ラテン語の動詞の活用は、次の4つの基本形の派生として説明される。
現在・直説法・能動態・単数・一人称
現在・不定法・能動態
完了・直説法・能動態・単数・一人称
スピーヌム(目的分詞)
たとえば「愛する」を意味する語を例にとると、この4つはそれぞれ、
amo (私は愛する)
amare (愛すること)
amavi (私は愛した)
amatum (愛するために)
となる。
辞書ではこの最初の形を見出し語とし、他の3つを併記するのが慣例となっている。2番目の形は不定詞として用いられる形であるが、現代の欧州諸語と異なり見出し語とはしない[1]。 上記「愛する」を例にとると、辞書の見出し語は amo であって、その後に省略した形を添え、amo, -are, -avi, -atum のように記載するのが通例である。
一方現代語の語源辞典や、各種読み物の中で軽く語源にふれるような場合には、ラテン語の動詞をひくときに上記2番目(amare)の形を用いることも多い[2]。 とりわけイタリア語、フランス語、スペイン語などラテン語の血を引く現代語(ロマンス諸語)においては不定法の用法が発達し、辞書の見出しなどにももっぱら不定法の形(「愛する」の同系語を例にとれば、イタリア語: amare、フランス語: aimer、スペイン語: amar[3])を用いるようになっているので、ラテン語を含めた各言語の不定形どうしを対照することは一般的である。 格変化の詳細は、人称代名詞の格変化の節を参照。 ラテン語には不定冠詞や定冠詞が存在しないが、hic, haec, hoc(それぞれ、男性、女性、中性に対応する、近称、英語のthis)、ille, illa, illud(同じく、遠称、英語のthat)などの指示語は存在する。英語における、this,thatのように代名詞としても機能する。 所有形容詞や所有代名詞、基数詞や序数詞、数量詞、疑問詞なども在る。 人称代名詞も三つの人称のそれぞれに対応して存在し、単数、複数が同形で用いられる。多くのロマンス諸語や英語と同様に、三人称に対応する代名詞のみが性の変化を伴う。三人称の語はis, ea, idであり、それぞれ英語のhe, she, itに相当する。 ラテン語の名詞は、数 (numerus) ・格 (casus) によって語の形を変える。これをdeclinatioという。日本語では、格変化と呼ばれる。数には、単数 (singularis) と複数 (pluralis) がある。古典ギリシア語のような双数はない。格には、主格 (nominativus) 、呼格(vocativus) 、属格 (genitivus) 、与格 (dativus) 、対格(accusativus) 、奪格 (ablativus) 、地格 (locativus) の七つがあるが、呼格は大体において主格と同形であり、また、地格についてはこの格を持っている語自体が稀である。従って、通常の名詞については、五つの格を覚えればよいということになる。つまり、通常一つの名詞につき、2*5=10の形を覚える必要がある。 しかし、ラテン語では、格変化はおおよそ規則的であり、パターン化されている。大概、典型的なものについて十個の形を覚えておけば、他の名詞については、単数主格と単数属格の形が分かれば、他の形は類推できる。このため、辞書には単数主格と単数属格の形しか出ていない。単語を書く際には、この二つの形を並べて書く(こうすることで、名詞であることも明らかになる)。 なお、名詞には必ず性があり、これを覚えておかないと、形容詞を正しく変化させることができないから(数・格のみならず、性をも一致させる必要があるため。これを性数格の一致という)、これも覚える必要がある。性には、男性(masculinum)・女性(femininum)・中性(neutrum)がある。中性は、イタリア語やフランス語などでは消失してしまったが、ドイツ語には現在でもある。 一つ目の型は、A型の格変化である。これは、属格単数形が-aeとなるものである。属格複数形が-arumという形をとることに着目して、A型の格変化(独:a-Deklination)と呼ばれる。第一格変化・第一種転尾とも呼ばれる。これには、幾つかのパターンがある。ラテン語式に関していえば、A型の格変化には、一つのパターンしかない。このパターンでは、単数主格と単数属格が、「-a, -ae」となる。その例外のパターンは、ギリシア語式のもので、ギリシア語から来た名詞については、これに従うものがある。いずれにせよ、複数の格変化は同じである。 第一のパターンは、単数主格で-a、単数属格で-aeとなるものである。ここでは、「女性」を意味する「femina, feminae」を例にとって、格変化を示そう。 数 (numerus)単数 (singularis)複数 (pluralis) 呼格は、主格と同形である。地格は、与格と同形である。このパターンの格変化をする男性名詞agricola, agricolae農夫
限定詞と人称代名詞
格変化 (declinatio)
名詞の格変化 (declinatio)
A型格変化
-a, -ae
主格 (nominativus)-a (femina)-ae (feminae)
属格 (genitivus)-ae (feminae)-?rum (feminarum)
与格 (dativus)-ae (feminae)-?s (feminis)
対格 (accusativus)-am (feminam)-?s (feminas)
奪格 (ablativus)-? (femina)-?s (feminis)
athleta, athletae競技者
auriga, aurigae馭者
Belgae, Belgarum (pl.)ベルガエ人
conviva, convivae客
incola, incolae住人
nauta, nautae水夫
Persae, Persarum (pl.)ペルシア人
poeta, poetae詩人
このパターンの格変化をする女性名詞Aeolia, Aeoliaeアエオリア島(シチリア島付近にあったといわれる島)
Aetna, Aetnaeエトナ火山(シチリア島の火山)
ala, alae翼、脇の下、腕
amentia, amentiae狂気
amica, amicae女友達、恋人(女)
amicitia, amicitiae友情、修好同盟
ancora, ancorae錨
anima, animae空気(元素として考えられていた)、息、呼吸、魂、生命
aqua, aquae水
aquila, aquilae鷲
arrogantia, arrogantiae高慢
Athenae, Athenarum (pl.)アテーナイ(アッティカの中心都市)
Attica, Atticaeアッティカ
audacia, audaciae大胆
aura, aurae空気、大気
avaritia, avaritiae貪欲、けち
bacca, baccae苺
Britannia, Britanniaeブリタニア
casa, casae小屋
capra, caprae牝山羊
caterva, catervae群、団
causa, causae原因、理由
cena, cenae食事(inter cenam(食事中に)、ad cenam invitare(食事に招く))
clementia, clementiae穏やかなこと、慈悲深いこと
columba, columbae鳩
columna, columnae柱
concordia, concordiae共感、一致
conscientia, conscientiae共に与り知ること、自覚、良心
copia, copiae沢山、量、軍勢
copiae, copiarum (pl.)財産、兵力
cratera, craterae混酒器、水槽、(crater, crateris (m.)と同じ)
cura, curae注意、心配、手入れ
dea, deae女神
dextera (dextra), dexterae (dextrae)右手
diligentia, diligentiae細心、勤勉
discordia, discordiae不和
domina, dominae女主人
fabula, fabulae物語、寓話
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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