阪神タイガースバトル ..
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38:代打名無し@実況は実況板で
06/12/20 00:03:05 DTU8l8ZJ0
落ちている章を暫定HTBR板の雑談スレにUPさせて頂きました

128.RE-START
129.最後の「攻撃」
130.もう一度
131.違和感
132.橙火
133.洞(うろ)
134.拠り所
135.crash site
136.本当のこと
137.二者択一
138.can't take it with you.

39:代打名無し@実況は実況板で
06/12/20 01:31:29 ETcglCwL0
>>38 おおおおお乙です!!
保管庫様待ちのつもりでいたので、これから一晩wktkで読んできます。

40:代打名無し@実況は実況板で
06/12/20 15:43:09 YxzLZans0
おつおつおつーーーーー
おれも暇ができたら読んでこよう

41:代打名無し@実況は実況板で
06/12/21 06:49:44 KyJdu3ms0
最初から読んでみたけど、文章の構成がすごいと思う・・・。

42:代打名無し@実況は実況板で
06/12/21 10:08:49 rIXNYbdZO
     _
 ▼^   `▼
 イ fノノリ)ハ  保守…
  リ(l|゚ .゚ノlリ
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/

43:代打名無し@実況は実況板で
06/12/22 02:33:43 wpSFSxjJ0
えぐすぎはどうなるのかなぁ保守

44:代打名無し@実況は実況板で
06/12/22 18:43:49 oVrbxa7J0
捕手

45:代打名無し@実況は実況板で
06/12/23 00:23:50 hnJImzCI0
鳥谷と矢野はどうなってるんだろ保守

46:代打名無し@実況は実況板で
06/12/23 00:44:48 phVQGcSvO
鳥谷矢野組は暫定板に最新の話があるよ。
>>38

615さんのカムバックを喜びつつ。
……濱中、来るかな?来るかな?
とかこっそり期待してみる。保守!

47:代打名無し@実況は実況板で
06/12/23 08:38:20 90A/QKUL0
暫定版ってどうやってみるの?

48:代打名無し@実況は実況板で
06/12/23 08:42:51 phVQGcSvO
>>47
>>3

49:代打名無し@実況は実況板で
06/12/23 13:31:22 pfJA8K000
>14-19
復活キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
赤星逃げて逃げて

50:代打名無し@実況は実況板で
06/12/23 22:16:33 o+MJzuKXO
ズレータが現れた!


どうしますか?
→たたかう
にげる
じゅもん
どうぐ

51:代打名無し@実況は実況板で
06/12/24 01:57:27 voL8Hta+O
>>50
よく見えないけど金村さん乙です。
保守。

52:ダン・セラフィニ
06/12/24 20:35:30 JY2ltYZ0O
>>50
たたかう!てゆうかころす!!

53:代打名無し@実況は実況板で
06/12/25 01:15:22 AB1sEWlG0
>>50
→こうしょう

54:代打名無し@実況は実況板で
06/12/25 13:27:37 0TdYgPrTO
公傷?

55:代打名無し@実況は実況板で
06/12/25 21:38:02 dwn743xR0
www

56:代打名無し@実況は実況板で
06/12/26 17:30:08 VeH+LpxZ0
最近、だれも死んでないなぁ・・・。

57:代打名無し@実況は実況板で
06/12/26 22:03:16 P1s0OQyuO


58:代打名無し@実況は実況板で
06/12/26 22:18:54 73ZPnOql0
たいへん悪質な出品者です。
違反出品の申告にご協力をお願いします。

URLリンク(page11.auctions.yahoo.co.jp)
URLリンク(page7.auctions.yahoo.co.jp)

お時間があれば、以下「報告フォーム」からも申告をお願いします。
URLリンク(auctions.yahoo.co.jp)

59:代打名無し@実況は実況板で
06/12/26 22:21:38 P1s0OQyuO


60:代打名無し@実況は実況板で
06/12/26 23:52:59 kalwgFeb0
>>56
死んではいないけど、色々なところにフラグは立ってないか?

61:代打名無し@実況は実況板で
06/12/27 19:45:37 cCPjH+MG0
各所で出会いが続いてるから一気にバタバタ来そうな予感はするね
自分はイガーと御大が気になる


62:代打名無し@実況は実況板で
06/12/28 01:48:56 21Nqy0mqO
俺の峰夫と葛西たんはどうなったんだろう

63:代打名無し@実況は実況板で
06/12/28 07:38:04 oL/26Xh90
【野球】阪神・金本兄貴太っ腹!異例の年俸減額を申し出 総額1億円以上を裏方に還元へ
スレリンク(mnewsplus板)l50


64:代打名無し@実況は実況板で
06/12/29 00:57:54 gFZ9ubCLO
今年もあとわずかですよ保守
チャンネル争いに勝って大晦日にサン虎検定を見られるのか。

65:代打名無し@実況は実況板で
06/12/29 22:20:18 jCi4TqxT0
保守だよ保守

66:代打名無し@実況は実況板で
06/12/30 12:24:01 /gBL+fqN0
年末大放出SP

67:代打名無し@実況は実況板で
06/12/31 04:02:56 4oxsQuOy0
ほしゅ

68:代打名無し@実況は実況板で
06/12/31 22:13:57 rQJdVse60
公式に峰夫記事があったお保守

69:代打名無し@実況は実況板で
07/01/01 02:34:26 3F0KQtcUO
ノックバットを握る為に肘の手術までしたのか…ミネヲ大好きだあぁぁ〜!保守

70:代打名無し@実況は実況板で
07/01/02 04:06:02 SYItsIOs0
ほしゅ

71:代打名無し@実況は実況板で
07/01/02 18:26:14 TPTBvd410
ほしゅしゅ

72:代打名無し@実況は実況板で
07/01/02 23:24:33 igTt2vSz0
ほしゅしゅしゅ

73:代打名無し@実況は実況板で
07/01/03 00:53:36 kl+g79qMO
キャッチャー!

74:代打名無し@実況は実況板で
07/01/03 23:13:59 Csupse5WO
☆ゅ

75:代打名無し@実況は実況板で
07/01/05 03:03:34 Uc6RdqYe0
hosyu

76:代打名無し@実況は実況板で
07/01/05 04:47:24 g66m/1SjO
火ヤマダ

77:代打名無し@実況は実況板で
07/01/06 01:08:34 1DREF3r40
えぐえぐ

78:代打名無し@実況は実況板で
07/01/06 03:41:42 NxqdlQne0
 ε ⌒ヘ⌒ヽフ
 (   ( e'ω'a) ?
  しー し─J


79:代打名無し@実況は実況板で
07/01/06 14:40:43 y+5VDI4+0
保守…復活してて嬉しい!!

