阪神タイガースバトル ..
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342:174(1/5)
07/04/10 23:26:57 QZzdt7eb0
>>258
147.千載一遇

「ふぅ……」
 手にしていた黒いアタッシュケースを地面に置き、背中に担いだウィリアムスを
担ぎ直して、田中秀太は溜息をついた。一人で運ぶには少々キツイ荷物の量だ。
 パスワード式のキーロック機能がついたアタッシュケースは、見た目から推測
出来る重量の倍は重い。中身が重いのかケース自体が重いのか知らないが、それが
余計に秀太の苛立ちを増長させていた。
 地図を片手に、鬱蒼と覆い茂る森の前に佇む。だいたいこの辺りから先が、体育館
を内包する禁止エリアになるはずだ。
 秀太はイヤホンを装着し、腕のトランシーバーに口を寄せた。
「田中秀太です」
『ウィリアムスか』
 秀太への労いの言葉もなく、彼が担いでいる男の名前を口にする。
 応えたのは岡田でも平田でもなく、平塚だった。先程の急な用事の押し付けの時
から、こちらへの対応は全て平塚が行っている。他の人間は手が空いていないの
かもしれない。
「はい」
 やはり見られている。
 先の連絡時とは違い、迷いなくウィリアムスの名を口にした平塚にそう確信する。
 口元を引き締め、秀太は悟られぬようこっそりと周囲を見回した。カメラがどこか
に付いているはずだ。
(あそこか―?)
 斜め右前方の木の枝の一部に、不自然な光沢が見えた。
 怪しまれないように顔の向きを注意しながら目を凝らす。暗くてよく見えないが、
そう意識してみると、そこに人工的な何かが取り付けられていて、雨水に濡れて
月明かりを反射しているようにも見える。
 あれがカメラだとしたら、あんなものがいったい幾つこの島に設置されているの
だろうか。

343:174(2/5)
07/04/10 23:27:51 QZzdt7eb0
『よし、一時的に禁止エリアを解除した』
 カメラ捜しに集中していると、少し長めの沈黙の後、平塚の声が耳に流れ込んで
きた。
『入っていいぞ』
「はぁ……」
(入れって言われても……)
 いくら解除されたと言われても、先程まで一歩踏み込めば首が飛ぶエリアに躊躇
なく足を踏み入れるのはメンタル的に非常に困難だ。
 もし何かの間違いで解除されていなかったり、彼の言葉が嘘だったりしたら、自分
は間違いなく死ぬのだ。
『何をもたもたしてるんだ。早くしろ』
 平塚の声には、あからさまに苛立ちが籠もっていた。
 仕方がなく、秀太は大きく息を吸い込んで腹を決めた。おそるおそる足を踏み
入れる。
 何も起こらない。
 もう数歩歩き、完全に禁止エリアに入ったことを確信し、ほっ……と安堵の息を
漏らした。
『入ったな。じゃあ通信を切るぞ。以後、通信には平田コーチが対応する』
 語尾が切れるか切れないかというタイミングで、慌ただしく平塚からの連絡は
途切れた。よほど急ぎの用事があるのだろうか。
 先程のウィリアムスの起こした爆発事件でもかなり慌てていたようだから、
本部が多少混乱しているのは間違いなさそうだ。
 一旦足を止め、秀太はイヤホンを取り外してポケットへと突っ込んだ。
 心持ち、少しだけ足取りが軽くなり、秀太は大股で先へと進んだ。この大荷物
では、すぐに力尽きるのは目に見えていたが。
 それは、ほんの少しの優越感だった。
 禁止エリアを解除し、本部へと入れてもらえる存在。
 自分と、他の参加者との明確な違い。
(俺は選ばれたんだ)
 この状況下での唯一の心の拠り所が、自責の念を駆逐していく。

344:174(3/5)
07/04/10 23:29:58 QZzdt7eb0
 金本でも、矢野でも井川でもない。自分が、田中秀太が選ばれたのだ。
 プロに入ってから長年味わうことのなかった「特別」であるという心地良さが、
綿布に染み込む水のように秀太の臓腑を浸していった。
 それは麻薬のような快楽だった。


 秀太が入っていった。
 その事実を愕然と受け入れながら、中村豊(背番号0)は森に消えていった田中秀太
の背中を見送っていた。
 ここから先は禁止エリアである。地図はなくとも、少し高見から確認すれば、島
の中央に鎮座する体育館と、その周囲を覆う森の位置くらいは確認できる。
 爆発を手がかりに事件現場へと近づいたのは、これだけ島中に轟く爆音を聞けば、
ゴレンジャーが動かないわけはないと思ったからだ。
 勿論それ以外の人間も動き、危険人物に遭遇する危険性もあったのだが、中村に
とって、まずは彼らに合流することが最優先事項だった。
 正確な禁止エリアの範囲が分からないので、用心しながら目的地に向かう途中、
田中秀太を目撃してしまった。
 強ばった表情で、険しい視線で、突き進む彼はあろうことかウィリアムスの身体
を引きずっていた。
 思わず後をつけていったところ、田中秀太は禁止エリア目前と思われるところで
立ち止まり、腕時計に向かって何事かを告げた。
 奇妙な間だった。何かを待つように佇んでいた秀太は、しばらくして、数度躊躇う
ような仕草を見せてから禁止エリアの奥へと姿を消した。
(どういうことだ……?)
 禁止エリアに進入すると、首輪が爆発し命を落とす、と確かに首脳陣は言った。
 もしかしたら選手を脅かすための嘘だったのかもしれない、という思いが一瞬過ぎる。
 が、その可能性は低いように思えた。 
 反対した佐藤コーチを平気で殺し、選手を喜んで殺し合わせる彼らが、今更そんな
中途半端なことをするとは思えない。だとすると―
(秀太、お前……)

345:174(4/5)
07/04/10 23:30:42 QZzdt7eb0
 自分を撃った秀太。
 ゴレンジャーを裏切った秀太。
 生きているのか死んでいるのかも分からないが、ぐったりと力なく眠るウィリアムス
を引きずる秀太。
 禁止エリア前で立ち止まり、見えない誰かと会話をしてから、何事もなく死の境地
へと足を踏み入れた秀太。
 目の当たりにした現実を繋げ合わせていくと、一つの推測が浮かび上がってきた。
(お前は、首脳陣の手先なのか?)
 あまりと言えばあまりの現実に、中村豊は怒りすらなくただただ唖然とした。
 自分を裏切り、ゴレンジャーを裏切った彼に対し湧き上がっていた憤怒は、氷水を
浴びせられたかのように冷え固まっている。
 奇妙な程冷静に、彼の背中が消えた闇を凝視していた。
 追いかけるべきだろうか。
 追いかけるべきだ。直感的に、そんな衝動が中村豊を掻き立てた。
 衝動に連動して、ふくらはぎの辺りに力を込める。自然に、足の裏の土がスパイク
と擦れ合う音を立てた。 
(待てよ、でも)
 一度思い直す。
 ここから先は禁止エリアだ。
 主催者側の田中秀太が侵入出来たとはいえ、自分も同じように通過できるという
保証はどこにもない。
(もしかしたら、最初から秀太の首輪だけ偽物だっていう可能性だってある)
 しかしそうだとすると、秀太が一旦立ち止まっていたことと、足を踏み入れる直前の、
彼の躊躇いようが不自然な気がした。
(無線で連絡して、禁止エリアを解除してもらった?)
 だとしたら、今なら中村豊も入れるはずだ。田中秀太の首輪だけ、一時的に機能停止
するという器用な真似が出来るならまた状況は変わってくるが、首輪や禁止エリアに、
どこまでの機能が有されているのかこちらから察することは出来ない。
(考えても仕方がない、か)
 どう検証したところでリスクはつきまとう。
 よく考えれば、そんなリスクはこのゲームに参加させられた時点でイヤでも背負わな
ければいけない類のものだ。

