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この項目では、現代医学と生物学について説明しています。東洋医学については「肺 (五臓)」をご覧ください。


ラテン語Pulmo
英語Lung
器官循環器
呼吸器
動脈肺動脈
静脈肺静脈
神経肺神経叢
胸肺枝

肺(はい、: Lung)は、脊椎動物器官の1つである。肺臓とも呼ばれる。空気中から得た酸素を体内に取り込んだり、老廃物である二酸化炭素を空気中に排出する役割(呼吸)を持つ。これに対して水中から得た酸素を取り込み、水中に排出する器官が(えら)である。

なお、無脊椎動物においても、体内に一定の腔所を持ち、その内側でガス交換を行う器官をこう呼ぶ。節足動物クモ型綱軟体動物腹足綱にその例がある。 ヒトの肺(濃い灰色の臓器)は左右に一対備わる呼吸器の一つ。この図では中央下の心臓を露出するために肺の心臓よりの部分をめくりあげている。
目次

1 ヒト

1.1 構造

1.1.1 気道と肺胞

1.1.2 血管


1.2 生理

1.3 CT解剖学


2 脊椎動物

2.1 起源

2.2 肺循環の分化

2.3 両生類

2.4 爬虫類

2.5 鳥類

2.6 恐竜

2.7 哺乳類


3 無脊椎動物

4 出典

5 参考文献

6 外部リンク

ヒト

ヒトの場合、重さは両肺で男性が約1kg、女性は約0.9kgほどあり、胸腔の大部分を占め[1]、主に気道と血管からなり、ガス交換のため両者は肺胞で接している。肺胞は約3億個で、総表面積は約70m2。
構造

横隔膜肋間筋に囲まれた胸郭中にあり、肺の表面を覆っている漿膜を胸膜と言い[1]、横隔膜や肋間筋を裏打ちしている。肺を覆っている胸膜を臓側胸膜(肺胸膜、漿液である胸膜内液で満たされている[1]

左と右、2つに分れているが、形状は左右対称にはなっておらず、右肺は上から順に上葉・中葉・下葉からなり、左肺はやや小さく上葉・下葉からなる[1]。この5つの肺葉を大葉と言い、大葉はさらに細かく10の肺区域に分けられる。それぞれ上部は尖っており、肺尖。下面は平らであり、肺底と呼ばれている。左肺に中葉がないのは、左右の肺を隔てる縦隔にある心臓が体幹の中心よりも左に寄っており、その分スペースが小さいためである。
気道と肺胞

口や鼻から入る空気の通り道を気道と言い[2]咽頭で一つになり、喉頭で食道から前方に枝分れして気管となり[3]縦隔で左右に枝分れして気管支になる[2]

右肺は3葉あるので右気管支は気管から約25°の角度で枝分れする。左肺は心臓の分だけ上に寄っているので左気管支は気管から約35-45°の角度で枝分れする。気管支は大葉へ向けて分岐し、さらに肺小葉に向けて分岐する。分枝を繰り返して軟骨を持たない複数弾性繊維を豊富に持つ終末細気管支を経て呼吸細気管支になり、その先端には肺胞がブドウのように密集している[1]。枝分かれは一定の法則に従って自己組織化するため、フラクタル構造になっている。

気管支には杯細胞や線毛細胞がある。細気管支にはクララ細胞がある。肺胞にはI型肺胞上皮細胞II型肺胞上皮細胞がある。気管支にある杯細胞は気管粘液を出して湿度を保ち、線毛細胞は線毛運動によって吸気に混入した細菌等を咽頭へ流し戻す。これらの生理機能が正常に働いていれば肺胞は無菌に保たれているので、網細血管が直接空気と触れても細菌感染などは起こさない。

肺胞は、厚さ約0.1μmの扁平上皮である呼吸上皮細胞(肺胞上皮細胞)が直径約0.1-0.2mmの球状になり、空洞(肺胞気)を取り囲む構造を持つ。両肺合わせて約3億個がある肺胞では、内部に入り込んだ空気とそれを取り囲む多くの毛細血管の間でガス交換を行う場所であり、面積を広げると約70m2になる[1]。毛細血管は内皮細胞に走り、呼吸上皮細胞との間に基底膜がある。厚さ約0.5μmのこれら3層は血液空気関門と言う[1]。肺胞は弾性繊維で覆われ平滑筋を持たない。そのため、伸展はもっぱら気圧の変化によるものである[1]。肺胞でガス交換が行われる時は、I型肺胞上皮細胞が特に能動交換は行う訳ではなく、単にガス濃度の自然勾配によって受動交換が行われる。このため広い交換面積が必要になる。

