阪神タイガースバトルロワイアル第八章 at BASE
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500:代打名無し@実況は実況板で
07/06/12 03:07:35 X8924gIO0
ほっしゅん。

501:代打名無し@実況は実況板で
07/06/12 13:10:55 o9Bte0/U0
他球団ファンだが、虎バト読むようになってから
リアルで桜井が気になってしかたがない。

502:代打名無し@実況は実況板で
07/06/13 19:14:09 yw/fUpRY0
ほしゅ

503:代打名無し@実況は実況板で
07/06/14 03:38:50 iDK4ekXI0
保守

504:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 00:09:46 TyAgBflAO
矢野完全復活祈願捕手

505:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 00:14:17 ZeA5Dged0
読まないように。










細村香奈という中学2年生の女の子が夜道を歩いていると男3人にレイプされました。
彼女は必死で抵抗しましたが男3人の力に勝てるわけでもなく、まだ14歳という年齢で知らない男達に犯され、口封じとして殺されました。
男達は別に罪の意識など少しも、欠片もありません。
彼女は成仏出来ないまま、自分を犯した男達を探し続けています。

この話を全部読んでしまった人は必ず、他のスレ5個に同じ内容のレスを貼り付けて下さい。さっきも言いましたが、ここまで読んでしまったなら張り付けるほか方法はないです。殺されてもいい人は関係ない話ですが…。
・有村奈津実
・清中みずき
・鈴鹿陽一
・村上梓
・畠山龍夜
・野口太一

上の人たちはこのチェーンレスを貼り付けなかった為に殺されました。
細村香奈に…。


506:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 12:51:07 X+xgS5gk0
保守

507:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 12:52:41 TyAgBflAO
捕手保守ほしゅ(☆o☆)

508:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 13:30:56 p+dY3qNa0
新しいととこを軽く読み直してみた
なにこの泣けるの(゚д゚)
よ〜し、パパ、今晩がんばって読むぞ〜(最初から)

509:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 22:32:05 pAtX5l8U0
>>508
がんばれw
俺なら読むの遅いから一晩じゃ読み終わらなさそうだ(´・ω・`)

510:代打名無し@実況は実況板で
07/06/16 16:29:30 M8jPd7xe0
ほしゅ

511:代打名無し@実況は実況板で
07/06/17 18:03:48 Sy/wxM3D0
とりあえず狩野

512:174(1/5)
07/06/17 22:05:44 0VNpoGLL0
>>466
150.回想・桧山と矢野

「何です? 俺の顔、そんなに男前ですか?」
 年齢より若く見える顔を上げて、桧山進次郎(背番号24)は糞真面目な顔で
見返してきた。
「アホか」
「いやー、矢野さんに見つめられるとなんか照れますねぇ。男前に男前と思われる
俺って超男前? みたいなー」
「アホやな」
 自他ともに認めるナルシスト男のふざけた台詞を、矢野輝弘(背番号39)は
容赦なく切り捨てた。
 部屋にいるのは、矢野と桧山の二人だけだ。
 昼の定時放送の時に仮眠を取っていた鳥谷敬(背番号1)は別室に籠もっている
はずだ。
 放送後、目を覚ました鳥谷に、矢野は放送内容を告げた。
 普段ポーカーフェイスの男が蒼白になって、ふらふらと部屋の隅に座り込んで
しまった痛々しい姿に、今は一人にしておいた方が良いと判断し、二人は静かに
退室した。
 とはいえ二人でいたところで、何か明るい話題があるわけでもない。
 あまりにも多すぎる死者と、そこで呼ばれた名前に、沈黙というには長すぎる
沈黙が続いていた。
 小さなテーブルを挟んで暗い顔を付き合わせ、ようやく口を開いたかと思えば
こんな気の抜けた会話だ。
「ひーやん」
 窘めるように、矢野は男の渾名を呼んだ。
 この家に一つしかない簡素なソファに身を沈め、呼吸のついでに溜息を吐く。
「誤魔化すなや」
 我ながら随分と尖りのある声だと思った。

513:174(2/5)
07/06/17 22:06:34 0VNpoGLL0
「何であいつ連れてきた?」
「矢野さん、顔こわーい」
 厳しい調子で突き付ける問いを、桧山がおどけた口調でかわしてくる。
 眉と眉の間に人差し指を突き付け、桧山はわざとらしく皺を作った。
「眉間に皺、寄せてばっかいると老けますよ」
「またそれかい」
「ホラホラみんなが喜ぶ矢野スマイル」
「桧山」
 どこかで聞いた台詞を口にする桧山を、矢野は冷静な口調で遮った。
 笑える心境では到底ない。それは桧山だって同じはずだ。
(こいつに無理やり笑わせている俺の責任か……)
 今更彼におかしな気を回させねばならないほど、自分が落ち込んでいるように見えた
のだろう。
 視線を落とし、小さく溜息をつく。その視界の隅で、桧山が肩をすくめたようだった。
「何が聞きたいんです?」
「さっき言ったやろ」
「いいやないですか、別に鳥谷連れてきても」
 あっさりと言って、テーブルの上に両肘を組む。
「あいつなんか、危なっかしくてー」
「危なっかしいんやない、危ないんや」
「そんなはっきりと……」
「お前やって分かってるんやろ?」
 のらりくらりとかわそうとする桧山に苛立ちながら、矢野は身を乗り出した。
テーブルに拳を置いて、目の前の男を睨み付ける。
 最初は珍しい組み合わせだと思った。ただそれだけの感想だった。
 だが、彼らが共に行動することになった経緯を聞き、鳥谷と同じ時間を過ごすと
共に、一つの疑念が沸いてきた。
「あの目―信用できるか?」
 桧山は応えない。
 代わりに透明な笑みを浮かべ、恐らく眉間に皺を寄せているであろう矢野の顔を
見返している。
 諦め、矢野は大げさに溜息を付いて身を引いた。

514:174(3/5)
07/06/17 22:07:34 0VNpoGLL0
「信用も出来ないやつ連れて歩くとはお前はほんまお人好しやな」
 腕を組み、弾力のある背もたれに身を預けると、少し頭がぼんやりした。 
「いつか寝首かかれるで」
「かもしれませんね」
 まるで人ごとのように答え、曖昧に笑う。矢野は何度目かの溜息を飲み込んだ。
 吐く息の数だけ、脳の芯に霞がかっていくようで不快だった。
 桧山進次郎はつかみ所のない男だった。それは昔から変わらない。鳥谷敬を連れて
きた理由も、何か意味があるのではないかと矢野は思っているのだが、考えたところ
で分からない。
 なぜなら桧山は矢野にとって『つかみ所のない男』なのだから、どうやったところ
で結局掴めないのだ。
「俺、矢野さん好きですよ」
「きしょいわ」
「即答ですか」
 ケラケラと笑う。
 一通り笑った後、目の前の後輩は、ふいに真面目なトーンで口を開いた。
「矢野さん、忘れないんで欲しいんですよ」
 この男はつかみ所はないが馬鹿ではない。結局、どれだけ突拍子もないことをやって
も、それには必ず意味があるのだ。
 つまりは先の何の脈略もない告白も、本当に伝えたいことの導入である、ということだ。
(そしてそれが)
「あなたは一人じゃないってこと」
(意外に的を射てたりするねんな)
 それが矢野の知る桧山進次郎という男だった。
「ひーやん」
 告げられた言葉の意味を誰よりも深く理解する。自分が抱えている深い闇も、彼には
とうに見透かされていたらしい。
「今の俺にとってその言葉は……重荷や」
 自分を止めようとするたくさんの顔が脳裏を過ぎる。
 憎悪と復讐。
 今の自分を突き動かしているのは、ただそれだけの感情だ。
 理由も、意義も、リスクも、全てに蓋をして、理性を抑え込んでいる。意図的な激昂。