80:代打名無し@実況は実況板で
07/01/07 19:36:13 4Gr6t3+g0
ほしゅ

81:615(1/6)
07/01/08 02:08:19 LLiTHawT0
>>19つづき

140.高みの見物

それほど遠くない距離で起こった轟音と閃光に、腕で顔の前を覆うことくらい
しかできなかった濱中は、固まった身体をギシギシいわせて、ようやく腕を
おろした。
暗い夜の闇と雲を背景に、爆発の残滓を知らせる煙が白く空へのぼっていく。
それを見つめながら濱中は素直な感想を述べた。
「……すごかったっすね」
「ホント……」
すぐ隣で応えた立川隆史(背番号45)の声も驚きを隠さない素直なものだった。
先刻の轟音が嘘のようにあたりは静まりかえっている。
濱中と立川は爆発が起こった場所と、このクソゲームの司令部である体育館を
挟んでほぼ反対側に位置する雑居ビル4階の窓から、今起こったすべてを目撃
していた。
その子細はこうだ。

82:615(2/6)
07/01/08 02:09:01 LLiTHawT0
島を覆う雨音がほとんど聞こえなくなった頃、窓から見える暗灰色の空を
見上げて濱中と立川は賭の結果を相談し始めた。
数時間前にした、『雨はいつ止むか』という無害な賭。
「立川さん、雨、止みましたよ」
「いや……わかりにくいけど、ちょっと降ってる」
ふたりは全開にした窓から身を乗り出して慎重な審議を重ねていた。
「どの程度になったら止んだことにするかってのは、ちゃんと決めとかんと
 ダメでしたね。雲切れてきたなぁ、これから晴れるかな」
「俺の中ではまだ降ってるよ、これは」
「そりゃ、ここで止んだ判定なら立川さんが負けるからでしょ」
クスリと笑った濱中は、遠くから近づいてくる音に指をさした。
「あ、ヘリコプター」
「またか」
「前にも通りましたっけ?」
「通るも何も、あそこに見えてる校庭に降りたんだよ」
ヘリコプターの点滅ライトから視線を下げれば、難攻不落の要塞よろしく鎮座
する体育館が見下ろせる。その横に半分ほど見える校庭は煌々とライトに照ら
され、遠目にも眩しい。
「へぇ、それは気づきませんでした」
「いいな〜俺も空飛べたらな〜」
「ホンマですねぇ、支給品がタケコプターならよかったのに」
「オマエそれは危険だぞ、それなら、どこでもドアにしよう」
「開ければそこは有馬温せ」
で、大爆発。

83:615(3/6)
07/01/08 02:09:36 LLiTHawT0
煙を凝視する濱中にちらりと視線をやって、立川は声をかけた。
「見に行ってみる?」
「えっ」
濱中は勢いよく立川を振り返り、すぐに心底嫌そうに顔をゆがめた。
「いややなぁ……」
「そうだよなぁ」
「見なかったことにしましょう」
そう言いながら、濱中は滑りの悪い窓をガコガコと音をたてながら閉め始める。
「そんなこと言ったって、島中に響いたよ今のは」
「こっちに都合の悪いことが起きたんじゃなきゃいいんですけどね」
「さぁてなぁ」
ホコリだらけの床に敷いた布団に立川は寝ころんだ。
「それで、やっぱり雨はまだ降ってるよね?」
「ふふっ、外に出て確かめればよくわかると思いますけどね、降ってませんよ」
窓を閉め終わった濱中も隣の布団に横になる。
「おとなしく後輩に譲ったらどうですか」
「禁止エリアの近くをフラフラしてる奴に優しく注意してあげたのは誰かな?」
「この布団をわざわざ隣の家から持って来たんは僕ですよ」
「なんて湿気た布団を持ってきやがったんだ」
「うっわ、サイアク!先輩とは思えへん言葉!」
「冗談冗談、感謝してますよ濱中さん」

84:615(4/6)
07/01/08 02:10:06 LLiTHawT0
ヘリコプターが爆発するなんてことが起こる世界で、ひどく平和な会話が続く。
まるでそんなことは日常茶飯事のように。
そして、それはまぎれもないこの島での日常だった。
これまでのことに比べれば、少々大事ではあるが。
「しょうがないな、今回は俺の負けだ」
「最初に決めた通りバツゲームはモノマネですよ。
 僕にもわかる野球選手がええなぁ」
「お前が知ってる奴で?うーん、現役じゃないとダメ?」
「現役で、しかも笑えるの」
立川がタイガースにトレードで来たのは今年の6月。強肩強打の外野手を求め
られてのことだった。いわば怪我で抜けた濱中のポジションを埋める役割。
当然ふたりの接点は新聞上や作戦上のそんなところだけだったが、まさかこう
して布団を並べて話をするなんて、人の縁とは不思議なものだ。


本部での動きがあればすぐわかるようにと、立川は体育館が見える場所を探して
4階建のビルを見つけた。しかし、体育館とはそれほど距離が離れていないため
その周辺が立入禁止になる時には命はないかも、と少しドキドキしていた。
運良くそれは杞憂に終わり、その後ずっとこのボロビルに腰を据えている。
そろそろ日が暮れるかという頃合いに、なんとなく窓の外を眺めていると
下の道路を歩く人物を見つけた。
それが濱中だ。

85:615(5/6)
07/01/08 02:11:06 LLiTHawT0
濱中は透明のビニール傘をさして、辺りを見物するように首をめぐらせていた。
どこかで拝借してきたのであろう灰色のジャンパー姿だったが、顔が見えた
ので濱中だとすぐにわかった。
その足取りに迷いはなく、立川のいるビルの前を横切るようにまっすぐと進んで
いった。しばらくすると戻ってきてビルの前を先程とは逆向きに横切っていった。
またしばらくするとビルの前までやって来て、今度は横切らずにビルに対して
垂直に伸びる別の道に入った。
そちらは体育館の方角だ。地面に禁止エリアの線が描かれているわけではない
ので、どこからがアウトでどこまでがセーフかはわからないが、そのまま行けば
いずれは禁止エリアにひっかかるだろう。
迷わず立川は閉まったままの窓に手をかけた。

「おーい!」
一声で濱中は足を止めた。
「おーい!濱中ー!」
後ろを振り向く濱中。おしい。
「こっちこっち!」
きょろきょろと周囲を見回しながら濱中は声の主を探している。もうちょっと。
「上だ、上!」
そうすると、濱中はすぐに立川を見つけた。
「立川さん?」
鳴尾浜でたまにすれ違うくらいだったのに、よくわかってくれたな。うんうんと
立川はうなずいた。
「それ以上はやめとけ!首があぶないぞ!」
「マジですか!」
「マジマジ!おとなしく引き返しなさい!」
「そっち行ってもいいスか!」
予想外の返しにちょっと面食らったが、否定する理由をみつけられなかったので
立川は快諾した。
「来いよ!」
「はい!」

86:615(6/6)
07/01/08 02:14:51 LLiTHawT0
その後は部屋の中に濡れたものを吊って、お互いの近況を報告し合い、隣の家
から布団を運び込んだ。暇を持て余したため、くだらない賭をして今に至る。
ただごろごろしているだけで、それぞれの思惑や心情は一切話していない。
必要ないと思ったからだ。


「ま、思いつかんかったらいいですよ、モノマネ1回分借しで」
濱中はごろりと寝返りをうつと、得意げな顔で立川に笑いかけた。
「なんか気分悪いなぁ、今日はもう寝る」
「それはおおごとですね、寝ましょう」
フンと鼻をならして立川は目を閉じた。
これから騒がしくなるであろう下界を知らんふりするかのように、地上4階には
静かな夜が訪れる。


【残り36人】


87:代打名無し@実況は実況板で
07/01/08 02:28:43 PxbvEjfk0
新作キテタ━━━(゚(゚∀(゚∀゚(☆∀☆)゚∀゚)∀゚)゚)━━━!!!!!!
職人様おつです!
二人の麻痺加減が切なくて怖い…

88:代打名無し@実況は実況板で
07/01/08 02:58:21 /DzuDpeP0
立川キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!

89:代打名無し@実況は実況板で
07/01/08 10:18:49 JQeee5rmO
濱中再登場キタ――!
立川初登場キタキタ――!!

90:代打名無し@実況は実況板で
07/01/08 22:09:17 TZCAd37T0
新作キタ━━━(゚∀゚∀゚∀゚)━━━!!!!!
職人様乙です!


