オリックスバファロー ..
321:代打名無し@実況は実況板で
07/01/20 00:24:58 7VcAEXwx0
日高は章数で考えるとものすごい長い間あそこにいたんだなあ。干物になるぞ。昆布だけに。
322:代打名無し@実況は実況板で
07/01/20 01:36:45 hU0WaLYKO
>>321
(*´金`)
323:代打名無し@実況は実況板で
07/01/20 22:25:49 UbAdPnhBO
>>322
(‘相‘)
324:代打名無し@実況は実況板で
07/01/21 02:25:39 OK0Pvci80
>>321
海沿いで塩昆布になるわけだ
325:代打名無し@実況は実況板で
07/01/21 12:21:10 AfORWao5O
>>324
誰がうまいこと言えと
326:代打名無し@実況は実況板で
07/01/22 08:27:29 ADz9veuiO
世界史の補習
327:代打名無し@実況は実況板で
07/01/22 21:53:46 LoDX3/UwO
☆
328:代打名無し@実況は実況板で
07/01/23 13:33:39 SlSPhprX0
清原は北川によって更生する展開を期待してたのになあ・・・
それにしても谷・ノリ・村松・キヨと大物はみんな早死にだな・・・
これは偶然かな?それともたまには大物なしのバトロワがあってもいいじゃないかというような◆UKNMK1fJ2Yさんなりのメッセージかなんかかな?
とにかくゴッツやWカトウとかだけでどれだけ盛り上げられるかが楽しみだな
329:代打名無し@実況は実況板で
07/01/23 18:56:57 7stjYCnDO
大物が続々退場して、川越が殺害数トップになってしまうのかと思うと……(´;ω;`)ブワッ
残ってる選手にまだまだ(いろんな意味で)がんばってほしいもんだ。
330:代打名無し@実況は実況板で
07/01/24 00:41:11 qSXPpEMJO
保守
331:代打名無し@実況は実況板で
07/01/24 12:19:23 yp7qXSeF0
>>328
ノリとキヨは単にめんどくさかっただけとか
332:代打名無し@実況は実況板で
07/01/24 20:29:31 HIJlF5nB0
>>331
そういえば◆UKNMK1fJ2Yさんは関西弁が不得意って言ってたな
そういう点でノリとキヨは目障りな存在だったのかも
333:代打名無し@実況は実況板で
07/01/24 20:46:28 KFaJ76SvO
清原は最後まで残ると思ってたなあ…
こういう展開も嫌いじゃないんでいいんだがww
334:《OUTSIDE・3 1/2》 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 22:50:05 XMF2e7Vw0
「まだ28人も残っているのか」
「はあ……やはりそう簡単に殺し合いは出来ないみたいです……」
小さな建物の中。真っ白な壁に囲まれた部屋。
「これだけの状況に放り込まれたら、もっとやり合うかと思ったんだがな」
「まあ、それぞれの性格もありますし……」
「やる気になりそうな奴が先に死んでるのか?」
「そういう訳ではないと思いますが……」
「まあいい、時間切れまでは楽しませてもらわないとな」
宮内の一方的な語りを聞きながら、このチームの監督であるはずの中村は小さくため息を
ついた。
「あの……」
「なんだ」
威圧的な態度は変わらない。
「せめてシーズン通して使える選手を残してもらえませんか。ピッチャーと野手と……」
「全員平等だ」
「……支給された武器は……平等じゃないですよね……?」
「ランダムに配布された。あれは運だ」
何を言っても通じないらしい。
「ところで中村くん」
「は、はい」
「例の船はどうした?大島くんが乗って来た……」
「はい。小さい船でしたから簡単に転覆したそうです。浮いていた大島くんを収容しまし
た。ネッピーとリプシーは行方不明です」
「ポセイドンの子供と海賊の娘か………泳ぎは得意そうだな。海に愛された子供たちだな」
何を突然詩的な表現を、と思ったが、口には出さずにおいた。もし少しでも機嫌を損ねて
自分までバトルフィールドに放り出されてはたまらない。
335:《OUTSIDE・3 2/2》 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 22:51:16 XMF2e7Vw0
「さて、次のトラップの準備はいいかな?」
「え?もうですか?」
「ああ、このトラップは暗闇の中の方がスリルがあって楽しいだろう?」
「まあ……見えないですから、声を出さないといけませんよね」
「敵に自分の居場所を教えながら走り回ることになる。面白いじゃないか」
「はあ……」
権力者、金持ちというものはどうしてこうも悪趣味になるのだろう。それまで自分の持っ
ていた価値観というものを失ってしまうからだろうか。
「では、放送の準備をしてくれたまえ。それから、清原くんの首輪を点検してくれ」
「…………は?」
「生体反応がおかしいんだ。血圧の低下が記録されている。表示が死亡になったり、生存
になったり点滅しているんだ」
「え……」
慌てて中村がノートパソコンを覗き込む。選手一覧ウィンドウを開いた。しばらくその画
面をじっと見つめた。確かに清原の名前だけが赤になったり白になったり、時折点滅を繰
り返している。
「バグ、ですかね?」
「ひょっとしたら、首輪自体に何か欠陥があるのかもしれん。もしくは……清原君自身が、
首輪に何か細工をしたか、だ」
「まさかそんなことは……」
宮内が腕を組む。
「死んでいないのに死んだと表示されたり、死んだのに生きていると表示されたり、そん
なエラーがあるのかもしれんな。……まったく、約束が違う」
「は?」
「ゲームのルールが根底から崩れるからな。もう技術者は呼んである」
「はあ……用意のいいことで」
「大島くんを拾った船に乗っている。小泉社長と一緒にそろそろ着く頃だ。我々はそれま
での間、トラップタイムを楽しむとしよう」
「………はあ………」
336:「110・白旗組 1/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 22:52:40 XMF2e7Vw0
下山、光原、高木の3人は手頃な家に落ち着いていた。夜道を歩くのは危険かつ困難だと
判断した為だ。間違って禁止エリアに踏み込んでしまってはたまらない。また懐中電灯の
灯りもいつまで持つかわからない。考えるべきことは多かった。
まずは3人の持っているパンと水の数を確認した。家の中の台所に缶詰を少しだが見つ
け、喜んで3人で分け合って食べた。コンビーフ、ウインナー、ツナ、サバの味噌煮もあっ
た。今の3人にとっては素晴らしい御馳走だった。
「俺、このコンビーフとタマネギ切って炒めるの、好きなんですよ」
仲間を見つけ、少しだけ元気を取り戻した光原が言った。
「得意料理なんだけどなあ」
「んなもん料理の域には達してないな」
下山が笑う。光原はわざと頬を膨らませた。
「歌さんに教えてもらったんですよ。コンソメスープ用のキューブをですね、お湯で溶い
て、炒めてる途中でザッとかけるとこれまた隠し味」
「へー、今度作ってみよ……」
高木がメモを取りそうなくらい真剣に感心している。
「吉井さんはチャーハン作る時に、同じくコンソメスープをかけて炒めるらしいですよ」
「あ、それも美味しそう……」
「みんな料理してんだなー」
下山が意外そうな表情で呟く。
「でも今目の前にある食材じゃあ何も出来ないよなあ」
「ですよねえ……」