515:174(4/5)
07/06/17 22:09:06 0VNpoGLL0
「……似てるなぁ」
「何?」
「いえ、何でも」
 ポツリと呟いた声を聞き咎めた時、桧山は初めて矢野から目をそらした。
「それより、鳥谷のヤツ大丈夫なんかなぁ。放送のこと聞いて引きこもっちゃって
からもう結構経つけど」
 話題を逸らされた気がした。あるいはそれにすら意味があったのかもしれないが、
その時矢野には分からなかった。
「あいつ、筒井と仲良かったみたいやしなぁ」
「筒井か……」
 直接話す機会はあまりなかったが、期待していた投手の一人だ。
 無意識に、矢野は掌を開き、じっと見つめた。
 この手に、沢山のモノを託されている。そう思っていた。少なくともほんの一日前
までは。
 温め、大切に育てていきたかったタマゴが割られる度に、このチームの未来が音を
立てて打ち崩されていく。
 失っていく。
 育てていきたかった者と―共に夢を追いかけていきたかった者を。
(シモ……お前はどんな気持ちで死んだんかな?)
 分からない。
 最も死を想像できない男の死に混乱させられる。
 本当は会いたかった。
(会って、話がしたかった)
 会って、話をして―
(俺は、お前になんて言って欲しかったんやろう)
 つまらない甘えを断ち切れたのは良かったのかもしれない。
 彼も、福原や球児さえもいないのなら、自分の道を惑わす者はそう多くはない
気がした。
『あなたは一人じゃないってこと』
 警告のように桧山の声が響く。
 そうかもしれない。そうなのだろう。だが、そうは思いたくなかった。誰かの思念
に引きずられるのは嫌だった。自分の進むべき道が分からなくなりそうで怖かった。

516:174(5/5)
07/06/17 22:11:33 0VNpoGLL0
 気が付けば掌で額を覆い、瞑目していたらしい。
 はっと顔を上げると、桧山の労るような視線を感じた。
「疲れた顔してますよ」
 そうなのだろう。彼に気を遣うことも出来ないほどに疲れている。それでも、
ここにいるのが彼で良かったと思う。
 彼といると少しだけ、気持ちの糸を緩めることが出来る気がした。
 この男は常に『らしさ』を失わない。それ故に、いつでもそこに当たり前にいる
ような、妙な錯覚を覚える。それが恐らく、安心感に繋がっている。
(こいつが我を失うことなんてあるんやろうか―)
 想像がつかなかった。
「昼飯食ったら、寝た方がいいんじゃないですか」
「寝首かかれたらどうすんねん」
「俺が側にいますよ」
 ひねくれた答えを返す先輩に苦笑して、桧山が立ち上がった。脇に置かれていた
荷物を解き、テーブルの上に昼食を並べる。
 申し出は有り難かった。
 疲労感や倦怠感がじわじわと身体の外側から染み込んでいく。睡眠でも取らない
ことには、持たないことは自分でも解り切っていた。
 食欲もあまりなかったが、これからのことを考えると体調には気を遣うべきだろう。
 桧山が用意してくれた、手を付ける気になれなかったパンに手を伸ばす。
 ―コンコン
 タイミング良く響いた律儀なノックの音に、矢野は思わず手を引っ込めた。
「失礼します、鳥谷です」
 間を置かずドアが開き、鳥谷敬が顔を出す。
「矢野さん、昼飯まだありますか?」
 何で俺に聞くんやろう、とぼんやりとどうでもいいことを疑問に思いながら黙って
いると、代わりに桧山が答えた。
「危なかったなー。めっちゃ腹減ってたから、鳥谷の分まで食べてまうとこやったわ」
 もう一人の、最も死を想像できない男。
 彼が、笑顔で後輩を迎えるのを横目で身ながら、矢野は緩慢にパンを囓った。

【残り34人】

517:代打名無し@実況は実況板で
07/06/17 23:23:33 +oRI3aGr0
>>512-516
乙です
桧山の飄々としたよさが上手く描写されてて感嘆しました
一人だと自分を傷つけてしまう矢野と鳥谷を引き合わせて心の壁を壊してやるのは桧山の存在だったと
泣けました

518:代打名無し@実況は実況板で
07/06/18 02:10:34 tqqEL4/U0
職人様乙です!

ふたりとも大人だなぁ…。

519:代打名無し@実況は実況板で
07/06/18 06:38:56 JKPSxgVG0
新作乙です!!

この後ひーやんは・・・(ノд`)゚。

マジで泣ける。。。

520:代打名無し@実況は実況板で
07/06/18 06:51:50 4XbcCws40
乙です!
「あなたは一人じゃないってこと」
このフレーズマジで泣けます!


521:代打名無し@実況は実況板で
07/06/18 20:22:40 cNXMU3hu0
新作乙です!
やっぱりひーやんは必要だよ・・・(・ω・`)

522:代打名無し@実況は実況板で
07/06/19 02:08:46 EjOQ/Y520
新作乙です


この三人の「この後」をも一回
読み返してきました

そしてまた泣きました


523:代打名無し@実況は実況板で
07/06/19 22:25:42 C0Bbzsc10
ほす

524:代打名無し@実況は実況板で
07/06/20 01:59:55 yuPn83NB0
保管庫さんの更新ないのかなぁ。

とりあえず保守。

525:代打名無し@実況は実況板で
07/06/20 22:45:39 xS0h0uwZ0
保守

526:代打名無し@実況は実況板で
07/06/21 05:08:38 /LJ41JjMO
保守

527:代打名無し@実況は実況板で
07/06/22 02:11:14 EsB4ZuZR0
ほしゅっとな

528:代打名無し@実況は実況板で
07/06/22 03:15:48 EFz5ZFhG0
保守するよ

529:代打名無し@実況は実況板で
07/06/23 00:35:53 uaE+qJBxO
どうか職人様方、どんなに時間かかっても待ちますから、
このトラバト、完成させて下さい!
応援してます!

530:代打名無し@実況は実況板で
07/06/23 20:36:13 B+bNtxfJ0
ほす

531:代打名無し@実況は実況板で
07/06/24 12:38:49 2QFARdSE0
矢野ほしゅ

532:代打名無し@実況は実況板で
07/06/24 23:52:21 F56l46tX0
新作キテター!!




