千葉マリーンズバトル ..
[2ch|▼Menu]
52:代打名無し@実況は実況板で
06/12/30 05:58:59 yV95crSp0
お約束はともかく、マリバトにおいて戸部は一服の清涼剤だった
深くて殺伐とした内容が続くところで戸部に癒されたことは少なくない

53:代打名無し@実況は実況板で
06/12/30 14:05:40 CJ/7Hm4jO
>>52
まさに。

戸部を見ると、自然と笑みがこぼれてくるw

54:代打名無し@実況は実況板で
06/12/30 23:17:03 pHbeYwePO
何もしないで生き残るというのは新機軸だよな、戸部

55:代打名無し@実況は実況板で
06/12/31 13:44:40 NVrdpOAmO
飛べ戸部

56:代打名無し@実況は実況板で
07/01/01 11:59:37 1OjZt/5KO
あけましておめでとう保守

57:代打名無し@実況は実況板で
07/01/01 18:30:27 AQOgidLb0
あけおめ

58:代打名無し@実況は実況板で
07/01/02 07:41:55 f6y882TkO
     _
 ▼^   `▼
 イ fノノリ)ハ  保守…
  リ(l|゚ .゚ノlリ
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/

59:代打名無し@実況は実況板で
07/01/02 17:05:31 CVAKUKFj0
首位まで上げときます

60:代打名無し@実況は実況板で
07/01/03 00:52:34 Cb6ZiZcWO
小坂がかわいそうでかわいそうで…

61:番外編 園川一美と愉快なコーチたち43 ◆GDAA.BMJxc
07/01/03 14:59:11 Qk7esLRU0
「どうしたんですか、監督。こんなところでぼうっとして。」
監督と呼ばれた男は、福澤の呼びかけにゆっくりと振り返った。
「・・・いや、なんでもない。」
福澤はその視線の先にあるものを見つめて、思わずつぶやいた。
「あ、飛行機か・・・。」
「ん、なんだって?」
「ひいっ、な、何でもありません!!」
福澤は監督の一言に咄嗟に大きくかぶりを振ってごまかした。
すでにマリーンズの人間ではない福澤にとって、
これからは何気ない一言が自らの生命を脅かす可能性がある。
じっと息を潜めて、福澤は監督の様子を伺った。
「ちょっと昔のことを思い出したんだ。」
「そうですか・・・。」

監督がそれ以上追求する様子が見られないのを確かめると、福澤はそっと息を吐き、おそるおそる口を開いた。
「ところで、あいつはどうしましょう?」
福澤が指した先には、カラフルな頭髪に派手なメガネ、金ぴかの服を着た男がいびきをかきながら寝ていた。
監督は男を一瞥したものの、特に何を言うことも無く視線をそらした。
沈黙がしばらく続くと、福澤はこっそりとため息をつくいた。
そしてゆっくりと腰を上げると、寝ている男にゆっくりと近づき、一向に起きる様子が無いことを確かめると、思い切り蹴飛ばした。
「おい、いい加減に起きろ、アツシ!!」

【75 福澤 洋一 移籍のため不参加】


62:番外編 園川一美と愉快なコーチたち 終(1/3) ◆GDAA.BMJxc
07/01/03 15:06:28 Qk7esLRU0
「やっとついたよー」
「うわっ、荘さんちょっと揺らさないで!」
日が傾きだしたころ、吉鶴たちはキャンプ地にたどり着いた。
昨日からからずっと挙動不審だった大谷も、ここにきてようやく落ち着きを取り戻したようだ。
ようやくキャンプに参加できると、大きな期待に胸を膨らませた吉鶴たちだが、すぐに奇妙な感覚に襲われた。
「何も無いねえ。」
「まあ、離島だから何も無いのは当然でしょうけど。」
「いや、そうじゃなくてさあ。」
園川は周囲をゆっくり見回した。
それにつられて吉鶴も辺りをじっくり見回した。
「あ、あれ・・・?」
よく見れば、島全体にマリーンズを歓迎する雰囲気が見られない上に、
練習場など施設への案内も見られず、何の変哲も無い離島としか思えない様子だった。
「ずいぶん手を抜いていますね。本当にキャンプやっているんですか?」
まったく秋季キャンプへの準備がなされていない事に吉鶴は呆れ顔だった。
「まあ、それもあるけどさ・・・。」
よく見るといくら離島とはいえ人がいそうなものなのに、見回す限り人の気配がしないのだ。
「いったいどうなっているんだろうね。」
荘たちも首をかしげていたが、このままいても埒があかないので、ほかに人がいないか探すことにした。


63:番外編 園川一美と愉快なコーチたち 終(2/3) ◆GDAA.BMJxc
07/01/03 15:07:28 Qk7esLRU0
「のどかだねえ。」
「そうですね。」
吉鶴たちは、島の探索を始めた。
都会の喧騒とはかけ離れた静かさに、4人はつかの間の安らぎを味わっていた。
しかし、よく見てみるとなにやら分からない破片や、
不自然な形で傷つけられている木々や地面が目に付いた。
「なんていうか・・・、荒れていますね。」
「そうだね、もっと自然を大切にしないといけないよね。」
吉鶴の言葉に、もなかの包装紙をきちんとポケットにしまいながら、荘も大きくうなずいた。
これといった発見もできずに、4人は島の中央にたどり着いた。
そこには離島にはあまりにも似つかわしくない立派なスタジアムが建てられていた。
しかし、そばまで近づいてみると入り口に大きく「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた張り紙が貼られていた。
「これは、入らないほうがよろしいのでは・・・?」
「いや、僕たちは関係者だから問題ないよ。」
大谷の制止も気に留めず、荘はずんずんと奥に入っていった。

「ひどいな、これは。」
グラウンドに出てみると、野球をするのに十分な広さがあるものの、状態は「ひどい」の一言に尽きた。
雑草が生い茂っているというわけではないが、
でこぼこにゆがんでいる地面、放り散らかされた練習機材、
散乱した椅子、廃材やら何やらの置き場と化しているブルペン、
その他もろもろを見ても、まともに野球を行える状態ではなかった。
「あれ、これは?」
黒い土のグラウンドの中、吉鶴が指し示したところだけはなぜか赤くなっていた。
「何だろうね、汚れ?」
荘は赤くなっているところを足で軽くならしてみたが、赤い色はなかなか消えなかった。
「まあ、いいか。」
これ以上深く考えることなく、吉鶴たちはスタジアムを後にした。


64:番外編 園川一美と愉快なコーチたち 終(3/3) ◆GDAA.BMJxc
07/01/03 15:09:55 Qk7esLRU0
結局、島を一周してみても人の気配はみられなかった。
「そもそも、ほかの人たちはどこにいるんだよ?」
「そういえば・・・。」
思い返せば、キャンプをしに来たはずなのに、住民はおろか選手、スタッフがいないのでは話にならない。
4人が途方にくれていると、海の向こうから小さな船がやってきた。
「おおーい!!」
吉鶴たちは必死に手を振った。
そんな姿に気づいたのか、船はだんだんと近づいてきた。
しばらく待っている間に船が接岸すると、中から何人か出てきて、その中から一人のの男が慎重にゆっくりと吉鶴たちの元に近づいてきた。
「めずらしいな、こんな島に客が来るとは。」
荘が皆を代表して一歩前に進み出た。
「あの、僕たちキャンプにやってきたんですけど、ほかの人はどこにいるか知りませんか?」
しかし、男の返答は期待を裏切るものだった。
「キャンプ?なんのこと。」
「なんのことって・・・。」
男の言葉に4人は顔を見合わせた。
戸惑う顔を見て男は申し訳なさそうに補足した。
「いろいろあってここ一週間くらい島を出ていたんだ。申し訳ないけどここ数日のことはよく分からなくてね。」
「そうですか・・・。」
落胆の表情を隠せない吉鶴たちに対し、男は軽く手をたたき、できるだけの歓迎ムードでこたえた。
「まあ、せっかく来たんだし、せめて夕食でもどうですか。」
その言葉を聞き、園川が吉鶴と大谷の肩をつかみ、いつもの表情で話しかけた。
「よかったな。問題がひとつ解決したよ。」
「はあ、何がです?」
今の会話を聞く限り、何も解決したとは思えない。むしろ疑問が増えるばかりである。
しかし、園川はいつもどおり表情を崩さず、諭すように話した。
「今日の夕食だよ。」
【81 園川一美 不参加】
【77 吉鶴憲治 不参加】
【88 荘勝雄 不参加】
【95 大谷幸弘 不参加】

