方へと少しだけ足を進めた。
「警戒心が強いから、逆に誰とでも友達になりたいのかなあ……」
暗闇の方へと顔を突っ込む。両手で小銃を大事そうに抱きかかえたまま。
(これじゃあ……無理だ)
平野は心の中で小さく舌打ちをした。
「おい平野、こっちに何が見えたんだ?」
後藤の問いかけを無視して、平野は早川へと歩み寄った。
「早川さん、ちょっとこっちに」
「ん?どうした?」
出会った時よりも冷静さを取り戻している声で、早川は答えた。そして地面に突き立てた
刀に重心を預けるようにして立ち上がる。静かに刀を土から抜いた。
「あの、こっちに……」
言いかけたその直後、平野が思い切り早川の体にタックルをした。
驚きの声を上げることも出来ず、そのまま早川の体が地面に倒れる。平野は全身で刀に
飛びつくと、早川の手から闇にきらめく長刀をもぎ取るようにして奪った。

167:「140・本当のこと  4/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/26 01:14:58 zNm4C0780
「平野!」
早川が叫ぶ。と同時に平野の刀がその体へと情け容赦無く振り下ろされた。
「うあっ!!」
「は、早川さん!!」
後藤が早川の元へと駆け寄ろうとする。しかし平野はすぐに立ち上がり、後藤へと突進し
てきた。
「うわっ!や、やめろ平野!」
叫びながら後藤は平野に背を向けると走り出した。銃を構える暇など無かった。刀の長さ
を考えたら、とにかく平野から間合いを取らねばならない。しかし物凄い勢いで駆けて来
る平野から逃れるには、今はただ走るしかなかった。
その瞬間、後藤の左の足場がズッと崩れた。
「え?!」
重心が崩れる。左足の下の地面が勢いよく崩れてゆく。それは一気に右足にも伝わった。
「う、うわっ!」
崖だった。暗闇の中、高さはわからない。
「うわあああああっ!!」
絶叫しながら後藤の体は崖の方へと倒れ、平野の視界から消えた。ザザッと砂が滑る音。
ドサッと何かが当たる音。平野は地面にしゃがみ自分の足場の安全を確認すると、早川を
見習って首から下げていた懐中電灯を崖下へと向けた。かろうじて後藤の体がゴロゴロ転
がっている様子がチラリと見えた。
「あああああああ!!」
後藤の叫び声は遠くなっていった。そして、ドサン、と何かが落ち着いた音と共に消えた。
崖自体はそれほど高くはないようだった。平野は懐中電灯で下を照らした。8の字を描くよ
うにして辺りを調べる。打ち寄せる波が見えた。倒れている後藤がいた。動く気配は無い。
気を失っているのか、それとも頭の打ち所でも悪くて死んだのか。
(どっちにしろ、とどめを刺しには行けないな)
苦笑いをする。本当は自分の手で後藤を殺したかったのだが。

168:「140・本当のこと  5/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/26 01:15:45 zNm4C0780
(今って、引き潮の時間かな?)
よく目をこらすと後藤の倒れている近くの枝に、海草のようなゴミにも見えるものが引っ
かかっている。
(じゃあ、時間がきたら満ち潮になるわけだ)
不敵な笑みが浮かんだ。出発地点でオーナーが行っていたこと。海に入って脱出しようと
すると、首輪が爆発する。体温を検知するとか言っていた。全身が海に浸からなくても爆
発するのだろうか。
(とりあえず……ゴッツさんにはそのまま寝てて欲しいな)
楽しげに笑いながら、平野は後ろを振り返った。まだ早川にとどめを刺してはいない。あ
れだけこの刀に固執していた早川だ。きっと追ってくるに違いない。ならばこちらから迎
え撃ってやろう。向こうは他に武器など持っていないようだ。平野は元いた場所へと歩き
出した。
丸太が横たわっているその場所には、もう誰もいなかった。早川の姿もない。ただ血痕ら
しきものだけが地面に残っていた。
(逃がしたか……またゴッツさんのせいだ)
舌打ちをする。
(まあ……いいや)
なんだか楽しい気分になってきていた。高揚しているのがわかる。刀を月灯りにかざした。
美しく、力強くきらめく光に平野はうっとりと見惚れた。
(この刀があれば……勝てる)
確信した。
(さて………川越さんを探さなきゃ)
刀を一振りして血を払うと、平野は闇の中を独り歩き出した。

【残り・25人】

169:「141・号外  1/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/26 01:17:09 zNm4C0780
トラップタイムが終わっても、日高と田中彰はぼんやりしていた。
菊地原の体は地面に横たえられている。横にネッピーが座り、水を濡らしたタオルをその
うなじに当て、繰り返し名前を呼んでいた。
「………行くか?」
日高が尋ねる。
「ま、行かなきゃダメでしょうね」
どこか楽しそうに田中が答える。
「オーナー直々の命令ですからね。そのお陰で俺らは助かったんだし」

トラップタイム残り5分の時、突然日高の首輪の一部が黄色に点滅し始めた。
そして聞こえた声。
『日高君、聞こえますか?』
突然の出来事に日高、田中、ネッピーの3人は息を飲んだ。
『宮内です。聞こえているなら返事をして下さい』
声は日高の首輪から聞こえていた。
「は、はい」
『よろしい。……さて、君たちはさっきから全然動きませんね、残り5分なのに』
「え、ええ、一応【K】が6個揃いましたから……」
奇妙な問いかけに戸惑いながら、日高は言葉を選びつつ話した。
『6個?』
宮内が問いかける。
「はい、俺が2個、菊地原さんが2個、田中が2個。合計6個です。【K】3個のグループが2つ
出来てます」
すると、会話に微妙な間が空いた。思わず日高は田中を見た。田中も曖昧な表情を返した。
『おや、君たちはさっきの私の説明を聞いていなかったんですか?』
「え?」
『【K】はジャスト3個でひとつのグループとして成立します。君たちの場合はどうですか?
数えてみて下さい』
途端に田中の表情が凍った。
『2が3個で合計6個。3のグループが作れないんですよ』

