雨氷
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雨氷が形成された枝先の拡大写真

雨氷(うひょう[1])は、0℃以下でも凍っていない過冷却状態の(着氷性の雨)が、地面や木などの物体に付着することをきっかけに凍って形成される硬く透明のこと。着氷現象の一種でもある。
目次

1 概要

1.1 過冷却と凍結

1.2 名称

1.3 雨氷の性状

1.4 特徴


2 形成過程

2.1 雪が融解して生じる着氷性の雨

2.2 「過冷却の暖かい雨」

2.3 着氷性の霧

2.4 氷の形成


3 雨氷をもたらす天候

3.1 総観スケールの気象

3.2 地形


4 地域性・季節性

5 予測

5.1 警報・注意報


6 雨氷による災害

6.1 山地での被害

6.2 居住地での被害

6.3 航空機への被害


7 雨氷のもたらす景色と文化

8 過去に起こった雨氷の例

8.1 ヨーロッパ

8.2 北アメリカ

8.3 アジア

8.3.1 日本

8.3.2 中国



9 天気図・気象通報

10 脚注

10.1 注釈

10.2 出典


11 参考文献

12 関連項目

13 外部リンク

概要 芝生にとげのように形成された雨氷。 木の全体に形成され垂れ下がった雨氷。このように垂れ下がった形で凍ることもある。
過冷却と凍結「過冷却」も参照

はふつう凝固点である0℃を下回ると凝固(凍結)しとなる。しかし、ある条件下では0℃以下であっても凍結しないで液体のままを保つことがある。水を構成する分子が非常に安定しているときに起こるもので、これを過冷却状態という。自然界では、を構成する水滴のように3 - 数百μmの大きさでは-20℃程度まで、雨粒のように数百μm - 数mmの大きさでは-4℃程度まで、過冷却のものが存在することが知られている[2][3][4]

雨粒がこのような過冷却状態にある雨を着氷性の雨(ちゃくひょうせいのあめ)という。なお、直径0.5mm以下の雨粒からなる雨を霧雨というが、同様に過冷却状態にある霧雨を着氷性の霧雨という。本項目ではこれ以降、特に注記がない場合は「着氷性の雨」には霧雨も含めることとする。過冷却状態の水に衝撃を与えると急速に凍結を始めて氷となるが、着氷性の雨も同様に樹木地面電線などの(0℃以下に冷えている)物体に触れた衝撃で凍結する。このようにしてできる付着氷が雨氷である。なお、雨よりも小さな水滴でできているの場合にも起こりうる。過冷却状態にある霧を着氷性の霧という[5][6][7][8]。着氷性の霧は、後述のように風速や気温などの条件次第で付着の様子が変わるため、雨氷に限らず、粗氷(そひょう)、樹氷(じゅひょう)にもなる。
名称

日本では、近代には雨氷を表す言葉として"glazed frost"の訳に当たる「凝霜」が用いられていた。しかし、霜と混同して誤解を生むとされたことから、中国語の「?淞」をより平易にした「雨氷」が1915年大正4年)から使用されるようになった[9][10]

英語では「上ぐすり(釉薬)」の意味があるGlaze, Glaze iceを雨氷を意味する語として用いる。また、航空の分野では航空機に付着する雨氷を特にClear iceと呼ぶことがある。また、着氷性の雨、霧雨、霧はそれぞれFreezing rain、Freezing drizzle、Freezing fogという[8]
雨氷の性状

雨氷は、物体表面に硬く滑らかで透明な氷のを作る。同じ着氷現象の1種である樹氷や粗氷とは、色や性質により区別されている。樹氷は白色不透明、粗氷は半透明なのに対して、雨氷は透明である。また樹氷より粗氷の方が固いがどちらも手で触れば崩れる程度の硬さであるのに対して、雨氷は固く手で触った程度では崩れない。色や脆さの違いは、気泡の含有率に起因している。樹氷は小さな気泡をたくさん含むため白色で脆く、粗氷は樹氷よりは固いがそれでも気泡を多く含むため半透明を呈する。一方の雨氷は気泡の含有率が低いため透明であり、氷が形成されるとき水滴同士が融合しあうので表面が滑らかになる[6][8]。雨氷の密度は約0.9であり、純粋な氷とほぼ同じである。

なお、0℃を僅かに超えた雨粒が0℃以下に冷えた物体に付着しても透明な氷ができ、雨氷と混同される場合がある。また、積雪融解したあと再び凍結するなどして透明な氷ができることもある。これらは雨氷ではない[10]。なお、再凍結によりできるもののうち、例えば細く地面に向かって垂れ下がるものは氷柱(つらら)、その逆に空に向かって伸びるものは氷筍(ひょうじゅん)という。
雨氷と似ているが異なる現象


半透明の「粗氷」

白色不透明の「樹氷」

結晶構造が目立つ「樹霜」[注 1][6]

特徴

着氷性の雨が発生する条件として、地上気温は0℃から-数℃の狭い範囲に限られ、後述のように上空に適度な厚みの逆転層が存在することが必要である。ごくありふれた現象である雨やと比べて、雨氷は目にする機会が少なく、発生頻度も低いため、珍しい気象現象とされている[5][10]

低地の平野部よりも、地形に起伏のある山地などのほうが発生しやすい。これは起伏により逆転層が形成されやすくなることなどが原因である。

雨氷が物体に大量に付着すると、樹木の枝が重くなりって折れ曲がったり、地面に氷の層を作って人の転倒や車両のスリップを引き起こすなど、被害を発生させることがある。一方、樹木などに付着した雨氷が美しい風景を作り出すという側面もある。着氷性の雨や霧は上空でも生じるが、これにより雨氷が航空機の翼などに付着して運行に重大な支障を引き起こす例がある[10][11]
形成過程 逆転層と降水の形の変化。 関東地方で着氷性の雨や凍雨が観測された2003年1月3日21:00(日本標準時)の茨城県つくば市館野の高層気温・露点温度断面図(気象庁)。逆転層がある。

着氷性の雨の形成には2通りある。1つはが融けて生じるもので、上空で生成された雪が落下する間に融ける「融解過程(melting process)」を経る。融解過程には、上空に逆転層が生じることが必要である。もう1つははじめから過冷却の状態にあるもので、始めから過冷却の水滴として雲の中で水滴が発達し、地上に達するものである。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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