65: ◆GDAA.BMJxc
07/01/03 15:13:04 Qk7esLRU0
これにて園様編は終了です。

本編から大きく遅れてしまい申し訳ありません。

66:代打名無し@実況は実況板で
07/01/03 15:40:11 Aw13oCzyO
>>65
おつ。
結局何してたんだこの人達wwwwww

67:代打名無し@実況は実況板で
07/01/03 18:38:19 FGsx3eFjO
平和wwwwww

68:代打名無し@実況は実況板で
07/01/03 18:41:30 KTyi0CGd0
アツシって誰?

69:代打名無し@実況は実況板で
07/01/03 22:29:56 2JO2XTtH0
>>69
吉田篤史(05年〜ベイスターズ投手コーチ)。

最後まで誰だかわかりませんでした。職人様お疲れ様でした。

70:69
07/01/03 22:33:28 2JO2XTtH0
アンカー間違えた…
>>68ね。
園様編38でYB関係者だろうと目星をつけていたけれど、彼のことはすっかり忘れてた…

71:代打名無し@実況は実況板で
07/01/03 22:52:57 BIxqirQIO
職人さん乙ですー!

…誰か、分かりやすく園様編の概要を。何してたのかわからなくてわからなくて…

72:代打名無し@実況は実況板で
07/01/03 23:19:30 CsjxaR1EO
あ〜、吉田か!

73:69
07/01/03 23:28:32 2JO2XTtH0
>>71
1.園川&吉鶴、館山で置いてけぼり(園川&吉鶴)
2.事故かと思いTVを見るもサッパリわからない。(園川&吉鶴)
3.事務所に電話するも、繋がらない。(園川&吉鶴)
4.繋がらなかった電話が繋がった。でも留守電になった。(吉鶴)
5.自宅で誰かに電話。荷造りをする。(福澤)
6.起床(園川)
7.ラジオ体操(園川)
8.海浜幕張の駅前で、福澤と待ち合わせ(吉鶴)
9.球団事務所へ乗り込むが、表札が「CMBR管理本部」(吉鶴)
10.マリンスタジアム到着。荘に殴られる(吉鶴)
つづく

74:2/5
07/01/03 23:29:15 2JO2XTtH0
11.荘の勘違い。昼飯を食べることに(吉鶴)
12.3羽と出会う。荘さん大はしゃぎ(吉鶴)
13.昼食後、浦和へ向かうことに(吉鶴)
14.山本エカ児神社参拝(吉鶴)
15.老人と雑談(園川)
16.浦和球場のグラウンド整備(吉鶴)
17.飛び出してきた「何か」にぶつかり、意識を失う(吉鶴)
18.気がついたら大谷がいた(吉鶴)
19.大谷、部屋を飛び出す(吉鶴)
20.吉鶴・荘、寮へ移動。大谷、誰かに捕まる。(吉鶴)
まだつづく

75:3/5
07/01/03 23:29:53 2JO2XTtH0
21.荘、電話をかける。(吉鶴)
22.暇をもてあます吉鶴(吉鶴)
23.高沢来訪、吉鶴失神(吉鶴)
24.吉鶴、気づく。高沢どこかへ出かける(吉鶴)
25.金ピカの男と高沢の追いかけっこ。福澤が戻ってきて、移動することに。(吉鶴)
26.老人と雑談(園川)
27.佐藤兼伊知に捕まった大谷(高沢)
28.車で移動することに。 (高沢)
29.福澤の新しい職場を思い出し、震える。(高沢)
30.事故を起こしそうになりながらも、マリンスタジアムに到着。(吉鶴)
さらにつづく

76:4/5
07/01/03 23:30:57 2JO2XTtH0
31.グラウンドにたどり着いたら、マウンドに誰かいた。(吉鶴)
32.マウンドにいた園川と合流。誰かが現れる。(吉鶴)
33.誰か=高橋がグラウンドを後にする。金ピカ男が再び現れる。(吉鶴)
34.金ピカ男は逃亡。(吉鶴)
35.高橋に締め上げられる(こんなんばっか…/吉鶴)。
36.福澤・荘vs高橋・高沢・佐藤。ソフトバンクによるホークス買収が決定(福澤&荘)
37.福澤、キャンプ地へ(福澤&荘)
38.園川、グラウンドから駆けつける。金ピカ男もキャンプへ向かう。(園川)
39.夜が明ける。放置された吉鶴、携帯の電池切れ。駅前のコンビニへ向かう。(吉鶴)
40.プレナのハンバーガーショップで園川・壮と合流(吉鶴)
次でおしまい

77:5/5
07/01/03 23:32:01 2JO2XTtH0
41.大谷も合流、キャンプへ向かう。(吉鶴)
42.沖縄へ向かう機中で見た荘の夢(荘)
43.キャンプ地での「監督」と福澤のやりとり。金ピカ男正体判明(福澤)
44.一行が「島」に到着。戻ってきた住人に出逢い、夕食をご馳走してもらうことに。(吉鶴)

こんなもんかな?

78:代打名無し@実況は実況板で
07/01/04 00:27:56 UPfHJAYX0
>>73-77
68じゃないけど、GJ!

29の福澤の新しい職場の意味がよく分かってなかったんだけど
今回投下分で分かったw あの方だったのか…w
職人さんも、長いことお疲れさんでした

79: ◆QkRJTXcpFI
07/01/04 00:34:34 VUXQzzOt0
園様編お疲れ様でした!

エピローグについて若干相談したい事がありますので
職人さんでもうちょっと書こうかなという方いたら、打ち合わせ板までお願いします。


80:代打名無し@実況は実況板で
07/01/04 20:52:41 AHz3xxghO
>>73-77
わざわざありがとうございます!なんとわかりやすいことか…。

忘れてる所も多いのでこれを参考にしてまた園様編最初から読みたいと思います。
ありがとうございました!

あと、エピローグすごく楽しみなので職人さん頑張ってください!!