346:174(5/5)
07/04/10 23:31:52 QZzdt7eb0
 今ここで彼を追いかけることで、あの反吐が出るような主催者共の懐に潜り込める
かもしれない。
(千載一遇のチャンスだ)
 今ここでこのチャンスをみすみす見過ごし、数日の延命を選ぶことで、万に一つ
の希望が潰えるかもしれない。
(どうする……?)
 考えるべくもない。
 ゴレンジャーに仲間として迎え入れられた時、彼らの志についていこうと心に
決めたのだ。
 だとすれば、迷う時間はない。
(ここで逃げたら、みんな死ぬ)
 中村は胸元で拳を握った。
 縦縞のユニフォームに皺が寄り、『0』の文字が奇妙に歪んだ。
 心拍数が上がる。無意識に足が震えた。どれだけ意気のいいことを言っても、
本能的な恐怖心というのはぬぐえない。
 一歩入り込めば、首から上が吹き飛ぶ空間。そのイメージが鮮やかに脳裏を過ぎり、
中村は慌てて振り払った。
 奥歯を噛み締め、中村豊は黒々と口を開く夜の森を睨み付けた。
 秀太も、あの大荷物ではそれほど早く移動はできないだろうが、急がなければ見失って
しまう可能性はある。
(今更ビビんなや!)
「―おっしゃ!」
 握った拳を小さく振り、その勢いで足を前に出す。
 パチン、と軽く両頬を叩き、真っ直ぐと前を向いた。
(金本さん……俺が―道を拓きます!)
 信念を胸に、中村豊は背番号00を追って森の中へと駆け込んだ。

【残り34人】

347:代打名無し@実況は実況板で
07/04/10 23:55:13 wFlVvp8rO
職人さん、乙です!
豊頑張れ!なんとか首脳陣に一泡ふかせてくれ!そして秀太も救ってくれ!


348:代打名無し@実況は実況板で
07/04/10 23:55:24 yGmQnDTB0
しょっ…職人さんキタ━━(゚∀゚)━━━!!!!
待ってました…降臨してくれたことに泣けるよ…!ありがとう!!

そして秀太あああぁぁあああぁぁ…
いや待てよ豊あああぁぁぁぁああああ!!!!

349:代打名無し@実況は実況板で
07/04/11 01:41:14 Im3dz0jmO
おおおおお!
待ってましたー!

豊、豊、気をつけて…!

350:代打名無し@実況は実況板で
07/04/11 05:08:09 lyymHRLY0
職人さん、乙であります
豊、何するつもりや・・・


351:代打名無し@実況は実況板で
07/04/11 14:33:43 s0sQ/aEE0
> 中村は胸元で拳を握った。
> 縦縞のユニフォームに皺が寄り、『0』の文字が奇妙に歪んだ。
>  心拍数が上がる。(後略)

どんな感嘆符を重ねるよりはっきりと、豊の心情が伝わってくる
何より、豊の「ゴレンジャー大好き大好き!大事大事!」という思いが伝わってくるよ!
豊と秀太、同じく抱える迷いと、正反対のポジションが、互いを引き立てあってる
読む間、つい息するのも忘れちまったぜ!職人さん乙!

352:代打名無し@実況は実況板で
07/04/11 23:43:25 BRrm8n1+O
職人様乙でございます!

元々秀太好きだけど今日の試合で映る度に叫びそうになった…。

353:代打名無し@実況は実況板で
07/04/12 14:08:12 KEV10Qp50
>>352
わお、一瞬にして現実に・・・

354:代打名無し@実況は実況板で
07/04/13 00:11:22 GMBzIrQm0
職人様乙です!
頑張れ豊・・・!そして目を覚ませ秀太ァアアorz


355:代打名無し@実況は実況板で
07/04/13 01:49:51 EKAECaoJ0
阪神本スレの次スレがまだなんだけど。

356:代打名無し@実況は実況板で
07/04/14 01:17:36 XlYJZfD9O


357:代打名無し@実況は実況板で
07/04/15 09:31:58 XYOPO4oZO


358:代打名無し@実況は実況板で
07/04/15 23:10:27 KTbWxnqj0


359:代打名無し@実況は実況板で
07/04/16 07:12:13 BPHLEznOO


360:代打名無し@実況は実況板で
07/04/16 10:12:34 U2Z7sWkJ0


361:代打名無し@実況は実況板で
07/04/16 14:26:21 Fzgs6vvn0


362:代打名無し@実況は実況板で
07/04/16 19:56:25 YuHoXmBb0
死兆星?

363:代打名無し@実況は実況板で
07/04/16 20:25:00 kF0dneJZO
>356-362

吹いたw


364:代打名無し@実況は実況板で
07/04/17 12:05:30 cvM3+lGJ0
hosyu

365:代打名無し@実況は実況板で
07/04/18 15:41:46 9kBlx9x30
ほしゅ

366:代打名無し@実況は実況板で
07/04/19 21:42:27 AsjIFT4E0
 

367:代打名無し@実況は実況板で
07/04/21 13:57:42 Mo4OHrG70


368:代打名無し@実況は実況板で
07/04/21 22:56:47 d0BszQAOO
あかほしゅ

369:代打名無し@実況は実況板で
07/04/22 00:48:39 kEj6xtu40


370:代打名無し@実況は実況板で
07/04/23 01:46:14 bUWIR47fO


371:代打名無し@実況は実況板で
07/04/23 02:24:26 QHwNarrWO
どんでん

372:代打名無し@実況は実況板で
07/04/23 23:51:07 0v1D0G69O


373:代打名無し@実況は実況板で
07/04/24 01:15:48 fMuYQoba0


374:代打名無し@実況は実況板で
07/04/24 01:44:24 ruA5Mofz0
でんねん

375:代打名無し@実況は実況板で
07/04/25 12:14:28 8JCC3WJ3O


376:代打名無し@実況は実況板で
07/04/26 00:01:34 FIh2r4kG0


377:代打名無し@実況は実況板で
07/04/26 11:52:26 LrSILjeB0


378:代打名無し@実況は実況板で
07/04/26 14:31:40 HPQopKzhO
すばる。

379:代打名無し@実況は実況板で
07/04/26 19:47:31 Z/GJ+/550
わーれはーゆくー♪

380:代打名無し@実況は実況板で
07/04/27 12:38:46 ddfrkXE80
安藤スレが落ちたらしいので
気合い入れて保守

381:代打名無し@実況は実況板で
07/04/27 18:00:44 1vBW6mvA0
話それるけど、赤星の車いすがオークションに出品されてたのは腹立つ。

382:代打名無し@実況は実況板で
07/04/27 23:20:59 VeF1tHsvO
本人が一番無念に感じてるだろうな
赤星…(´;ω;`)

383:代打名無し@実況は実況板で
07/04/29 01:57:14 GAvmMb8a0
保守します

384:代打名無し@実況は実況板で
07/04/29 02:09:03 WN9E6Yh+O
林選手って年齢はおいくつですか?
わかる人教えてください。

385:代打名無し@実況は実況板で
07/04/29 02:12:00 oZZv6zuMO
>380
同じ気持ちでほしゅ

386:代打名無し@実況は実況板で
07/04/29 20:11:34 mz9Ji72+O


387:代打名無し@実況は実況板で
07/04/30 14:48:06 xMZQ2Q7xO


388:代打名無し@実況は実況板で
07/05/01 01:50:58 IFv/XLXW0


389:代打名無し@実況は実況板で
07/05/01 19:20:59 M7hB4khYO
>>384
28。学年でいうと濱中や関本と一緒らしい
次からはググってから聞けな