3人は何気なく辺りを見回した。部屋の隅の棚に、小さなラジカセが入っているのを高木
が見つけた。立ち上がり、取り出して見る。
「何それ?」
「ラジカセですね……ホントにラジオとカセット」
337:「110・白旗組 2/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 22:53:25 XMF2e7Vw0
「ここに住んでたおっちゃんが演歌とか聴いてたのかな」
「夜はナイター中継ですよね」
コンセントは無い。代わりに大きめの乾電池が3本入っていた。時代遅れな色合いだった
が、高木がスイッチを入れるとザーザーピーピーという独特の音がした。
「なんか入らないかな」
光原がアンテナを伸ばす。微かに人が喋っているような声が聞こえた。
「叩いても駄目かな」
「ミツー、お前そうやって物壊すタイプだろ」
「壊しませんよ」
「ただでさえ錆び付いてんだぞ。壊れるよ絶対。ビスケットみたいに増えたりしないし」
言いながらラジカセを自分の手に取り、下山は窓辺のアルミの縁に手をかけた。
『………つづい………』
砂嵐の間から、微かな人の声が聞こえた。
「そのまま!」
高木が下山を指さす。下山はビクッと体を震わせると、片手を窓の縁から離してしまった。
途端にラジオの砂嵐が戻ってくる。
「シモさん、今と同じ態勢取って!」
高木に言われ、慌てて下山はアルミ部分に手をかける。
『………です。次の………バス…………』
「聞こえた!」
高木と光原がラジオに耳を寄せる。
「ニュース?」
「多分」
小声で会話する。砂嵐は消えないが、微かにアナウンサーが喋る声が聞こえた。
『…………今も……………しゅつさ…………もうひとつの乗用…………』
338:「110・白旗組 3/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 22:54:14 XMF2e7Vw0
「腕疲れたー」
下山が腕を下ろす。途端に砂嵐が大きくなった。
「シモさんー」
「いいじゃん別に。ろくに聞こえないし」
もう何も聞き取れなくなったラジオを下山が消した。
「………俺たち、探してもらえてるのかな」
「探してくれてなきゃ困りますよ」
光原が答える。
「でもさ、オーナーが関わってるなら、警察とかに何かしらの圧力がかかっててもおかし
くないよな」
「そんな寂しいこと言わないで下さい」
パンを齧りながら高木が言った。その表情はしっかりしていた。強い意志のもと、方向の
定まった目をしていた。光原も、あの中立地帯で見せていた涙はもうない。時折悲しそう
な顔を見せるが、それでも前を向いていた。
「なあ」
下山が言いながら、軽く手を叩いた。
「ちょっと状況整理をしようや」
「はあ」
光原が曖昧な返事をする。
「俺達はバスに乗った。気が付いたらこの島にいた。オーナーの声がして、戦えって言わ
れた」
「はい」
「確かあのバス、監督も乗ってたよな?」
「そう……ですね………確か岸田に続いて乗り込んで来たような……」
高木が腕を組んで呟いた。
339:「110・白旗組 4/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 22:54:58 XMF2e7Vw0
「じゃあ、監督は今どこにいる?」
「……………」
「この島のどこかで罠を張ってるのかもしれない。相川みたいに」
「……………」
「少なくとも、敵だと考えた方がいい。もし会ったとしても」
「監督はオーナー側ってことですか?」
不安げに光原が尋ねる。下山は無言でうなずいた。
「多分、作戦とか一緒に立てたんだろうな。ひょっとしたら、敵はもっと多いのかもしれ
ない。最初から全てを知っていて、ここまで乗り込んで来た奴とか………」
光原と高木が同時に息を飲んだ。
「まさか、選手の中にも?!」
高木が身を乗り出すようにして尋ねた。
「………高木」
「………はい」
「お前、ここまで何かあったか?」
「……………さっき話した通りですよ。山口さんとホテルにいて、ジェイソンに襲われて
逃げました。あと………金子………」
光原が目を伏せる。
「じゃあここにいる3人、みんな修羅場くぐってんだな」
下山が小さく笑う。
「歴戦の勇者ですよ」
高木もつられて笑う。光原も一緒に笑顔になった。
「あのさあ」
下山が続けた。
340:「110・白旗組 5/5」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 22:56:00 XMF2e7Vw0
「俺たち3人、こうやって信じ合えてるじゃん」
残りの2人がうなずく。
「だからさ、他の奴らにもさ、こうやって声かければ信じ合えると思うんだ」
下山の口調はしっかりしていた。
「あと1日と少しだ。きっとまだ1人でどうしようもない人だっていると思う。ミツたち
が襲われたみたいに、ヤバイ考えになってる人もいると思う。でも、みんなで手を組めば
出来るはずだ。敵を間違えちゃいけない」
一瞬、言葉を切る。
「俺たちの敵は、オーナーだ」
それは宣言だった。
下山なりの、自分の意志を決めた宣言だった。もう怯えてはいられないのだ。
首輪探知機。こんなに凄い、ある意味最強の武器を持っているのだ。
光原が自分の鞄を開けた。白いタオルを2枚取り出す。
「これ、旗にしませんか?白旗。こっちには戦う意志はありませんよって印で」
「いいな、それ」
「さっきその辺に棒が……」
高木が部屋の隅、棚の影に顔を突っ込んだ。そして1本のプラスチックの棒を取り出した。
洗濯物をかけてでもいたのだろうか、長さの調節が出来た。
「どうやって留める?」
「結べますかね?とりあえず白いぞってわかれば。あとは輪ゴムとかテープ」
「標的にもなりやすいですよね」
「隠して歩いて、人影見えたらバッと出して振るってのはどうだ?」
「シモさんナイスアイディアー」
「それに首輪探知機があるんだ。危険な人ぐらい避けられるさ」
下山が自信ありげに笑って見せる。光原も高木も笑った。
彼らは信じていた。
仲間を。
そして彼らの未来を。
【残り・28人】
341:「111・未来の記憶 1/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 22:57:28 XMF2e7Vw0
すでに辺りは闇に包まれてしまった。
小さく舌打ちをして、平野佳寿は懐中電灯を左手に、金属バットを右手に林道を歩いてい
た。夏の虫が叢の中で鳴いている。それは平野に幼い頃を思い出させた。
『しょうらいのゆめ・プロやきゅうせんしゅ』
そう書いた七夕の短冊。そういえば七夕は来月だ。
(……さーさーのーはーさーらさらー)
心の中で呟くように歌った。あの頃、自分の傍にいた誰かが歌ってくれた。
(のーきーばーにーゆーれーるー)
空を見上げた。こうやって夜空を見上げるなんて、何年振りだろう。
(おーほしさーまーきーらきらー)
真っ暗な夜空には満点の星。都会では決して見えない星すら、ここでは肉眼で捉えること
が出来る。今にも降ってきそうな光の粒。夕方頃には遠雷が聞こえたというのに、どうや
ら雨が降る気配もない。それともまだ時間があるのだろうか。
(きーんーぎーんーすーなーごー)
ふいに、目元に熱いものがこみ上げてきた。
俺は今、ここで一体何をしているのだろう。
何をしようとしているのだろう。
何をしてしまうのだろう。
生きる為に。
再び野球をする為に。
野球がしたい。
ただ野球がしたかっただけなのだ。
なのに何故俺はここで殺し合いをさせられているんだ!
ぷっつりと、未来が途切れる。
(そんなことさせるもんか!)