・゚・(ノД`)・゚・マジ泣ける…職人さんありがとう…

533:924(4/4)
07/06/25 00:00:44 ACk+8ffA0
>>516
151.紙一重

「久慈さん、まだ寝ないんですか?」
ドアが開いて浅井良(背番号12)が入ってきた。久慈照嘉(背番号32)は
デスクの上で組んだ両手の上に乗せていた顎を上げ、振り返った。
「ちょっと考え事しててね」
「やっぱり、新井のことですか?」
遠慮がちに浅井が尋ねてきた。久慈は座ったまま椅子の向きを浅井の方に
変えた。
「それもあるけど、他にもいろいろとね。さっきの爆発のことも気になるし、
 みんなが今どうしているかとかもね」
これは嘘だ。久慈が今考えているのは、ほとんど新井智(背番号49)のこと
だった。

結局、新井は見つからなかった。久慈は雨の中を必死で捜し回ったが、一人で
待たせている浅井が気がかりだったうえ、付近がもうすぐ禁止エリアになると
あっては短時間で捜索を打ち切らざるを得なかった。後ろ髪を引かれる思いで
浅井とともに出発し、適当な民家に落ち着いた。あまり新井のことを心配
しすぎると浅井に自責の念を負わせてしまうと思い、必要以上に口には
しなかったが、心の中では絶えず気にかかっていた。

「……俺のせいですね。俺があんなこと言ったから、あいつは……」
浅井が申し訳なさそうに視線を落とした。
「それは分からないよ。さっきも言ったけど、もしかしたら、あの間に誰かが
 あそこに来て、何かあったのかもしれない」
言ってはみたが、自分たちが離れていた間に新井がなんらかのアクシデントに
見舞われてあの場を去った可能性はきわめて低いと久慈は考えていた。
それは浅井も同じらしい。でも、と小声でつぶやき、唇をかんだ。

534:924(2/4)
07/06/25 00:02:09 ACk+8ffA0
「いや、もし浅井の言うとおりだったとしても、お前のせいじゃないよ。お前が
 新井に撃たれたのは事実なんだし、目を覚ましたところにその相手がいたら
 びっくりするのは当たり前だ。俺がもっと注意してたら良かったんだ」
久慈自身は新井と対話を重ね、彼が本当には人を殺す気持ちなど持って
いないと十分に理解できた。だが、目覚めたばかりの浅井には、気を失う
直前に見た新井―自分に向かって発砲してくる姿がすべてなのだから。
仮に新井があの一言を気にして去ったのだとしても、浅井を責められるはずは
なく、責める気もない。ただ、自分の配慮が足りなかったことが悔やまれる。
「俺がまず一人できちんと事情を説明してから新井を呼ぶとか、そういう風に
 してれば驚かすこともなかった……」

浅井は黙ったままじっと下を見ている。彼も相当気にしているようだ。
「まあ、もし新井が自分の意思でいなくなったんだとしても、ちゃんと自分の
 荷物は持って行ったわけだから、その点は安心してもいいかな」
久慈はつとめて明るい調子で言った。浅井にだけではなく、自分自身に
言い聞かせる意味もあった。何よりも心配なのは、新井が思いつめたあげく
妙な気を起こすこと。有り体に言えば、死を選ぶことだ。はかない希望だが、
死のうと考える人間が荷物を持って行きはしないと思いたい。

「けど、やっぱり俺のせいであんなことになって。最初はね、ふらふら歩いてた
 あいつが気になったから声かけたのに、いきなり銃向けられて撃たれて、
 びっくりしたし怖かったし、腹も立ったんですよ。でも、結果的には大丈夫だった
 わけで、久慈さんの話だとあいつも悩んでたみたいで、そう思うとひどいこと
 言ったなーって……」
浅井は腹の前で両手を組み、今まで以上にうなだれてしまった。
「あのな、浅井」
久慈は声のトーンを落として切り出した。いずれは彼にも話しておかねば
ならない。その機会は今をおいてないと思えた。
「まだ話してなかったことがあるんだ。言うべきかどうか迷ってたんだけど」
「なんですか?」
浅井が顔を上げた。


535:924(3/4)
07/06/25 00:04:47 ACk+8ffA0
「新井はお前に会う前に―本当に一人、殺してるんだ」
「えっ……」
細い目を一瞬大きく見開き、浅井はそのまま言葉を失った。
「といっても、殺そうと思って殺したわけじゃない。はずみというか、不幸な事故
 みたいなもんだ。けど、新井にとっては自分自身の手で人を殺したという
 事実は変わらない。だからあいつは苦しんでたんだ」
久慈自身も「その時」の様子を実際に見たわけではない。ただ、新井が
涙ながらに語った過去をそのまま伝えた。浅井はその間一言もなく、息を
のむような表情で久慈の方を見つめていた。

「今の浅井になら話しても大丈夫だと思ったから、思い切って話した」
最後の一言で、浅井のこわばった顔がほんの少しやわらいだ気がした。
「俺、ずっと思ってたことがあるんだ。もう二十人以上死んでるわけだけど、
 いったい人を殺した人間とそうでない人間の違いって何なんだろう?って」
久慈は話しながら天井を仰いだ。死んでいった仲間たち、そして彼らを殺した
者が確実にその中に含まれている、まだ生き残っている仲間たちの顔が
浮かんでは消えていく。
「ニュースや新聞なんかで殺人事件を見ると、ああいうのは異常な人間がやる
 ことだと思ってたけど、今この島で現実に人を殺してるのは、普段からよく
 知ってるチームメートなんだよね。上坂や新井を見てると、ほんのちょっとした
 きっかけで誰でもああなってしまうんだと思ったよ」
今はまだ誰も殺していない自分にも、そうなる可能性はある。

「俺も実際、気を失ったお前を新井に背負ってもらって移動してた時は、もし今
 誰かに襲われでもしたら、相手を殺すのも仕方ないと思ってた。そう考えると
 自分とすでに誰かを殺した人間の違いなんて、紙一重なんじゃないかって」
久慈は顔を動かし、浅井の目を見た。
「だから、ここまで誰も殺さずに来ているお前や俺は、幸せなんだと思う。
 そして、殺してしまった新井も決して特殊な人間なんかじゃないということは
 分かっておいてほしいんだ」

536:924(4/4)
07/06/25 00:07:20 ACk+8ffA0
「……はい。今なら、俺にも分かります」
浅井は神妙な面持ちでうなずいた。
「俺も、こいつを持っている以上は新井と同じことになっても不思議じゃない
 わけですから。でも、できれば人殺しなんかしたくないと思ってます。
 できることなら、使わないでも済むようにって」
そう言って浅井は後ろポケットからベレッタを抜き出し、両手に持ってじっと
見つめた。彼が気を失っている間は久慈が拝借していたものだ。

「けど、だからって手放すことはできないんですよね。使いたくないとは
 思ってるんですけど、ないとやっぱり心配っていうか……」
どことなく気まずそうに浅井は手の中で拳銃をこねくり回した。
「それ、返していいかどうか結構迷ったんだよ」
久慈は拳銃を指差した。
「え?」
「もちろん浅井のものだから返すのが当然なんだけどさ。さっき言ったように、
 俺はそれを借りてた時は誰かを撃つのも仕方ないと思ってた。浅井に渡すと
 いうことは、そういう重い役目も押し付けることになる気がしてね」

「久慈さん……」
浅井は再び手の中の武器に目をやり、少し間をおいて久慈を見た。
「大丈夫です。なんか、さっきから話聞いてるとすごく気を遣ってもらってる
 みたいですけど、要するに俺ってぜんぜん信用されてなくないですか?」
微苦笑を浮かべつつ浅井が抗議する。久慈もつられて笑った。
「ごめんごめん。でも今は違うよ。だからこうやっていろいろ話せてる」
「そうですか? だったら、いいんですけどね」
今度は正真正銘の笑顔だ。それを見て久慈は立ち上がった。
「さてと、そろそろ寝るかな。あの爆発も、結局その後は何もないみたいだし」
腕時計を確認すると、午前7時の放送まではまだ数時間ある。
久慈は心の中でつぶやいた。
(新井、死ぬなよ?)