91:代打名無し@実況は実況板で
07/01/09 17:55:48 sUi8Xs3J0
これで全員登場したのか〜。
鳥谷&葛城組が気になる。

92:代打名無し@実況は実況板で
07/01/10 03:25:51 lis56qhi0
濱ちゃんどうする気だろう…

93:代打名無し@実況は実況板で
07/01/11 01:55:53 emspa8jb0
hosu

94:代打名無し@実況は実況板で
07/01/12 00:21:23 GMcVuVFo0
ほっっしゅ


95:代打名無し@実況は実況板で
07/01/12 23:15:47 kO0Z0QKLO
ヒマなうちに一言…



リアルはあんなことになっちゃって、擁護のしようもないし、しようとも思わないが。
でもここの前川のことは、おすぎよ帽子だけできたら連れて帰ってやってくれよ…ちょっと好きだったんだ、ここの前川。

96:代打名無し@実況は実況板で
07/01/12 23:22:01 j8VTEGwn0
もし本当に2ちゃん閉鎖になったら、続きってどうなるの?
暫定HTBR板の方で職人さん書き続けてくれるのかなぁ…

97:代打名無し@実況は実況板で
07/01/12 23:26:01 RTZsyVig0

 ε ⌒ヘ⌒ヽフ
 (   ( e'ω'a) <ほしゅグサ
  しー し─J


98:代打名無し@実況は実況板で
07/01/13 17:48:24 625qs2KC0
いちおう ほしゅ

99:代打名無し@実況は実況板で
07/01/15 06:48:06 eFYOWZ750
ほっしゅ

100:代打名無し@実況は実況板で
07/01/16 06:15:11 VDHB/S/CO
ほすほす

101:代打名無し@実況は実況板で
07/01/16 19:51:00 uu1Xpyqj0
ほしゅします。
もう2007年なんだねえ・・・

102:代打名無し@実況は実況板で
07/01/17 14:35:39 eKdExYdZ0
ほしゅ

103:174(1/6)
07/01/18 00:32:27 kqpHyExZ0
>>86
141.バカと煙はなんとやら

「木登り……ですか」
 そろそろ首が痛くなるほど直角に見上げていた木のてっぺんから視線を外し、
鳥谷敬(背番号1)は幹に手をついたり枝振りを確認したりしている葛城育郎
(背番号33)に目をやった。精一杯の訴えを込めて。
 2人で森の中を突き進み、山道に入ったところで、このまま場所も分からない
まま先に進むのは無謀と葛城が判断し、近くで目立って背の高い木に登り様子を
探ろうと提案したのはほんの数分前のことだったと記憶している。
「夜中に山登りって……」
 先程から盛んに、控えめに気の進まないことをアピールしているのだが、どうやら
張り切っているらしい提案者の耳には届いていないようだった。あるいは、届いて
いても聞き入れられていないか。
 鳥谷は東京都東村山市出身だが、残念ながら木登りとは余り縁のない幼少時代を
過ごした。
 鳥谷くらいの世代になれば、木登り遊びなど小学生の時にやらなければ、その後
一生やる機会には恵まれないだろう。周囲の環境にも寄るだろうが、中学以降も
やっていたらそれはなかなかの自然愛に富んだ溌剌少年である。
 目の前の葛城育郎はもしかしたらそのなかなかの溌剌少年だったのかもしれない。
 世代の問題か、と言ったら多分怒るだろうからそういうことにしておく。
「よっし」
(全然良くないし)
 鳥谷の胸中を余所に、どうやらその木を気に入ったらしい葛城が気合を込めた。
「なんや、おもんない顔してるなー」
「元々こんな顔なんで」
 さて登ろう、という体勢を見せた葛城がこちらを振り返り、景気の悪い顔をして
いる後輩にダメ出しをする。
「文句あるんか?」
「いいえ別に」
 ある、と言ったところで何だかんだと説得をされて強制されるのだろう。
 その作業に無駄を感じ、鳥谷はさらりと先輩の絡みを流した。

104:174(2/6)
07/01/18 00:33:32 kqpHyExZ0
 つれない後輩の返しに、何か言いたげな表情を作った葛城だが、結局何も言わず、
器用に幹の窪みに足をかけ、枝を伝って猿のように登っていく。
「まだ幹湿ってるから、足滑らせないように気を付けろよー。こう、スパイクの歯
を食い込ませてだなぁ……」
 心なしか活き活きして見える葛城の後について、そろそろと木を登り出す。
「お、結構高いな。ほら、見てみろよ」
 いち早く一番高いところまで登った葛城が、額に手を翳す仕草をして島を見回す。
「……そりゃあ葛城さんは得意かもしれませんけど、……俺はこういう野蛮なこと
はあんまり……」
「悪かったな、野蛮で」
 苦労してよじ登った鳥谷がかなり遅れて隣に辿り着く。憎まれ口を叩く余裕がある
だけ褒めて欲しいところだ。
 懸命に枝にしがみついて、一番安定する体勢を探る。
 正直、あまり高いところは好きではない。飛行機という事故る確率が百何万分の一
と言われる文明の利器でも「事故ったらどうするんだ」という恐怖が先立つ鳥谷に
とって、今しがみついている枝が折れる確率にふと思考を傾けると、今すぐにでも下
に救命マットを敷いて欲しい心境になる。ここから落ちたからといって、命を落とす
のは相当間抜けな落ち方をした時くらいだろうが。
「何か見えるか?」
 鳥谷が落ち着いたところで、すぐさま葛城は本筋に戻った。真剣な顔で、辺りを
見回す。
「何も」
 答え、鳥谷は慎重に首を回した。
「俺たちのいた家があそこですよね。あの窓からこっちの方角に爆発を見て……」
「思ったより遠いな」
 鳥谷が指をさした方向に、葛城がぽつりと感想を漏らす。
「位置的には―」
「体育館か……」
「何かあったんですかね」
「分からん」

105:174(3/6)
07/01/18 00:34:26 kqpHyExZ0
 鳥谷が目にした爆発との距離を考えると、おそらく、爆発は体育館の東か、もしく
は南側で起こったものだ。鳥谷達が過ごしていた民家と体育館の間には、今二人が
いる緩やかな山が横たわっている。
 その合間から爆発が見えたということは、少なくとも、それが上空で起こったもの
であることは間違いない。
(一体何が―)
 花火でもないのに、深夜の上空で瞬いたオレンジ色の光。
(空―飛ぶモノ……飛ばすモノ? 何か爆発物を投げたとか。いや、でも二回だ)
 一度目の爆発より、二度目の爆発の方が大きかった。二度爆発物を投げたか、一度
投げた爆発物に当たって何かが爆発したか。そもそも空中で何に当たる? 誰かが
何かを攻撃したとして、何を攻撃する?
(やっぱり空飛ぶモノ―気球とか、ヘリコプターとか、タコとか飛行機とか)
 少なくとも、参加者対参加者の争いで、あんな爆発は起こらないだろう。彼らは
全員地上にいる。
(ダメだ、幾ら考えても憶測を出ない)
 実際に現場に行ってしまえばいいのだが、いかんせん距離があるし、正確な位置
は把握できていない。
「……今日はここまでやな」
「……そうですね」
 切り出した葛城に、鳥谷は同意した。それに、あまり家を空けて、矢野を一人に
しておくわけにはいかない。
 結局取り立てて収穫もないまま、帰路につくことにした鳥谷は、ようやくこの危険
な場所から解放されることにほっと息をついた。
 だがそこで、新たに一つの危機に直面することに気付く。
「じゃ、降りるぞ」
「えっ、降りるんですか!?」
「ずっといたいならそれでもええけど……」
 こともなげに降りると言った葛城が、するすると下界へと降りていく。その姿に
余計に焦った。
「ちょっ、待てくださいよ! どうやって降りたら……うわっ!?」
 雨を吸い、ぬめった木の表面で足を滑らせかけ、慌てて手近にあった枝にしがみ
つく。成人男性の体重を受け、その枝が嫌なしなりを見せた。