342:「111・未来の記憶 2/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 22:58:30 XMF2e7Vw0
夢があるのだ。叶えたい夢が。幼い頃からずっと信じてきたものが。
新人王を獲る為に。エースの座を得る為に。優勝する為に。胴上げ投手になる為に。名誉
を得る為に。莫大な金を得る為に。将来を安泰にする為に。
輝かしい、未来の記憶の為に。
(こんなところで野たれ死んでたまるかよ!)
天上の星々の光が何かに滲んで揺れた。震える唇を噛み締める。
(………ごーしーきーのーたーんざくー)
心の中、震える声で歌う。
(………わーたーしーがー………かーいーたー……)
膝の力が抜け、その場にしゃがみこむ。疲労がゆっくりと平野を包み込む。
「………おーほしさーまー……きーらき……らー………」
声に出し、膝を抱えた。身を縮め、何かから自分を隠すように丸くなった。
「♪そーらーかーらーみーてーるー」
ふいに続きを歌う声が聞こえて、驚いて顔を上げた。
林道の少し先に、バス停のような東屋があった。しかしバスの看板は無い。昔はバスが走
っていたのかもしれないが、今はもうその役目を終えているようだった。
その東屋の中から手を挙げている人物がいた。
「よう……平野か。大きい方の」
「………ゴッツさん」
平野は後藤には見えない角度で目許を拭うと、バットを手に立ち上がった。後藤は木で出
来た横長のベンチから手を振った。右肩に掛けている黒くて長い物が平野の目に入った。
(銃……だな)
後藤は軽く腰を浮かせると、自分の左側を空けた。平野は軽く一礼してそこに座った。銃
は距離的に遠くなった。平野は横を向き、後藤を見た。
343:「111・未来の記憶 3/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 22:59:24 XMF2e7Vw0
「独り、ですか?」
「ああ、これが2人に見えたら大変だぞ。背後霊でも見えてるのかもな」
相変わらずの態度だ。掴み所がない。後藤はいつもの笑顔で平野を見た。
「阿部まーちゃん、見てないか?」
「阿部さん、ですか。見てないですね」
「そうかー、まーちゃんなら上手くやりくりして生き延びるような気もするけど」
平野のあっさりとした答えに特別気落ちする訳でもなく、後藤は続けた。
「お前さあ、生き残りたい?」
「当然です!」
声を荒げて平野が答える。
「後藤さんは生き残りたくないんですか?」
「生き残りたいよ。出来ればみんなで。みんながいなきゃ野球が出来ない。ここでポジシ
ョンのライバルが死にました。ハイそうですか、って喜べるはずもないしな」
アハハ、と笑う。そんな後藤の気楽さに平野は苛立ちを覚えた。このゲームが始まって間
もなく、平野は心に誓ったのだ。最大のライバルを消す。チームのエースである川越を消
す。もし何かが起きてこのゲームが強制終了させられ、選手たちが生き残ったとしても、
それまでに川越を消したい。だから川越を探して歩いている。
「おや、お前さんは不服そうだな」
余裕を見せながら後藤が平野の顔を下から覗き込む。馬鹿にしたような態度にまた平野の
苛立ちが募る。
「お前と川越さんの違い、教えてやろうか」
「………え?」
まるで心を読んだような問いかけに、平野は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。そん
な瞬間はまだ22歳の若者だ。
「後ろから見てるとさ、わかるんだよ。吉井さんなんて特にそうかな」
344:「111・未来の記憶 4/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 23:00:52 XMF2e7Vw0
後藤は正面を向いた。林道の闇。懐中電灯が微かに木々の葉を照らしている。風さえ吹か
ず、物音ひとつしない。後藤はその闇の奥を見つめていた。
「お前、マウンドに立った時、何%の力で投げてる?」
「100%ですよ、当たり前でしょう?全力投球ですよ。今持ってる全ての力を出し切るんで
す。それくらいの気持ちが無きゃピッチャーなんて出来ないです」
「そこが違うんだなー、多分」
ニヤニヤしながら続ける。平野は自分が否定されたような気がして少しだけムッとしたが、
顔には出さないようにした。まがりなりにも先輩だ。ポーカーフェイス、平常心もピッチャー
には必要なスキルだ。
「川越さんはさ、マウンドでは98%くらいの力だと思うんだよ。そこに、別枠としてどっ
かに置いてある空っぽの20%をプラスして投げる。合計118%の力で投げてるんだと思う
よ。吉井さんなんて75%ぐらいで投げてるんだろうなあ。そこに別枠の……んーと……ま
あ別枠の力を加えて投げてるんだと思う」
「………経験ってことですか」
「それもあるけど、俺は精神的な余裕じゃないかと思うんだよな」
後藤は前屈みになり、膝の上で手を祈るように組んだ。
「全部で100%だったらお前はその全部を使って投げてる。スタミナがあるから持つけど、
それだけじゃ通じない。100%出来上がった壁が銃で狙われたら穴が開くしかない。でも、
2%でも空白の余裕があると、そこを弾丸を貫通させれば、何の痛手もない」
「………打たせて取るってことですか」
「精神的な問題だよ。もっと抽象的な話。じゃあもっと具体例」
後藤が再び平野の顔を見る。恐らく平野はとても困った顔をしていただろう。
「お前、マウンドで気を抜くことある?」
「無いです。そんなことしたら気持ちが途切れます」
「前にさ、川越さんと吉井さんが話してるの聞いたんだ。あの2人、1秒だけマウンドで
気を抜くんだってさ」
345:「111・未来の記憶 5/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 23:01:59 XMF2e7Vw0
「1秒?」
「そう、たった1秒。でもその瞬間に全身をリラックスさせて、すぐに緊張感を持続させ
られるんだって。それが別枠の20%じゃないかと思うんだよ」
「俺にはそんな1秒いりません!」
思わず立ち上がっていた。
「そういうのはベテランの人がすることです!俺ら若いのは全力です!いつも全力です!
結果が必要なルーキーはそうしなきゃいけないんです!」
「そうだよな、お前はいつも一生懸命だもんな。でも、予備の20%がどこにも見当たらな
いんだよ。それを見つければ、もっと余裕が出来るんだよ」
子供に言い聞かすような口調で後藤が言った。
「去年のミツの場合、それがあったんだ。社会人を経験してたからかな」
「人と比べないで下さい!」
後藤の正面に立ち、声を荒げた。後藤の表情は変わらなかった。
「平野」
「…………」
「お前、川越さんのこと殺そうとか思ってないか?」
「…………」
「違ってたらごめんな。でも、なんとなくそんな感じがしたんだ」
「…………」
「みんなでここから逃げ出せたら最高だな」
「…………」
「星見て泣くようないい子には人殺しなんて出来ないよ」
「うるさいっ!!」
怒鳴り声と共に、平野は金属バットを構えた。打席に立つバッターのようにではなく、い
つでも正面にいる人物を殴打出来るように。
「ゴッツさんに何がわかるって言うんです!」
「お前がピッチャーの王道を進むべきだってこと」
「…………」
346:「111・未来の記憶 6/6」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 23:02:56 XMF2e7Vw0
「次のエースはお前か、それともミツか。お前のピッチングは王道を進む力を持ってる。
だから、精神的にもそうあって欲しい」
「…………」
平野はゆっくりとバットを構え直した。目はじっと後藤を睨みつけていた。
そして気づいた。後藤の右手が細長い銃の引き金にかかっていることに。
「……俺が銃撃つのと、お前が飛びかかってくるの、どっちが速いかな」
「……どうでしょうね」
「俺は死ぬ前にやらなきゃいけないことがあるんだ。それを終わらせなきゃ死ねないんだ。
だからもし、お前が俺の邪魔をするなら……」
風が吹いた。サワサワと葉の揺れる音がした。まるで何かを囁きかけるように。
「………川越さんより先に、ゴッツさんに消えてもらいます」
今までよりワントーン下がった声で告げた。
「平野」
「…………」
「みんなで野球をするんだ」
「…………」
「みんなで生き残って、みんなで野球をするんだ、みんなで」
「…………」
「平野、『みんな』だ」
「…………」
「平野!!」
その瞬間、静かな闇に賑やかな音楽が流れた。流石の後藤も驚いて立ち上がった。
穏やかに、かつ高らかな宣言が響いた。
『トラップタイムです』
【残り・28人】
347: ◆UKNMK1fJ2Y
07/01/24 23:03:35 XMF2e7Vw0
今回は以上です。
348:代打名無し@実況は実況板で
07/01/25 00:39:11 C2riNyc+O
乙です!