170:「141・号外  2/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/26 01:17:58 zNm4C0780
「で、でも、6は3の倍数じゃないですか!」
『グループを作るのは数字じゃありません。人間です。3個ピッタリで1グループと私も宣
言してしまいましたからね、そのルールに従って頂かないと』
日高は言葉に詰まった。確かにその通りだった。思わず3の倍数が集まったという時点でグ
ループは完成したものだと浮かれてしまった。それは田中も同じことだった。
(菊地原さんを真っ二つにして3個のグループ2つ………タチの悪いジョークだね)
田中は心の中で苦笑いをした。そんな場合ではないのに。
残り5分。短い時間で仲間を見つけられるだろうか。日高は唇を噛み締めた。
『…………特例として、助けてあげてもいいですよ』
「えっ……」
『ただし、こちらの命令を聞いてくれるならですが』
宮内の声は絶対的な響きを持っていた。
『ちょっと私の指示する場所へ行ってくれればいいんです。簡単です。今から出発すれば、
明日の朝くらいには楽に到着します。そこで私の言ったことを調べて欲しいのです』
日高は時計を見た。残り時間は5分を切っている。このままでは間違いなく自分は死ぬ。自
分だけではなく、田中も菊地原も。その無残な姿をネッピーに見せることになる。
ネッピーは悲痛な表情を浮かべていた。どうすればいいのかわからず、じっと日高を見つ
めている。
『さあ、どうしますか?』
答えはひとつしかなかった。
「………行けば、このトラップタイムを無事に生き延びられるんですね?」
『そうです。日高君も、田中君も、菊地原君も』
「………なら、行きます。指示に従います」
『契約成立です。行くのは日高君と田中君の2人だけ』
「えっ?」
『ネッピー、君は菊地原君と一緒にいなさい。どうやら意識のない菊地原君は行動するに
はお荷物になりそうですから』
宮内はネッピーがここにいることに気づいている。ならばリプシーの存在もわかっている
のだろう。場所も確実に把握しているのだろうか。

171:「141・号外  3/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/26 01:18:50 zNm4C0780
「あ、あの」
日高が思わず問いかける。
「全員一緒じゃダメなんですか?背負って行動出来ますから」
『2人です』
冷たい声だった。
『1人では、私の命令に背いて約束を果たさない可能性もあります。誰かに殺される場合も
あります。2人なら互いに牽制し合うでしょうし、どちらかがハプニングで倒れても、残り
の1人がいますから。3人では菊地原君がお荷物。ネッピーは論外』
「じゃあやっぱり全員で行った方が確率は高いじゃないですか!」
「僕が!僕が行きます!」
ネッピーが思わず声を上げた。宮内の小さな笑い声が聞こえた。
『こちらにも時間というものがありましてね。回答を急いでいるんですよ。菊地原君はお
荷物です。ネッピーの存在は反則です。だから、明日の朝8時までにその場所に着いて、調
べて結果を報告して下さい。………契約は成立したはずですよ?』
最後の一言の裏側に、言い知れない凄みを感じた。日高は目を閉じ、拳を握り締めた。
「……どうして俺たちなんですか。俺たちが一番近くなんですか?」
『いいえ』
「じゃあどうして。オーナーの命令を聞く人ぐらいいるでしょう?そっち側のスタッフと
かそこにいるんじゃないですか?」
『このゲームに関係ない人を島の中に放り込むのは危険だと思いましてね』
(だろうな。俺がスーツの男を見つけたら即座に捕まえて脅すもんな)
田中が心の中で呟く。
『一応ブランボ……いえ、緊急事態用のメンバーがいるんですがね……少々今は使えない
ので。最も適した取引条件を兼ね備えていて、動かしやすい人数なのが君たちです。さあ、
もういいですね?』
有無を言わせない言葉だった。日高は諦めたように肩の力を抜いた。
「途中で約束を破るような素振りを見せたら……」
『首輪が爆発します。当然ですね。だからネッピーには頼めないんですよ。こちらのコン
トロール下にいないのでね』

172:「141・号外  4/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/26 01:19:32 zNm4C0780
「…………行きます」
その後、宮内は日高に目的地を教えた。地図を開かせ、詳しい場所を。
『ここにいる清原君に会って下さい』

死んだはずの清原に会いに行けという指令。
日高と田中は納得出来ないものを感じつつも、鞄を肩にかけ直し、それぞれの持ち物チェ
ックをした。
「ネッピー、菊さんを頼むよ」
「はい。菊さんのことは任せて下さい」
「時間的な問題もあるから、ひょっとしたら、俺たちはもうここに戻って来られないかも
しれない」
「……歩いてる途中で、新しい誰かに会うかもしれませんよ。そうしたら、その人たちと
上手い脱出方法が見つかるかもしれないし。希望を捨てちゃダメですよ!」
ネッピーが無理矢理明るい声を出して励ました。日高も笑顔でうなずいた。
「ネッピー」
日高が手招きをした。そして地図を裏返し、ペンで殴り書きをした。
『多分、俺たちの会話は盗聴されてる。だから』
ネッピーがうなずく。日高はまた地図の面を表にすると。自分達のいる島から少し離れた
場所にある小島をペンで指した。何度も。そしてまた地図を裏返すとペンを走らせた。
『夜になるとこの島から光が見える。誰かいる。SOSを送れば助けが来るかも』
ネッピーは思わず日高の顔を見た。
『このことをみんなに知らせたい』
ネッピーが力強くうなずいた。日高のメッセージを背後から覗き込んでいた田中の顔に、
怪しい笑みが浮かんだ。
(これは……なかなかいい情報だ)
日高の地図がしまわれる。そしてネッピーを見つめた。
「戻って来れるように頑張るから」
「はい……僕も頑張ります!」
「じゃあ……」
日高が背中を向ける。田中も続くようにしてネッピーに背中を向けて歩き出した。

173:「141・号外  5/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/26 01:20:16 zNm4C0780
日高の心は重かった。菊地原とネッピーから離れなければならないこと、オーナーからの
極秘指令を受けて危険な島の中へと歩き出さねばならないこと、そして。
(………田中の奴、なんか変だ)
まだ違和感が拭えない田中の存在。
全てに納得が出来ないまま、日高は前へと歩かなければならなかった。
(どうしてオーナーはこのトラップで俺たちにわざわざグループを作らせたんだろう)
よく考えたらおかしなことなのだ。殺し合いをさせるなら1人1人を孤立させたほうが不安
も積もる。疑心暗鬼にもなる。なのに選手同士の組み合わせをわざわざ作らせた。これに
は一体どんな理由があるのか。それとも深い意味など無い、ただオーナーが楽しむ為だけ
の娯楽なのか。生き残る為に右往左往する選手を見て笑う暇つぶしゲーム。
(選手を強制的に出会わせて、トラップ終了直後にやる気のある奴は殺し合う……)
考えただけで鳥肌が立った。そしてそんなことを考えた自分が恐ろしくなった。
(でも、やる気な奴はいるんだ)
実際、日高は香月によって高い櫓に閉じ込められた。パンをあげたお陰で命拾いをしたら
しいが。
(それか、わざと選手を出会わせて、余計に疑心暗鬼にさせて、正常な思考の人間すら狂
わせる……)
そう、今の日高のように。
こんな考え方をしている自分が心底嫌だった。
(………もう…………助けてくれ…………頼むから…………誰か………)
心の中で必死に救いを求めた。
少しずつ、着実に、限界が近づいていた。

【残り・25人】

174:代打名無し@実況は実況板で
07/05/26 01:59:05 JReIcxi70
今回は以上ですかぁ?