106:174(4/6)
07/01/18 00:35:00 kqpHyExZ0
 登るよりも、降りる方が怖い。
(これはちょっと……)
 心底、己の選択を後悔した鳥谷敬だった。


「ほいっと」
 まさに猿のごとき手際の良さで地面に降り立った葛城が、聞こえよがしに軽快な
かけ声を発した。
「ちょっ、葛城さん! 人登らせといて無責任じゃないですか!?」
 上を見上げると、まだ中腹辺りで四苦八苦している後輩の間抜けなポーズにお目
にかかれた。普段取り澄ましている彼でも、やはり苦手なことはあるらしい。
 これは少しおもしろい発見だ。今度関本や浅井あたりに教えてやろう。
「じゃ、頑張りたまえタカシくん」
「葛城さーん!」
 悲鳴とも怒声ともつかないゴールデンルーキーの叫びを背中に聞きながら、葛城
はスタスタと来た道を戻った。
「あー、おもろ」
 意地の悪い笑みを浮かべながら、独りごちる。
 実にからかいがいのある後輩だ。
 もちろん、葛城も鬼ではないし、こんなところに彼を一人で放っていくほど考え
なしでもない。彼が見失わない程度のところで待っておいてやるつもりだ。あるい
は、その辺の茂みの影にでも隠れて脅かしてやろうか、などの子供じみたいたずら
心が過ぎる。
「ちょっとはマシになったかな……」
 適当なところで立ち止まり、木に凭れる。
 雨の中、森で行き倒れていた鳥谷と矢野を発見した時は、それはもう酷いもの
だった。
 いや、自分の状態も、大概良好なものではなかったが―
 木戸と別れた後、定時放送の岡田の言葉で、彼の証言が正しかったことが証明
された。もっとも、穿った見方をすれば、彼らが初めから口裏を合わせてそういう
設定にしている、とも考えられるのだが。

107:174(5/6)
07/01/18 00:35:49 kqpHyExZ0
 しかし、実際殺し合いの場で単体でウロウロするのは、それだけでも相当なリスク
を伴う。参加者全員に彼らの途中参加を公表し、『見かけたら遠慮せずに殺せ』と
指示するくらいだから、協力しているとは考えにくい。
 やはり木戸の言葉は真実だったのか。
(ほんまわけ分からんわ……)
 あれだけ真っ直ぐに自分を見てきた濱中が嘘をついており、どこまでも胡散臭かった
木戸が自分たちを助けに来た人間だという。
 外見や先入観では測れない。誰を信じていいのか、疑っていいのか。
 解答の出ない疑問に苛まれ、どうにかなってしまいそうだった。
 降りしきる雨に舌打ちしながら、地図にある民家を目指し森を横断していた葛城
が2人と一つの死体を見付けたのは、ほんの偶然だ。
 光の届かない暗い森の中で、うっすらと灯る明かりを見付けた。それは決して強
い光ではなかったが、夜闇に慣れた目に止まるには十分だった。
 近づこうとした矢先につまづきかけた、銃殺死体。桧山進次郎だった。
 これだけでももうパニックだった。
 近づくと明かりは地面に落ちた懐中電灯であることが分かった。その傍らには、
折り重なったまま動かない二つの人影。
 背筋が寒くなった。相討ちか、大量殺人か。三つの死体に囲まれ、大声で叫んで
その場から逃げ出そうかと考えた矢先―
 もう一人を守るようにして抱えている人物が、よく知る後輩であることに気付いた。
 そこで理性を取り戻すことのできた葛城が、彼らが生きていることを確認し、鳥谷
を起こしたことで今に至るのだが、目を覚ました彼の精神状態が安定したものでない
のは誰の目にも明らかだった。
 憔悴しきった顔。会話こそはしっかり出来ていたが、何を言っても反応が薄い。
 ただ、矢野を担いで帰ると言った彼に、代わりに担いでやると申し出た時の拒否
する頑なさは異様だった。
 とりあえず今は、葛城相手に憎まれ口を叩いたり、叫んだり感情を表に出したり
することは出来るようになったらしい。少しずつ、普段通りの姿を見せるように
なった後輩に安堵する。
(普段―いや、普段よりも、いい感じかもな)
 不謹慎だが、この場にそぐわない感想を抱く。

108:174(6/6)
07/01/18 00:37:05 kqpHyExZ0
 彼らの間に何があったのかは、鳥谷の話を聞きかじっただけでは真実は分からない。
 だがあんな風に、弱い感情を表に出せるのは良い傾向だと思う。
 決して順風満帆とは言えないルーキーイヤー。
 のし掛かるプレッシャーや謂われのない中傷に、心身共に疲弊していないわけが
ないのに、決して弱音を吐かないタフなルーキーが葛城は心配だった。
 気晴らしにと強引に飲みに連れて行ったりもしたが、愚痴のようなものはトンと
聞いたことがない。結局、葛城の方が日頃のストレスをぶちまけ、それに聞いて
いるのか聞いていないのか分からない顔で頷くのが常だった。
(それがどうだ? 何があったのか知らんが……)
 「怖い」と彼は言った。
 そんな風に弱音を吐いてくれたのが、意外に嬉しかったりするのだ。
(あいつにとってそれは、多分……いい傾向だ)
 それを『成長』などと言う言葉でまとめるのは、まるで自分が彼の親か何かの
ようでおこがましい話ではあるが―
「葛城さん?」
 唐突に、名前を呼ばれた。
 それは、予想していたのとは別の方向から。
「!?」
 注意力が散漫になっていた自分に気付く。慌ててそちらを振り向くと、いきなり
懐中電灯を向けられた。眩しさに思わず目を瞑る。
「あ、すみません。光量を落とした方がいいですね」
 落ち着いた声と同時に、一気に辺りが薄暗くなる。手で押さえるか、布をかける
かしたらしい。うっすらとこちらを照らす明かりは、相手の顔を確認するには十分
だった。
 一本の木の裏から、のそりと姿を現した人影にギクリとする。
「伊代野……?」
 伊代野貴照(背番号67)の幼さを残した顔が、じっとこちらを見つめていた。 

【残り36人】

109:代打名無し@実況は実況板で
07/01/18 00:46:06 4O0t+4/60
新作キタ━━(゚∀゚)━━━!!!
(=゚ω゚)ノぃょぅのキタ━━(゚∀゚)━━━!

職人さん乙です!
続きが…続きが気になるよ葛城ーーー!!!

110:代打名無し@実況は実況板で
07/01/18 00:57:30 HqYNqgjDO
ギャ―!立川に続いて出番ないNo.2だった伊予野もキタ―!!
職人様乙です!葛城、いきなり大ピンチだががんばれ(涙)

111:代打名無し@実況は実況板で
07/01/18 01:23:31 rQFNQ3010
新作乙乙乙
伊代野がどんなだったか読み返さないと思い出せないぜ・・・

112:代打名無し@実況は実況板で
07/01/18 05:30:48 RKcpBe2rO
なぁみんな今日球団事務所に電話して海苔獲得するよぉにお願いしようや!
確かにゴタゴタあって批判的になるかもしれないが…関西の星をこのまま見捨てるには可哀想!
代打の切り札でも使ってくれとお願いしようや!
昔の阪神なら間違いなく獲得する!
今の球団の考えにみんなで意見してみよや!
ファンの声で球団を動かそう!
今すぐ104で甲子園阪神球団事務所の電話番号を調べよう!

113:代打名無し@実況は実況板で
07/01/19 12:27:17 l/Lyiu/bO
☆ゅ

114:代打名無し@実況は実況板で
07/01/19 15:25:14 NTzWEv2P0
捕手

115:代打名無し@実況は実況板で
07/01/20 01:06:26 O56upr4/O
保守age

116:代打名無し@実況は実況板で
07/01/20 22:53:23 B43ZmKps0
いちおうほしゅ

117:代打名無し@実況は実況板で
07/01/21 11:49:47 sjCfFAbS0
ほしゅしときます

118:代打名無し@実況は実況板で
07/01/22 06:50:45 yj8d7MmJ0
保守!