390:代打名無し@実況は実況板で
07/05/02 23:21:00 qr7iFuXaO
億バトが落ちたぜ…
保守

391:代打名無し@実況は実況板で
07/05/03 08:17:47 7zlmrChzO
やのほしゅ
あかほしゅ


392:代打名無し@実況は実況板で
07/05/03 16:35:20 IKUzrpC1O
ほしゅ

393:代打名無し@実況は実況板で
07/05/04 01:11:31 Kkwh04Sq0
ほっす

394:代打名無し@実況は実況板で
07/05/04 01:14:26 xRzCh7+DO
阪神はレッドソックスとオープン戦やって20対0でコテンパにしてくれ






395:代打名無し@実況は実況板で
07/05/04 22:47:13 GZp8q9VS0
ほしゅ
明日も仕事〜

396:代打名無し@実況は実況板で
07/05/05 00:33:59 gAnzz8kE0
保守

397:代打名無し@実況は実況板で
07/05/05 11:30:32 sLQpKO4T0
あかほしゅ

・・・(´;ω;`)グスッ

398:代打名無し@実況は実況板で
07/05/05 21:30:58 PyZKPlRX0
hosyu

399:代打名無し@実況は実況板で
07/05/06 20:19:37 U9aPAg/t0


400:代打名無し@実況は実況板で
07/05/06 21:55:29 hhOBwYYl0


401:代打名無し@実況は実況板で
07/05/06 22:32:24 X8E2oKK0O


402:代打名無し@実況は実況板で
07/05/07 00:44:47 znI/Z58K0


403:代打名無し@実況は実況板で
07/05/07 23:25:24 Oa8reX3dO


404:代打名無し@実況は実況板で
07/05/08 00:16:47 1Ox8p8500


405:代打名無し@実況は実況板で
07/05/08 02:41:18 RlvhV9Vp0


406:代打名無し@実況は実況板で
07/05/08 21:30:25 S3Qr4NND0


407:代打名無し@実況は実況板で
07/05/09 23:29:12 /3cl2Nap0
kl:kdfsfads;fd]l




fgegerwg



efghetgh



eukjtukje


qweqwewq



ktrmtduk


jjystret



gf,fgj,kf




408:代打名無し@実況は実況板で
07/05/10 09:30:50 cyTISCiI0


409:代打名無し@実況は実況板で
07/05/11 01:53:57 GOSrPqaV0


410:代打名無し@実況は実況板で
07/05/11 02:03:59 wdkSsQvt0


411:代打名無し@実況は実況板で
07/05/11 03:07:24 Yo3UdhDWO


412:代打名無し@実況は実況板で
07/05/11 09:35:00 3nTcURAv0




413:代打名無し@実況は実況板で
07/05/13 00:51:19 H+O2obGz0
おっお

414:代打名無し@実況は実況板で
07/05/14 03:36:41 gGNk5hzf0
捕手☆保守☆

415:代打名無し@実況は実況板で
07/05/14 10:59:04 LjL6DqnN0
hosyu

416:代打名無し@実況は実況板で
07/05/14 20:54:11 YHGoPTFcO
赤星ガンガレ

417:代打名無し@実況は実況板で
07/05/15 00:13:06 gos7gcMY0
保守

418:代打名無し@実況は実況板で
07/05/15 23:50:16 pp2yCgQLO
赤星ほしゅ

419:代打名無し@実況は実況板で
07/05/17 00:57:41 pXvLMFSi0
ほしゅ

420:代打名無し@実況は実況板で
07/05/17 08:49:36 UfJOcbfZO
落とすものか

421:代打名無し@実況は実況板で
07/05/18 12:32:31 UUm+wobA0
ほしゅ

422:代打名無し@実況は実況板で
07/05/18 13:58:50 UvY7+g0QO
保守

423:代打名無し@実況は実況板で
07/05/18 23:43:02 Uw8MgCTj0
狩野ほしゅ

こんなカキコする自分は群馬出身orz

424:代打名無し@実況は実況板で
07/05/19 06:02:33 +trSIsze0
hosyu

425:代打名無し@実況は実況板で
07/05/20 01:18:21 6gDpWt8r0
あげ

426:代打名無し@実況は実況板で
07/05/20 01:26:38 /COudKXIO
狩野は前工出身

427:174(1/7)
07/05/20 18:15:14 Ix2egfVm0
>>346
148.錯綜する疾走

 あれほど覚悟を決めて飛び込んだ死神の口は、拍子抜けするほどあっさりと
中村豊(背番号0)を受け入れた。
 どうやら一つ目の賭は成功したらしい。
 だが、ここで気を抜くことは出来ない。
 闇の向こう、この先待ち受ける幾つの賭に勝てば光が見えるのか、中村豊には
想像も出来なかった。
(それでも、可能性はゼロじゃない)
 ゼロからの出発点。トレード先で与えられた背番号に、自分なりにそんな意味を
与えた。
 ゼロから出発するということは、その先にゼロは有り得ないのだ。
 可能性というのは、道を切り開こうと努力すればするほど上がっていく。
 それが中村豊の持論だった。
 今自分がこうやって前に進み続けていることで、可能性は確実に、ほんの少し
ずつだが上がってきている。
(何の可能性かって? ……このゲームをぶっ潰して、みんなで生きて帰る
可能性だ!)
 何でもいい。何か手がかりを、道を、切り札を、手に入れることが出来れば、
頼もしい仲間が待っていてくれる。
(―おっと)
 自分を鼓舞することに夢中になってしまい、中村は一瞬、前を歩く秀太が立ち
止まったことに気付かなかった。
 合わせて立ち止まり、木の陰に身を隠して様子を伺う。
(また休憩か……)
 一度荷を降ろし、秀太は肩や首を回してからその場に座り込んだ。
 少し進んではすぐに休憩を取り、遅々として進まない。
 確かに、相当な重労働なのは違いないが、どうにも緊張感に欠ける気がした。
 どんな状況下においても、手を抜けるところは抜こうという姿勢はある意味―
(あいつらしいっちゃあいつらしいか)

428:174(2/7)
07/05/20 18:17:02 Ix2egfVm0
 不器用で、我ながら要領が悪いと思う程、何事に対しても全力で取り組む中村と、
要領よく、抜くところは抜いて上手く立ち回る秀太。
 本来ならば不愉快に思ってもおかしくないタイプの人間なのに、何故か彼に
対して嫌な気をしたことはなかった。
 「まあ秀太だから」と周囲から笑って許容されてしまうような、不思議な愛嬌が
彼にはあった。
 彼の周囲で笑いの絶えなかった日々を思い出し、ふとほころびかけた頬を、
中村は慌てて引き締めた。
(今あいつがしてることは、笑って許されるようなレベルじゃない)
 人として腐りきった首脳陣共に手を貸す彼もまた、同じ種類の人間だ。
 しかし、こうも遅々として進まないと、追跡してる身としてもイライラしてくる。
(ちょっと待てよ)
 足踏みをしそうになりながら秀太の背中を睨み付けていると、中村はあることを
思いついた。
 この禁止エリアが、今回秀太が入るために解除されたのだとしたら、秀太が出た
後は再び禁止エリアに設定される可能性が高い。
 目的地は分かっているのだから、彼の後をついて行くよりも、彼より前に着いた
方が自由に使える時間は多い。
(先回りする必要があるな)
 なぜもっと早く気付かなかったのだろう。鈍い自分に歯噛みしながら、ロスした
時間を考えそうになり、中村はすぐに思考を切り替えた。
 気付かれないよう秀太の側を離れながら、進行方向を意識する。
 月と星の位置を確認して、中村豊は駆け出した。
 背に担いだライフルが背骨にぶつかり、見えざる手に急き立てられている気がした。