ゴッツ…無事なのーー

175:代打名無し@実況は実況板で
07/05/26 02:06:04 G4fZeE/sO
乙です。

平野おまえはそっちか!やっぱそっち系か!

早川……

176: ◆UKNMK1fJ2Y
07/05/26 02:33:57 A4VDbKBT0
すみません、また規制くらってました。
今回は以上です。

177:代打名無し@実況は実況板で
07/05/26 03:04:11 Kj6B1y6o0
投下乙でしたー

あああゴッツが心配だよゴッツ・・・

178:代打名無し@実況は実況板で
07/05/26 03:26:53 cO0MrJzW0
投下乙です。
平野……結局そうなるのかよ……
清原が何気に死してなおキーマンとなってるな……

179:代打名無し@実況は実況板で
07/05/26 11:26:29 xxnyOS+uO
乙です!
ゴッツに感化されてくのかと思ってたけど、平野さすがだな…

180:代打名無し@実況は実況板で
07/05/26 15:19:45 A7+LUSNy0
早川の言葉、泣ける
移籍したから余計に…

山口が心配です…

181:代打名無し@実況は実況板で
07/05/27 14:54:56 +teFuPJzO


182:代打名無し@実況は実況板で
07/05/28 12:19:25 WFqwzHARO
☆☆☆☆☆☆☆

183:代打名無し@実況は実況板で
07/05/28 15:24:27 PB2A7aGY0


184:代打名無し@実況は実況板で
07/05/29 10:15:12 8IgCVsFXO


185:代打名無し@実況は実況板で
07/05/30 09:50:30 hPn2w9nLO
毎週楽しみで仕方ない

186:代打名無し@実況は実況板で
07/05/31 14:09:10 n0TurUfzO


187:代打名無し@実況は実況板で
07/06/01 15:29:19 OxzhK58hO
☆キボン

188:代打名無し@実況は実況板で
07/06/01 16:04:30 VIdifUUq0


189:「142・前を向く者へ 1/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 22:08:16 Lq2yOEV+0
一気に5人に増殖した白旗組のメンバーは、暗闇の中に小屋を見つけて小休止をすること
にした。すっかり暗くなった状況でこれ以上歩き続けるのは危険だと判断したからだった。
その上、たった1時間の出来事が予想以上に彼らを疲労させていた。次の午前0時の放送
が入るまで休息が欲しかった。これだけの人数がいれば交代で眠ることも可能だ。先に高
木、光原、阿部健太が床に転がった。
北川と下山は並ぶようにして、壁に寄りかかって座った。
「なあシモ」
「はい」
「お互い、よくここまで無事やったな」
「そうですね」
顔は見ず、下山が小さく笑う。
「自分でもラッキーだったと思います。ひとつ間違えたら俺が死んでたんです。あのコー
ヒーのトラップは……ロシアンルーレットみたいなもんで……」
それ以上言うことが出来ず、口ごもる。
「3人やったか、その……死んだ、の」
「ええ………村松さん、迎、筧。目の前で……」
「そうか……」
「俺が村松さんを落ち着かせれば、助けられたかもしれないんです。あの時、俺もビック
リしちゃってどうにも出来なくて……」
「俺もそうや」
下山の言葉尻に続けるように、北川が呟いた。
「俺もキヨさんをちゃんと引き留められてたら……健太と一緒にキヨさんのこともひっ掴
まえてたら………嶋村の奴も、1人で外に行かせへんかったら………」
そっと目を閉じた。
「みんな、紙一重や」
コトン、と音がした。光原が寝返りを打った音だった。拳が床に当たったらしい。
北川は腕時計を見た。次の放送まではまだ時間がある。

190:「142・前を向く者へ 2/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 22:08:59 Lq2yOEV+0
「シモ」
「はい」
「ひとつ頼みがある」
「はい?」
「ちょっと言うときたいことがあんのや」
下山はようやく北川の方を見た。北川は真っ直ぐ前の壁を見つめ、下山を見なかった。
「今のこのグループやと、俺がリーダーみたいなもんやんか」
「はい」
「もしな、もし俺に何かあったら、お前があの3人引っ張って逃げろ」
「……どういうことですか?」
ゆっくりと、北川の顔が下山の方を見た。ようやく目が合った。北川の表情は穏やかだっ
た。下山はじっと北川の言葉を待った。
「俺な、嶋村と約束したんや。絶対戦わん。誰と会っても、チームメイトを信じて絶対戦
わん。それで殺されるんやったら仕方ない。そう決めたんや」
表情は変わらない。いつもの北川らしいおおらかさだった。
「せやからな、もしヤバイ奴に会ったとする。俺はそいつを説得するから、もしもの時は
シモがこの3人引っ張って逃げるんやぞ」
「……それって、ペーさん1人を残して逃げろってことですか?」
「あー、まあ、そうかな」
「イヤですよそんなの!ペーさん犠牲にしてまで逃げたいとは思いませんよ!そういう時
は一緒に逃げるんです!」
下山は身を乗り出して意見した。
「でもな、もし俺の説得が成功したら、仲間がまた1人増える。そうやって仲間を増やして
いきたいんや。ちゃんと話せばわかるはずや」
北川の言いたいことは理解出来た。だが下山には「北川が敵の犠牲になっている間に逃げ
のびろ」という意味の方が強く受け取れた。恐らく北川自身も、そういう場合を踏まえて
話しているのだ。

