H5N1亜型
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この項目では、インフルエンザA(H5N1)のウイルスの詳細について説明しています。トリインフルエンザ全般については「鳥インフルエンザ」を、2009年に人における感染例が報告された新型インフルエンザA(H1N1)については「2009年新型インフルエンザの世界的流行」をご覧ください。

H5N1亜型
H5N1の電子顕微鏡画像
分類(ウイルス)

:第5群(1本鎖RNA -鎖)
:Incertae sedis
:オルトミクソウイルス科
Orthomyxoviridae
:A型インフルエンザウイルス属
Influenzavirus A
:A型インフルエンザウイルス
Influenza A virus
亜型:H5N1亜型
subtype H5N1

学名
Influenza A virus subtype H5N1

H5N1亜型(エイチごエヌいちあがた、Influenza A virus subtype H5N1 )は、A型インフルエンザウイルスの亜型の一つであり、H5N1、A (H5N1)とも表記される。H5N1亜型内でも、僅かな抗原性の違いによって少しずつ種類(クレード)の違うものであったりするが、一般的にH5N1亜型の形質を保っているものをまとめてH5N1と言う。

H5N1はトリヒト、その他多くの動物においてインフルエンザを引き起こす[1]高病原性トリインフルエンザ(HPAI)を引き起こす株はHPAI A(H5N1)と総称され、特に東南アジアの多くのトリの間でエピデミック(局地的流行)を起こしている(「トリインフルエンザ」も参照)。HPAI A(H5N1) の変異株の1つがアジアで出現した後、現在では世界中に広がっている。また、ヒトの間で爆発的な感染に繋がる恐れのある新型インフルエンザへの変異が懸念されている。なお、2009年に発生した新型インフルエンザはH1N1亜型によるもので、これとは異なる。

動物間で流行が起こった場合、感染の疑いがある多くのトリやその他の動物を淘汰(殺処分)して流行を食い止める[2]。そのため、H5N1やトリインフルエンザはよくマスメディアに取り上げられる[3]
目次

1 概要

2 遺伝学的解析

2.1 用語

2.2 遺伝子構造と亜型

2.3 低病原性H5N1


3 H5N1の特性

3.1 伝染力

3.2 毒性

3.3 伝染と宿主

3.4 高い変異率


4 ヒトへの影響

4.1 症状

4.2 予防と治療

4.3 薬品備蓄と医療体制

4.4 人間社会への影響


5 脚注

6 関連項目

7 外部リンク

概要

H5N1は主に野鳥の間で伝染する。H5N1を含むA型インフルエンザウイルスのいくつかの亜型(H7N7など)はトリインフルエンザを引き起こす。トリインフルエンザは症状の程度により、高病原性トリインフルエンザ(HPAI)と、低病原性トリインフルエンザ(LPAI)に分けられる。宿主である野生の水鳥がHPAI株に感染した場合でも発症することはないが、家禽に感染した場合は患畜の多くが死亡する。LPAI株も主に野鳥の間で伝染するが、鳥類に感染した場合の症状は比較的軽いか発症しない。その他にも、ネコ科の動物、イヌブタなどに感染した例がある。

1980年代になってから感染症は予防接種や抗生剤の服用によって治療することができるという、一種の危機感の薄れがあった。しかし、1997年香港で本来人間に感染することはないとされていたH5N1型のトリインフルエンザが人間に感染した。このウイルスに18名が感染し、うち6名が死亡した。この後も、何度か人間に対して感染が起こっており、現在HPAIを引き起こすアジア株に感染した場合のヒトの死亡率は約60%である。感染者は、ほぼ全てのケースにおいてトリと物理的接触をしたことが確認されている。ヒト同士の間で伝染、もしくはヒトに空気感染すると言う証拠は発見されていない。

また、この後の研究により過去のスペインかぜ(H1N1)、香港かぜ(H3N2)などのパンデミックはトリインフルエンザウイルスに由来するものであった可能性が高いという証拠が発見された。これは次のパンデミックもトリインフルエンザウイルスの変異によって現われる可能性が高いということを表している。(ただしそれは強毒のH5N1ではない。H5N1は人間同士の感染力が弱いことが多いので、パンデミックにはなりにくい。)

多くのインフルエンザウイルスは増殖の過程で突然変異しやすいものであり、H5N1も例外ではない。さらに、このウイルスは同じトリインフルエンザウイルスであるH9N2と比べても世界規模で広範に家禽に流行しており、ウイルスの個体数から考えてもヒト感染型の変異体の発生の可能性はきわめて高いと考えられる。

また、突然変異でなくとも人間に感染したウイルスが体内でヒトインフルエンザウイルスと遺伝子再集合をした場合、高病原性を保持したまま人間同士での感染力の高いウイルスが生まれる可能性がある。

2005年9月、トリインフルエンザのアウトブレイクにより500万から1億5000万の死者が出る可能性があることが発表された[4][5]。トリインフルエンザウイルスは進化を続け、パンデミックを起こすことが予想されている。この進化のスピードは当初の予想よりずっと速いものであった。

HPAI A(H5N1) はもともと致死率が高いことに加え、進化によって毒性も高くなりつつある。そのため、世界的なパンデミックに備えた対策が取られつつある[6]

流行の際の致死率を下げることを目的として、プレパンデミック・ワクチンが開発された。しかし、プレパンデミック・ワクチンで感染を確実に抑えることが出来るかどうかは不明であり、実際に効果があるワクチンが製造出来るまでにはパンデミックが起こってから数ヵ月が必要である。変異株の出現後3か月以内に予防ワクチンの本格的な生産開始が望まれ、1年以内に10億人分のワクチンを用意することが要求されている[7]

H5N1はトリの間で突然変異を続けることにより、人間の集団免疫(Herd immunity)の限界を超えて複数回のパンデミックを起こす可能性がある[8]。その遺伝子子孫によって起こるインフルエンザ・パンデミックでは、H5N1以外の亜型を含むことも考えられる[9]

H5N1の遺伝子解析の結果、H5N1の遺伝子子孫によってパンデミックが起こった場合はスペインかぜより致死率が高くなると予想され、スペインかぜ以上の大規模なパンデミックになる可能性がある[10]
遺伝学的解析 ヘマグルチニンの分子モデル。H5N1のHはヘマグルチニンの種類を表す。

HPAI A(H5N1) の最初に発見された株はA/chicken/Scotland/59と呼ばれ、1959年にスコットランドで2つのニワトリの群れを病死させた。しかし、この株と現在流行している高病原性株との違いは非常に大きい。

2004年に主に流行したHPAI A(H5N1)は、1999年から2002年にかけてZ genotypeを持つように進化した[11]。これはアジア型HPAI A(H5N1)(Asian lineage HPAI A(H5N1))と呼ばれている。

アジア型HPAI A(H5N1)は抗原性によって2つのクレード(clade)に分けられる。
クレード 1
ベトナムタイカンボジアでのヒトとトリからの分離株、およびラオスマレーシアでのトリからの分離株。
クレード 2
最初に中国インドネシア日本韓国のトリから分離され、後に中東ヨーロッパアフリカへ広がった。

WHOの発表では、2005年後半から2006年にかけてヒトへ感染したH5N1は主にクレード 2であった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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