 グラウンドに出ると、空が明るくなったように感じた。
 広い土色の地面に、月明かりが吸い込まれる。
 小さな世界の中心から見上げる星空は、広大で、美しかった。
 全てを放り出し、グラウンドの真ん中に寝そべって満天の星明かりに吸い込まれて
しまいたくなるような―魔性の魅力。

429:174(3/7)
07/05/20 18:18:18 Ix2egfVm0
 それでも心を奪われたのはほんの一瞬だったように思う。
 足を止めることはなかった。視線を地上に戻したとき、目に入った二つの建物に
中村は瞼を瞬いた。
 忘れていたわけではないが、意識していなかった。いや、やはり忘れていたのだろう。
(ヤバイ)
 体育館―校舎。
(どっちだ!?)
 どちらが主催者の拠点になっているのか。間違ってしまったら時間の無駄だ。限られた
時間を無駄にしてしまったら、全てが水の泡だ。
 眼前に聳える二つの建築物に近づきながら、中村はゲーム開始直後の記憶を呼び
戻した。
 自爆装置に、禁止エリアや全島放送―
 今までの話を聞く限り、これらは一括して首脳陣がコントロールしているのは
ほぼ間違いない。
 その為には、それなりの施設が必要になる。
 体育館には、自分が記憶する限りそんな怪しげな機械類は置かれていなかった。
 また、そういった大がかりなものを収納できるようなスペースもなかったように思う。
 対して、校舎には山ほど教室がある。
(じゃあ校舎だ!)
 ほとんど勘で、中村は進行方向を決めて進んだ。
 正面の玄関口から校舎に入り込む。室内独特の、ひんやりとした空気が頬に張り
付いた。
 靴箱が並ぶ空間は、どこか懐かしい。
 スパイクが立てる音を気にして、中村は靴を脱ぎ適当な靴箱に押し込めた。
(見つかったら殺される……かな、やっぱり)
 今更ではあるが、敵の膝元まで来て改めてそんなことを思う。背中を流れる汗が、
ここまで走ってきた時とは違う冷たさを伴っていた。
(とにかく、手当たり次第当たっていくしかない!)
 がむしゃらに校舎内を駆け回り、中村は目に付く教室から一つずつ中の様子を探って
いった。

430:174(4/7)
07/05/20 18:19:22 Ix2egfVm0
 小さな孤島の廃校といっても、部屋数はそれなりにある。
(違う、……違う、ここじゃない)
 息を殺しながらの探索は過度の緊張を中村に与えた。空振りが続く。
 あれからどれくらい経ったのか―時間の感覚がなくなっている。
 秀太はもう着いただろうか。
『秀太が禁止エリアを離れれば、ここは禁止エリアに設定される』
 自身の推測ではあるが、それは限りなく正しいように思えた。 
 彼らの使徒である田中秀太が出ていけば、このエリアを無防備な状態のまま放って
おく必要はない。
(どこだ? どこにいる!?)
 募り続ける焦燥感に、少しずつ不安が染み込んでいく。
(もしかしたら、やっぱり体育館の方に―)
 ―光が見えた。
「っ……!?」
 思わず声が出そうになったのを慌てて押し殺す。
 暗く沈んだ廊下に、細い光の筋が差し込んでいた。
 慌てて床に這い蹲り、匍匐前進で近づいていく。
 完全に窓を分厚いカーテンで遮断した一室。
 立て付けが悪いのか、角に砂かゴミでも溜まっているのか、木造の引き戸からほんの
僅かに室内の明かりが漏れ出ている。
 跳ね上がる鼓動の音すら聞こえてしまいそうな空間で、中村豊は一人、そっと隙間
を覗き込んだ。
(何や……これ……っ!?)
 まず目に入ったのは、壁一面を埋め尽くすモニターだった。
 小さなモニターの一つ一つは、全て違う映像を映し出している。
 中には灰色の砂嵐が流れているだけのものもあるが、そこにある多くは間違いなく、
この島のどこかを映していた。
 目を凝らしてみると、画面内で動いている人間が確認できる。あれは今岡だろうか―
 森の中を武器を抱えて一人彷徨く者。どこかの部屋の片隅で蹲る者。
 ―まるで戦場のようだ。
 室内で、布団で寝込んでいる者と、その枕元で見守る者もいた。

431:174(5/7)
07/05/20 18:21:07 Ix2egfVm0
 こういう、複数人で助け合って生き延びようとしている人間もいるのだ。
 彼らの為にも、自分達のためにも、こんな狂った計画は潰さないといけない。
 思わず画面の方に目を奪われてしまったが、部屋の中央に鎮座する男に気付き、
ギクリとする。
 何と言うことのないパイプ椅子に座り、腕を組みながら画面の方を向いている
中年の男。
(平田―)
 平田ヘッドコーチだった。
 衝撃の事実だ。まさかこんな形で島中に隠しカメラを設置し、自分達の様子を
監視していたとは―
(でもそれなら、俺が入ってくるのも気付かれてたんじゃ―)
 その可能性に思い至る。ここまで何の妨害もなく来れたが、それ自体が罠だった
のではないか?
 ぶわっと全身から汗が噴き出た。
 後ろを振り返るのが怖い。
 背筋に冷たいものを感じながら中村が平田の背中を凝視していると―
 カクンッ、と平田の身体が前のめりに傾いだ。
「……ぐがっ」
 それに合わせて、そんな短いイビキが聞こえてくる。 
 動きはそれだけだった。反動で再び元の体勢に戻ったかと思うと、項垂れたまま
動かなくなる。
「………………」
(……寝てる?)
 信じられない思いで、その事実を飲み込む。
 よくよく耳を澄ませると、定期的に小さなイビキが聞こえた。
 呆気に取られながらも、中村は視線を平田から外して再度周囲を確認した。 
 シンと静まりかえった廊下は薄暗かったが、誰かが近づいてくる気配もない。
 平田以外の人間はどこに行ったのか気になるが、とりあえずこの部屋には平田しか
いないようだった。

432:174(6/7)
07/05/20 18:22:13 Ix2egfVm0
 まさか監視役が居眠りをしているというラッキーに鉢合わせるとは想像もして
いなかったが、これは天が味方したと思っていいだろう。
 逸る気持ちを抑え、中村はそっと戸を押し開いた。少しだけ音がして身体を強ばらす
が、平田のイビキが止むことはない。
 胸を撫で下ろし、足音を潜ませて侵入する。
 そこは、ゲームの中枢機関だった。
 壁一面のモニターと、部屋を埋める大型のコンピュータ類。ボタンや画面のついた
それらは休みなく働いていることを主張するように、小さな機械音や点滅を絶え間なく
続けている。
(どうする―?)
 どこをどう手を付けていいものか分からない。
 死を覚悟で全てを破壊してもいいが、自爆装置などの管理もここで行っているの
だろうから、下手にいじるのは危険だ。
 途方に暮れて部屋の中を見回すと、唯一親しみのある機器を見付けて中村は近づいた。
 それは、ごく一般的なFAX機だった。
 どこからか送信されてきたらしい、放置された書類を手にとってみる。
(なんだ、コレ……?)
 それは一見、この悪趣味なゲームと何ら関係のない内容のように思えた。
 いや、それよりも―
(何でこの人の名前がここに……)
 文字の羅列を目で追いながら、数枚の紙をめくる。
(まさか、これって……!)
 限られた情報量からあることを推測する。
 もし、自分の推理が正しかったとしたら―
(あれ?)
 視界の片隅で点滅を始めたライトに気付き、中村豊は書類から目を離した。
 忙しなく明滅を繰り返しているのは、得体の知れない機械に張り付いたボタンの
一つだった。
 よくよく観察してみると、周囲にマイクとヘッドフォンがついていることから、
それが通信用の機器であることが分かる。
 どこからか通信が入っているのだろうか。