【残り34人】

537:924
07/06/25 00:09:03 Q2OUbrrc0
>>533は4/4とありますが、1/4の間違いです
失礼しました

538:代打名無し@実況は実況板で
07/06/25 01:40:36 I5y488RW0
新作投下乙です!
この二人はまだ和ましいな(・ω・`)
頼むから変な気起こすなよ新井・・・!・゚・(ノД`)・゚・

539:代打名無し@実況は実況板で
07/06/25 23:39:21 LQbtjNlmO
職人さん乙です!!
久慈さん、いいなあ。

540:代打名無し@実況は実況板で
07/06/26 04:34:15 t/JoSKWy0
hoshu

541:代打名無し@実況は実況板で
07/06/26 11:06:18 uj+/Joha0
着底保守

542:代打名無し@実況は実況板で
07/06/27 06:56:20 oTkH2G7BO
保守

543:代打名無し@実況は実況板で
07/06/27 19:11:18 j4Bm96nX0
ほしゅ

544:代打名無し@実況は実況板で
07/06/27 21:01:18 DgjedSlK0
暑気当たりに……




















いや何でもないw

545:代打名無し@実況は実況板で
07/06/27 21:02:27 DgjedSlK0
暑気当たりに……






















いや何でもないw

546:代打名無し@実況は実況板で
07/06/27 21:03:39 DgjedSlK0
暑気当たりに……

























いや何でもないw

547:代打名無し@実況は実況板で
07/06/27 21:29:54 WvFNW53v0
保守

548:代打名無し@実況は実況板で
07/06/27 22:31:14 98VAemPU0
test

549:代打名無し@実況は実況板で
07/06/28 10:43:52 HGDrspmg0
 

550:代打名無し@実況は実況板で
07/06/29 20:24:06 01fKNBc70
捕手

551:代打名無し@実況は実況板で
07/06/30 02:01:56 xJtRjTRjO
矢野捕手

552:代打名無し@実況は実況板で
07/06/30 11:56:07 dNxa7oGv0
狩野捕手

553: 【大吉】
07/07/01 20:04:40 cmQafpQw0
ひーやんの運勢

554:代打名無し@実況は実況板で
07/07/03 00:20:06 7KbNM0Df0
ほしゅ

555:代打名無し@実況は実況板で
07/07/03 06:45:41 GHRMWrzQ0
保管庫さん、更新されてますね。

556:代打名無し@実況は実況板で
07/07/03 17:08:19 7KbNM0Df0
保管庫管理人さん、乙です!!
これでまとめて読み返せる・・・・・・!!

557:代打名無し@実況は実況板で
07/07/03 22:19:13 XVEj545t0
おお〜、待ってました!
保管庫さん、乙です!

558:代打名無し@実況は実況板で
07/07/04 22:59:26 D92ftOEn0
保守

559:代打名無し@実況は実況板で
07/07/06 09:53:02 HVsYROx50
遅れながら保管庫更新乙です!

捕手

560:代打名無し@実況は実況板で
07/07/06 21:14:50 45pYzftXO
捕手

俺は補習(・ω・`)

561:代打名無し@実況は実況板で
07/07/07 02:44:40 15JTpPtnO
矢野捕手

562:代打名無し@実況は実況板で
07/07/07 20:56:34 utrnk6lpO
保管庫更新ありがとう!
保守

563:代打名無し@実況は実況板で
07/07/08 15:40:31 dtx1aACy0
シャブ首位攻防戦で三連敗wwwwwwwwwww

564:代打名無し@実況は実況板で
07/07/09 18:47:02 5ZXUeANJ0
ほしゅ

565:代打名無し@実況は実況板で
07/07/10 10:52:11 KvzbVvZQ0
保守

566:代打名無し@実況は実況板で
07/07/10 15:49:45 Wufvf5Rp0
本当なのはどっち??


310 :可愛い奥様:2007/07/05(木) 18:03:40 ID:hSyLOi9u0
阪神で一番モノが大きいのは赤星だそうです。

314 :可愛い奥様:2007/07/05(木) 22:43:44 ID:CztcpZWb0
>>310
プロ野球界の日本人選手の中では3本の指に入るほどの巨根は矢野じゃないのかい?

567:代打名無し@実況は実況板で
07/07/10 20:43:10 66JcA/jP0
保守

568:代打名無し@実況は実況板で
07/07/11 22:48:52 EEkW0/yUO
保守

569:代打名無し@実況は実況板で
07/07/12 22:15:50 5GaMyyOg0
保守

570:代打名無し@実況は実況板で
07/07/13 00:14:37 ao54RtG90
これ読んでなんとなくこのスレが浮かんでしまった

818 名前:代打名無し@実況は実況板で[sage] 投稿日:2007/07/12(木) 10:08:10 ID:oOWIxnZKO
スポニチコラムみたいなやつの桜井記事少し笑って少し泣けた。

プロ初昇格する5月17日の夜、初の一軍を前に向かった先はレンタルビデオ店。
手にしたのは戦争映画のDVD。それを自室で一人で観賞して眠った。
「昨日な、戦争映画を借りに行ってん。それはな、あいつらな、戦って死ぬんやで。
そんなこと思えば、一軍なんか楽に思えるやろ。
一軍の怖さはある。でも命までは取られへんやろ。オレな、気持ちが8割で技術2割や」

571:代打名無し@実況は実況板で
07/07/13 11:24:41 zo90BekFO
ほしゅ

572:代打名無し@実況は実況板で
07/07/13 13:07:22 4Q1ttfxn0
>>570
虎バトの前にこういう事言ってたら、と思うと一層感慨深いな
虎バトの年代設定が2004だから有り得ない話だが。
すまん聞き流して欲しい。

573:代打名無し@実況は実況板で
07/07/14 13:30:55 ftoG6N4G0
保守

574:代打名無し@実況は実況板で
07/07/14 23:20:59 01VNQgNFO
捕手

575:代打名無し@実況は実況板で
07/07/15 21:51:43 NS+gduR90
ほしゅ

576:代打名無し@実況は実況板で
07/07/16 14:48:07 TKrJ3zwn0
保守

577:代打名無し@実況は実況板で
07/07/16 20:58:21 k80jU3FD0
保守

578:代打名無し@実況は実況板で
07/07/17 00:49:51 IBANI8aM0
捕手

579:代打名無し@実況は実況板で
07/07/17 23:33:24 a1XY3MsT0
保守

580:代打名無し@実況は実況板で
07/07/18 21:37:53 YeOt1f7d0
捕手

581:代打名無し@実況は実況板で
07/07/18 23:29:12 AGlyv2zSO
こちらの広大もどうなるのか…気になる。

582:代打名無し@実況は実況板で
07/07/19 01:25:41 lC+FX7E80
ほしゅ

583:代打名無し@実況は実況板で
07/07/19 22:44:30 E8jrueTB0
えぐすぎは無事かしら…

584:代打名無し@実況は実況板で
07/07/20 01:05:29 qtupqhJg0
続きが気になる・・・。

1から読み直そう。。。

585:代打名無し@実況は実況板で
07/07/20 17:23:39 0UuEet69O
ほしゅ

586:代打名無し@実況は実況板で
07/07/21 06:08:55 LlYl8lDZO
保守

587:代打名無し@実況は実況板で
07/07/21 06:32:09 /oBgg6ue0
hosyu

588:代打名無し@実況は実況板で
07/07/21 13:17:03 rECxHiYqO
ジェフはどうなるのだろう?