肺胞上皮細胞内には、異物に対する免疫を持つマクロファージ(肺胞マクロファージ)や単球や、肺胞がひしゃげるのを防止するため脂質の表面活性物質を分泌するサーファクタント分泌細胞などがある[1]。肺胞にあるI型肺胞上皮細胞は薄い細胞で交換されるガスの通り道になっている。II型肺胞上皮細胞は厚い細胞で肺サーファクタントを出している。肺胞は極めて小さいので、そのままでは水の表面張力によって潰れてしまう。そのため表面活性物質を出して表面張力を下げて、肺胞が潰れない様にしている[1]。肺表面活性物質は胎生28週頃になってやっと出始めるため、妊娠28週以前に出産すると呼吸ができない新生児呼吸窮迫症候群 (RDS) になる危険性が極めて高い。そのような児のために現在は人工のサーファクタントを用いて、呼吸できる環境にするのが一般的である[1]。肺の血管内皮細胞はアンギオテンシン変換酵素 (ACE) を内分泌する。

大葉中ではお互いに穴でつながっているので、細菌性肺炎などを放置すると大葉性肺炎になる。
血管

流れる血管には大きく2系統があり、血液ガス交換のための系統を機能血管といい、いま1つは栄養血管と言う系統であり当臓器を養うためのものである[1]

機能血管は心臓右心室から肺動脈が出る。肺動脈は縦隔で左右に枝分れして右肺動脈と左肺動脈に分かれる。左右肺動脈は気道と同様に肺葉に向けて分岐して行き、最後は肺胞で毛細血管になる。肺胞でガス交換を終えた血管は分岐した時と同様に合流して行き、左右それぞれ2本の肺静脈となって左心房に流れ込む。栄養動脈である気管支循環系は、大動脈から直接分岐する。
生理

当臓器の膨張と収縮の仕組みは、横隔膜や肋間筋が胸腔を広げ、胸腔が陰圧になることで肺が立体的に引っ張られて受動的に膨らむ。一方縮むときは筋肉は使われず、当臓器の自ら縮もうとする力で収縮して空気の吸入・呼出をする。壁側胸膜は知覚神経が豊富で、肺が痛む時はこの神経が関与している。

なお、サーファクタント(界面活性剤)が、肺の円滑な動きには必要である。このサーファクタントが不足した状態になったことが新生児呼吸窮迫症候群の原因である。サーファクタントが足りないために上手く肺胞が広がらず、ガス交換が上手くゆかなくなっているのである。なお新生児呼吸窮迫症候群は、妊娠期間が短いほど(早産であるほど)発生しやすく、新生児が死亡する原因の1つとなる。
CT解剖学詳細は「X線写真」を参照

気管支肺動脈は原則として隣接し平行に走行する。肺区域、亜区域、小葉の中心を走行する。これに対して肺静脈はこれらの境界を走行する。CTでは気管支に隣接する血管が肺動脈であり、肺動脈と肺動脈の間にある血管が肺静脈である。正常なヒトでは気管支は亜区域までしか追うことはできないのでそこまでは有効な方法である。機能動脈は肺動脈だが、それ以外に栄養血管として気管支動脈が存在する。気管支動脈は下行大動脈から直接分枝するが正常では細いため造影CTでその近位部が確認されるにすぎない。

当臓器はリンパが豊富な組織である。気管支周囲、肺血管周囲、小葉間隔壁、胸膜の間質に分布している。特によく発達しているのが、気管支周囲と肺動脈周囲である。基本的には肺末梢から肺門部に向かって流れている。リンパ管そのものはCTでは確認できないが、癌性リンパ管炎やうっ血性心不全のようにリンパ浮腫を起こすと、気管支壁が肥厚し、血管陰影が拡大し小葉間隔壁が確認できるようになる。

構造を理解する上で欠かせない概念が二次小葉といわれるものである。もっとも有名なものはMillerによる定義である。二次小葉の中央を気管支と肺動脈が小葉間隔壁の中を肺静脈が走っている。肉眼的にも確認ができる小葉間隔壁に囲まれた多面体である。この概念は間質性病変を理解するのに役に立つ。二次小葉は30個ほどの細葉が集まってできているとされている細葉はCTでは確認ができない。


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