433:174(7/7)
07/05/20 18:24:18 Ix2egfVm0
 中村はヘッドフォンを装着し、震える指先でチカチカと呼び続けるスイッチを押した。
 その瞬間、耳に直接流れてきた声に。
 知らされる事実に。
「――」
 脳髄を直接殴られたような衝撃が走った。
(そんな……こんなことって……)
 有り得ない。あってはいけない。そんな言葉がぐるぐると頭を巡る。思考が、これ
以上考えることを拒否しようとしていた。
 それでも、無慈悲にも耳に流れ込んでくる情報は、確実に、残酷に中村に真実を
突き付けていた。
(そうか、だからあの人は―)
 失ったピースを見付けたパズルがするすると解けていく。
 その時は気付かなかった違和感が、今になって違和感であったことに気付く。そして、
その正体に気付く。
 呼びかけは執拗だった。しかし、一向に応えない中村豊―正しくは主催者―に
対して諦めたのか、先方は最後にひと言を残して通信は途切れた。
 無音になったヘッドフォンをはずし、中村豊は呆然と立ちつくした。時間にすると、
ほんの数秒間。感覚にすると、限りなく長い間。それはある種の絶望だった。
 このゲームに放り込まれた時と、秀太に裏切られた時と、同等か、もしくはそれ以上の。
(早く、伝えないと……!)
 一刻も早く彼らに会わなければいけない。
(ゴレンジャーに!)
 真実を知りにここに来たのだ。突き付けられた真実の惨さに、打ちひしがれている
暇はなかった。
 ここで得た情報を、伝えなければならない。―立ち向かえる者に。
 書類を手にしたまま、中村豊は開けたドアの隙間をすり抜け、出口へと疾走した。 
「…………」

 薄暗い廊下を走り去っていく彼を見送る視線に、中村豊は気付かなかった。

【残り34人】

434:代打名無し@実況は実況板で
07/05/20 19:25:31 Pxe2Amkj0
き、きてた・・・・。
うわ、ばれてたってこと?
豊さん、気をつけて!

435:代打名無し@実況は実況板で
07/05/20 19:46:38 1rrvc/ij0
おお、新たな展開が・・・
職人さん乙です!

436:代打名無し@実況は実況板で
07/05/20 20:07:24 gjhgXUpJO
うぉぉ
衝撃の事実って……

437:代打名無し@実況は実況板で
07/05/20 20:31:15 q5p7kkpf0
久々に新作キタ!
真実って一体何なんだ!
これからの展開が楽しみだ!

438:代打名無し@実況は実況板で
07/05/20 22:24:36 nUKYZgVW0
うあぁ新作きたー
豊ガンガレ!超ガンガレ!


439:代打名無し@実況は実況板で
07/05/21 01:20:17 zR5JthTh0
久々の新作投下乙です!!
おわぁああん気になる・・・ガンガレ豊さん・・・!

440:代打名無し@実況は実況板で
07/05/21 02:34:15 Y5O0l7ja0
新作乙です!!

豊よ、何を見たんだ?!

441:代打名無し@実況は実況板で
07/05/21 21:54:54 oCdE9eV00
ほしゅ

442:代打名無し@実況は実況板で
07/05/22 18:57:30 y5CLwtTFO
保守

443:代打名無し@実況は実況板で
07/05/23 01:29:51 kl8ddzwC0
スタメン桜井とか藤原とか
喜田移籍とか見るたび
ガクブルするのは
このスレの住人だけでいい…

とか 思いながらほしゅ

444:代打名無し@実況は実況板で
07/05/23 03:36:58 qc+e9EyW0


445:代打名無し@実況は実況板で
07/05/23 03:41:23 rjNx6vNJ0
なにがあったああああああ
豊さああああああああん
ゴレンジャーと豊は助けて・・・

446:代打名無し@実況は実況板で
07/05/23 08:08:51 /57yn5NP0
狩野ってここではまだ生きてたっけ…と思ってしまう他ファンの自分

447:代打名無し@実況は実況板で
07/05/23 13:10:23 9WSJcBYJ0
>>446
生きてるよ
エグ杉と一緒にいたとオモ

448:代打名無し@実況は実況板で
07/05/23 14:44:57 nrtRFXd30
吉野が気になってしょうがない
先に逝ってしまった安藤ファンの俺

449:代打名無し@実況は実況板で
07/05/23 23:02:30 U6VYPPth0
ここの狩野は病気でかなりまいってたけど頑張ってるなあ
でも一緒にいる杉山がなんかヤバそうで心配

450:代打名無し@実況は実況板で
07/05/24 21:59:29 zc39xEgO0
ほしゅ

451:代打名無し@実況は実況板で
07/05/25 16:57:25 OVhPsGjMO
職人さん降臨まで保守

452:代打名無し@実況は実況板で
07/05/26 05:26:53 j38im1X+0
がー! すげー!!
職人さん、めちゃ乙!!!

豊、生きてゴレンジャーのところまで戻ってくれ!

453:保守
07/05/26 14:43:57 yYFQJox50
保守

454:代打名無し@実況は実況板で
07/05/26 21:08:39 03/24R960
豊、試合でも姿を見たいよ・・・保守

455:代打名無し@実況は実況板で
07/05/27 10:59:09 OAhvoNhY0
豊ってケガしてたよね、確か。治ったのかな・・・
保守

456:代打名無し@実況は実況板で
07/05/27 22:08:49 XNr7ax9G0
めげずに保守

457:代打名無し@実況は実況板で
07/05/28 02:01:49 7hKQaai60
保守

458:代打名無し@実況は実況板で
07/05/28 15:23:31 PB2A7aGY0


459:代打名無し@実況は実況板で
07/05/29 18:34:18 r07KIjFh0
ほしゅ

460:代打名無し@実況は実況板で
07/05/30 01:15:19 ZUVwVQ+GO
矢野復活祈願保守

461:代打名無し@実況は実況板で
07/05/30 23:10:20 N7sE3d9i0
保守

462:代打名無し@実況は実況板で
07/05/31 00:10:58 w4rb1uiw0
 

463:924(1/4)
07/05/31 01:26:24 Hb/u/dub0
>>433より
149.立場の逆転

「ほんまに……ほんまに、それでええんですね?」
桜井がなおも念を押してくる。
「ええって言うてるやろ。さっさと撃ってくれや。ほら」
桟原は相手の右手に当てた左手に軽く力を込め、目を閉じた。
「そこまで言わはるんやったら―」
少し間をおいて、桜井の一段と低い声が聞こえてきた。
(そうや。撃て)
これでいい。引き金が引かれ、すべてが終わる。自分は楽になれる。
「―ああああああッ!!」
桜井が腹の底から溜めに溜めていた声を絞り出すように叫んだ。

予想だにしなかった激痛に桟原は思わず小さくうめいた。胸に撃ち込まれ、
即座に息の根を止めてくれるはずだった銃弾は飛んでこず、その代わり、
右の頬に拳をしたたか見舞われたのだ。
衝撃で傾いた身体を立て直しながら目を開けた時、桜井が拳銃を床に投げ
捨てるのが見えた。自由になった右手が固く握り締められ、うなりを立てん
ばかりの勢いで飛んでくる。それはよける間もなく桟原の左頬をとらえた。
利き手だけに左手で打ち込まれた一発目よりもさらに強烈だった。
こらえきれず、桟原は倒れこんだ。