ゴッツには平野佳をなんとかして説いてほしい。・゚・(ノД`)・゚・。
349:代打名無し@実況は実況板で
07/01/25 15:25:32 2T2EaTOHO
ゴッツ!ゴッツ!
350:代打名無し@実況は実況板で
07/01/25 17:54:53 BEFEYU4R0
乙です。
今度のトラップタイムは何が起こるんだろう?
351:代打名無し@実況は実況板で
07/01/25 20:35:39 G9hts2AY0
しかしこの後藤、いい人である
352:代打名無し@実況は実況板で
07/01/26 09:12:44 B0iFR3rEO
後のマザー・テレサである
353:代打名無し@実況は実況板で
07/01/26 15:18:46 kEiFv+1LO
>>351-352
ちょwwwwwww
354:代打名無し@実況は実況板で
07/01/26 18:48:04 XsSanMKvO
マザーテレサハゲワロタwwww
白旗組ガンガーレ!
355:代打名無し@実況は実況板で
07/01/27 20:57:15 GnDfqAtHO
星野伸之
356:代打名無し@実況は実況板で
07/01/28 15:48:27 BxYqH1nlO
乙です!!
いやぁ…
ゴッツ良いなぁ。
ゴッツ素敵だよ。
357:代打名無し@実況は実況板で
07/01/29 20:55:01 DPj0QVkfO
ほ
358:代打名無し@実況は実況板で
07/01/30 10:15:16 yUzWT9iO0
ゴッツが無事あべちゃんに会えますようにホシュ
359:代打名無し@実況は実況板で
07/01/31 15:02:12 7cx3Ika1O
ホルスタイン
360:「112・Kを探せ 1/11」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:07:19 isDVHsKP0
後藤と平野佳寿は今さっきまでの緊迫感とは全く違った意味で、それぞれ体を強張らせて
いた。また嫌な時間がやってきたのだ。この島にいる全ての選手に降りかかる運命。ラン
ダムに訪れる厄介ごと。
互いを牽制することも忘れて虚空に耳を傾け、闇の中に佇む木々を見つめた。
『今回のトラップは、1時間後に発生します』
聞こえている音楽に懐かしさを感じて、大久保は小さくため息をついた。
小学生の頃、よく運動会やキャンプファイヤーで流れたフォークダンスの音楽、「オクラホ
マミキサー」だ。
(なんで今こんな能天気な曲が流れるんだよ)
目の前にいる萩原と大西も動きを止め、その場に立ち尽くしている。
大西は救いを求めるような眼差しで萩原を見つめていた。萩原はその期待を裏切るかのよ
うに猫を大事そうに胸に抱いたまま、何故か空を見上げている。
『これから1時間、音楽を流し続けます。その音楽が鳴り終わったらタイムアップです。
残り10分になったら曲は徐々に早くなっていきます』
もう少しで離れ小島へと渡る橋が見えてくる頃だというのに、ユウキと平野恵一は足止め
を食らわされた。この放送を聞き終わらなければ方向を決められない。ひょっとしたら、
小島の研究所へ行くことが出来なくなるかもしれない。それはトラップの内容次第。
『残り20分を切ったら、残り時間を5分経過ごとに放送します』
それは優しさなのか、お節介なのか。
1人、辿り着いた家で夕飯の準備を始めていた的山はコンロの火を止めた。
『今回のトラップは至極簡単。みなさんの努力次第では脱落者ゼロの可能性もあります』
北川に抱きかかえられるようにして、阿部健太はまだ震えていた。感情が飽和してしまっ
たのか、涙が止まらない。こんなことではいけないのだが、どうしようもなかった。
聞かなければ。今は心を落ち着けて、真剣に放送を聞かなければ。
361:「112・Kを探せ 2/11」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:08:37 isDVHsKP0
『これから1時間の間に、アルファベットの【K】を3つ集めて頂きます』
「………K?」
日高が復唱する。
ネッピーは菊地原を抱き上げようとした中途半端な体勢のまま、キョトンとした表情で放
送を聞いていた。
『みなさんの名前の中にあるアルファベット、【K】が合計で3つになるようにグループを
作って下さい。例えば中村監督の場合「NAKAMURA KATSUHIRO」で2つ【K】を持っている
ことになります』
ガタンと音を立てて塩崎(SHIOZAKI MAKOTO)は立ち上がった。のんびりしてはいられな
い。現実逃避をすることさえ許されないのだ。慌てて鞄を肩にかける。小型チェーンソーの
重さを久々に実感した。そして、それ以上に重い放送内容に気ばかりが焦った。
『今から1時間後に首輪の位置を計測し、半径1メートル以内に【K】が3個集まってい
なければ、首輪が爆発します』
「ふざけんな!」
吉井(YOSHII MASATO)は毒づくと、消音銃を握り直した。そして地図を見つめた。
『ちなみに、自分の名前に【K】がひとつも入っていない人は、3つ集まった集団と同じ
半径1メートル内にいるか、【K】がひとつもないメンバー3人で集まった時にグループ成
立とします』
「俺のことかよ!」
水口(MIZUGUCHI EIJI)は思わず怒鳴りながら地図を広げた。その裏にあるメンバー表を
見る。他に【K】を持たない選手はいるだろうか。何処にいるだろうか。
362:「112・Kを探せ 3/11」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:09:35 isDVHsKP0
『それでは、今から1時間後にトラップタイム終了です。頑張って下さい』
放送が終わる。オクラホマミキサーも終わり、入れ替わるようにして静かな音楽が流れ始
めた。まだ序盤戦。穏やかな曲が気に障らない程度に響いていた。
「い、いくつだ?!」
「俺ゼロです!」
光原(MITSUHARA ATSUHIRO)が悲壮な表情でお手上げのポーズを取る。
「俺もねえよ!」
下山(SHIMOYAMA SHINJI)も慌てた様子で答える。
「お、俺1個!」
高木(TAKAGI YASUNARI)が泣きそうな顔で続けた。
「3人で1個かよ……」
下山が頭を抱えながら肩の力を落とした。
「と、とにかく、あと2つ見つけないと!」
「白旗振りましょう!きっと見つかりますよ!ちょうどいいじゃないですか!仲間を見つ
けるんですよ!」
必死に肯定的な意見を続ける若者2人に、下山は苦笑いをしながら顔を上げた。
「そ、そうだな、とにかく動かなきゃ始まらん。行くぞ!」
「はいっ!」
3人は念の為それぞれの武器を片手に、そして下山が白旗を抱え、夜の闇へと飛び出した。
「冗談やめてくれよ!」
香月(KATSUKI RYOHTA)が毒づく。香月は【K】を2つ持っている。あと1つだ。誰かを
捕まえてなんとか3個にしなければ。しかし捕まえたとしても、その相手を信用出来るだ
ろうか。そもそも信用出来るという基本ラインはどこだろう。
(もし歌さんだったらどうする?)