119:代打名無し@実況は実況板で
07/01/22 20:45:11 im/crbRA0
保守保守

120:代打名無し@実況は実況板で
07/01/23 11:13:59 yvNN2KlW0
保守保守保守

121:代打名無し@実況は実況板で
07/01/23 13:31:00 L0muOypBO
矢野

122:代打名無し@実況は実況板で
07/01/24 01:01:32 zmoizmgCO
浅井

123:代打名無し@実況は実況板で
07/01/24 19:12:25 vw0dfYVB0
狩野

124:代打名無し@実況は実況板で
07/01/25 02:49:37 OtLcPauT0
野口


125:代打名無し@実況は実況板で
07/01/25 19:20:46 MBNAqMOs0
小宮山

126:代打名無し@実況は実況板で
07/01/25 22:34:17 mMY3aQkAO
珍カス魂

127:924(1/3)
07/01/25 23:19:36 uIE0ridb0
>>108より
142.逡巡

雨はすっかり上がり、雲の切れ目から煌々と輝く月が顔をのぞかせていた。
ヘリコプターの周辺は墜落の影響で木々がなぎ倒されており、ほとんど
さえぎられることなく青白い光が降りそそいでいる。くっきりと照らし出された
四つの人影がうごめくさまを、秀太は息を殺して見つめていた。
どうやら中村豊は彼らのもとに帰っていないらしい。負傷などでアジトに
留まっている可能性もあるものの、他のメンバーがこぞってここに来ている
ところを見ると、戻っていないと考えるのが妥当だろう。ならば、四人は今でも
行方不明となった中村と自分を案じているのだろうか。自分の裏切りも
知らず、なんの疑いもなく待ってくれているというのか。

秀太は自分の胸がきりきりと痛むのを感じた。
(今さら戻れるわけ……ないのに)
中村を殺そうとしただけではない。あれからさらに庄田の命を奪い、関本に
傷を負わせ、今またウィリアムスを捕らえて恐ろしいプロジェクトの犠牲に
供しようとしている。こんなにも罪を重ね、どうして戻れようか。
(バカ! そんなこと、どうでもいいだろ!?)
いつまでも迷いを捨てきれない自分に腹が立つ。今考えねばならないのは、
突然現れた邪魔者たちをやり過ごして一刻も早くウィリアムスを首脳陣に
送り届けること。ただ、それだけだ。

だいたい戻るも何も最初から―ゲーム開始前に岡田に持ちかけられた話を
受けたあの瞬間から、自分は彼らの仲間になどなり得ない立場にあるのだ。
思い出してみるがいい。ゴレンジャーに喜んで加わったのも、元はといえば
彼らを殺すためだった。
(殺す―)
思わず地面についた指の先に、冷たく固いものが触れた。見ると、ウィリアムスのマシンガンだった。

128:924(2/3)
07/01/25 23:21:27 uIE0ridb0
(これで……)
秀太は恐るべき威力を持つその武器を拾い上げた。自分の拳銃とは比べ物に
ならない。これなら、たとえ相手が四人でも問題ないだろう。向こうが殺意を
持たない人間なら、なおさらだ。
(いっそ今、殺してしまえば……いいんじゃないか?)
これほどまでに悩むのも、苦しいのも、全ては目の前の四人のせいだ。
この未練を断ち切らない限り、自分は迷い続けてしまう。
「秀太―? 中村さん―!?」
不意に、赤星の声が聞こえた。突然名前を呼ばれた秀太はマシンガンを
握り締めたまま、雷に打たれたように全身を引きつらせた。


「待て、レッド」
金本は思い切り腕を伸ばし、走り出した赤星の襟首をむんずとつかんで
引っ張った。
「慌てるな。まだあいつらとは決まっとらん」
「でも、二人じゃなかったとしても、誰かがそこにいるんですよ? もしかしたら、
ケガでもしていて……」
「わかっとる。まあ、落ち着け」
もがく赤星を制して下がらせると、金本はおもむろに一歩前へ出た。

「―そこの茂みの陰にいる二人、聞こえるか? わしは、金本じゃ。赤星と
 藤本、的場も一緒におる」
金本は大きな声でゆっくりと呼びかけた。
「なんで分かるかって? こっちには選手の居場所が分かる探知機があるけえ
 のう。誰かということまでは分からんが、とにかくそこに二人おるのは
 お見通しなんじゃ。で、四人も一緒にいるから分かると思うが、わしらは
 殺し合いに乗る気はない。そっちも二人でいるということは、多分そうなん
 じゃろう。違うか?」
二人一緒にいるからといって、彼らが必ずしも仲間同士であるとは限らない。
たとえば殺しあった者同士が相討ちとなり、双方動けず倒れているのかも
しれない。だが、とりあえずは仲間だという前提で声をかけてみる。

129:924(3/3)
07/01/25 23:23:02 uIE0ridb0
「もしそうなら、そこから出てきて、わしらの仲間になってくれんか?」
一番言いたかった台詞を投げかけ、金本は相手の反応を待った。だが、
前方の茂みは相変わらず不気味な静寂に包まれたままだった。
「ほれ、お前らもなんか言わんか」
金本は振り返り、残りの三人を促した。
「……そうです。金本さんの言ったとおり、僕らは殺しあう気なんかありません。
 というより、何とかしてこんなゲームを止めたいんです」
赤星がまず口を開いた。藤本と的場が負けじと続く。
「そのために、もっと仲間がほしいと思ってるんです」
「頼むから、俺たちと一緒に来てください」


マシンガンを両腕でかかえ、秀太はじっと身を固くしていた。かつての「仲間」
たちの無邪気で真摯な訴えが幾本もの矢のようにわが身を突き刺し、痛め
つける。彼らは変わらない。何も変わっていない。一つまた一つと罪に手を
染め汚れていく今の自分には、その純粋さがねたましく、憎しみすらおぼえる。
(だから! 殺してしまえ―)
だが、なぜか身体は動かなかった。


「なんで出てきてくれん? ひょっとして、ケガでもしていて動けんのか?
 だったら、今からそっちへ行ってもいいか?」
ついに金本は思い切った。もし相手が負傷しているなら、急がねばならない。
「サル、ちょっとの間こいつを持っとけ」
相手に意識がある場合、手ぶらで近付かなければ警戒させてしまうと思い、
手持ちのサブマシンガンと懐中電灯を傍らの藤本に渡そうとした時だった。
「あ―」
その時、探知機に目を落とした赤星が声を上げた。
「後ろから、誰か来ます!」

【残り36人】

130:924
07/01/25 23:30:20 uIE0ridb0
すみません、修正します……
>>127の最終行「見ると、ウィリアムスのマシンガンだった。」
改行し忘れていました。
それから>>129の下から2行目「その時、」は不要でした。

131:代打名無し@実況は実況板で
07/01/25 23:41:57 MBNAqMOs0
フオオォオ!!!新作キタ━━(゚∀゚)━━━!
職人様乙です!!
どうなるんだゴレンジャー・・・!(ノД`)
秀太の葛藤も辛いorz

132:代打名無し@実況は実況板で
07/01/26 00:50:32 6BaZyOe50
お、お、俺のゴレンジャーは助けて・・・殺さないでえええええ。・゚・(ノД`)・゚・。

133:代打名無し@実況は実況板で
07/01/26 01:04:42 M6RoR5k5O
新作キタ━━(゚∀゚)━━!!!!
乙です!

