著作権の準拠法
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著作権の準拠法(ちょさくけんのじゅんきょほう)とは、著作物の利用をめぐる渉外的私法関係に関して適用される法域ののことをいう。

もっとも、文献によっては準拠法の指定に関する問題(国際私法に関する問題)と、準拠法として指定された法が保護対象とする著作物の範囲の問題(外国で発行された著作物の内国における保護など)とを特に区別せずに著作権の国際的保護について論じているものが多く、場合によっては両者を混同しているものも見受けられる。このため、本項目では準拠法の問題のほか、いわゆる外国著作物の保護の範囲の問題についても扱う。


目次

1 著作権の内容と効力に関する準拠法(保護国法説)

2 不法行為の準拠法との関係

2.1 不法行為の成立との関係

2.2 救済措置との関係


3 インターネットと保護国法(公衆送信権の扱い)

3.1 発信国法主義

3.2 受信国法主義

3.3 折衷的な考え方

3.4 公衆送信権の内容を問題とする考え方


4 保護国法における外国著作物の扱い

4.1 一般原則

4.2 保護期間に関する相互主義

4.3 著作物の本国の法が当初から保護を否定している場合

4.3.1 万国著作権条約との関係

4.3.2 ベルヌ条約との関係



5 利用許諾契約の準拠法

6 附:刑事上の問題

7 注


著作権の内容と効力に関する準拠法(保護国法説)

著作物の利用行為を巡る渉外的な法律関係につき、どのような連結点を媒介として準拠法を指定するかについては、以下のような考え方が主張されてきた。
本源国法説(又は本国法説)
著作物が最初に公表された地や最初に発行された地の法が準拠法になるとする見解。
保護国法説
著作物の利用行為や著作権の侵害行為の行われた地の法が準拠法になるとする見解。
法廷地法説
著作物の利用行為を巡る訴訟が係属した裁判所が属する地の法(法廷地法)が準拠法になるとする見解。

この点については、著作権を含む知的財産権の地域的効力はそのの領域内に限られ、ある国の領域外の利用行為によって国内の著作権が侵害されることはないという属地主義の原則が妥当すると解されている[1][2]ところ、このような属地主義の原則と整合性があるのは、著作物を現実に利用した地の法を準拠法にすることであるとして、保護国法説が一般的に支持されている[3]。この見解によると、日本における著作物の利用行為が著作権侵害になるか否かは、もっぱら日本の著作権法により判断され、アメリカ合衆国における著作物の利用が著作権侵害になるか否かは、もっぱらアメリカ合衆国の著作権法により判断されることになる。

このような保護国法説の根拠については、著作権の保護の範囲等につきベルヌ条約5条2項が「保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法は、この条約の規定によるほか、専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。」と規定していることに求める見解[4]物権の準拠法に準じて扱う(日本では法の適用に関する通則法13条)のが妥当とする見解、ベルヌ条約が内国民待遇(5条1項)を求めていることを根拠とする見解(もっとも、内国民待遇は後述する外国人法の問題であり、準拠法に関する保護国法説との関連はないと考えるのが一般である)、利益衡量に求める見解[5]、これまでの知的財産保護に関する条約の暗黙の前提に求める見解[6]などがある。この点、スイスの国際私法には、保護国法説を採用する旨の明文の規定がある。

もっとも、ベルヌ条約5条2項が保護国法説を採用しているとの見解に対しては、法廷地法説に立脚する立場から、同条項は保護国法説を採用するものではなく、法廷地法説を採用する旨の規定であると主張する見解がある。法廷地法説とは言っても、実質法(この場合は著作権法)につき法廷地法が適用されるとする見解と、国際私法も含めて法廷地法が適用されるとする見解[7]とがあるが、前者については、法廷地により異なる扱いがされることが許容され、条約の趣旨に反するとの批判が、後者については、(反致の場合を除き)法廷地の国際私法が適用になるのは国際私法の一般理論として当たり前であり条約で決める必然性がないという批判がなりたち[8]、いずれも少数説にとどまる。
不法行為の準拠法との関係
不法行為の成立との関係