香月のプライドを砕いた相手。香月よりも少しだけ多く仰木監督に信用された人物。
(歌さんだったら……ひとまずこのトラップをクリアして、終わったらすぐ……)
矛を握る手に力がこもる。鞄を肩に掛け直して立ち上がった。
363:「112・Kを探せ 4/11」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:10:59 isDVHsKP0
早川(HAYAKAWA DAISUKE)は右手に握る刀を見た。
夜の闇の中、月明かりにボンヤリと、けれど揺らせばキラリと鋭く光る刃。
それを見つめているだけで安心出来る。不思議な自信が湧いてきた。
(俺は2つしか持ってない……あと1つ)
生き残る為には仲間を見つけなければならない。
その一方で、この刀の切れ味も試してみたい。もう木の枝は斬り飽きた。もっと違う手応
えを試してみたい。自分は強いはずだ。
そう、もっと強いはずだ。もっと何かが出来るはずだ。
(誰か……探さなきゃ)
2つの目的の為に、仲間を探さなければ。
すっかり道に迷ってしまい、山口(YAMAGUCHI KAZUO)は歩きながらその放送を聞いてい
た。酔いは醒めきらず、放送の意味もよくわからない。さっきから同じ道をグルグル回って
いるような気がする。
「とりあえずー、俺は1個持ってるぞー」
放送では【K】が3つだの何だのと言っていたようだ。よくわからない。
ポケットからウィスキーの小瓶を取り出す。まだ半分以上は残っている。
そしてまた同じ場所に戻って来てしまった。
「清原さんー、まだ寝てるんですかー?」
数本の木の枝に支えられるようにして清原(KIYOHARA KAZUHIRO)がうつ伏せになって寝
ている。山口はそのすぐそばにしゃがみ、胡坐をかいた。
「ああ、ちょうどこれで3つじゃないっすか?はい完成―、さすが俺―」
清原に対して乾杯をするように、ウィスキーの小瓶を掲げた。月にキラリとボトルが光る。
「あー、またホテル戻って酒集めないとなー………道覚えてねえけど……朝になったらわ
かるか………食いもんもあそこならあるしな………」
アルコールのせいか、徐々に眠気がやってきた。抵抗することなく山口は瞼を閉じた。
364:「112・Kを探せ 5/11」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:11:58 isDVHsKP0
阿部真宏(ABE MASAHIRO)は呆然としていた。
自分は【K】をひとつも持っていない。すなわちすぐに闇の中へと走り出し、仲間を見つ
けなければならないのだ。
(なんだよなんだよ!名前なんて親から貰ったもんだぞ!自分じゃどうにも出来ないんだ
よ!そんなルールあるかよ!)
鞄を抱え、一応の武器であるスタンガンを右手に持ち、左手に懐中電灯を持つ。
(畜生!弁天小僧が羨ましいぞ!菊之助だもんな!一気に【K】が3つもあって……あれ、
苗字は何だっけ?弁天小僧はあだ名だよな?あれ?)
そんなことはどうでもいい。今はただ仲間を探すのだ。闇の中、ぼんやりとした灯りを頼
りに、声を出し、自分の位置を確認し、相手を探す。
(………ヤバイ人に会いませんように………)
「3つ、ですよね」
加藤(KATOH DAISUKE)が確認する。
「3つ、だ」
歌藤(KATOH TATSUO)は猿の右手を握ったまま身を低くし、床に片膝をついてその放送
を聞いていた。
「俺、2つあります。加藤の「か」と、大輔の「け」の2つ」
「俺は歌藤の「か」だけ」
「3つ、ですよね?」
「ちょうど3つだ」
2人の肩の力が抜ける。
「………この家に隠れていれば大丈夫ってことですよね?」
ホッとした表情で、加藤が呟いた。
「仲間を探すつもりが無いならな」
複雑そうな表情で、歌藤が答えた。式神のように歌藤につき従っている猿は、何かを訴え
かけるようにじっと歌藤の顔を見つめている。
365:「112・Kを探せ 6/11」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:13:10 isDVHsKP0
「よかった、2人で3つありますね。川越さん2つありますもんね。さすが川越さん」
本柳(MOTOYANAGI KAZUYA)が笑いながら言うと、川越(KAWAGOE HIDETAKA)も小さく
笑い返した。
「ひとまず安心だけど………このトラップってかなり巧妙に出来てるよな」
「え?」
川越の言葉に本柳が小首を捻る。
「だってさ、俺らは安心だからこのままにしてればいいけど、逆に仲間に会うチャンスを
みすみす捨てることになるよな」
「はあ……」
「【K】を持っていない、足りない選手は仲間を探して走り回るよな。敵に遭う可能性も大
きいけど、仲間を増やす可能性もある」
小さくひとつ息を吐くと、川越は続けた。
「なあ、俺らも外を歩きまわってみないか?」
今度は本柳が心の中で小さく息を吐いた。
(また川越さんの優しさが出た)
まだ心に甘い部分を持っているようだ。
「でも川越さん、違う考え方も出来ますよ」
「なに」
「【K】は3つですよね」
「放送ではそう言ってた」
「俺たちはもう3つ集まってる。でももし3つ以上集まったら、どうなるんでしょうね?」
366:「112・Kを探せ 7/11」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:14:11 isDVHsKP0
日高(HIDAKA TAKESHI)はまだ意識が朦朧としている菊地原(KIKUCHIHARA TSUYOSHI)
を見下ろしていた。ネッピーも同様だった。
「俺は【K】が2つある。菊さんも2つ」
「……合計4つですね」
「放送では単に3つって言ってたけど、オーバーした場合はどうなんだろう?3つジャス
トなのか、それともオーバーしてもかまわないのか……」
それきり日高が黙り込む。
「でも普通、オーバーしたらダメですよってことはルール説明としてつけるんじゃないで
すか?だから今回はオーバーしてもOKじゃないんですか?」
「そう思いたいけど………命がかかってるからな」
安易な自己判断はしない方がいい。この島のルールはオーナー自身。
「とにかく動くしかない。仲間を探して、上手く【K】を6個に出来ればいいんだ。そう
すればグループが2つになる」
「そうですね、リプシーと連絡を取ってみます。上手く人数調整出来るかも」
リプシーは走っていた。右手に懐中電灯を持ち、緑の道を走っていた。
さっき聞いた放送。もし本当ならこれから1時間後に恐ろしいことが起こるのだ。
(あの方は……あの方は【K】を1つしか持っていない!)