今回やっと気がついたけど、秀太って殺人にはまだ庄田1人しか成功してなかったのか…
あとは失敗続きで…

134:代打名無し@実況は実況板で
07/01/26 06:57:10 hS8tt0GZ0
秀太さん、やさしい秀太さんになってよぉぉぉ!

135:代打名無し@実況は実況板で
07/01/26 14:17:59 dPxBjonX0
新作乙です。
って、誰が来たんだぁぁぁぁぁぁ!!!
この「後ろからの誰か」がゴレンジャーが無事ですむかの鍵を握っているのか!?

136:代打名無し@実況は実況板で
07/01/27 19:53:14 sf7Qs0GqO
捕手

137:174(1/13)
07/01/27 23:29:30 E5f1KWJy0
>>129
143.Thank you for your everything

「こんな夜中に木登りですか」
 世間話のように切り出してくる伊代野に、葛城は一歩下がって相手の様子を探った。
「さっきの爆発、聞きました?」
「ああ……」
 だが、木の陰から出てきた伊代野は、それ以上近づいてくる気はないようだった。
向こうも警戒しているのかもしれない。
「何が……起こってるんでしょうね?」
 こちらに分かるわけもないことを問いかけてくる声は、落ち着いてはいるが、不安
に揺れてるようにも聞こえた。
 薄暗い中、目を凝らしたらやっと見える、泥にまみれたユニフォーム。雨上がり
の森で木登りをしていた自分も、たぶん向こうから見たら同じように泥まみれに見
えるのだろう。
「葛城さん」
 十分な距離を置いたまま、相手を観察していた葛城に、積極的に声をかけてくる
のは伊代野の方だ。
「ご相談したいことがあるんです」
 もう一歩、下がった。
「警戒しますよね?」
 読めない相手の動向に、明らかに警戒心を増した葛城に気付いたらしい伊代野が
苦笑する。
「俺が危ないと思ったら、いつでも逃げてください」
 そう言って伸ばされた人差し指の先を、伊代野が懐中電灯で照らした。
 一本の倒木が横たわっていた。
 

 伊代野が倒木の端に座った後、葛城は逆の端から恐る恐る近づき、バッド一本半
程距離を空けて座った。
 落ち着かない空気の中、お互いが体勢的には落ち着いたところで、沈黙が背に
のしかかった。

138:174(2/13)
07/01/27 23:30:34 E5f1KWJy0
「実は俺、人を殺してしまったんです」
「……っ」
 唐突に切り出された告白に、全身が強ばった。恐怖というよりは、そのことを自分
に告白してきた伊代野に、自身の罪をも見透かされているような衝撃を感じた。
 吐露した彼の横顔をのぞき見る。
 膝の上に組まれた両手に落とされた視線。
 まるで牧師に向かい懺悔するようなその仕草に、肋骨の内側がサボテンを押し込めた
ように痛んだ。
 自分も言ってしまうべきだろうか。
 鳥谷にも言っていない秘密だ。
「……実は……俺も人を殺した」
 絞り出した声は、ギリギリ伊代野に聞こえたはずだ。それでも、彼はさほど驚いた
様子は見せなかった。一度だけこちらを見やり、また視線を手元に落とす。
 その仕草に促されるように、葛城は今まで誤魔化し、隠し続けていた思いを吐き
出した。
「不可抗力だったんだ。―いや、言い訳やな。だけど俺に殺意はなかった。殺す
気なんてこれっぽっちもなかった。ハメられたんや……あいつに」
「その気持ち、よく分かりますよ」
 優しく、頷く伊代野。
 彼も人を殺して『しまった』と言った。
「でも、人殺しは人殺しですよね」
 そのセリフが、ズシンと心臓にのし掛かる。
「俺思ったんです。人殺しの罪に段階はあるのかなって。ほら、裁判とかでは同じ
人殺しでも、罪の重さって違ってくるじゃないですか。あれって正しいと思います?」
 裁判、といきなり現実的な話を持ち出されて、葛城は一瞬回答に詰まった。あまり
真剣に考えたことはなかった。ニュースで流し見るだけのそれは、どこか別世界の話
のように思っていたからだ。
「俺は正しいと思ってたんです。でも、いざ殺してみると、よく分からなくなって……」
 伊代野の視線に呼応するように、組まれた両手で作られた輪が歪んだ。

139:174(3/13)
07/01/27 23:32:01 E5f1KWJy0
「だってどんな事情があっても、人を殺したことに変わりはないでしょう? 俺たち
は今殺さなきゃ殺されるような世界にいるけど、それでも人殺しは人殺しだ。正当化
なんてされない」
 一息でそう言った伊代野の顔は、奇妙に歪んでいた。泣き出しそうにも見えるし、
笑い出しそうにも見える。
 やがて大きく息を吐き出し、結論を突きつける。 
「人殺しは罪なんです。罪に段階なんてない」
「……そんなに、自分を責めるな」
 我ながら陳腐な台詞だと思いながらも、慰める。
 うなだれた伊代野の姿は決して格好のいいものではないが、そんな彼に、葛城は
尊敬の念すら抱き始めていた。
 彼は自分が逃げ出していた問題に、真っ向から立ち向かっているのだ。
 その末に苛まれている。
 考えれば考えるほど、自分の罪の重さに、自己嫌悪の沼にはまっていく。
「俺も、お前と同じやからよく分かる。『仕方がない』なんて言葉本当は使っちゃ
いけないんや。その人の命を奪ったという事実そのものがその人に対する罪なんやから」
 佐久本を思い出す。彼には妻も子もいたはずだ。
 彼の人生を奪うと同時に、見知らぬ彼の妻の夫と子供の父親という大切な存在を
奪ってしまった。
 伊代野は理屈っぽい男だった。
 行き当たりばったり、勘と本能で行動する葛城とは違い、己の行動一つ一つに納得
できる意味を持たせるのを好む男だった。
 そしてその習性は、この場合不幸を呼ぶもの以外何ものでもなかったに違いない。
「でもな、自分を正当化したくないからって、自分を責めてばかりいてもしょうが
ないやろ? 頭おかしくなっちまう。……ああもう、俺もこんなこと言ってたら自分
がすっげー自己中な嫌なヤツな気がしてイヤなんだけどよ。割り切るっていうか……」
「割り切る?」
 ピクリと、伊代野の肩が揺れた。

140:174(4/13)
07/01/27 23:34:51 E5f1KWJy0
「そう。だってさ、起こっちまったもんは仕方がないんや。……あー、また仕方が
ないって言葉使っちまったな。仕方がなくはないんやが、ただずっと自分の罪を責
めててもさ……なんつーか、前に進まないやろ? あんなことがあったけど、俺は
やっぱり生きていたいと思うし、それはエゴだって分かってるけど、誰かを殺した
からじゃあ俺も償って死にますっていうのもまた違うと思うんや。生きて償うって
のが、どうやって出来るのか自分でもよく分からんけど……」
「割り切る……」
「あ、割り切るってのはちょっと嫌な表現やったな! そんな無責任なもんじゃ
なくて……」
「よく分かりました」
「え?」
 その声の場違いな明瞭さに、思わず聞き返した。
「ありがとうございます、葛城さん」
 こちらを向いた伊代野の瞳には、力強い輝きが戻っていた。
「葛城さんに相談してよかった。やっぱり、自分が間違っていないって自信が持て
ました」
 興奮気味に身を乗り出した彼の口から、止めどなく言葉が溢れた。 
「そうです。割り切るしかないんです。本当はあの時分かってたんです。絶好の
チャンスだったから沖原さんを殺した時、俺に罪悪感はなかった。あの時あんな
にも容易く引き金を引けたおかげで、俺は生き残る為に必要な勇気を手に入れる
ことができた。―1人殺しても、2人殺しても罪の重さは変わらないって」
 この男はこんなにも饒舌だったのかと。
 息を継ぐ間もなく、滑舌良く巻くし立てる伊代野に圧倒されていた。
 だが最後の言葉に、葛城は自分が押すボタンを間違ってしまったことを悟った。
 いつの間にか、伊代野との間合いが詰まっていた。間近で見るユニフォームの
汚れが泥ではなく、赤黒く染みついた血の跡であることに気づいた時―伊代野
が動いた。
 ようやく身体が動き、逃げだそうとした葛城の背中に熱い衝撃が走った。
「ぐっ……」
 激痛に、その場に倒れ込む。何とか身を捻ると、薄暗い中に浮かぶ白々しい
輝きが目に入った。
 無造作に伊代野がぶら下げる、日本刀。鋭利な刃にこびりついた、渇いた血。