191:「142・前を向く者へ 3/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 22:09:56 Lq2yOEV+0
「な?シモ。お前が約束してくれんと、俺、安心してお前をサブリーダーに任命出来へん。
俺にもしものことがあったら、お前がリーダーや」
下山は返事が出来なかった。返事をするということは、北川を見捨てることを了承するの
だ。小さく首を横に振った。
「なあシモ、頼む。うなずいてくれ。この3人、守ったってくれ」
いつの前にか、高木、健太、光原の3人は身を寄せるようにして眠っていた。ハムスターの
子供が丸まって寄り添いあって眠っている光景を下山は想像した。
「もしものことが起こらないように、俺の首輪探知機をフル活用しればいいんです」
下山は鞄を叩いてみせる。北川は困ったように笑った。
「それは大前提や。でもな、これだけは約束してくれ。俺よりもこの3人を優先してくれ。
頼む。頼むわ。この通りや」
両手を合わせて北川が必死に下山を見つめた。北川の意志が固いことを知り、下山は唇
を噛み締めた。ただでは受け入れることが出来なかった。
「じゃあ、俺とも約束して下さい」
「何を?」
「もし俺に何かあったら、ペーさんもこの3人を優先して下さい」
「……お前を捨てて逃げろってことか」
「ペーさんと同じことを言ってるんです」
北川は少し困ったように考える仕草を見せた。改めて下山の顔を見た。下山の表情から、
これ以上は譲れないという境界線を読み取った。
「………わかった。じゃあ俺の頼むも、頼む」
「………はい」
安心したかのように、北川は大きく息を吐いた。
「………大丈夫や………話せばわかってくれるはずや………チームメイトやぞ」
再び正面の壁を見つめた。

192:「142・前を向く者へ 4/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 22:10:38 Lq2yOEV+0
「俺な、いつも球場の外野に掲げられてる『青波魂』と『いてまえ魂』の横断幕見ると、
感謝の気持ちで泣きそうになるんや」
その目は遠くを見つめていた。
「俺ら、出来るはずなんや。あんな風に仲良く並んで、手を取り合って、頑張れるはずな
んや。こういう状況だって、きっと信じ合えるはずなんや。みんな野球が好きで集まった
奴らやぞ。苦しい状況を乗り越えてきた奴らやぞ。きっとここを乗り越える方法も見つか
るはずや。諦めたら負けなんや。絶対みんなでここから抜け出すんや!」
最後の言葉は力強く言い放たれた。
「はい!」
下山もつられて力強く返事をした。
ドン、という鈍い音がした。続いて「ぐぇ」と小さく呻く音。
見ると、寝返りを打った光原の腕と足が高木の腹を直撃していた。しかしよほど疲れてい
るのか、2人は目を覚ますことなく眠り続けている。
北川と下山は顔を見合わせて笑った。

【残り・25人】

193:《OUTSIDE・5》 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 22:11:53 Lq2yOEV+0
「日高たち、ちゃんと動いてくれますかね……」
中村のいぶかしげな問いかけに、宮内は苛立ちを隠さず答えた。
「動いてくれなきゃ困る。全く、どうして大事な首輪にバグが起こるんだ!」
「えーっと……さっきから生死判定が出来ずに点滅を繰り返しているのが清原の首輪です。
今回のトラップタイムが終わって判定を出した瞬間は……」
「生存ランプが点いていたわけだな?」
「はい。清原和博、【K】は2つ。そのすぐ隣に山口がいました。山口は【K】が1つ。グル
ープ成立とみなされています」
宮内は組んでいた腕を解くと、両手で顔を覆った。
「で、オーナー、清原は本当に生きているんでしょうか?」
「それがわからないから日高たちを行かせたんだろう!」
「相川と連絡を取ってみましょうか?」
「酔っ払ったブランボーたちに何が出来る?大体助っ人外人ってのは日本に来てビール腹
になって帰って行くんだ。畜生、あいつらこの島にまで酒を持ち込みやがって」
数時間前、『Cafe Bs』と連絡を取った。外人たちに、清原の生死を調べさせに行こうと考
えたのだ。しかし困りきった相川の返事は情けないものだった。外人たちは島での暇を見
越して勝手にアルコール類を持ち込んでいたというのだ。そして相川が止めるのも聞かず
酒盛りを始め、今では上機嫌で歌を歌う者、暴れる者、眠る者と様々だという。
「相川じゃあ外人をコントロール出来なかったか」
ため息まじりに呟く。頭の中ではデイビーに軽々と持ち上げられている相川の姿が浮かん
でいた。デイビーとブランボーに抑え込まれたら、相川では太刀打ち出来ないに決まって
いる。大人と子供のような光景だ。
「肝心の"犬"が全然動かないからな……」
「あの、オーナーに忠実な犬、ですか?」
「そう。連絡を取って清原の所へ行かせようとしても、こっちからの通信に出ないんだか
ら話にならん。まあ、一緒に誰かがいたら通信にも出られんだろうが。そろそろ連絡を取
って、殺し合いをけしかけるべきかな」
宮内は数字の散らばったパソコン画面を見つめた。

194: ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 22:12:42 Lq2yOEV+0
連投規制がかかるので、残り半分は約一時間後に投下します。

195:「143・取捨選択 1/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 23:27:03 9c5NPd9W0
特別な会話もなく、ただ黙々と歩いていた。
1時間前に歩いてきた道のりを戻るだけ。けれど同じ道かどうかは極めて怪しい。
暗闇の中、2個の懐中電灯で道を進む。ユウキは苛ついていた。
(1人だったらもっと素早い行動が取れたかもしれない)
けれど、平野恵一の持つラッキーカードがなければ研究所に行っても意味がない。何が起
こるのかもわからないまま、ただラッキーカードに導かれるまま島の端へと急ぐ。
「大丈夫か?」
無言の時間に気まずさを感じて尋ねた。
「おー、ユウキこそへばってんじゃねえの?」
相変わらず強気な切り返しが来る。ユウキは少しだけ歩調を遅らせた。平野も無言のまま
それに合わせた。さり気ない心遣いに気づいているだろうか。
まだ平野の怪我は完治していない。これだけ歩き続けているのだ、全身が悲鳴を上げてい
てもおかしくはない。それでも文句ひとつこぼさないのがこの男なのだろう。
誰よりも負けず嫌い。誰よりも真っ直ぐ。
スポーツマンとしては背が低い。体格的に恵まれてはいない。だからこそそれをカバーす
る何かを得ようとして日々努力している。ユウキと同い年の彼には、どこかで負けている
ような気がした。
「あー、なんか甘いもん食いてえなー」
平野が場の空気を変えるような能天気な声を上げた。
「甘いもん?俺のアーモンドバターならあるけど。恵一は違うんだっけ」
「俺のはバター。なんかこう、甘いもん食いてえなあ。パンは飽きたよ」
「贅沢言うな」
「口当たりが柔らかくてさー、砂糖がまぶしてあって……そう、ミスドとかワッフルみた
いな感じの。ワッフルワッフル」
「連呼すんな」
聞いているだけでユウキの口の中にも唾が出てくる。唾のお陰で喉の渇きを潤した旅人の
話は誰だったろう。確かあれは梅の木を想像してその酸っぱさに唾を出したのだ。
「わっふるわっふる」
「わっふるわっふる」
何故か2人で呟き始めた。