81:代打名無し@実況は実況板で
07/01/05 18:02:59 tG2kDwhGO
保守

82:代打名無し@実況は実況板で
07/01/06 14:53:49 g5LqzjvCO
保守

83:代打名無し@実況は実況板で
07/01/06 16:45:40 eS948bi1O
>73-77
非常にわかりやすかった。よくわかりました。

………で、この人達何してたのwwww

84:代打名無し@実況は実況板で
07/01/06 21:15:34 BF+/G9R3O
干し柿

85:エピローグ1・F記者の終バス(1/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/07 02:33:36 qXm7ushg0
 11月も中盤に入り、外を吹く風はすこし冷たさを帯びてきている。
秋晴れの下、都内のとあるビルの非常階段の踊り場に2つの男のシルエットがあった。
柵の隙間から突き出た超望遠レンズの長い筒を、しゃがみ込んだままじっと覗き込むカメラマン。
その傍らで同じ体勢のまま、双眼鏡を覗き込むもう一人の男は某新聞の記者だ。名をFという。
2人の男がじっとしたまま観察しているのは、ビルから公園を挟んだ向こうに佇む総合病院の一部屋だ。
「いた。上から3つめの階、左から4つめの窓」
双眼鏡を覗き込んでいるFが呟く。その声に合わせてカメラマンがレンズの向きを変えた。
窓の向こうには病院の大部屋があり、ベッドが向かい合わせに並べられている。
その窓際のベッドの左側の男は、起き上がって窓の外を見つめていた。
右側の男は右足を釣られて仰向けに寝ているのが見えた。
「向かって左は……初芝、右が……」
「里崎だな。よし、撮ってくれ」
シャッターを切る小気味良い音が連続して響く。
その音を聞きながらFは双眼鏡を下ろすと、手帳を探してジャケットの胸元に手を入れる。
と、軽やかなメロディが胸元から発された。Fは胸元に入れた手でそのまま携帯電話を取り出した。
「もしもし、Fですが。あ、江尻さん。
 丁度良かった!見つけましたよ、千葉ロッテの生存者の収容されている病院」
弾んだ声で携帯電話に向かって喋りだしたFだったが、電話の向こうの男はすぐに大声でがなり出した。
「え?は?いやそう言われても、ちょっと江尻さん……ありゃ」
「どうしました」
「今すぐ帰って来いだと。冗談じゃねえや!」
舌打ちをしながらFは携帯電話を胸にしまった。
「やっぱり報道規制を破ってるのはマズイんじゃないすかねぇ」
カメラマンが困ったような顔をしながら呟く。
それを聞いてFの顔色が変わった。眉間に皺が寄る。
「なんだなんだ? 今さらそんなんに臆して何がジャーナリズムよ。
 お前だってこの事故の真相、気になるだろ?」
「それは、まあ」

86:エピローグ1・F記者の終バス(2/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/07 02:34:25 qXm7ushg0
「10日前に起きた千葉ロッテマリーンズ選手関係者を乗せたチャーター機の墜落事故。
 キャンプ地の沖大東島に到着寸前で、島に突っ込むように墜落。 
 選手、監督、コーチ、OB関係者ほとんどが死亡。同乗していた重光オーナーまで巻き込まれた。
 生存者はわずか十余名。プロ野球史上、いや航空事故史上にも残る大惨事だ」
「本当、大事件すよねぇ」
「それがどうだ? 航空会社も千葉ロッテ側もプロ野球機構も最低限の報告の後はダンマリだ。
 原因究明とか今後の対応策を検討中とか言うが、まるでやってるように見えねえ。
 そして何より、事故直後に発動した全マスコミへの超報道規制。事故に関する取材は一切禁止。
 超ど級の圧力がかかった。何も報道できん。あの江尻さんですら聞く耳持たん」
熱っぽく額に血管を軽く浮かせて喋るFだったが疲れたらしく、後ろの階段に腰を下ろす。
取り出そうとしていた手帳を今度こそ胸ポケットから出すとペンを走らせた。

 それを横目に、カメラマンはやれやれと言った様子で再びファインダーを覗く。
彼もまた、この事件が気にならないわけではない。
数日前に公開された航空写真、小さな島の中腹に飛行機が突っ込んでいるのを撮ったものだ。
機体はバラバラに砕け、発生した火災で近くの樹木や建物は焼き払われていた。
乗っていた選手のほとんどは焼死らしい。さすがにその写真だけでは分からなかった。
島は現在入港禁止になっており、そして妙なことに航空機やヘリも管制が敷かれ近づけないのだ。
だとしたらあの墜落の写真は何のために撮影し、公開したのか? 
Fはその写真を「宣材」と言い切る。
確かに、この事故には何か、あの写真には写っていない秘密があるのかもしれないと彼は考えていた。
 そのとき、今度はカメラマンのバッグから軽やかなメロディが流れた。
携帯電話を取ると、さきほどFの電話の通話口から聞こえたのと同じがなり声が聞こえてきた。
一しきり嵐が過ぎ去るのを待ち、彼は電話を切る。
「江尻さんか」
「ええ、他の仕事が入ったからそっちに行ってくれと」
と言いつつ、彼はケースバッグを開きカメラをバラし始めた。
「おいおい。なんだよ、行くのかよ」
「仕方ないですよ。業務命令に逆らうとクビだってんですもん。Fさんも言われませんでした?」

87:エピローグ1・F記者の終バス(3/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/07 02:35:15 qXm7ushg0
「バカヤロウ! 目の前に隠された真実がある。大衆はそれを求めてる。
 それを追求せずして何がジャーナリストだ!お前それでも報道の人間か!!」
あっという間にカメラをケースに収めると、紐を肩にかけてカメラマンは立ち上がる。
「それと同時にサラリーマンですからねえ。Fさんも行った方がいいですよ」
階段を駆け降りる音が響く。晩秋の冷たい風がFを通り過ぎて階段を吹き下ろした。

 Fは一人震える歯を食いしばりながら、暮れる夕日の中で病院を監視し続けた。
気づいた時には夜も遅く、病院の外来も終わる時間になっていた。
張り込んでいれば誰か関係者が来るはずだ。そこへ突撃取材を敢行するという当てがあった。
それがどうやら見事に外れた今、Fはやっと重い腰を上げ家路に着くことにする。
電車を乗り継ぎ、自宅の最寄りで降りたFはいつも通りの小さなバス停に立つ。
都心から1時間半、通うには遠いが住むにはのどかでいい街。ここが彼の暮らす所だ。
もうすっかり夜が暮れている。益々冷え込みが厳しく、季節外れの冷え込みをFに思い知らせる。
こういうときは温まるに限る。近くにある自販機でワンカップの酒を買うと一気に煽る。
心持ちポカポカした気分が身体を包み、Fはその日の悔しさを改めて愚痴り始める。
一しきり愚痴り終わった頃、彼の待っていたバスが到着した。
乗客は彼一人だった。それをいいことに彼はバスの一番後ろの席に座り、声を張り上げた。

88:エピローグ1・F記者の終バス(4/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/07 02:36:19 qXm7ushg0
「ちくしょー……俺だけはこの事件に徹底的に、てってーてきにー、食らいついちゃる。
 悪魔がいるか鬼がいるか、こんなときこそ名を上げるチャンスだぜ、いえーい!!」
バスの運転手が小声で何かをマイクに呟く。鋭い眼光が後ろにいるFをちらりと向いた。
彼を乗せたバスが運行表に乗っていないことにFは気づいていなかった。
表示された目的地に向かう予定がないことにも。
F記者の消息は、その後一切が不明となっている。
この時期、全国でゴシップ誌所属あるいはフリーの記者などが何人か消息を絶った。
これらの一連の件についても、マスコミ各社で報道されることはなかった。

 数日後、千葉ロッテマリーンズは日本プロ野球機構と共同で記者会見を行った。
オーナー会議で来季以降のマリーンズに関する特例事項が正式に承認されたのだ。
『外国人選手枠を一時的に拡大。また他球団からの無償でのトレードの実施。
 但しこれらはロッテ在籍経験のある選手に限る』
時を同じくして仙台にも新規参入球団が誕生する中、この優遇措置を非難するものはいなかった。
世間は圧倒的に同情と応援の視線でマリーンズを見ていたし、ロッテ以外の他球団は―
ロッテ本社が今回の事件によって得た莫大な額の金銭が裏で働いたため、この措置を快諾したのだ。
 ロッテグループの新しい総帥にしてマリーンズ新オーナー重光昭夫はまだ胃の痛い日々を過ごしている。
彼の腹にあった爆弾は胃を破り、臓器と血管の間を縦横無尽に走り回っていて手が出せない状態である。
外国人も含め生き残った選手達からの丁寧な脅迫。彼らの要望は重光昭夫を通し、この特別措置で叶えられた。

千葉ロッテマリーンズは、存続されたのである。

89:代打名無し@実況は実況板で
07/01/07 14:55:35 XJAqO0bzO
乙です!エピローグ"1"と書いてあるということは、2,3もあると期待していいんですかね?