589:代打名無し@実況は実況板で
07/07/21 14:29:12 aNi4SiM20
URLリンク(www.cosplex.biz)

590:代打名無し@実況は実況板で
07/07/22 05:17:13 QWoqBLGa0
hosyu

591:代打名無し@実況は実況板で
07/07/22 23:47:54 uYN40qJK0
濱中が何考えてるのか、気になりつつ保守

592:代打名無し@実況は実況板で
07/07/23 22:46:55 GILfe1M30
ほす

593:代打名無し@実況は実況板で
07/07/24 11:38:15 ZiwzUAt20
イマオカモナー

594:代打名無し@実況は実況板で
07/07/25 22:59:44 4JEnmWUTO
保守

595:代打名無し@実況は実況板で
07/07/26 22:49:07 LA3olKB80
ほしゅ

596:代打名無し@実況は実況板で
07/07/27 23:58:36 sr7LOyxbO
捕手

597:代打名無し@実況は実況板で
07/07/28 21:19:14 JE9prfRjO
矢野と鳥谷が好きだ

598:174(1/5)
07/07/29 13:19:21 3wqs3kpm0
>>536
152.生き残る者

 家族でうどん屋に行った。
 近所のうどん屋だ。近所と言っても、歩いていける程の近場ではない。
 駐車スペースがあり、席数もそこそこ多い。
 常に混んでいるというわけではない。これで経営が成り立つのかと心配してしま
う程閑散としているわけでもない。
 今岡誠はここできつねうどんを食べる。
 特に決めているわけではないが、何となくきつねうどんを頼んでしまう。何度か
別のメニューを試してみたことはあるが、結局、次に来たときはきつねうどんを頼
んでしまう。
 時折、無性にここのきつねうどんが食べたくなる、という程美味いわけでもない。
かといって不味いわけでもない。食べるとそれなりに美味いと感じる。だが食べ終
わって、その美味さの印象が後々まで残るわけでもない。
 家族でうどんを外食することは少ないが、たまに誰かがうどんを食べたいと言っ
たり、なんとなくお腹がすいていなかったり、あっさりしたい物が食べたい時は、
ここに来ることが多い。
 駐車スペースがあり、席数もそこそこ多いからだ。
 うどん屋は、桜で有名な公園の隣にある。だが桜の季節にここに来ることはない。
 桜ならば、もっと家の近くに、もっと見やすい場所がある。
 芦屋は桜の街だ。春は街の半分が薄桃色に染まる、美しい街だ。
 妻はこの街を気に入っている。街の美しさを気に入っているのか、ブランド力を
気に入っているのかは微妙なところだ。恐らく両方だろう。
 今岡は美しさの方を気に入っていた。
「稜ちゃん、きたないからダメよ」
 きつねうどんを食べて表に出ると、すぐ右手に小さな池がある。
 それこそ大きめの室内水槽程度しかない小池が、伸びた雑草に半分覆われるよう
にして顔を覗かせている。
 そこの水に手を付けようとした息子を見咎め、妻が注意をした。
 息子が池に手を突っ込んで服を濡らし、妻が激怒する前に今岡は我が子を抱き上
げた。同時に、しきりに息子が気にしていた水中を覗き込む。

599:174(2/5)
07/07/29 13:22:10 3wqs3kpm0
 魚が居た。
 赤い魚が、一匹、泳いでいる。
「鯉?」
「何言ってるの、どうみても金魚でしょ」
 呆れたような妻の声は正しい。
 小池の生息者には錦鯉の雄壮さは欠片もなく、安っぽい赤い衣を纏って水底に沈
んでいた。
 一瞬でもそう思ったのは、その金魚が、今岡の認識している「金魚」よりも、桁
違いに大きかったからだ。
 15センチ。いや、20センチはあるだろう。
「金魚って、こんなに大きくなるもんなんや」
 妻は答えなかった。答えを持ち合わせていなかっただろうし、たいして興味もな
かっただろう。
 池には一匹だけ、金魚が居た。
 よく金魚すくいでみかける3センチほどのものを拡大コピーしたようなそいつは、
水上から見下ろす観察者の影など気にも留めず、ただ静かに池の底で停止している。
 息子を抱きしめたまま、今岡はしばし、池を観察していた。妻はまたかという顔
で後ろに突っ立っていた。
 妻が全く興味を持たないものに、夫の今岡は興味を持つ。その興味を持つ理由を、
妻も最初は理解しようとしてくれていたが、最近はしなくなった。理解しようとし
ても「わからない」ことを悟ったのだろう。
 今岡は、ただ、「何でだろう」と思っただけだ。
 なぜこんな大きい金魚がここにいるのか。なぜ金魚がこんなに大きくなるのか。
なぜ一匹だけここにいるのか。
 わからないことは好きだった。わからないことに考えを巡らせるのは好きだった。
例え答えが間違っていたとしても、たいした問題ではない。
 地図を眺めながらその土地の光景を想像して楽しむ人間がいるように、分からな
いものから想像を巡らせることを、今岡は楽しめる人間だった。
「金魚すくいでとったのかな」
 息子の素朴な感想に、はっとさせられる。
 そうだ、毎年春になれば、この店の隣で桜祭りが開催される。夜店が所狭しと建
ち並び、もちろん金魚すくい屋だって参戦するだろう。

600:174(3/5)
07/07/29 13:22:54 3wqs3kpm0
 今岡は想像してみた。
 小さな子が金魚すくいで獲得した金魚たちを得意げに持ち帰る。だが、親は家で
金魚を飼うことを良しとしない。理由は、毎年そうやって捕まえた金魚を水槽で飼
って、すぐに死なせてしまうからだ。
 腹を出して浮かぶ小さな魚。生臭い水槽。後始末は全て親の役目だ。
 そして子供はまた、懲りもせずに次の年もすぐに死ぬのが分かっている魚を獲っ
てくる。
 親に反対され、子供は悩む。お店の人に返して来なさいと言われても、それを拒
む。そして親子は、祭り会場の隣にある小池に目を付ける。
 祭の闇の中、ひっそりと小池に数匹の金魚を放す。子供は元気に暮らせと声をか
ける。親は助かったと胸を撫で下ろす。
 そして、忘れる。
 今岡誠は、20センチの金魚を見た。
 そういえば、餌を大量に与え、水温を高温に保つと、金魚は異常な早さで成長す
る生物だとどこかで聞いたことがある。
 とはいえ、屋外のこの池で水温が年中27度に設定されることはないし、池周りの
雑然さを見ても毎日栄養価の高い餌を与えられているようにも見えない。
 この環境で、体長5センチ未満の脆弱な生き物が、これくらい大きくなるのに、
どれだけの時間を要するのだろう。
「大きいでしょう、その子」
 唐突に、声をかけられた。中年の痩せた女店員だ。最初の頃店に来たとき、サイ
ンを頼まれたことがある。今でもそのサインはレジ側の壁にかけられている。
 天気の良い日だから、玄関口に水を撒きに来たらしい。
「いつからいるんですか」
「3年くらい前かしらね。ほら、隣で桜祭りがあるでしょう。誰かが捕まえた金魚
を放したみたいで。最初は10匹以上おったんですよ」
「3年……」
 3年間。桜祭りが3回やってくる。
「金魚すくいですくった金魚なんて、すぐ死ぬイメージしかなかったけど、こんな
に大きくなるんやねぇ」
 最後に有り体な感想を述べ、店員は道路に水を撒きに行った。