196:「143・取捨選択 2/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 23:28:33 9c5NPd9W0
沈黙が嫌だった。静かになることが妙に恐ろしかった。残り時間を考え、自分達が生き残
るにはどうすればいいのかを考える。答えは出ない。今はラッキーカードの謎にすがるし
かない。何かに集中していれば他のことを考えずにすむ。ラッキーカードのことを考え、
ワッフルのことを考えよう。平野はそう思った。
少しでも気を抜くと、谷のことを思い出すから。
平野をかばって香月に殺された、谷のことを思い出すから。
(谷さん……俺……頑張りますから!絶対負けませんから!)
何に勝ち、何に負けるというのか。
その答えもまだ曖昧なまま、平野は足元を見つめながら歩いていた。
『誰かーいませんかー』
ふいに声が聞こえた。女性の声だ。平野とユウキは顔を見合わせた。
「誰だ?」
声を潜める。
「さあ……この島の人かな」
「だとしたら、助けてもらえるかな」
「……会った方がいいと思うか?」
返事は聞かなくてもわかっていた。2人は同時に声の聞こえた方へと歩き出した。
「聞こえますかー」
それほど大きくはない声で呼びかけた。余計な敵を呼び寄せてしまわないように。そもそ
も声の主の女性が敵だったら意味は無いのだが、そんな考えは後回しだ。もしその女性が
島の地理に詳しいなら、研究所まで案内してもらうのもいい。敵だったらなんとか脅すな
りして情報が欲しい。とにかく現状を打破したかった。
「ここにいますよー」
また声を上げた。途端にガサリと木が揺れる音がした。
『誰?!誰ですか?!』
声はさっきよりも近づいていた。

197:「143・取捨選択 3/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 23:29:22 9c5NPd9W0
『私、リプシーです!』
「リプシー!」
「おいマジかよ!ユウキだよ!」
「平野恵一もいるよー!」
『ユウキさん!恵一さん!そっち行きます!声をお願いします!』
途端に木々が激しく揺れる音がした。かなり深い繁みにリプシーは入り込んでいるようだ
った。さすがお転婆娘だ。
『きゃっ』
「どうした?!」
『いえ、スカートが枝に……取れた!』
再びガサガサと音がする。平野は懐中電灯を揺らした。
「リプシー、光がわかるか?」
『はい!そっちに向かいます』
サクサクと草を踏む音が近くなる。本当にリプシーだろうか。どうしてリプシーがここに?
そんな疑問を抱きながらも平野は灯りを照らした。ユウキも一緒に自分の懐中電灯を揺ら
していた。
バシャッという音と共に、暗闇の中の緑が割れた。そこから勢いよくミニスカートの女の
子が飛び出してきた。
「リプシー!」
「ホントにリプシーだ!」
「ユウキさん!恵一さん!ご無事でよかった!」
リプシーはすぐさまどうして自分がここに来たのかを話した。大島コーチたちが何かを気
づいて探り始めたこと。自分とネッピーが今この島にいること。ネッピーとの通信機が上
手く作動しないこと。
「多分、妨害電波だと思います。場所によっては声が聞こえるんです。でもすぐ雑音でか
き消されちゃう」
「じゃあオーナーたちはリプシーたちがこの島にいることを知ってるんだ?」
「ええ。乗って来た船の舵に仕掛けがされてたみたいですから」

198:「143・取捨選択 4/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 23:30:27 9c5NPd9W0
リプシーは悔しそうに唇を噛んだ。
「……私たちはオーナーの掌の上で踊らされているのかもしれません。でも、絶対に諦め
ないつもりです。私達は私達に出来ることをします。精一杯」
「うん、そう言って貰えると心強いよ」
平野が笑顔でうなずいた。ユウキはさりげなくリプシーの装備を見た。
(特別な武器は無いみたいだな……戦えそうなものは無し、と)
「なんとかして選手の皆さんをネッピーのいる場所に集めたいんです。お2人もそこに向か
ってもらえますか?」
ユウキと平野は顔を見合わせた。平野が鞄からラッキーカードを取り出す。
「これ、俺がオーナーから渡された支給品なんだ」
リプシーが顔を近づけて文面を読む。口元に手を当てた。
「……これは脱出方法ですか?」
「わからない。でも何かラッキーなヒントには違いないと思う」
地図を出し、研究所の場所を指差す。続いてリプシーが島の反対側の櫓の位置を指した。
「さっきかろうじてネッピーと話した時、ネッピーのいる方にも脱出の可能性があるんだ
って言ってました。だから私は選手の皆さんをここへ集めようとしてるんですけど……」
真剣な表情で腕を組む。
「こちらのラッキーカードの意味も知りたいですね……」
「リプシー、一緒に行かないか?」
平野が尋ねる。ユウキも力強い目でリプシーを見ていた。
うなずきたかった。本当はリプシーもうなずきたかった。
けれど、心に留めたひとつのことがリプシーの首を横に振らせた。
「……いえ、私は選手の皆さんを集める役割が……。私は首輪が無いから自由に走り回れ
ます。ネッピーのいる櫓の辺りか、恵一さんたちの行く研究所か、とにかくそのどちらか
に選手の皆さんを集められるのは私しかいないんです」
そして、【K】をひとつしか持っていないあの人が無事かどうか、この目で確かめる為にも。
愛しいあの人を救い出す為にも。

199:「143・取捨選択 5/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 23:31:36 9c5NPd9W0
「そうか……まあ、その方が建設的だよな」
平野が笑って見せる。リプシーも笑い返した。
「ところでお2人はずっと2人だけだったんですか?誰かに会ったりは?」
途端に平野の表情が暗くなる。思い出したくない現実を突きつけられる。けれど事実を伝
えておいた方がいい。特に危険な存在をリプシーに教えておかなければ。
「………俺は、谷さんと、香月」
「……お2人は?」
平野の口調に何かを予感してはいたが、リプシーがそっと尋ねた。
「谷さんは、俺をかばって殺された。香月に」
声に出すと、その重さが余計に平野の心を締めつけた。
「香月……さんが……?」
リプシーが信じられなそうに尋ね返す。平野は唇を噛み締めたまま下を向いた。
「ユウキさんは?」
尋ねられ、ユウキはとぼけた表情をした。自分が殺した相手のことは隠しておくのが常套
手段。顎に手を当て、少し考える仕草をした。
「えーっと………そうだ、恵一と一緒に夕方に会ったんだ。ゴッツに」
「ゴッツ様に?!」
急にリプシーが身を乗り出す。その勢いに思わず2人は仰け反った。
「あ、い、いえ、その、後藤さんに?」
何かを取り繕うようにリプシーが続ける。
「ああ、1人で細長い銃抱えて歩いて行ったよ。阿部さん探すんだって」
「夕方くらい?」
「ああ」
「じゃあ、このトラップタイムの前?」
「ああ」
リプシーが目を閉じる。両手を胸元で祈るように組む。唇が小さく動いた。