90:代打名無し@実況は実況板で
07/01/07 19:07:33 HgpwWG1bO
乙です〜!
さあ、物語はいよいよフィナーレへ…

91:代打名無し@実況は実況板で
07/01/08 15:44:23 J4qPajZyO
ホ・シュ

92:代打名無し@実況は実況板で
07/01/09 09:24:56 ynkyoSFu0


93:代打名無し@実況は実況板で
07/01/09 11:57:04 78S4Sl1C0
福浦VSズレータ

94:エピローグ2・欄干の上(1/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/10 01:07:48 vntTOdXj0
 千葉マリンスタジアムの正面、チケット売り場の前辺りに誰かが花を置いた。
その花が片付けられる前にまた一つ、また一つと誰かが花を置いた。
時にはグローブを、ボールを、手紙を、ユニフォームを、酒を、タバコを置く者もいた。
あの事故が起きて以来、千葉マリンの正面には悲しみに暮れる人からのたむけが積まれる。
それを見て球団側がそこに正式に献花台を設置し、定期的に供物は片付けられるようになった。
それでもなお、途切れることなく今日も花が置かれる。

 事故の発表から二週間、夜も暮れるとさすがにそこは今までの人通りのない場所に戻る。
肌寒い潮風に供えられた花が揺れている。
 コツコツとコンクリートの地面を歩いてくる二つの足音がある。
一人が献花台の前で花を供えると、少しそこに佇んだ後、すぐに踵を返す。
「おい、もう行くんか」
「いつまでおってもしゃーない」
足早に駅の方向へと歩き始めた西岡剛を、花を供えていた今江敏晃が慌てて追いかける。
木に挟まれた入り口を抜け右へ。まだ足早に。
「おい、西岡」
追いついた今江がすこし非難めいた口調で呼ぶが、西岡は答えない。
歩道橋の真っすぐなスロープを更に早足で、まるで逃げるみたいに上って行く。
「もっとゆっくり歩けや。どうしたんや?」
ついに走って追いついた今江が西岡の肩を掴む。
うつむき加減、前傾姿勢で早歩きだった西岡は少しバランスを崩し、振り向きながら立て直す。
「あんなのは自己満足ですわ。俺らが今さら花なんか供えて。
 成仏してくんなはれ〜とか? どのツラ下げて」
キッと睨む西岡の目が丁度よく街灯の光を反射して、今江は少し見入ってしまう。驚きもあった。
その様子を見て西岡はハッとする。
「すいません」
うつむいて呟く。今度は街灯の光のせいで、顔全体が影に包まれた。
「あれから、たまになるんです。時々、我を忘れるっていうか、俺がどうにもならなくなる。
 さっき俺が花添えたとこ。誰が置いたんやろ、晋吾さんのユニ」

95:エピローグ2・欄干の上(2/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/10 01:09:44 vntTOdXj0
そう言ったまま下を向いて押し黙る。所在無さげにそこに佇んでいる。
今江もまた何も言うこともできず、ゆっくりと西岡の横を歩く。
もうスロープは終わりかけ、歩道橋の上の方まで来ていた。

「俺、死なれへん。こんなヤツ死んだらええと今でも思うてます。
 けど死なれへんのや。あんな約束してもうたから。生きてく自信ないのに、死なれへん」
下を向きながら西岡は吐き捨てるように言い立てる。周りには誰もいない。
スロープの床の細かい凸凹が光と闇のコントラストで模様を作る。
それに見入ってしまったのか、頭が熱っぽくなって思いが止め処なく溢れてくる。
「死ぬ前にマリーンズの誇りがどうとか言われたけど、俺は信じらん。
 俺にやれ言うんや。俺に……そんなん……そんなことできる奴やないんや!
 無理や。こんな俺が……そう思いませんか?」
しばしの静寂。返事がない。きっと今江も答えに逡巡しているのだろうと西岡は思った。
少し後ろ、今江の居る方からガッと何かを蹴る音がした。それに思わず振り向く。
「うお?」
思わず素っ頓狂な声を上げた西岡の前にあった光景。
街頭の光を背に、歩道橋の欄干の上に片足だけで立つ今江の姿。
大きな体を小刻みに振り、両手を広げてバランスを取り続ける。
「おっととと」
「何してん、アンタ?」
どうにか重心が落ち着き、今江は両足を縦に欄干の上に置きピタリと静止する。
両手は横に真っすぐ広げたままだ。顔だけが西岡のほうへ向いてる。
街灯を背にして顔はほとんど影だったが、どうも今江は微笑んでいるようだった。
「左と右、どっちに行ったらええかな?」
そう言う今江を見て西岡は目を白黒させる。
今江の右は歩道橋の床である。1mほどの高さしかない。
だが左といえば3階はあるかという高さで、下を自動車が駆け抜けている。
「言うまでもないやろ。右や。何ふざけて」
「俺はどっちも行けないと思うんや」

96:エピローグ2・欄干の上(3/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/10 01:10:59 vntTOdXj0
今江は少し上空を見る。そして少し身体を揺らしながら左腕をわずかに振る。
「こっちは死の世界。飛び込もうと思ったら、簡単に飛び込める」
左腕を止めると、今度は右腕を振る。
「こっちは死ぬなんてことのない安全な世界。生きようとか死のうとか考えなくてもいい。
 ここにいれば、ただそれだけ。のほほんと普通に生きてる。今までの俺たちや」
右腕の振りを止める。そして今江はゆっくりと、両腕を下ろし欄干の上で直立して見せた。
「死のう思うて右から左へ、ここを飛び越えようとしても行かれへん。
 それはそうする理由と一緒に、死ねん理由があるからや。だからここ、俺たちはここにいる」
欄干の上で、今江は西岡を見下ろして話す。
「俺も自分のこと信じられん。生きてくのに自信なんかない。
 でも託されたから。お前より多くな。
 それでここに居るしかないんやったら、この上を歩いていこうと思う」
「その上に乗って歩いてって、どうなるっていうんですか?」
問う西岡に、今江は分からないといった風に首を振る。西岡はそれを見てまた顔を曇らした。
今江はそれを見て、西岡のほうに手をスッと伸ばした。
「なんならお前も上ってみろ」
「えー?」
渋々と、しかし身軽に西岡も歩道橋の欄干に登る。今江よりも早くピタリと立ってみせる。
西岡は周りを見渡した。
先ほどまで見上げていたはずの光景はなくなり、歩道橋も街も、全てが光に照らされて見える。
弱い風が吹き抜ける。遮るものがなく、それを肌で全て感じる。
「……見晴らしはいいすね」
「そうやな、たぶん、上がってみんと一生気付かんと思う」
「歩いていけるんすか、こんなとこ」
「綱渡りや。スリルだけはあるな」
「歩いて何があるんすか」
「気にしてもしゃーない。ここしか歩けるとこなんてないし」
「何が悲しくてこんな危ないとこ歩かんと」
「あの人らのせいや。俺に言うな」