601:174(4/5)
07/07/29 13:24:08 3wqs3kpm0
 3年。10匹。
 新しい情報にワクワクする。断片的な事実は、想像をより色鮮やかに見せる。バ
ニラエッセンスのようなものだ。
 つまりはこの池の王者は、当時放流された十数匹の囚われ金魚の、唯一無二の生
き残りであるということだ。
 冬が来て、夏が来て、台風が来て、時には心ない子供や大人のいたずらに襲われ
ながら、また一匹、また一匹と白い腹を出して同胞達が水面に浮かんでいく。
 そんな様子を眺めながら、20センチの金魚は生き残って年を重ねていく。
 桜の季節になるたびに一回り身体が大きくなり、比例して仲間の数は減っていく。
 そして自分以外の最後の一匹までもが水面へと召されていくのを、彼は文字通り
死んだ魚の目で見つめていくのだ。
 狭い縄張りの中で、暗い世界の中で、なぜ自分独りが生き残っているのかも分か
らずに、ただ、そこに留まっている。
「それは、嬉しいのかな」
「もうそろそろいいでしょ」
 いい加減妻の苛立ちが募ってきたので、今岡は息子の手を引いて駐車スペースに
向かった。
 一度だけ、池の中の20センチの彼を振り返った。
 妻が運転をすると言うので、助手席に座ってぼんやりと信号の色が変わるのを眺
めていた。
 信号は、安っぽい赤い色をしていた。
 先程出会った、錦鯉になれない魚も、似たような安っぽい色をしていた。
 幸運にも強靭な肉体を持ち、強運にも理不尽な生活環境に適応し、悪運にも外敵
に生命を脅かされることなく巨大化した一匹の金魚。
 今岡誠は、金魚の気持ちになってみた。


602:174(5/5)
07/07/29 13:24:53 3wqs3kpm0

「それは……嫌やな」
 酷く悲しい気持ちになった。酷く辛い気持になった。
 恐ろしかった。怖かった。不幸だと思った。同情した。

 そして、すぐに忘れた。

【残り34人】

603:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 13:38:29 mrsPeLGm0
>>602
新作キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
職人様おつです

モナかわいいよモナ

604:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 17:13:44 f/I/J5gb0
ま、まこっさん・・・・。

605:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 17:19:17 5chwdkHN0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!職人様乙であります!
>>597
自分も矢野鳥谷組好きだー
鳥谷がイメージ合っててすごく良い
まあリアル鳥谷も好きだってのもあるけどww

606:174(1/6)
07/07/29 23:19:50 3wqs3kpm0
>>602
153.笑顔の行方

 憎悪と復讐。
 今の自分を突き動かしているのは、ただそれだけの感情だ。

 思い出すのは冷たい雨の音と―暗い夜の森。
(行かなきゃいけないと思ったんだ)
 彼の死を―確かめに。
 鳥谷が殺したのなら、彼を問いつめるのが一番早道だったはずだ。 
 本当に、鳥谷が殺したのならば。
(でも)
 警告のように「彼」の顔が過ぎる。
(なんか、お前が違うって顔すんねんもん)
 人を食ったような笑み。
 その男だけを残して、場面が変わる。
 青と茶のコントラストが太陽の光に照り映えるグラウンド。
 甲子園。青い芝。
 草の匂いが心地よい。
 いつかの、何と言うこともない会話。
 縦縞のユニフォーム。
『まーた、そんな難しそうな顔しちゃって』
(なんやねん。面白くもないのに笑えへんわ)
『眉間に皺、寄せてばっかいると老けますよ』
(ええもん、俺もうおっさんやし)
『ホラホラみんなが喜ぶ矢野スマイル』
(お前は―)


「お前はいつもへらへら笑っとるな」
 ふいに視界が広がる。目に入ったのは、薄暗い天井と、枕元に座る無表情な
青年の顔。

607:174(2/6)
07/07/29 23:20:39 3wqs3kpm0
『…………』
 目が合う。
「そうですか?」
 沈黙の後、真顔で聞き返してくる鳥谷敬。
「ぶっ……」
 矢野は、額の上に載せていた手を口元にずらした。笑い声を抑えようと試みた
が、あまり効果はない。
「くっくっく……」
 顔の半分まで布団に潜り込み、肩を震わせる矢野を、鳥谷は大仏のような顔で
無言のまま見下ろしていた。
 だが少し、何か言いたげに、あるいは間が悪そうに、唇が動いた。その僅かな
表情の動きを、矢野は見落とさなかった。
 一通り笑い終えたあと、矢野は布団から顔を出し、身を起こして室内を一瞥した。
 気が付いたらもと居た民家の布団の中に戻っていて、全てが夢だったのかと思った。
(夢だったら良かったのに……)
 驚くほど穏やかな死に顔が蘇る。
 犯人は現場に戻る、なんて言葉を聞いたことがある。その言葉を信じていたわけ
ではないが、何かを待ち続けた結果、鳥谷敬が現れたときは正直出来すぎていると
思った。
 出来すぎて―何となく、分かってしまった。
 彼が、『犯人』ではないということ。
(お前が呼んだんやろ?)
 彼の死と共に空いた大きな穴を埋める役割を、この青年に託したのだと思った。
「ほんま、お人好しやな……」
 呟いた言葉の意味を、鳥谷は問い質さなかった。
 前も同じ言葉を、同じ人物に対して口にした気がする。
 死んだ後まで人の面倒を見ようとする。開いた口が塞がらない程のお人好しだ。
 そして―
(俺も甘く見られたもんやな)
 こんな、一回り以上年の離れた青年に託されるほど自分が弱く映ったのだとしたら、
それは非常に心外だが―恐らく、正しいのだろう。

608:174(3/6)
07/07/29 23:21:35 3wqs3kpm0
(俺は、俺が思っているほど強くない)
 何とか出来ると思った。なんとかしなければならないと思った。
 目的さえあれば自我を保ち続けられると思っていた。
 だが、信じていた自我は、プライドをあっさりと裏切った。
 雨の中、桧山の遺体を発見し、あのまま鳥谷が現れることがなければ、自分が
どうなっていたのか想像もつかない。
(俺は、むちゃくちゃ弱い)
 自分を疑い、裏切った男をどこまでも追いかけてきた、愚かで真っ直ぐな後輩
に泣きすがってしまう程に。
 不思議と悲しくはなかった。悔しさはあったが。
 冷静に自己を評価できる瞬間というのは、悪くない。
 自身の無力さを見下ろしながら、矢野は雨の中、泥と恐怖にまみれてまで追い
かけてきた後輩を見た。
 今はどこまでも涼やかな顔で見返してくる鳥谷の顔に、この2日間で見た様々な
表情を重ねる。
「つま先立ちで歩くのはしんどいやろ?」
「は?」
 突然の言葉に、鳥谷が対応しきれぬ様子で聞き返してきた。
「足吊るし」
 この手法は、どこか桧山くさいなと我ながら思った。
「バランス悪いし」
 鳥谷が無言のまま見つめてくる。その視線を見返し、矢野は口端を上げた。
「お前見てると、そんな感じ」
 入団してきた時から感じていた、どこかルーキーらしからぬ落ち着きと、大人びた
振る舞い。
 初めは取っつきにくいタイプかと思ったが、今なら彼のその全てが背伸びだったこと
が分かる。己の弱さを自覚する前の、自分に少し似ている。
「いつもクールなゴールデンルーキー君」
 拍子抜けたような顔が、一瞬むっと曇った。
(なんや、結構素直やんか)
 以前に比べて、表情が豊かになっているような気がする。