「冗談やない! アホなこと言わんといてください!! こんなとこで死んで
 ええんですか!?」
桜井の怒鳴り声が降ってくる。転がったまま桟原は熱を帯びたようにじんじんと
痛む頬を押さえた。
「帰りたいんやないんですか!? 帰って野球やりたいんと違うんですか!」
口の中で血の味がする。殴られた拍子にどこか切れたらしい。
「……さっきはな。けど、今は……」
右手の甲で口元の血をぬぐいながら、桟原はのろのろと起き上がった。

464:924(2/4)
07/05/31 01:27:56 Hb/u/dub0
いつもの自分なら、後輩に殴り倒されたりすれば絶対に黙ってなどいない。
しかし、今はやり返す気力も失せていた。
「今? 今は気が変わったって言わはるんですか? そしたら、逆に今の
 死にたい思う気持ちかて、すぐまた変わるかもしれへんやないですか。さっき
 いろんなことがあって頭の中がワーッとなってるって言うたはったけど、そんな
 状態で早まって死んでしもて、後からあの世でやっぱり死なん方が良かった
 とか後悔しても、遅いっスよ? 死んだら、ほんまに何もかも全部がそれで
 終わりっスよ? 」
テンポよく桜井が畳みかけてくる言葉を、桟原は座り込んだ姿勢でただただ
ぼんやり聞いていた。

「だいたい俺が桟原さんを殺したりしたら、完全にあいつの思う壺や。
 それこそ、冗談やない。そんなん、俺は絶対いやや」
拾い上げた拳銃を乱暴にポケットに突っ込みながら桜井はいまいましそうに
吐き捨てたが、ふと思い出したように神妙な面持ちになった。
「それに……俺は桟原さんがおらんかったら、どうしたらええか分からへんし」
目を伏せた彼の表情がみるみるうちに不安に塗りつぶされて行くのが分かる。
「なに言うてんねん。お前は俺なんかよりよっぽど強いやろ?」
桟原が言い終わらないうちから桜井はぶんぶんと首を左右に振った。
「さっきも言うたけど、こんなわけ分からんことになって、桟原さんに会えへん
 かったらマジで気が変になってたかもしれへんし……」

桜井の目は、まるで捨てられかけている子犬か子猫を思わせる。この男でも
こんな顔をするのかと、不思議な気分になる。普段の桜井から想像が
つかないのは無論のこと、平然と人を殺せると分かった今となっては尚更だ。
そんな彼が今やぼろぼろの自分を頼ってくる様はなんとも奇妙だ。
「俺はそんな頼りになるような人間と違うんや。そうやったら、お前に殺してくれ
 なんて頼んだりせえへん。ていうか、自分でもあきれてるんや。俺はもっと強い
 人間やと思ってたのに、こんな弱かったんか?て」
桜井がまた大きく首を振る。
「弱かろうがなんやろうが、いてくれはったら、それでええんです」


465:924(3/4)
07/05/31 01:29:28 Hb/u/dub0
(いてくれはったら……?)
その言葉に、心の片隅がちくりと痛んだ気がした。
『牧野さんがいてくれはるだけで俺、どんなに心強いか』
脳裏に浮かぶのは、海辺の薄暗い洞窟。中には男が二人いる。一人は右腕に
傷を負い、壁際に座っている。もう一人が懸命に何事かを語りかけている。
訴えているのは、まぎれもない自分自身だ。
「そやから……死にたいとか言わんといて下さい」
こちらを見つめる桜井の顔は、今にも泣き出さんばかりに痛々しい。
『頼みますから、そんなこと言わんといて下さい!』
自分もきっと、同じ表情をしていたに違いない。耐えられなくなって目をそらし、
桟原は下を向いた。

「お前と一緒におっても、俺は……」
ずいぶん昔のことのような気がするが、まだ半日もたっていない。あの時の
牧野はまさに今の自分で、あの時の自分が今の桜井だ。牧野に死なないで
くれと訴えた自分が死を思い、逆に止められる立場になろうとは。
「……今のこんな状態の俺は、邪魔になるだけや」
『俺は利き腕がこれでは足手まといになるだけだからな』
そして自分もまた、突き放そうとしている。

「俺にとって邪魔かどうかは、桟原さんやなくて俺が決めることでしょ?」
桜井の口調の変化に気づき、桟原は顔を上げた。
「桟原さんが自分をどう思てはるかは関係ないっス。俺はとにかく、桟原さんが
 おらんようになったら困るんです」
いつの間にか弱々しさの消えた鋭い目が二つ、こちらを見据えている。
(こいつは―)
「そやから、絶対にこんなとこで死なせたりせえへん。そんなこと、俺は
 許さへん」
静かな声でゆっくりと、しかし有無を言わせぬ迫力で桜井は言い切った。

466:924(4/4)
07/05/31 01:30:52 Hb/u/dub0
(こいつは―俺とは違う)
思い知らされずにはいられなかった。迫り来る禁止エリアの恐怖があったとは
いえ、ただうろたえるばかりだった自分とは明らかに違う。
―絶対に、死なせない。
こう言えたなら、牧野の考えをひるがえさせられただろうか。牧野があの場を
離れない限り自分も絶対に行かない。それくらいの意志をぶつければ、彼を
動かせたかもしれない。自分には、そこまでの強い気持ちが欠けていた。

(俺は……)
そしてさらに思い知らされる。今の自分もあの時の牧野と同じではない、と。
牧野は数時間前から覚悟を決めていた。密かに遺言を書き上げ、ぎりぎりまで
黙っていた。自分はどうだ? ショッキングな出来事の連続で捨て鉢になり、
衝動的に死にたがっているだけだ。それも自らの手ではなく、他人に命を
絶たせようとしている。

「それに、死ぬつもりやったら逆にもう怖いものなんかあらへんはずでしょ?」
駄目を押すように桜井が聞いてくる。桟原はふと可笑しくなり、肩をすくめて
小さく笑った。いつか危害を加えられるのではと恐れていた男に自分の方から
殺してくれと頼み、逆に死ぬなと説得されていては、世話はない。
「桜井……俺な」
急に笑い出した自分を、桜井が不思議そうにのぞきこんでいる。
「捜してる人が、いるんや。この島のどこにいるか分からんけど」

笑うのをやめ、桟原は顔を上げた。
「その人に会えた時は、頼むから手ぇ出すなよ?」
「え? そしたら……」
言わんとすることを理解した桜井の顔がぱっと明るくなる。自分のような人間に
ここまで左右される彼に、今度は苦笑いを浮かべずにはいられなかった。
(今はこれで、ええよな?)
桟原は自分自身に問いかけ、心の中でうなずいた。

【残り34人】

467:代打名無し@実況は実況板で
07/05/31 03:13:37 yHT1XAiX0
>>463-466
ktkr!職人さん乙です。桜井男前だ
深夜まで起きててよかった!

468:代打名無し@実況は実況板で
07/05/31 05:50:19 aytkl59TO
新作投下キタ(・∀・)!!
職人さん忙しい中お疲れ様です!!!

中継でサジッキーと広大を見るたび表情が変わってしまいそうだ…w

469:代打名無し@実況は実況板で
07/05/31 06:17:02 4dSdWpLsO
職人さん乙です!
広大は記憶が戻ったらさじきーをどうするんだろう…orz

470:代打名無し@実況は実況板で
07/05/31 10:19:05 7kwhrUbX0
そんなもん、オマエ・・・

471:代打名無し@実況は実況板で
07/05/31 21:13:34 8WEFZ+aA0
乙です!!
がんばれ、桜井もさじっきーも…

472:代打名無し@実況は実況板で
07/05/31 22:16:48 pGFU3qKV0
職人様ありがとう!!!
よかったああああひとつ解決うう

・・・ん?あとフラグ立ってたのって・・・。
いかん、読み直してきまww

473:代打名無し@実況は実況板で
07/06/01 07:05:49 0F1F99E00
職人さん、すげー! 待ってたよー!!