97:エピローグ2・欄干の上(4/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/10 01:13:16 vntTOdXj0
ビュン。
「おおっ!?」
突然吹き上げた風に、二人の身体が大きく揺れる。
西岡は慌てて今江の肩を掴む。両腕を回していた今江はやめろと叫びながら片足を上げた。
二人の男の悲鳴と、大きな音。
わずか1mの高さ、歩道橋の床に並んで尻餅をつく二人の男がいた。
「いてて。西岡、お前いきなり掴むなよ」
「上らしたのはゴリさんでしょ。しっかり立って手すりになってくださいよ」
「お前の方が身軽やろ。人を頼んな!」
「身軽から風で煽られてん。浮くんや!」
「あ、なるほど」
どちらから吹き出したのだろう。二人はいつの間にか声を上げて笑っていた。
心の底から笑いがこみ上げてきた。笑いが止まらない。
目に映るのは幕張の夜空ときらめく街灯だけだ。
 西岡がふと横を見ると、歩道橋の欄干が目のすぐ脇から、遠くまで遠くまで伸びている。
まだ歩き出すには時間がかかるかもしれない。また迷うかもしれない。
だがこの道を、真っすぐ伸びる細いこの道を、歩いて行くのは自分一人ではない。
落ちそうになれば肩を掴んで支え合える。たぶん、次からは。
顔を手の平で拭うと、街灯の光に合わせて腕時計をちらりと見た。
「ゴリさん」
「なんや」
「今日まだ時間あります? ちょっと飲み行きませんか」
「なんや、オゴってくれんのか」
「あほか。ワリカンに決まってるやないですか」

98:代打名無し@実況は実況板で
07/01/10 01:45:39 Qud2kuPK0
晋吾のユニフォームのところでぐっと来た
自分のレプリカも29番だから余計に…

99:代打名無し@実況は実況板で
07/01/10 16:54:15 lSpE6TVAO
乙です!

そっか…、みんなもういないのか…(´;ω;`)

100:代打名無し@実況は実況板で
07/01/10 17:54:40 MHqvRDgY0
職人さん乙です。

101:代打名無し@実況は実況板で
07/01/11 07:21:28 hfkMygMM0
切ないねえ

102:代打名無し@実況は実況板で
07/01/11 22:48:45 EMlPdn63O
乙です。
そうか…ワリカンか…

103:代打名無し@実況は実況板で
07/01/12 12:33:24 OGsuL9W8O
     _
 ▼^   `▼
 イ fノノリ)ハ  保守…
  リ(l|゚ .゚ノlリ
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/

104:代打名無し@実況は実況板で
07/01/12 20:05:33 4P8SnzJD0
     _
 ▼^   `▼
 イ fノノリ)ハ  保守…
  リ(l|゚ .゚ノlリ
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/

105:代打名無し@実況は実況板で
07/01/13 22:42:04 t3y8JWR6O
閉鎖される前に、せめてマリバトだけは最後まで見たい…

106:エピローグ3・冬の浦和で(1/3) ◆QkRJTXcpFI
07/01/14 01:44:48 ZVIvPTMg0
 1月に入り、木々から色づいた葉が残らず散った。近くの風景は一様に寂しげだ。
ただ一つだけ季節の中で変わらないものもある。冷たい風に乗って運ばれてくる甘い匂い。
ロッテ浦和工場のほどなく近く、のどかな住宅街をロッテ浦和球場へと向かう一人の男がいた。
大き目のスポーツバッグもトレーニングとばかりに両肩に紐をかけ早足で小気味よく歩く。
時折、背中の右の辺りをさすっては、周囲の風景を確かめるように立ち止まる。
ふとすぐそばの家の庭に生えている梅の木が目に止まった。
帽子を被った彼は、その影から木の枝を穏やかな目で見つめている。

 遠くから車がやってくる音が聞こえた。男は後ろを振り向かず道の脇へ身体を寄せる。
しばらくして近づいてきた車の音はなぜか小さくなり、彼の横でブレーキの音がした。
なんだろう?とそちらを向くと、タクシーの後部座席から彼の知った顔が降りてきた。
「平下、こっちに来てたんか! 奥さんに聞いたで」
「薮田さん?」
タクシーから降りてきた薮田安彦の肩が、寒さで思わず震える。コートの襟を首回りに寄せた。
それを呆けた顔で、口から白い息が漏れ続けるのも気に留めず、平下は見つめていた。
お釣りはいらないと言われたタクシーの運転手はニコニコし、車は去っていった。
後に残されたのは二人だけ。冬の平日の昼間、住宅街に人の通りはほとんどない。
薮田の表情が少しこわばっていて、平下は少したじろぐ。
しかしすぐに、彼の視線から何か察したか、平下は穏やかな表情に戻った。
「どうしたんすか、薮田さん?」
「瀬戸山さんに聞いたんや、お前……」
「ええ、仙台に行きます。新球団に」
薮田の目が少し大きく、顔が仰け反ったのが分かった。絶句しているのも。
それを見て平下は少しすまなそうに、しかし穏やかな表情のまま口を開く。
「昨日、正式に決まりました。今日の夕方には発表されます。
 代わりに誰がこっちに来るかまでは知りませんけど」
「なんでや、どうしてお前だけトレードなんか」
「志願したんですよ、俺から」
平下は真っすぐに薮田を、更に困ったような顔に変わった薮田を見つめていた。

107:エピローグ3・冬の浦和で(2/3) ◆QkRJTXcpFI
07/01/14 01:46:48 ZVIvPTMg0
その予想通りの表情。とはいえ、できれば見たくなかったのが本音だ。
平下は少しうつむき、頭をかいて、また薮田に顔を向ける。
「マリーンズは残る。生き残ったもんで力を合わせてやっていきましょってときに、ね。
 やっぱり何人も進んで殺したヤツが居ったら、難しいでしょう。せやから」
「そんなことないっ! お前は仲間や!」
薮田が叫ぶ。冬の冷たい空気が張り詰める。
頬にまでその声が、衝撃波のように当たる感触がして平下は思わず圧倒された。
しかし平下は一つ白い息を吐くと、目は少し寂しそうにニコリと笑った。
「うん、そんな薮田さんやから大丈夫やね」
「おい、何を言って」
「もう決まったことです。俺が決めたことです。せやから、見送ってください」
平下の笑顔に薮田はまた驚いた。平下は迷いのない、本当に穏やかな目をしているのだ。

 薮田は、心から自分仲間だと思ってくれているだろうと平下は思う。
だけど、生き残った全員はそうは思わない。きっと、自分を快く思わない者はいる。
当然だ。自分はそれだけのことをしてしまったのだから。
そんなとき、板ばさみで一番辛い思いをするのは薮田だろう。
自分をかばいさえするかも知れない。
そういう人間だからこそ、自分のわがままで残って迷惑かけたくないと平下は思う。
この人と優勝を目指したい。そんなわがままで。
だがそれだけではない。自分の胸に浮かんだ希望を平下は叶えに行くのだ。
それは傷も癒え退院し、虚無の中で日々過ごしていた平下にある日浮かんだ夢。

「俺は仙台で、新しいチームで優勝目指します。
 あそこには、俺みたいなあぶれもんと、そして藤井寺での仲間もおります。
 新しく、俺の居る場所も一から全部、これから作りたい思うてます」
「平下……」
「それが俺の夢です。いや、ずっと夢やった。
 それってきっと自分の力で叶えるもんや。せやから、薮田さんの力は借りません」

108:エピローグ3・冬の浦和で(3/3) ◆QkRJTXcpFI
07/01/14 01:49:26 ZVIvPTMg0
薮田の顔が少しほころんだ。少し呆れた様子でもある。
コートのポケットに手を突っ込んだまま、肩を上げて首をすくめる。
「お前って人間は自分で何でもやろうとして、強いやっちゃなあ。疲れへんのかい?」
「俺なんか強くありませんよ。ずっと、今も今までも自分のことで手一杯や。
 自分のことばっか考えてる。本当に強いってのは……」
平下が言いかけて少し吹き出す。どことなく照れているようだった。
「何笑ってるんや」
「すいません、はは」
笑いながら目の前の男を、不思議そうな困ったような顔で立つその男を、少し横目に見つめる。