609:174(4/6)
07/07/29 23:22:34 3wqs3kpm0
 それは、彼と過ごしている時間の長さの問題なのかもしれない。
 もっと別の、彼自身の心境の変化の現れなのかもしれない。
「もっと笑ったら、もっと人気出るちゃうか?」
 八重歯を見せて笑う。
「……俺は、あなたみたいには笑えませんから」
 ふいと視線を逸らした鳥谷の横顔が、作ったように固い無表情をしていた。
 しかし嫌な感じはしない。
 もしかしたら照れていたのかもしれない。
 後輩らしい反応に満足し、矢野は鳥谷から目を離してもう一度枕に頭を寄せた。
眠るつもりはなかったが、まだ少し身体がだるい。
 一度目を覚ました時、この青年は物凄い形相で飛び込んできて、物凄い勢いで
泣き出した。
 何が起こったのかは分からなかった。
 ただ、自分が知らない間に、彼がまた一つ傷付いて帰ってきたのだということ
だけは悟った。
 泣きそうな顔で座り込む若い鳥谷に思わず手を差し出してしまったのは、同情
とか憐憫ではないし、ましてや慈愛でもない。
 これはもう職業病というか、染みついた性かもしれない。
(それを見越して、お前が俺にコイツを託したのだとしたら―)
 「してやったり」と。 
 薄暗い部屋の中で、その男の満足げな笑い顔が浮かび上がる気がした。
 ―死んだ男が、笑うわけがないのに。
(そう、桧山は死んだ)
 今、己の視界に映るのは、畳と鳥谷の膝だけだ。
 そう思うと、急に、肋骨に冷ややかな風が流れ込んだ。
 感情と理性の反目。感傷を事実が駆逐していく、残酷な瞬間。
 重く重く横たわる『死』が、水中で腐り落ち、解体され、暗い澱となって深海へ
と沈殿していく。
 冷めた怒り、とでもいうのだろうか。すっと、脳の芯が冷えていく感覚に反して、
喉の奥が震えるような緊張に襲われる。
 掌に痛みが走った。知らず、握りしめた指が皮膚を傷付けた。

610:174(5/6)
07/07/29 23:23:35 3wqs3kpm0
 また一つ、闇が暗くなった気がした。
(鳥谷でなければ―)
 また一つ、許せない死の数が増えていく。
(ひーやん、お前を殺したのは、誰や?)


「放送まで、もう少し時間があります」
 気が付けば下界を遮断していたらしい。頭の上から降ってきた鳥谷の声に、世界が
戻ってくる。
「眠ったらどうですか?」
「なんか寝てばっかりやな、俺」
「体調悪いんだから、当たり前です。とっとと寝て治して下さい」
 小うるさい小姑のような口調で命令される。随分と強気になったものだ。
 苦笑して、矢野はふいに自分と鳥谷の関係が変化していることに気付いた。
「…………」
「矢野さん?」
 動きの止まった矢野に、疑問符が投げかけられる。それには応えず、矢野は寝返りを
打って天井を見上げた。
 それが無意味な行為だと分かっていながらも、矢野は問いかけずにはいられなかった。
(なぁひーやん、お前は、なんで俺とこいつを置いていったん?)
 彼が、自分と鳥谷に残したもの。
(お前は、俺に何を期待してるんかな?)
 チクリと棘が刺す。
 いくら期待されても、自分は恐らく彼の願いに応えられない。
 鳥谷は誰かの死によって変わったらしい。だが、自分は変わるわけにはいかない。

611:174(6/6)
07/07/29 23:24:38 3wqs3kpm0
(お前の目的は、もしかしたらそれやったんかもしれんけど)
 あの時見た夢の、その最後の一瞬を思い出す。
 累々と横たわる屍。
 全てを踏みにじり、ただ一人に銃口を向ける矢野輝弘。
 そして―
(鳥谷……)
 彼は、自分の目的を知らない。
 だからこそ、いつまでも彼と共にいるわけにはいかない。
 それでも、目が覚めたら彼がいたことに、ほっとしている自分がいた。
 自覚しながら、蓋を閉める。
(今はまだ)
 自分への言い訳のように呟き、矢野は目を瞑った。
(もう少しだけ……)

【残り34人】

612:代打名無し@実況は実況板で
07/07/29 23:54:58 ItlhVqgV0
新作超乙です!!!

またヒーヤンのことで泣きそう(Tдと)

モナさんはきっと頭の回転が速いんだろうね。

いろんなことに興味を持って、考えてみる。
でも次のことを考え出すと今まで思ってたことを忘れる。

暖かいようで冷たいね、モナさん。。。

613:代打名無し@実況は実況板で
07/07/29 23:59:57 Z8zBqwjk0
職人さんキタ━━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━━!!!!
モナの変りくりんさの描写が上手い
イラッとくるリエリンワロス

614:代打名無し@実況は実況板で
07/07/30 00:02:10 5chwdkHN0
矢野さんの心理キタワァ゜゚・*:.。..。.:*・゜(n゜∀゜)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
なんだか不思議な取り合わせなんだけどなんだかイイ!
そしてひーやんはカッコ良すぎる!!

615:代打名無し@実況は実況板で
07/07/30 09:04:55 sxdtIPW30
やばいやばい。
ひーやんがかっこよすぎてあかん!!!


616:代打名無し@実況は実況板で
07/07/30 21:22:14 KRsps0cI0
投下乙です!
なんだかモナさんが激しく色んな意味で魅力的。
あとひーやん・・・鳥谷とのギャップがまたなんだか辛い(・ω・`)

617:代打名無し@実況は実況板で
07/07/30 22:39:19 emqSTiSa0
投下ラッシュ乙です!
矢野の脳みその忙しさが非常にそれっぽいね
そろそろ動き出しそうで楽しみだ

鳥谷「大仏のような顔」ってw


618:代打名無し@実況は実況板で
07/07/31 22:43:41 PHrC1Nfq0
ほす

619: 【ぴょん吉】
07/08/01 00:45:46 RLuIz/3X0
矢野さんたちの運勢

620:代打名無し@実況は実況板で
07/08/02 00:11:26 eobHd9Za0




621:代打名無し@実況は実況板で
07/08/02 09:07:53 efevLjAa0
乙です!
なんだかもう矢野さんがもどかしくて、鳥谷もいじらしくて
ひーやんになったつもりで読んでしまう。
 淘汰されていく生物とその社会。今岡は一匹の金魚に何を思うのか。
そして、すぐに忘れた。という部分が痛々しい。

622:代打名無し@実況は実況板で
07/08/02 22:18:38 ThCgy3gr0
相変わらず面白い

矢野、それはやっぱり慈愛だよ…

623:代打名無し@実況は実況板で
07/08/03 23:52:23 52PJOvDv0
ほしゅ

624:代打名無し@実況は実況板で
07/08/04 00:24:54 Sz8EJBIv0
キダゴ移籍後初の広島戦。
キダゴも広大も6番ライト。
感慨深〜〜〜〜〜い。


625:代打名無し@実況は実況板で
07/08/04 21:55:56 Sz8EJBIv0


626:代打名無し@実況は実況板で
07/08/05 02:15:55 kvEvEtRG0


627:代打名無し@実況は実況板で
07/08/05 23:33:06 UeCEb16x0
のせんいち

628:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/07 00:07:41 G53sENJY0
ほしゅ

629:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/07 14:28:58 wNfjgCom0
矢野さんが今岡さんに出会ったら・・・。

630:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/07 21:52:30 PzV4Rbsy0
モナ

631:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/07 21:56:20 vnr9ai+V0
ほしゅ

632:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/08 22:13:07 KKud6qbD0
ほしゅ

633:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/09 12:47:51 5bstfBtkO
広大のその後が気になる。

634:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/09 21:55:16 h4hfEHR90
hoshu

635:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/10 23:57:00 ejDTQVqK0
保守

636:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/11 19:40:40 bpDi1XTFO
横浜遠征時の宿舎知ってる人いたら教えて下さい

637:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/12 20:17:33 +ZvwPI350
捕手

638:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/13 01:58:01 KHeDIlA70
保守

639:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/13 20:56:18 KHeDIlA70
保守

640:代打名無し@実況は実況板で
07/08/14 07:07:13 Yabexyw00
今日も暑いのかな


641:代打名無し@自治スレにて板分割動議中
07/08/14 09:18:49 IukmK6Jz0
糞暑いな
保守

642:代打名無し@実況は実況板で
07/08/14 14:02:30 wtdMHTYQ0
むしろ生き返って、ひーやん

643:代打名無し@実況は実況板で
07/08/14 15:04:33 PjpE6rcw0
それなんてドラゴンボール

644:代打名無し@実況は実況板で
07/08/15 07:24:02 M8R5hF530
元気玉いる?