探さなければ。愛しいあの人を守らなければ。
リプシーは迷うことなく選手たちの姿を探していた。走り続けていた。
そして、あの人の姿を追い求めていた。
367:「112・Kを探せ 8/11」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:15:16 isDVHsKP0
「登録名なのかよ!それともフルネームなのかよ!」
怒っているのはユウキ(YUKI)。フルネームは田中祐貴(TANAKA YUKI)。
登録名なら【K】1個。本名なら2個だ。そこに平野恵一(HIRANO KEIICHI)がいる。こ
ちらは【K】1個。グループ完成か、それとも1個の不足か。
もうすぐ目的地への橋も見えてくるはずだった。なのにこんな事態が降ってきた。
「双六とか人生ゲームだと、ピッタリじゃなきゃ上がれないし……」
真剣な表情で、どこか的外れなことを平野が呟く。けれどそれに対して腹を立てている余
裕もユウキには無かった。
「ユウキ、引き返そう」
冷静な口調の平野をユウキがギッと睨みつける。平野は口調も表情も変えなかった。
「こういう事態じゃしょうがない。島の端にいたって仲間は見つけにくいよ。だから島の
中に向かおう。急ぐんだ。研究所とラッキーカードは後回しだ」
「でも俺はどっちなんだよ!」
「多分……俺は多分、登録名カウントで1個だと思う」
「根拠は」
「そう言われると……無いけど……でも、俺らは野球選手としてここに連れてこられたわ
けだし……だからやっぱり……登録名かな、と……」
理由付けに乏しい説明を口篭りながら続ける。
「なあユウキ、スタート地点に戻ってみないか」
「………何の為に?」
「そこにオーナーがいるならさ、そこから大声で尋ねるんだよ。どっちなんですかーって」
「…………それしかないのかな」
「建物の半径50メートル以内に入らなければいいんだし」
すでに平野は再び歩き出す準備が整っていた。それを横目で見ながらユウキは考えていた。
(……今回の件でみんな大移動を開始するだろう……そうしたら元近鉄の選手にも会うチ
ャンスが増える……)
ユウキは自分の小さなナイフを見た。すでに1人消している。もう迷うことなど何もない
はずだ。起きてしまったことは消せない。ならば1人も2人も同じことだ。
(まずは俺が【K】をいくつ持っているかを知らなきゃ)
地図を見る。平野が懐中電灯の灯りを差し出した。方位磁石と位置を照らし合わせた。
368:「112・Kを探せ 9/11」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:17:06 isDVHsKP0
腹部は真っ赤に染まっている。けれど意識はしっかりしていた。ジンジンとした痛みが続
いているが、歩くことは出来る。が、長時間はどうだろう。
生きては助からないかもしれない。徐々に鈴木(SUZUKI FUMIHIRO)はそう考えるようにな
った。これだけの怪我をしている。今病院に運んでもらえたら手術をして命ぐらいは助か
るだろう。だがその可能性はゼロに等しい。ゲーム終了時に生き残っているのが自分1人
という可能性も少ない。なら自分がこの怪我で死ぬ前に他の選手を消すしか方法はない。
(いいよもう……俺……ジェイソンでさ……)
風貌通りのことをすればいいのだ。何か策を練って巧みに誰かを死に導けばいいのだ。
まずは【K】を集めなければ。鈴木は1個しか持っていないのだ。
ゆっくりとホッケーのマスクを外した。この1時間だけは、ただの鈴木に戻ろう。1時間
たち、上手く生き残ることが出来たら、再びマスクをしてジェイソンに戻ろう。そしても
し、自分が生き残れないのなら、少なくとも他の誰かを道連れに。
少しでも多くの誰かを道連れに。
「健太!しっかりせい!歩くんや!あと1つ見つけたらええ!」
北川(KITAGAWA HIROTOSHI)は、涙を拭っている阿部健太(ABE KENTA)を励ました。
「はい……!」
「打線がいてまえ打線やったら、ピッチャーにもいてまえ根性あるやろ!気合入れい!」
「は、はいっ!!」
しゃくりあげながらも、必死に前を向こうとした。しかし恐慌状態が続いていたせいか、
脚の震えが止まらない。北川の手を借りて屈伸運動を何度もした。小さなジャンプを繰り
返した。その場で駆け足をする。それらを何度も繰り返して、ようやく徐々に感覚が自分
のものに戻ってきた。
「真っ暗やからな、誰かがおってもお互い見つけにくいやろから、小さく声出して行くで」
「はいっ」
「……大丈夫か?」
心配そうな顔で北川が健太を見る。
「はい、もう……もう、大丈夫です!」
シャキッと健太が立ち上がって見せる。北川はそんな様子を見上げ、いつもの笑顔を浮か
べた。みんながつられて微笑むような、あの笑顔を。
369:「112・Kを探せ 10/11」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:20:01 isDVHsKP0
的山(MATOYAMA TETSUYA)は改めて鞄を整理すると、家のドアを開けた。
敷居を跨ごうとして躓いた。
(てっ………縁起悪いな)
爪先で地面をトントンと叩く。的山なりの厄落とし。ベテランらしく、あくまでも冷静に。
(さて………嘘でもいいから仲間探しだな)
まだ手榴弾の出番は無さそうだ。
「ど、どうしましょう!」
「どうしましょうって……【K】が足りないなら探すしかないだろ」
慌てふためく大西(OHNISHI HIROAKI)とは逆に、まだ萩原(HAGIWARA JUN)はぼんやりし
ていた。右手は絶え間なく子猫の頭を撫でている。
「お前はいいだろ、少なくとも【K】が1個あるんだし。俺はひとつも無いんだぞ」
「じゃあ、あと2つを探さなきゃいけないんですよね?!」
「2つとは限らんな………そこに隠れてるの、出て来い」
萩原の声に体を震わせたのは、木陰にいた大久保(OHKUBO MASANOBU)だった。
慌てて辺りを見回したが、自分以外に誰かがいそうな気配も無い。
「おい、いい加減出て来い。お前だって今の放送聞いて困ってるんだろ?」
その通りだった。大久保は火炎放射器のノズルの先を下に向けると2人の前へ歩み出た。
「大久保さん!」
「……お前か」
萩原が興味なさげに呟く。
「オギさん、いつから気づいてたんです?」
「俺が気づいたわけじゃない。こいつが先に気づいたんだ」
萩原は腕の中の子猫を見つめた。
「何か仕掛けてくるんならそれなりの対応をしようと思ったんだが、何もしないしな。放
っておいた。で、お前は【K】持ってるか?」
「……1つ持ってます」
大西がガックリと肩の力を落す。
「守護神様がすごい武器をお持ちのようだ。とりあえず歩こう」
奇妙な3人組のチームが出来た。萩原は癖なのか、首輪の内側に手をやった。
370:「112・Kを探せ 11/11」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:21:33 isDVHsKP0
(大丈夫……俺は勝てる……)
そっと田中彰(TANAKA AKIRA)は心の中で呟いた。すでに実践済み。あの中村を倒したの
だ。1対1の何の卑怯な手も使わない決闘で。今持っている武器はヌンチャクだが、それ
でも自信はあった。上手く頭を使えば勝てるのだ。追いつめられた時、人間は最大限、い
やそれ以上の力を発揮できるのだ。それを体感した田中にはもう恐いものはなかった。そ