200:「143・取捨選択 6/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 23:32:49 9c5NPd9W0
「……リプシー、どうする?」
ユウキが尋ねると、リプシーは静かに目を開き、微笑んだ。
「やっぱり選手の皆さんを探しに行きます。皆さんを集めるのがネッピーと約束した仕事
だから」
「そうか………じゃあ、ここでお別れだな」
ユウキが先を即すように告げた。
「俺らは研究所に向かってますってネッピーに伝えておいてくれ。他の選手をこっちに案
内してくれてもいい」
(順番に俺が消すかもしれないけどね)
ユウキの心の中の声は聞こえない。表情にすら表れない。
「わかりました。ネッピーや他の選手にも伝えておきます。もし研究所で何かわかったら
ネッピーの場所に合流するなりして伝えられますか?」
「ああ、走ればそんなに時間はかからない距離だろ?島の南端の右端と左端ってとこだも
んな。禁止エリアさえちゃんと避ければ」
「わかりました」
リプシーがどこか急いているように荷物を持ち直した。ふいにその手が止まる。
「あ、あの……」
「ん?」
「あの……手始めにですね、手始めに、お2人がお会いしたゴッツ様……いえ、後藤さん辺
りを探そうと思うんですが、どの方向に行かれました?」
不安そうに尋ねてくる。ユウキはまた地図を出した。
「どの方向っていうか、島の中の方へ歩いて行ったよ。丘の方。よくわかんないけど」
「そ、そうですか、ありがとうございます!それじゃあ!」
スカートを翻し、リプシーが駆けて行く。
その健気の後姿を幻でも見送るように、2人は無言で見つめていた。
また静かな行程が続く。研究所まで。何が待っているのかわからない、研究所まで。

【残り・25人】

201: ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/01 23:33:32 9c5NPd9W0
今回は以上です。

202:代打名無し@実況は実況板で
07/06/01 23:38:04 WS6NVEA0O
乙です!
>わっふるわっふる
>ゴッツ様
に吹いたwwwwww

203:代打名無し@実況は実況板で
07/06/01 23:50:10 lRRj7cQTO
乙です。

ゴッツってそんなに神なのか?ゴッツ様ってwww

204:代打名無し@実況は実況板で
07/06/02 00:08:08 h2JCo1RfO
乙です。
またいい場面で光原wwww

…ゴッツ様って確かKが1個だよな…まさかリプシー…

205:代打名無し@実況は実況板で
07/06/02 00:20:01 CuR/0jf+0
>わっふるわっふる

そ う き た か !
いつも乙であります。

206:代打名無し@実況は実況板で
07/06/02 00:22:12 dp/5zMHr0
ゴッツ様ワロタwwwwwwww
ネタスレのゴッツが浮かんでしまうwwww

207:代打名無し@実況は実況板で
07/06/02 14:09:50 lLr29y1L0
>ワッフルワッフル
ちょwwwww
てか、リプシーの想い人ってオクボーンじゃなかったのか……?

208:代打名無し@実況は実況板で
07/06/02 17:37:57 T+xpdRw1O
オクボーンは片思いだったわけか…

209:代打名無し@実況は実況板で
07/06/02 18:47:26 IViLJpqXO
そうだったら切な過ぎる………

210:代打名無し@実況は実況板で
07/06/02 18:52:54 QVU8zKU2O
電車の中で見るんじゃなかった

ニヤニヤが止まらねぇwwwwwwwwwww

211:代打名無し@実況は実況板で
07/06/03 00:39:28 BbS0rjOV0
投下きてたーw職人さん乙です

ニコと下山でほろっときたあとにわっふるとゴッツ様wwwww

212:代打名無し@実況は実況板で
07/06/03 20:11:37 4PoDqP//0
保守

213:代打名無し@実況は実況板で
07/06/04 17:56:43 i4pZ3NFRO
( ゚∀゚)<捕手

214:代打名無し@実況は実況板で
07/06/05 21:52:36 wl8IxP1S0
ほしゅ

215:代打名無し@実況は実況板で
07/06/06 21:38:37 b6z8H4Ai0


216:代打名無し@実況は実況板で
07/06/07 00:50:18 CaKZXApq0
保管庫さん、いつも乙です。
あの…《OUTSIDE・5》と143章が一緒になっちゃってるみたいです…
わっふるわっふる。

217:代打名無し@実況は実況板で
07/06/07 01:35:00 zMWX3o1H0
>>216
すいません直しました。
水曜日に連れに京セラ誘われたのに行かなかった報いですかね
すいません
わっふるわっふる