>桜井の目は、まるで捨てられかけている子犬か子猫を思わせる。
中継で映るたびに、このフレーズを思い出してしまうかもしらんwww

474:代打名無し@実況は実況板で
07/06/01 11:11:37 v7bGoodm0
職人様投下乙ですぁああ!
できれば記憶は戻って欲しくない俺が来ましたよorz


475:代打名無し@実況は実況板で
07/06/01 21:11:28 Y8+lPSoR0
サジッキーよかったサジッキー・・・(つД`)
泣きそうになったよううぅぅ

476:代打名無し@実況は実況板で
07/06/02 18:58:36 3PHmU/ue0
ほしゅ

477:代打名無し@実況は実況板で
07/06/03 10:19:26 XbjMLtK60
捕手

478:代打名無し@実況は実況板で
07/06/03 16:18:05 /clUowUS0


479:代打名無し@実況は実況板で
07/06/03 18:18:25 RyvnRJ5pO
阪神ファン=犯罪者は極めて正しい
認めたくない犯罪者もとい阪神ファンはいますか??
いるなら反論してみてください

480:代打名無し@実況は実況板で
07/06/03 18:19:20 RyvnRJ5pO
鈴木宗男ファン=犯罪者は極めて正しい
認めたくない犯罪者もとい鈴木宗男ファンはいますか??
いるなら反論してみてください

481:代打名無し@実況は実況板で
07/06/03 18:22:38 RyvnRJ5pO
松浪健四郎ファン=犯罪者は極めて正しい
認めたくない犯罪者もとい松浪健四郎ファンはいますか??
いるなら反論してみてください

482:代打名無し@実況は実況板で
07/06/03 20:47:36 watscqSK0
ほしゅ

483:代打名無し@実況は実況板で
07/06/04 01:28:42 2CQoJ7Ir0
ほしゅ

484:代打名無し@実況は実況板で
07/06/04 22:05:27 fsOKrDBj0
hoshu

485:代打名無し@実況は実況板で
07/06/05 21:56:47 2C4M48ww0
保守


486:代打名無し@実況は実況板で
07/06/05 23:07:34 r+IDimMn0
こまめに矢野っとく

487:代打名無し@実況は実況板で
07/06/06 04:33:53 EhAWcojp0
ほしゅ

488:代打名無し@実況は実況板で
07/06/06 22:12:07 5mZKoE9S0
保守

489:代打名無し@実況は実況板で
07/06/07 23:06:57 OETYSebCO
保守

490:代打名無し@実況は実況板で
07/06/08 06:06:35 XOw8YSPe0
hoshu



491:代打名無し@実況は実況板で
07/06/08 08:16:13 nNWsoeQYO
矢野復活祈願保守

492:代打名無し@実況は実況板で
07/06/08 22:40:20 Sl22leAu0
また出た!
☆32段 前通路 阪神vs広島 8月29日甲子園ライト外野 18連番 ☆彡
URLリンク(page4.auctions.yahoo.co.jp)

493:代打名無し@実況は実況板で
07/06/08 22:44:39 XOw8YSPe0
矢野 狩野

494:代打名無し@実況は実況板で
07/06/09 10:14:15 ELVO1132O
浅井

495:代打名無し@実況は実況板で
07/06/09 16:11:21 Uxw9jAQn0
清水

496:代打名無し@実況は実況板で
07/06/10 12:47:18 IK363RLq0
嶋田(兄)


497:代打名無し@実況は実況板で
07/06/10 17:41:54 uHSWm43L0
定詰

498:代打名無し@実況は実況板で
07/06/11 20:04:24 1OvqWraIO
保守

499:代打名無し@実況は実況板で
07/06/12 02:11:05 OPGY7Cu00
hoshu

500:代打名無し@実況は実況板で
07/06/12 03:07:35 X8924gIO0
ほっしゅん。

501:代打名無し@実況は実況板で
07/06/12 13:10:55 o9Bte0/U0
他球団ファンだが、虎バト読むようになってから
リアルで桜井が気になってしかたがない。

502:代打名無し@実況は実況板で
07/06/13 19:14:09 yw/fUpRY0
ほしゅ

503:代打名無し@実況は実況板で
07/06/14 03:38:50 iDK4ekXI0
保守

504:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 00:09:46 TyAgBflAO
矢野完全復活祈願捕手

505:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 00:14:17 ZeA5Dged0
読まないように。










細村香奈という中学2年生の女の子が夜道を歩いていると男3人にレイプされました。
彼女は必死で抵抗しましたが男3人の力に勝てるわけでもなく、まだ14歳という年齢で知らない男達に犯され、口封じとして殺されました。
男達は別に罪の意識など少しも、欠片もありません。
彼女は成仏出来ないまま、自分を犯した男達を探し続けています。

この話を全部読んでしまった人は必ず、他のスレ5個に同じ内容のレスを貼り付けて下さい。さっきも言いましたが、ここまで読んでしまったなら張り付けるほか方法はないです。殺されてもいい人は関係ない話ですが…。
・有村奈津実
・清中みずき
・鈴鹿陽一
・村上梓
・畠山龍夜
・野口太一

上の人たちはこのチェーンレスを貼り付けなかった為に殺されました。
細村香奈に…。


506:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 12:51:07 X+xgS5gk0
保守

507:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 12:52:41 TyAgBflAO
捕手保守ほしゅ(☆o☆)

508:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 13:30:56 p+dY3qNa0
新しいととこを軽く読み直してみた
なにこの泣けるの(゚д゚)
よ〜し、パパ、今晩がんばって読むぞ〜(最初から)

509:代打名無し@実況は実況板で
07/06/15 22:32:05 pAtX5l8U0
>>508
がんばれw
俺なら読むの遅いから一晩じゃ読み終わらなさそうだ(´・ω・`)

510:代打名無し@実況は実況板で
07/06/16 16:29:30 M8jPd7xe0
ほしゅ

511:代打名無し@実況は実況板で
07/06/17 18:03:48 Sy/wxM3D0
とりあえず狩野

512:174(1/5)
07/06/17 22:05:44 0VNpoGLL0
>>466
150.回想・桧山と矢野

「何です? 俺の顔、そんなに男前ですか?」
 年齢より若く見える顔を上げて、桧山進次郎(背番号24)は糞真面目な顔で
見返してきた。
「アホか」
「いやー、矢野さんに見つめられるとなんか照れますねぇ。男前に男前と思われる
俺って超男前? みたいなー」
「アホやな」
 自他ともに認めるナルシスト男のふざけた台詞を、矢野輝弘(背番号39)は
容赦なく切り捨てた。
 部屋にいるのは、矢野と桧山の二人だけだ。
 昼の定時放送の時に仮眠を取っていた鳥谷敬(背番号1)は別室に籠もっている
はずだ。
 放送後、目を覚ました鳥谷に、矢野は放送内容を告げた。
 普段ポーカーフェイスの男が蒼白になって、ふらふらと部屋の隅に座り込んで
しまった痛々しい姿に、今は一人にしておいた方が良いと判断し、二人は静かに
退室した。
 とはいえ二人でいたところで、何か明るい話題があるわけでもない。
 あまりにも多すぎる死者と、そこで呼ばれた名前に、沈黙というには長すぎる
沈黙が続いていた。
 小さなテーブルを挟んで暗い顔を付き合わせ、ようやく口を開いたかと思えば
こんな気の抜けた会話だ。
「ひーやん」
 窘めるように、矢野は男の渾名を呼んだ。
 この家に一つしかない簡素なソファに身を沈め、呼吸のついでに溜息を吐く。
「誤魔化すなや」
 我ながら随分と尖りのある声だと思った。