の自信は狂気の沙汰であったが、間違いなく田中を生かしているパワーだった。
(【K】があと1個……誰でもいいさ、俺の手助けしてくれるなら)
助けてくれたその後に。
(消えてもらうけどね)
ククッと喉の奥で笑った。そして、不思議と穏やかな表情を浮かべた。
「………一端休戦協定だな」
後藤(GOTOH MITSUTAKA)が話しかける。平野佳寿(HIRANO YOSHIHISA)も黙ってうな
ずいた。その表情は確かに不安が浮かんでいた。
「俺は【K】が1つある。お前は?」
「………ゼロです」
「じゃあどっちにしろ仲間探しだな」
後藤は軽く伸びをすると、平野の左肩を叩いた。その表情は相変わらずのニヤケ顔だ。
「………よくそんな余裕ありますよね」
「何が」
「仲間になってくれる人が見つかるかどうかもわからないのに。見つかったとしても襲わ
れたらどうするんです?信用出来るんですか?」
もっともな平野の問いかけに、後藤は両手を腰に当てて笑った。
「余計な心配すんな。みんな同じ考えで怯えてるだろうさ。でもな」
後藤は平野の腕を掴み、軽く走りだした。
「うわっ!」
「俺はいつでも友達募集中だ!」
アンバランスな2人もようやくスタートを切った。
【残り・28人】
371:「113・進め!白旗組 1/2」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:23:22 isDVHsKP0
「おーい」
「誰かいますかー」
小声ながら、誰かを探す声。3個の懐中電灯の灯りが揺れる。
「【K】あと2個ありませんかー」
緑の木々の間を歩くのは不利だと考え、市街地を彷徨った。ここなら木に遮られることな
く灯りが遠くまで届き、視界もいい。高木にとってはジェイソンの悪夢があるが、今はそ
んなことを言ってはいられない。運良く山口に再会出来ればとも考えていた。
すべては【K】の為。
光原も金子とはぐれた記憶のある場所だった。けれど、進まなければならなかった。
(金子がいたら【K】が2個あってグループ成立だったのに……)
後悔しても始まらないとはわかっていても、静かな闇の中では考えてしまう。
「誰かー」
下山は白旗を掲げ、首輪探知機を片手に先頭を歩いていた。探知機を持っているのなら
声を出す必要は無い。だが3人で相談した結果、声を出していた方が緊張感が解ける、
体がほぐれるという根拠のない理由を採用した。どこかの誰かがこちらを見つける目安に
もなるだろう。このメンバーの最年長、自分の気持ちが折れてはいけないと下山は自分に
言い聞かせ続けた。修羅場をくぐった。幸運が重なった。その可能性を信じている。信じな
ければ足は前に進まない。情けないとは思うが、一番大事なことだった。
ガサリ。
小さな音がした。3人の足が止まる。
「だ、誰かいますか?」
光原がそれまでよりもやや大きな声を出した。下山はすぐに首輪探知機を操作する。探知
ランプは点かない。ランプはここにある3つだけだ。
「誰ですか?こっちは下山、光原、高木です。【K】はひとつ」
返事は無い。だが再びガサリと音がした。小さな何かを引きずっている音だ。まだランプ
は現れない。ならば首輪を持たない存在か。………監督?
「こっちは戦う気はありません!このトラップを乗り越える為に協力しましょう!」
必死の思いで声をかけた。またガサリという音がし、照らす灯りの中に黒い影が現れた。
「え……?」
それは1匹の猿だった。パンの入った袋をガサガサと引きずっている。
372:「113・進め!白旗組 2/2」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:24:25 isDVHsKP0
「なんだよ、もう……」
「びっくりさせんなよ……」
安心したような、ガッカリしたような、中途半端な気持ちになる。
「猿のくせに驚かすなよ!」
思わず高木が大声を出すと、猿は全身をビクリと震わせ、ポトリとパンの袋を落として走
り去ってしまった。
「高木ー」
「猿に罪はないー」
「可哀想ー」
2人から責められ、高木は頭を掻いた。
「別に……いじめるつもりはなかったんですけど……」
残されたパンに歩み寄る。袋を手に取り、よく見た。マジックのようなもので文字が書か
れていたからだ。
「15?」
乱暴な文字で書かれていたのは数字の「15」。そして「加ト」の2文字。
「……加藤大輔か?」
横から下山が覗き込む。
「猿がこのパンを持ってたってことは………」
「大輔に何かあったんじゃあ……」
光原が心配そうな表情をした。
「まさか猿に襲われて……」
「ミツさん、いくらなんでもそれはないでしょう。いくら加藤さんだからって」
「いや、大輔のことだ……しかも自分のパンに名前書いておくぐらい、あいつは食い意地
はってるからな……大丈夫かな……」
自分たちよりも他人の心配をしてしまう。そんな状況に下山はそっと笑った。
(大丈夫だ。俺達は自分を見失ってはいない。まだ心をちゃんと持ってる)
姿勢を再確認するように、白旗を肩に担いだ。
1時間以内に2つの【K】を見つけなければ、3人の命は無い。
【残り・28人】
373: ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/01 00:25:46 isDVHsKP0
今回は以上です。
374:代打名無し@実況は実況板で
07/02/01 01:05:22 KsPIK1hdO
職人さん乙です!
みんなキタ━━(゚∀゚)━━!!!!!!
全員顔見せ登場って、それだけでもわくわくしてしまうシーンだなあ。
ユウキ災難だけど超がんがれ。
375:代打名無し@実況は実況板で
07/02/01 03:37:20 Vzzc9Sdd0
投下乙です!
うわああはらはらする・・・!
376:代打名無し@実況は実況板で
07/02/01 19:09:46 QJ59iUp90
職人さん乙です。
盛り上がる展開キタ━━(゚∀゚)━━!!!!!
今回のトラップはすごく面白そう。宮内グッジョブww
あとどうでもいいことだが今回の話が投下されるまで
ずっと大久保の下の名前は「かつのぶ」だと思ってたw
377:代打名無し@実況は実況板で
07/02/02 09:37:31 CzLIIdsPO
☆
378:代打名無し@実況は実況板で
07/02/02 15:35:23 AiV7o9Yb0
そこらのバトロワとは一味も二味も違いますな。ハラハラする。
379:代打名無し@実況は実況板で
07/02/02 18:38:25 3qtLfLSiO
つ【それぞれのバトロワにそれぞれの味】
ちょwwww歌さん猿をすっかり手なづけスギスwwww
380:代打名無し@実況は実況板で
07/02/03 17:18:43 SvGMeN/G0
なんか1時間たったら一気に死者が増えそうだな・・・ガクブル
381:代打名無し@実況は実況板で
07/02/04 11:16:40 Mhg1JB53O
☆
382:代打名無し@実況は実況板で
07/02/04 16:20:26 HsKKVqHz0
職人さん、いつも楽しく見させてもらってます。
最近このスレを知ったんですが面白くてログ一気に読んでしまいました
個人的にはWカトー組がオイシイwなんかなごまされますw
あと川越さんと本やん、どうなってしまうのか…
これ以上殺さないでくれ…!と思いつつ
またムチ使ってるとこ見たいという思いも捨てられずw
まだまだ先はありますがこれからも頑張ってください、応援しています!
ところで職人さんはオリファンですか?