法域にもよるが、著作権侵害事案は、実質法上は不法行為として理解されることが多いため、著作権の内容の問題と不法行為の成立の問題とは国際私法上どのような関係にあるかが問題となる。この点、日本においては、法の適用に関する通則法により全面改正される前の法例の解釈に関して、権利の存否は不法行為の先決問題であり、当該権利の準拠法によると理解されており[9]。著作権の内容と不法行為の成立は別の単位法律関係として理解されていた。

もっとも、法の適用に関する通則法の立案当局者の解説によると、不法行為の準拠法の一般原則である同法17条本文の「加害行為の結果が発生した地」[10]の意義について、「基本的には、加害行為によって直接に侵害された権利が侵害発生時に所在した地を意味」するとされている[11]。したがって、17条本文が適用される場合においては、ほとんどの場合、不法行為の準拠法と著作権の準拠法とは一致することになろう(例外的に17条但書や20条が適用される場合は別)。

これに対し、イギリスにおいては、学説上の批判はあるものの、判例上は、不法行為の先決問題とはされておらず、知的財産権侵害は不法行為 (tort) と性質決定されている[12]
救済措置との関係

著作権侵害に対する救済措置については、差止請求、廃棄請求、損害賠償請求などが考えられる(日本においては、著作権法112条、民法709条など)。この救済措置の準拠法については、著作権の準拠法と当然に同一と考えるべきかが議論されている。

この点については、著作権の内容と救済措置との関係につき、後者を前者の効力の問題と捉えるか、前者は後者の先決問題と捉えるかにより、見解が変わることになり、大まかに言うと、いずれも著作権の効果の問題であるとして著作権の準拠法によるとする見解、著作権の準拠法は救済措置の準拠法の先決問題であるとして別途準拠法を考える見解、差止請求や廃棄請求は著作権の準拠法に従うが損害賠償については別途準拠法を考える見解に分かれる。

救済措置に関する準拠法を著作権の準拠法とは別途考える見解によると、特別の規定がない限り救済措置は不法行為の効力の問題として性質決定されることになる。したがって、法廷地が日本の場合は、原則として法の適用に関する通則法17条本文が適用され「加害行為の結果が発生した地の法による」ことになるが、例外的に加害行為が行われた地の法による場合(同法17条但書)や、その他密接な関係にある地の法による場合(同法20条)も想定される。

もっとも、著作物の利用が外国で行われた場合、当該外国法を適用すれば最終的に解決するというわけではない。例えば、著作物の利用行為地がフランスであったとすると、保護国法説によれば、著作権侵害による差止請求が認められるか否かは本来はフランス法によって判断される。しかし、当該差止請求訴訟が日本の裁判所に係属した場合、フランス法の解釈では差止請求が認められるとしても、当該利用行為が日本の著作権法によれば著作権侵害に該当しない場合は、法の適用に関する通則法22条2項にいう「日本法により認められる損害賠償その他の処分でな」いものとして、差止請求は否定されることになる。
インターネットと保護国法(公衆送信権の扱い)

一般的に受け入れられている保護国法説によれば、著作物の利用行為が著作権侵害になるか否かについては、利用行為地の法により定まることになる。しかし、インターネット上で著作物が公開されている場合を想定すると、著作権の支分権としての公衆送信権の扱いにつき、どの地を利用行為地とするかという問題を生じる。この点の問題については国際的に確立された準則は存在しないが、概ね以下のような議論がされている[13]
発信国法主義

この点につき、伝統的な保護国法説の発想に立脚すれば、著作物の利用行為が行われているのは発信行為が行われた地、すなわちサーバの所在地の法が準拠法になるという結論が導かれる。

この見解は、著作権の準拠法に関する伝統的な考え方と整合性があるのみならず、後述する受信国法主義と異なり準拠法は一つしか考えられないので、著作物の発信行為が著作権侵害になるか否かにつき予見性が高まるメリットがある。


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