218:代打名無し@実況は実況板で
07/06/07 01:42:48 pOUdNzGS0
まさか三角関係とは…大久保カワイソス

>>217
いつも乙です。
わっふるわっふる

219:代打名無し@実況は実況板で
07/06/07 13:46:13 YD5hanLM0
ごっつどうなるんだろう

わっふるわっふる

220:野球板の仕事@SarashiagE ◆6R509kwPwM
07/06/07 22:11:08 kTyl+SSPO
一番下にありますた

オリックスバファローズバトルロワイアル
評価:低★★★★★★★★☆☆高

221:代打名無し@実況は実況板で
07/06/07 22:53:05 XYogDwEuO
きょうわっふるたべたぞ

わっふるわっふる

222:代打名無し@実況は実況板で
07/06/08 13:36:17 aUde3DsCO
捕手するぜ
わっふるわっふる

223:代打名無し@実況は実況板で
07/06/08 14:36:36 FLke0Ec60
今日の先発平野だろ?
日本刀背負って出てきそうで怖いんだが

わっふるわっふる

224:代打名無し@実況は実況板で
07/06/08 22:25:53 2jZppk4M0
保守です
わっふるわっふる
 

225:代打名無し@実況は実況板で
07/06/08 22:41:27 FtbGi5hE0
ちょwwwみんなわっふるわっふる言いたいだけwwwwwww


わっふるわっふる

226:代打名無し@実況は実況板で
07/06/08 22:55:12 EebN1d9zO
檻実況住民乙




わっふるわっふる

227:「144・彷徨える4番打者  1/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/08 23:26:45 e8nsXv660
「ジミー」
ふいに名前を呼ばれて大西は体を小さく震わせた。
悪夢のようなトラップタイムが終わり、また通常の悪夢の時間に戻った。夜もふけ、そろ
そろ落ち着いて眠れる場所を探し始め、ようやく屋根のあるオンボロ小屋を見つけて中に
入った所だった。
そこはバスの停留所のようだった。けれどかなり前に廃れてしまったようだ。それらしき
パネルも錆ついて、もう文字すら読めなくなっている。簡易ログハウスのような小屋には
キチンと四辺に壁があり、そのひとつに窓があった。窓から往来のバスを見ていたのだろ
う。今はもうその窓にガラスは無い。大西はちょうど窓の辺を調べていたところだった。
窓の縁に落ちていたガラス片をさり気なく自分の鞄にしまい、萩原の方を向いた。
萩原は片手に小さなボトルを持っていた。
「顔の怪我、大丈夫か」
尋ねられて痛みが戻ってきた。顔面の負傷。出血。それらはトラップタイムのせいである
程度忘れることが出来ていた。ジンジンとした鈍い痛みはあったが、気にするほどではな
かった。
「一応消毒液持ってるから、つけておいた方がいいだろ」
たいした抑揚もなく、萩原が告げる。
「あるんなら是非」
大西は萩原に歩み寄った。
「支給品ですか?」
香月が尋ねる。
「いや、自分で持ってたんだ。最近妙にいろいろ擦り傷作るんでな。いちいち手当てを頼
むのも面倒だから絆創膏と一緒に持ち歩いてた」
準備のいいことだ。大西は萩原の前に胡坐をかいて座った。萩原は大西の顔を覗き込んだ。
「そんなに深い傷じゃないんだな」
「最初はすごい出血だったんですよ。痛いし痒いし」
「ジェイソンだっけ、お前が会ったの」
「ええ」
「誰かはわかんないのか」
「はい。ユニフォーム着てたんですけどね……番号見る余裕なくて」

228:「144・彷徨える4番打者 2/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/08 23:28:06 e8nsXv660
ここまで来る道すがら、香月は大西から『ジェイソン』の存在を聞かされていた。白いア
イスホッケーのマスクをつけた、映画ソックリの凶暴極まりない人物がこの島にいるのだ
という。しかもユニフォームを着ている。チームメイトの誰かならしい。
(イッちゃってる奴がいるってことか?)
香月が心の中で小さく笑う。
(俺は冷静にイッちゃってるけどさ)
プシュッという音と共に、大西が「いてっ!」と声を上げた。
「オギさん、しみる!」
「我慢しろ、手当てしてやってんだぞ。ばい菌入ったら大変だぞ」
「もっと山賊みたいな顔になりますよ」
「香月に言われたくねーよ」
話している間も萩原は容赦なくスプレーを大西の顔に吹きつける。
「オ、オギさん、口に入った!」
「死にゃあしねえよ」
「……苦い」
「うがいしとけ」
萩原の膝の上では子猫が丸まっている。すっかり萩原になついているらしく、逆に香月と
大西には近寄ろうともしない。
「……よし。こんなもんだろ。あとは適当にタオルで拭いとけ」
萩原は消毒スプレーを鞄にしまうと、子猫を抱いて立ち上がった。
「トイレ」
「またですか?」
「行ってくる」
ご丁寧に自分の荷物を全部持って小屋を出て行った。まだ完全に大西と香月を信用しては
いないのだろう。それも当然な気がした。大西だって同じようにしたと思う。
「………どうなっちゃうのかなあ………」
素直な言葉が口をついて出た。

229:「144・彷徨える4番打者 3/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/08 23:29:03 e8nsXv660

萩原は小屋を出ると、深い繁みの方へと歩いた。真っ暗な中、懐中電灯で足元を照らす。
20メートルほど歩いて、灯りを消した。
いつもの癖なのか、窮屈なのか、首輪の前面に手をやって手前に隙間を作った。
首輪前面の裏側に指を入れた。小さな突起がある。そこを力強く爪で押した。
カシャンと音がして、表側に小さなツマミが飛び出す。右に3回回した。
カチリ、カチリ、カチリ。
小さく黄色のランプが点滅し、消えた。
『宮内だ』
「萩原です。何度か呼ばれていたようなので……」
『呼んだぞ。5回以上呼んだ』
「すみません、大西と香月が一緒にいまして」
『そんなことだろうと思ったがな。全く……さっきはどうして監視カメラを壊した?』
「銃の試し撃ちをしたら、偶然当たったみたいです」
『ふざけるのもいい加減にしろ。………まあいい。地図を出せ。清原の所へ行け』
「…………は?」
『聞こえなかったか?清原の所に行くんだ』
「キヨさんは死んだはずじゃあ……」
『それを確認しに行くんだ。いいか、地図は出したか?』
無言のまま、その場にしゃがむ。懐中電灯を点け、地図を照らした。
首輪から宮内の指示が聞こえる。萩原はそれをボンヤリと聞いていた。聞き流しているわ
けではない。ただそれらに現実感が持てなかった。今の自分自身にも。
『おい、聞いているのか。返事は?』
「はい」 
『入団して9年、バッターとして全く役に立たないお前を食わせてやったチームはどこだ?』
「………オリックスです」
『バッターとして箸にも棒にもかからないお前を、異例の投手転向で生き残らせてやった
チームはどこだ?』
「………オリックスです」
『投手経験の無いお前をここまで育ててやったチームはどこだ?』

230:「144・彷徨える4番打者 4/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/08 23:30:03 e8nsXv660
「…………オリックスです。感謝しています」
『なら言うことを素直に聞くべきだな。お前は俺の犬なんだからな』
冷たく言い放たれる。どうやら自分は人間ではないらしい。
『とにかく清原の生死を調べろ。これが最優先だ。日高と田中彰もそこに向かっている。
あいつらだけじゃ不安だからな。お前も行け。後は作戦を続行しろ』
「………はあ」
宮内の声は苛立っていた。
『お前はここまで何ひとつ命令を実行していないじゃないか!ゲームをかき回せと言った
はずだ。誰かに出会ったら殺すなり脅すなりしろと言ったはずだ。それを何をぼんやりし
ているんだ!』
「………お言葉ですが、最初のトラップにかかって、休んでいた家を爆破されたものです
から………」
一瞬、宮内の返事が詰まる。
『……まさかお前のいる家がトラップを仕掛けた家だとは思わなかったんだ。仕掛けた相
川からの連絡の家と、1件ずれてたんだ。文句なら相川に言え!』
「少々怪我をしまして……」
『大怪我か?足か?腕か?』
途端に宮内の声が曇る。
「足と腕を少々……」
傷ひとつない、ピンピンした腕を見つめながら答えた。
『手当て用の道具は持たせてあるだろう!それでなんとかしろ!いいな!すぐに清原の所
に行け!今すぐ行け!以上だ!』
怒鳴り散らすようにして通信が切れた。萩原はため息をつくと、ツマミを左に3回回し、再
び首輪の中に押し込んだ。
(飼い馴らされた忠実な犬、か……)
やる気は無い。生きる意味すらおぼろげな自分に、どんな脅し文句が効くというのか。
今はただ、自分を慕ってきた胸の子猫を生かして神戸に連れて行ってやる為だけに歩いて
いるようなものだ。
自分に支給された鞄は重かった。しっかりした銃と、補充用の弾丸は必要以上に多く見え
る。怪我をした時の為の救急セット。食料も多めに入っていた。