513:174(2/5)
07/06/17 22:06:34 0VNpoGLL0
「何であいつ連れてきた?」
「矢野さん、顔こわーい」
 厳しい調子で突き付ける問いを、桧山がおどけた口調でかわしてくる。
 眉と眉の間に人差し指を突き付け、桧山はわざとらしく皺を作った。
「眉間に皺、寄せてばっかいると老けますよ」
「またそれかい」
「ホラホラみんなが喜ぶ矢野スマイル」
「桧山」
 どこかで聞いた台詞を口にする桧山を、矢野は冷静な口調で遮った。
 笑える心境では到底ない。それは桧山だって同じはずだ。
(こいつに無理やり笑わせている俺の責任か……)
 今更彼におかしな気を回させねばならないほど、自分が落ち込んでいるように見えた
のだろう。
 視線を落とし、小さく溜息をつく。その視界の隅で、桧山が肩をすくめたようだった。
「何が聞きたいんです?」
「さっき言ったやろ」
「いいやないですか、別に鳥谷連れてきても」
 あっさりと言って、テーブルの上に両肘を組む。
「あいつなんか、危なっかしくてー」
「危なっかしいんやない、危ないんや」
「そんなはっきりと……」
「お前やって分かってるんやろ?」
 のらりくらりとかわそうとする桧山に苛立ちながら、矢野は身を乗り出した。
テーブルに拳を置いて、目の前の男を睨み付ける。
 最初は珍しい組み合わせだと思った。ただそれだけの感想だった。
 だが、彼らが共に行動することになった経緯を聞き、鳥谷と同じ時間を過ごすと
共に、一つの疑念が沸いてきた。
「あの目―信用できるか?」
 桧山は応えない。
 代わりに透明な笑みを浮かべ、恐らく眉間に皺を寄せているであろう矢野の顔を
見返している。
 諦め、矢野は大げさに溜息を付いて身を引いた。

514:174(3/5)
07/06/17 22:07:34 0VNpoGLL0
「信用も出来ないやつ連れて歩くとはお前はほんまお人好しやな」
 腕を組み、弾力のある背もたれに身を預けると、少し頭がぼんやりした。 
「いつか寝首かかれるで」
「かもしれませんね」
 まるで人ごとのように答え、曖昧に笑う。矢野は何度目かの溜息を飲み込んだ。
 吐く息の数だけ、脳の芯に霞がかっていくようで不快だった。
 桧山進次郎はつかみ所のない男だった。それは昔から変わらない。鳥谷敬を連れて
きた理由も、何か意味があるのではないかと矢野は思っているのだが、考えたところ
で分からない。
 なぜなら桧山は矢野にとって『つかみ所のない男』なのだから、どうやったところ
で結局掴めないのだ。
「俺、矢野さん好きですよ」
「きしょいわ」
「即答ですか」
 ケラケラと笑う。
 一通り笑った後、目の前の後輩は、ふいに真面目なトーンで口を開いた。
「矢野さん、忘れないんで欲しいんですよ」
 この男はつかみ所はないが馬鹿ではない。結局、どれだけ突拍子もないことをやって
も、それには必ず意味があるのだ。
 つまりは先の何の脈略もない告白も、本当に伝えたいことの導入である、ということだ。
(そしてそれが)
「あなたは一人じゃないってこと」
(意外に的を射てたりするねんな)
 それが矢野の知る桧山進次郎という男だった。
「ひーやん」
 告げられた言葉の意味を誰よりも深く理解する。自分が抱えている深い闇も、彼には
とうに見透かされていたらしい。
「今の俺にとってその言葉は……重荷や」
 自分を止めようとするたくさんの顔が脳裏を過ぎる。
 憎悪と復讐。
 今の自分を突き動かしているのは、ただそれだけの感情だ。
 理由も、意義も、リスクも、全てに蓋をして、理性を抑え込んでいる。意図的な激昂。

515:174(4/5)
07/06/17 22:09:06 0VNpoGLL0
「……似てるなぁ」
「何?」
「いえ、何でも」
 ポツリと呟いた声を聞き咎めた時、桧山は初めて矢野から目をそらした。
「それより、鳥谷のヤツ大丈夫なんかなぁ。放送のこと聞いて引きこもっちゃって
からもう結構経つけど」
 話題を逸らされた気がした。あるいはそれにすら意味があったのかもしれないが、
その時矢野には分からなかった。
「あいつ、筒井と仲良かったみたいやしなぁ」
「筒井か……」
 直接話す機会はあまりなかったが、期待していた投手の一人だ。
 無意識に、矢野は掌を開き、じっと見つめた。
 この手に、沢山のモノを託されている。そう思っていた。少なくともほんの一日前
までは。
 温め、大切に育てていきたかったタマゴが割られる度に、このチームの未来が音を
立てて打ち崩されていく。
 失っていく。
 育てていきたかった者と―共に夢を追いかけていきたかった者を。
(シモ……お前はどんな気持ちで死んだんかな?)
 分からない。
 最も死を想像できない男の死に混乱させられる。
 本当は会いたかった。
(会って、話がしたかった)
 会って、話をして―
(俺は、お前になんて言って欲しかったんやろう)
 つまらない甘えを断ち切れたのは良かったのかもしれない。
 彼も、福原や球児さえもいないのなら、自分の道を惑わす者はそう多くはない
気がした。
『あなたは一人じゃないってこと』
 警告のように桧山の声が響く。
 そうかもしれない。そうなのだろう。だが、そうは思いたくなかった。誰かの思念
に引きずられるのは嫌だった。自分の進むべき道が分からなくなりそうで怖かった。

516:174(5/5)
07/06/17 22:11:33 0VNpoGLL0
 気が付けば掌で額を覆い、瞑目していたらしい。
 はっと顔を上げると、桧山の労るような視線を感じた。
「疲れた顔してますよ」
 そうなのだろう。彼に気を遣うことも出来ないほどに疲れている。それでも、
ここにいるのが彼で良かったと思う。
 彼といると少しだけ、気持ちの糸を緩めることが出来る気がした。
 この男は常に『らしさ』を失わない。それ故に、いつでもそこに当たり前にいる
ような、妙な錯覚を覚える。それが恐らく、安心感に繋がっている。
(こいつが我を失うことなんてあるんやろうか―)
 想像がつかなかった。
「昼飯食ったら、寝た方がいいんじゃないですか」
「寝首かかれたらどうすんねん」
「俺が側にいますよ」
 ひねくれた答えを返す先輩に苦笑して、桧山が立ち上がった。脇に置かれていた
荷物を解き、テーブルの上に昼食を並べる。
 申し出は有り難かった。
 疲労感や倦怠感がじわじわと身体の外側から染み込んでいく。睡眠でも取らない
ことには、持たないことは自分でも解り切っていた。
 食欲もあまりなかったが、これからのことを考えると体調には気を遣うべきだろう。
 桧山が用意してくれた、手を付ける気になれなかったパンに手を伸ばす。
 ―コンコン
 タイミング良く響いた律儀なノックの音に、矢野は思わず手を引っ込めた。
「失礼します、鳥谷です」
 間を置かずドアが開き、鳥谷敬が顔を出す。
「矢野さん、昼飯まだありますか?」
 何で俺に聞くんやろう、とぼんやりとどうでもいいことを疑問に思いながら黙って
いると、代わりに桧山が答えた。
「危なかったなー。めっちゃ腹減ってたから、鳥谷の分まで食べてまうとこやったわ」
 もう一人の、最も死を想像できない男。
 彼が、笑顔で後輩を迎えるのを横目で身ながら、矢野は緩慢にパンを囓った。

【残り34人】


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