「来年は千葉も仙台も似たようなもんです。優勝どっちが先か、競争すね」
「負けへんで。ワイらは必ず優勝する。そんで死んだヤツらが…」
一瞬、薮田が言葉に詰まる。地面を見据えて、平下に顔を覗かせない。
「ここに居ったんやと。みんなが居ったマリーンズは最高のチームやって。
 ワイらは野球で証明したる。みんなのマリーンズはここに在るって証明するんや」
平下はしばし無言だった。うつむき、しかし固く拳を握る彼を見つめていた。
死んだ者にまで彼らの居た場所を、彼らの居た意味を案じる。それを背負うことを厭わない。
もし自分がもっと早くこの男にと、思いかけて平下は自ら首を振った。
「やっぱりアンタには敵わん」と小さく呟いて、浦和球場へ歩き出そうとおもむろに身を翻す。
顔を上げた薮田の目に、背を向けて手を振っている平下が映る。
と、平下が何か思い出したように首だけをクルッと回して振り返った。
「あ、そうや。イイこと教えましょ」
「ん、何や?」
少し距離を離れ、また二人が目を合わせた。
「戸塚さんに酒飲んでマウンド立たしてみてください。面白いもん見れますよ」
「……戸塚?」
そう薮田が問い返す前には、平下はもう薮田に背を向けていた。背中は徐々に遠ざかって行く。
すぐそばにある梅の木の枝には、ちらほらとつぼみが膨らみ始めている。
薮田は頭をかいて、また困ったような顔をして平下の背中を見つめていた。

109: ◆QkRJTXcpFI
07/01/14 01:51:19 ZVIvPTMg0
※注 エピローグの時系列は前後するかも知れません。

110:代打名無し@実況は実況板で
07/01/14 01:57:45 8ydPiwAG0
おぉ、久々にリアルタイム投下に遭遇した!
平下、行っちゃうのか…てか、最後になんつうセリフを残していくんだよw

111:代打名無し@実況は実況板で
07/01/14 07:30:17 /KwkJYfvO
乙です。
平下…行かないでよ(´;ω;`)

112:代打名無し@実況は実況板で
07/01/14 21:11:08 yLf5nj1eO
平下…(´・ω・`)
そして未だに名前間違われてるしwwww戸塚てwww

113:代打名無し@実況は実況板で
07/01/15 00:52:19 bX+x36XKO
ヽ´_J`)<……

114:代打名無し@実況は実況板で
07/01/15 06:54:47 2aAUxe3i0
平下…なんかカッコいいぜ。
最初はあんな憎たらしかったのになぁ。

115:代打名無し@実況は実況板で
07/01/15 10:14:34 oQEiQx6I0
2人ともカッコイイな(つД`)

116:代打名無し@実況は実況板で
07/01/15 19:00:47 b+cMlP6PO
くそ…
BBHでマリバト仕様のロッテ…は無理そうだからマリバト仕様、ホセ・リック抜きで平下入りの楽天作りたくなっちまったじゃねーか…
コソーリ純もいれてやるからな…('A`)

117:代打名無し@実況は実況板で
07/01/15 23:10:11 L8as3AYRO
俺ら〜は〜さ〜けぶ〜
打て福浦〜打て福浦〜

118:代打名無し@実況は実況板で
07/01/15 23:22:20 2aAUxe3i0
>>116
純も入れてやるって、泣けるなあ


119:代打名無し@実況は実況板で
07/01/16 14:38:34 rx61nAdHO
     _
 ▼^   `▼
 イ fノノリ)ハ  保守…
  リ(l|゚ .゚ノlリ
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/

120:代打名無し@実況は実況板で
07/01/17 10:28:24 m9Glltj3O
     _
 ▼^   `▼
 イ fノノリ)ハ  保守…
  リ(l|゚ .゚ノlリ
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/

121:代打名無し@実況は実況板で
07/01/18 08:47:32 Xs2sLXeDO


122:代打名無し@実況は実況板で
07/01/18 14:13:57 Xoytj+TH0
     _
 ▼^   `▼
 イ fノノリ)ハ  保守…
  リ(l|゚ .゚ノlリ
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/

123:代打名無し@実況は実況板で
07/01/18 20:06:51 irJiTnlG0
     _
 ▼^   `▼
 イ fノノリ)ハ  保守…
  リ(l|゚ .゚ノlリ
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/

124:代打名無し@実況は実況板で
07/01/19 12:10:43 ir/600LRO


125:代打名無し@実況は実況板で
07/01/19 21:52:17 kSE3CQvzO
声え〜ん〜う〜けて〜
打て福浦〜打て福浦あ〜ぁ〜

126:代打名無し@実況は実況板で
07/01/20 13:36:38 3xsXTitNO


127:代打名無し@実況は実況板で
07/01/21 18:17:23 kd0XewVUO


128:代打名無し@実況は実況板で
07/01/22 08:25:48 ADz9veuiO
杉山

129:代打名無し@実況は実況板で
07/01/22 11:24:24 381IJAU9O
俺のレプユニ背番号93

130:代打名無し@実況は実況板で
07/01/22 21:51:14 LDkHd3PO0
     _
 ▼^   `▼
 イ fノノリ)ハ  保守…
  リ(l|゚ .゚ノlリ
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/

131:代打名無し@実況は実況板で
07/01/23 14:52:57 Hn9xSeiJO


132:エピローグ4・精密機械(1/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/24 00:15:58 vrRy9E6h0
「…やっぱりしぶとい奴だな、お前は」
そのベッドの脇に佇み、メガネをかけた細身の男はうつむきながら呟いた。
自慢の髭は今日の朝、4日ぶりに整えたものだ。
小宮山悟はしばらく自分の前に眠る男を見つめていた。
ベッドに仰向けに体を埋める初芝清。腹部の銃創の手術が終わり、今は眠っている。
酸素マスクが数秒ごと、等間隔で曇る。その寝顔は安らかだった。
もう会えないものだと思っていた彼は、こうして目の前にいる。
小宮山は身を翻すと、革靴の底で病室の床を鳴らす。
几帳面な彼らしい規則正しい音が響く。その彼の両脇にもベッドは並ぶ。
彼のチームメイト達が、その傷をやっと癒しているところなのだ。
まだ集中治療室にいる者もいるという。
小宮山は右手をスーツの左袖に添える。そっと離すと、右手の五本の指を入念にほぐした。

 脱出が成功し、船で近くの島へ行き着く前に彼らは救助された。
迎えが来たと言った方が正しいかも知れない。大きな船から知った顔が覗いたのだ。
ゲームは終わったのだと彼は言った。もっと早く来ていればと謝ってもいた。
その船に乗るやいなや、怪我人達はすぐにヘリで病院へと運ばれた。
大した怪我のない小宮山などはそのまま船で本土へと帰ったらしい。
らしい、というのは、救助されてすぐに小宮山は気を失って昏々と眠り続けたからだ。
 目が覚めたときに彼がいたのはとあるホテルのベッドの上だ。
起き上がった小宮山の傍らには、船の上から彼に謝っていた男がいた。
「起きたかい?」と李承■が尋ねると、少し放心の間を置いて小宮山は頷く。
「頼みがある」
起き抜けで髭もざんばらに伸びた小宮山の目が一瞬で覚めるほどの目つき。
その目つきが意味する重さが否応にも量られて、小宮山は沈黙して次の言葉を待った。
「チャンスは一度しかない」

 病院を出た小宮山を待っていたのは黒塗りの外車だった。運転手がドアを開けていた。
いかにも金持ちの、そして悪どいことをやり果たした人間の乗りそうな黒塗りの窓。
車に乗り込むと車はすぐさま動き出す。小宮山はまた左袖に手を当てた。
袖につけられたカフスボタンは何故か一つだけだった。その小さな感触を何度も確認していた。