231:「144・彷徨える4番打者 5/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/08 23:31:21 e8nsXv660
それもこれも、ゲームを面白くする為。
誰かを殺す為。
(俺を選ぶこと自体、間違ってると思うんだよな……)
それなりに仕事をやり遂げれば、ゲームの途中でも救済処置をしてくれるという。安全地
帯へと運んでくれるらしい。
(何人殺せばいいんだ?)
既に最初の地点で菊地原とはぐれている。まだ菊地原の名前は呼ばれてはいない。あの
爆発はそれほどのものではなかったようだ。脅し程度だったのだろうか。
菊地原の鞄から飛び出したらしい手榴弾も持っている。なかなかの武装状態だと思う。
(キヨさん……まだ生きてるんだろうか)
清原は学生時代から萩原の憧れの存在だった。
ホームランバッター。萩原もそうだった。大型野手、チームの大砲として活躍し、プロに
入ったのだ。最初に与えられた背番号は55。それだけでも期待の大きさが伺われた。今で
も「憧れの選手は?」という問いかけに清原の名前を挙げる。
(キヨさん………教えてもらえませんか?どうやったら打てるんですか?)
プロの投手の球を、どうやったらホームランに出来るのか。
(キヨさん、教えて欲しいんです。俺はもう打者じゃないけれど、知りたいんです)
プロ野球選手、強打者になることが夢だった。幼い頃からの憧れだった。
萩原の夢は一度潰えた。
しかし、新しい道が出来た。
それでも昔から抱いている思いだけは捨てたくはない。
(キヨさんに会って、聞きたいんだ)
ただそれだけの為に、萩原は歩き出すことにした。
宮内に命令されたからではない。それはキッカケにすぎない。
ホームランを打つ方法。それを知りたい。
背後に残した大西と香月の存在は、既に萩原の頭からは消えていた。
『4番、サード、萩原君』
遠い昔、甲子園で聞いたアナウンスが心のどこかで響いた。

【残り・25人】

232:「145・最後の願い 1/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/08 23:32:36 e8nsXv660
自分の荒い息遣いが聞こえる。
茂みの中に身を潜め、早川は平野佳寿の動向を伺っていた。
平野が後藤を追って走り出した後、早川は咄嗟に木々の間へと逃げた。もし後藤を殺した
ら、または後藤を逃がしてしまったら、平野はまたここに戻って来るだろう。
早川にとどめを刺しに。
だから早川はその場に留まっていた。
体の前面が痛い。刀で切られたのだから当然だ。湧き出てくる血が熱い。ドクドクという
流れを全身で感じた。
(………もう………ダメだな)
自分のことは自分が一番わかる。病院に担ぎ込まれれば一命も取り留められるだろうが、
孤独な島の中ではとうてい無理な話だった。しかも夜。仲間を見つけることすら難しい。
(これは、賭けか)
後藤が戻ってきたら、可能性を信じる。明日の朝日を見、生きることへの希望を持とう。
平野が戻ってきたら、自分の最後の命を賭けて、勝負を挑もう。
平野がこれ以上凶行を繰り返さないように。もう自分のような存在を作らない為に。
もし2人共戻ってこなかったら………今を耐えよう。誰かの負担にならないように、何かを
しよう。何かが何を意味しているのかは、自分でもわからないが。
今落ち着いて考えると、あの妖刀・村正を手にしてから早川の心はおかしくなった気がす
る。無意識のうちに何かを切りたくなり、木々を切り、今夜誰かを切りつけた。その刀が
平野の手に渡った。あの刀が平野までもおかしくしてしまったのだろうか。
元凶はあの刀なのだろうか。
『オラオラ!ビビッてるよ!』
ふいに下山の野次を思い出した。
『押してけ押してけ!』
耳元でいつもうるさかった声。
『チャンスだぞ!勝負勝負!』
常に前向きな野次を飛ばしていた。そしてつられるように自分も。
(諦めんな!まだ行ける行ける!)
自分自身へ野次を飛ばした。

233:「145・最後の願い 2/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/06/08 23:33:39 e8nsXv660
シャク……
土を踏む音が聞こえた。咄嗟に顔を上げた。枝葉の間から向こうを見た。
長い刀を持った青年が、周囲を見回していた。
(………平野………)
早川の行く道が定まった。
(お前だけは………許せねえ………)
武器らしい武器は何ひとつない。結果は目に見えている。けれど、せめて一矢。
(………シモ、俺に力をくれ)
平野が早川に背を向ける。ゆっくりとした足取りで歩き出す。
ある程度の距離を見送ってから、早川は出来るだけ静かに繁みの中を移動した。どうして
も葉の擦れる音がしてしまう。それ故の距離だった。
額に脂汗が滲む。一歩一歩が激痛となる。両手の拳を握り、自分に気合を入れた。
恐らく自分の歩いてきたここまでの短い距離には、血の滴の道が出来ているだろう。いつ
か、これを見つける人はいるのだろうか。ここでこうして早川が決死の覚悟で行動を起こ
したことに、思いを馳せてくれる人はいるのだろうか。
この追いつめられた、最後の決意に、最後の願いに気づいてくれる人は。
(………誰に気づかれなくても)
唇を噛み締める。早川はじっと背番号16を見つめた。
(俺は……ここで倒れるけど………誰か………生きて帰れよ!)
心の中で叫んだ。
(絶対に!絶対に正義は勝つんだ!勝たなきゃいけないんだ!)
心の中で泣き叫んだ。
(その為に俺は……俺は捨石に……いや、踏み台になるから!正しい心を持った誰か!
誰かを励ます気持ちのある奴!絶対に生きろよ!)
勢いよく、繁みを飛び出した。
その音に平野が振り返る。咄嗟に刀を構えた様子がわかった。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
叫びながら鞄を振り上げた。肩紐を掴み、遠心力で平野に叩きつける。鞄が平野の刀にぶ
つかった。そのままクルクルと刀に絡みつく。


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