645:代打名無し@実況は実況板で
07/08/16 00:11:49 njjfiCwJ0
御大の言葉が気になる・・・

646:代打名無し@実況は実況板で
07/08/16 21:43:57 BMcO3H900
アリゾナにいるらしいな、御大

647:代打名無し@実況は実況板で
07/08/18 09:56:22 xnsXyrKb0
ほしゅ

648:代打名無し@実況は実況板で
07/08/18 14:14:45 B+FY95s50
ほす

649:代打名無し@実況は実況板で
07/08/19 15:37:46 8sDxcJ/Q0
御大生きてる?
「アイゾナで自炊」情報以来、生存情報聞いてないんだけど

650:代打名無し@実況は実況板で
07/08/20 00:03:41 Z3yx0Iq90
ほしゅ

651:924(1/5)
07/08/21 01:59:34 L9b+SwYB0
>>611より
154.答えを探して

(夢、か?)
今岡は両手でかかえた膝の上に乗せていた頭をゆっくりと上げた。
月明かりを頼りに時計を見ると、午前2時を少し回ったところだった。
2時間ばかり前に聞こえた謎の爆発音が嘘のように、暗い森はひっそりと
静まり返っている。
(金魚か……)
頭を強く横に数回振ってみたが、今までうたた寝をしていたのか、ただ単に
考え事をしていただけなのかが判然としない。いずれにせよ、ずっと忘れて
いた出来事なのに、どうして急に思い出したのだろう。

小さな池に放たれた十数匹の金魚が、現在の自分たちに重なるからか。
同じように小さな島に閉じ込められ、最後の一人となるまで殺しあわねば
ならない自分たちに。生き残れる者はただ一人。つまり、仲間が次々と死んで
ゆく中、たった一匹残って悠然と巨大化したあの金魚のように。
(それは、嬉しいのかな)
再び当時の疑問が浮かぶ。何者にも脅かされることのない、自分こそが
唯一無二の存在である小さな世界。それは同時に孤独な、ただひたすら
孤独な世界でもある。あの時は、嫌だと思った。自分なら、そんな寂しさには
きっと堪えられない。だが、すぐに忘れた。今日この時まで、ほんの少しも思い
出すことはなかった。恐ろしくはあったが、現実に自分がそのような状況に
置かれるとはまず考えられなかったからだ。

今、自分はまさにそのただ一匹の金魚となることを目指すよう強制されている。
(俺に、できるんか?)
今岡は自分自身に問いかけた。このゲームに投げ込まれた以上、いつかは
答えを出す必要があるのだが、実は一度も深く考えたことはなかった。
自分は、果たしてあの金魚になれるのか。他人に殺されず生き延びられるか
という可能性についてはひとまず措く。問題は、ただ一人生き残る孤独を
受け入れられるかという自分自身の気持ちについてだ。

652:924(2/5)
07/08/21 02:00:15 L9b+SwYB0
むろん、ゲームに勝利すれば将来的には一人ではなくなる。妻と息子のもとに
帰り、これまでの日常を取り戻すことができるはずだ。この先も一匹のまま
生き続けねばならないであろうあの金魚とは違う。
だが、今岡ははっきりと答えを出すことができなかった。いずれは家族の所に
戻れるとしても、その時には阪神タイガースというチームの仲間たちを全て
失うことに代わりはないのだから。

ここまで考え、何となく可笑しくなった。まだ一人も手にかけていないまっさらな
状態の人間が迷うなら理解できる。生きて再び帰るためには仲間を殺さねば
ならない。普通では重大な罪とされる行為に手を染めることができるかどうか。
この問題について悩む選手は数多いだろう。
ところが、自分はすでに人殺しだ。この手によって、言葉によって、三人が命を
失った。中村泰広は―ただ人殺しとそうでない者との違いを知りたいと
思い、殺してみた。野口は―ひとが自分自身の手で死ぬところを見てみたい
という動機から言葉巧みにそそのかし、自殺に追い込んだ。桧山は―彼に
促され、こちらもまた相手を殺さねばならないと感じたから、そのとおりに
殺した。

思えば、勝利者になりたいという目的のために命を奪った相手は一人も
いない。桧山に対しては、彼を殺さなければ自分が崩壊してしまうという
危険を察知したわけだから、我が身を守るためであったと言えるかも
しれない。しかし、中村と野口を死に至らしめた理由はどちらも子どもじみた、
いや、子ども以下の幼稚な好奇心だ。

7時の放送時点で自分が関わった以外に19人が命を落としている。殺した
側の人間には、われこそが生き延びるという明確な意志をもって殺害を実行
した者も大勢いるに違いない。それはゲームの方針にもかなった正しい
考えだ。殺された者にすれば理由が何であれたまったものではないだろうが、
自分のように大義名分もなく、なんとなく人を殺してしまうよりはよほどましと
言えるのではないか。

653:924(3/5)
07/08/21 02:03:21 L9b+SwYB0
(じゃあ、俺はどうしたいんや?)
重ねて自問する。あの金魚のように、最後の一人となる孤独に自分は
耐えられそうにはない。それでいて、半ばはこのゲームに乗っている。
ためらいもなく人を殺せる人間になっている。
―だけど今岡、後悔するなよ。俺を、誰かを殺したことを、お前が死ぬ
瞬間まで後悔すんな。
ふいに桧山の言葉が頭の中でよみがえった。

―運命に逆らってみろ、今岡。逆らって出来た自分の道を誇ってみせろ。
「だったら……」
膝をかかえたまま、今岡は彼への問いを口にしていた。
「俺は、どうすればいいんですか?」
運命に逆らえ、と桧山は言った。では、自分の運命とはいったいどのような
運命なのか。それが分からなければ、逆らいようもない。
「俺の運命って……なんですか?」
尋ねたところで答えが返ってくるはずはない。浮かぶのは、最後に見た桧山の
顔だけ。かすかに笑ったようで、満足げに見えるあの死に顔だけだ。

「桧山さんは……ずるい」
今岡は膝の上に顔を伏せた。野口もそうだった。みな、解けない謎を残した
まま逝ってしまう。彼らを死なせたのは自分だ。自業自得だ。文句を言う
筋合いなどありはしない。それでも、今岡は答えを与えてくれない彼らに軽い
怒りを感じずにはいられなかった。

―運命に逆らってみろ、今岡。
もう一度、桧山の言葉をかみしめてみる。
「桧山さん……」
つぶやきながら今岡はやけに重く感じられる頭を上げた。逆らうべき運命
とは、あるいは自分の「今」のこの状態なのか。桧山を殺さなければ、自分が
壊れてしまうと感じた。だが、殺したら殺したでこうして苦悩し続けている。
桧山は全てを見越して、あのような言葉を残したのかもしれない。


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