133:エピローグ4・精密機械(2/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/24 00:18:10 vrRy9E6h0
「やあ。ささ、入りたまえ」
何層ものドアをくぐり、案内された部屋は少し薄暗い。
三度のボディチェックは、小宮山が全身に武器をまとっていないことを念入りに確かめた。
それだけの警戒を払いながら、なおも彼に会おうとする人間がそこにいた。
入った瞬間の音の反響でその部屋の広さが分かる。
奥に細長く伸びた部屋に、細長いテーブルがある。
その一番向こうに、大柄な男達に囲まれ老人が椅子についていた。
「ずいぶん身ぎれいじゃないか」
「一日の猶予をいただきましたから。失礼のないようにと」
上下のダークグレイのスーツ、そして整えられた髭と髪型。
一昨日まで熾烈な生存競争の渦中にいたはずの姿は見る影もない。
そんな小宮山の様子にその老人は少し不満げな様子だった。
「せっかく会うのを楽しみにしとったのに」
「泥と返り血を浴びたユニフォームで参じた方がよろしかったですか、ナベツネさん」
「くかか」
笑ったようだが、その眼鏡の奥の瞳までは見えない。だが渡辺恒雄の口の端は上がっていた。
「まあよい。生き残った者の中で怪我も軽く、年長者でもある君に来てもらったのは他でもない」
細長いテーブルを挟んで二人は動かない。渡辺は椅子に座ったままだ。
一方の小宮山はすぐ傍の椅子に目もくれず、そこに佇んでいる。
両者の距離はそのテーブルの奥行き分、およそ二十メートルほどである。
「マスコミは今回の件を飛行機事故として報道することになっておる。漏れることはない。
 懸命な小宮山君なら分かるだろうが、マスコミだけでなく政府も抱き込んでおる。
 即ち君達の犯した殺人の秘密は守られるというわけじゃ」
「あなた方が犯させた、でしょう?」
一瞬、沈黙が両者の間を駆け抜ける。しかし渡辺は悪びれることなく口に笑いを含んだ。
「どちらでも構わん。重要なのは今回の件を明らかにされるのは誰も望まんという話だ。
 貴様らはただ黙っていればいい。暴露や、まして復讐などと馬鹿なことを考えるな。
 それを生き残った奴らにも伝えておいてくれ。それが要件だ」
小宮山が左手の拳を握り、振り上げそうになるのを自らの右手で抑える。
力が拮抗して両腕が震えた。うつむいた顔から渡辺を見据える視線が突き刺さる。
渡辺は初めて満足げな顔を浮かべた。

134:エピローグ4・精密機械(3/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/24 00:21:46 vrRy9E6h0
「やはり死線をくぐるのは男を良い顔にさせるな。
 だが武器もなくこの距離をどうにかできると思わんことだ」
それは小宮山も理解している。渡辺の周囲を囲むガードマンがずっと彼の動きを見張っていた。
おそらく渡辺に向かって走り出せば、テーブルの半分も行かない距離で彼は殺されるだろう。
「たかが選手ふぜいが大それたことを考えるな。なに、マリーンズは存続させてやる。
 重光の倅が突然頼み込んできて、分け前を随分多めにくれたんでな。
 貴様らはそれで満足なんだろう、うん?」
薄ら笑いを浮かべ、渡辺は眼鏡の奥で目を細める。
小宮山は左手を右手で押さえたままの体制で黙っていた。もう腕は震えていない。
「分かった。みんなに伝えておく。だが一つだけ条件がある」
「ほう、なんだ?」
「その分け前とやら、俺にだけでも入ってこないのか? 命をかけたってのによ」
小宮山が少しだけ微笑を浮かべていた。少し左肩を前に出し、半身で渡辺に向く。
渡辺はそれを聞いてしばし不思議そうな顔をしたあと、みるみるうちに顔が歪んでいった。
「くかかかっっ。こりゃあ傑作だな!
 そうだな、所詮そうよな、金よな! 人間なんぞ、くかかか!!」
渡辺が目を細め、腹の底からの笑い声を上げる。大きく口を開けながら。
小宮山はその瞬間、左袖のカフスボタンを引きちぎる。一つだけの銀のカフスボタン。
いや、それはカフスボタンのように見えた、銀の小さな物体だった。
それを掴んだ右手はクイックモーションで、人間の目に止まらぬ速さで円い軌跡を描く。
その指先から放たれた銀は矢のように、一直線に渡辺の口に飛び込んだ。
渡辺の喉から空気を飲み込んだ大きな音がしたかと思うと、苦しそうに咳き込み始めた。
「きさ……がっ、何を……うげほっ! げほっ!」
間髪を入れずにガードマン達は銃を取り出す。ある者は小宮山を抑えようと走り出す。
だがそれよりも速く小宮山は内ポケットから携帯電話を取り出した。
「これは発信機爆弾のコントローラーだ」
ガードマン達の動きが止まる。同時にそれを聞いた渡辺の瞳孔が開く。
「なんだと……!」

135:エピローグ4・精密機械(4/4) ◆QkRJTXcpFI
07/01/24 00:25:51 vrRy9E6h0
「携帯にカモフラージュしているが、例の小型爆弾の爆発コントローラーだ。
 そうナベツネさん、あなたが今飲み込んだね」
「そんな話を信じるとでも……」
「コントローラーは複数ある。私がここから帰らなければ仲間の手でスイッチオンだ。
 重光さんの腹の中にあるのもついでに、な」
小宮山はコントローラーを高々と掲げ、そしてそのスイッチに手を触れる。
強がっていた渡辺の表情が崩れ、一瞬で青ざめる。小宮山はコントローラーごとポケットに手を突っ込んだ。
「その爆弾を腹に抱え込んでいくんだ。俺たちと同じにな。
 もっとも俺たちの爆弾のコントロールシステムは壊れてるがな。
 あなた達は一生あのゲームを味わうんだ。禁止エリアがないだけマシだが」
「な、何が目的なんだ、貴様」
「……生き残った者は、それぞれがそれぞれの目的を決める。
 その自由が奪われないために俺はここに来た。ま、年長者なもんでね」
と、渡辺がうずくまり腹を抑える。激痛に顔が歪み始める。
「いた、うぐぁ……いたたた… 医者だ、すぐに医者を呼べ。
 そうだ、手術で取り出せば」
「その痛み、もう胃壁を発信機が破ったんだろう。そうしたらそいつは体内を動くそうだ。
 医者が切っても切ってもすぐに動いて腹はズタズタになる。
 まして精密機械だ。ヘタにショックを与えでもしたら……」
渡辺の顔がひきつった。そのまま眼球が震えたかと思うと、口から泡を吹き前に突っ伏す。
ガードマン達に抱えられ顔を上げると、白目を剥いていた。

 その騒ぎを尻目に小宮山は部屋を出る。彼を止められるものはいなかった。
外まで続く廊下を歩く間、彼は右腕が今さら震え出すのに気付く。
あのとき、渡辺の口を狙って投げた発信機がもし外れていたらと思うと震えが止まらない。
右腕をじっと見る。しばらくして、ようやく震えが収まってきた。
ふと数日前、生き残るために引退を口にしたことを思い出す。遠い昔のような気がした。
右手を何度か開いては閉じ、最後に強く握り締める。
『精密機械』―それが彼の右腕についた名前だ。

【※■は火へんに華】

136:代打名無し@実況は実況板で
07/01/24 01:00:28 h+seQD6u0
職人さん、そしてコミさん、乙です…!

137:代打名無し@実況は実況板で
07/01/24 02:07:38 vvhrQgoEO
職人さま乙です!

コミさん…かっこいいいいいい!!

138:代打名無し@実況は実況板で
07/01/24 05:33:56 BlE8EIAcO
職人さん乙です。

コミさんかっこいい…。俺の体の震えが止まらない…!