141:174(5/13)
07/01/27 23:35:31 E5f1KWJy0
(俺は……また騙されたのか?)
 童顔で年以上に幼く見える彼の姿に、同じく童顔の後輩の顔が重なる。虫も殺さ
ないような顔で自分を唆し、罪を背負わせた悪魔。
 伊代野もまた、あの男と同じ種類の人間だったのだろうか。
(違う。こいつは迷ってたんだ)
 時間が経つにつれ、彼が罪とは何か、人殺しとは何かという課題に苛まれていた
のは事実だ。あの告白は決して偽りのものではない。そう信じたい。
 彼が迷った末に相談した相手が葛城であったのは偶然だ。そして葛城が人を殺した
過去を持つ人間であったのも偶然だ。
 そんな偶然が重なり、葛城は逃げずに人殺しの伊代野の相談を受け―そして、
引き金を引いてしまった。
(俺はどう応えれば良かったんだろう)
 人殺しは悪だと責めて立てれば良かったのだろうか。
 一人殺すのと二人殺すのは罪の重さが全然違うから、今ならまだ償える、間に合う
と気休めを嘯けば良かったのだろうか。
「葛城さん!?」
 その時、今一番聞きたくない声が耳に入った。
(ダメだ―!)
 地面に顎を擦り付けながら、無理矢理顔を動かす。
 駆け寄ろうとしていた鳥谷が、状況を把握し、愕然とした様子で足を止めた。
 もう葛城は時間の問題と思ったのか、伊代野の足が鳥谷へと向く。
 日本刀を振り上げ、飛びかかろうとした足にしがみついた。
(頼む、来るな、来ないでくれ!)
 完全に伊代野の殺意は今、鳥谷に向いている。不用意に近づいたら、葛城の二の舞だ。
「くっ……」
 しがみついてきた葛城に、伊代野が動きを止められ、疎ましそうに呻いた。
 力任せに足を振り上げようとしてくる相手に、石にでもなったつもりでかじりつく。
 背中の傷は、もはや痛いという感覚のレベルを逸していた。致命傷だ。今すぐ救急車
が駆けつけてくれて集中治療室に放り込んでくれたら一命を取り留めるかもしれないが、
そんな期待はこの島では出来そうにもない。
(俺は死ぬ)
 だったら……

142:174(6/13)
07/01/27 23:36:10 E5f1KWJy0
(可愛い後輩を逃がしてやるくらいしか出来ることはないんじゃないか!?)
「鳥谷! 逃げろ!!」
「でも……!」
「早く行けぇ!」
 地面に石膏で塗り固められたように動かない鳥谷に舌打ちする。自分だって長く
は持たない。押し問答をしている時間はない。
「くそったれ!」
 自分はまだ生きている。やがて死ぬにしても、まだ生きているのだ。だから、彼
は葛城育郎を見捨てることが出来ない。
(俺を見捨てて逃げろと言って逃げるヤツじゃないか……だったら―)
 言い方を変えるしかない。
「お前は、早く矢野さんのトコに行ってやれ!」
 その言葉に、初めて鳥谷の表情に迷いの色が浮かんだ。
「あんだけ離れようとしなかったやろうが! お前が死んだらあの人はどうなるんだ!」
 どうなるかなんて知らない。高熱の病人を放っておくのは心配だが、普通なら
眠っていればそのうち治るし、風邪さえ治れば彼は一人でも生きていけるだろう。
 葛城が知る限り、矢野輝弘という男はとても強い。
 肉体的な強さというわけではない。筋力や喧嘩の強さでは、同じくチームリーダー
で同級生の金本や下柳には劣るだろう。
 だが、内面的な、芯の強さという意味では、彼らにも勝るかもしれない。
 少なくとも、10歳以上年下の鳥谷が守ってやらねばならないほど、彼は弱い人間
ではないはずだ。
 だがそんなことはどうでもいいのだ。口実が必要だった。
 理由はよく分からないが、ここまでの言動を見る限り、鳥谷は矢野に対して何らか
の使命感や責任感を負っている。
 それを利用して、彼をこの場から追い返すことが出来ればそれでいい。
(俺なんかに付き合って、ここでお前は死ぬわけにはいかないんだろうが……!)
 未来のある若者。チームを、もしかしたら球界を背負うことになるかもしれない青年。
 無限に広がる可能性や才能が妬ましくなかったと言えば嘘になる。だが、こんな
ところで未来を閉ざされるのはあまりにも悲しい。そんなことで喜べるほどエゴの
塊ではないつもりだ。
 彼の才能の裏付けには、驕らない努力があることはよく知っているから。

143:174(7/13)
07/01/27 23:38:29 E5f1KWJy0
「とっとと行け! 先輩命令や!」
(不甲斐ねぇ先輩だけどな!)
 トレードで流れてきて、一軍とファームをうろうろしている先輩と、鳴り物入り
で入団した期待のゴールデンルーキーの後輩。
 彼が名実共にタイガースの主力になった暁には、世話をしてやった礼にメシでも
おごらせる予定だったが、どうにもそれは敵わないらしい。
「俺は大丈夫やから!!―鳥谷ッ!!」
 葛城の全身全霊の叱咤に、一瞬、鳥谷の顔が泣きそうに歪んだ。
「信じてますからッ!!!」
 一言そう叫び、ようやく鳥谷が踵を返した。そこからは、振り返りもせずに全力
で走り去る。そのことに、葛城は安堵した。
(そうだ、それでいい)
 『信じている』という言葉は、そのまま自分が『大丈夫』といった台詞にかかる
のだろう。残念ながら大嘘だ。自分が彼に嘘をつくのはこれが初めてではないから、
まあ許してくれるだろう、という適当な言い訳を考える。
(ああそれとも―)
『それとも、俺じゃあ信用ないか?』
 先延ばしにされていた、あの質問の答えだろうか。
 それなら、死ぬ前にいい土産が出来た。
 目の前が暗くなっていく。手探りで伊代野の腕を伝い、右手に握られた日本刀を
掴んだ。片刃が指に食い込む激痛も、袈裟切りされた背中の傷に比べれば蚊に刺され
たようなものだ。
「っ……がぁぁぁっ!」
 今まで引き留めていた足を離して、タックルをかます。元々体重をかけていた方向
に急に力を加えられ、よろめいた伊代野に飛びかかった。
(こいつも決して悪いヤツじゃなかったんだ)
 少なくとも、人を殺した罪というものを真剣に考えるだけの良心と倫理を持った
ヤツだった。もしかすると、考えることを放棄した自分より良心的な人間だったかも
しれない。
 彼も自分も、このゲームの犠牲者だ。自分達が殺しているのではなく、このゲーム
が殺させているのだ。

