DNA型鑑定
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DNA型鑑定(ディーエヌエーがたかんてい)あるいはDNA鑑定とは、デオキシリボ核酸 (DNA) の多型部位を検査することで個人を識別するために行う鑑定である。犯罪捜査や、親子など血縁の鑑定に利用される。また、作物家畜品種鑑定にも応用されている。


目次

1 概説

2 DNAの構造

3 DNA型鑑定の種類

4 型の種類

5 DNA型鑑定の技術発展

6 DNA型鑑定の課題

6.1 DNAのデータベース化と運用の法制化


7 ジェノグラフィック・プロジェクト

8 犯罪捜査などへの応用

8.1 DNA捜査の現況

8.2 イノセンス・プロジェクト

8.3 捜査にDNA型鑑定が用いられた事件

8.3.1 日本以外の例

8.3.2 日本での例

8.3.2.1 1980年代

8.3.2.2 1990年代

8.3.2.3 2000年代以降



8.4 司法での例

8.5 民事訴訟における例


9 考古学への応用

10 脚注

11 参考文献

12 関連項目

13 外部リンク


概説

DNAは「デオキシリボ核酸」の略称で、遺伝子の本体として生物の核内に存在する物質である。DNAを主成分とした物質は1869年に発見され、「ヌクレイン」と名づけられた。しかし、遺伝子の本体は長い間タンパク質であると考えられていたこともあって、DNAの初期の研究は遅々として進まなかった。

遺伝子の本体はDNAであるということが初めてはっきり示されたのは1944年であり、それが学会で公認されたのは1952年である。二重らせんで知られるDNAの立体構造、いわゆるジェームズ・ワトソンフランシス・クリックのモデルが発表されたのは1953年である。この発見は分子生物学史最大の発見の一つと称えられ、以後DNAの研究は急速に進展する。この発見により、2人は1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。

1984年にはレスター大学遺伝学者アレック・ジェフェリーズ(英語版)が、科学雑誌「ネイチャー」に論文を発表した。彼は多くの研究者が関心をもった“遺伝子の働き”でなく、“DNAによって個人を区別できるか否か”の観点に着目したといわれる。その結果「ヒトのDNA型は十分に個性があり不同性がある。そして、終生不変である」こと、したがってDNAで「個人の特定ができる」ことを説いた[1]

この発表により、DNA型鑑定は個人特定の切り札として飛躍的に発展していく。
DNAの構造

DNAは知られている限りで最も大きな分子の1つである。RNAとともに核酸と呼ばれ、その構成要素は次の3つである。



リン酸

塩基

DNAでは糖がデオキシリボースであり、塩基が

アデニン (A)

チミン (T)

グアニン (G)

シトシン (C)

となっている。

DNAはデオキシリボースとリン酸が交互に長くつながった鎖が2本、螺旋状にねじれた二重らせん構造になっている。糖であるデオキシリボースの部分にはA,T,G,Cの4種類の塩基が1つずつ結合している。そして、この塩基がもう1本の鎖の塩基と結び合うことで、DNAの本鎖は結合している。

この塩基の結合には決まった規則がある。Aは必ずTと、Gは必ずCとペア(塩基対)をつくる。そのほかの組み合わせ、たとえばAとC,GとTといったペアはない。したがって、二重らせんの一方の鎖の塩基の並び方(塩基配列)が決まると、もう1本の鎖の塩基配列も自動的に決まってしまう。このことを「本鎖の塩基配列は互いに相補的である」という。これがワトソン・クリックモデルの最も重要な点でもある。

ヒトの細胞は1個の受精卵から出発して、誕生までに約3兆、成体になると約60兆にも及ぶといわれる。そしてヒトの細胞1個に入っているDNAは60億塩基対くらいとされている。

ヒト細胞は2倍体なので、ゲノム(配偶子または生物体を構成する細胞に含まれる染色体の組・またはその中のDNAの総体)あたりは約30億塩基対である。

DNAの塩基配列のうち、同じ塩基配列が繰り返して存在する特殊な「縦列反復配列」と呼ばれる部分を検査し、その繰り返し回数が人によって異なることを利用して個人識別を行う手法が最も一般的であり、世界的に共通した検査法が確立している。2009年現在、同じ型の別人が現れる確率は4兆7000億人に1人とされている[2][3][4]
DNA型鑑定の種類

短鎖DNA型(STR型) - DNAの特定領域における反復配列の繰り返し回数の違いを調べる方法
[5]

ミトコンドリアDNA型(mtDNA型) - 細胞核の外側にあるミトコンドリアDNAに於ける、塩基配列塩基の違いを調べる方法[5]

Y染色体単鎖DNAハプロタイプ型(Y-STR型) - 細胞核にある性染色体にはY染色体X染色体が存在し、男性はY染色体X染色体が同時に存在し、女性にはX染色体しか存在しない。このY染色体特定領域の繰り返し回数の違いを調べる方法[5]

型の種類

MCT118型

HLADQα型

TH01型

PM型(Poly Marker:LDLR型・GYPA型・HBGG型:D7S8型・GC型)

DNA型鑑定の技術発展

DNA型鑑定は、強姦殺人事件の捜査とともに技術的な発展を遂げてきた。強姦事件では犯人被害者との接触が密接なため、接触証拠が多数残るからである。
第一世代(1985年) - DNA指紋法

第二世代(1990年) - シングルローカスVNTR法

第三世代(1995年) - マルチプレックスPCR法による短鎖DNA鑑定法、Y染色体短鎖DNAハプロタイプ型鑑定、ミトコンドリアDNA型鑑定

DNA型鑑定の課題

検査で判定できるのはあくまで繰り返し数のみであり、その結果は数値でのみ示される。そのため厳密には「DNA鑑定」より「DNA型鑑定」と称するべきとの見方がある。

2000年台のアメリカ合衆国において、FBIの犯罪者DNA型データベースCODIS英語: Combined DNA Index System)上に登録されていた6万5千人のアリゾナ州の犯罪者のDNA型プールで、113兆分の1の確率と考えられるDNA型の「偶然の一致」があったとの報告を端緒に類似の例が報告され[6]、DNA型鑑定の信頼性についての議論が一部の法律家や報道関係者などの間で交わされるようになった[7]。しかし法医学研究者らにより、こうした事象は「誕生日のパラドックス」または「訴追者の誤謬(英語: Prosecutor's_fallacy)」の典型的な例であり、統計学的に説明可能な妥当な結果であることが指摘されている[8][9][10]

DNA型鑑定による個人識別の歴史・現状・課題への言及を極力省き、簡潔に表したいという目的からか、鑑定の結果「DNAが一致」したといった表現がしばしばみられる。しかし、それらはいずれもDNAのすべてが一致するかを調べたのではなく、DNAのごく一部の分析からパターンの一致・不一致を判定し、確率論的に推定したものである。どういう分析が行われ、何がどう一致したのかを確認しないと評価を誤りかねない。この点指紋と異なり、判断者に高度な専門的知識が必要とされる性質のものであり、裁判に利用する際その判断は専門家の解釈に依拠することになる。

なお、DNA型鑑定は高度の感度を有する鑑定であるため、陽性対照および陰性対照をも試料として鑑定すべきとの指摘もあるが、日本科学捜査研究所科学警察研究所では鑑定ごとの陽性対照および陰性対照の鑑定は実施していない。今後、陽性対照および陰性対照の鑑定が実施されていないDNA型鑑定については、証拠能力が否定されるべきとの見解が有力化している。
DNAのデータベース化と運用の法制化


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