139:代打名無し@実況は実況板で
07/01/24 12:26:40 gVa/v6Z4O
職人様本当に乙です。
コミさん…流石クレバーな男だ。

140:代打名無し@実況は実況板で
07/01/24 21:07:21 GXL9Iu6t0
職人さんおつです。

コミさーん!あんた本物の男だよ!

141:代打名無し@実況は実況板で
07/01/25 02:23:39 hXWmLI0f0
>【※■は火へんに華】

どうしてもここで吹いてしまうwww

142:代打名無し@実況は実況板で
07/01/25 21:45:38 kuHd00oC0
オー・ヤリチン

143:代打名無し@実況は実況板で
07/01/26 09:08:39 B0iFR3rEO
(訳:だから彼の名前はベニー・アズマンガだって!)

144:エピローグ5・僕は(1/5) ◆QkRJTXcpFI
07/01/27 00:09:01 ds3XBCUF0
「監督ぅー、ちょっとよろしいですか?」
よく晴れた空の下、千葉マリンスタジアムにはいつもより一際強い風が吹いていた。
気温はずいぶん高くなってきているとはいえ、やや肌寒い風の中で悠然と佇む一人の男がいる。
慣れない呼び名に、それが自分のことだと気付いていない様子だった。
「もしもし? 聞こえてらっしゃいますか? 園川監督っ!」
「ああ? ああ俺か。なんだ?」
「なんだ、じゃなくて。明日の先発は誰にするんですか?」
「いつも通り」
「またですか!?」

 オープン戦が始まっていた。今日はオフだが、明日はここ千葉マリンで試合が行われる。
一人グラウンドに立ちながら練習風景を見つめるのは新監督の園川一美である。
再出発を図るマリーンズの監督には彼が就任した。他に適任者がいなかったのである。
「本当にテキトーなんだから…」
ぶつくさと小声で文句を言いながら園川から離れて行く球団スタッフ。
しかし園川はそんな声も意に介さず、何事か考えているように腕組みをして立っている。

「コーチ、初芝コーチ!」
「はいはーい」
室内練習場に入ってきた先ほどの球団スタッフは入口に初芝清の姿を見つけた。
初芝は怪我の後遺症を理由に引退を決め、そのまま守備コーチに収まっていた。
「コミさん見なかった?」
「練習用ブルペンの方にいると思うよ」
球団スタッフがブルペンの方へと向かう道すがら、幾人かの選手とすれ違う。
新入団の久保康友と手嶌智が礼儀正しく挨拶をして行った。
ミンチー、セラフィニ、シコースキーが談笑している。
ブルペンには無償トレードで移籍してきた前田幸長や田中充が投げ込みを行っている。
それを受けるのは里崎智也や、新入団の青松敬鎔などである。
そして彼はブルペンの一番奥にやっと小宮山の姿を発見した。
「小宮山コーチ!探しましたよ」
「あのな」
小宮山がこちらを振り向く。と同時に不満そうな顔を向ける。

145:エピローグ5・僕は(2/5) ◆QkRJTXcpFI
07/01/27 00:11:05 ds3XBCUF0
「俺はどっかの誰かさんと違って選手兼コーチなんだよ。普通に呼んでくれ」
「そんなことより明日の先発なんですが……」
「……またか」
そう、ここまで先発ローテーション含む投手起用は全て小宮山が決めていたのである。
園川からは一切指示なくオープン戦の投手起用はなされていた。
「ちょっと考える時間をくれ」
そう言って小宮山はブルペンを後にした。入れ替わりに初芝が入ってくるのを無視して。
「どっかの誰かさん登場!……って出てっちゃった」

「あ、はつしばさん!」
「おう、調子はどうだい」
初芝の登場に歓喜の声が上がる。彼はそれまで小宮山に見守られ黙々と投げていたのだ。
成瀬善久が跳ねるような仕草で初芝を出迎えた。
「こら成瀬、あと3球で終わりなんだから!」
「あ、ごめんなさい!」
向こうの方から声が聞こえた。復帰した椎木匠がミットを構えている。
成瀬はすぐにプレートに足をかけ構える。高く足を挙げたかと思うと鋭く腕が振られる。
空気が細かく震えるような小気味良い音がブルペンに響いた。
「ほう……」
初芝は久しぶりにじっくり見た成瀬の球に心を奪われた。
左腕の怪我は既に治っているが、なるべく負担の少ないフォームを追求した。
リハビリも兼ねてオフの間もトレーニングに人一倍時間を割いた。
一緒に自主トレを行った初芝のアドバイスでもあったが、キャンプでそれが実を結んだようだ。
驚くほどのキレのある直球は、速さ以上の打ちづらさがあることを初芝の経験が教える。
「どうですか?ぼくのとうきゅうは」
「素晴らしい球だね。充分に戦力になるよ」
「ほんと!? ……でも、このまえのしあいは、のっくあうとされました」
そう、これだけの球を持ちながら先日の試合でリリーフした成瀬は大炎上したのだ。
マウンドに上がるやいなや落ち着きのない様子で、終始腰の引けた投球内容だった。
あの死線をくぐったにもかかわらず、いや、くぐったからこその今の彼がある。
闘うには優しすぎる人間になってしまった。それが今の成瀬だった。
落ち込む成瀬を励ましながら、初芝は彼をどう勇気付けるか思案し続けていた。

146:エピローグ5・僕は(3/5) ◆QkRJTXcpFI
07/01/27 00:12:43 ds3XBCUF0
 ブルベンを後にして、初芝はグラウンドに戻った。
内外野の守備の連携を練習している最中だったのだ。
もっとも守備コーチのはずの彼を抜きに練習はサクサクと進んでいたが。
グラウンドには西岡剛や今江敏晃、トレードで戻ってきた酒井忠晴に立川隆史。
ベニーとマット・フランコ、フリオ・フランコにイ・スンヨプ。
新入団の竹原直隆と大松尚逸も、一際大きな声を上げている。
それにしても野手が少ない、と初芝は改めて思った。
特例として外国人枠は元ロッテ在籍選手ならば7人まで使えるとはいえ、まだ不十分だ。
頭数こそ足りているが、互いにまだ慣れない面子も多い。チームとして形を成していないのだ。
その結果はオープン戦のここまでの戦績に現れている。現在まで0勝5敗。
投手起用が固まらないことも手伝っていることもあるが、打線もイマイチだ。
コーチとして、この選手層の薄さと急造チームという問題は実に頭が痛かった。
そういえば先ほどの小宮山の顔色が曇りがちだったのを思い出す。
投手起用を決めさせられている彼ならば余計にこの戦績に責任を感じているだろう。
もっとも、実はそれは初芝も同じだったりするのだが。
「どうだ、調子は」
「うわあ!」
いきなり横から現れた声と気配に初芝はおののく。そこには園川監督がいつの間にかいた。
「驚かさないでくださいよ!」
「勝手に驚くのが悪いんだ」
「こんなところで何してるんですか?」
「小宮山に怒られた。もう投手起用を決めるのは腹が痛いから俺がやれだと」
園川が憂鬱そうに、肩を落としているのを横目に初芝はズルイと心の中で思った。
なぜならここまで全敗しているスタメンオーダーを決めさせられていたのは初芝だったのだから。
「実は僕も野手起用を決めるのはもう嫌なんですけど……」
「なんだと? お前まで! それじゃ、それじゃ……」
園川の表情がみるみるうちに曇り、頭を抱えているのが分かった。
「投手と野手の起用法を、全て私が考えにゃいかんではないか!!」
「それが仕事でしょうが!」
初芝が顔を赤くして、大声を上げた。それに園川が一瞬気圧される。
「くっ、貴様、覚えてろよ……」
そう言い残して園川はどこかへ歩いていった。


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