144:174(8/13)
07/01/27 23:39:28 E5f1KWJy0
「お前みたいなヤツは、これ以上罪を犯しちゃダメなんだよ!!」
 倒れ込んだ相手に馬乗りになって叫ぶ。
「お前やって分かってンやろ!? これ以上繰り返してどうする!?」
 一人殺すごとに、きっと彼はまた悩み続ける。
 悩んで、苦しんで、そして壊れていく。
 悲し過ぎる罪の連鎖。
「お前ははじめっから人殺しになんか向いてなかったんや! もっと何も考えずに殺
れるような人間じゃなきゃあかんねん! お前は、イイヤツ過ぎんだよ!! ゲホッ
……ガ、…ゴポ……ッ!」
 よくもまだこんなデカイ声が出せるものだと思う。そのツケか、肺の辺りから不快
な感覚が迫り上げ、噎せ返った拍子にごぽごぽと朱い血が吐き出された。嫌な音を立
てて落ちたそれが、組み敷いた伊代野の顔に飛び散る。
 フッ……と、他人の吐血まみれになりながら、伊代野が嗤った。
 その瞬間、この男と何かを共有できた気がして、葛城も笑ってみた。
 多分、笑顔を作れるだけの筋肉は、もう動かなくなっていただろうが。
 刃を握る手に力を込める。そろそろ、数本指が切れ落ちた頃だろうか。
(なぁ神様)
 いるのかいないのか分からない、高みの見物をしている白髪白髭の爺に問いかける。
(やっぱり、人殺しに段階はあるのかい?)
 二人目を殺したら、やっぱりそれは地獄行き決定なんだろうか。
 それが誰かを助ける為でも。
 だったら、相討ちはカウントに入れないようにして欲しい。お互い殺し合ったん
だからプラスマイナスゼロだ。よく分からないがそういうことにしておこう。
(伊代野―)
 あの世にも情状酌量の余地があるなら、是非とも弁護人には伊代野に立ってもらい
たい。佐久本は多分弁護してくれないだろう。訳も分からず殺されたのだから。
(代わりに俺が、足りねぇ頭で精一杯お前を弁護してやるから)
 意識を失う直前。
 最後の力を振り絞り、葛城は伊代野の首に日本刀を振り落とした。
 
 天国へ行く勝訴をもぎ取ったら、2人で一緒に祝杯を挙げよう。

145:174(9/13)
07/01/27 23:40:13 E5f1KWJy0
 木の根に躓いて転倒する。
 服の上から擦った膝が痛い。
 泥と血の味を口の中に感じながら、鳥谷は額を土にこすりつけて奥歯を噛み締めた。
 ここまで全力で走ってきて、身体は動くことを拒否していた。それでも、無理やり
に身体を動かそうと藻掻く。脳をドラム式洗濯機に放り込んだような混乱。まるで
無茶苦茶に、極彩色の感情がぐるぐると駆け巡る。
(帰らないと……)
 ほんの少し目を離していた間に、葛城は殺された。
(そうだ、殺された―!)
 その事実にグラリと視界が揺らぐ。
 『信じている』? どの口がそんな無責任な言葉を吐き出すのだろう。
 どう見ても致命傷だ。日本刀で背中を裂かれ、こんなろくな医療設備もない場所
で生き延びられるわけがない。それは本人だって分かっていたはずだ。それなのに
―だからこそ、身を挺して自分を逃がそうとしてくれた。
 立ち眩みを起こしそうな絶望に苛まれる。
 堪え、鳥谷は立ち上がった。
(そうだ、殺された)
 そして、自分は見捨てた。
(早く、帰らないと……)
 ほんの少し目を離している間に、今この瞬間、矢野が目を覚まして、再びあの家
を離れる決意をしているかもしれない。
 誰かが忍び込んでぎらついた刃を向けているかもしれない。
 今まさに、誰かが忍び込んで。足音を潜ませて……
 眠る矢野輝弘。その喉元に突き付けられた―月光に浮かぶ刃の輝き。
「……っ!」
 想像の中の白刃に、数分前にリアルに見たそれが重なり、鳥谷は息を飲んだ。
 少し。
 ほんの少し。
 ほんの数分。
 ほんの数秒。
 ほんの少し前まで、確かに葛城育郎は隣で笑っていたというのに。

146:174(10/13)
07/01/27 23:41:29 E5f1KWJy0
「何で……」
 別れはあまりにもあっさりと訪れた。重い言葉を交わす暇すらなかった。
『そりゃあ葛城さんは得意かもしれませんけど、……俺はこういう野蛮なことは
あんまり』
『悪かったな、野蛮で』
『ちょっ、葛城さん、人登らせといて無責任じゃないですか?』
『じゃ、頑張りたまえよ、タカシくん』
 彼と別れる前の最後の会話。あまりにも軽くて、馬鹿らしいそれに後悔する。
 森の中で矢野と行き倒れていた自分を助け、ここまで世話してくれた先輩に、
悪態しかついていない。
『それとも、俺じゃあ信用ないか?』
 あの時、応えなかった自分に彼はどう思ったのだろうか。
 信用の定義なんかを小難しく考えて、結局その答えを先延ばしにしてしまった。
 信じていなかったわけではないのに。
 信頼とか信用とか、そんな無形のものを理屈と言語でこねくり回して、賢くなろう
としていた。
(誰かを信じることは理屈じゃないのに)
 自分の信頼の在処を探したとき、思い浮かんだ顔が葛城育郎だった。
 何故あの時の気持ちをそのまま言葉に出来なかったのだろう。
 自分のことで精一杯で、彼がどんな気持ちで自分に接してくれていたのか、気遣う
余裕などなかった。結局、葛城がどんな体験を経て、あの時あそこにいたのか、それ
すらロクに聞けずじまいだった。
 つつけば溢れて零れ出しそうな脆い均衡に縋って、現状から目を逸らしていた。
 多分、自分はそういう人間なのだ。
 真正面からぶつかることも、自分の気持ちを正直にぶつけることも、避けて取り
繕って、大切なことを伝え損なうのだ。

147:174(11/13)
07/01/27 23:42:16 E5f1KWJy0
 助けてくれてありがとうとも。
 一緒に来てくれてありがとうとも。
 信用してくれてありがとうとも。
 心配してくれてありがとうとも。
 言わなきゃいけないことはたくさんあって、言うチャンスはたくさんあったはず
なのに。
「俺は何一つちゃんと伝えてない……ッ!」
 軽口を交わせる居心地の良さに甘えていなかったか。
 目の前を遮る枝をちぎり取る。自身への怒りの捌け口を求め、それすらも原動力
に変えて、鳥谷は限界の来た身体に鞭打って走り続けた。
(いつも同じだ)
 和也も、桧山も、葛城も。
 失う度に後悔ばかりしている。
 自己への嫌悪感に、ココロがどうにかなりそうだ。
(もう、繰り返さない……)
 涙と泥を袖でぬぐい、鳥谷は口を結んだ。
 これ以上失いたくはない。伝え損ないたくない。
 誰のために葛城を見捨てて来たのか、誰のためにここまで走り続けているのか、
それが明確なのだけが今の鳥谷にとっての救いだった。きっと何もなく逃げ出した
のなら、己が生きていることすら許せなくなる。
 鬼のような形相で、刃物を振りかざす伊代野を前にして、咄嗟に足がすくんだ。
(俺は―)
 無力だ。
 誰かを見捨てて逃げるしか出来ない人間が、誰かを護ろうなんて思い上がりもいい
ところかもしれない。それでも。
「俺は―」
 視界が開け、集落が近づいてくる。もう何度も通ったその道を、ほとんど感覚だけ
で走り抜け、鳥谷は一見の民家を目指した。
 質素な門構えの一軒家が近づいてくる。
『矢野さんのこと、頼むぞ』
『お前が死んだらあの人はどうなるんだ!』
 彼は―矢野輝弘は―あそこにいるだろうか。


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