いや、ところどころ気になるところがあったから…
383:代打名無し@実況は実況板で
07/02/05 08:17:21 mD5jVV7P0
384:代打名無し@実況は実況板で
07/02/05 21:35:09 MPstf9re0
保守
385:すさ
07/02/06 05:48:14 qrvsqUzG0
優コリンズ
386:ぬな ◆VRIy0lcruQ
07/02/06 05:49:22 ejDajkyQ0
コリンズ星からきますた
387:代打名無し@実況は実況板で
07/02/06 21:17:23 PKs/Jn8KO
まだかなー明日かなー
388:代打名無し@実況は実況板で
07/02/07 00:39:57 /kYhLoUpO
ほす。
389:代打名無し@実況は実況板で
07/02/07 16:17:59 /35dI5Ui0
保守
390:「114・余分なものが多すぎる 1/2」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/07 23:13:21 aD0gvnlx0
「リプシー、聞こえるかい?」
ネッピーが通信機を使って連絡を取っている。日高は地図を見ながら、地面に横たわって
いる菊地原を横目で見つめていた。
【K】は2人で4つ持っている。1つ余分だとしたら、すぐに策を講じなければならない。
その上菊地原はいまだに意識不明で動けない状況にある。言い方を変えれば、見事な
までの「お荷物」、余分な存在だ。
(あと2つ見つなきゃ……)
見つかるだろうか。
「うん、そうなんだ。だから菊地原さんを抱えて僕たちも動くから、もし【K】を2個持
ってる人がいたら教えて欲しいんだ。すぐ合流したい」
『………わかったわ』
まるで躊躇っているようなしばしの間があって、ネッピーのヘッドフォンからリプシーの
声が聞こえた。どうしたのだろう。
(無理もないか。こんな状況を突然知らされたんだ。女の子じゃショックすぎるだろうよ。
俺たちですらこうなんだ)
日高は水で塗らしたタオルを改めて菊地原の首の後ろに当てた。その体はまだ熱を持って
いて、とても安心出来る状況ではなかった。
「菊さん」
返事は無い。
「菊さん、しっかりして下さい」
軽く頬を叩く。無意識だろう、菊地原が小さく身じろぎをした。
「ネッピー」
「はい」
「とにかく移動しよう。誰かを見つけないと。ちょっと手伝ってくれ」
菊地原を背負う為に、自分の鞄をネッピーへと差し出した。ネッピーはそれを受け取り、
菊地原の体がキチンと日高の背に乗るように手伝った。そして地図と磁石、懐中電灯を持
ち、方向を調べた。
「比較的島の端にいるから、中央寄りに行ってみます?」
「そうだな、その方が誰かに会えるかな……」
「声を出してればきっと誰かに聞こえますよ。諦めずに行きましょう!」
391:「114・余分なものが多すぎる 2/2」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/07 23:15:46 aD0gvnlx0
「そうだな……」
首輪が妙に苦しく感じた。それでも歩かなければならなかった。時間は1時間を切ってい
る。とにかく仲間を見つけることが先決だった。
『………ーい』
どこかで誰かの声が聞こえた。言葉もわからない、遙か遠くからの声。闇の中、遠くの方
でチラリと揺れる光も見える。それぞれがそれぞれの方法でグループを成立させようとし
ているのだ。気づくと日高の掌にはじっとりと汗が滲んでいた。これは罰なのだろうか。
ずっと櫓の上で隠れていた罰。
(そんなわけあるか。俺は櫓から見えるあの光を調べたくて……)
そうだ。あの光のことを誰かに話すべきなのだ。そしてあの光の見える島、建物に向かっ
て助けを求めるのだ。そうすれば生き残っている選手全員で脱出出来る可能性もある。
この1時間が終わるまでは、全員が仲間になれるはずだ。
この1時間が終わったら、どうなるかはわからないが。
(大丈夫だ。グループになった仲間同士で協力して、脱出方法を考えればいいんだ。大丈
夫だ、みんな分別ある大人なんだから!)
その分別ある大人なはずの香月が、日高をあの櫓に閉じ込めた。香月は言っていた。
命拾いという言葉を使った。元ブルーウェーブの選手を消すと言った。
今もまだ、その考えは変わらないのだろうか。
日高は小さく頭を振り、大きく息を吸い込んだ。
「誰かいないかー!」
続けてネッピーも叫んだ。
「誰かいませんかー!【K】をあと2つ探してますー!」」
「こっちは日高と菊池原さんですー!菊さんが動けませんー!」
「ネッピーもいますー!助けに来たんですー!」
手探りで、必死の叫びは続く。
【残り・28人】
392:「115・透明人間 1/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/07 23:16:54 aD0gvnlx0
リプシーは迷っていた。
ネッピーからの連絡を聞いた。【K】を2つ持つ選手を見つけたら教えて欲しい。合流した
いという内容。日高と菊地原のコンビをグループとして成立させる為だ。
しかし、リプシーは迷っていた。
(あの方の持つ【K】は1個。私も【K】を2つ探している……)
もし【K】を2つ持つ選手に出会ったら、自分はどうするだろう。
素直にネッピーに連絡を取ってその選手を案内するだろうか。それともその選手を連れて、
あの人を探すだろうか。時間はまだ1時間近くある。余裕のある間はまだネッピーには連
絡せず、その選手と一緒にあの人を探す方法もあるのだ。
選手たちを救いたいのか。
あの人を救いたいのか。
走りながら、リプシーは迷っていた。
低木が道を遮るように横たわっている。懐中電灯がなければ躓いて派手に転んでいただろ
う。リプシーは軽やかにそれを飛び越えた。翻ったミニスカートが枝に引っかかり、その
動きを遮った。
「きゃっ」
慌ててスカートを枝から外した。
「誰だ?」
どこかから声が聞こえた。暗い緑の林の中。リプシーの体は小さく震えた。
「だ、誰ですか?リプシーです!助けに来たんです!」
「………リプシー?マジか?」
声がやや大きくなった。ガサガサと人が近づいてくる音がする。リプシーはその場に立ち
止まり、音のする方向を見つめていた。声で、あの人ではないことがわかっていた。けれ
どこれから現れる選手が【K】をいくつ持っているか、それが問題だった。
「うお!いた!」
「吉井さん!」
リプシーは思わず駆け寄った。頼れるベテランが現れたのだ。この人ならきっと選手たち
を上手くまとめて導いてくれるに違いない。
393:「115・透明人間 2/4」 ◆UKNMK1fJ2Y
07/02/07 23:17:52 aD0gvnlx0
「リプシー、どうしてここに?」
「大島コーチとネッピーと協力して……ネッピーもこの島にいるんです。ちょっと待って
下さいね、すぐ連絡取りますから」
通信機に手を当てる。そして尋ねた。
「吉井さん、【K】はいくつ?」
吉井は困ったような笑顔を浮かべた。
「ゼロ。絶体絶命。困ってるんだ」
「そ、そうですか……」
リプシーは曖昧なため息をついた。少なくとも迷う必要は無い。素直にネッピーへの呼び
出しをかける。
「ネッピーの方には日高さんと菊地原さんがいるんです。【K】が4つあるので、あと2個
探しているところなんです」
「数量オーバーはダメなのか?」
「わかりません。でも念には念を入れた方がいいと思って」
「そうか……俺にしたって誰かと一緒じゃなきゃ意味がないからな。小判鮫だ」
「ひとまずネッピーたちと合流した方がいいと思います。1人でいるよりは、もし数量オ
ーバーでもOKだったら助かりますし」
「そうだな、俺も仲間に入れてくれって連絡頼む。害にも益にもならんけどな」
「はい!」
吉井の冗談めかした言葉にリプシーも笑顔で答えた。やはりひとりぼっちよりは2人の方
がいい。
「ネッピー?聞こえる?ネッピー?」
リプシーがマイクに向かって喋っている。吉井は腕を組むと渋い表情をした。
(そうか、日高と菊地原がそれぞれ【K】を2つずつ……どっちを消しても3にはならん
な。2人共生かしておいても1人消しても状況は変わらない、か)
その後、誰かに遭遇すればまた状況は変わるだろう。
(その時に考えればいいことか)
ベルトに挟んである消音銃に手をやった。自分に力を与えてくれる不思議なもの。
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